(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱交換器は、前記分解槽の高さ方向に沿ってかつ向かい合わせで設置した一対の入口ヘッダと出口ヘッダとを、該分解槽の高さ方向に多段に配列した複数本の通気パイプで接続して構成され、該出口ヘッダが前記外気導入部に接続されることを特徴とする請求項2に記載の伐採物の分解設備。
前記分解槽には、該分解槽内部の酸素濃度を計測して出力する計測器が設けられると共に、前記外気供給系には、外気の供給量を調節するブロアが設けられ、該ブロアは、上記計測器から入力される酸素濃度が低いことに応じて外気の供給量を増加し、酸素濃度が高いことに応じて外気の供給量を減少することを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の伐採物の分解設備。
前記回動屋根は、人力で移動操作可能な重量で形成され、前記旋回蓋は、人力で旋回移動操作可能な重量で形成されることを特徴とする請求項1〜4いずれかの項に記載の伐採物の分解設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
嫌気性菌による分解処理では、有臭空気や着色廃水が発生し、周辺環境に対し悪影響を与えてしまうと共に、取扱性が良くなく、その対策のためには、処理設備も処理コストも、高コスト化してしまう。
【0007】
これに対し、好気性菌類による分解処理は、有臭空気などの発生の難点がなく取扱性が良好であって、周辺環境に対する悪影響もほとんどないという点で好ましいものであり、そしてこのような好気性菌類の特性を活かした軽便な処理設備の案出が望まれていた。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、好気性菌類を用いて伐採物を分解処理する設備を、操作利便性に優れると共に、簡単かつ低コストな構造で構成することが可能な伐採物の分解設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる伐採物の分解設備は、草葉枝等の伐採物を好気性菌類で分解する伐採物の分解設備であって、上方部が地表面上方に突出されて地中に埋設され、上方部開口が上方へ向けて開放された中空円筒体状の分解槽と、該分解槽の内部中央に、当該分解槽の高さ方向に沿って立設された支柱と、上記分解槽の上記上方部開口を覆う大きさで円錐面状に形成され、その頂点周りに外周縁部が該分解槽の該上方部開口の周方向に沿って移動可能に、上記支柱に回転自在に支持された回動屋根と、該回動屋根に、上記頂点と上記外周縁部との間に位置させて形成され、上記分解槽内部へ伐採物を投入するための投入開口部と、上記回動屋根上に配置され、該回動屋根を介してその一端部が上記支柱に対し回転自在に支持されると共に、他端部が該回動屋根の上記外周縁部側で走行自在に支持され、上記投入開口部を開閉するために、該支柱周りに旋回移動可能な旋回蓋と、上記分解槽の底部に設けられ、外気供給系から供給される外気を該分解槽内部へ導入する外気導入部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記外気供給系には、前記分解槽内に設置され、外気を該分解槽内の反応熱で加熱する熱交換器が備えられていることを特徴とする。
【0011】
前記熱交換器は、前記分解槽の高さ方向に沿ってかつ向かい合わせで設置した一対の入口ヘッダと出口ヘッダとを、該分解槽の高さ方向に多段に配列した複数本の通気パイプで接続して構成され、該出口ヘッダが前記外気導入部に接続されることを特徴とする。
【0012】
前記分解槽には、該分解槽内部の酸素濃度を計測して出力する計測器が設けられると共に、前記外気供給系には、外気の供給量を調節するブロアが設けられ、該ブロアは、上記計測器から入力される酸素濃度が低いことに応じて外気の供給量を増加し、酸素濃度が高いことに応じて外気の供給量を減少することを特徴とする。
【0013】
前記回動屋根は、人力で移動操作可能な重量で形成され、前記旋回蓋は、人力で旋回移動操作可能な重量で形成されることを特徴とする。
【0014】
前記回動屋根及び前記旋回蓋は、軽量フレーム材にテント材を張ったフレーム構造で構成されることを特徴とする。
【0015】
前記回動屋根には、前記分解槽内へ散水する散水部材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる伐採物の分解設備にあっては、好気性菌類を用いて伐採物を分解処理する設備を、操作利便性に優れると共に、簡単かつ低コストな構造で構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる伐採物の分解設備の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、伐採物の分解処理施設に本実施形態に係る伐採物の分解設備を配列した例を示す側断面図、
図2は、本実施形態に係る伐採物の分解設備を示す側断面図、
図3は、
図2に示した伐採物の分解設備を上から見下ろした図、
図4は、
図2に示した伐採物の分解設備に備えられる回動屋根の平面図、
図5は、
図2中、A部拡大図、
図6は、
図2中、B部拡大図、
図7は、
図2に示した伐採物の分解設備に備えられる旋回蓋の平面図、
図8は、
図2に示した伐採物の分解設備に備えられる外気供給系の系統図、
図9は、
図2に示した伐採物の分解設備に備えられる外気導入部及びその周辺部の側断面図である。
【0019】
本発明に係る伐採物の分解設備は、森林除染事業等で集められた草葉枝などの伐採物を、細菌によって分解処理するために採用して好ましい処理設備である。放射性物質で汚染された伐採物は、鋼製缶に密封されて保管されるか、焼却処理される。密封か焼却かのいずれの処理を行う場合であっても、伐採したままの状態では容積が大きく、処理効率が悪い。特に、焼却する場合には、含有されている水分量が多く、処理に要する時間や燃料などのコストが多大となる。このため、伐採物は、予め細菌で分解処理し、減容化した上で、密封したり焼却したりすることが望ましい。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る伐採物の分解設備1は、草葉枝等の伐採物を運搬する運搬車両2が走行する分解処理施設の敷地3内に、例えば横並びにあるいは縦横に、配列して設けられる。伐採物は、伐採物の分解設備1それぞれに、運搬車両2から搬出・投下される。
【0021】
本実施形態に係る伐採物の分解設備1は、
図1〜
図3に示すように、主に、上方部開口4aを有し、その内部では、投下された伐採物が好気性菌類による分解反応で分解していく中空円筒体状の分解槽4と、分解槽4の内部中央に立設された支柱5と、分解槽4の上方部開口4aを覆って設けられる回動屋根6と、伐採物を分解槽4内部へ投入可能とするために回動屋根6に形成された投入開口部7を開閉するための旋回蓋8と、外気を分解槽4内部へ導入するための外気導入部9と、外気導入部9へ外気を供給するための外気供給系10とを備えて構成される。
【0022】
分解槽4は、鋼製または鉄筋コンクリート製で、例えば高さ4m以上、外径6m以上の有底の中空円筒体状に形成され、この場合、伐採物は例えば3m程度(2.5〜3.5m)、堆積されるようになっている。分解槽4の内面には、遮水及び耐蝕性を有する遮水シートが貼付されると共に、ウレアウレタンなどの塗装が施され、分解に伴って発生する廃水の地中浸透が防止される。
【0023】
分解槽4は、上方部4bが地表面G上方に突出される状態で、その周囲を取り囲む盛り土によって地中に埋設されたり、あるいは地表面Gから掘削して形成した削孔内に設置されることによって地中に埋設される。地表面Gからの上方部4bの突出高さは、例えば1m程度とされる。上方部4bの上端には、分解槽4の上方へ向けて開放されて、上方部開口4aが形成される。
【0024】
支柱5は、分解槽4の内部中央、具体的には、分解槽4の平断面中心位置に、分解槽4の高さ方向に沿って上方部開口4aから上方へ僅かに突出するように立設される。支柱5は、鋼製の中空パイプで形成される。支柱5の下端は、分解槽4の底部に溶接接合等で接合され、分解槽4の底部に設けられる外気導入部9に埋設される。
【0025】
回動屋根6は、
図1〜
図6に示すように、分解槽4の上方部開口4aを覆う大きさで、円錐面状に形成される。円錐面状の回動屋根6は、当該円錐面の頂点周りに外周縁部が分解槽4の上方部開口4aの周方向に沿って移動可能に、支柱5に回転自在に支持される。
【0026】
詳細には、回動屋根6は、支柱5の直上にロータリジョイント11を介して回動自在に支持されて、分解槽4の内部中央となる円錐面の頂点に位置して設けられる回動軸12と、分解槽4の上方部4b外回りに上方部開口4aを取り囲むように、円錐面の外周縁部に位置して設けられるリングフレーム13と、回動軸12の上端に一端が回転自在にピン接合され、他端がリングフレーム13に回転自在にピン接合されて、回動軸12から分解槽4の上方部開口4a外方にわたって当該分解槽4の径方向に放射状に配設された複数のメインフレーム14と、回動軸12の下端に固設されたロータリジョイント11に一端が回転自在にピン接合され、他端がメインフレーム13に回転自在にピン接合され、ロータリジョイント11から分解槽4の径方向にかつメインフレーム13へ向けて上向き傾斜で設けられて、メインフレーム13が分解槽4の中央からその径方向に沿って下向き傾斜となるように支持する複数のサブフレーム15と、メインフレーム14に、回動軸12周りにリングフレーム13へ達するように展設されて、上方部開口4aを覆う屋根材16とから構成される。
【0027】
回動屋根6は、その外周縁部に配設されるリングフレーム13の移動を人力で操作可能な重量で形成される。具体的には、回動屋根6は、リングフレーム13やメインフレーム14、サブフレーム15等として、アルミ製などの軽量なフレーム材が採用され、この軽量フレーム材に、屋根材16として、合成繊維製などのテント材等が張られたフレーム構造で構成される。
【0028】
回動屋根6のリングフレーム13は、分解槽4に対し浮いた状態で設置され、回動屋根6全体の重量は、ロータリジョイント11を介して支柱5によって支持される。回動屋根6は、リングフレーム13をその周方向に沿って移動操作することで、外周縁部が分解槽4の上方部開口4aの周方向に沿って移動され、これによって上方部開口4aを覆った状態で分解槽4上方で回転される。
【0029】
回動屋根4には、
図3及び
図4に示すように、頂点である回動軸12と外周縁部であるリングフレーム13との間に位置させて、適宜大きさの投入開口部7が形成される。投入開口部7は例えば、メインフレーム14やリングフレーム13に接合固定して設けられる開口部形成用の枠材17で囲った部分には屋根材16を設けないことによって形成される。投入開口部7は、回動屋根6が回転されることにより、分解槽4の周方向に沿って移動される。
【0030】
図6に示すように、分解槽4の上方部4bには、その周方向に適宜間隔を隔てて係合穴を有する回転規制部18が配設され、リングフレーム13の適宜箇所に設けられた挿通穴と当該係合穴とにロックピン19を挿抜自在に挿通することで、回動屋根6の回転が規制され、これにより投入開口部7が一時的に位置固定されるようになっている。
【0031】
旋回蓋8は、
図2,3,5〜7に示すように、回動屋根6上に配置され、回動屋根6を介してその一端部が支柱5に対し回転自在に支持されると共に、他端部が回動屋根6の外周縁部側で走行自在に支持され、支柱5周りに旋回移動可能に構成される。
【0032】
詳細には、旋回蓋8は、回動屋根6の回動軸12の直上にロータリジョイント20を介して回動自在に支持されて、分解槽4の中央に位置して設けられる旋回軸21と、リングフレーム13上に走行車輪22を介して走行自在に支持された環状の走行フレーム23と、旋回軸21に一端が回転自在にピン接合され、他端が回動屋根6の外周縁部側に位置する走行フレーム23に接合されて、走行フレーム23と旋回軸21との間に組まれた蓋用枠材24と、蓋用枠材24に展設されて、投入開口部7を覆う蓋材25とから構成される。
【0033】
旋回蓋8は、その旋回移動を人力で操作可能な重量で形成される。具体的には、旋回蓋8は、走行フレーム23や蓋用枠材24等として、アルミ製などの軽量なフレーム材が採用され、この軽量フレーム材に、蓋材25として、合成繊維製などのテント材等が張られたフレーム構造で構成される。旋回蓋8全体の重量は、ロータリジョイント20を介して回動屋根6、ひいては支柱5によって支持される。因みに、ロータリジョイント11,20は同様の構造であって、例えば、上下2枚のリング状の鋼板を、ボールベアリングを介して重ね合わせ、ずれ止めとして、鋼板の中央に芯材を挿入し、かつ鋼板の外周にストッパを設けて構成される。
【0034】
旋回蓋8は、走行フレーム23をその周方向に沿って操作することで、分解槽4の上方部開口4aの周方向に沿って移動され、これによって回動屋根6の投入開口部7を開閉するように分解槽4上方で旋回される。旋回蓋8上方には、旋回軸21に取り付けて、雨仕舞い26が設けられる。
【0035】
回動屋根6と、回動屋根6の投入開口部7を開閉自在に閉じる旋回蓋8等により、分解槽4内への雨水流入防止、伐採物の外部飛散防止が図られると共に、分解槽4の周囲のどの位置からでも各種作業、具体的には伐採物の投下作業やバックホウなどによる処理物の切り返し作業、処理後の搬出作業等を行うことができる。
【0036】
この結果、分解設備1を複数設置した施設であっても、1台のバックホウで各種作業を行うことができて、各分解設備1内の伐採物を均等に均すための設備や切り返し作業(伐採物の撹拌作業)を行うための設備を別途設ける必要がなく、分解設備1に備える設備のコストを削減できる。
【0037】
本実施形態に係る伐採物の分解設備1には、
図2,3,8,9に示すように、分解反応を助ける外気を分解槽4内部へ導入するために、また、分解処理後の後工程で風乾等による含有水分量の低減のために、外気供給系10と、外気導入部9が備えられる。外気導入部9は、伐採物が堆積される分解槽4の底部に設けられる。外気供給系10は、分解槽4外部と外気導入部9とを結んで設けられる。
【0038】
外気供給系10は、分解槽4に隣接して設けられ、蓋27で開閉される人坑28の底部に設置され、外気を圧送するブロア29と、埋設された分解槽4の下方部分と人坑28とを連通して、ブロア29から外気を分解槽4内へ送り込むための横穴状経路30と、分解槽4内部に配設され、横穴状経路30と外気導入部9とを接続する供給配管31と、供給配管31の途中に位置させて分解槽4内に設置され、外気を分解槽4内の分解発酵熱などの反応熱で加熱する熱交換器32とを備えて構成される。
【0039】
熱交換器32は、分解槽4の高さ方向に沿ってかつ向かい合わせで設置した一対の入口ヘッダ32aと出口ヘッダ32bとを、分解槽4の高さ方向に多段に配列した複数本の通気パイプ32cで接続して構成され、出口ヘッダ32bが供給配管31を介して外気導入部9に接続され、外気導入部9に加温された外気(暖気)が供給される。供給配管31は、熱交換器32の下流側では、複数に分岐されて、分解槽4内の広い範囲にわたって配設される。
【0040】
外気導入部9は
図9に示すように、最下部の耐圧性散気マット層33上に、支持砕石層34と濾過砂層35とを順次積層することによって構成される。散気マット層33中には、有孔塩ビ管あるいは有孔高密度ポリエチレン管などの外気噴出管36が設けられる。外気噴出管36の外周は、分解物等の付着による送気能力低下や分解槽内の滞留水の流出を防止するために、メンブレンフィルタや不織布などの資材で被覆される。
【0041】
図8に示すように、分岐された各供給配管31の先端に、外気噴出管36が接続され、ブロア29から圧送されて熱交換器32で加温された外気は、外気噴出管36から噴出され、噴出された外気は、支持砕石層34、濾過砂層35を通じて、その上方の伐採物に向けて供給される。
【0042】
分解槽4の支柱5には、分解槽4内部の酸素濃度を計測して出力する計測器37が設けられる。外気供給系10のブロア29は、外気の供給量を調節自在に構成される。ブロア29には、支柱内配線を介して計測器37が接続され、計測器37からの出力が入力される。ブロア29は、計測器37から入力される酸素濃度が設定値に比して低いことに応じて外気の供給量を増加し、酸素濃度が設定値に比して高いことに応じて外気の供給量を減少するようになっている。
【0043】
計測器37は、図示例では、支柱5の下部と上部とに高さを隔てて設置され、分解槽4内の酸素濃度を広範囲に計測できるようになっている。
【0044】
回転される回動屋根6には、分解槽4内へ散水する散水部材38が設けられ、散水により分解反応を促進するようになっている。散水部材38は、散水孔を有する中空パイプであって、回動軸12から横向きに張り出して設けられ、支柱5から回動軸12に亘ってそれらの内部に設けられた給水管を介して外部から供給される給水を、分解槽4内に散水するようになっている。
【0045】
次に、本実施形態に係る伐採物の分解設備1の作用について説明する。回動屋根6を回転することにより、投入開口部7の位置を分解槽4の周方向に沿って変えることができる。また、旋回蓋8を旋回することにより、投入開口部7の位置に旋回移動して閉じたり、あるいは、閉じている投入開口部7を開放することができる。これら旋回蓋8及び回動屋根6は、上述したように軽量な構造体なので、手で動かすなど、人力で操作することができる。
【0046】
運搬車両2から搬出される伐採物は、投入開口部7から分解槽4内に投下される。投入開口部7の位置を変えることができるので、異なる位置の投入開口部7から伐採物を投下することで、分解槽4内に満遍なく、ほぼ等しい高さで、分解槽4内に伐採物を堆積させることができる。このような投下作業は、複数回実施されるが、各投下作業が完了する度に、旋回蓋8で投入開口部7を閉じることができ、分解槽4からの塵埃等の放出を防ぐことができる。
【0047】
分解槽4から処理物を搬出する際も、ほぼ同様である。このように、回動屋根6と旋回蓋8の組み合わせにより、高い操作利便性を確保することができる。伐採物の分解処理は、分解槽4内で自然に始まるが、後述するように、温度管理や湿度管理を行うことで、分解反応を促進することができる。分解槽4内部には、その底部に設けられた外気導入部9から外気が導入され、この構成だけによっても分解槽4内部の雰囲気を調整することができる。
【0048】
外気導入部9に外気を供給する外気供給系10に、外気の供給量を調節するブロア29が設けられていて、外気供給量を制御して、分解槽4内部の雰囲気をアクティブに調整することができる。分解槽4内部の酸素濃度が計測器37からブロア29に入力されるので、ブロア29により、酸素濃度が低いときには外気供給量を増加し、酸素濃度が高いときには外気供給量を減少するなどして、反応制御を行うことができる。
【0049】
散水部材38から散水を行うことで、分解槽4内部の湿度調節を行うことができる。具体的には、好気性菌類によって分解発酵させる伐採物の分解設備1であり、嫌気性菌類の場合のように悪臭が発生することがないため、分解槽4を密閉する必要がなく、回動屋根6と旋回蓋8は簡易な構造としている。回動屋根6と分解槽4の間や、回動屋根6と旋回蓋8との間には隙間があり、これらの隙間から分解槽4内部の水分が蒸気として外部に放出されるが、散水部材38による散水によって分解槽4内部の湿度を調節することができる。
【0050】
外気供給系10に設けられる熱交換器32は、分解槽4内に設置されることで、分解槽4内の反応熱を利用して外気を加温することができ、そして加温された外気が、外気導入部9から分解槽4内に噴出されるので、熱のリサイクルを確保しながら、反応を促進することができ、省エネルギ化を確保することができる。また、分解槽4内の反応熱を利用しているため、導入される外気が必要以上に高温になることもない。
【0051】
熱交換器32は、伐採物の堆積方向である分解槽4の高さ方向に沿ってかつ向かい合わせで設置した一対の入口ヘッダ32aと出口ヘッダ32bとを、分解槽4の高さ方向に多段に配列した複数本の通気パイプ32cで接続して構成され、出口ヘッダ32bが外気導入部9に接続されるので、分解槽4内で分解処理される伐採物の堆積態様に相応しい構造で構成されていて、分解反応熱を効率良く回収して外気を加熱することができる。
【0052】
本実施形態に係る伐採物の分解設備1は、おおよそ、支柱5で支持するようにした回動屋根6及び旋回蓋8の他、外気供給系10と外気導入部9を設備することで完成することができ、簡単かつ低コストに構成することができる。
【0053】
分解処理の概要を説明すると、分解槽4内での伐採物の堆積高さを概ね3m程度(2.5〜3.5m)とし、好気性分解菌の活性に適した外気の送気量と送気時間を制御して供給することで、嫌気性分解菌を不活性化して、好気性中温菌群(活性域温度30〜50℃)から好気性高温菌群(活性域温度50〜70℃)へのリレー分解を確保しつつ、分解発酵熱を概ね50〜60℃程度に保持するようにし、これにより短期間で減容化及び減量化することができる。
【0054】
例えば、分解槽4に投入した草100m
3 当たりの送気量と送気時間は、送気量30〜100m
3 /h程度で送気時間4〜24h/日程度を、時期(季節)と分解段階(投入時、高温域分解時、中温域分解時)を考慮して調整する。
【0055】
例えば、草の集積地容量Am
3に対する分解後容量Cm
3で示す減容化率(C/A)は20%程度、搬送用のフレキシブルコンテナに詰めた容量Bm
3に対する分解後容量Cm
3で示す減容化率(C/B)は60%程度である。また、フレキシブルコンテナに詰めた重量Bkgに対する分解後重量Ckgで示す減量化率は70%程度である。
【0056】
さらに、分解後処理工程の風乾処理によって、分解後の含水率を10%程度低減することが可能であり、このときのフレキシブルコンテナに詰めた重量Bkgに対する後処理重量Dkgで示す減量化率(D/B)は65%程度である。
【0057】
好気性菌による草葉枝の分解生成物は水と炭酸ガスであり、嫌気性菌による分解と比較して、分解速度が速く、悪臭がほとんど無く、高温の発酵熱の保持により病原菌等を不活性化することができる。
【0058】
また、分解により生じる水分の殆どが蒸気として排出されるため、廃水量が少なく、分解後の残さの水分調整も容易である。例えば、草の易分解成分(難分解成分セルロース、リグニンを除く)の好気性菌による分解期間は、2週間程度である。
【0059】
また、廃水量では分解槽100m
3 当たり、フレキシブルコンテナに詰めた時点と後処理時点の水分量の差は、6,700L程度であるが、分解槽内滞留水は6L程度で、殆どが蒸気となって大気中に排出される。
【0060】
分解槽4内の熱交換器32を使用し、年間を通して30℃程度以上の暖気を送気することによって、分解槽4全体で好気性中温菌群及び高温菌群の活性化を促進することが可能になり、均一な分解期間を確保することができる。
【0061】
例えば、晩秋や春先の外気温度は10℃程度を下回るが、外気を直接分解槽4の底部から給気する場合、下層部(底から1m程度)の分解発酵温度は、中層部から上層部が50〜60℃の状況下でも、20℃程度に留まる。その場合、好気性低温菌群の糸状菌などによる難分解物質の分解が促進されて易分解物質の分解が低下し、分解期間が長期化するが、熱交換器32の作用で30℃程度以上の暖気を送気することにより、好気性中温菌群及び高温菌群を活性化し、低温菌群を不活性化することができる。
【0062】
好気性分解を促進する目的で、一般に実施される重機などによる切り返しに加えて、分解槽4の底部に外気導入部9を設置していて、伐採物の堆積物に向けて上方向に送気することにより、必要に応じて外気供給量と供給時間を制御することにより、嫌気性菌の活性を制限し、好気性菌による分解を促進することができる。
【0063】
以上要するに、本実施形態に係る伐採物の分解設備1にあっては、草葉枝等の伐採物を好気性菌類で分解する伐採物の分解設備1であって、上方部4bが地表面G上方に突出されて地中に埋設され、上方部開口4aが上方へ向けて開放された中空円筒体状の分解槽4と、分解槽4の内部中央に、当該分解槽4の高さ方向に沿って立設された支柱5と、分解槽4の上方部開口4aを覆う大きさで円錐面状に形成され、その頂点周りに外周縁部が分解槽4の上方部開口4aの周方向に沿って移動可能に、支柱5に回転自在に支持された回動屋根6と、回動屋根6に、頂点と外周縁部との間に位置させて形成され、分解槽4内部へ伐採物を投入するための投入開口部7と、回動屋根6上に配置され、回動屋根6を介してその一端部が支柱5に対し回転自在に支持されると共に、他端部が回動屋根6の外周縁部側で走行自在に支持され、投入開口部7を開閉するために、支柱5周りに旋回移動可能な旋回蓋8と、分解槽4の底部に設けられ、外気供給系10から供給される外気を分解槽4内部へ導入する外気導入部9とを備えたので、好気性菌類を用いて伐採物を分解処理する設備を、操作利便性に優れると共に、簡単かつ低コストな構造で構成することができる。
【0064】
本発明に係る伐採物の分解設備1は、伐採物の資源化利用施設、焼却処分の前処理施設、屋根付き処分場などの最終処分施設に対して適用することができる。