(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る多方向入力装置の一実施の形態を説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、
図1に示す上下方向Vを「多方向入力装置の上下方向」、及び左右方向Hを「多方向入力装置の左右方向」と呼ぶものとする。また、
図1に示すプッシュスイッチ8が設けられている側を「多方向入力装置の前方側」と呼び、プッシュスイッチ8が設けられている側と反対側(奥側)を「多方向入力装置の後方側」と呼ぶものとする。
【0016】
図1は本発明の一実施の形態に係る多方向入力装置の組立状態の斜視図である。
図2は本実施の形態に係る多方向入力装置の摘み部材を取り外した状態の斜視図である。
図3は本実施の形態に係る多方向入力装置の第1連動部材の説明に供する斜視図である。
図4は本実施の形態に係る多方向入力装置の第2連動部材の説明に供する斜視図である。
図5は本実施の形態に係る多方向入力装置の下側ケースの説明に供する斜視図である。
図6は本実施の形態に係る多方向入力装置の操作部材の説明に供する斜視図である。
図7は本実施の形態に係る多方向入力装置の操作部材の説明に供する平面図である。
図8は本実施の形態に係る多方向入力装置における下側ケース、駆動部材及び受け部材の説明に供する斜視図である。
図9は本実施の形態に係る多方向入力装置の復帰機構の説明に供する縦断面図である。
図10は本実施の形態に係る多方向入力装置おける操作部材、弾力部材、駆動部材及び受け部材の説明に供する斜視図である。なお、
図2、
図6及び
図10においては、調整部が操作部材に装着されていない状態を示している。
【0017】
図1から
図3に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置101は、ハウジング2内に、傾倒操作可能な操作部材3と、該操作部材3の傾倒操作に応じて回動すると共に軸線方向が互いに直交するように延在する第1連動部材4及び第2連動部材5と、これら第1連動部材4及び第2連動部材5の回動動作をそれぞれ検出する第1回転検出部6及び第2回転検出部7と、操作部材3とともに傾倒する駆動部材95と、操作部材3と駆動部材95との間に配設されて駆動部材95をハウジング2の底面側へ付勢する弾性部材91とを備える。また、操作部材3とともに移動し、弾性部材91の一端(上端)を受ける受け部材92と、弾性部材91の付勢力が変化する方向における受け部材92の位置(すなわち上下方向の高さ位置)を調整する調整部110とを有する。
【0018】
図1、
図2及び
図5に示すように、ハウジング2は、概ね箱体状を呈している。ハウジング2は、装置本体の底面部を構成する下側ケース21と、この下側ケース21に上側から被せられる上側ケース22と、位置決め部材10とから構成されている。
図5に示すように、下側ケース21は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成される。下側ケース21は、概ね平板形状を有する矩形状の底面部211と、この底面部211の外縁部に設けられた側壁部212と、前方側の側壁部212から前方側に延出させて設けられたスイッチ載置部213と、後方側、左方側及び右方側の側壁部212から上方側に延出して設けられた支持片214〜216とを有している。
【0019】
底面部211の中央には、円形状の凸部211aが形成されている。凸部211aは、底面部211から上方側にドーム状に隆起するように設けられている。この凸部211aにおける傾斜面部は、後述する復帰機構9を構成する弾性部材91の付勢力を受けた駆動部材95を初期位置に復帰させる機能を有する。
【0020】
スイッチ載置部213は、矩形凹部状を呈している。スイッチ載置部213は、底面部213aと、この底面部213aの外縁部に設けられた側壁部213bとを有する。スイッチ載置部213には、プッシュスイッチ8が搭載される。底面部213aの四隅部近傍には、プッシュスイッチ8の端子部83(
図1から
図4参照)を挿通可能な貫通部が形成されている。プッシュスイッチ8は、概ね立方体形状を有する筐体81と、この筐体81の上面から一部露出した状態で配置される押圧部82と、筐体81内に収容されるスイッチ回路に接続される端子部83とを有する。端子部83は、スイッチ載置部213の底面部213aに形成されたスリット状の貫通部から下方側に導出される。端子部83は、多方向入力装置101が実装される基板に接続され、操作部材3に対する押圧操作に応じた信号を外部出力可能に構成される。
【0021】
支持片214の上端部には、上方側に開口した円弧形状を有する凹部214aが形成されている。この凹部214aは、後述する第1連動部材4の連結片422を回動可能に支持する(
図3及び
図4参照)。また、凹部214aの一部は、操作部材3に対して押圧操作が行われた場合に第1連動部材4の上下方向の回動支点として機能する。
【0022】
支持片214と同様に、支持片215、216の上端部には、それぞれ上方側に開口した円弧形状の凹部215a、216aが形成さている。これらの凹部215a、216aは、それぞれ後述する第2連動部材5の突出片523、板状部521を回動可能に支持する(
図4参照)。また、これらの凹部215a、216aは、操作部材3に対して傾倒操作が行われた場合に第2連動部材5の下方側への移動を規制する機能を有する。
【0023】
再び
図2を参照して、上側ケース22は、例えば、金属板材を加工して成形され、概ね下方側に開口した箱状を呈している。上側ケース22は、円形状の開口部221aが形成された上面部221と、この上面部221の外縁部から垂下して設けられた4つの側面部222とを有している。前方側の側面部222には、下側ケース21との間に位置決め部材10が設けられている。位置決め部材10は、後述する復帰機構9の弾性部材91からの付勢力を利用して第1連動部材4を所定位置に位置決めする機能を有する。後方側の側面部222には、後述する第1連動部材4の連結片422が挿通されている。右方側の側面部222には、後述する第2連動部材5の一方の板状部521に設けられた連結片が挿通されている。左方側の側面部222には、後述する第2連動部材5の他方の板状部521に設けられた突出片523が挿通されている。
【0024】
操作部材3は、
図2及び
図4に示すように、ハウジング2の内部において、第1連動部材4及び第2連動部材5に挿通した状態で収納されている。操作部材3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、
図6及び
図7に示すように、概ね円筒形状の基部31と、この基部31の上端部から上方側に突出する突出部32と、基部31の外周面から側方側に突出する一対の軸部33とを有している。軸部33は、左右方向側に突出し、後述する第1連動部材4の軸受け部である挿通孔(図示せず)に挿通可能に構成されている。軸部33の側面の上方側には、これらの挿通孔へ挿通し易くするためのテーパ面が形成されている。
【0025】
突出部32は、一対の平面状部分と、これらの平面状部分をそれぞれ連結する曲面状部分とから構成される。一対の平面状部分には、一対の凸部32aが設けられている。これらの凸部32aは、後述する第2連動部材5の枠状部51aと摺接する摺接部を構成するものであり、突出部32の平面状部分から外方に突出して設けられる。各凸部32aは、上下方向に垂直な平面における断面の外周部分が円弧形状を有するように構成される。これらの凸部32aは、後述する第2連動部材5のスリット孔51bに挿通された突出部32と、スリット孔51bを規定する枠状部51aとの間にクリアランスが生じないようにすることで、突出部32がガタつくことを防ぐ機能を有する(
図4参照)。操作部材3の突出部32は、スリット孔51bを規定する枠状部51aと凸部32aとが摺接した状態でスリット孔51b内を移動する。操作部材3には、後述する復帰機構9(弾力部材91、駆動部材95の一部)を収容する収容部311が設けられている(
図9参照)。なお、突出部32は、
図2に示すように、上側ケース22の開口部221aを通って、ハウジング2(上側ケース22)の外部に突出する操作部を構成している。操作部材3の突出部32には、基部31の収容部311に連通する貫通部321が形成されている(
図10参照)。図示していないが、突出部32の突出方向に貫通する貫通部321には、雌ねじ部が形成されている。この雌ねじ部は、貫通部321の全域に形成されている必要はなく、突出部32(貫通部321)の先端側から後述する調整部110の雄ねじ部112がねじ込まれる領域に形成されていればよい。
【0026】
第1連動部材4は、
図3に示すように、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形して構成され、対向して配置される長尺の一対の側面部41と、これらの側面部41の両端部同士を連結する連結部42とを有している。これらの側面部41及び連結部42の内側には、上面視にて矩形状の開口部43が設けられている。各側面部41の中央には、上述した操作部材3の軸部33が挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。軸部33が挿通孔に挿通されることにより、第1連動部材4は、操作部材3を回動可能に保持した状態となる。
【0027】
前方側に配置された連結部42には、多方向入力装置101の前方側に突出して押圧片421が設けられている(
図2参照)。この押圧片421は、プッシュスイッチ8の駆動に利用される。一方、後方側の連結部42には、多方向入力装置101の後方側に突出して連結片422が設けられている(
図3及び
図4参照)。この連結片422は、第1連動部材4と第1回転検出部6との連結に利用される。連結片422は、操作部材3の傾倒動作に伴う第1連動部材4の回動を第1回転検出部6に伝達する。第1連動部材4においては、押圧片421と連結片422とが軸線方向に沿って配設されている。
【0028】
第2連動部材5は、
図4に示すように、第1連動部材4に対して回動軸の軸線方向が直交するように配設されている。第2連動部材5は、例えば、絶縁性の樹脂材料などで構成される。第2連動部材5には、上方側に向かってアーチ状に湾曲形成された枠状部51aが設けられると共に、これらの枠状部51aの長手方向に沿ってスリット孔51bが形成されている。このスリット孔51bは、操作部材3の突出部32が挿通可能な寸法に設けられている。
【0029】
第2連動部材5の長手方向の両端には、一対の側面部52が設けられている。これらの側面部52の外側には、下方側に突出する板状部521が設けられている。図示していないが第2回転検出部7側の板状部521の下面は円弧形状を有しており、下側ケース21の支持片216の凹部216a上に配置される。第2回転検出部7に対向して配置される板状部521には、断面が長方形状の連結片(図示せず)が設けられている。この連結片は、操作部材3の傾倒動作に伴う第2連動部材5の回動を第2回転検出部7に伝達する。第2連動部材5が有する連結片は、第1連動部材4の連結片422と同一の構成を有する。一方、第2回転検出部7の反対側の板状部521の外側には、概ね円形状の突出片523が設けられている。この突出片523は、下側ケース21の支持片215の凹部215a上に配置される。
【0030】
第1回転検出部6は、第1連動部材4と連結され、その回動動作を検出する。第1回転検出部6は、
図2から
図4に示すように、第1連動部材4の回動に伴って回転する摺動子61と、この摺動子61が保持される摺動子受け62と、摺動子61が摺接する抵抗体パターン及び集電体パターンが設けられる絶縁基板63と、絶縁基板63が一体化されると共に、摺動子61が保持された摺動子受け62を収容可能に構成されたケース64とを有している。
【0031】
第2回転検出部7は、第1回転検出部6と同様の構成を有する。すなわち、第2回転検出部7は、第2連動部材5の回動に伴って回転する摺動子(図示せず)と、この摺動子が固定される摺動子受け(図示せず)と、摺動子が摺接する抵抗体パターン及び集電体パターンが設けられる絶縁基板(図示せず)と、絶縁基板が一体化されると共に摺動子が固定された摺動子受けを収容可能に構成されたケース74とを有する(
図2から
図4参照)。
【0032】
本実施の形態に係る多方向入力装置101は、
図5及び
図8に示すように、操作部材3と一体的に移動(傾倒)する受け部材92と、操作部材3の基部31(収容部311)に配設されて駆動部材95をハウジング2の底面部211側へ付勢する弾性部材91とを備える。本実施形態の弾性部材91は、例えば、コイルばねによって構成される。そこで、理解を容易にするために、以下の説明においては「弾性部材91」を適宜「コイルばね91」と記載する。コイルばね91は、操作部材3の基部31に設けられた収容部311に収容される外径寸法を有すると共に、受け部材92の太軸部(突出部)922aが挿入される後述する筒状の中空部952の上方部分(段部952a)を収容可能な内径寸法を有している。コイルばね91は、後述する受け部材92のフランジ部93を介して、操作部材3と駆動部材95との間に設けられ、圧縮された状態となっている。コイルばね91は、操作部材3を操作前の初期状態に復帰させると共に操作部材3を介して第1連動部材4及び第2連動部材5を初期状態に復帰させる付勢力を付与する。
【0033】
操作部材3及び受け部材92は、
図8から
図10に示すように、駆動部材95によって支持される。駆動部材95は、傾倒動作した操作部材3を初期位置に復帰させる機能を有する。駆動部材95は、略円板状の座部951と、この座部951の上面の中央部から上方へ突出する略円筒体状の中空部952と、中空部952の周囲に突設された複数の支持部材953とを有する。中空部952には、受け部材92の太軸部(突出部)922aが挿入支持される。中空部952の上方部分には、その下方部分よりも縮径された段部952aが形成されている。複数の支持部材953は、突出部32の突出方向に延びており、座部951に全体として略円筒体状となるように立設されている。複数の支持部材953は、操作部材3の収容部311に挿入され、該操作部材3の内周面と当接可能に対向するようになっている。したがって、駆動部材95は、操作部材3とともに傾倒する。ただし、駆動部材95は、操作部材3に対して、突出部32の突出方向(上下方向)には、移動自在となっている。このため、操作部材3が傾倒すると、駆動部材95は、突出部32の突出方向へ移動し、コイルばね91を初期状態よりも更に圧縮させるように構成されている。
【0034】
座部951の下面には、下面視にて円形状を有する凹部951aが形成されると共に、凹部951aの周囲に球面形状部951bが設けられている(
図10参照)。この凹部951aは、初期状態において、下側ケース21の底面部211に設けられた凸部211aを収容可能に構成されている。球面形状部951bは、操作部材3が傾倒動作した場合において、圧縮されたコイルばね91の所定の付勢力により下側ケース21の凸部211aの傾斜面に付勢されることで、駆動部材95(これに連動する操作部材3)を初期位置に復帰させる機能を有する。ここで、コイルばね91の上記所定の付勢力は、受け部材92のフランジ部93の位置によって決まり、当該位置は調整部110によって調整される。
【0035】
受け部材92の軸部922は、駆動部材95の中空部952内に挿入される太軸部(突出部)922aと、この太軸部922aの上端に設けられる細軸部(軸部)922bとを有する。太軸部922a及び細軸部922bは、いずれも略円柱形状を有している。太軸部922aの外径は、細軸部922bの外径よりも大径に構成されている。太軸部922aと細軸部922bとの間には、円板状のフランジ部93が形成されている。フランジ部93は、
図9に示すように、コイルばね91を介して駆動部材95と対向するとともに、コイルばね91の一端(上端)を受ける受け部を構成している。なお、フランジ部93と軸部922(細軸部922bおよび太軸部922a)とは一体に形成されている。
【0036】
図10に示すように、操作部材3の突出部32は、操作部である突出部32の先端部(上端部)から駆動部材95に向かう方向に延在する貫通部321を有する。貫通部321は、基部31の収容部311に連通する。したがって、貫通部321は、収容部311から突出部32の突出方向に沿うように形成された貫通孔となっている。貫通部321は、操作部材3の突出部32の上端に開口され、該貫通部321内には受け部材92の軸部である細軸部922bを挿通させる。コイルばね91は、操作部材3の収容部311と駆動部材95の中空部952の段部952aとの間の略円筒体状の空間部311aに収容される。受け部である円板状のフランジ部93は、コイルばね91の一端(上端)を受けて、後述する調整部110が操作部材3に装着されていない状態では収容部311の上端に付勢されている。受け部材92は、当該受け部材92の強度を確保するため、例えば、黄銅等の金属部材によって形成することが好ましいが、例示の材質に限定されない。なお、コイルばね91の他端(下端)は、
図9に示すように、駆動部材95の段部952aの下面、すなわち段部952aを形成する中空部952の段差面と弾接して支持されている。
【0037】
また、本実施の形態に係る多方向入力装置101は、コイルばね91の付勢力が変化する方向(貫通部321の延在方向)における受け部材92のフランジ部93の位置を調整する調整部110を有する。調整部110は、
図3、
図8及び
図10に示すように、受け部材92の細軸部922bの先端部(上端部)側に設けられている。すなわち、調整部110は、操作部材3の貫通部321に形成された不図示の雌ねじ部にねじ止される雄ねじ部112を有するねじ部材で構成される。雄ねじ部112を有する調整部110(ねじ部材)は、下端面が受け部材92の細軸部922bの上端面と対向しており、受け部材92とは別の部材である。調整部110の上端面には、「十字溝部等のドライバー等の工具で雄ねじ部112(調整部110)を回転可能な装着溝部113が形成されている。
【0038】
操作部材3には、
図1に示すように、操作者が把持しやすいように、摘み部材120が圧入等によって取り付け可能である。本実施の形態では、摘み部材120の中央部には、外部から調整部110に通じる孔部121が形成されている。摘み部材120に外部から調整部110に通じる孔部121が形成されているので、摘み部材120を取り外すことなく、調整部110を外部から調整することができる。この孔部121は、不図示のキャップ等が装着されて、孔部121が目隠しされる。
【0039】
次に、本実施の形態に係る多方向入力装置101の作用について
図2から
図4、及び
図5、
図11を参照して説明する。
図11は本実施の形態に係る多方向入力装置の作用の説明に供する斜視図である。
【0040】
本実施の形態に係る多方向入力装置101においては、
図2から
図4に示すように、下側ケース21と上側ケース22との内側に形成される空間に操作部材3の基部31、第1連動部材4、第2連動部材5、弾性部材91及び駆動部材95が収納される。この場合において、操作部材3は、突出部32を上側ケース22の開口部221aから上方側に露出させた状態でハウジング2内に収納されている。また、第1連動部材4は、押圧片421及び連結片422を露出した状態でハウジング2内に収納されている。同様に、第2連動部材5は、連結片(図示せず)及び突出片523を露出した状態でハウジング2内に収納されている。なお、受け部材92は操作部材3に収容されている。
【0041】
図11に示すように、本実施の形態に係る多方向入力装置101の一方側に向けて操作部材3に対して傾倒操作が行われ、操作部材3に対する操作(押圧操作、傾倒操作)が解除されると、操作部材3は、コイルばね91の付勢力により初期位置(
図2に示す状態)に復帰する。すなわち、操作部材3に対する傾倒操作や押圧操作が解除された場合には、コイルばね91の付勢力により操作部材3が上方側に押し戻され、初期位置に復帰する。
【0042】
より具体的には
図2から
図5、
図10及び
図11に示すように、第1連動部材4の開口部43や第2連動部材5のスリット孔51bに沿って操作部材3に対して傾倒操作が行われと、駆動部材95の座部951に設けられた球面形状部951bの一部が下側ケース21の凸部211aの傾斜面部に乗り上げた状態となっている。操作部材3に対する傾倒操作が解除された場合、コイルばね91の付勢力は、凸部211aの傾斜面部に乗り上げた球面形状部951bの一部に作用し、凸部211aの傾斜面部を滑り下りる方向に摺動させる。これにより、操作部材3が起立するような方向へ移動し、初期位置に復帰する。なお、操作部材3を初期状態に復帰させる復帰機構9は、受け部材92、コイルばね91、駆動部材95、及び下側ケース21の底面部211(凸部211a)を有して構成されている。
【0043】
本実施の形態に係る多方向入力装置101では、操作部材3とともに傾倒する駆動部材95と、操作部材3と駆動部材95との間に配設されて駆動部材95をハウジング2の底面側へ付勢するコイルばねからなる弾性部材91とを備える。操作部材3の傾倒操作にともなって、弾性部材91が駆動部材95によって圧縮される。また、本実施の形態に係る多方向入力装置101は、操作部材3と一体となって移動し、弾性部材91の一端を受ける受け部材92と、弾性部材91の付勢力が変化する方向における受け部材92の位置を調整する調整部110とを有する。さらに、操作部材3は、操作部である突出部32の先端部から駆動部材95に向かう方向に延在する貫通部321を有し、受け部材92の細軸部922bの先端部(上端部)側に調整部110が設けられ、調整部110は、貫通部321に形成された雌ねじ部(図示せず)にねじ止めされる雄ねじ部112を有する。ここで、弾性部材91の付勢力が変化する方向とは、貫通部321が延在する方向であり、操作部材3の突出部32が突出する方向である。また、この方向を、軸部である細軸部922bの軸線方向と言うこともできる。
【0044】
多方向入力装置101が組み立てられた状態では、
図2に示すように、調整部110の雄ねじ部112は操作部材3の貫通部321の雌ねじ部にねじ込まれておらず、受け部材92のフランジ部93は操作部材3の収容部311の上端部にコイルばね91によって付勢されている。なお、調整部110の雄ねじ部112を貫通部321の雌ねじ部にわずかにねじ込んでも、フランジ部93は収容部311の上端部に当接した状態となっている。この初期状態において、操作者等が操作部材3を傾倒操作して、弾性部材91の初期状態の付勢力が軽いと感じた場合には、調整部110の雄ねじ部112の頭部に形成された装着溝部113にドライバー等の工具を装着して、調整部110の雄ねじ部112を回転(通常は右回転)させて、
図4に示すように、貫通部321の雌ねじ部にねじ込む量を増やすことができる。調整部110の雄ねじ部112を雌ねじ部に多くねじ込むと、これに伴って受け部材92のフランジ部93が降下し、コイルばね91の付勢力が増加することになる。
【0045】
反対に、操作者等が操作部材3を傾倒操作して、
図4に示すような状態の弾性部材91の付勢力が重いと感じた場合には、調整部110の雄ねじ部112の頭部に形成された装着溝部113に工具を装着して、調整部110の雄ねじ部112を逆回転(通常は左回転)させて、調整部110の雄ねじ部112を緩めると、受け部材92のフランジ部93が上昇し、コイルばね91の付勢力が減少することになる。すなわち、本実施の形態に係る多方向入力装置101によれば、弾性部材91の一端を受ける受け部材92のフランジ部93の位置を調整部110で調整でき、操作者等が自分の好みに応じて、操作部材3が傾倒操作されていない初期状態における弾性部材91の付勢力を変更することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態に係る多方向入力装置101では、弾性部材91の一端を受ける受け部材92のフランジ部93の位置を調整部110で調整できるので、多方向入力装置101が組み立てられた後でも、用途や好みに応じて弾性部材91の初期状態の付勢力を変更することができる。よって、本実施の形態に係る多方向入力装置101は、組み立て後においても操作部材の傾倒操作時の作動力を変更可能であるという優れた効果を発揮する。
【0047】
また、本実施の形態に係る多方向入力装置101では、操作部材3が操作部である突出部32の先端部から駆動部材95に向かう方向に延在する貫通部321を有し、受け部材92の細軸部922bの先端部側に調整部110が設けられ、調整部110は、貫通部321に形成された雌ねじ部(図示せず)にねじ止めされる雄ねじ部112を有するので、調整部110によって、容易に受け部材92のフランジ部93の高さ位置を変更して、操作部材3の傾倒操作の作動力を変えることができる。また、操作部材3の貫通部321に形成された雌ねじ部に、調整部110の雄ねじ部112がねじ止めされるので、受け部材92のフランジ部93の位置を容易に調整することができるとともに、一旦、調整設定した受け部材92のフランジ部93の高さ位置が変化しにくくなる。
【0048】
さらに、本実施の形態に係る多方向入力装置101では、受け部材92が駆動部材95に向けて延びる太軸部(突出部)922aを有し、駆動部材95は、受け部材92の突出部922aを収容する中空部952を有するので、受け部材92のガタつきを駆動部材95の中空部952で抑えることができる。そして、本実施の形態に係る多方向入力装置101では、受け部材92を金属で形成することにより、受け部材92の強度を確保することができる。
【0049】
また、本実施の形態に係る多方向入力装置101の操作部材3には、摘み部材120が取り付け可能であり、摘み部材120に外部から調整部110に通じる孔部121が形成されているので、摘み部材120を取り外すことなく、調整部110を外部から調整することができる。この摘み部材120を有する場合においても、操作部材3の貫通部321には、雌ねじ部が形成され、該雌ねじ部に調整部110の雄ねじ部112をねじ止めするので、受け部材92のフランジ部93の位置を容易に調整可能であり、一旦、調整設定した受け部材92のフランジ部93の高さ位置が変化しにくくなる。
【0050】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0051】
上記実施の形態では、操作部材3の貫通部321に雌ねじ部(図示せず)が形成されているが、
図12に示す多方向入力装置201のように、例えば、摘み部材120の孔部121に雌ねじ部121aを形成してもよい。この摘み部材120の孔部121の雌ねじ部121aには、調整部110の雄ねじ部112がねじ止めされる。摘み部材120に設けられた孔部121の雌ねじ部121aに、調整部110の雄ねじ部112がねじ止めされるので、受け部材92の位置の調整が容易で、一旦、調整設定した受け部材93の高さ位置が変化しにくくなる。なお、孔部121の上方部分は、雄ねじ部112の頭部112bを孔部121内へ導入するための拡径部121bが形成されている。
【0052】
また、上記実施の形態では、駆動部材95が上方へ向けて突設した中空部952を有し、この中空部952に受け部材92の突出部(太軸部)922aが挿入されてガイドされているが、これとは逆に、受け部材92の突出部922aを円筒体状の中空部として形成し、この突出部922a内に駆動部材95の上方へ向けて突設した突出部を挿入させるように構成してもよい。
また、上記実施の形態においては、調整部110と受け部材92とが別の部材で構成されているが、調整部110と受け部材92とを一体に形成してもよい。この場合には、装着溝部113が形成された調整部110の上端部(頭部)を操作部材3の貫通部321に挿入可能な大きさに設定する。
【0053】
また、上述した実施の形態では摘み部材120の孔部121に雌ねじ部121aを形成し、雌ねじ部121aに調整部110の雄ねじ部112がねじ止めされる場合を例示したが、孔部121内に円柱状の調整部を、孔部121の内周面と調整部の外周面との間の摩擦力によって固定するようにしてもよい。
また、操作部材3に取り付けられる摘み部材に、受け部材92の細軸部922bの先端を押し込む突起を一体に設け、この突起を受け部材92の高さ位置を変化させる調整部とすることも可能である。すなわち、操作部材3を傾倒操作した際の作動力が好みの作動力となるように突出量を設定した突起が摘み部材に形成されており、この摘み部材を操作部材に取り付ける構成としても構わない。