特許第6570992号(P6570992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6570992加圧式汚泥脱水機用洗浄剤および加圧式汚泥脱水機の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570992
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】加圧式汚泥脱水機用洗浄剤および加圧式汚泥脱水機の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/10 20060101AFI20190826BHJP
   C11D 7/14 20060101ALI20190826BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20190826BHJP
   C11D 7/20 20060101ALI20190826BHJP
   C11D 7/04 20060101ALI20190826BHJP
   C02F 11/12 20190101ALI20190826BHJP
   B30B 9/14 20060101ALI20190826BHJP
   B30B 9/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C11D7/10ZAB
   C11D7/14
   C11D7/22
   C11D7/20
   C11D7/04
   C02F11/12
   B30B9/14 B
   B30B9/06 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-244282(P2015-244282)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-130301(P2016-130301A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2018年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-4206(P2015-4206)
(32)【優先日】2015年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597127948
【氏名又は名称】友岡化研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 倫和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英則
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−60298(JP,A)
【文献】 特開2004−25041(JP,A)
【文献】 特開2000−70685(JP,A)
【文献】 実開昭57−195411(JP,U)
【文献】 特表2004−504126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00 − 19/00
B30B 9/06
B30B 9/14
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸の1価塩(A)および/またはケイ酸の1価塩(B)を含有する加圧式汚泥脱水機(C)用洗浄剤(D)。
【請求項2】
さらに水溶性高分子(E)を含有する請求項1に記載の洗浄剤(D)。
【請求項3】
水溶性高分子(E)の数平均分子量が1,000〜1,000,000である請求項2に記載の洗浄剤(D)。
【請求項4】
アルミン酸の1価塩(A)およびケイ酸の1価塩(B)の合計重量に対する水溶性高分子(E)の重量比率が0.1〜600重量%である請求項2または3に記載の洗浄剤(D)。
【請求項5】
水溶性高分子(E)が、不飽和カルボン酸(f1)および/またはその塩(f2)を必須構成単位とする重合体(E1)である請求項2〜4のいずれか1項に記載の洗浄剤(D)。
【請求項6】
不飽和カルボン酸(f1)が(メタ)アクリル酸である請求項5に記載の洗浄剤(D)。
【請求項7】
さらに、第II族の元素の酸化物(J)、第III族の元素の酸化物(G)、複塩(H)および錯塩(L)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄剤(D)。
【請求項8】
アルミン酸の1価塩(A)およびケイ酸の1価塩(B)の合計重量に対する、第II族の元素の酸化物(J)、第III族の元素の酸化物(G)、複塩(H)および錯塩(L)の合計重量比率が0.1〜200重量%である請求項7に記載の洗浄剤(D)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の加圧式汚泥脱水機(C)用洗浄剤(D)を使用する加圧式汚泥脱水機(C)の洗浄方法。
【請求項10】
加圧式汚泥脱水機(C)がスクリュープレス、回転加圧式脱水機または二重円筒加圧脱水機である請求項9に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場で用いる加圧式汚泥脱水機のろ材目詰まりを解消するための洗浄剤および本洗浄剤を用いた加圧式汚泥脱水機の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性汚泥式下水処理は、充分に酸素濃度を高くした排水内に好気性の細菌類、原生動物からなる活性汚泥を加えることにより有機物を酸化分解した後、不要になった汚泥を沈降分離や濾過で除去することで清浄な水を得るという下水処理法であり、大量の汚水処理に適することから日本国内でも多くの下水処理場で広く適用されている。
不要になった汚泥の処理に関しては、汚泥の分離時間を短縮するために高分子凝集剤を添加し、凝集させた汚泥を機械脱水等により分離するという方法が一般的であり、機械脱水装置としては、スクリュープレス、回転加圧式脱水機、二重円筒加圧脱水機等の加圧式汚泥脱水機が普及しつつある。加圧式汚泥脱水機が普及した理由としては、フロック濃度が低い汚泥に対しても高い脱水性能を発揮できること、構造がシンプルで低騒音、省エネルギーが可能になる等が挙げられるが、半面、排水から汚泥凝集物を分離するためのろ材(通常スクリーン、スリット、網、多孔板等で構成される)が運転中すぐに目詰まりを起こすことから頻繁に洗浄を行わないといけないというメンテナンスや設備稼働率に関する問題があった。これら問題を解決するために、目詰まりしたろ材を加圧水や加圧空気で洗浄できるような機構を装置に盛り込む方法(特許文献1)、または装置本体を濃縮ゾーンとろ過・脱水ゾーンに分割する方法(特許文献2)や特殊な柔軟成形体を設ける(特許文献3)方法により問題解決をはかろうとする提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−321989号公報
【特許文献2】特開2002−273114号公報
【特許文献3】特開2001−321990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ろ材に一度汚泥凝集物が目詰まりすると、汚泥凝集物に含まれるスケールや無機塩成分がろ材の目に頑固にこびり付きかつ堆積してしまうことから、従来提案されてきた装置自体の改善提案では充分な洗浄効果が得られるとは言い難く、更に洗浄水に水酸化ナトリウムなどのアルカリ成分を加えたアルカリ洗浄水にするなど洗浄水自体の洗浄性を向上させようとする方法も提案されているが充分な効果は得られていない。本発明の目的は、加圧式汚泥脱水機のろ材に目詰まりした汚泥凝集物を効果的に除去できる洗浄剤および汚泥凝集物が目詰まりした加圧式汚泥脱水機の洗浄時間を短縮することで処理効率を上げることができる加圧式汚泥脱水機の洗浄方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、アルミン酸の1価塩(A)および/またはケイ酸の1価塩(B)を含有する加圧式汚泥脱水機(C)用洗浄剤(D)、および、該洗浄剤(D)を使用する加圧式汚泥脱水機(C)の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の加圧式汚泥脱水機(C)用洗浄剤(D)は、汚泥凝集物が目詰まりした加圧式汚泥脱水機の洗浄時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の加圧式汚泥脱水機(C)用洗浄剤(D)は、アルミン酸の1価塩(A)および/またはケイ酸の1価塩(B)を含有する。洗浄剤(D)がアルミン酸の1価塩(A)およびケイ酸の1価塩(B)の混合物である場合は、(A):(B)の重量比は、好ましくは80:20〜20:80の範囲、更に好ましくは65:35〜35:65の範囲である。
【0008】
本発明におけるアルミン酸の1価塩(A)としては、メタアルミン酸アルカリ金属塩およびその水和物、オルトメタアルミン酸アルカリ金属塩およびその水和物が挙げられ、具体的にはNaAlO、KAlO、LiAlO、NaAlO・5/4HO、NaAlO・3HO、KAlO.・3/2HOなどが挙げられる。工業品としては、任意の割合でNaO/Alのモル比を調整した商品が市販されており、例えば浅田化学工業株式会社製の#1219(NaO/Al=2.47〜2.63)、#1819(NaO/Al=1.65〜1.78)、#1919(NaO/Al=1.70〜1.75)、#2019(NaO/Al=1.50〜1.63)、P100(NaO/Al=1.0〜1.2)などが挙げられる。
アルミン酸の1価塩(A)として好ましいものはアルミン酸ナトリウム塩であり、更にNaO/Alのモル比は好ましくは1.0〜3.0であり、更に1.0〜2.0の範囲のものが洗浄効果の観点から好ましい。
【0009】
本発明におけるケイ酸の1価塩(B)としては、メタケイ酸アルカリ金属塩およびその水和物、オルトケイ酸アルカリ金属塩およびその水和物、2ケイ酸ナトリウムおよびその水和物、4ケイ酸ナトリウムおよびその水和物などが挙げられる。具体的にはNaSiO、NaSiO、NaSi、NaSi、KSiO、KSiO、KSi、KSi、LiSiO、LiSiO、LiSi、LiSiおよびそれら塩の水和物などが挙げられる。工業品としては、任意の割合でSiO/NaOのモル比を調整した商品が市販されており、例えば富士化学株式会社製の1号水ガラス(SiO/NaO=2.0〜2.3)、2号水ガラス(SiO/NaO=2.4〜2.5)、3号水ガラス(SiO/NaO=3.1〜3.3)、4号水ガラス(SiO/NaO=3.3〜3.5)、5号水ガラス(SiO/NaO=3.6〜3.8)、メタケイ酸ナトリウム2種(9水塩)(SiO/NaO=0.89〜1.14)などが挙げられる。
ケイ酸の1価塩(B)として好ましいものはケイ酸ナトリウム塩であり、更にSiO/NaOのモル比は好ましくは0.8〜4.0であり、更に1.8〜3.5の範囲のものが洗浄効果から好ましい。
【0010】
また、本発明の洗浄剤(D)は、必要に応じて水溶性高分子(E)を含有することが好ましい。
本発明における水溶性高分子(E)としては、不飽和カルボン酸(f1)および/またはその塩(f2)を必須構成単位とする重合体(E1)[ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸/メタクリル酸共重合物、アクリル酸/クロトン酸共重合物、アクリル酸/イタコン酸共重合物、アクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合物などの(メタ)アクリル酸系重合物等]、および(E1)以外の公知の水溶性高分子(E2)が挙げられ、(E2)の例としては、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコールなどの非イオン性水溶性高分子、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ポリリン酸などのアニオン性水溶性高分子、ポリアミン、エピクロルヒドリン/アミン縮合物、アミノメタクリレート系重合物などのカチオン性水溶性高分子などが挙げられる。これらの中で、不飽和カルボン酸(f1)および/またはその塩(f2)を必須構成単位とする重合体(E1)が好ましい。
【0011】
水溶性高分子(E)の数平均分子量(以下Mnと略記する)は、洗浄効果の観点から好ましくは1,000〜1,000,000であり、更に好ましくは5,000〜200,000、特に好ましくは9,000〜50,000である。
なお、水溶性高分子(E)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定することができる。
<Mnの測定条件>
装置 :「Model510A」[Waters社製]
カラム :「TSK gel G3000PW」、「TSKGel G6000PWXL」[東ソー(株)製]
測定温度 :40℃
試料溶液 :水/メタノール=70/30(体積比)に酢酸ナトリウムを2.5重量%溶解させた溶媒を用いて、0.5重量%溶液に調整したもの
溶液注入量:200μl
検出装置 :「waters410」[Waters社製]
標準 :ポリエチレングリコール
【0012】
洗浄剤(D)において、水溶性高分子(E)が含まれる場合、アルミン酸の1価塩(A)およびケイ酸の1価塩(B)の合計重量に対する水溶性高分子(E)の重量比率(重量%)は、洗浄性の観点から好ましくは0.1〜600重量%、さらに好ましくは、40〜250重量%である。
【0013】
重合体(E1)の必須構成単位である不飽和カルボン酸(f1)としては、(メタ)アクリル酸[アクリル酸およびメタクリル酸を示す]、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の炭素数3〜18の不飽和カルボン酸及びその無水物等が挙げられる。これらの中で、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0014】
重合体(E1)の必須構成単位である不飽和カルボン酸の塩(f2)としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の炭素数3〜18の不飽和カルボン酸のアルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム及びマグネシウム等)塩、アンモニウム塩、有機アミン[炭素数1〜12のアルカノールアミン(ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)塩、炭素数1〜12のアルキルアミン(ブチルアミン、ヘキシルアミン及びオクチルアミン等)塩]及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩並びにこれらの2種以上の併用であり、更に好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸のトリエタノールアミン塩、及び、メタクリル酸のトリエタノールアミン塩であり、特に好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩である。また、アルカリ金属塩として特に好ましいものは、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0015】
本発明における重合体(E1)は、構成単位として不飽和カルボン酸(f1)および/またはその塩(f2)以外の他の単量体(f3)をさらに含んでいてもよい。
【0016】
このような単量体(f3)としては、不飽和カルボン酸(f1)、不飽和カルボン酸の塩(f2)と共重合しうるビニル単量体であればその種類は特に限定されない。
このような単量体(f3)としては、例えば以下のアニオン性親水性単量体(f31)、カチオン性親水性単量体(f32)、非イオン性親水性単量体(f33)及び疎水性単量体(f34)が挙げられる。
【0017】
アニオン性親水性単量体(f31)としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルの硫酸エステル等のスルホン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びフマル酸等のモノアルキル(炭素数1〜12)若しくはアルケニルエステル、(アルコキシ)(ポリ)エチレングリコールエステル、(アルコキシ)(ポリ)プロピレングリコールエステル等およびこれらの塩が挙げられる。塩を構成するカチオンとしては、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン等のアルカリ金属カチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン等のアルカリ土類金属カチオン、有機アミンカチオンが挙げられる。
【0018】
カチオン性親水性単量体(f32)としては、トリメチル(メタ)アクリロイロキシエチルアンモニウムクロライド、ジメチル(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩基含有単量体、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0019】
非イオン性親水性単量体(f33)としては(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル(アルコキシ)(ポリ)エチレングリコールエステル、(メタ)アクリル(アルコキシ)(ポリ)プロピレングリコールエステル、(アルコキシ)(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(アルコキシ)(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0020】
疎水性単量体(f34)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンが挙げられる。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸等のモノアルキル(炭素数1〜12)又はアルケニルエステル、並びに、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びフマル酸等のジアルキル(炭素数1〜12)又はジアルケニルエステル等が挙げられる。
【0021】
重合体(E1)の構成単位に不飽和カルボン酸(f1)と不飽和カルボン酸の塩(f2)が両方含まれる場合、(f1):(f2)のモル比は、好ましくは99.9:0.1〜0.1:99.9、更に好ましくは30:70〜10:90の範囲である。
【0022】
重合体(E1)の構成単位としてさらに単量体(f3)を加える時の単量体(f3)の割合は不飽和カルボン酸(f1)と不飽和カルボン酸の塩(f2)の合計モル数に基づき、好ましくは10〜900モル%であり、更に好ましくは30〜500モル%、特に好ましくは50〜100モル%である。
【0023】
重合体(E1)の製法は特に制限はなく、例えば溶液重合法により製造することができる。具体的には、不飽和カルボン酸(f1)および/またはその塩(f2)と必要によりその他の単量体(f3)を、溶剤[例えば、水、イソプロピルアルコール、トルエン、エチレンジクロライド、メチルエチルケトン及びこれらの2種以上の混合溶媒等]中で、50〜150℃で常圧又は加圧下で重合する方法が挙げられる。
重合体(E1)の重合にはラジカル重合開始剤[過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル等)及び過酸化物(ベンゾイルパーオキサイド及びジクミルパーオキサイド等)等]を、不飽和カルボン酸(f1)および/またはその塩(f2)と必要によりその他の単量体(f3)との合計重量に対し、好ましくは0.1〜15重量%使用することができる。
重合体(E1)の重合には、必要により、連鎖移動剤(ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸及びメルカプトエタノール等)を使用することができる。
【0024】
重合体(E1)の構成単位として不飽和カルボン酸(f1)を用いた場合は、重合後必要により中和剤[アルカリ金属の水酸化物(水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等)、水酸化アンモニウム及びアンモニア等]を用いて、共重合体の完全又は部分中和塩とすることができる。
【0025】
また、本発明の洗浄剤(D)には、必要に応じて、第II族の元素の酸化物(J)、第III族の元素の酸化物(G)、複塩(H)および錯塩(L)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
第II族の元素の酸化物(J)としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムの酸化物が挙げられる。
第III族の元素の酸化物(G)としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジリウムおよびタリウムの酸化物が挙げられる。これらのうち好ましいものは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムであり、最も好ましいものは酸化マグネシウムである。
複塩(H)としては、ナトリウムミョウバン、カリウムミョウバンおよびアンモニウムミョウバンが挙げられる。
錯塩(L)としては、一価の錯アニオンを含む塩{エチレンジアミンテトラアセタトコバルト酸(III)アルカリ金属塩など}、二価の錯アニオンを含む塩{エチレンジアミンテトラアセタトニッケル酸(III)アルカリ金属塩など}および三価以上の錯アニオンを含む塩{トリオキシザラトアルミン酸(III)アルカリ金属塩}、ジ−μヒドロキソビス{ジオキザラトコバルト酸(III)}アルカリ金属塩、ヘキサニトロコバルト酸(III)アルカリ金属塩など}が挙げられる。
上記において、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。これらのうち、好ましいものはナトリウム塩である。
【0026】
洗浄剤(D)において、第II族の元素の酸化物(J)、第III族の元素の酸化物(G)、複塩(H)および錯塩(L)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する場合、アルミン酸の1価塩(A)およびケイ酸の1価塩(B)の合計重量に対するこれらの合計重量の比率(重量%)は、通常0.1〜200重量%、好ましくは、10〜50重量%である。
【0027】
また、本発明の洗浄剤(D)には、必要に応じて他の添加剤(K)を含有させることができる。添加剤(K)の具体例としては、ニトリロトリスプロピオン酸、ピペラジンザンテートなどのキレート剤、アルキルスルホコハク酸ソーダなどの浸透剤、ニトロソアミンなどの防錆剤、過酸化水素などの消臭剤、塩化ベンザルコニウムなどの殺菌剤、グリセリン、エチレングリコール、炭酸カリウムなどの補助剤などが挙げられる。洗浄剤(D)においてこれらの添加剤(K)が含まれる場合、アルミン酸の1価塩(A)およびケイ酸の1価塩(B)の合計重量に対する他の添加剤(K)の重量比率(重量%)は、通常0.1〜100重量%、好ましくは、10〜50重量%である。
【0028】
本発明における加圧式汚泥脱水機(C)は排水をろ材を用いて高圧圧搾することにより汚泥フロックを分離する方式の脱水機であり、スクリュープレス、回転加圧式脱水機、二重円筒加圧脱水機、フィルタープレス、ベルトプレスなどの公知の脱水機が挙げられる。これらの内、好ましい脱水機はスクリュープレス、回転加圧式脱水機または二重円筒加圧脱水機であり、更に好ましくはスクリュープレス、二重円筒加圧脱水機が挙げられる。また、加圧式汚泥脱水機に用いられるろ材としては、ポリプロピレン樹脂製ろ材、金属製ろ材、セラミック製ろ材など公知の材質のものが挙げられ、これらの内、金属製ろ材が費用、耐久性の面でより好ましい。
【0029】
本発明の洗浄方法は、本発明の加圧式汚泥脱水機(C)用洗浄剤(D)を使用する加圧式汚泥脱水機(C)の洗浄方法である。
本発明の洗浄剤(D)は、通常水溶液として希釈して使用される。その際の水溶液濃度は適宜選びうるが、通常0.01〜50%、好ましくは0.1〜20%である。また、希釈水としては、汚泥脱水を行う処理場における場内処理水、脱水工程での回収水、水道水など任意に選ぶことができる。
【0030】
本発明における汚泥は、下水、し尿、畜産排水等で生じる有機性汚泥が特に限定なく対象となる。また、脱水前に使用される凝集剤としても、公知の無機凝集剤、高分子凝集剤がとくに限定なく使用できる。
【0031】
本発明の洗浄剤を用いてろ材を洗浄する方法は、従来より水や公知のアルカリ水を用いて行われてきた公知の洗浄方法に準拠することができる。具体的には、分解した脱水機からろ材を取り出して洗浄液をかけ洗いながらブラシでこすったり、高濃度の洗浄液に浸積洗いする方法や、脱水機の運転中もしくは停止中にろ材に洗浄剤水溶液を連続噴射したり、予め脱水機に備えられた逆洗用のラインに洗浄剤水溶液を連続循環する方法などが挙げられる。これらの内、実用面から好ましいのは逆洗用ラインを用いて洗浄剤水溶液を連続循環する方法である。ろ材に噴射する場合、方法、噴射量、噴射時間、噴射頻度等については、公知の方法、条件が適宜採用できる。
【実施例】
【0032】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔合成例1〕[水溶性高分子(E1−1)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、水350重量部を投入した。窒素置換後、撹拌下100℃に昇温し、アクリル酸ナトリウム200重量部を水400重量部に溶解させたものと、過硫酸ナトリウム5重量%水溶液50重量部をそれぞれ別の滴下ロートから同時に3時間かけて滴下し、水溶性高分子(E1−1)を得た。
【0033】
〔合成例2〕[水溶性高分子(E1−2)の製造]
合成例1のアクリル酸ナトリウムをメタクリル酸ナトリウムに変える以外は合成例1と同様にして水溶性重合体(E1−2)を得た。
【0034】
〔合成例3〕[水溶性高分子(E1−3)の製造]
合成例1のアクリル酸ナトリウムをメタクリル酸ナトリウムに、過硫酸ナトリウム5重量%水溶液を過硫酸ナトリウム10重量%水溶液に変える以外は合成例1と同様にして水溶性高分子(E1−3)を得た。
【0035】
〔合成例4〕[水溶性高分子(E1−4)の製造]
合成例1の過硫酸ナトリウム5重量%水溶液を過硫酸ナトリウム2重量%水溶液に変える以外は合成例1と同様にして水溶性高分子(E1−4)を得た。
【0036】
〔合成例5〕[水溶性高分子(E1−5)の製造]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、水400重量部を投入した。窒素置換後、撹拌下100℃に昇温し、80%アクリル酸水溶液240重量部と、過硫酸ナトリウム1重量%水溶液100重量部をそれぞれ別の滴下ロートから、同時に3時間かけて滴下した後、40%水酸化ナトリウム水溶液260重量部を投入後、均一混合することにより水溶性高分子(E1−5)を得た。
【0037】
〔合成例6〕[水溶性高分子(E1−6)の製造]
合成例5の過硫酸ナトリウム1重量%水溶液を過硫酸ナトリウム0.5重量%水溶液に変える以外は合成例5と同様にして水溶性重合体(E1−6)を得た。
【0038】
〔合成例7〕[水溶性高分子(E1−7)の製造]
合成例5の過硫酸ナトリウム1重量%水溶液を過硫酸ナトリウム0.2重量%水溶液に変える以外は合成例5と同様にして水溶性重合体(E1−7)を得た。
【0039】
〔合成例8〕[水溶性高分子(E1−8)の製造]
合成例1のアクリル酸ナトリウム200重量部をアクリル酸ナトリウム153重量部とイタコン酸ナトリウム25重量部とアクリルアミド22重量部に変える以外は合成例1と同様にして水溶性重合体(E1−8)を得た。
【0040】
〔合成例9〕[水溶性高分子(E1−9)の製造]
合成例1のアクリル酸ナトリウム200重量部をメタクリル酸ナトリウム130重量部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート70重量部に変える以外は合成例1と同様にして水溶性重合体(E1−9)を得た。
【0041】
〔合成例10〕[水溶性高分子(E1−10)の製造]
合成例5の40%水酸化ナトリウム水溶液260重量部を40%水酸化ナトリウム水溶液130重量部、水130重量部に変える以外は合成例5と同様にして水溶性重合体(E1−10)を得た。
【0042】
〔合成例11〕[水溶性高分子(E1−11)の製造]
合成例5の40%水酸化ナトリウム水溶液260重量部を水260重量部に変える以外は合成例5と同様にして水溶性重合体(E1−11)を得た。
【0043】
〔合成例12〕[水溶性高分子(E2−1)の製造]
合成例1のアクリル酸ナトリウム200重量部を2−ヒドロキシエチルメタクリレート100重量部に変える以外は合成例1と同様にして水溶性重合体(E2−1)を得た。
【0044】
上記で得られた水溶性高分子(E)を下記表1にまとめた。
また、表1には水溶性高分子(E)の数平均分子量を合わせて示した。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明の加圧式汚泥脱水機用洗浄剤(D)である実施例1〜24について、各洗浄剤の組成を表2に記載した。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例で使用したE−1〜E−11、E2−1以外の化合物は、以下のとおりである。
A−1:アルミン酸ナトリウム〔浅田化学工業社製#1819〕
A−2:アルミン酸ナトリウム〔浅田化学工業社製#1219〕
B−1:ケイ酸ナトリウム〔富士化学株式会社製1号水ガラス〕
B−2:ケイ酸ナトリウム〔富士化学株式会社製3号水ガラス〕
E2−2:カルボキシメチルセルロース〔第一工業社製セロゲン7A(Mn30,000)〕
E2−3:ポリビニルアルコール〔クラレ社製PVA405(Mn20,000)〕
J−1:酸化マグネシウム〔試薬〕
H−1:カリウムミョウバン〔試薬〕
X−1:水酸化ナトリウム〔試薬〕
【0049】
評価結果
実施例1〜24および比較例1〜2
下水処理場から採取した消化汚泥(TS2.6%)1Lに対し、ポリ硫酸第二鉄水溶液(多木化学株式会社製ダンパワー)3mlを加えた後、スパ−テルで均一攪拌し、更に0.2%水溶液に調整したカチオン系高分子凝集剤(三洋化成工業株式会社製サンフロックNDCP−31)水溶液100mlを加えて均一攪拌することにより汚泥凝集物を作製した。次に沈殿した汚泥凝集物を100メッシュの金網で自然ろ過することにより分離し、この汚泥凝集物30gを直径0.3mmの孔が540個開いているSUS製円盤状パンチングメタル(直径100mm)と穴の開いていないSUS製円盤状メタル(直径100mm)との間に挟み込み、圧搾機を用いて0.3MPaの圧力で1分間圧縮することにより、パンチングメタルの全孔に汚泥凝集物が詰まった試験体を作成した。
次いで、ポリ容器(縦180mm、横105mm、奥75mm)の中に表2に示す洗浄剤(D−1)〜(D−24)の1%水溶液1000部を入れ、その中に24時間ビニール袋中で養生した上記試験体を浸漬させ、振とう機で5分間振とうした後に、パンチングメタルを引き上げて、目詰まりが解消していた孔の数を数え、表3に示す結果を得た。
また比較として洗浄剤を加えない条件を比較例1として、水酸化ナトリウム(1%水溶液1000部)を洗浄剤として使用した例を比較例2として併せて評価を行い、表3に示す結果を得た。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示す通り、各実施例の加圧式汚泥脱水機用洗浄剤(D)を用いた場合、目詰まり解消率が高くなっていた。一方、洗浄剤を加えない比較例1、及び、水酸化ナトリウム水溶液を洗浄剤として用いた比較例2では、目詰まり解消率が低くなっていた。
【0052】
実施例25、26及び比較例3
(実機評価結果)
下水処理場に設置されて使用され、汚泥凝集物が付着したスクリュープレス脱水機を使用して、以下の試験方法で洗浄試験を実施し、その結果を実施例25、26及び比較例3として表4に記載した。
実施例25では洗浄剤(D−1)の1重量%の水溶液、実施例26では洗浄剤(D−4)の1重量%の水溶液を使用した。
また、洗浄剤を添加せず通常実施されている水だけで洗浄した結果を比較例3とした。
試験方法
(1)6時間稼動後のスクリュープレス脱水機のタンクに水300Lを張り、表4に示す各洗浄剤水溶液1.5Lを溶解させる。
(2)洗浄剤水溶液を循環させながら、2時間洗浄する。
洗浄後の脱水機内の汚れ具合を目視して、以下の基準で評価した。
○・・・明らかにきれいな状態であり、汚泥凝集物の汚れが残っている箇所があってもタンク壁に固着せず浮いた状態であり布等でこすると汚れは簡単に落ちる。
× ・・・明らかに汚泥凝集物の汚れが残っており、汚れはタンク壁に固着し布等でこすっても簡単には落ちない。
【0053】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0054】
下水処理場で用いる加圧式汚泥脱水機等の設備に対する洗浄用途に適用できる。