特許第6570907号(P6570907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6570907気流発生装置、および、風力発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570907
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】気流発生装置、および、風力発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20190826BHJP
【FI】
   F03D80/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-143783(P2015-143783)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2016-94934(P2016-94934A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-226218(P2014-226218)
(32)【優先日】2014年11月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 元史
(72)【発明者】
【氏名】大迫 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】花房 忠芳
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225296(JP,A)
【文献】 特開2011−132961(JP,A)
【文献】 特開2012−249510(JP,A)
【文献】 特開2013−231409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体で形成された基体に第1電極と第2電極とが設けられており、回転体に設置される本体部と、
前記回転体の回転数を検知する回転数検知部と、
前記回転数検知部において検知された回転数に基づいて、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することによって気流を発生させる電圧印加部と
を有し、
前記電圧印加部および前記回転数検知部が前記回転体の内部に設置されていることを特徴とする、
気流発生装置。
【請求項2】
前記回転数検知部は、加速度センサを有する、
請求項1に記載の気流発生装置。
【請求項3】
前記電圧印加部は、前記回転数検知部で検知された回転数に応じて設定されたパルス変調周波数によってパルス変調された電圧を、前記第1電極と前記第2電極との間に印加する、
請求項1または2に記載の気流発生装置。
【請求項4】
前記回転体は、風車翼を有し、
前記本体部、前記回転数検知部および前記電圧印加部のそれぞれが、前記風車翼に設置されている、
請求項1から3のいずれかに記載の気流発生装置。
【請求項5】
前記回転数検知部は、前記電圧印加部を構成する筐体の内部に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の気流発生装置。
【請求項6】
前記回転数検知部と前記電圧印加部の間の信号の授受を無線で行うことを特徴とする、請求項1に記載の気流発生装置。
【請求項7】
風車翼が設置された回転体と、前記風車翼の表面において気流を発生する気流発生装置とを備える風力発電システムであって、
前記気流発生装置は、
絶縁材料で形成された基体に第1電極と第2電極とが設けられており、前記風車翼の表面に設置される本体部と、
前記回転体の回転数を検知する回転数検知部と、
前記回転数検知部において検知された回転数に基づいて、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することによって気流を発生させる電圧印加部と
を有し、
前記電圧印加部および前記回転数検知部が前記回転体の内部に設置されていることを特徴とする、
風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、気流発生装置、および、風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電システムは、再生可能エネルギーである風力エネルギーを利用して発電を行う。風力発電システムにおいて、風速や風向きが急に変動したときには、風車翼の周りにおける速度三角形が定格点から大きくずれるため、剥離流れが広い範囲で発生する場合がある。風速や風向きが急に変動したときには、ヨー角やピッチ角の調整では十分に対応することが容易でない。その結果、風力発電システムにおいては、発電出力を安定に維持することが困難であって、効率を高めることが容易でない場合がある。特に、日本等のように山岳性気象の地域では、風速および風向の変化が大きいため、発電出力を安定に維持できずに、効率を高めることが容易でない。この他に、民家などの近くに風力発電システムを設置する場合には、騒音の発生が問題になる場合がある。
【0003】
上記の対策のために、気流発生装置を用いて風車翼の表面に気流を発生させることが提案されている。気流発生装置は、一対の電極が誘電体を介して設けられた本体部を有し、その本体部が風車翼の表面に設置される。そして、気流発生装置は、その一対の電極の間に電圧印加部(放電用電源)が電圧を印加してプラズマを生成することによって、気流を発生させる。たとえば、回転数検知部(回転数センサ)によって検知された風車翼の回転数に応じてパルス変調周波数を設定し、その設定したパルス変調周波数によってパルス変調された高周波の電圧を、一対の電極の間に印加する。このように気流発生装置を用いて気流を発生させることによって、風車翼の表面において流体の流れを制御し、剥離流れの発生を抑制することができる。その結果、風車翼の揚力が増加し、発電の安定化と共に発電効率の向上を実現することができる。また、騒音の発生を抑制することができる。
【0004】
風力発電システムにおいて、たとえば、スリップリングを介して、静止体から回転体へ電圧の印加が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−25434号公報
【特許文献2】特開2012−255432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力発電システムにおいて、電圧印加部(放電用電源)は、効率化および安全性を考慮して、スリップリングを介して高圧な電圧を気流発生装置の本体部に供給しないように、風車翼などの回転体に搭載される。この場合においては、ナセルなどの静止体に設置された回転数検知部(回転数センサ)によって検知された回転数のデータは、スリップリングを介して、回転体に設置された電圧印加部に送られる。このため、スリップリングに起因したノイズによって誤動作が生ずる場合がある。また、スリップリングの極数が増加するために、特に、既設の風力発電システムに気流発生装置を設置することが困難になる場合がある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、スリップリングの極数増加を抑制し、スリップリングに起因したノイズの発生によって誤動作が生ずることを効果的に防止可能な、気流発生装置、及び、風力発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の気流発生装置は、本体部と回転数検知部と電圧印加部とを有する。本体部は、誘電体で形成された基体に第1電極と第2電極とが設けられており、回転体に設置される。回転数検知部は、その回転体の回転数を検知する。電圧印加部は、その回転数検知部において検知された回転数に基づいて、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することによって、気流を発生させる。ここでは、電圧印加部および回転数検知部が回転体の内部に設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る風力発電システムの全体構成を模式的に示す斜視図である。
図2】実施形態に係る風力発電システムにおいて、気流発生装置を模式的に示す図である。
図3】実施形態に係る風力発電システムにおいて、気流発生装置を模式的に示す図である。
図4】実施形態に係る風力発電システムにおいて、気流発生装置の構成部材が配置された様子を示す図である。
図5】実施形態に係る風力発電システムの気流発生装置において、電圧印加部が印加する電圧の波形を例示している。
図6】実施形態に係る風力発電システムの気流発生装置において、回転数検知部を構成する加速度センサが加速度を検知したときのデータを示す図である。
図7】実施形態の変形例において、電圧印加部と回転数検知部との要部を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
[風力発電システム1の構成]
図1は、実施形態に係る風力発電システムの全体構成を模式的に示す斜視図である。
【0012】
風力発電システム1は、たとえば、アップウィンド形のプロペラ風車であって、図1に示すように、タワー2、ナセル3、ロータ4、および、風向風速計測部5を備えている。
【0013】
風力発電システム1のうち、タワー2は、鉛直方向に沿って延在しており、地中に埋め込まれた基台(図示省略)に下端部が固定されている。
【0014】
風力発電システム1のうち、ナセル3は、タワー2の上端部に設置されている。ナセル3は、ヨー角の調整のために、タワー2の上端部において鉛直方向を軸にして回転可能に支持されている。図示を省略しているが、ナセル3の内部には、増速機と発電機とが収容されている。
【0015】
風力発電システム1のうち、ロータ4は、ナセル3の一方の側端部において、回転可能に支持されており、たとえば、水平方向を回転軸として回転方向Rに回転する。ロータ4は、ナセル3の内部に収容された増速機の回転軸に連結されており、増速機を介して発電機が駆動し、発電が行われる。ここでは、ロータ4は、ハブ41と複数の風車翼42(ブレード)とを備えている。
【0016】
ロータ4において、ハブ41は、外形が半楕円体状の先端カバーを含み、その先端カバーは、水平方向において風上から風下へ向かうに伴って外周面の外径が大きくなるように形成されている。
【0017】
ロータ4において、複数の風車翼42のそれぞれは、ハブ41を中心にして径方向に延在しており、回転方向Rにおいて等しい間隔で並ぶように設置されている。たとえば、3枚の風車翼42が設けられており、それぞれは、ピッチ角の調整のために、一端がハブ41に回転可能に支持されている。
【0018】
また、複数の風車翼42のそれぞれにおいては、図1に示すように、後述する気流発生装置6の本体部61が、複数、翼スパン方向に並ぶように設置されている。気流発生装置6の詳細については後述する。
【0019】
風力発電システム1のうち、風向風速計測部5は、風車翼42の風下において、ナセル3の上面に取り付けられている。風向風速計測部5は、風速および風向きについて計測し、その計測データを制御部(図示省略)に出力する。ここでは、制御部は、メモリ装置が記憶しているプログラムを用いて演算器が演算処理を行うように構成されており、上記のように入力された計測データに応じてヨー角およびピッチ角の調整が行われる。
【0020】
[気流発生装置6の構成]
図2および図3は、実施形態に係る風力発電システム1において、気流発生装置6を模式的に示す図である。図2では、気流発生装置6のうち本体部61については断面を示している。また、図3では、気流発生装置6のうち本体部61については上面を示している。図2においては、図3のうちX−X部分の断面を示している。また、図3においては、本体部61を構成する部材のうち、内部に設置される部材の輪郭について、破線で示している。
【0021】
また、図4は、実施形態に係る風力発電システム1において、気流発生装置6の構成部材が配置された様子を示す図である。図4では、ロータ4(図1参照)の側面について要部を示している。また、図4においては、内部に設置される部材の輪郭について、破線で示している。
【0022】
気流発生装置6は、図2図3、および、図4に示すように、本体部61と電圧印加部62と回転数検知部64とを備えている。
【0023】
気流発生装置6を構成する各部について順次説明する。
【0024】
(本体部61)
気流発生装置6において、本体部61は、図2および図3に示すように、基体611と第1電極621と第2電極622と含む。
【0025】
本体部61のうち、基体611は、絶縁材料(誘電体)で形成されている。たとえば、基体611は、シリコーン樹脂(シリコンゴム)、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などの樹脂を用いて形成されており、フレキシブルである。
【0026】
本体部61のうち、第1電極621は、板状体であって、金属材料などの導電材料で形成されている。第1電極621は、図2に示すように、基体611の表面(上面)に設けられた表面電極であって、図3に示すように、直線状に延在している。
【0027】
本体部61のうち、第2電極622は、第1電極621と同様に、板状体であって、金属材料などの導電材料で形成されている。第2電極622は、図2に示すように、内部電極であって、第1電極621と異なり、基体611の内部に設けられている。図3に示すように、第2電極622は、第1電極621が延在する延在方向(第1の方向,長手方向)と同じ方向(図3では縦方向)に、直線状に延在している。ここでは、第2電極622は、第1電極621の延在方向(第1の方向)に直交する方向(第2方向)(図3では横方向)において、第1電極621と並ぶように配置されている。
【0028】
本体部61は、たとえば、プレス加工、押出成形加工などの種々の加工によって形成される。
【0029】
図4に示すように、本体部61は、回転体である風車翼42に設置されている。ここでは、本体部61は、第1電極621が設けられた表面(上面)とは反対の面(下面)が、風車翼42の面に密着するように、風車翼42に接着される(図2参照)。本体部61は、たとえば、風車翼42の翼背側の面(上面)のうち前縁側の部分において、第1電極621と第2電極622とが前縁から後縁に向かって順次並ぶように設置される。また、本体部61は、第1電極621および第2電極622の延在方向(第1の方向)が、翼スパン(翼幅)方向に沿うように設置される。
【0030】
(電圧印加部62)
気流発生装置6において、電圧印加部62(放電用電源)は、図2および図3に示すように、接続部C10を介して、本体部61に電気的に接続されている。ここでは、接続部C10は、一対の接続配線C11,C12を含み、第1電極621および第2電極622のそれぞれと、電圧印加部62との間を電気的に接続している。具体的には、接続部C10のうち、一方の接続配線C11は、一端が第1電極621に電気的に接続されており、他端が電圧印加部62に電気的に接続されている。また、接続部C10のうち、他方の接続配線C12は、一端が第2電極622に電気的に接続されており、他端が電圧印加部62に電気的に接続されている。
【0031】
電圧印加部62は、図4に示すように、回転体である風車翼42に設置されている。本実施形態では、電圧印加部62は、たとえば、風車翼42の内部において翼根側の部分に設置されている。図示を省略しているが、電圧印加部62は、一の風車翼42に設置された複数の本体部61のそれぞれ(図1図4参照)に対して独立に電圧を印加するように、複数が設置されている。なお、複数の風車翼42のそれぞれに設置された複数の電圧印加部62の全体の重心が、ロータ4(図1参照)の回転軸に一致するように、複数の電圧印加部62を配置することが好ましい。
【0032】
電圧印加部62は、接続部C10を介して、本体部61に設けられた第1電極621と第2電極622との間に電圧を印加する。本実施形態においては、電圧印加部62は、回転数検知部64で検知された回転数に基づいて、電圧の印加を行う。
【0033】
具体的には、電圧印加部62は、たとえば、AC/DCコンバータによって商用周波数の交流電圧から変換された直流電圧が、ナセル3などの静止体側からスリップリングを介して供給される。そして、電圧印加部62では、高周波発生器(インバータ)が直流電圧から高周波(たとえば、1〜20kHz)の交流電圧を生成した後に、その高周波の交流電圧を変圧器が昇圧する(たとえば、数kV)。
【0034】
そして、電圧印加部62においては、その昇圧された高周波の交流電圧をパルス変調器が低周波のパルス変調波でパルス変調する。ここでは、電圧印加部62は、まず、回転数検知部64で検知された回転数n(rpm)に基づいて、演算器がパルス変調波のパルス変調周波数Fを設定する。
【0035】
具体的には、下記の式(A)に示すように、回転数検知部64が検知した回転数n(rpm)と共に、予め設定されたストローハル数St、風車翼42のコード長Cn(m)、風車翼42の回転半径Rnを用いて演算処理を行うことによって、パルス変調周波数Fを設定する。ここでは、上記の式(A)のうち、Cnについては、風車翼42において複数の本体部61のそれぞれの中心(第1電極621および第2電極622の延在方向の中心)が位置する部分のコード長とし、Rnについては、風車翼42のスパン方向において複数の本体部61のそれぞれの中心と回転軸AXとの間の距離として、複数の本体部61のそれぞれについて、パルス変調周波数Fの設定を行う。
【0036】
F=(2πn/60)×St×Cn×Rn ・・・(A)
【0037】
そして、その設定されたパルス変調周波数Fのパルス変調波によって高周波の交流電圧をパルス変調する。その後、電圧印加部62は、そのパルス変調された高周波の交流電圧を、第1電極621と第2電極622との間に印加する。
【0038】
図5は、実施形態に係る風力発電システム1の気流発生装置6において、電圧印加部62が印加する電圧の波形を例示している。図5において、横軸は時間であり、縦軸は電圧の値である。
【0039】
図5に示すように、電圧印加部62は、高周波の電圧(交番電圧)を、第1電極621と第2電極622との間に、予め設定された周波数(基本周波数)で印加する。高周波の電圧は、高周波の電圧の周波数よりも低周波なパルス変調波(図示省略)でパルス変調され、そのパルス変調波の各周期(T1,T2,・・・=1/F)において印加される。
【0040】
具体的には、まず、第1の周期T1では、第1の時点t1に電圧の印加が開始される。そして、その第1の時点t1から第2の時点t2の間の時間t12(第1のオン時間)に、予め設定された周波数(基本周波数)で電圧が印加され、気流が発生する。つまり、時間に応じて正極性と負極性とに変化する電圧を周期的に繰り返し印加する。その後、第2の時点t2から第3の時点t3の間の時間t23(第1のオフ時間)においては、電圧の印加が停止され、気流の発生が止められる(T1=t12+t23)。
【0041】
そして、第2の周期T2(=T1)では、第1の周期T1の場合と同様に、高周波の電圧が印加される。つまり、第3の時点t3に電圧の印加が開始される。そして、その第3の時点t3から第4の時点t4の間の時間t34(第2のオン時間)に、第1の周期T1と同様に、予め設定された周波数(基本周波数)で高周波の電圧が印加され、気流が発生する。第2の周期T2において気流を発生させる時間t34(第2のオン時間)は、たとえば、第1の周期T1において気流を発生させる時間t12(第1のオン時間)と同じである。その後、第4の時点t4から第5の時点t5の間の時間t45(第2のオフ時間)においては、高周波の電圧を印加することが停止され、気流の発生が止められる(T2=t34+t45)。
【0042】
図示を省略しているが、第2の周期T2よりも後の周期(第3の周期以降)においても、第1の周期T1および第2の周期T2の場合と同様に、電圧の印加が行われる。
【0043】
電圧の印加により、本体部61の表面(上面)に、バリア放電によるプラズマが発生し、気流(プラズマ誘起流)が誘起される。気流は、第1電極621側から第2電極622側へ向かって流れるように誘起され、剥離流れの発生が抑制される。
【0044】
(回転数検知部64)
気流発生装置6において、回転数検知部64(回転数センサ)は、図2および図3に示すように、信号線を含む接続部C20を介して、電圧印加部62に電気的に接続されている。図示を省略しているが、回転数検知部64は、一の風車翼42に設置された複数の本体部61のそれぞれ(図1図4参照)に対応して設置された複数の電圧印加部62に電気的に接続されている。また、回転数検知部64は、たとえば、電圧印加部62から電力が供給される。
【0045】
回転数検知部64は、図4に示すように、回転体である風車翼42に設置されている。本実施形態では、回転数検知部64は、電圧印加部62と同様に、たとえば、風車翼42の内部において翼根側の部分に設置されている。
【0046】
回転数検知部64は、風車翼42を含むロータ4の回転数を検知し、その検知した回転数のデータ信号を、接続部C20を介して、リアルタイムに電圧印加部62へ出力する。
【0047】
本実施形態では、回転数検知部64は、たとえば、半導体を用いて形成された加速度センサを含む。回転数検知部64において、加速度センサは、鉛直方向に沿った軸における加速度を検知する。そして、回転数検知部64は、その加速度センサによって検知された加速度について演算器が演算処理を行うことによって、ロータ4の回転数を求める。加速度センサは、小型であるため、設置が容易である。
【0048】
図6は、実施形態に係る風力発電システム1の気流発生装置6において、回転数検知部64を構成する加速度センサが加速度を検知したときのデータを示す図である。図6において、横軸は時間tであり、縦軸は加速度aである。図6では、ロータ4が一回転したときの様子を示している。
【0049】
図6に示すように、ロータ4が一回転したときには、加速度aは、時間tに応じて、正弦曲線を描くように変化する。このため、一回転したときの時間T10(つまり、周期)から、単位時間当たりの回転数(rpm)を換算して求めることができる。
【0050】
[作用および効果]
以上のように、本実施形態では、電圧印加部62(放電用電源)が、回転体である風車翼42に設置されている。これと共に、回転数検知部64が、回転体である風車翼42に設置されている。このため、本実施形態においては、回転体に設置された回転数検知部64が検知した回転数のデータが、スリップリングを介在せずに、その回転体に設置された電圧印加部62に送られる。
【0051】
したがって、本実施形態では、スリップリングに起因したノイズによって誤動作が生ずることを防止可能である。また、本実施形態では、スリップリングの極数が増加することを防止可能である。その結果、既設の風力発電システム1に気流発生装置6を設置することが容易になる。
【0052】
[変形例]
上記の実施形態では、電圧印加部62(放電用電源)と回転数検知部64との両者が、ロータ4の風車翼42に設置されている場合について説明したが、これに限らない。たとえば、ロータ4のハブ41に設置してもよい。
【0053】
上記の実施形態では、直流電圧が静止体側からスリップリングを介して電圧印加部62に供給される場合について説明したが、これに限らない。無線給電によって、電圧印加部62に直流電圧が供給されるように構成されていてもよい。
【0054】
上記の実施形態では、回転数検知部64が加速度センサを用いて回転数を検知する場合について説明したが、これに限らない。たとえば、回転数検知部64が光ファイバーセンサを用いて回転数を検知するように構成されていてもよい。つまり、回転によって、光ファイバーセンサを通過する光の特性が変動することに基づいて、回転数を検知してもよい。その他、種々の方法によって、回転数検知部64が回転数を検知するように構成されていてもよい。
【0055】
上記の実施形態では、回転数検知部64が、電圧印加部62と同様に、風車翼42の内部において翼根側の部分に設置されている。そして、上記の実施形態では、風車翼42を含むロータ4の回転数を回転数検知部64が検知し、その検知した回転数のデータ信号を、接続部C20を介して、リアルタイムに電圧印加部62へ出力する。しかし、このような構成に限らない。
【0056】
図7は、実施形態の変形例において、電圧印加部62と回転数検知部64との要部を模式的に示すブロック図である。
【0057】
図7に示すように、電圧印加部62(放電電源)は、筐体620を含み、その筐体620の内部に、高周波発生器621等の構成部材を収容すると共に、電圧印加部62の構成部材でない回転数検知部64を更に収容するように構成してもよい。電圧印加部62の構成部材のうち、変圧器622は、ノイズ源となる可能性があるため、筐体620の外部に設置されていることが好ましい。また、電圧印加部62の筐体620は、金属で形成されていることが好ましい。これにより、回転数検知部64から電圧印加部62へ信号を伝送する際に接続部C20が電気的なノイズを受けて信号が変化することを避けることができる。
【0058】
また、上記の実施形態では、回転数検知部64から電圧印加部62へ信号を伝送するために、接続部C20を使用しているが、これに限らない。回転数検知部64と電圧印加部62との間の信号の授受を無線で行うように構成してもよい。つまり、無線によって上記の信号伝送を行うように構成してもよい。これにより、回転数検知部64から電圧印加部62への信号伝送の際に接続部C20が電気的なノイズを受けて信号が変化することを避けることができる。
【0059】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、電圧印加部および回転数検知部を回転体に設置することにより、スリップリングの極数増加を抑制し、スリップリングに起因したノイズの発生によって誤動作が生ずることを効果的に防止することができる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…風力発電システム、2…タワー、3…ナセル、4…ロータ、5…風向風速計測部、6…気流発生装置、41…ハブ、42…風車翼、61…本体部、62…電圧印加部、64…回転数検知部、611…基体、621…第1電極、622…第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7