【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような排熱回収装置等では、次のような問題が生じる。
(i)上記のように非常に高温(800〜1500℃)の排ガスは、電力用の蒸気発生用や燃焼用空気の加熱用の温熱として好適である。反面、例えば250℃以下の低温の排ガスからの熱回収は、熱回収効率が悪いことから、そうした低温状態まで熱回収された排ガスは、そのまま排出されることが多かった。しかしながら、こうした熱回収装置を含む排ガス処理システムや工業用炉を含む製造プロセス全体のエネルギー効率の観点からは、未回収の温熱は無視できず、その効率的な熱回収が大きな課題となっていた。
(ii)工業用炉からの排ガスには硫黄化合物等酸成分が含まれており、腐食性がある。従って、熱交換器の直接排ガスが接する部分には耐腐食性の高い部材を用いる必要がある。特に、上記(i)における低温状態は、排ガス中に発生する硫酸ミスト等凝縮性の酸成分の露点以下の温度条件に相当することから、通常の耐腐食性の素材では長期間の使用はできなかった。一方、熱交換器は、その熱交換効率の確保するために、排ガスの温熱を熱媒体に伝達し易い素材を用いる必要がある。また、熱交換効率を向上させるためには、接触表面積を大きくする等特有の構成を有することから加工性の高い素材が好ましい。こうした条件を確保するには、特殊な素材を用いることが要求され、特に酸成分の露点以下の条件での使用ができる素材の選択は、大きな課題であった。
(iii)また、排ガスの露点以下の低温条件においては、発生した水滴や硫酸ミスト等の酸ミストが粉塵と結合・凝集して成長した粒子等によって、接ガス部分の腐食や細部の閉塞等を生じることがある。低温条件での熱回収時においては、こうした状況を生じないような熱回収処理を行う必要があり、従前からの課題であった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、排ガスからの熱回収を効率よく行うことができ、かつ排ガスの露点に対応した排ガス処理を行うことができる熱回収装置を提供し、これを用いたエネルギー効率の高い排ガス処理システムを提供することである。また、長期使用が可能で安全性の高い熱回収装置を提供し、特に低温領域までの排ガスの熱回収を、効率よく行うことができる排ガス処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す排ガスの熱回収装置およびこれを用いた排ガス処理システムによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明は、凝縮性の酸成分または/および水分を含む排ガスを対象とし
、内管部分と外管部分から構成され一端が閉塞したシングルエンド型の2重管型のセラミックス管を用い、該セラミックス管の内部に液体の熱媒体が流通可能な流路を有する熱交換部
が該排ガスの流通路に備えられた熱回収装置であって、
前記セラミックス管の外管部分が、全成分100質量(重量)%に対して、SiCが90質量(重量)%以上占める成分とするセラミックス材料で構成され、
前記熱交換部において、前記排ガスとの熱交換によって加熱された前記熱媒体を介して排ガスの温熱が回収されるとともに、
前記セラミックス管表面において、前記流通路に
供給される排ガス中の水分量または排ガス露点を基準に、前記排ガスの露点以下となる低温領域とこれに近接し露点以上となる高温領域が形成されるように前記熱媒体の温度および流量が設定され、
かつ
前記熱回収装置から供出される排ガス温度が、該排ガスの露点以上とされる
ことを特徴とする。
【0009】
従前、工業用炉等からの排ガス処理プロセスにおいては、排ガス中に含まれるダストや硫黄化合物(特に硫酸ミスト)等の凝縮性の酸成分または/および水分の処理とともに、排ガスが有する温熱を低温領域(例えば250℃以下)まで効率よく熱回収することは非常に難しかった。本発明において、検証過程における以下の知見(a)〜(d)を基に、こうした構成の排ガスの熱回収装置を用いることによって、排ガスからの熱回収を効率よく行うことができ、かつ排ガスの露点に対応した排ガス処理を行うことができることを見出した。
(a)排ガスの温度(露点)に対応した熱回収処理を行うことによって、低温領域まで効率よく熱回収することができる。つまり、熱回収用の低温熱媒体の温度制御が容易な特性およびセラミックス管表面温度を排ガスの露点近傍まで低下させた場合に熱回収効率が最大となるとの知見を利用して、排ガスの露点以下の低温領域まで熱回収部分(セラミックス管表面)を冷却し、その内部を流通する熱媒体を介して熱回収を行うことによって、効率よくかつ安定的に排ガスの温熱を回収することができる。
(b)また、SiCを主成分としたセラミックス管を用いた熱交換器を適用することによって、酸ミスト等の発生があっても腐食されることなく、長期使用が可能で安全性の高い熱回収装置を構成することができる。従って、回収された熱媒体の温熱を、低温条件において精度の高い温度制御が要求される低温ボイラ用温水作製用等の温熱として利用することができる。
(c)内部に熱媒体が流通可能な流路を有する熱交換部においては、内部の熱媒体は外部の排ガスの温熱と熱交換によって導入部から徐々に温度上昇が生じ、熱交換部表面に温度差(温度分布)が生じる。つまり、熱交換部表面の一部において排ガスの露点以下(最大量の温熱を吸収することができる)になるまで冷却することができる部分を形成するとともに、他の部分を露点以上にすることによって他の部分における酸成分の凝縮を防止し、もし凝縮が発生した場合にはこれを蒸散させることができる部分を形成することによって、供出される排ガス温度を露点以上に設定し、熱交換部表面における酸成分の凝集や酸成分と粉塵等の凝集の形成を防止することができる。
(d)このとき、一端が閉塞したシングルエンド型の2重管型のセラミックス管を用い、2重管の内管または外管のいずれかを流通した最も低温の熱媒体と排ガスを熱交換させ、熱交換部表面の一部において排ガスの露点以下になるまで排ガスを低温化させることによって、最大量の温熱を回収することができる。
【0010】
本発明は、上記排ガスの熱回収装置であって、前記セラミックス管
上部の表面に前記低温領域が形成され、前記セラミックス管
下部の表面に前記高温領域が形成されるように、前記セラミックス管に導入または/および導出される前記熱媒体の温度および流量が設定されることを特徴とする。
上記のように、本発明に係る排ガスの熱回収装置における熱交換部は、その表面の一部が露点以下となるように、その内部に熱媒体を流通させることによって、排ガスの温熱を効率よく回収することができる。具体的には、セラミックス管が2重管を形成し、内管または外管のいずれかを流通した最も低温の熱媒体と排ガスを熱交換させることによって、最大量の温熱を回収することができる。また、上記知見(c)のように、排ガスの露点以下の低温条件にあっては、酸成分の一部の凝縮が生じる。しかしながら、セラミックス管表面において当該低温部分より下部に温度上昇した部分を設けた場合、つまり、セラミックス管
上部の表面(以下「表面上部」という)に排ガスの露点以下となる低温領域が形成され、
セラミックス管下部の表面(以下「表面下部」という)に排ガスの露点以上となる高温領域が形成された場合、低温領域において凝縮した酸成分は、自重による自然落下及び排ガスの流れによって、その管下部
に形成された高温領域に移動し、再び気化・蒸散し、酸成分の凝集や酸成分と粉塵等の凝集の形成を防止することができる。
ここで、「表面上部・下部」とは、例えば凝縮した酸成分が自重により「表面上部」から「表面下部」に自然落下により移動する場合における部位をいい、以下同様である。本発明は、上記のようなセラミックス管の2重管構造および熱媒体の流通形態を適用し、セラミックス管表面における熱回収の最適条件となるように熱媒体の温度および流量を設定することによって、低温領域での効率的な熱回収と熱交換部分での異物の凝集による熱交換効率の低下を未然に防止することが可能となった。
【0011】
本発明は、上記の排ガスの熱回収装置において、前記セラミックス管からの熱媒体の導出流路に温度測定器が設けられ、導出される前記熱媒体の温度を測定し、該温度を指標として前記熱媒体の流量が調整・設定されることを特徴とする。
上記のように、検証過程において知見(a)〜(d)を基に構成された排ガスの熱回収装置を用いることによって、排ガスからの熱回収を効率よく行うことができ、かつ排ガスの露点に対応した排ガス処理を行うことができることを見出した。また、同時に、以下(e)の知見に基づき、セラミックス管から導出される熱媒体の温度を指標として、導入する熱媒体の流量を調整することによって、より効率よくかつ安定的に排ガスの温熱を回収することができることを見出した。
(e)個々のセラミックス管における熱回収効率は、導入される熱媒体の流量の増加に伴い上昇するとともに、所定の流量以上において熱回収効率上昇速度の低下、さらに熱回収効率の低下を生じる(後述するように、その相関をグラフ化すると、排ガスの露点近傍を最大とする熱回収効率の変曲点を生じる)。セラミックス管の表面における排ガス中の水分または酸成分の結露に伴う凝縮潜熱、比熱が大きい液滴の発生に伴う温熱吸収、およびセラミックス管の表面における液膜の発生に伴う熱伝達率の低下、によるものと推察させる。また、このとき、セラミックス管から導出される熱媒体の温度は、熱媒体の低流量域からの流量の増加に伴い、徐々に低下するとともに、上記変曲点に対応する流量以上の領域において、その低下勾配が大きくなる(後述するように、その相関をグラフ化すると、上記熱回収効率の変曲点近傍において熱媒体の温度の変曲点を生じる)との知見を得た。
【0012】
本発明は、上記排ガスの熱回収装置であって、前記排ガスの流通路に対して非直線もしくは直線的に配設された複数の前記セラミックス管から構成され、該セラミックス管に対して前記熱媒体を並列的に導入するとともに、
各セラミックス管表面において、前記排ガスの露点以下となる低温領域とこれに近接し露点以上となる高温領域が形成されるように、前記熱媒体の温度および各セラミックス管に導入する前記熱媒体の流量が設定されることを特徴とする。
上記のように、本発明は、セラミックス管表面において排ガス中の酸成分の凝縮が発生する限界温度で熱回収を行うことによって、低温領域の排ガスの温熱を効率よく回収することが可能となる一方、熱回収装置から供出する排ガス温度を露点以上とすることによって、凝縮した酸成分(酸ミスト)による排ガス流路の腐食等を未然に防止することが可能となる。このとき、排ガスの流通路に複数のセラミックス管を配設することによって、大容量の排ガスに対しても排熱の回収効率の向上を図ることができる。このとき、セラミックス管に対して熱媒体を並列的に導入するとともに、導入する熱媒体の流量を各セラミックス管に設定することによって、任意の所望の温度条件の温熱を回収することが可能となり、効率的に排熱を回収することが可能となった。
【0013】
本発明は、排ガス処理システムであって、上記のいずれかの排ガスの熱回収装置と、排ガスに含有
される酸成分の除害処理が行われる除害処理部と、排ガスに含有
される粉塵の除塵処理が行われる除塵処理部と、を備え、該熱回収装置において、前記除害処理および除塵処理が行われた排ガスの温熱が回収されることを特徴とする。
上記のように、本発明に係る排ガスの熱回収装置を用いることによって、排ガスからの熱回収を効率よく行うことができ、かつ排ガスの露点に対応した排ガス処理を行うことができる。しかしながら、排ガス温度の低下に伴う酸ミスト等の発生と粉塵の存在は、粉塵等の凝集等を発生させ、熱回収効率の低下を招来する。本発明は、予め凝集等が生じない程度の細かな除塵処理を行い、また、予め酸ミスト等酸成分の除害処理を行うことによって、酸ミスト等の発生があっても粉塵等の凝集等の発生を防止することができる排ガス処理システムを構成することができる。
【0014】
本発明は、排ガス処理システムであって、上記のいずれかの排ガスの熱回収装置と、該熱回収装置に対して前置され排ガスの1次冷却が行われる冷却処理部と、排ガスに含有
される酸成分の除害処理が行われる除害処理部と、排ガスに含有
される粉塵の除塵処理が行われる除塵処理部と、を備えた排ガス処理システムであって、
該冷却処理部において、排ガスの露点以上かつ前記熱回収装置に備えられたセラミックス管の耐熱温度以下に、排ガスの1次冷却処理が行われ、
該熱回収装置において、前記1次冷却処理,除害処理および除塵処理が行われた排ガスの温熱が回収されることを特徴とする。
上記のように、排ガス処理システムの熱回収処理は、高温領域での高い熱回収効率に比較し、低温領域での熱回収効率は非常に低い。また、熱回収装置において重要な機能を果たすセラミックス管の長期使用のためには、その耐熱温度以下での使用が好ましい。本発明に係る排ガス処理システムは、セラミックス管の耐熱温度および排ガスの露点という2つの指標を基に、高温領域および低温領域での2段階の異なる手法による熱回収処理を行うことによって、低温領域まで効率よく熱回収することを可能にした。