【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/インフラ状態モニタリング用センサシステム開発/道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価部による評価結果と、前記濃淡分布とに基づいて前記濃淡分布内の対応する領域に対して前記評価結果に応じた表示を行うことによって得られる類似度分布を出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の構造物評価装置。
前記評価部は、前記参照分布として一つの前記他の素材を含む一定の領域の分布を用いる場合には前記濃淡分布内の前記他の素材近傍の一定の領域の分布のうち一つの前記他の素材を含む一定の領域の分布との類似度を算出し、前記参照分布として交差する前記他の素材を含む一定の領域の分布を用いる場合には前記濃淡分布内の前記他の素材近傍の一定の領域の分布のうち交差する前記他の素材を含む一定の領域の分布との類似度を算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の構造物評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の構造物評価装置、構造物評価システム及び構造物評価方法を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の構造物評価システム100のシステム構成を示す図である。構造物評価システム100は、電磁波レーダ装置10及び構造物評価装置20を備える。電磁波レーダ装置10及び構造物評価装置20は、ネットワーク30を介して通信可能に接続される。ネットワーク30は、どのように構成されたネットワークであってもよい。ネットワーク30は、例えばインターネットを用いて構成されてもよい。
【0008】
電磁波レーダ装置10は、鉄筋コンクリート1の表面を矢印2の方向に走査し、鉄筋コンクリート1内部の鉄筋3を検出する。電磁波レーダ装置10は、検出結果から得られる濃淡分布を構造物評価装置20に送信する。ここで、濃淡分布とは、反射波の強度を濃淡で表した分布図である。鉄筋コンクリート1は、コンクリートと鉄筋とで構成される補強コンクリートである。鉄筋は、コンクリートと誘電率が異なる素材である。
構造物評価装置20は、電磁波レーダ装置10から得られる濃淡分布に基づいて、鉄筋コンクリート1の劣化などに関する健全性の評価を行う。
【0009】
次に、電磁波レーダ装置10の具体的な構造について説明する。電磁波レーダ装置10は、電磁波発信部と、受信部と、解析部と、通信部とを有している。電磁波発信部は、電磁波パルスを鉄筋コンクリート1の表面に発信する。受信部は、鉄筋コンクリート1内部を透過して反射してきた電磁波を受信する。この際、鉄筋コンクリート1内部にコンクリートと誘電率の異なる異物(例えば、鉄筋など)が存在すると、その位置で電磁波パルスが反射され、電磁波レーダ装置10に戻ってくる。したがって、受信部では、鉄筋コンクリート1内部の異物の状況に応じた反射波が得られる。
【0010】
例えば、
図1に示したように、鉄筋コンクリート1内部に鉄筋3がある場合、電磁波パルスが内部の鉄筋3で強く反射されて電磁波レーダ装置10に戻ってくる。電磁波レーダ装置10は、強い反射波が戻ってくるまでの時間から、電磁波パルスの発信位置と、鉄筋3との間の距離を算出することができる。電磁波レーダ装置10の走査に伴って、電磁波パルスの発信位置から鉄筋3までの距離はL1→L2と順次変化する。電磁波パルスの発信位置から鉄筋3までの距離の変化は
図2のように表すことができる。
図2は、電磁波パルスの発信位置と鉄筋との距離の関係を表す図である。
図2に示すように、強い反射波を示す鉄筋が円弧状のパターンとして現れる。
【0011】
ここで電磁波レーダ装置10の説明に戻る。解析部は、受信部によって得られた反射波を解析し、反射波の強度に基づいて濃淡分布を生成する。通信部は、生成された濃淡分布を構造物評価装置20に送信する。
【0012】
濃淡分布の具体例を
図3に示す。
図3は、実際の鉄筋コンクリート1表面を走査したときの濃淡分布の具体例を示す図である。
図3では、鉄筋の列に応じた円弧パターン40が見られる。また、一つの鉄筋の位置を点線41で示している。
図3に示されるように、鉄筋はコンクリートに比べて誘電率が大きいため、円弧パターン40は白く表示される。一方、不健全な鉄筋コンクリート1では、工事不良等による空隙が鉄筋近傍に存在する他、鉄筋の腐食による膨張、ひび割れなどが生じる。鉄筋コンクリート1中に空隙がある場合、空気の誘電率がコンクリートより小さいため反射波の位相が反転し、鉄筋とは濃淡が逆転した反射波のパターンが生じる。つまり、鉄筋コンクリート1中に空隙がある場合、空隙のある領域が黒く表示される。
【0013】
また、鉄筋の膨張や周囲のひび割れも、電磁波の挙動に影響を与える。したがって、電磁波レーダ装置10で受信される反射波のパターンに変化が見られる。そのため、原理的には、電磁波レーダ計測によって得られた濃淡分布から、作業員は鉄筋コンクリート1内部の欠陥等の有無を判断し、健全性を評価することができると考えられる。しかし、実際の濃淡分布では、一般的に鉄筋コンクリート1の変状を反映した分布の変化は明確に判別し難く、健全性等の診断にあたっては技術者の勘や経験に依る部分も大きかった。以下、このような課題に対する具体的な解決方法について説明する。
【0014】
図4は、構造物評価装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。構造物評価装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、評価プログラムを実行する。評価プログラムの実行によって、構造物評価装置20は、取得部201、記憶部202、入力部203、評価部204、表示制御部205、表示部206を備える装置として機能する。なお、構造物評価装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、評価プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、評価プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0015】
取得部201は、電磁波レーダ装置10から濃淡分布を取得する。取得部201は、取得した濃淡分布を記憶部202に記憶させる。記憶部202は、取得情報記憶部2021及び評価結果記憶部2022で構成される。取得情報記憶部2021は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。取得情報記憶部2021は、取得部201によって取得された情報を記憶する。取得情報記憶部2021は、例えば濃淡分布を記憶する。評価結果記憶部2022は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。評価結果記憶部2022は、評価部204による構造物の評価結果を記憶する。
【0016】
入力部203は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部203は、ユーザの指示を構造物評価装置20に入力する際にユーザによって操作される。また、入力部203は、入力装置を構造物評価装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部203は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号を構造物評価装置20に入力する。
【0017】
評価部204は、取得情報記憶部2021に記憶されている濃淡分布に基づいて、構造物の評価を行う。具体的には、評価部204は、濃淡分布において健全な領域(以下、「参照領域」という。)と、その他の領域との類似性を求めることによって構造物の評価を行う。ここで、健全な領域とは、鉄筋を含み、かつ、空隙や鉄筋の腐食による膨張及びひび割れなどができるだけ生じていない領域である。本実施形態では、類似性の算出に相関度を用いる。評価部204の具体的な処理については後述する。
【0018】
表示制御部205は、表示部206の表示を制御する。表示制御部205は、取得情報記憶部2021に記憶されている濃淡分布を表示部206に表示する。また、表示制御部205は、評価結果と、濃淡分布とに基づいて相関度分布を生成し、生成した相関度分布を表示部206に表示する。本実施形態では、相関度分布をコンター図で表す。
表示部206は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部206は、表示制御部205の制御に従って濃淡分布及び相関度分布を表示する。表示部206は、画像表示装置を構造物評価装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部206は、濃淡分布及び相関度分布を表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0019】
以下、
図5〜
図9を用いて構造物評価装置20の処理について説明する。
図5は、処理を説明するために用いる濃淡分布である。
図5において、電磁波レーダ装置10の走査方向をx、鉄筋コンクリート1の奥行き方向をyとすると、濃淡分布ではz方向に延びる鉄筋の断面が観測される。例えば、走査時にz方向に延びる鉄筋を4本横切った場合、
図5のようにxy断面の濃淡分布が得られる。
図5では、鉄筋を示す白い円弧パターンが4つ連なって示されている。この濃淡分布をg(x,y)とする。
【0020】
次に、作業員が、濃淡分布g(x,y)から健全と思われる鉄筋を一つ選択する。選択にあたっては、例えば、従来通りの検査等により健全と判断されたもののうち信頼性の高いものを選ぶといった手段がとれる。具体的には、作業員が、入力部203を操作して、表示部206に表示された濃淡分布g(x,y)から健全と判断した鉄筋を選択する。評価部204は、選択された鉄筋の近傍の領域を一定の領域分抽出する。例えば、評価部204は、濃淡分布g(x,y)から領域42を抽出する。以下の説明では、抽出された領域42を参照領域Fとする。参照領域Fは、鉄筋近傍の特徴的な濃淡分布ができるだけ含まれるように選択するのが望ましい。参照領域Fの濃淡分布をf(x,y)とする。鉄筋近傍の特徴的な濃淡分布とは、鉄筋を示す白い円弧パターンの分布である。
【0021】
次に、評価部204は、濃淡分布f(x,y)と、濃淡分布g(x,y)との相関度を算出する。上記のように、健全な鉄筋近傍と、不健全な鉄筋近傍とでは、濃淡分布に差異が生じる。また、鉄筋近傍が劣化すればするほど、もとの健全な状態の濃淡分布との乖離は大きくなっていくと考えられる。そのため、健全な状態と思われる参照領域Fとの濃淡分布の類似性が、他の領域の健全性の指標となり得る。濃淡分布f(x,y)と、濃淡分布g(x,y)との類似性を示す相関度Cは、例えば式(1)で算出される。
【0023】
C(i,j)は、点(i,j)における相関度を表す。
図6に示すように、各鉄筋に対して点(i,j)を基準に、濃淡分布g(x,y)のうち参照領域Fと同様の範囲の分布と、濃淡分布f(x,y)とを掛け合わせたものを領域内で積分する。この値は、一般的に濃淡分布g(x,y)が濃淡分布f(x,y)に近いほど大きい値をとる。したがって、算出されたC(i,j)の値が大きい対象分布に含まれる鉄筋近傍の領域は、健全な鉄筋近傍と分布が似通っており、健全な領域とみなすことができる。
【0024】
ただし、点(i,j)を基準にした領域における鉄筋の位置と、参照領域Fにおける鉄筋の位置とにずれが生じた場合も、相関度C(i,j)の値は低下する。鉄筋の配置にはある程度のぶれもあるため、点(i,j)を各鉄筋に対して機械的に正確に設定するのは難しい。このため、基準となる点(i,j)については、鉄筋に対して1点のみ設定するのではなく、x、y方向へある程度の幅を持たせ、一定の範囲での相関度分布を計算することが望ましい。相関度の値は、対象の領域における鉄筋の位置と参照領域Fにおける鉄筋の位置とが一致した点で、相関度分布の中の最大値Cmaxをとる。そこで、評価部204は、対象分布g(x,y)における各対象領域においてCmaxを対象領域の相関度として採用する。なお、相関度の算出にあたっては、計測値の大小(領域の明るさ)に相関度が影響を受けるため、対象の領域の明るさやノルムの値等で正規化することが望ましい。これは、明るさにより相関度のばらつきが出ないようにするためである。
以上の演算により、対象領域毎に参照領域との相関度の値が得られる。
【0025】
図7は、従来の電磁波レーダ法により測定した鉄筋コンクリート床版の一例を示す図である。
図7は、床版下面から見たもので、電磁波レーダの走査線44が格子状に表示されている。走査ピッチは5cmで、走査線44毎に断面の濃淡分布が取得されている。断面から確認された鉄筋の配置が白く格子状に表示されている。鉄筋の配置としては、浅い位置にz方向の主鉄筋45(かぶり厚〜3cm)が、その奥にx方向の配力筋46(かぶり厚〜6cm)が入っている。
【0026】
図中の鉄筋に重ねて表示されている四角の枠47は、従来の方法による診断結果を示している。具体的には、枠47は、空隙が存在する疑いがあるとの診断結果がなされた箇所を示している。
図7において主鉄筋45に着目すると、全域にわたって空隙が存在する疑いがあるという診断結果となっている。ただし、実際に空隙ありと診断された箇所の断面と、健全と診断された箇所の断面とでは目視上明確な差異が小さく、診断には技術者の経験に依る部分が大きい。このため、定量性がなく、信頼性の低い場合がある。これに対し、本実施形態では、上記のように相関度を算出することによって鉄筋毎に定量的な値を得ることができる。
【0027】
図8は、評価部204のより具体的な説明をするための図である。
図8に示す点線は、電磁波レーダ装置10の走査線を表す。相関度は、電磁波レーダ装置10の走査線が鉄筋を横切る位置毎に算出される。例えば、電磁波レーダ装置10の走査線と、鉄筋の交点R1,1では、断面の濃淡分布g1,1(x,y)が得られる。評価部204は、このg1,1(x,y)と、参照領域Fの濃淡分布f(x,y)との相関度を計算することによって、点R1,1を評価する。評価部204は、このような処理を各交点について繰り返すことによって測定領域全体の相関度が得られる。
図8の場合では、交点R1,1〜R4,10までの40点の相関度が算出できる。
【0028】
表示制御部205は、評価部204によって算出された相関度と、濃淡分布とに基づいて、相関度の分布を鉄筋の配置に合わせて表示することによって
図9(A)に示したようなコンター図を生成する。
図9(A)は、
図7の測定領域の主鉄筋45に対して算出された相関度の分布を表す。なお、
図9では、相関度が低いほど黒く表され、相関度が高いほど白く表されている。
図9(A)において濃度が濃い部分(黒に近い部分)は相関度が低い、つまり健全な領域との乖離が大きいことを表す。
図9(A)では、領域50や、領域51内において広い範囲で濃度が濃い部分が表れている。一方、
図9(A)において濃度が薄い部分(白に近い部分)は相関度が高い、つまり健全な領域との乖離が小さいことを表す。構造物評価装置20は、
図9(A)のような表示を行うことによって、視覚的、直感的に分かりやすい定量的な評価結果を提供する。具体的には、構造物評価装置20は、濃度が濃く示されている鉄筋近傍で劣化が生じている可能性が高いことを評価結果として提供し、濃度が薄く示されている鉄筋近傍で劣化が生じている可能性が少ないことを評価結果として提供する。
【0029】
図9(B)は、
図9(A)と同じ領域を対象にAE(Acoustic Emission:アコースティックエミッション)トモグラフィ法による結果を示す図である。
図9(A)が鉄筋コンクリート1表面からの深さ約3cm〜6cmに位置する主鉄筋45の相関値の分布を表すのに対し、
図9(B)は鉄筋コンクリート1表面から深さ5cmのAEトモグラフィ結果である。ここで、AEトモグラフィ法とは、材料の破壊時等に出る弾性波であるAEを利用した非破壊検査手法である。鉄筋コンクリート1内から生じたAEを、鉄筋コンクリート1表面に配置した複数のAEセンサで検出し、得られた複数のAE信号から、そのAEの発生源と鉄筋コンクリート1内を進む速度の分布を算出する。劣化したコンクリートほど、内部を進むAEの速度が低下するため、AEの速度分布からコンクリート内部の劣化度合いを評価できる。
【0030】
図9(A)と
図9(B)とを比較すると、両者で共通して測定領域の右上部及び左下部で濃度が濃くなっている。すなわち、測定領域の右上部及び左下部で劣化が生じている可能性があることが示されている。このように、
図9(A)における結果が、妥当な評価結果を示しているものと推測することができる。
【0031】
図10は、構造物評価装置20の処理の流れを示すフローチャートである。
取得部201は、電磁波レーダ装置10から濃淡分布を取得する(ステップS101)。取得部201は、取得した濃淡分布を取得情報記憶部2021に記憶させる。ユーザは、入力部203を操作して濃淡分布を表示する指示を入力する。この指示により、表示制御部205は取得情報記憶部2021に記憶されている濃淡分布を表示部206に表示させる。表示部206は、表示制御部205の制御に従って濃淡分布を表示する(ステップS102)。次に、ユーザは、入力部203を操作して濃淡分布において参照領域を選択する。この指示により、評価部204は選択された参照領域と、濃淡分布における他の領域との相関度を算出する(ステップS103)。評価部204は、算出した相関度を評価結果として評価結果記憶部2022に記憶させる。表示制御部205は、取得情報記憶部2021に記憶されている濃淡分布と、評価結果記憶部2022に記憶されている評価結果とに基づいて相関度分布を生成する。表示制御部205は、表示部206を制御して、生成した相関度分布を表示部206に表示させる。表示部206は、表示制御部205の制御に従って相関度分布を表示する(ステップS105)。
【0032】
以上のように構成された構造物評価装置20によれば、構造物の安定した健全性の評価を行うことができる。具体的には、構造物評価装置20は、電磁波レーダ装置10から得られた濃淡分布について、健全な鉄筋を含む参照領域と、他の領域との相関度を算出する。健全な鉄筋を含む参照領域との相関度は、その領域における健全度に比例すると考えられる。そのため、構造物評価装置20は、濃淡分布について、参照領域と、他の領域との相関度を算出することによって構造物の安定した健全性の評価を行うことができる。
【0033】
また、構造物評価装置20は、相関度の算出結果である評価結果と、濃淡分布とに基づいて相関度分布を生成し、生成した相関度分布を表示する。相関度分布には、相関度に応じた分布が濃度で示されている。作業員や管理者は、この表示を見ることによって劣化が生じている可能性がある箇所を容易に把握することができる。
【0034】
また、構造物評価装置20は、相関度を算出するにあたり、対象分布g(x,y)における各対象領域においてCmaxを各対象領域の相関度として採用する。これにより、鉄筋の位置ずれの影響を除いた相関度の正確な値を算出することができる。
【0035】
以下、構造物評価装置20の変形例について説明する。
本実施形態では、構造物評価装置20が鉄筋コンクリートの健全性を評価する構成を示したが、これに限定される必要はない。例えば、構造物評価装置20は、鉄筋コンクリート以外の補強コンクリートの健全性を評価してもよい。鉄筋コンクリート以外の補強コンクリートとしては、例えばプレストレストコンクリート(PC:Prestressed Concrete)等が挙げられる。
本実施形態では、構造物評価装置20は、ユーザの操作に応じて濃淡分布を表示する構成を示したが、これに限定される必要はない。構造物評価装置20は、電磁波レーダ装置10から濃淡分布が取得される度に表示するように構成されてもよい。
電磁波レーダ装置10と、構造物評価装置20とは一体化されて構成されてもよい。
類似性を判断する手法は、上記の相関度に限定される必要はない。例えば、類似性を判断する手法としては、参照領域と、対象領域と差分により得られる差分値が用いられてもよい。この場合、構造物評価装置20は、差分値が小さいほど乖離が小さいと評価する。
【0036】
また、表示制御部205は、相関度分布に、相関度分布の生成に利用した濃淡分布を重畳して表示するように構成されてもよい。例えば、表示制御部205は、
図9(A)に示す相関度分布に、
図7に示す濃淡分布を点線で重畳して表示する。このように構成されることによって、作業員や管理者は、この表示を見ることでどの鉄筋に劣化が生じている可能性があるかを容易に把握することができる。
【0037】
また、表示制御部205は、相関度分布内のいずれかの箇所において選択がなされると、選択された箇所に関する情報を表示するように構成されてもよい。選択される箇所は、相関度分布内であればどの箇所であってもよい。ここで、選択された箇所に関する情報とは、例えば、選択された箇所を含む領域の相関度が閾値以上であるか否かを示す情報や、選択された箇所を含む領域の相関度や、濃度分布内における選択された箇所を含む領域のエリアを示す情報などである。表示制御部205は、選択された箇所に関する情報をポップアップで表示してもよいし、その他の表示方法で表示してもよい。このように構成されることによって、構造物評価装置20は、より詳細な情報を提供することができる。
【0038】
また、表示制御部205は、出力制御部として動作してもよい。出力制御部は、出力部を制御して、評価結果と、濃淡分布とに基づいて生成した相関度分布を出力する。ここで、出力部には、表示部206、通信部及び印刷部が含まれる。出力部が通信部である場合、出力制御部は通信部を制御して、相関度分布を他の装置に送信する。また、出力部が印刷部である場合、出力制御部は印刷部を制御して、相関度分布を印刷する。なお、構造物評価装置20は、出力部として、表示部206、通信部及び印刷部の一部又は全てを備えて上記の動作を実行してもよい。
【0039】
本実施形態では、構造物評価装置20が、参照分布として一つの鉄筋を含む領域(参照領域)の濃淡分布f(x,y)を用いて相関度を算出する構成を示した。しかしながら、
図7に示すように、鉄筋コンクリート1では主鉄筋45と配力筋46とが含まれる。そのため、構造物評価装置20が、参照分布として一つの鉄筋(例えば、主鉄筋45)が含まれる領域の分布を用いて相関度を算出すると、主鉄筋45と配力筋46と含む領域の分布との相関度が低くなってしまう。この場合には、正確な相関度を算出することができない。
【0040】
そこで、構造物評価装置20は、以下のように動作するように構成されてもよい。具体的には、構造物評価装置20は、参照分布として一つの鉄筋を含む一定の領域の分布を用いる場合には濃淡分布内の鉄筋近傍の一定の領域の分布のうち一つの鉄筋を含む一定の領域の分布との類似度を算出する。また、構造物評価装置20は、参照分布として交差する鉄筋(主鉄筋45と配力筋46)を含む一定の領域の分布を用いる場合には鉄筋近傍の一定の領域の分布のうち交差する鉄筋を含む一定の領域の分布との類似度を算出する。このように構成されることによって、より正確に相関度を算出することができる。
【0041】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、構造物評価装置20は、取得部201と、評価部204とを持つ。取得部201は、濃淡分布を取得する。評価部204は、参照分布と、濃淡分布内の他の素材近傍の領域の分布との類似度を算出することによって補強コンクリートの健全性を評価する。このような構成により、補強コンクリートの安定した健全性の評価を行うことができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。