(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明による糸挿入器8と空気圧式糸通し装置の糸挿入ユニット1とを示す図である。
なお、
図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
また、以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
【0020】
糸挿入ユニット1は、ミシンの糸通し装置(ミシン及び糸通し装置の全体は図示せず)の一部として構成されており、上ルーパ糸や下ルーパ糸を糸通し装置に挿入するためのユニットである。糸挿入ユニット1には、チューブ2を介して圧縮空気aが供給され、その空気流を利用して、上ルーパ糸排出路b、下ルーパ糸排出路cを通じ、それぞれ上ルーパ剣先(図示せず)、下ルーパ剣先(図示せず)まで各糸を搬送する。
【0021】
選択つまみ3は、上ルーパ、又は、下ルーパのどちらに糸通しを行うのかを選択するための操作部材である。
上ルーパ糸挿入穴4及び下ルーパ糸挿入穴5は、各糸を糸通しするために糸挿入ユニット1に差し込むための入口となる糸挿入穴である。先に説明したように、従来は、挿入する糸6を指でつまんで糸先端6aを上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5に差し込んでいた。糸6の糸こま側6bは、ミシンにセットした不図示の糸こまに通じている。
【0022】
糸先端6aを上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5に差し込むとき、糸6が空気圧式糸通し装置の空気流に乗って上ルーパ剣先又は下ルーパ剣先まで円滑に搬送されるためには、上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5に所定長さ(例えば、2cmから3cm)だけ糸6を差し込む必要がある。
本実施形態では、この糸6の挿入を簡単、かつ、安定して確実に行うための糸挿入器8を提案し、これを説明する。
【0023】
糸挿入器8は、従来には無い全く新しい概念の装置であるので、先ず、糸挿入器8の使い方の概要を説明する。
本実施形態の糸挿入器8は、全体が略棒状に構成されている。
図1に示した状態では、糸6は、糸挿入器8の先端円錐部スリット8aを跨いで掛けられており、糸先端6aは、糸切り刃21により所定長さに切断されている。糸6の糸こま側6bは、ミシンにセットした糸こま(不図示)に通じており、糸挿入器8の裏面8cで保持されている(詳細は、後述)。
このように糸6を保持した糸挿入器8のホルダー10に形成された凹部10aを指でつかみ、例えば矢印dのように移動させて先端円錐部スリット8aを上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5に真上から当て込んで、ホルダー10を真下に押し下げる。これにより、糸6は、所定長さ(例えば、2cmから3cm程度の所定の長さ)だけ上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5の内部へ差し込まれる(詳細は、後述)。
【0024】
次に、本実施形態の糸挿入器8の構成をより詳しく説明する。
図2は、本実施形態の糸挿入器8の分解斜視図である。
なお、以下の説明では、理解を容易にするために、
図2中に矢印で示した先端、後端の向きを説明に用いるが、この向きを示す文言は、発明の構成を限定するものではない。
糸挿入器8は、ホルダー10と、第1の本体11と、第2の本体12と、ガイドピン13と、ホルダーばね14と、ピン15と、糸保持ばね16と、受け座17と、段ねじ18と、ナット19a,19bと、糸切り台20と、糸切り刃21と、ねじ23とを備えている。
【0025】
ホルダー10は、略円筒形状に形成されており、凹部10aと、円筒穴10bと、スリット10cと、貫通丸穴10dと、先端突起10eとを有し、ガイドピン13を固定して保持する。
凹部10aは、ホルダー10の延在する方向の略中央に、その周囲からわずかに径が細くなるように凹んで形成されている。凹部10aは、利用者が指で糸挿入器8をつまむときにつまみやすく、かつ、力を入れやすくするために設けられている。
円筒穴(穴部)10bは、有底の円筒形状の穴であり、この内部に、第1の本体11と、第2の本体12と、ガイドピン13と、ホルダーばね14とが挿入される。
スリット10cは、円筒穴10bの底部に形成された細いスリットであり、ガイドピン13の後端が挿入される。
貫通丸穴10dは、ホルダー10の延在する方向に直交する方向に貫通して形成されており、ピン15が挿入される。
先端突起10eは、ホルダー10の先端側において側方に突出しており、後述する受け座17に当接可能に設けられている。
【0026】
第1の本体11は、本体部11aと、直方体部11bと、先端部11cとから構成されている。
本体部11aは、略円筒形状を2分割した形状に形成されている。本体部11aには、円筒外周面から円筒形状の分割中心面まで貫通した角穴11eが4ヶ所に開口されている。角穴11eは、第2の本体12に設けられた4ヶ所のフック12cと係合して第1の本体11と第2の本体12とを噛み合い固定させる。
第1の本体11の第2の本体12と組み合わせられる側の面には、浅い溝11h(
図7,8参照)が形成されている。第1の本体11は、第2の本体12と組み合わせられることにより、第2の本体に形成された溝12bと溝11hとにより空間が形成され、この空間内をガイドピン13が長手方向に摺動する。
直方体部11bは、本体部11aの先端側に設けられており、略直方体形状に形成されている。直方体部11bには、長手方向と直交する方向に貫通した丸穴11fが左右に配されている。
先端部(突出部)11cは、円錐形状を略2分割した形状で突出して形成されている。先端部11cには、その中央部にスリット11dが形成されており、直方体部11bの側面(先端側の面)までスリット11dが延在している。
【0027】
第2の本体12は、第1の本体11と同様に本体部12aと、直方体部12fと、先端部12hとから構成されており、第1の本体11と似た形状に形成されている。
本体部12aは、略円筒形状を2分割した形状に形成されている。本体部12aには前述のように浅い溝12bが形成されている。また、本体部12aには、4ヶ所のフック12cが角穴11eに対応して形成されている。円筒形状の分割中心面となる第1の本体11との接合面12dには、小穴12eが2箇所形成されている。この小穴12eは、第1の本体11に形成された小突起11g(
図7参照)と嵌合して第1の本体11と第2の本体12とを組み合わせるときの位置決め基準としての機能を果たしている。
直方体部12fは、本体部12aの先端側に設けられており、略直方体形状に形成されている。直方体部12fには、第1の本体11と同様に貫通穴12gが左右に設けられている。
先端部(突出部)12hは、円錐形状を略2分割した形状で突出して形成されている。先端部12hには、第1の本体11と同様にスリット12iが形成されており、直方体部12fの側面(先端側の面)までスリット12iが延在している。
【0028】
第1の本体11と第2の本体12とは、ガイドピン13を挟むようにして組み合わせて配置されている。第1の本体11と第2の本体12とが組み合わせられることにより、本体が構成される。この本体(11,12)には、糸捕捉部13a(後述)が突出した作動位置と、糸捕捉部13aが本体(11,12)内に収納された待機位置との間でホルダー10及びガイドピン13がスライド移動可能となるように取り付けられている。
【0029】
ガイドピン(ガイド部材)13は、本実施形態では、薄い板状に形成されている。ガイドピン13には、細長く延在した糸捕捉軸部13eが設けられており、その先端には、U字形状に凹んで形成され、糸6を捕捉する糸捕捉部13aが設けられている。また、ガイドピン13の後端には、ピン15が貫通する丸穴13bが開口されている。ガイドピン13の中間部には、第1の本体11及び第2の本体12が待機位置にあるときの位置規制となるストッパー段部13cと、第1の本体11及び第2の本体12が作動位置(糸押し出し位置)にあるときの位置規制となるストッパー段部13dとが形成されている。
【0030】
ホルダーばね(付勢部)14は、ホルダー10の円筒穴10bの奥に挿入され、ホルダー10及びガイドピン13を第1の本体11及び第2の本体12に対して後端側、すなわち待機位置側へ押し出す方向に常時付勢する。
【0031】
ピン15は、ホルダー10の貫通丸穴10dと、ガイドピン13の丸穴13bとに挿入されて、ガイドピン13をホルダー10に固定する。
【0032】
糸保持ばね(糸保持部)16は、第2の本体12の直方体部12fの側面(
図2中の下方の面)に段ねじ18とナット19aとを用いて回動可能に固定されている。糸保持ばね16は、糸捕捉部13aに捕捉された糸6の糸こま側6bにおいて、ホルダー10が待機位置にあるときに糸を保持する。すなわち、糸通しを行うときには、この糸保持ばね16の腕部16aが直方体部12fとの間に、糸6の糸こま側6b(
図1参照)を挟んで保持可能である。これにより、糸挿入ユニット1の上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5に糸こま側6bが不用意に引き出されないように規制可能である。
【0033】
受け座(解除部)17は、糸保持ばね16に噛み合い固定されている。受け座17は、ホルダー10を押し込んで糸挿入操作を行うとホルダー10が待機位置から作動位置側へ移動することにより、ホルダー10の先端突起10eがこの受け座17を押す。これにより、受け座17と共に糸保持ばね16が段ねじ18を中心に回動する。そして、受け座17は、糸保持ばね16の回動の最終段階で、糸こま側6b(
図1参照)における腕部16aによる糸6の保持を解除する。
【0034】
糸切り台20は、糸切り刃21を収納固定するベースであり、直方体部11bに固定されている。糸切り台20は、糸切り刃21を収容する収容部20aと糸切り刃21の丸穴21aに対応した固定用突起20bとを有している。本実施形態では、糸切り刃21を収容部20aに収納した状態で、固定用突起20bを溶融させて押しつぶすことにより糸切り刃21を糸切り台20に対して溶着固定する。
また、糸切り台20の側壁には、段ねじ18を通す貫通穴20cと、ナット19aを収納する凹部20dとが設けられている。側壁の他端には、糸切り台20を第1の本体11及び第2の本体12に固定するねじ23を通すための貫通穴20eが設けられている。さらに、先端側の側壁には、第1の本体11のスリット11dの延長上に糸用溝20fを有している。ねじ23は、反対側の第2の本体12に設けた凹部12jに収納されたナット19bを用いてねじ締め固定される。さらに、糸切り台20の略中央部には、糸切り刃21の刃部21bに向けて糸を案内する案内溝20gが形成されている。また、糸切り台20の外側面(
図2中の上方の面)には、糸引き回し時の糸掛けとして糸掛け20hが設けられている。
【0035】
糸切り刃(糸切り部)21は、糸6を切断するための刃部21bを備えており、糸切り台20に固定されている。糸切り刃21は、糸捕捉部13aに捕捉された糸6の糸こま側6bとは反対側である糸先端6a側において、糸捕捉部13aから所定の長さで糸6を切断可能である。
【0036】
図3は、第1の本体11及び第2の本体12をホルダー10に挿入する前の状態を示す図である。
この
図3の状態では、ガイドピン13を第1の本体11と第2の本体12との間の中央空間に摺動可能に挟み込んだ状態で、それぞれ4ヶ所の角穴11eとフック12cとを係合させて、第1の本体11と第2の本体12とを合体している。
第1の本体11の直方体部11bには、段ねじ18及びねじ23が、それぞれナット19a、19bにねじ込まれることにより糸切り刃21を溶着固定した糸切り台20が固定されている。また、第2の本体12の直方体部12fには、糸保持ばね16が段ねじ18によって回動可能な状態で取り付けられている。
【0037】
ガイドピン13の後端側をホルダーばね14に通した状態で、ガイドピン13の後端側がホルダー10の円筒穴10bに挿入され、さらに、ガイドピン13の後端は、ホルダー10のスリット10cに差し込まれる。ホルダー10の貫通丸穴10dとガイドピン13の丸穴13bとが一致させられた状態で、ピン15が圧入されて、ガイドピン13がホルダー10に固定される。
【0038】
図4は、
図3の状態からピン15を用いて各部材を組み立てて糸挿入器8を完成させた状態を示す図である。
この
図4の状態では、ホルダーばね14の付勢力によりホルダー10が後端側へ押されて待機位置に保持されている。よって、ホルダー10に固定されたガイドピン13は、その全体が第1の本体11と第2の本体12とホルダー10との内部に収納された状態にある。
この
図4のようにホルダー10及びガイドピン13が待機位置にあるときには、糸保持ばね16は、
図4に示すように糸を挟んで保持する腕部16aを図中の矢印e方向に回動させておく。
【0039】
図5は、
図4の状態からホルダー10を矢印f方向に押し込んだ状態を示す図である。この状態は、ホルダー10及びガイドピン13が作動位置にあり、糸を糸挿入穴に差し込んだ状態に相当する。
図5のようにホルダー10を矢印f方向に押し込むと、ホルダーばね14は、ホルダー10の円筒穴10bの底面と第1の本体11及び第2の本体12の後端との間で圧縮される。また、ホルダー10に固定されたガイドピン13は、ホルダー10と共に先端側へ前進して、その糸捕捉部13aを第1の本体11及び第2の本体12の先端部11c、12hから露出させる。
糸は、予めこの先端部11c、12hのスリット11d、12iに渡って掛けられて用いられるので、ガイドピン13の糸捕捉部13aのU字形状に糸が捕捉されて押し出されることになる。このとき、糸保持ばね16の腕部16aは、受け座17を介して
図5中の矢印g方向に回動させられて、糸こま側6bの糸保持が解除される。
【0040】
図6は、ホルダー10及びガイドピン13が待機位置にある状態と作動位置(糸押し出し位置)にある状態とを比較して示した図である。
図6中の上方の図は、ホルダー10及びガイドピン13が待機位置にある状態を示し、
図6中の下方の図は、ホルダー10及びガイドピン13が作動位置にある状態を示している。また、
図6では、一部を断面にして示している。
図7は、
図6中に矢印A−Aで示した位置で切断した断面図である。
図8は、
図6中に矢印B−Bで示した位置で切断した断面図である。
図9は、
図6中に矢印C−Cで示した位置で切断した断面図である。
図10は、
図6中に矢印D−Dで示した位置で切断した断面図である。
【0041】
ホルダー10及びガイドピン13が待機位置にある状態では、ホルダーばね14によりホルダー10及びガイドピン13は、
図6中の右方向(後端側)に付勢され、ガイドピン13のストッパー段部13cと第2の本体12のフック12cとが当接することで待機位置に留まる。ガイドピン13の糸捕捉部13aの先端は、
図6中に示した先端面(当接部)Eと一致している。なお、この糸捕捉部13aの先端位置については、使用用途に応じて適宜変更してもよい。
先端面(当接部)Eは、先端部11c及び先端部12hの周囲に設けられ、糸挿入時には、上ルーパ糸挿入穴4又は下ルーパ糸挿入穴5(以下、これらのうちで、糸挿入器8により糸を挿入しようとする穴を、糸挿入穴22として説明する。)の周囲に当接させられる。
【0042】
図7の断面図には、第1の本体11の小突起11gと第2の本体12の小穴12eとの嵌合状況が示されている。これら小突起11gと小穴12eとは、第1の本体11と第2の本体12との合体時の位置決め基準の機能を果たしている。
図8の断面図、及び、
図9の断面図には、第1の本体11の角穴11eと第2の本体12のフック12cとの係合状態が示されている。これらの図に示されているように、第1の本体11の角穴11eと第2の本体12のフック12cとは、互いが係合することにより、第1の本体11と第2の本体12と合体させて固定している。
【0043】
また、
図7から
図9に示されているように、第1の本体11と第2の本体12との間に、溝11h、溝12bにより空間が形成されており、この中央の空間内にガイドピン13が摺動可能に保持されている。
【0044】
図10の断面図に示されるように、ガイドピン13は、その後端部がホルダー10の後端部のスリット10cに挿入された状態で、ピン15の圧入によりホルダー10に対して固定されている。
【0045】
ホルダー10及びガイドピン13が作動位置にある状態(
図6の下方の図)では、ホルダー10及びガイドピン13が待機位置にある状態(
図6の上方の図)からホルダー10が矢印方向に長さhだけ押し込まれた状態となる。
このようにホルダー10を押し込むことによりホルダーばね14は圧縮され、ホルダー10及びガイドピン13が作動位置側へ移動する。また、ガイドピン13のストッパー段部13dと第1の本体11及び第2の本体12の後端面とが当接し、所定量以上(本例では、長さh以上)ホルダー10が移動することなく、停止する。
これによりガイドピン13の糸捕捉部13aは、先端部11c及び先端部12hから露出してくる。ガイドピン13は、ホルダー10と一体になっているので、ガイドピン13の突出量は、ホルダー10の移動量(この例では、長さh)と等しい。よって、ガイドピン13の糸捕捉部13aは、長さhだけ先端面Eから突出する。
【0046】
次に、本実施形態の糸挿入器8の動作について説明する。
なお、理解を容易にするために、ホルダー10及びガイドピン13が待機位置にある状態を、糸挿入器8についても待機状態と呼ぶこととする。
図11は、糸挿入器8の待機状態を示す図である。
図11の状態では、糸保持ばね16を段ねじ18を中心にして
図11中の反時計回りに操作者が手作業で回動させて、腕部16aを第2の本体12の小突起12kに突き当てた状態にして待機させる。このとき、糸を第2の本体12の凹部12nを経由して糸保持ばね16の腕部16aの下からスリット12iに渡せば、糸は糸保持ばね16によって挟まれて保持され、不用意に移動しないようにその動きが規制される。
【0047】
図12は、
図11の待機状態から糸挿入ユニット1に第1の本体11及び第2の本体12を当て付けて、ホルダー10を長さhだけ図中の右(先端側)に押し込んだ状態を示す図である。
この状態では、ホルダー10の先端突起10eが、糸保持ばね16に噛み合い固定された受け座17を押し込む。これにより、糸保持ばね16は、段ねじ18を中心にして
図12中で時計回りに回動し、腕部16bが第2の本体12の小突起12mに当接して停止する。
このとき、腕部16aは、第2の本体12の凹部12nまで退避するので、
図11の状態において挟まれていた糸は、保持が解除されて、その動きの規制がなくなる。ガイドピン13の糸捕捉部13aは、糸挿入ユニット1の糸挿入穴22内に長さh分だけ差し込まれる。すなわち、糸がスリット12iに渡っていれば、糸は、ガイドピン13により長さhだけ糸挿入穴22に差し込まれる。
【0048】
次に、糸挿入器8を用いて糸6を糸挿入ユニット1の糸挿入穴22に差し込む手順について説明する。
図13は、糸挿入器8の待機状態において、糸6をセットし、糸挿入の準備をしている状態を示す図である。
図13の状態では、糸6を糸保持ばね16によって挟んで保持した後、糸6は、スリット12iを経由させて後端側(
図13中の上方)に引き出される。
【0049】
図14は、
図13の状態を糸挿入器8の先端側から見た図である。
図15は、糸6の引き回し経路を示す図である。
図14に示すように、スリット12iを通された糸6は、引き続きスリット11d、糸切り台20の糸用溝20f、糸掛け20hの順に経由されて案内溝20gへ引き回される。
案内溝20g内へ回し込まれた糸6は、さらに案内溝20gの奥へ引き寄せられて、糸切り刃21の刃部21bに案内されて切断される。この糸6の引き回し経路は、糸捕捉部13aから切断される位置までの長さが所定の長さk(後述)となるように設定されている。
【0050】
図16は、ホルダー10の先端突起10eが受け座17を押している途中の状態を示す図である。
図16に示すように、先端突起10eが直方体部12fの面Fに達する直前まで糸保持ばね16は、糸6を挟んで保持している。また、糸先端6aは、ガイドピン13に押し込まれて糸挿入穴22に挿入されている。
【0051】
図17は、ホルダー10の先端突起10eが直方体部12fの面Fに到達するまで押しきった状態を示す図である。
図17の状態までホルダー10が押されると、糸保持ばね16は、第2の本体12の凹部12nから離れて、糸6の保持を解除する。
【0052】
図18は、糸切り刃21で切断された糸6の挙動の概略を示した図である。
図18中の矢印jで示すように、糸切り刃21で切断された糸6の糸先端6aは、ガイドピン13により引き出されて、糸挿入穴22に挿入される。
ここで、先に示した、
図13及び
図16の状態では、糸6は、糸保持ばね16に挟まれて保持され、移動が規制されている。一方、
図17の状態では、糸保持ばね16は、凹部12nから退避しており、糸6の保持を解除している。すなわち、ホルダー10を押し込んでガイドピン13により糸6を糸挿入穴22に差し込むときに、糸先端6a側が糸挿入穴22に送り込まれて、糸こま側6bは、糸挿入穴22内に送り込まれないように制御されている。このように、糸挿入穴22に差し込まれる糸6は、糸切り刃21によって切断された側のみとなるように規制されており、これにより、糸挿入穴22に挿入される糸6の長さを安定させている。
【0053】
ここで、ホルダー10を最後まで押しきった
図17の状態において糸こま側6bの糸6の保持を解除する理由について説明する。
図17の状態で糸6の挿入が終了した後には、糸挿入器8を糸挿入穴22から引き抜くことになる。このとき、糸6の保持が継続していると、挿入された糸6は、そのまま糸挿入器8と共に再び糸挿入穴22から引き出されることになる。これを防ぐため、ホルダー10を最後まで押しきった
図17の状態において、糸6の保持を解除して糸挿入器8のみを引き抜くことができるようにしている。
【0054】
本実施形態では、
図17に示すようにガイドピン13の突出量は、長さhである。ここで、
図14に示す糸挿入器8の中心(すなわち、ガイドピン13の中心であって、糸捕捉部13aの位置)Sから糸切り刃21で切断された糸端Tまでの糸6の長さをkとすると、糸挿入器8で糸6を挿入したときに、長さhと糸の長さkとの大小関係は、以下の3つの場合が想定される。
【0055】
(A)k>hの関係で構成した場合:糸端Tは「kとhの差分」だけ折り返された状態で糸挿入穴22に深さhまで差し込まれる。
(B)k=hの関係で構成した場合:糸端Tは糸挿入穴22に深さhだけ差し込まれる。
(C)k<hの関係で構成した場合:糸端Tは糸挿入穴に深さkだけ差し込まれる。
【0056】
これらkとhとの大小関係については、個々の設計において、設計者が任意に設定可能であるが、(C)の関係が最も好ましい。その理由を以下に述べる。
(A)の関係では、糸挿入穴22の中で糸6が折り返されて糸端Tの近傍で糸が二重に重なっている部分が生じる。したがって、この場合には、空気圧で糸を搬送するときに、糸の導管内で抵抗になりやすく、糸が円滑に通りにくくなるおそれがある。
(B)の関係は、理論上はこれでよく、(A)の関係よりも望ましい。しかし、個々の部品精度やホルダー10の押し加減等により、kとhの大小関係が変動して、実際には(A)の関係になったり、(C)の関係となったりする可能性があるので、(C)の関係がより望ましい。
(C)の関係では、利用するミシンが必要とする糸挿入穴へ差し込む糸の所定長さと上記長さkが一致するように設定し、かつ、ガイドピン13の突出長さhを、このkより長くしておけば、先の(A)や(B)の関係になることなく安定した動作を行える。よって、(A)の関係とするよりも(B)の関係が望ましく、さらに、(C)の関係がより望ましい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の本体11及び第2の本体12内にガイドピン13を収容し、ホルダー10の操作によりガイドピン13が突出するようにした。これにより、ホルダー10の操作だけで、ガイドピン13と共に糸6が糸挿入穴22内に挿入される。また、糸6は、簡単に所定の長さに切断され、かつ、糸保持ばね16により動きが規制され、糸の挿入が完了するタイミングでその規制が自動的に解除される。よって、本実施形態によれば、従来困難であった空気式糸通し装置への糸の差し込み作業を、作業者の熟練度によらず簡単、かつ、安定して確実に行うことができる。
また、本体を第1の本体11と第2の本体12とに分け、これらがガイドピン13を挟んで構成されるようにして、さらにこれらをホルダー10の円筒穴10bに挿入される形態としたので、全体を小型化することができる。また、この構造によって各構成部品が互いに強度を補うように働くので、小型でありながら十分な強度を確保できる。
さらに、上述の長さkを長さhよりも短く設定することにより、糸挿入動作の安定性をより一層向上できる。
【0058】
(第2実施形態)
図19は、第2実施形態の糸挿入器8Bを示す斜視図である。
第2実施形態は、糸切り刃21の配置方向を変更した形態であり、その他の構成は、第1実施形態と同様である。
このように、糸切り刃21の配置方向を変更することにより、利用するミシンに合わせた使いやすい糸挿入器8Bとすることが可能である。
【0059】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
【0060】
例えば、各実施形態において、ガイドピン13は、板状の部材である例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、ガイドピンを軸状の部材により構成してもよい。
【0061】
また、各実施形態において、本体を第1の本体11と第2の本体12とにより構成した例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、本体を1つの部材によって構成してもよいし、3つ以上の部材により構成してもよい。
【0062】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。