(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接着部が、前記樹脂製カバーにおけるコイル端部との対向面に形成され、両者の隙間を埋める傾斜部であり、この傾斜部に対して前記コイルの端部が接着されている請求項1に記載のリアクトル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の充填剤を使用したリアクトルは、充填材により、コイルを構成する導線間の隙間や、コイルとコア周囲の樹脂製カバーとの隙間を埋めることで、リアクトルへの通電時に、コイルの導線や樹脂製カバーの振動による騒音の発生を防止していた。しかし、充填材を使用しないリアクトルでは、このような効果が得られず、振動や騒音が発生するおそれがあった。
【0007】
通常、リアクトルでは、コイルを外部の電気回路に接続するため、コイル端部の引出部を電気回路側の端子に溶接などの手段で接続する。しかし、充填材を使用しない構造のリアクトルでは、コイルの振動によりコイルと端子の接続部に応力が加わり、長期間の使用に破損する可能性もあった。
【0008】
本発明の目的は、コイルを構成する導線同士を密着させてコイルを一体化すると共に、コイルと樹脂製のカバーとを接着することにより、振動や騒音の発生が少なく、コイルと電気回路との接続部にも応力が加わることがないリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリアクトルは、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)コアと、その周囲に設けられた樹脂製カバーと、前記樹脂製カバーの外側において前記コアの周囲に配置されたコイルを備える。
(2)前記コイルは、表面に自己融着層が形成された導線を備え、前記自己融着層によって隣接する導線同士が接着されている。
(3)前記樹脂製カバーは、その一部に設けられて前記コイルの端部に対向する接着部を備え、前記接着部において前記コイルの端部が前記樹脂製カバーに対して接着剤により接着されている。
(4)前記樹脂製カバー及び前記コイルの外周には、両者を固定する充填材が存在することなく、前記コイルがリアクトルを冷却する冷媒と接触可能になっている。
【0010】
本発明のリアクトルにおいて、次のような構成を有することが好ましい。
(1)前記接着部が、前記樹脂製カバーに設けられた壁部であり、この壁部に対して、前記コイルの端部が接着されている。
(
2)前記壁部には、接着した導線の一部が露出する開口部が形成されている。
(
3)前記接着部が、前記樹脂製カバーの表面に形成された平坦面であり、この平坦面に対して、前記コイルの端部が接着されている。
(
4)前記接着部が、前記樹脂製カバーにおけるコイル端部との対向面に形成され、両者の隙間を埋める傾斜部であり、この傾斜部に対して前記コイルの端部が接着されている。
(
5)前記導線が平角線であり、平角線の平面が前記樹脂製カバーの接着面に接着されている。
(
6)前記コイルの端部と前記樹脂製カバーの接着が、コイルの自己融着層により接着されている。
(
7)前記樹脂製カバーの内部に、前
記コアの少なくとも一部が埋め込まれている。
【0011】
本発明において、コイルの端部とは、導線の最終ターン部及び/または導線の引き出し部を言う。また、図示の実施例のように、1本の導線を巻回して複数のコイルを形成した場合には、各コイルの端部に露出している導線のターン部分も、コイルの端部に含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、コイル全体が自己融着層によって一体化されると共に、コイルの端部が樹脂製カバーに対して自己融着層によって固定されることから、コイルの振動や騒音が防止され、引き出し部と端子との接続部に加わる応力が減少し、信頼性の高いリアクトルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って具体的に説明する。
【0015】
[1.第1実施形態]
(1)構成
本実施形態のリアクトルは、環状コア1と、その周囲を覆う第1と第2の樹脂製カバー21,22と、コア1の脚部に装着されたコイル3とから構成されている。環状コア1は、純鉄、センダスト、Fe−Si合金などの圧粉磁心、フェライト磁心、又は積層鋼板などの磁性体から構成される。
【0016】
環状コア1は、左右の脚部を構成する2つの厚いI字形コア11a,11bと、その両側に接着された4つの薄いI字形コア12a,13a,12b,13b、及びヨーク部を構成する2つのブロック状コア14c,14dを四角形に接着して成る。本実施形態では、2つの厚いI字形コア11a,11bと、その両側に接着された4つの薄いI字形コア12a,13a,12b,13bの接着部分には、磁気ギャップを形成するスペーサ15a,15bが挿入されているが、このスペーサ15a,15bは磁気ギャップの有無に応じて適宜使用するものであり、スペーサを設けない環状コアについても、本発明は適用可能である。
【0017】
これらコア同士またはコアとスペーサの接着には、例えばエポキシ系接着剤を使用することが好ましい。特に、冷媒として車両用の冷却オイル、例えばトランスミッションの潤滑油であるATF (Automatic Transmission Fluid)を使用した場合には、エポキシ系接着剤が耐油性能の点から好ましいが、その他の冷媒を使用した場合などは他の接着剤、例えば、シリコーン系、アクリル系、ポリウレタン系の接着剤、又はこれらの二種以上の混合接着剤の使用も可能である。
【0018】
コイル3は、環状コア1の左右の脚部11a,11bの外周に装着される2つの巻回部3a,3bを有する。2つの巻回部3a,3bは、その一方の端部に形成された接続部3cにより接続されている。2つの巻回部3a,3bの最終ターン部は、本実施形態では、コイルの同一方向側に位置し、その最終ターン部から外部の電気回路に接続するための引き出し部3d,3eが引き出されている。この場合、第1の引き出し部3dは、コイルの軸方向と同方向に、第2の引き出し部3eはコイルの軸方向と直角の方向に引き出されている。
【0019】
コイル3としては、電線の周囲に絶縁被膜が形成された導線の表面に半硬化状態の熱硬化性樹脂などの自己融着層を形成した「自己融着型コイル」を使用する。「自己融着コイル」とは、他に接着剤やモールド樹脂を必要とすることなく、導線を加熱することで導線自体の表面に形成された樹脂を溶融し、隣接する導線と接着させることで、導線が一体化されたものである。自己融着層を形成する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂の一部をフェノール樹脂に変成した樹脂等が使用できるが、本実施形態では、エポキシ樹脂系の主剤と硬化剤とからなる融着皮膜が半硬化の状態となっているものを使用する。
【0020】
導線は特に限定されるものではないが、本実施形態では、平角線から成るエッジワイズコイルを使用する。エッジワイズコイルは、平角線の短辺を内径面として縦に巻いたコイルで、丸線を巻回したコイルに比較して、断面が角のため巻線断面積が大きく占積率が高い。また、丸線のように多層に巻回することがなく、1層でよいため巻線の内外温度差が小さく、放熱性能に優れ温度上昇が少ない。このような利点から高効率リアクトル用のコイルとして適している。
【0021】
このような自己融着型エッジワイズコイルは、平角線を巻回したコイルを含浸や樹脂モールドして一体化していた従来技術に比較して、白己融着層を有する平角線を用いることで、含浸時の工程の複雑さや、金型成型時に導線の絶縁被覆が傷つく恐れを排除することができる。また、自己融着型エッジワイズコイルは、直接冷媒に接触させることができるため、導線の周囲に樹脂を含侵したものや樹脂モールドするものと比べ冷却効果が高いという利点もある。
【0022】
第1と第2の樹脂製カバー21,22は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂のように、自己融着層の接着温度よりも高い耐熱性の材料から成る。その他にも、耐熱性があれば、飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等を用いることが可能である。
【0023】
第1及び第2の樹脂製カバー21,22は、それぞれその内部にブロック状コア14c,14dを埋設した被覆部2cと、この被覆部2cと一対に形成された左右のボビン2a,2bとを有する。第1の樹脂製カバー21は、同様にヨーク部及左右の脚部を有する第2の樹脂製カバー22と環状に組み合わされ、そのボビン2a,2bの外周にコイル3の巻回部3a,3bが装着され、リアクトルを構成する。
【0024】
左右のボビン2a,2bは筒状をなし、第1と第2の樹脂製カバー21,22が組み合わされた状態において両者の左右のボビン2a,2bの内部に、環状コア1の脚部を構成する厚いI字形コア11a,11bと薄いI字形コア12a,13a,12b,13b及びスペーサ15a,15bが挿入される。前記の様に、厚いI字形コア11a,11bと薄いI字形コア12a,13a,12b,13b及びスペーサ15a,15bは、接着剤によって接着されている。
【0025】
第1の樹脂製カバー21の上部には平板状の壁部2d,2eが、コイルの巻回部3a,3bの端部に露出している導線の最終ターン部と対向するように、コイルの軸方向と直交する方向に形成されている。壁部2d,2eには、導線の最終ターン部が接着剤によって接着されている。この場合、本実施形態では、導線は平角線によって構成されているため、平角線の平面が第1の樹脂製カバー21の接着面に重ね合わされた状態で接着されている。
【0026】
壁部2d,2eと導線の最終ターン部を接着する接着剤としては、コアとスペーサを接着するものと同じエポキシ系の接着剤を使用することができるが、他の接着剤を使用しても構わない。また、本発明における接着剤には自己融着層も含まれ、導線の表面を覆う自己融着層をそのまま利用して、壁部2d,2eと導線の最終ターン部を導線に設けられた自己融着層によって接着することも可能である。
【0027】
壁部2d,2eには、接着した導線の一部が、導線との接着面とは反対側の面から露出する開口部2fが形成されている。すなわち、本実施形態では、樹脂製カバー及びコイルの外周には、両者を固定する充填材が存在することなく、コイルがリアクトルを冷却する冷媒と接触可能になっているが、この冷媒が、開口部2fを通じて、導線の表面に接触可能である。壁部2d,2eと樹脂製カバー21の表面との間には、開口部2fを避けて、補強用のリブ2gが設けられている。
【0028】
(2)製造方法
本実施形態のリアクトルは、次のように製造する。
まず、表面に自己融着層を形成した平角線をエッジワイズ巻きして、左右の巻回部3a,3bと接続部3cを有するコイル3を形成する。この場合、平角線の巻回作業は常温で行い、表面の自己融着層が溶融せず、隣接する平角線が接着しないようにする。
【0029】
コイル3が形成された後は、その巻回部3a,3b内に環状コア1とボビン2a,2bを挿入するようにして、コイル3と第1と第2の樹脂製カバー21,22を組み合わせる。すなわち、第1と第2の樹脂製カバー21,22を成型する際に、その内部にブロック状コア14c,14dをモールド成型することで、環状コア1のヨーク部を埋設しておく。
【0030】
この状態で、いずれか一方の樹脂製カバー(例えば、第2の樹脂製カバー22)のボビン2a,2bの部分にスペーサ15a,15bとI字形コア11a,11b,13a,13bを嵌め込んで接着した後、このボビン2a,2bの外側にコイル3の2つの巻回部3a,3bを装着する。更に、第1の樹脂製カバー21のボビン2a,2bを巻回部3a,3bの内側に挿入して、第1の樹脂製カバー21と第2の樹脂製カバー22とを組み合わせると同時に、第1の樹脂製カバー21の内側に埋め込んだI字形コア14cをI字形コア12a,12bと接着する。また、I字形コア12a,12bをスペーサ15a,15bを介してI字形コア11a,11bと接着する。
【0031】
この場合、各コアとスペーサの接着は、例えば、熱硬化樹脂から成る接着剤を塗布しておき、コイルの導線を接着する自己融着層の接着剤と同時に加熱硬化させる。なお、接着剤の硬化と自己融着層の硬化は別々に行っても良く、自己融着層よりも先に各コアとスペーサの接着剤を硬化させても良い。
【0032】
その際、壁部2d,2eに接着剤を塗布しておき、コイル3の端部と樹脂製カバー21を接着する。その後、巻回部3a,3bの端面と壁部2d,2eとを当接させた状態で140〜200℃の加熱雰囲気中において、コイル3と樹脂製カバー2をその軸方向から加圧する。この場合、金型などの加圧治具をコイル側成型品2に当接させ、コイル3と加圧治具とが接触しないようにする。なお、壁部2d,2eに塗布した接着剤の硬化は、各コアとスペーサの接着剤の硬化や自己融着層の接着剤と同時に加熱硬化させてもよく、別々に行っても良い。
【0033】
加熱雰囲気中でコイル3を加圧すると、自己融着層を構成する樹脂が溶融し、溶融した樹脂によって隣接する平角線同士が接着され、コイル全体が一体化する。同時に、壁部2d,2eに塗布した接着剤が硬化することによりコイル3の端部は第1の樹脂製カバー21の壁部2d,2eに固定される。なお、接着剤として、自己融着層を利用した場合には、コイル3の自己融着層が溶融することにより、コイル3の端部は第1の樹脂製カバー21の壁部2d,2eに固定される。
【0034】
なお、図示していないが、コイル3の反対側に装着する第2の樹脂製カバー22も、同時にコイル3に組み合わせて、加熱・加圧して一体化することもできる。もちろん、第2の樹脂製カバー22を、図示の第1の樹脂製カバー21とコイル3の加熱・加圧処理とは別工程で行っても良い。
【0035】
本実施形態では、樹脂製カバー21,22はPPS樹脂によって構成されており、このPPS樹脂は融点が約280℃と高い耐熱性を示すことから、自己融着層の溶融温度では影響を受けることがない。そのため、樹脂製カバー21,22と当接した加圧治具は、コイル3の白己融着層の溶融にもかかわらず、加圧後において、樹脂製カバー21,22の表面から容易に離れることができる。できる。
【0036】
(3)作用・効果
本実施形態によれば、次のような作用効果が発揮される。
【0037】
(a)コイル3の隣接する導線同士が自己融着機能を有する接着剤層によって固着され、コイル3全体がひとつの塊となっているので、コイル3の共振点(周波数)が高くなり、コイル3自体の振動が抑制されると同時に、コイル3の端部が樹脂製カバー21に設けた壁部2d,2eに接着剤で接着して固定されているので、コイル3と樹脂製カバー21との固定がより確実になり、コイル3の振動が抑制される。その結果、リアクトルの通電時における振動や騒音の発生が効果的に防止されると共に、コイル3の引き出し部3d,3eの振動も抑制されることから、コイル3と端子との接続部に加わる応力が減少し、長期間の使用においても接続部の破損などの恐れがなくなる。
【0038】
(b)本実施形態では、コイル3の導線として平角線を使用し、樹脂製カバー21側にはこの平角線の平面と重なり合う壁部2d,2eを設けたことから、導線と樹脂製カバー21との広い接着面積を確保することが可能になり、コイル3と樹脂製カバー21とを強固に接着することができる。
【0039】
(c)コイル3と樹脂製カバー21との接着を、導線の表面に形成された自己融着層を利用して行った場合には、別途接着剤を用意することがなく、接着作業が簡単である。しかも、コイル3の巻回部分の接着と、樹脂製カバー21とコイル3端部の接着を、コイル3を樹脂製カバー21の外側に装着した状態でコイル3を樹脂製カバー21の壁部2d,2e側に押し付けることで同時に行うこともでき、両者の接着作業をより簡単に実施できる利点もある。
【0040】
(d)平角線を巻回して成るエッジワイズコイル3では、巻き始めまたは巻き終わりの導線と、それに重なる次の巻回の導線との間に段差が生じることから、コイル3の端面は平坦にはならない。そのため、樹脂製カバー21とコイル3端部を接着する場合、両者の接触面積を十分に取ることができず、接着力が弱くなる恐れがある。これに対して、本実施形態では、樹脂製カバー21に導線と接着する壁部2d,2eを設けることで、コイル3端部と樹脂製カバー21の接着面積を大きくして、十分な強度を確保することができる。
【0041】
(e)本実施形態では、コイル3やその引き出し部の振動が抑制されることから、コイル3や樹脂製カバー21を充填材によって固定する必要がなくなり、コイル3を露出しても振動抑制や耐久性が確保されることから、冷却オイルなどの冷媒を直接コイル3と接触させることが可能になり、リアクトルの冷却効率を向上させることができる。
【0042】
(f)本実施形態では、壁部2d,2eに開口部2fを形成することで、導線の接着面とは反対側の面でも冷媒と接触することができるようにしたので、導線の冷却をより効果的に行うことができる。
【0043】
[2.第2実施形態]
本実施形態は、
図5に示すように、コイル3を構成する導線の最終ターンと共に導線の引き出し部3d,3eの位置に合わせて、樹脂製カバー21,22に設ける壁部2d,2eを延長したものである。このようにすると、導線の最終ターンだけでなく、コイル3から突出した引き出し部3d,3eについても壁部2d,2eに接着することか可能になり、導線の固定がより強固となる。その結果、引き出し部3d,3eと端子との接続部が離れていても、引き出し部の振動を効果的に抑制できる。
このように、本発明においては、引き出し部3d,3eの方向や端子との接続部の位置に応じて、接着部となる壁部2d,2eの位置や形状を変更できる。
【0044】
[3.第3実施形態]
本実施形態は、
図6に示すように、接着部として、樹脂製カバー21の上面の壁部2d,2eに加えて、リアクトルの側面に導線の引き出し部3d,3eを支持する壁部2hを設けたものである。すなわち、導線の引き出し部3d,3eの位置は、外部の電気回路と接続する端子の位置に合わせて種々の態様が考えられるが、それに応じて、本実施形態のように壁部2hの位置も適宜変更することが可能である。
【0045】
[4.第4実施形態]
本実施形態は、
図7に示すように、樹脂製カバー21の上面に、導線の引き出し部3d,3eを重ね合わせる平坦面2i,2jを形成し、その平坦面2i,2jを引き出し部3d,3eとの接着部としたものである。この場合、平坦面2i,2jは、引き出し部3d,3eの延長方向に沿って設けるものであり、コイルの軸方向に沿って設けてもよいし、コイルの軸方向と直角の方向に設けてもよい。また、図示のように、平坦面2i,2jを、樹脂製カバー21の上面よりも1段下がった溝の底面とすることもできる。このように、溝状の平坦面2i,2jに引き出し部を配置することで、引き出し部3d,3eと樹脂製カバー21との接着強度をより向上させることができる。
【0046】
[5.第5実施形態]
本実施形態は、
図8に示すように、樹脂製カバー21,22におけるコイル端面との対向面に、両者の間に生じる段差を埋めるように、樹脂を肉盛りして接着面積を増加させたものである。すなわち、コイル3の最終ターン部は、導線を巻回して形成されていることから樹脂製カバー21,22の表面に対して傾斜している。そのため、両者を単に重ね合わせただけでは、隙間が生じる。そこで、本実施形態では、樹脂製カバー21,22におけるコイル端面との対向面に、コイル3の導線の角度に合わせた傾斜部2kを接着部として形成している。
【0047】
この傾斜部2kは、
図8の右側の巻回部3bの平面図を示すように、コイル3の最終ターン部に合わせてリング状に形成され、
図8の左側の巻回部3aの断面図に示すように、コイル3の端面と樹脂製カバー21,22の端面との距離に合わせて、樹脂製カバー21,22の表面からの突出量が決められている。本実施形態によれば、傾斜部2kによって、コイル3の端部と樹脂製カバー21,22の対向面の隙間を埋めることができるため、両者の高い接着強度が得られる。
【0048】
[6.他の実施形態]
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、次のような他の実施形態も包含する。
(1)コイル3を構成する導線は、平角線に限定されるものではなく、丸線や四角線を使用することができる。コイル3の巻回方法も、エッジワイズ巻きに限定されるものではなく、α巻きなど他の方法も採用可能である。
【0049】
(2)接着部となる壁部2d,2e,2hや平坦面2i,2jに溝や凹部を形成し、これらの溝や凹部に平角線や丸線などの導体をはめ込んで、その自己融着層により樹脂製カバー21と引き出し部3d,3eとを接着する。
【0050】
(3)壁部2d,2e,2hに設ける開口部2fは図示の実施形態に限定されない。長方形や溝状などその形状や数は自由に選択でき、接着強度が確保されるのであれば、この開口部2fを極力大きくして、冷媒と導線の引き出し部3d,3eとの接触面積を広くすることが、冷却性能の向上のためには好ましい。例えば、この開口部2fの位置は、壁部2d,2e,2hにおける平角線との重なり合った部分に限定されるものではなく、壁部2d,2e,2hの縁に設けたフランジ2m部分に設けることも可能である。
【0051】
(4)環状コア1の形状は、図示のような角丸四角形に限定されることなく、トラック形、円環状、8の字状、脚部が3本以上のコアにも適用できる。コアを作成する場合、図示のような実施形態のコアを組み合わせる以外に、U字形、T字形、E字形のコアを適宜選択して、所望の環状コア1を形成することができる。コイル3の形状や数も、コア1の形状などに合わせて適宜変更可能である。
【0052】
(5)樹脂製カバーとコアとの組み合わせは、両者を別々に用意しておき、樹脂製カバー内にコアを単に挿入しても良いし、図示の実施形態のように、モールド成型法やインサート成型法により、コアの一部を樹脂製カバーの内部に一体に埋め込んでも良い。コアを樹脂製カバー内に埋め込むと、両者の固定強度を向上させることができる。
【0053】
(6)図示の実施形態は、第1の樹脂製カバー21に壁部,平坦面、傾斜部などの接着部を設けたが、第2の樹脂製カバー22にも同様な接着部を設けて、コイル3を2つの樹脂製カバー21,22によって両側から挟み込むように接着することもできる。その場合には、コイル3と樹脂製カバー21,22との接着がより確実となり、リアクトルの騒音や振動の低減、強度の向上を図ることができる。