特許第6571001号(P6571001)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571001
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】エマルション及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20190826BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20190826BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20190826BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20190826BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20190826BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20190826BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20190826BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/39
   A61K8/86
   A61K8/37
   A61K8/44
   A61K8/06
   A61Q7/00
   A61Q19/00
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-535527(P2015-535527)
(86)(22)【出願日】2014年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2014073485
(87)【国際公開番号】WO2015034046
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-184835(P2013-184835)
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】龍口 巌
(72)【発明者】
【氏名】松岡 龍雄
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−081024(JP,A)
【文献】 特開2005−046841(JP,A)
【文献】 特開2012−082152(JP,A)
【文献】 特開2010−053150(JP,A)
【文献】 特開2012−092082(JP,A)
【文献】 特開昭56−037040(JP,A)
【文献】 特開昭63−014706(JP,A)
【文献】 特開2011−001289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
B01J 13/00
A61K 9/107−9/113
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3価以上の多価アルコール80〜97重量%、
ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステル1〜10重量%、
アシルアミノ酸および/またはその塩0.01〜3重量%、及び
油性成分1〜18重量%
を含み、前記多価アルコールを含む相に前記油性成分が分散している、エマルション。
【請求項2】
3価以上の多価アルコールが、グリセリンである、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記脂肪酸エステルが、ポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項1または2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記アシルアミノ酸および/またはその塩が、0.01〜1重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項5】
分散している油性成分の平均粒子径が、1μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエマルション。
【請求項6】
3価以上の多価アルコールを含む液に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを混合すること、
次いで、前記多価アルコールを含む液に油性成分を撹拌下で添加して、前記多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションを形成すること
を含み、前記アシルアミノ酸および/またはその塩が、前記エマルションの量に基づいて0.01〜3重量%の量であり、前記3価以上の多価アルコールが、前記エマルションの量に基づいて80〜97重量%の量であり、前記油性成分が、前記エマルションの量に基づいて1〜18重量%の量である、エマルションの製造方法。
【請求項7】
3価以上の多価アルコールを含む液に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを混合すること、
次いで、前記多価アルコールを含む液に油性成分を撹拌下で添加して、多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションを形成すること、
次いで、形成したエマルションを水性媒体と混合して、水性媒体中に油性成分が分散している水中油型エマルションを形成すること、
を含み、前記アシルアミノ酸および/またはその塩が、前記多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションの量に基づいて0.01〜3重量%の量であり、前記3価以上の多価アルコールが、前記多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションの量に基づいて80〜97重量%の量であり、前記油性成分が、前記多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションの量に基づいて1〜18重量%の量である、水中油型エマルションの製造方法。
【請求項8】
前記水性媒体が、前記水中油型エマルションの量に基づいて90〜99.5重量%の量である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記水中油型エマルションのB型粘度計による粘度(25℃、1号ローター、12rpm)が、1000mPa・s以下である、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記水中油型エマルションにおいて分散している油性成分の平均粒子径が、1μm以下である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法にしたがって水中油型エマルションを形成すること
を含む、水中油型エマルションを含む香粧品の製造方法。
【請求項12】
請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法にしたがって水中油型エマルションを形成すること
を含む、水中油型エマルションを含む皮膚外用組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコールを含む相に油性成分が分散しているエマルション、そのエマルションを水性媒体に分散させてなる水中油型(O/W型)エマルション、およびそれらの製造方法に関する。特に本発明は、油性成分の分散粒子径が微細であり、また、低粘度の系においても経時安定性に優れたエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水や美容液、育毛剤といった水性の皮膚外用組成物において、油系の有効成分を系内に取り込むために、水中油型エマルションが広く使用されている。そうした水性の皮膚外用組成物は、その使用感や使用しやすさを考慮して、低粘度に設計されることがある。一般的に低粘度製剤における水中油型エマルションでは、油性成分と水性成分との比重差によるクリーミング現象が起こりやすく、経時安定性が悪くなるという問題がある。低粘度製剤におけるエマルションの安定性を維持する技術として、水酸化レシチンと水素添加レシチンとを特定の配合比で含む乳化組成物が報告されている(特許文献1)。
【0003】
一方、皮膚外用組成物における有効成分の分散粒子の粒子径を小さくすることは、有効成分の皮膚浸透性を高める可能性があり、望ましい。微細な粒子径を有する水中油型エマルションを得る方法としては、油相を高圧下で分散させ、また、水溶性高分子を使用することが報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−6739号公報
【特許文献2】特許第4444149号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、微細な分散粒子径を有し、また、低粘度の系であっても経時安定性に優れた水中油型エマルションを形成することは、皮膚外用組成物において、有利である。本発明は、皮膚浸透性に優れた微細な分散粒子径を有する油性成分を含み、経時安定性が良好であるエマルションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、3価以上の多価アルコールに、特定の脂肪酸エステルとアシルアミノ酸および/またはその塩とを特定の比で組み合わせて、ここに、油性成分を撹拌下で添加することにより、高圧ホモジナイザーのような特殊な装置を使用することなく、多価アルコールの相に油性成分が分散しているエマルションを得ることができることを見出した。このエマルションにおける油性成分の分散粒子径は微細なものであり(平均粒子径で1μm以下)、長時間保存後も微細な粒子径を維持していた。さらに、このエマルションを水性媒体に分散することにより、微細な分散粒子径を有し、経時安定性に優れた水中油型エマルションが得られることを見出した。本発明は、これらに限定されないが、以下のものを含む。
1. 3価以上の多価アルコール50〜97重量%、
ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステル1〜10重量%、
アシルアミノ酸および/またはその塩0.01〜3重量%、及び
油性成分1〜30重量%
を含み、前記多価アルコールを含む相に前記油性成分が分散している、エマルション。
2. 3価以上の多価アルコールが80〜97重量%であり、油性成分が1〜18重量%である、上記1に記載のエマルション。
3. 3価以上の多価アルコールが、グリセリンである、上記1または2に記載のエマルション。
4. 前記脂肪酸エステルが、ポリグリセリン脂肪酸エステルである、上記1〜3のいずれか1に記載のエマルション。
5. 前記アシルアミノ酸および/またはその塩が、0.01〜1重量%である、上記1〜4のいずれか1に記載のエマルション。
6. 分散している油性成分の平均粒子径が、1μm以下である、上記1〜5のいずれか1に記載のエマルション。
7. 上記1〜6のいずれか1に記載のエマルションを、水性媒体に分散させてなる、水中油型エマルション。
8. 水性媒体が90〜99.5重量%で含まれる、上記7に記載の水中油型エマルション。
9. B型粘度計による粘度(25℃、1号ローター、12rpm)が、1000mPa・s以下である、上記7または8に記載の水中油型エマルション。
10. 分散している油性成分の平均粒子径が、1μm以下である、上記7〜9のいずれか1に記載の水中油型エマルション。
11. 上記8〜10のいずれか1に記載の水中油型エマルションを含む香粧品。
12. 上記8〜10のいずれか1に記載の水中油型エマルションを含む皮膚外用組成物。
13. 3価以上の多価アルコールを含む液に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを混合すること、
次いで、前記多価アルコールを含む液に油性成分を撹拌下で添加して、前記多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションを形成すること
を含み、前記アシルアミノ酸および/またはその塩が、前記エマルションの量に基づいて0.01〜3重量%の量である、エマルションの製造方法。
14. 3価以上の多価アルコールを含む液に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを混合すること、
次いで、前記多価アルコールを含む液に油性成分を撹拌下で添加して、多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションを形成すること、
次いで、形成したエマルションを水性媒体と混合して、水性媒体中に油性成分が分散している水中油型エマルションを形成すること、
を含み、前記アシルアミノ酸および/またはその塩が、前記多価アルコールを含む液中に油性成分が分散しているエマルションの量に基づいて0.01〜3重量%の量である、水中油型エマルションの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、油性成分の微細な分散粒子径を有するエマルションが得られる。本発明のエマルションは、高圧ホモジナイザーのような圧力下で粒子を粉砕する装置を使用することなく、回転羽を有する通常の撹拌機によって製造することができる。そのような通常の撹拌機で製造された場合でも、本発明のエマルションは、平均粒子径で1μm以下といった微細な分散粒子径を取りうる。本発明では、まず、3価以上の多価アルコールを含む相の中に油性成分が分散したエマルションを調製する。次に、このエマルションを水性媒体に分散させることにより、水中油型エマルションを得る。得られた水中油型エマルションは、微細な分散粒子径を保持し、また低粘度であっても経時での分散の安定性に優れている。また、皮膚に優しく、使用感もよいので、化粧水やヘアケア商品などの香粧品または皮膚外用組成物として使用するのに適している。さらに、油性成分の皮膚への浸透性が高いため、有効成分を皮膚内に浸透させるような用途、例えば美容液や育毛剤などの皮膚外用組成物として使用するのに特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例3における経時安定性試験の平均粒子径の測定結果を示す。
図2図2は、実施例4における皮膚浸透性の測定結果を示す。
図3図3は、実施例5におけるpHと吸光度の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明では、まず、3価以上の多価アルコールに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを特定の割合で混合し、ここに油性成分を撹拌下で添加することにより、多価アルコールを含む相の中に油性成分が分散しているエマルションを形成する(本明細書では、この段階で得られたエマルションを、「O/A型エマルション」とも呼ぶ。)。得られたO/A型エマルションは、油性成分の微細な分散粒子径を有しており、平均粒子径が1μm以下といった微細な大きさになり得る。次いで、このO/A型エマルションを、水性媒体中に撹拌下で添加することにより、水中油型エマルションを得る。得られた水中油型エマルションは、O/A型エマルションにおける微細な分散粒子径を保持しており、低粘度(例えばB型粘度計、25℃、1号ローター、12rpmで測定して、1000mPa・s以下)であっても、長期にわたって安定な分散を維持する。本発明の水中油型エマルションは、化粧水や育毛剤などの香粧品または皮膚外用組成物として好適に用いることができる。
【0010】
(O/A型エマルション)
O/A型エマルション(多価アルコールを含む相の中に油性成分が分散しているエマルション)の調製に際しては、最終のO/A型エマルションの量に基づいて50〜97重量%の量の3価以上の多価アルコールに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステル1〜10重量%と、アシルアミノ酸および/またはその塩0.01〜3重量%とを混合し、ここに、1〜30重量%の油性成分を撹拌下で添加する。
【0011】
本発明のO/A型エマルションでは、連続相として、3価以上の多価アルコールを含む相を用いる。例えば、1,3−ブチレングリコールのような2価のアルコールを使用すると、油性成分の分離が生じるので好ましくない。3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、及びテトラグリセリン等のポリグリセリン、ペンタエリトリトール、エリスリトール、キシリトール、及びマンニトール等の糖アルコールなどが挙げられる。中でも、グリセリンが好ましい。グリセリンには各種のグレードがあるが、いずれを用いてもよい。例えば、グリセリン分95.0%以上の化粧品用濃グリセリンを好適に用いることができる。
【0012】
3価以上の多価アルコールの使用量は、最終的に得られるO/A型エマルションの量に基づいて、50〜97重量%であり、好ましくは、80〜97重量%である。50重量%未満の使用量では、得られるエマルション中の油性成分の分散粒子径が大きくなり、分散の安定性に劣るものとなる。
【0013】
続いて、3価以上の多価アルコールに、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを混合する。
【0014】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、重合度が4〜10のポリグリセリンと、炭素数12〜22の脂肪酸1種以上とからなるものが好ましい。例えば、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。中でも、デカグリセリンモノ脂肪酸エステルは好ましく、デカグリセリンモノミリスチン酸エステルは好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、10〜16程度のものが好ましい。
【0015】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。中でも、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンが好ましく、セスキオレイン酸ソルビタンは好ましい。
【0016】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。酸化エチレンの平均付加モル数は20程度のものが好ましく、中でも、酸化エチレンの平均付加モル数20のモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンは好ましく用いられる。
【0017】
これら脂肪酸エステルの中では、ポリグリセリン脂肪酸エステルが最も好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルを用いると、ソルビタン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを用いる場合に比べて、微細な分散粒子径のエマルションを形成することができる。
【0018】
これら脂肪酸エステルの使用量は、最終的に得られるO/A型エマルションの量に基づいて、1〜10重量%であり、好ましくは1.5〜8重量%、より好ましくは2〜7.5重量%である。使用量が1重量%に満たないと、十分な分散安定性が得られず、また、使用量が10重量%を超えると、べとつきが生じ、使用感が悪くなるから、好ましくない。
【0019】
上記の脂肪酸エステルに加えて、アシルアミノ酸および/またはその塩を3価以上の多価アルコールに混合する。本発明者らは、アシルアミノ酸および/またはその塩を用いることにより、エマルションにおける油性成分の分散粒子径を微細化させることができることを見出した。アシルアミノ酸および/またはその塩としては、長鎖のアシルグルタミン酸及びその塩、並びにアシルグリシン及びその塩が安全性の面から優れている。脂肪酸の炭素数としては、12〜20程度のものがよい。アシルアミノ酸および/またはその塩の例としては、これらに限定されないが、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸カリウム、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸カリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸ニナトリウム、硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸グリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸グリシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸グリシントリエタノールアミン、ラウロイルグリシンカリウム、ラウロイルグリシンナトリウム、ラウロイルグリシントリエタノールアミン、ミリストイルグリシンカリウム、ミリストイルグリシンナトリウム、ステアロイルグリシンカリウム、ステアロイルグリシンナトリウム、ステアロイルグリシンニナトリウム、硬化牛脂脂肪酸グリシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸グリシンナトリウム等を挙げることができる。
【0020】
アシルアミノ酸および/またはその塩の使用量は、最終的に得られるO/A型エマルションの量に基づいて、0.01〜3重量%であり、好ましくは、0.01〜1重量%であり、より好ましくは、0.1〜1重量%である。このような範囲のアシルアミノ酸および/またはその塩を用いることで、用いない場合と比べて、油性成分の分散粒子の粒子径を大幅に(例えば、平均粒子径において7割程度にまで、あるいは2割程度にまで)低下させることができる。0.01重量%未満の使用量では、上記の微細化の効果が十分に得られず、また、3重量%を超えて使用すると、皮膚に対しての刺激が強くなるので好ましくない。
【0021】
3価以上の多価アルコールに上記の脂肪酸エステルとアシルアミノ酸および/またはその塩とを混合するときは、加温下で、撹拌しながら行うとよい。この際の温度は、これらの成分が多価アルコール中に十分に溶解するような温度であれば特に限定されない。通常は、75〜85℃程度である。撹拌には、通常の撹拌機を用いることができる。
【0022】
こうして、特定の脂肪酸エステルと、アシルアミノ酸および/またはその塩とを含有する3価以上の多価アルコールを含む相が調製される。この相における残部は、好ましくは、水である。しかしながら、本発明の効果を損なわない範囲であれば、追加の成分を微量に含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、エタノールなどが挙げられる。
これらの追加の成分の濃度は、5重量%未満程度であるのがよい。
【0023】
上記のようにして得られた3価以上の多価アルコールを含む相に、油性成分を撹拌下で添加して、O/A型エマルションを調製する。油性成分の種類は、特に制限されないが、常温で液状の油分は好ましい。油性成分としては、例えば、スクワラン、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、ヤシ油、大豆油等の動植物性油脂、炭化水素、流動パラフィン等の鉱物油、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル等のエステル油、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、環状シリコーン等のシリコーン油、2−オクチルドデカノール、2−デシルトトラデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、コエンザイムQ10、α−リポ酸、ルチン、ルテイン、及びこれらの誘導体等の油溶性化合物、アナトー色素、パプリカ色素、β−カロチン、クロロフィル、紅麹色素、ウコン色素等の油溶性色素などを挙げることができる。これらは複数種を混合して用いてもよい。例えば、トコフェロール誘導体(ビタミンE誘導体)は、血行促進作用、抗酸化作用、皮膚柔軟効果を有しており、発毛を促す効果が期待できる。
【0024】
油性成分の使用量は、O/A型エマルションの量に基づいて、1〜30重量%であり、好ましくは、1〜18重量%であり、さらに好ましくは1〜5%重量%である。油性成分の使用量が30重量%を超えると、微細な分散粒子径のエマルションが得られない。
【0025】
油性成分の添加の際には、撹拌を行い、少量ずつ時間をかけて添加することが好ましい。油性成分を撹拌下で添加する際の温度は、特に限定されないが、75〜85℃程度である。撹拌には、例えば、回転羽が装備されているような通常の撹拌機を用いればよく、例えば、ホモミキサー、ディスパーミキサー、パドルミキサーなどを用いることができる。本発明では、微細な粒子を形成する際に、高圧下で分散粒子を粉砕する高圧ホモジナイザーであるマイクロフルイダイザーやナノマイザーを使用する必要がない。撹拌の際は、真空下で撹拌を行うことができる真空乳化撹拌機を用いることは好ましい。真空下で撹拌を行うことにより、気泡の影響を除去して安定した品質のエマルションを形成することができる。
【0026】
なお、本発明のO/A型エマルションを得る際には、多価アルコールを含む相に、油性成分を添加することが重要である。油性成分に対し多価アルコールを含む相を添加しても、油性成分と多価アルコール相とが分離して、本発明の所望のエマルションは得られない。
【0027】
こうして得られた本発明のO/A型エマルション(3価以上の多価アルコールを含む相に、油性成分が分散しているエマルション)では、油性成分の分散粒子の平均粒子径が、1μm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、より好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下になる。本発明において平均粒子径の下限値は、限定されるものではないが、50nm程度になると思われる。分散粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置、動的光散乱式測定装置、コールター原理を用いた粒子径測定装置などを用いて測定することができる。本発明では、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0028】
一般に、高圧ホモジナイザーやマイクロフルイダイザーのような圧力下での衝撃により粒子を微細化する装置を使用した場合には、分散粒子の粒度分布がブロードになったり、また複数のピークを有したりすることがあるが、本発明の比較的穏やかな撹拌下で得られるO/A型エマルションでは、単一のピークを有する粒度分布が得られるという利点がある。
【0029】
本発明により得られたO/A型エマルションは、長期にわたり、分散性を維持することができ、例えば、香粧品または皮膚外用組成物を調製するための原料として貯蔵しておくことにも適している。本発明により得られたO/A型エマルションは、例えば、室温または5〜30℃程度に冷却するなどして、保存することができる。
【0030】
(水中油型エマルション)
上記で得られたO/A型エマルションを、水性媒体と混合することにより、水中油型エマルションを調製することができる。水性媒体としては、水を主要な成分としていればよく、それ以外の成分については特に限定されない。例えば、通常の化粧水等に用いられる成分、例えば、水溶性高分子、保湿剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤、酸化防止剤、色素、香料、水性の薬用成分等を含んでいてもよい。
【0031】
O/A型エマルションと水性媒体との混合比は、得られる水中油型エマルションの重量を100とした際に、水性媒体(水の重量と、他の成分を含む場合にはそれらの重量も含む)の重量が90〜99.5であり、O/A型エマルションの重量が0.5〜10であると、安定性や、皮膚外用剤として用いた際の使用感に優れるので好ましい。より好ましくは、O/A型エマルションの重量が1〜5である。
【0032】
水性媒体とO/A型エマルションを混合する際には、水性媒体に対し、O/A型エマルションを添加することにより行う。この際使用する撹拌機は特に限定されず、回転羽を用いる通常の撹拌機を用いればよい。混合時の温度は特に限定されず、使用する油性成分の安定性等に応じて決定すればよい。通常は30〜40℃程度が適当であろう。
【0033】
得られた水中油型エマルションは、油性成分の微細な分散粒子径を有する。本発明者らは、水中油型エマルションにおいて、元のO/A型エマルションの粒度分布がほぼ維持されることを確認している。したがって、水中油型エマルションにおける油性成分の分散粒子の平均粒子径は、O/A型エマルションと同様に、1μm以下、好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、より好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。一般的な毛穴の大きさは200nm程度と言われているから、油性成分の粒子径が200nm以下となると、油性成分(例えば発毛促進成分を含む)が毛穴の奥にまで入り込みやすくなり、発毛効果が高まることが期待される。本発明における平均粒子径の下限値は、限定されるものではないが、50nm程度になると思われる。平均粒子径は、O/A型エマルションについて上記したように、レーザー回折式粒度分布測定装置、動的光散乱式測定装置、コールター原理を用いた粒子径測定装置などを用いて測定することができる。本発明では、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。
【0034】
本発明により得られた水中油型エマルションは、低粘度であり、好ましくは、B型粘度計による粘度(25℃、12rpm、1号ローター)が1000mPa・s以下、更に好ましくは、300mPa・s以下である。本発明では、このように低粘度であっても、経時での分散性に優れる水中油型エマルションを形成することができる。
【0035】
本発明の水中油型エマルションは、微細な分散粒子径を有しており、油性成分の皮膚浸透性が高い。また、低粘度に設計することができ、使用感がよく、また皮膚にも塗りやすい。特に、毛髪のある頭皮に塗るのには低粘度で浸透性が高いことは都合がよい。さらに、本発明の水中油型エマルションは、低粘度であっても、長期にわたり分散性を維持することができる。したがって、本発明の水中油型エマルションは、これに限定されないが、香粧品または皮膚外用組成物の製品に応用するのに適しているといえる。皮膚外用組成物としては、例えば、皮膚に直接適用する化粧品、医薬部外品、医薬品等を挙げることができる。例えば、化粧水、美容液、育毛剤などが挙げられる。香粧品とは、身体を清潔にすること、美化すること、魅力を増すこと、容貌を変えること、又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つことを目的として、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用される人体に対する作用が緩和なものをいい、スキンケア製品(化粧水、美容液、洗顔料、ボディウォッシュなど)、ヘアケア製品(シャンプー、リンス、ヘアトニック、育毛剤など)、メイクアップ製品などの化粧品類、香料を配合した香水類等が含まれる。
【0036】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の各表における各成分の配合量に関する数値の単位は、すべて重量%である。
【実施例】
【0037】
(参考例1)多価アルコールの種類による乳化への影響
下記表1の各処方における「多価アルコール相」の成分を、80℃の加温下でディスパーミキサーを用いて混合した。表1のモノオレイン酸POEソルビタンとしては、花王社製レオドールTW−O120V(酸化エチレンの付加モル数20)を用い、グリセリンとしては、化粧品用濃グリセリン(グリセリン分98.5%以上)を用いた。ここに、油性成分(トリエチルヘキサノイン)を80℃の温度下で、ディスパーミキサー(プライミクス社製K.ROBOMICS(登録商標)、回転数3500rpm)で撹拌しながら5分間かけて徐々に添加した。油性成分の添加終了後、80℃で30分間撹拌を継続して、O/A型エマルションを調製した。室温まで冷却したO/A型エマルション10重量部を、クエン酸0.01重量部、クエン酸Na0.09重量部、ブチレングリコール5重量部、グリセリン3重量部、メチルパラベン0.1重量部、精製水81.8重量部からなる水性媒体に混合し、水中油型エマルションを調製した。得られた水中油型エマルションの平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布計(島津サイエンス社製SALD−2200)を用いて測定した。なお、測定の際には、慣用の方法に従い適宜水で希釈した。結果を表1に示す。多価アルコールとして2価の1,3−ブチレングリコールのみを用いた場合(処方A、B)には、O/A型エマルション調製後の冷却の直後から分離が生じ、水中油型エマルションは調製できなかった。処方Fについても同様であった。
【0038】
【表1】
(参考例2)脂肪酸エステルの種類による乳化への影響
下記表2の各処方における「多価アルコール相」の成分を、80℃の加温下でディスパーミキサーを用いて混合した。表2のモノオレイン酸POEソルビタンは、花王社製レオドールTW−O120V(酸化エチレンの付加モル数20);セスキオレイン酸ソルビタンは、花王社製レオドールA−O15V;モノミリスチン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ社製NIKKOL Decaglyn 1−M;POE硬化ヒマシ油は、日光ケミカルズ社製NIKKOL HCO−40(POE40);グリセリンは、化粧品用濃グリセリン(グリセリン分98.5%以上)を用いた。ここに、油性成分(ミリスチン酸イソプロピル;日光ケミカルズ社製NIKKOL IPM−100)を80℃の温度下で、ディスパーミキサー(プライミクス社製K.ROBOMICS(登録商標)、回転数3000rpm)で撹拌しながら5分間かけて徐々に添加し、O/A型エマルションを調製した。その後室温まで冷却して、レーザー回折式粒度分布計(島津サイエンス社製SALD−2200)を用いて、平均粒子径を測定した。なお、測定の際には、慣用の方法に従い適宜水で希釈した。結果を表2に示す。脂肪酸エステルとしてPOE硬化ヒマシ油を用いた場合(処方J)には、分散状態が悪く、所望の粒径のエマルションが得られなかった。
【0039】
【表2】
(実施例1)
下記表3の各処方における「多価アルコール相」の成分を、80℃の加温下でディスパーミキサーを用いて混合した。表3のモノミリスチン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ社製NIKKOL Decaglyn 1−M;セスキオレイン酸ソルビタンは、花王社製レオドールA−O15V;モノオレイン酸POEソルビタンは、花王社製レオドールTW−O120V(酸化エチレンの付加モル数20);N−ステアロイル−L−グルタミン酸Naは、味の素社製アミソフト(登録商標)HS−11P;グリセリンは、化粧品用濃グリセリン(グリセリン分98.5%以上)を用いた。ここに、油性成分(ミックストコフェロール;日清オイリオグループ社製トコフェロール100)を80℃の温度下で、ディスパーミキサー(プライミクス社製K.ROBOMICS(登録商標)、回転数8000rpm)で撹拌しながら5分間かけて徐々に添加し、O/A型エマルションを調製した。その後室温まで冷却して、レーザー回折式粒度分布計(島津サイエンス社製SALD−2200)を用いて、平均粒子径を測定した。なお、測定の際には、慣用の方法に従い適宜水で希釈した。結果を表3に示す。アシルアミノ酸塩を多価アルコール相に加えることにより、油性成分の平均粒子径を有意に微細化することができた。
【0040】
【表3】
(実施例2)
下記表4の各処方における「多価アルコール相」の成分を、80℃の加温下でディスパーミキサーを用いて混合した。表4のモノミリスチン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ社製NIKKOL Decaglyn 1−M;モノオレイン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ社製NIKKOL Decaglyn 1−OV;N−ステアロイル−L−グルタミン酸Naは、味の素社製アミソフト(登録商標)HS−11P;グリセリンは、化粧品用濃グリセリン(グリセリン分98.5%以上)を用いた。ここに、油性成分を80℃の温度下で、ディスパーミキサー(プライミクス社製K.ROBOMICS(登録商標)、回転数8000rpm)で撹拌しながら5分間かけて徐々に添加し、O/A型エマルションを調製した。その後室温まで冷却して、レーザー回折式粒度分布計(島津サイエンス社製SALD−2200)を用いて、平均粒子径を測定した。測定の際には、慣用の方法に従い適宜水で希釈した。表4に示される通り、本発明により微細な粒子径を有するO/A型エマルションを製造することができた。
【0041】
【表4】
(実施例3)
下記表5の各処方における「多価アルコール相」の成分を、80℃の加温下でディスパーミキサーを用いて混合した。表5のモノミリスチン酸デカグリセリルは、日光ケミカルズ社製NIKKOL Decaglyn 1−M;N−ステアロイル−L−グルタミン酸Naは、味の素社製アミソフト(登録商標)HS−11P;グリセリンは、化粧品用濃グリセリン(グリセリン分98.5%以上)を用いた。ここに、油性成分を75〜85℃の温度下で、ディスパーミキサー(プライミクス社製K.ROBOMICS(登録商標)、回転数8000rpm)で撹拌しながら5分間かけて徐々に添加し、O/A型エマルションを調製した。その後室温まで冷却して、レーザー回折式粒度分布計(島津サイエンス社製SALD−2200)を用いて、平均粒子径を測定した。測定の際には、慣用の方法に従い適宜水で希釈した。得られたエマルションを40℃、75%RHの環境下に6ヶ月間保管し、保管中、1ヶ月ごとに平均粒子径を測定した。平均粒子径の経時変化を、図1に示す。なお、「40℃、75%RHで6カ月間の保管」の条件は、室温での3年間の保管に相当する。図1に示される通り、本発明品13のO/A型エマルションは、長期保存時であっても、分散粒子径の有意な変化は見られず、経時における高い分散安定性を有していた。
【0042】
【表5】
(実施例4)
実施例3の本発明品13の皮膚浸透性について、下記の通り、培養皮膚モデルを用いた浸透性試験を行った。12ウェルプレートにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を2ml添加し、3次元培養表皮モデルEpiSkin(登録商標)Large Modelを設置した。本発明品12を皮膚モデルの角層側に適用し、37℃にてインキュベーションを開始した。適用24時間後に皮膚モデルを採取した。得られた皮膚モデルを、エタノール1mlが入ったマイクロチューブに入れ、Tissue Lyserを用いて粉砕した。その上清を0.1ml採取して酢酸トコフェロール測定用試料とし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて皮膚に浸透した酢酸トコフェロールを定量した。結果を図2に示す。図2に示される通り、本発明品13に含まれる酢酸トコフェロールの経皮浸透性が確認された。
【0043】
(実施例5)
実施例1の本発明品1及び2を用いて、水中油型エマルションを調製した。具体的には、下記表6の処方に従い、本発明品1及び2のO/A型エマルションを、水性媒体相に、35℃の温度下でディスパーミキサーを用いて混合した。得られた水中油型エマルション(本発明14及び15)のpHと、吸光度(630nm)を測定した。続いて、各水中油型エマルション(本発明14及び15)について、5℃または40℃の環境下に3カ月間保管し、保管中のpHと吸光度の変化を計測した。なお、エマルションの吸光度は一般的に、エマルションの分散粒子径の大きさと相関しており、吸光度が小さいほど分散粒子径が小さいと考えることができる。結果を図3に示す。図3に示される通り、いずれの水中油型エマルションも、長期にわたる分散安定性を有しており、特に、脂肪酸エステルとしてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた本発明品14は、ソルビタン脂肪酸エステルを用いた本発明品15よりも経時安定性に優れていた。
【0044】
【表6】
(実施例6)
実施例1の本発明品1を用いて、水中油型エマルション(育毛剤)を調製した。具体的には、下記表7の処方に従い、本発明品1のO/A型エマルションを、水性媒体相に、30℃の温度下でパドルミキサーを用いて混合した。得られた育毛剤のB型粘度計による粘度(東機産業(株)製VISCOMETER(MODEL:BM)、25℃、12rpm、1号ローター)は、130mPa・sであった。得られた育毛剤は、べとつきがなく、使用感のよいものであった。
【0045】
【表7】
(実施例7)
実施例1の本発明品1を用いて、水中油型エマルション(化粧水)を調製した。具体的には、下記表8の処方に従い、本発明品1のO/A型エマルションを、水性媒体相に、30℃の温度下でパドルミキサーを用いて混合した。
【0046】
【表8】
図1
図2
図3