特許第6570870号(P6570870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6570870紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物、及びそれを用いた物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570870
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物、及びそれを用いた物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/08 20060101AFI20190826BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20190826BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20190826BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20190826BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20190826BHJP
   C09J 5/04 20060101ALI20190826BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20190826BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20190826BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190826BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20190826BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C08F299/08
   C08F2/50
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08K3/10
   C09J5/04
   C09J183/06
   C09J183/07
   C09J11/06
   C09J183/05
   C09K3/10 B
   C09K3/10 G
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-94068(P2015-94068)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-210861(P2016-210861A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】小野 和久
(72)【発明者】
【氏名】谷川 英二
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−027381(JP,A)
【文献】 特開2000−026559(JP,A)
【文献】 特開2003−238809(JP,A)
【文献】 特開2005−089672(JP,A)
【文献】 特開2015−003987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 283/01
C08F 290/00 − 290/14
C08F 299/00 − 299/08
C08F 2/00 − 2/60
C08G 77/00 − 77/62
C08L 83/00 − 83/16
C09J 1/00 − 5/10
C09J 9/00 − 201/10
C09K 3/10 − 3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(I):
【化7】

〔式中、
は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
Lは、5≦L≦10,000であり、
Xは、独立して、式(Ia):
−Q−Si(OR(R3−p (Ia)
(式中、
は、C2〜C4アルキレン基又は酸素原子であり、
は、独立して、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり、
は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C9アルキル基、C1〜C9アルコキシ基又はC6〜C12アリール基であり、
pは、1、2又は3である)で示される基であるが、Xには、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基が含まれる〕
で示されるオルガノポリシロキサン;
(B)式(II):
【化8】

[式中、
Aは、独立して、式(IIa):
【化9】

(式中、Rは、独立して、水素原子又はメチル基であり、Qは、独立して、C1〜C5アルキレン基である)で示される基であり、
1’は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
は、C2〜C10アルケニル基であり、
aは、0≦a≦100であり、
bは、1≦b≦10,000である]
で示されるオルガノポリシロキサン;及び
(C)光反応開始剤
を含み、(A)100質量部に対して、(B)が90〜600質量部、(C)が0.1〜20質量部の量で含まれる、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
(A)が、請求項1記載の式(I)において、Rが、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり;pが、2であり;R、L、Q及びRが、請求項1に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである、請求項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
(A)が、請求項1記載の式(I)において、Rが、メチル基であり;Qが、エチレン基又は酸素原子であり;Rが、独立して、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり;Rが、メチル基であり;pが、2であり;Lが、請求項1に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである、請求項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、
(D)ケイ素原子に結合した水素原子を有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び
(E)白金触媒
を含む、請求項1〜のいずれか一項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
(D)が、環状又は分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、請求項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
(D)が、(D)中のケイ素原子に結合している水素原子の数と、成分(A)と(B)中に含まれる炭素=炭素二重結合の数の比SiH/C=C−が、1〜10の範囲になるような量で含まれ、(E)が、組成物中に白金換算量で0.05〜1,000ppmの濃度で含まれる、請求項4又は5記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
(B)が、式(II)において、が、1≦≦100の整数であり;A、Q、R、R1’及びが、請求項1に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである、請求項1〜のいずれか一項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
(A)式(I):
【化10】

〔式中、R、Lは、請求項1に定義されたとおりであり、Xは、独立して、式(Ia):
−Q−Si(OR(R3−p (Ia)
(式中、Q、R、R、pは、請求項1に定義されたとおりである)で示される基であるが、Xには、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基が含まれる〕
で示されるオルガノポリシロキサン;
(B)式(II):
【化11】

[式中、Aは、独立して、式(IIa):
【化12】

(式中、R、Qは、請求項1に定義されたとおりである)で示される基であり、
1’、R、a、bは、請求項1に定義されたとおりである]
で示されるオルガノポリシロキサン;(C)光反応開始剤;及び(D)ケイ素原子に結合した水素原子を有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む第一成分、並びに(E)白金触媒を含む第二成分からなる、二剤型の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項9】
一方の基材の被接着面に第一成分を塗布する工程、第一成分を塗布していない基材の被接着面に第二成分を塗布する工程、及び塗布された基材を貼り合わせて硬化、接着させる工程を含む、2つの基材を貼り合せるための方法に用いるための接着剤である、請求項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項記載の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物からなる、画像表示装置用シール剤。
【請求項11】
請求項10記載の画像表示装置用シール剤を用いて、画像表示部と保護部とが封止された、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物、及びそれを用いた物品、特に画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶、プラズマ、有機EL等のフラットパネル型の画像表示装置が着目されている。フラットパネル型の画像表示装置は、通常、少なくとも一方がガラス等の光透過性をもつ一対の基板の間に、アクティブ素子を構成する半導体層や蛍光体層、あるいは発光層からなる多数の画素をマトリクス状に配置した表示領域(画像表示部)を有する。一般に、この表示領域(画像表示部)と、ガラスやアクリル樹脂のような光学用プラスチックで形成される保護部との周囲は、接着剤で機密に封止されている。
【0003】
このような画像表示装置においては、屋外光や室内照明の反射等による可視性(視認性)の低下を防ぐため、保護部と画像表示部との間に、紫外線硬化型樹脂組成物を介在させた薄型の画像表示装置が製造され、ここで使用される紫外線硬化型樹脂組成物として、紫外線硬化型アクリル樹脂組成物が使用されている(特許文献1)。
【0004】
また、塗布性能や、高温特性等が要求される場合には、紫外線硬化型シリコーン樹脂を用いることも行われている(特許文献2、特許文献3)。特許文献2では、基材上で硬化した樹脂の剥離性と密着性を両立させるために、アクリル官能基を有するオルガノポリシロキサンと両末端にヒドリド基を有するオルガノポリシロキサンの架橋体が用いられている。特許文献3では、低弾性、耐熱性、高い接着性を有するシリコーンエラストマーフィルムの製造のために、(メタ)アクリロイル基を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサン及びオイル状のオルガノポリシロキサンを含む、シリコーンゴム組成物が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282000号公報
【特許文献2】特開2000−044688号公報
【特許文献3】特開2005−023291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した保護部と画像表示部との間に紫外線硬化型樹脂組成物を介在させた薄型の画像表示装置を製造するにあたっては、従来の紫外線硬化型アクリル樹脂組成物は、硬化時の収縮による内部応力によって画像表示部(例えば、液晶表示パネル)に変形が生じ、表示不良の原因となることがある。表示不良の問題は、画像表示装置が高輝度、高精細でかつ大型化してきている近年においてさらに顕在化している。
さらに、従来の紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の硬化物は、使用の際に高温に晒されると、透明性の低下や著しい黄ばみを生じるという問題もあった。さらに、硬化物は、温度変化によって弾性率が激しく変動するため、保護部と画像表示部が剥離しやすいという問題があった。
【0007】
また、従来の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、硬度が高いため満足のいく操作性を備えていないことがあるという問題があった。さらに、従来の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、高温に晒される等した際に、クラックが発生することや、基材との良好な密着性を保つことができなくなることがしばしば起こることが明らかとなった。このため、従来の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、画像表示装置のシール剤に用いる樹脂組成物としては、耐久性、密着性等の面で必ずしも満足される物性を備えていなかった。
【0008】
よって本発明は、低硬度で優れた密着性、硬化性を保ち、かつ硬化性と柔軟性の均整が取りやすく、さらに耐久性に優れ、画像表示装置に適した紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物、及びそれを用いた画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、末端多官能アクリルシリコーンと、末端単官能アクリルシリコーンを併用することにより、上記の課題解決が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明1は、(A)式(I):
【化1】

〔式中、
は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
Lは、5≦L≦10,000であり;
Xは、独立して、式(Ia):
−Q−Si(OR(R3−p (Ia)
(式中、
は、C2〜C4アルキレン基又は酸素原子であり、
は、独立して、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり、
は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C9アルキル基、C1〜C9アルコキシ基又はC6〜C12アリール基であり、
pは、1、2又は3である)で示される基であるが、X1つには、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基が含まれる〕
で示されるオルガノポリシロキサン;
(B)式(II):
【化2】

[式中、
Aは、独立して、式(IIa):
【化3】

(式中、Rは、独立して、水素原子又はメチル基であり、Qは、独立して、C1〜C5アルキレン基である)で示される基であり、
1’は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
は、C2〜C10アルケニル基であり、
aは、0≦a≦100であり、
bは、1≦b≦10,000である]
で示されるオルガノポリシロキサン;及び
(C)として、光反応開始剤
を含む、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明2は、(A)100質量部に対して、(B)が90〜600質量部、(C)が0.1〜20質量部の量で含まれる、本発明1の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明3は、(A)が、式(I)において、Rが、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり;pが、2であり;R、L、Q及びRが、本発明(1)に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである、本発明1又は2の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明4は、(A)が、式(I)において、Rが、メチル基であり;Qが、エチレン基又は酸素原子であり;Rが、独立して、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり;Rが、メチル基であり;pが、2であり;Lが、本発明(1)に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである、本発明3の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明5は、さらに、
(D)ケイ素原子に結合した水素原子を有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び
(E)白金触媒
を含む、本発明1〜4のいずれかの紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明6は、(D)が、環状又は分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである、本発明5の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明7は、(D)が、(A)と(B)の総量100質量部に対して3〜15質量部の量で含まれ、(E)が、0.05〜1.5質量部の量で含まれる、本発明5又は6の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明8は、(B)が、式(II)において、aが、1≦a≦100の整数であり;A、Q、R、R1’及びbが、本発明(1)に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである、本発明1〜7のいずれかの紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明9は、(A)〜(D)を含む第一成分、及び(E)を含む第二成分からなる、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明10は、一方の基材の被接着面に第一成分を塗布する工程、第一成分を塗布していない基材の被接着面に第二成分を塗布する工程、及び塗布された基材を貼り合わせて硬化、接着させる工程を含む、2つの基材を貼り合せるための方法に用いるための接着剤である、本発明9の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に関する。
本発明11は、本発明1〜10のいずれかの紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物からなる画像表示装置用シール剤に関する。
本発明12は、本発明11の画像表示装置用シール剤を用いて、画像表示部と保護部とが封止された画像表示装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物によれば、低硬度で優れた密着性、硬化性を保ち、かつ硬化性と柔軟性の均整が取りやすく、さらに耐久性に優れた紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物が得られ、画像表示装置の製造に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、語「アルキル基」とは、直鎖又は分岐状の、1価の飽和炭化水素基をいう。アルキル基の例としては、非限定的に、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル基等が挙げられる。また、置換基が有する炭素原子数の範囲を示すときは、例えば「C1〜C9アルキル基」等といい、このときは、炭素原子数の範囲が1〜9個であることを示す。
【0013】
本発明において語「アルキレン基」とは、直鎖又は分岐状の、2価の炭化水素基をいう。アルキレン基の例としては、非限定的に、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン基等が挙げられる。
【0014】
本発明において語「アルケニル基」とは、少なくとも1つのC=C二重結合を有する、直鎖又は分岐状の、1価の炭化水素基をいう。アルキレン基の例としては、非限定的に、エチニル(ビニル)、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル基等が挙げられる。
【0015】
本発明において、語「アルコキシ基」とは、酸素原子を介して結合している、直鎖又は分岐状の、1価の炭化水素基をいう。アルコキシ基の例としては、非限定的に、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i−プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ基等が挙げられる。
【0016】
本発明において語「アリール基」とは、単環、二環又は三環式芳香族環からなる、1価の環式芳香族炭化水素基を意味する。アリール基の例としては、非限定的に、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニルなど(これらの部分的に水素化され、かつ芳香族性を有している誘導体も含む)が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物は、成分(A)として、式(I):
【化4】

〔式中、
は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
Lは、5≦L≦10,000であり、
Xは、独立して、式(Ia):
−Q−Si(OR(R3−p (Ia)
(式中、
は、C2〜C4アルキレン基又は酸素原子であり、
は、独立して、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり、
は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C9アルキル基、C1〜C9アルコキシ基又はC6〜C12アリール基であり、
pは、1、2又は3である)で示される基であるが、X1つには、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基が含まれる〕
で示されるオルガノポリシロキサンを含む。成分(A)は、式(I)で示されるように、両分子末端に複数の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンである。
【0018】
式(I)において、Rは、独立して、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、又はC6〜C12アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等)である。Rは、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、非限定的に、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、カルボニル等が挙げられる。合成の容易さ、経済的観点からは、メチル基が好ましく、光学的観点、高屈折率の点からは、フェニル基が好ましい。紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に高い屈折率を与えるためには、フェニル基の数が基Rの全数に対して5%以上であることが好ましく、5〜50%の範囲であることがより好ましい。
【0019】
Lは、5≦L≦10,000の範囲である。他成分への相溶性の点からは、Lは好ましくは3,000以下であり、より好ましくは1,500以下である。また、他成分への相溶性の点から、Lは好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上である。
【0020】
式(I)で示されるオルガノポリシロキサンは、Xとしてオルガノポリシロキサン構造末端のケイ素原子に結合している式(Ia)で示される基を二つ有する。二つの式(Ia)で示される基は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0021】
は、2つのケイ素原子を連結する部位であり、C2〜C4アルキレン基又は酸素原子である。QがC2〜C4アルキレン基である場合は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。また、Qが結合する2つのケイ素原子は、C2〜C4アルキレン基中の同じ炭素原子で結合していてもよい。Qは、(メタ)アクリロイル基の反応性の点から、また得られる硬化物の耐久性、透明性の観点から、好ましくはエチレン基(−(CH−)又は酸素原子である。
【0022】
式(Ia)で示される基には、Rとして、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基が少なくとも一つ含まれる。1つのRが2つ又は3つの(メタ)アクリロイル基を有する場合には、全てアクリロイル基であってもよく、全てメタクリロイル基であってもよく、アクリロイル基とメタクリロイル基を共に有していてもよい。(メタ)アクリロイル基の反応性の点から、Rは、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されていることが好ましい。原料の入手容易性等の観点から、Rは、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C4アルキル基であることが好ましく、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されているメチル基であることがより好ましい。また、硬化性、とりわけ酸素硬化阻害抑制の点から、Rは、2つの(メタ)アクリロイル基で置換されているC1〜C4アルキル基であることが好ましく、2つの(メタ)アクリロイル基で置換されているプロピル基であることがより好ましい。
【0023】
式(Ia)で示される基は、基Rを1つ、2つ又は3つ有する。ただし、式(Ia)で示される基1つにつき、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基が含まれる。式(Ia)で示される基においては、この条件を満たすように、Rの数及びRに含まれる(メタ)アクリロイル基の数が選択される。(メタ)アクリロイル基の反応性の点から、式(Ia)で示される基1つにつき、4つの(メタ)アクリロイル基が含まれていることが好ましい。また、Rは、C1〜C9アルキル基のほか、C3〜C10シクロアルキル基(例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、C6〜C12アリール基、ヘテロアルキル基(例えば、アルコキシアルキル基、ポリエチレングリコール鎖等)が、1〜3個の(メタ)アクリロイル基で置換されているものであってもよい。Rは、加水分解性の高さから、C1〜C9アルキル基であることが好ましく、C1〜C4アルキル基であることがより好ましい。
【0024】
式(Ia)で示される基において、Rは、独立して、非置換又は置換の、C1〜C9アルキル基、C1〜C9アルコキシ基又はC6〜C12アリール基である。式(Ia)で示される基1つあたりのRの数は、0、1つ又は2つであり、Rの数により変動する。式(Ia)で示される基にRが2つ含まれる場合、各々のRは同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。調製の容易さや(メタ)アクリロイル基の反応性を阻害しない点から、Rは、C1〜C4アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0025】
好ましい(A)の態様は、式(I)において、Rが、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり;pが、2であり;R、L、Q及びRが、先に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである。さらに好ましい(A)の態様は、式(I)において、Rが、メチル基であり;Qが、エチレン基又は酸素原子であり;Rが、独立して、2個の(メタ)アクリロイル基で置換されている、C1〜C9アルキル基であり;Rが、メチル基であり;pが、2であり;Lが、先に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサンである。
【0026】
式(I)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンは、粘度が1cP〜100,000cPであることが好ましく、より好ましくは1〜50,000cP、さらに好ましくは1〜30,000cPである。本明細書において、粘度は、回転粘度計(ビスメトロン VDA−L)(芝浦システム株式会社製)を使用して、No.2〜4ローターを用いて、60rpmで、23℃で測定した値とする。
【0027】
(A)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。式(I)で示されるオルガノポリシロキサンの具体的な例としては、非限定的に、以下の式で示されるものが挙げられる。
(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}315-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}439-{Si(C6H5)2-O}4-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}806-{Si(C6H5)2-O}3-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}496-{Si(C6H5)2-O}3-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(mAc Ac-CHO)(Ac Ac-CHO)-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-Ac Ac) (OCH-mAc Ac)
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-Ac Ac)2
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(mAc mAc-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc mAc)2
(mAc Ac-CHO)-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2(OCH-mAc Ac)
(Ac Ac-CHO)-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2(OCH-Ac Ac)
(mAc mAc-CHO)-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2(OCH-mAc mAc)
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-Ac Ac)2
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)(OCH-Ac Ac)2
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(Ac Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(Ac Ac-CHO)(mAc Ac-CHO)-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(Ac Ac-CHO)(mAc Ac-CHO)-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}-{Si(C6H5)2-O}-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)(OCH-Ac Ac)
(ここで、mAc及びAcはそれぞれ、メタクリロキシメチル基:-CH2-O-C(=O)-C(CH3)=CH2及びアクリロキシメチル基:-CH2-O-C(=O)-CH=CH2を表し、0<n≦10,000であり、0≦m≦10,000であり、好ましくは0≦m≦100であり、5≦n+m≦10,000である。)
【0028】
本発明の組成物は、成分(B)として、式(II):
【化5】

[式中、
Aは、独立して、式(IIa):
【化6】

(式中、Rは、独立して、水素原子又はメチル基であり、Qは、独立して、C1〜C5アルキレン基である)で示される基であり、
1’は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基であり、
は、C2〜C10アルケニル基であり、
aは、0≦a≦100であり、
bは、1≦b≦10,000である]
で示されるオルガノポリシロキサン(ここで、a又はbで区切られるポリシロキサン単位は、ブロックコポリマーの構造をとっても、ランダムコポリマーの構造をとってもよい)を含む。成分(B)は、式(II)で示されるように、両分子末端に一つの(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンである。
【0029】
式(II)におけるR1’は、独立して、非置換又は置換の、C1〜C6アルキル基又はC6〜C12アリール基である。具体的な例、置換基の例及び好ましいR1’の態様は、式(I)で示される化合物中、Rについて記載したものと同様である。
【0030】
式(II)で示されるオルガノポリシロキサンは、Aとして分子末端のケイ素原子に結合している式(IIa)で示される基を二つ有する。二つの式(IIa)で示される基は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0031】
は、水素原子又はメチル基であるが、合成上の容易さ、貯蔵安定性の点から、メチル基が好ましい。
【0032】
は、C1〜C5アルキレン基であり、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。また、Qが結合するケイ素及び酸素原子には、C1〜C5アルキレン基中の同じ炭素原子で結合していてもよい。Qは、(メタ)アクリル官能基の反応性の点、得られる硬化物の耐久性、透明性の観点から、より好ましくはエチレン基(−(CH−)である。
【0033】
式(II)で示されるオルガノポリシロキサンのケイ素骨格には、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物に高屈折率等の光学的物性を持たせることを目的として、場合により、Rとして、C2〜C10アルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基等)が含まれていてもよい。Rがケイ素骨格に含まれる場合、光学的観点、高屈折率を得る点から、Rはビニル基であることが好ましい。
【0034】
式(II)におけるaの値は、0〜100であり、より好ましくは0〜50であり、さらに好ましくは0〜20である。
式(II)におけるbの値は、1〜10,000であり、より好ましくは1〜5,000であり、さらに好ましくは1〜3,000である。
【0035】
式(II)において、aが、1≦a≦100であり;A、Q、R、R、R及びbが、先に定義されたとおりであるオルガノポリシロキサン、すなわち、ポリシロキサン骨格中にC2〜C10アルケニル基を少なくとも一つ有するオルガノポリシロキサンは、(B)の一態様である。
【0036】
式(II)で示されるポリオルガノシロキサンは、粘度が0.1cP〜100,000cPであることが好ましく、より好ましくは1〜50,000cP、さらに好ましくは1〜30,000cPである。粘度の測定については、先に式(I)のポリオルガノシロキサンについて記載したとおりである。
【0037】
(B)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。式(II)で示されるオルガノポリシロキサンの具体的な例としては、非限定的に、以下の式で示されるものが挙げられる。
mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O]400-Si(CH3)2(CH2)2mAc
mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O]800-Si(CH3)2(CH2)2mAc
mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[SiCH3(-CH=CH2)-O]2-[Si(CH3)2-O]550-Si(CH3)2(CH2)2mAc
mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[SiCH3(-CH=CH2)-O]4-[Si(CH3)2-O]700-Si(CH3)2(CH2)2mAc
【0038】
本発明の組成物は、(C)光反応開始剤を含む。(C)は、光を受けて励起し、(メタ)アクリロキシ基を含有するシロキサンに励起エネルギーを与えて紫外線照射による硬化反応を開始させるものである。
【0039】
成分(C)は、反応性の観点から、芳香族炭化水素、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステル、ベンゾイン及びベンゾインエーテル並びにその誘導体、キサントン及びその誘導体、ジスフィルド化合物、キノン化合物、ハロゲン化炭化水素及びアミン類、有機過酸化物が挙げられる。シリコーンとの相溶性、安定性の観点から、置換又は非置換のベンゾイル基を含有する化合物又は有機過酸化物がより好ましい。
【0040】
成分(C)としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651:BASF社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR 1173:BASF社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE 184:BASF社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959:BASF社製)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE 127:BASF社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907:BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369:BASF社製)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(IRGACURE 379:BASF社製);2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド(LUCIRIN TPO:BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド(IRGACURE 819:BASF社製);1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE 01:BASF社製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(IRGACURE OXE 02:BASF社製);オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物(IRGACURE 754:BASF社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(DAROCUR MBF:BASF社製)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート(DAROCUR EDB:BASF社製)、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(DAROCUR EHA:BASF社製)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキシド(CGI 403:BASF社製)、ベンゾイルペルオキシド、クメンペルオキシド等が挙げられる。
【0041】
相溶性、光反応性の点から、アセトフェノン、プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(IRGACURE 651:BASF社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR 1173:BASF社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE 184:BASF社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(IRGACURE 907:BASF社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(IRGACURE 369:BASF社製)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド(LUCIRIN TPO:BASF社製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド(IRGACURE 819:BASF社製)が好ましい。
【0042】
成分(C)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の組成物は、(A)100質量部に対して、(B)を90〜600質量部、(C)を0.1〜20質量部含むことができる。(B)の量は、硬化性及び得られる硬化物の特性から、(A)100質量部に対して95質量部以上であることが好ましく、150質量部以上であることがより好ましく、また、(A)100質量部に対して550質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましい。(C)の量は、硬化性及び硬化後の光学特性から、(A)100質量部に対して0.2質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましく、また、(A)100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明の組成物は、さらに、(D)としてケイ素原子に結合した水素原子を有する、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として機能するものである。硬化物を網状化するために、架橋反応に関与するケイ素原子に結合した水素原子を、平均で2個以上有しているものであれば、特に限定されない。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、代表的には、一般式(III):
(R(RSiO(4−x−y)/2 (III)
(式中、
は、水素原子であり、
は、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル)又はフェニル基であり;
xは、1又は2であり;
yは、0〜2の整数であり、ただし、x+yは1〜3である)
で示される単位を分子中に2個以上有する。
【0045】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおけるシロキサン骨格は、環状、分岐状、直鎖状のものが挙げられるが、好ましくは、環状又は分岐状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0046】
成分(D)は、23℃における粘度が1〜10,000cPであることが好ましく、1〜1,000cPであることがより好ましく、1〜200cPであることがさらに好ましく、1〜50cPであることが特に好ましい。
【0047】
成分(D)が環状の場合、(d1)RHSiO1/2単位(式中、Rは水素原子又はC1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル)である)及びSiO4/2単位からなり、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。(d1)は、RHSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなり、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する、環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(d1)における水素原子は、一分子中、3〜100個であることが好ましく、3〜50個であるのがより好ましい。
【0048】
(d1)としては、RHSiO1/2単位とSiO4/2単位の比率が、SiO4/2単位1モルに対してRHSiO1/2単位1.5〜2.2モルであることが好ましく、1.8〜2.1モルであることがさらに好ましい。典型的には、[RHSiO1/2[SiO4/2又は[RHSiO1/210[SiO4/2のように、3〜5個のSiO4/2単位が環状シロキサン骨格を形成し、各SiO4/2単位に2個のRHSiO1/2単位が結合しているものが好ましく、特に好ましくは、各SiO4/2単位に2個の(CHHSiO1/2単位が結合しているものである。
【0049】
(D)が直鎖状の場合、両末端が、それぞれ独立して、RSiO1/2単位で閉塞され、中間単位がRSiO2/2単位(式中、Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルであり、好ましくはメチルである)又はフェニル基であるが、ただし、Rのうち、少なくとも2つは水素原子である)からなる、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ケイ素原子に結合する水素原子は、末端に存在していても、中間単位に存在していてもよい。
【0050】
例えば、(d2)両末端がRSiO1/2単位で閉塞され、中間単位がRSiO2/2単位及びRSiO2/2単位(式中、Rは、水素原子であり、Rは、独立して、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル)又はフェニル基である)からなる、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
【0051】
成分(D)は、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよく、例えば、RHSiO1/2単位(式中、Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル)又はフェニル基を表す)及びSiO4/2単位からなり、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するアルキルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。また、RSiO1/2単位、RSiO単位及びRSiO3/2単位(式中、Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、好ましくはメチル)又はフェニル基を表す)からなり、一分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するアルキルハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0052】
成分(D)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。環状、分岐状、直鎖状のものを2種類以上混合して用いてもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体的な例としては、非限定的に、以下の平均式で示されるものが挙げられる。
[H(CH3)2SiO1/2]8[SiO4/2]4
HSi(CH3)2O[Si(CH3)2-O]n=20-Si(CH3)2H
【0053】
本発明の組成物に成分(D)を加える場合は、架橋剤として作用する観点から、成分(D)中のケイ素原子に直接結合した水素原子(Si−H)の数と、成分(A)及び(B)中のC=C二重結合の数との関係により、配合量を調節することができる。例えば、Si−Hの数とC=C二重結合の数の比SiH/C=C−が、0.2〜2、好ましくは0.5〜10の範囲になるように、成分(D)の量を調節することができる。
【0054】
本発明の組成物は、硬化反応を光照射以外の手段により促進させる点から、(D)を含む場合にさらに(E)白金触媒を含むことができる。白金触媒には、慣用の白金触媒を用いることができる。白金触媒の例としては、非限定的に、塩化白金酸を1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとモル比1:2で加熱して得られた錯体等が挙げられる。
【0055】
成分(E)は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0056】
成分(E)は、触媒として慣用されている量を用いることができるが、例えば、組成物中に白金換算量で白金系金属原子として、0.05〜1,000ppmの濃度で含むことができる。十分な触媒活性を達成する点から、0.10〜500ppmの濃度であることが好ましく、より好ましくは0.15〜200ppmの濃度である。(E)の量を0.05ppm以上とすることで、十分な速度で硬化反応を行うことができる。(E)の量を1,000ppm以下とすることで、硬化物の変色を抑え、透明性の低下を抑制することができる。(E)の量は、加熱又は室温等の硬化条件に合わせて、上記の範囲内で適宜調整される。
【0057】
本発明の組成物に成分(D)及び(E)を用いることにより、2つの手段により硬化可能な、二元硬化性を有する樹脂組成物が得られる。これにより、本発明の組成物はまた、光照射時における陰影部においても硬化を行うことができるという利点を有する。
【0058】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シランカップリング剤、重合禁止剤、酸化防止剤、耐光性安定剤である紫外線吸収剤、光安定化剤、反応抑制剤等の添加剤を配合することができる。
【0059】
シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリエトキシシリルプロピルジアリルイソシアヌレート、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アリルイソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0060】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0061】
酸化防止剤は、組成物の硬化物の酸化を防止して、耐候性を改善するために使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合体、[デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(70%)]−ポリプロピレン(30%)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオアミド)、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、3,3′,3″,5,5′,5″−ヘキサン−tert−ブチル−4−a,a′,a″−(メシチレン−2,4,6−トリル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記酸化防止剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0062】
光安定剤は、硬化物の光酸化劣化を防止するために使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。耐光性安定剤である紫外線吸収剤は、光劣化を防止して、耐候性を改善するために使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記紫外線吸収剤は単独でも、2種以上を併用してもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン系が好ましい。中でも、第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤を用いることが、組成物の保存安定性改良のために好ましい。第3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定剤としては、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB119FL(以上いずれもBASF社製);MARK LA−57,LA−62,LA−67,LA−63(以上いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−765,LS−292,LS−2626,LS−1114,LS−744(以上いずれも三共株式会社製)等の光安定剤が挙げられる。
【0063】
より長いポットライフを得るために、反応抑制剤の添加により、触媒の活性を抑制することができる。公知の白金族金属用の反応抑制剤として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、1−エチニル−2−シクロヘキサノールなどのアセチレンアルコールが挙げられる。
【0064】
本発明の組成物は、所望のE硬度を得る点から、無機充填剤を含まないことが好ましい。
【0065】
本発明の組成物は、画像表示部と保護部との間に塗工される際の作業性の観点から、23℃における粘度が、10〜100000cPであることが好ましく、50〜70000cPであることがより好ましく、100〜50000cPであることがさらに好ましい。
【0066】
本発明の組成物は、(A)〜(C)及び添加剤を配合することにより、又は(A)〜(E)及び添加剤を配合することにより、得ることができる。具体的には、例えば、クリーンルームのような空気中の異物管理をされた室内にて、減圧脱泡装置を装備した5Lの万能混合攪拌機に(A)、(B)、組成物中に含まれる場合には(D)及び(E)成分を入れ、室温(10〜30℃)、低速にて30分間で均一に混合し、その後、イエロールームのような紫外線を除去した室内にて、(C)成分、重合禁止剤等の添加剤を加え、氷水冷却下(10℃以下)、低速にて30分間、冷却減圧にて均一に混合し、脱泡した後、10μm以下の細かさの細孔を有するメンブレンフィルター等を用いて濾過することにより調製することができる。
【0067】
本発明の組成物は、紫外線を照射することによって、硬化させることができる。成分(C)の反応可能な範囲の波長領域のランプとしては、例えば、ウシオ電機株式会社製の高圧水銀ランプ(UV−7000)、メタルハライドランプ(MHL−250、MHL−450、MHL−150、MHL−70)、韓国:JM tech社製のメタルハライドランプ(JM−MTL 2KW)、三菱電機株式会社製の紫外線照射灯(OSBL360)、 日本電池株式会社製の紫外線照射機(UD−20−2)、株式会社東芝の製蛍光ランプ(FL−20BLB))、Fusion社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Dバルブ、Qバルブ、Mバルブ等が挙げられる。照射量は、100〜12000mJ/cmが好ましく、より好ましくは300〜8000mJ/cmであり、さらに好ましくは500〜6000mJ/cmである。
【0068】
本発明の組成物は、(D)及び(E)を含む場合には、熱を加えることによって硬化させることができる。熱による硬化反応に用いることができる機器としては、例えば、恒温槽等の当業者に公知の装置が挙げられる。加熱条件は、組成物が適用される部材の耐熱温度に合わせて適宜調整することができ、硬化時間を決めることができる。例えば、40〜100℃の熱を、1分〜5時間の範囲で加えることができる。加熱温度は、操作性の観点から、50〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることがより好ましい。加熱時間は、硬化工程の簡便さの観点から、5分〜3時間であることが好ましく、10分〜2時間であることがより好ましい。
【0069】
本発明の組成物は、第一成分及び第二成分からなり、第一成分は、成分(A)〜(D)及び添加剤を含み、第二成分が、成分(E)を含む構成としてもよい。成分(A)〜(D)を含む第一成分、及び成分(E)を含む第二成分からなる、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物もまた、本発明の一態様である。本発明の一態様において、第一成分と第二成分に含まれる各成分は、貼り合せ時にのみ接触し、架橋反応が進行するようにすることもできる。
【0070】
本発明の一態様では、本発明の組成物は、前記第一成分と第二成分が接触した後、室温(例えば、20〜25℃)で硬化して、接着力を発揮する。すなわち、本発明の組成物は、第一成分及び第二成分を、それぞれ異なる容器中でそのまま貯蔵し、使用時にこれらを接触させることによってはじめて硬化させることもできる。この場合には、第一成分と第二成分とが接触した後、例えば0.1〜30分で硬化反応が進み、接着力を発揮することができる。硬化反応の所要時間は、0.1〜20分であることが好ましく、0.1〜10分であることがより好ましい。また、上記の硬化の後に、場合により50〜80℃の温度で加熱を行って、硬化をより促進させて、接着力をより高めてもよい。加熱時間は、適宜設定することができるが、例えば、0.1〜3時間とすることができる。
【0071】
本発明の一態様において、本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、二つの基材を貼り合せるための接着剤であって、一方の基材の被接着面に第一成分を塗布する工程、第一成分を塗布していない基材の被接着面に第二成分を塗布する工程、及び塗布された基材を貼り合わせて硬化、接着させる工程を含む、2つの基材を貼り合せるための方法のための接着剤として用いることができる。
本発明の第一成分及び第二成分からなる二剤型の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を用いた、二つの基材を含む接着体の製造方法は、一方の基材の被接着面に第一成分を塗布する工程、第一成分を塗布していない基材の被接着面に第二成分を塗布する工程、及び塗布された基材を貼り合わせて硬化、接着させる工程を含む。第一成分及び第二成分からなる二剤型の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を用いた、二つの基材を含む接着体の製造方法は、基材同士を完全に接着させる前に、仮固定させる工程を含んでいてもよい。
第一成分及び第二成分の塗布厚みは、特に限定されないが、それぞれ1〜1,000μmであることが好ましく、仮固定時間の速さの点から、1〜500μmであることがより好ましい。作業性の観点からは、第一成分の塗布厚みは1〜50μmであることが好ましく、2〜30μmであることがより好ましい。同様に、第二成分の塗布厚みは、10〜300μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。
第一成分及び第二成分を複数形成する場合は、上記の塗布厚みは各部分の層厚みである。例えば、(D)を含む層、(B)及び(A)を含む層、並びに(D)を含む層の3層をこの順で形成する場合、2つの(D)を含む層の塗布厚みは、互いに独立に、1〜50μmであることが好ましく、2〜30μmであることがより好ましく、(B)及び(A)を含む層の塗布厚みは、1〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましい。
第一成分の塗布厚みと第二成分の塗布厚みとの比は、特に限定されないが、1:1,000〜1,000:1であることが好ましく、1:500〜500:1であることがより好ましく、1:200〜200:1であることがさらに好ましく、1:2〜1:100であることが特に好ましく、1:2〜1:50であることがより特に好ましい。
第一成分及び第二成分の塗布厚みの合計は、透明性の点から、2〜2000μmであることが好ましく、2〜1000μmであることがより好ましく、10〜500μmであることが特に好ましい。
【0072】
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物は、以下のような好適な物性を有する。
〔硬化後の可視光透過率〕
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、硬化厚み180μmにおける硬化後の可視光透過率を、長期にわたって95%以上に保つことができるため、視認性の点から好ましい。可視光透過率は、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは98%以上である。可視透過率の点からは、(C)の使用量を抑制することが好ましい。
【0073】
〔硬化後のE硬度〕
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、光硬化後のE硬度を1〜50の範囲で制御することができるため、画像表示装置に適用した場合に、容易に、外部からの応力を適度に緩和することができ、かつ高温高湿下でも水分の浸透を抑止して、視認性を確保することができる点で好ましい。加えて、熱による硬化を行うこともでき、陰影部においても適度な硬度を有する硬化物をもたらすことができる。光及び熱による硬化後のE硬度は、好ましくは1〜60の範囲である。
【0074】
〔凝集破壊〕
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、様々な素材に対して、高い凝集破壊率をもたらすため、素材との密着性が高く、様々な素材への接着用途に幅広く利用することができる。
【0075】
〔クラック〕
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、急激な温度変化によってもクラックの発生等を抑えることができるため、画像表示装置等に適用した際に高い耐久性をもたらすことができる。
【0076】
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、画像表示装置用シール剤として用いることができる。本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、画像表示装置において好適に使用することができ、特に、フラットパネル型の画像表示装置の保護部と画像表示部との間に介在させる樹脂として好ましい。
具体的には、光学用プラスチック等で形成される透明な保護部を構成する保護パネル上に、紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物を塗布した後、画像表示部を構成する画像表示パネルを張り合わせ、紫外線照射することができる。保護パネルには、外周縁部に、本発明の組成物の流出を妨げるための段差を設けておいてもよい。
【0077】
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、液状で塗工性に優れ、視認性を低下させず、高輝度及び高コントラストな表示を可能とし、さらに高い耐久性を備えた紫外線硬化型樹脂を提供することができる。本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物は、画像表示パネルが5〜100インチ、より好ましくは7〜80インチ、さらに好ましくは10〜60インチの大画面画像表示装置の製造に好適であり、あるいは、画像表示装置が、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜450μm、さらに好ましくは50〜400μmであるような、超薄型の画像表示装置の製造に好適である。本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物を用いて、画像表示部と保護部とが封止された画像表示装置もまた、本発明の一態様である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。部、%は、他に断りのない限り、質量部、質量%を表す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で調製した各組成物の紫外線による硬化は、ウシオ電機株式会社製高圧水銀灯:UVL-4001Mを用い、120w/cmにて行った。
【0079】
〔物性の評価条件〕
(1)硬化後のE硬度
ウシオ電機株式会社製高圧水銀灯:UVL−4001Mを用い、120w/cmにて所定の紫外線照射により厚さ2mmの試料を作製し、JIS K 6253 Eに準拠し、DUROMETER HARDNESS TYPE E(ASKER製)にて23℃における硬化物のE硬度を測定した。
【0080】
(2)粘度
回転粘度計(ビスメトロン VDA−L)(芝浦システム株式会社製)を使用して、No.4ローターを使用し、30rpm又は60rpmで、23℃における粘度を測定した。
【0081】
(3)熱硬化性
(a)70℃で30分、(b)70℃で60分、又は(c)80℃で30分、組成物に熱を加えた後の硬度を測定し、熱による硬化性を評価した。硬度は(1)と同様にして測定した。
【0082】
(4)凝集破壊率
(4−1)対ガラス
幅25mmの各被着体(ガラス)上に、組成物を厚み0.1mmとなるように、幅25mmで長さ10mm以上塗布し、組成物を重ね幅が10mmとなるように厚さ2mm、幅25mmの強化ガラス板を重ねた後、所定の紫外線エネルギー照射量にて硬化させて、試料を作製した。
試料作成直後、1日後及び3日後の試料について、島津製作所(株)社製オートグラフを用い、測定速度10mm/分の引張り速度で引っ張り、被着体と強化ガラス板を剥離させる剪断接着試験を行なった。
被着体上の紫外線硬化型樹脂組成物の剥離部分の面積Smmを求め、
(100×S)/(10×25)
を計算して凝集破壊率(%)とした。
(4−2)接着性評価
厚み2mm、幅25mmのポリカーボネートに、組成物の厚みが0.1mmとなるように幅25mmで長さ60mm以上塗布し、組成物の重ね幅が10mmとなるように厚さ2mm、幅25mmの強化ガラス板を重ねた後、所定の紫外線エネルギー照射量にて硬化させて、試料を作製した。作成した試料について、剪断接着試験を行なった。
被着体上の紫外線硬化型樹脂組成物の剥離部分の面積Smmを求め、
(100×S)/(10×25)
を計算して凝集破壊率(%)とした。
(4−3)対アクリル
被着体をPMMAに変更して、(4−1)と同様にして、凝集破壊率を求めた。
【0083】
(5)透過率
ウシオ電機株式会社製高圧水銀灯:UVL−4001Mを用い、120w/cmにて所定の紫外線照射により厚さ200μmの試料を作製し、上記分光測式計で測定した
【0084】
(6)高温時の変色(Yellow index)
硬化物を温度85℃、湿度85%RHの高温多湿条件に設定した恒温恒湿層に500時間放置するか、又は温度100℃高温条件に設定した恒温恒湿層に500時間放置した後、分光測式計((株)ミノルタ製CM−3500d)により、温度23℃、湿度50%の状態に戻した後に変色の度合いの指標であるイエローインデックスにて評価を行なった。
【0085】
(7)耐クラック性:ヒートショック下での耐クラック性
組成物の厚みが200μmとなるように、1mm厚のガラス板と1mm厚のPMMA板の間に塗布し、所定の紫外線エネルギー照射量にて硬化させた後、−40℃から85℃までの温度サイクル(各温度30分間保持;300サイクル)にて環境試験を行なった(機器名:エスペック株式会社製TSA−71S−A)。
その後、23℃の状態に戻した後、硬化物及びPMMA、ガラスの状態を光学顕微鏡(10倍)で観察した。
硬化物に、一方向で0.02mm以上のクラック及び/若しくは一方向で0.02mm以上の空気層が生じる、並びに/又はPMMAとガラスのいずれかに一方向で0.02mm以上の損傷がある場合をクラック有りとして、硬化物中のクラックの数を計数した。
【0086】
(8)ブラックマトリックスでの硬化性
7.5cm平方角のガラス板に黒色ビニール及びアルミ箔で周辺部巾2cmの陰影部を作成した試験体を準備した。該試験体に組成物を厚み180μmで塗布し、2000mJの光照射と80℃、30分の熱を加えた際に、陰影部における硬化及び凝集破壊の程度を調べた。硬化の程度は目視で判断し、凝集破壊の程度は(4)にて記載したとおりの方法により調べた。
【0087】
(9)酸素硬化阻害(Air inhibition)
酸素硬化阻害は、(1)E硬度の項と同様の操作にて硬化させた硬化物の表面を観察して評価した。ウシオ電機株式会社製高圧水銀灯:UVL−4001Mを用い、120w/cmにて所定の紫外線照射により厚さ2mmの試料を硬化させる際の表面の硬化状態を観察した。表面が液状になっているか、タックが生じているかを観察し、その程度をno−low−muchの3段階で評価した。
【0088】
実施例及び比較例における各成分は、以下のとおりである。
成分(A):
(A)−1:(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}315-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(A)−2:(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-(CH2)2-Si(CH3)2-O-{Si(CH3)2-O}439-{Si(C6H5)2-O}4-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(A)−3:(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}806-{Si(C6H5)2-O}3-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
(A)−4:(mAc Ac-CHO)2-Si(CH3)-O-{Si(CH3)2-O}496-{Si(C6H5)2-O}3-Si(CH3)(OCH-mAc Ac)2
成分(B):
(B)−1:mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O]400-Si(CH3)2(CH2)2mAc
(B)−2:mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[Si(CH3)2-O]800-Si(CH3)2(CH2)2mAc
(B)−3:mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[SiCH3(-CH=CH2)-O]2-[Si(CH3)2-O]550-Si(CH3)2(CH2)2mAc
(B)−4:mAc(CH2)2Si(CH3)2-O-[SiCH3(-CH=CH2)-O]4-[Si(CH3)2-O]700-Si(CH3)2(CH2)2mAc
成分(C):光反応開始剤
(C)−1:Darocure1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン;BASF社製)
(C)−2:Irgacure651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン;BASF社製)
(C)−3:Irgacure819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド;BASF社製)
成分(D):オルガノハイドロジェンシロキサン
(D)−1:[H(CH3)2SiO1/2]8[SiO4/2]4
(D)−2:HSi(CH3)2O[Si(CH3)2-O]n=20-Si(CH3)2H
成分(E):白金触媒
(E)−1:H2PtCl6・4X{CH2=CH-Si(CH3)2}2-O
(E)−2:H2PtCl6・2X{CH2=CH-Si(CH3)-O}4
添加剤:
反応抑制剤:1−エチニル−2−シクロヘキサノール
重合禁止剤:p−t−ブチルカテコール
【0089】
実施例1:
表1に示す各成分のうち、(C)を除く成分を、5Lの万能混合攪拌機(ダルトン社製)に入れ、室温(23℃)にて30分間で均一に混合した。均一に混合した後、さらに、各(C)成分を加え、氷水冷却下(8℃)にて30分間、冷却減圧にて均一に混合した。得られた組成物を10μmのメンブレンフィルターにて異物等を除去した後、組成物を得た。
【0090】
実施例2〜12、比較例1〜8について、表1に示す配合で、実施例1と同様にして、組成物を調製した。
【0091】
【表1】

C=C−:各組成物100g当たりのC=C二重結合のモル数
SiH:各組成物100g当たりのSi−H結合のモル数
SiH/−C=C:各組成物100g当たりのSi−H結合とC=C二重結合のモル数の比
【0092】
得られた組成物について、各特性を測定した。各特性の測定結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示されているように、(B)成分を含まない比較例1〜5では、硬化物にクラックが生じ、凝集破壊も見られた。(A)成分を含まない比較例6〜8では、クラック、凝集破壊に加え、光照射による硬化性が低く、表面がやや液状になるなど、空気による硬化の阻害も見られた。一方、実施例1〜12では、適度な硬度を有しながらもクラックや凝集破壊は見られず、いずれの評価項目も良好であった。
【0095】
(D)及び(E)成分を含む組成物
実施例13〜22、比較例9、10について、表3に示す配合で、実施例1と同様にして組成物を調製した。各組成物において、(E)成分中の白金の量は、5〜10ppmの範囲である。
【0096】
【表3】
【0097】
得られた組成物について、実施例1〜12、比較例1〜8と同様にして各特性を測定した。各特性の測定結果を表4に示す。
【0098】
【表4】
【0099】
表4に示されているように、(B)成分を含まない比較例9では、硬化物にクラックが生じ、凝集破壊も見られた。(A)成分を含まない比較例10では、クラック、凝集破壊に加え、光照射による硬化性が低く、表面がやや液状になるなど、空気による硬化の阻害も見られた。一方、実施例12〜22では、適度な硬度を有しながらも熱をかけた場合であっても凝集破壊は見られず、クラックも生じないなど、いずれの評価項目も良好であった。
【0100】
実施例23、24
表5に示す各成分のうち、(E)を除く成分を用いて、実施例1と同様にして、組成物を得た(第一成分)。また、成分(E):塩化白金酸を1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとモル比1:2で加熱して得られた錯体を別に調製した(第二成分)。
第二成分をガラス板(7.5cm×7.5cm×1mm厚)に薄く塗布した後、第一成分を厚み180μmで貼り合わせて、貼り合わせ体を得た。得られた貼り合わせ体について、実施例1〜22、比較例1〜10と同様の特性評価を行った。各特性の測定結果を表5に示す。いずれの評価項目も良好であり、触媒を別に用いて接着させる態様においても、本発明の組成物が良好な接着特性を有することが示された。
【0101】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の紫外線硬化型シリコーン樹脂組成物によれば、高温下でも変色や透過率の低下を起こすことなく、クラックを生じない硬化物が得られ、画像表示装置の製造に好適である。