(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ガスセンサの構成>
図1は、本実施の形態において行う応答性検査の対象となるガスセンサ(より詳細には、その本体部)1の要部の内部構成を例示する断面図である。本実施の形態において、ガスセンサ1とは、その内部に備わるセンサ素子10によって所定のガス成分(例えば、NOx等)を検出するためのものである。なお、センサ素子10は、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質セラミックスを主たる構成材料とする長尺の柱状あるいは薄板状の部材である。センサ素子の構成については後述する。
【0018】
ガスセンサ1は、センサ素子10に加え、外側保護カバー2と、内側保護カバー3と、固定ボルト4と、ハウジング5とから、主として構成される。
【0019】
外側保護カバー2および内側保護カバー3は、センサ素子10のうち、使用時に被検ガスに直接に接触する部分、具体的には、後述するガス導入口104や第1内部空所102や第2内部空所103などが備わる一先端部10aを保護する、略円筒状の外装部材である。外側保護カバー2と内側保護カバー3とは、
図1に示すように2層構造をなしており、かつ、両者は同軸に配置される。そして、センサ素子10の一先端部10aは、内側保護カバー3によって囲繞される空間に配置される。
【0020】
外側保護カバー2は、概略、開放端を有しかつ該開放端側からハウジング5に嵌め合わされる円筒状の嵌合部2aと、嵌合部2aに対し略同一の径にて連続する円筒状の部位である中間部2bと、中間部2bよりも断面径が小さい有底筒状の部位である先端部2cとを有している。嵌合部2a、中間部2b、先端部2cは同軸となっている。また、中間部2bと先端部2cとは、外側保護カバー2全体の延在方向に直交する屈曲面2dを介して連続している。
【0021】
中間部2bの先端部2c寄りの位置には、複数の第1貫通孔H1が設けられている。複数の第1貫通孔H1は、中間部2bの周方向において等間隔に設けられている。また、先端部2cの側面の底部寄りの位置には、複数の第2貫通孔H2が設けられている。複数の第2貫通孔H2は、先端部2cの周方向において等間隔に設けられている。
【0022】
内側保護カバー3は、概略、開放端を有しかつ該開放端側からハウジング5に嵌め合わされる円筒状の嵌合部3aと、嵌合部2aよりも小さい径を有する連続する円筒状の部位である中間部3bと、中間部3bに連続する円錐台状の部位である先端部3cとを有している。中間部3bには断面視U字状に外側へと突出する突出部3dが周方向にわたって設けられている。嵌合部3a、中間部3b、先端部3cは同軸となっており、また、嵌合部3aと中間部3bとは、外側保護カバー2全体の延在方向に直交する屈曲面3eを介して連続している。
【0023】
さらには、中間部3bの屈曲面3e寄りの位置には、複数の第3貫通孔H3が設けられている。複数の第3貫通孔H3は、中間部3bの周方向において等間隔に設けられている。加えて、先端部3cの底部の中央部分には、第4貫通孔H4が設けられている。
【0024】
なお、
図1に示す第1貫通孔H1、第1貫通孔H2、第3貫通孔H3、および第4貫通孔の配置位置および配置個数はあくまで例示であって、これに限られるものではない。
【0025】
外側保護カバー2および内側保護カバー3が以上のような構成を有することから、ガスセンサ1が使用される際、あるいは後述する検査装置1000において検査される際、ガスセンサ1の外部の雰囲気はまず、外部から第1貫通孔H1を通じて外側保護カバー2の中間部2bと内側保護カバー3の中間部3bとの間の領域RE1に流入する。そして、領域RE1に流入した雰囲気は、突出部3dによる整流作用を受けつつ、第3貫通孔H3を通じて、センサ素子10の一先端部10aが配置された内側保護カバー3の内部の領域RE2に侵入する。領域RE2に入り込んだ雰囲気の一部はセンサ素子10の内部に取り込まれ、被検ガスの濃度の算出に利用される。センサ素子10の内部に取り込まれなかった雰囲気は、第4貫通孔H4を通じて、領域RE2から内側保護カバー3の先端部3cと外側保護カバー2の先端部2cとの間の領域RE3に流出する。外側保護カバー2の先端部2cにおいては、第2貫通孔H2を通じてガスセンサ1の外側の雰囲気が出入り可能になっているので、領域RE2から領域RE3へと流出した雰囲気は、ガスセンサ1の外側から第2貫通孔H2を通じて領域RE3へと取り込まれた雰囲気ともども、第2貫通孔H2を通じて外部へと流出する。
【0026】
固定ボルト4は、センサ本体部1を測定位置に固定する際に用いられる環状の部材である。固定ボルト4は、ねじ切りがされたボルト部4aと、ボルト部4aを螺合する際に保持される保持部4bとを備えている。ボルト部4aは、センサ本体部1の取り付け位置に設けられたナットと螺合する。例えば、自動車の排気管に設けられたナット部にボルト部4aが螺合されることで、センサ本体部1は、外側保護カバー2の側が排気管内に露出する態様にて該排気管に固定される。また、本実施の形態においては、ガスセンサ1を後述する検査装置1000に取り付ける場合にも、ボルト部4aが用いられる。
【0027】
また、ガスセンサ1の内部においては、
図1に示すように、センサ素子10が、ガス導入口等が備わる一先端部10aを残して、交互に隣接配置された複数のガイシと複数の封止材(タルク)のそれぞれの軸中心位置に嵌合されている。なお、
図1においては、2つのガイシ6、8と両者の間に備わる1つの封止材7とを示しているが、実際には、ガイシ8に隣接してさらにもう一つの封止材ともう一つのガイシとがこの順に嵌め合わされている。また、2つのガイシ6、8とその間の封止材7が、略円筒状をなすハウジング5の内筒部に嵌合されてなる。そして、このハウジング5の一方端側は外側保護カバー2および内側保護カバー3に嵌合されてなり、他方端側は凹部4cに挿入される図示を省略する別のカバーに嵌合されてなり、ハウジング5の外周に、固定ボルト4が固着されてなる。
【0028】
以上のような構成を有することで、ガスセンサ1では、所定位置に取り付けられた状態において、センサ素子10の一先端部10aの周りの雰囲気(外側保護カバー2および内側保護カバー3内の雰囲気)と外部の雰囲気とが完全に遮断されるようになっており、これにより、被検ガス中における対象ガス成分の濃度を精度良く測定できるようになっている。
【0029】
<センサ素子の構成例>
図2は、ガスセンサ1に備わるセンサ素子10の構成の一例を模式的に示す断面図である。
図2においては、センサ素子10が、酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニアを主成分とするセラミックスを構造材料として構成されてなる限界電流型のNOxセンサ素子である場合について、その構成を示している。
【0030】
係るセンサ素子10は、第1内部空所102が第一の拡散律速部110、第二の拡散律速部120を通じて外部空間に開放されたガス導入口104と連通し、第2内部空所103が第三の拡散律速部130を通じて第1内部空所102と連通する構成を備える、いわゆる直列二室構造型のセンサ素子である。なお、ガスセンサ1においてセンサ素子10は、ガス導入口104が備わる端部E1の側が
図1における一先端部10aの側となるように配置される。係るセンサ素子10を用い、以下のようなプロセスが実行されることで、被検ガス中のNOxの濃度が算出される。
【0031】
まず、第1内部空所102に導入された被検ガスは、センサ素子10の外面に設けられた外部ポンプ電極141と、第1内部空所102に設けられた内部ポンプ電極142と、両電極の間のセラミックス層101aとによって構成される電気化学的ポンプセルである主ポンプセルのポンピング作用(酸素の汲み入れ或いは汲み出し)によって、酸素濃度が略一定に調整されたうえで、第2内部空所103に導入される。第2内部空所103においては、同じく電気化学的ポンプセルである、外部ポンプ電極141と、第2内部空所103に設けられた補助ポンプ電極143と、両電極の間のセラミックス層101bとによって構成される補助ポンプセルのポンピング作用により、被検ガス中の酸素が汲み出されて、被検ガスが十分な低酸素分圧状態とされる。
【0032】
係る低酸素分圧状態の被検ガス中のNOxは、第2内部空所103に保護層144に被覆される態様にて設けられた測定電極145において還元ないし分解される。そして、係る還元ないし分解によって生じた酸素イオンが、測定電極145と、基準ガス導入口105に通じる多孔質アルミナ層146内に設けられた基準電極147と、両者の間のセラミックス層101cとによって構成される電気化学的ポンプセルである測定ポンプセルによって汲み出される。そして、その際に生じる電流(NOx電流)の電流値と、NOx濃度との間に線型関係があることに基づいて、被検ガス中のNOx濃度が求められる。
【0033】
なお、主ポンプセル、補助ポンプセル、および測定ポンプセルにおけるポンピングは、図示しない可変電源によってそれぞれのポンプセルを構成するポンプ電極間に第1内部空所102、第2内部空所103、および測定電極145近傍における酸素濃度に応じた電圧が印加されることで実現される。
【0034】
また、センサ素子10には図示しないヒータ部が設けられており、上述の動作は、ヒータ部に通電することでセンサ素子10を600℃〜700℃程度の温度に加熱しつつ行われる。それゆえ、後述する検査装置における検査も、係る温度にまでセンサ素子を加熱したうえで行われる。
【0035】
<応答性検査の概要>
次に、本実施の形態において行う、ガスセンサ1の応答性検査についてその概要を説明する。
【0036】
上述のように、ガスセンサ1においては、被検ガスが導入されるセンサ素子10のガス導入口104を含む第1先端部10aが外側保護カバー2および内側保護カバー3によって囲繞されているので、外側保護カバー2内に流入した被検ガスが測定電極145に到達し、測定対象成分の濃度に応じた出力変化を生じさせるまでには幾ばくかの時間を要する。被検ガス中の測定対象たるガス成分の濃度をできるだけリアルタイムに測定するには、被検ガスに実際に生じている濃度変化にできるだけ迅速に追随してガスセンサ1の出力が変化することが求められる。この被検ガスの濃度変化に対する出力変化の追随性を応答性と称する。
【0037】
本実施の形態においては、係る応答性の検査を、対象成分ガス濃度が既知の被検ガスをパルス的に流したときのセンサ出力の変化の度合いに基づいて行う。
【0038】
図3は、本実施の形態において行う、ガスセンサ1の応答性検査について説明するための図である。より具体的には、
図3は、ガスセンサ1の応答性検査の際の検査用ガスの流量プロファイル(
図3(a))と、係る流量プロファイルにて検査用ガスが与えられた際にガスセンサ1に生じるセンサ出力電流の変化を表すセンサ出力電流プロファイル(
図3(b))とを併せて示している。
【0039】
本実施の形態においては、ガスセンサ1が存在する所定の閉空間(チャンバ)に対し、
図3(a)に示すように、ある時刻t1にガスセンサ1の検出対象ガス成分を含む成分比一定の検査用ガスの一定流量aでの供給を開始した後、
図3(b)に示すように時刻t2でガスセンサ1からの出力(センサ出力電流)が当該検出対象ガス成分の濃度に見合う一定値Iaになったとする場合の、センサ出力信号が0.33Iaなる値から0.66Iaなる値にまで増加するのに要する時間Δtを、応答性評価値と定める。そして、この応答性評価値に基づいて、応答性検査の良否を判断するものとする。
【0040】
係る応答性検査において評価に用いられるセンサ出力電流としては、具体的には、主ポンプセルにおいて外部ポンプ電極141と内部ポンプ電極142との間を流れる電流(Ip0とも称する)が例示される。
【0041】
<検査装置の概略構成>
図4は、応答性検査を行う検査装置1000の構成を概略的に示す図である。検査装置1000は、検査対象たるガスセンサ1が配置されるとともに検査用ガスが流されるチャンバ1001と、検査用ガスを生成するガス供給源1002と、チャンバ1001を通過した検査用ガスが排気されるガス排気部1003と、CPU、ROM、RAM等から構成され、検査装置1000において行う応答性検査のための処理を制御する応答性検査処理部1004とを主として備える。
【0042】
チャンバ1001は、水平面内において一の方向に延在するように配置されている。チャンバ1001は、その図面視右側である上流側から順に、A〜Dの4つの検査位置が定められており、それぞれに検査対象とされるガスセンサ1が配置される。これにより、検査装置1000においては、検査位置A〜Dにおいて同時並行的に検査を行えるようになっている。また、チャンバ1001に対しては、矢印AR1にて示すように、ガス供給源1002にて生成された検査用ガスが供給される。一方、チャンバ1001を通過した検査用ガスは、矢印AR2にて示すように、ガス排気部1003へと排出され、ガス排気部1003において適宜の態様にて排気される。
【0043】
係る構成を有する検査装置1000において応答性検査を行う場合、4つの検査位置A〜Dに応答性検査の対象たるガスセンサ1を配置する。なお、
図4においてはガスセンサ1を概略的に図示しているが、より詳細には、4つの検査位置A〜Dのそれぞれにおいて、ガスセンサ1は、
図1のボルト部4aよりも下方の部分がチャンバ1001内に位置するように配置される。
【0044】
そして、応答性検査処理部1004から検査実行指示が出されると、
図3(a)に例示したようなガス流量プロファイルを実現するべく、ガス供給源1002から検査用ガスを一定流量にて供給する。なお、その際の流量の設定は、それぞれの検査位置A〜Dに配置されたガスセンサ1の外側保護カバー2内部に検査用ガスが良好に到達する限りにおいて、適宜に定められてよい。例えば、ガスセンサ1が実使用される際に配置される環境でのガス流量に近い値が設定されてもよいし、検査の効率性の観点から設定されてもよい。
【0045】
一方で、係る検査用ガスの供給開始とともに、応答性検査処理部1004は、検査対象とされている4つのガスセンサ1のそれぞれについて、センサ出力電流をモニタし、
図3(b)に例示したような出力プロファイルを得る。それぞれのプロファイルから、
図3(b)におけるΔtに相当する応答性評価値を求める。そして、応答性評価値が所定の閾値以下であれば、そのガスセンサ1は良好な応答性を有していると判断して、後段の処理に供する。
【0046】
チャンバ1001を通過した検査用ガスは、
図4において矢印AR2にて示すようにガス排気部1003へと排出される。
【0047】
係る態様にて応答性検査を行う場合、検査位置A〜Dのいずれにおいても同等の検査結果が得られる必要がある。以下においては、係る要件を満たす、チャンバ1001の具体的構成として、2通りのものを例示する。
【0048】
(チャンバの第1の構成例)
図5は、第1の構成例に係るチャンバ1001(1001A)の長手方向に沿った垂直断面図である。
図6は、
図5のQ−Q’位置におけるチャンバ1001Aの長手方向に垂直な断面図である。なお、
図5および以降の図においては、チャンバ1001Aの長手方向であってチャンバ1001Aにおいて検査用ガスの流れる向きをx軸正方向とし、鉛直方向上向きをz軸正方向とする右手系のxyz座標を付している。
【0049】
チャンバ1001Aは、4つの検査用配管部1010(1010A〜1010D)と、上流側配管部1011と、補助配管部1012と、下流側配管部1013とを主として備える。これら検査用配管部1010、上流側配管部1011、補助配管部1012、および下流側配管部1013はいずれも同径の円柱状のガス流通部1020を有している。
【0050】
チャンバ1001Aにおいては、上流側配管部1011、補助配管部1012、4つの検査用配管部1010、下流側配管部1013が上流側から(ガス供給源に近い側から)この順に、かつ、それぞれのガス流通部1020が同軸となるように、連接配置されている。これにより、チャンバ1001Aには、水平面内において一の方向(x軸方向)に延在する一のガス流路FPが形成されている。なお、4つの検査用配管部1010A〜1010Dがこの順に上流側から連接配置されている。
【0051】
それぞれの検査用配管部1010は、ガス流通部1020に加え、該ガス流通部1020に対して垂直に設けられた孔部である被検センサ配置部1030と、被検センサ配置部1030と対向する位置においてガス流通部1020に対し垂直に設けられた孔部である温度センサ配置部1040とを備える。より具体的には、被検センサ配置部1030と温度センサ配置部1040とは、ガス流通部1020が水平面内に沿って配置された状態において、前者が鉛直上方に延在し、後者が鉛直下方に延在するように、設けられている。なお、4つの検査用配管部1010A〜1010Dは同一の構造を有していることから、それぞれに備わる被検センサ配置部1030はガス流路FPの延在方向において等間隔に位置しており、それゆえ、検査位置A〜検査位置Dも等間隔となっている。
【0052】
4つの検査用配管部1010A〜1010Dのそれぞれに備わる被検センサ配置部1030がそれぞれ、検査対象とされるガスセンサ1が配置される検査位置A〜Dに該当する。被検センサ配置部1030には、センサ素子10が、その外側保護カバー2の側をガス流通部1020に突出させる態様にて挿入され、ボルト部4aによって被検センサ配置部1030に固定される。なお、ガス流通部1020への外側保護カバー2の突出の程度は、外側保護カバー2および内側保護カバー3の形状や外側保護カバー2および内側保護カバー3に備わる第1貫通孔H1〜第4貫通孔の位置やサイズなどに応じて適宜に定められてよい。
【0053】
温度センサ配置部1040には、被検センサ配置部1030近傍における検査用ガスの温度をモニタするための温度センサが挿入配置される。なお、温度センサの形態は特に限定されない。なお、温度センサ配置部1040においてガス流通部1020内に挿入された温度センサは、ガス流路FPを流れる検査用ガスに対しては整流部材の一種としても機能する。
【0054】
ただし、各検査用配管部1010に温度センサを設けることは必須の態様ではなく、温度センサ配置部1040が省略される態様であってもよい。あるいは、温度センサ配置部1040と同様に設けられた孔部に対し、単に整流作用のみを有する部材が挿入される態様であってもよい。
【0055】
上流側配管部1011は、ガス供給源1002に接続された配管部である。なお、
図4においては説明の簡単のため、一のガス供給源1002のみを図示していたが、検査用ガスの生成のために複数のガスが混合される場合、検査装置1000がガス種ごとに異なるガス供給源1002を備えており、それぞれのガス供給源1002から図示しない異なる支分配管を通じて供給される複数種類のガスが、支分配管が上流側配管部1011に合流することによって上流側配管部1011において所定の比率で混合され、さらには所定の温度に加熱されたうえで、チャンバ1001へと与えられる態様であってもよい。
【0056】
補助配管部1012は、上流側配管部1011と4つの検査用配管部1010のうちもっとも上流側に位置する検査用配管部1010Aとを接続する部位である。なお、
図5に示す場合においては、2つの補助配管部1012Aおよび112Bがこの順に、上流側から配置されている。
【0057】
下流側配管部1013は、ガス排気部1003に接続された配管部である。検査用配管部1010を通過した検査用ガスを排気する部位である。下流側配管部1013は、4つの検査用配管部1010のうちもっとも下流側に位置する検査用配管部1010Dに接続されている。なお、下流側配管部1013には、ガス流路FPを通過してきた検査用ガスにおけるガスセンサ1の対象ガス成分の濃度をモニタするための濃度センサが配置される濃度センサ配置部1080が設けられている。
【0058】
上流側配管部1011、2つの補助配管部1012、4つの検査用配管部1010、および下流側配管部1013はいずれも、隣り合う配管部との連結を行うための第1連結部1050と第2連結部1060とを備えている。より具体的には、それぞれの配管部の上流側の端部には第1連結部1050が備わっており、下流側の端部には第2連結部1060が備わっている。第1連結部1050および第2連結部1060はそれぞれ、該ガス流通部1020の外周においてガス流通部1020に対して垂直に設けられた平板状の当接部1051および1061を備えている。なお、当接部1051および1061のガス流通部1020を囲む四方位置には貫通孔が設けられている。そして、隣り合う2つの配管部の一方に備わる当接部1051の貫通孔に挿通されたボルト1052が他方の配管部に備わる当接部1061の貫通孔を貫通し、該貫通孔からの突出部分にナット1062aが螺合されることで、隣り合う2つの配管部が連結されている。
【0059】
ただし、隣り合う検査用配管部1010同士の間、上流側配管部1011と補助配管部1012Aとの間、および、検査用配管部1010Dと下流側配管部1013との間には、第1連結部1050と第2連結部1060との連結に際し、整流板1070が挟み込まれている。
図7は、整流板1070の正面図である。整流板1070は、中央部分に幅(y軸方向のサイズ)がwで高さ(z軸方向のサイズ)がhである矩形の開口部1070aを有する薄板部材である。整流板1070は、前記ガス流路FPに対して直交するように、かつ、
図7に示すように、その開口部1070aがガス流通部1020の構成するガス流路FPと同軸となるように、挟み込まれている。
【0060】
より詳細には、開口部1070aの幅wは流路FPの(ガス流通部1020の)直径と同じ値に定められ、開口部1070aの高さhは幅wよりも小さい値に定められる。加えて、開口部1070aは、ガス流路FPが水平面内において一の方向(x軸方向)に延在する場合において、水平面内において該一の方向に直交する方向(y軸方向)に長手方向を有するように設けられている。また、整流板1070は、隣り合う2つの配管部を接続するために用いられるボルト1052が開口部1070aの四方に備わる固定用の貫通孔1070bに対しても挿通されることによって、2つの配管部の間に挟持固定されている。
【0061】
これにより、検査位置A〜Dとなる4つの被検センサ配置部1030の上流側には必ず、水平方向に長手方向を有する矩形状の開口部1070aを備える整流板1070が設けられていることになる。
【0062】
なお、上述したように、検査用配管部1010A〜1010Dの構造は同一であり、かつ、検査位置A〜Dはガス流路FPの延在方向において等間隔であるので、各被検センサ配置部1030と(検査位置A〜Dと)その上流側に設けられた整流板1070との距離も同一である。
【0063】
以上のような構成を有するチャンバ1001Aにおいて応答性検査を行う場合、あらかじめ温度センサ配置部1040および濃度センサ配置部1080にそれぞれ所定の温度センサと濃度センサとを配置した状態で、4つの検査用配管部1010A〜1010Dのそれぞれの被検センサ配置部1030(検査位置A〜D)に応答性検査の対象たるガスセンサ1が配置される。そのうえで、
図3(a)に例示したようなガス流量プロファイルに基づいて検査用ガスが供給され、それぞれのガスセンサ1に対して並行に、応答性検査が行われる。
【0064】
係る場合、チャンバ1001Aにおいては、検査位置A〜Dのそれぞれに配置されたガスセンサ1の存在位置における(より具体的にはセンサ素子10の備わる外側保護カバー2内の)検査用ガスの流れの状態(流速分布)に、著しい相違が生じないようになっている。すなわち、検査位置間での流速分布の均一化が実現されるようになっている。
【0065】
これは、上述のような整流板1070を備える構成が採用されることで、整流板1070の開口部1070aを通過することで整流された検査用ガスが、4つの検査位置A〜Dのそれぞれに配置されたガスセンサ1の近傍に対し供給されることによる効果である。
【0066】
加えて、応答性検査によって得られる、各検査位置における応答性評価値のばらつきに、著しい相違が生じないようにもなっている。これは、上述したように、検査位置間において流速分布が均一化されたことの効果である。これはすなわち、一のガス流路に設けた複数の検査箇所において同時並行的に応答性検査を行う場合には、どの検査箇所においても同様の評価がなされることが求められるところ、チャンバ1001Aを備える検査装置1000は、この点において優れているということを意味する。
【0067】
なお、応答性検査の際の、開口部1070a近傍における検査用ガスの流速は、12m/sec.以上となることが好ましい。係る場合、上述した4つの検査位置A〜Dにおける応答性評価値のばらつきの抑制が、好適に実現される。それゆえ、開口部1070aのサイズ、および、応答性検査の際の検査用ガスの流量は、係る流速が実現されるように定められるのが好ましい。
【0068】
(第2の構成例)
図8は、第2の構成例に係るチャンバ1001Bの長手方向に沿った垂直断面図である。
図8に示すチャンバ1001Bは、第1の構成例に係るチャンバ1001Aを改良したものである。
【0069】
具体的には、チャンバ1001Bは、第1の構成例に係るチャンバ1001Aの補助配管部1012Bと検査位置Aを与える検査用配管部1010Aとの間に、ダミー配管部2010を挿入した構成を有する。他の構成についてはチャンバ1001Aと同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0070】
ダミー配管部2010は、その構成自体は検査用配管部1010と同一である。すなわち、ガス流通部1020と、被検センサ配置部1030と、温度センサ配置部1040と、第1連結部1050と、第2連結部1060とを、検査用配管部1010と全く同様に備える。そして、上流側において隣接する補助配管部1012Bとの接続、および、下流側において隣接する検査用配管部1010Aとの接続も、他の配管部同士の接続と同様になされている。さらには、ダミー配管部2010と補助配管部1012Bとの間、および、ダミー配管部2010と検査用配管部1010Aとの間には、
図7に示した整流板1070が挟み込まれている。
【0071】
当然ながら、ダミー配管部2010の被検センサ配置部1030と、その隣の検査用配管部1010Aの被検センサ配置部1030とのガス流路FPの延在方向における間隔は、被検センサ配置部1030同士の間隔と同じである。すなわち、チャンバ1001Bにおいては、ダミー配管部2010の被検センサ配置部1030を含め、全ての被検センサ配置部1030が等間隔に配置されている。
【0072】
また、ダミー配管部2010とその上流側の整流板1070の距離は、それぞれの検査用配管部1010とその上流側の整流板1070の距離と同じである。
【0073】
チャンバ1001Bを備える検査装置1000において応答性検査を行う場合、ダミー配管部2010の被検センサ配置部1030には検査対象たるガスセンサ1は配置せず、代わって、ガスセンサ1と同一の形状および構造を有するダミーセンサを配置する。換言すれば、ダミー配管部2010の被検センサ配置部1030はダミーセンサ配置部ということになる。また、ダミー配管部2010の温度センサ配置部1040には、検査用配管部1010の温度センサ配置部1040と同様に温度センサを配置する。
【0074】
係る構成を有するチャンバ1001Bを備える検査装置1000にて応答性検査を行った場合、チャンバ1001Aを備える検査装置1000にて応答性検査を行った場合よりもさらに、検査位置A〜Dに配置されたガスセンサ1から得られる応答性評価値のばらつきが抑制される。好適には、検査位置A〜Dのそれぞれにおける応答性評価値のばらつきがほぼ0となる。当然ながら、検査位置間における応答性評価値のばらつきの程度に差異は無い。
【0075】
これは、チャンバ1001Aにおいては4つの検査位置のうち最上流位置にあった検査用配管部1010Aのさらに上流側に、ダミー配管部2010およびこれに配置されるダミーセンサおよび温度センサによって検査用配管部1010と同様の構成を実現することで、最上流側の検査位置Aを与える検査用配管部1010Aを、チャンバの構造上は上流側から2番目の検査用配管部1010となるようにしたことの効果である。より具体的には、チャンバ1001Aの場合、検査用配管部1010Aのみ、その上流側におけるガス流通部1020の構成が異なっているのに対し、チャンバ1001Bの場合、4つの検査用配管部1010A〜1010Dの全てにおいて、その上流側におけるガス流路の1020の構成が同じとなっていることの効果である。
【0076】
なお、係る態様にてダミー配管部2010を設けた結果として、検査位置Dを与える検査用配管部1010Dは、チャンバの構造上は上流側から5番目の検査用配管部1010となっているが、検査位置Dに配置されたガスセンサ1についての応答性評価値のばらつきの程度は、他の検査位置とに配置されたガスセンサ1についての応答性評価値のばらつきの程度と同等である。
【0077】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、一のガス流路の途中に複数の検査位置を設けて複数のガスセンサについて応答性検査を行う検査装置において、それぞれの検査位置の上流側に、水平方向に長手方向を有する矩形状の開口部を備える整流板を設けるようにすることで、検査位置間における応答性評価値のばらつきを抑制することができる。
【0078】
さらには、最上流側の検査位置を与える検査用配管部のさらに上流側に、検査用配管部と同一の構成を有するダミー配管部を設けるようにすることで、検査位置間における応答性評価値のばらつきをさらに抑制することができる。
【0079】
<変形例>
上述の実施の形態においては、検査装置1000において4箇所の検査位置が設けられていたが、検査位置の個数はこれに限定されるものではなく、10箇所までであれば、応答性評価値の精度ばらつきが抑制された応答性検査が可能である。なお、10箇所を超えると、検査用ガスの温度低下が顕著となって、検査位置ごとの検査条件が異なることとなり好ましくない。
【0080】
検査対象とされるガスセンサの外側保護カバーおよび内側保護カバーの形状は、上述の実施の形態にて例示したものには限られない。
【実施例】
【0081】
(応答性評価)
実施例1として、上述した第1の構成例に係るチャンバ1001Aを備える検査装置1000を用いて4つのガスセンサ1に対する応答性検査を行い、検査位置ごとの応答性評価値のばらつきを評価した。
【0082】
ガスセンサ1としては、NOxを検知対象ガス成分とするNOxセンサを用いた。なお、ガスセンサ1には、あらかじめ正常品であることが確認されているものを用いた。また、検査用ガスとしては、流量が90L/min.の空気と流量が10L/min.のLNGガスとを混合し、さらに350℃に加熱することで得られる、流量が100L/min.の混合ガスに、26L/min.なる流量にて室温の空気を混合してなるものを用いた。
【0083】
また、ガス流通部1020の内径および開口部1070aの幅wは28mmとし、開口部1070aの高さhは10mmとした。また、検査用配管部1010におけるガス流通部1020の長さは90mmとした。
【0084】
また、比較例1〜比較例3として、チャンバ1001Aに備わる整流板1070と開口部の形状が異なる3通りの整流板1071、1072、1073を用意し、それぞれについて実施例1に係る検査装置1000の整流板1070と付け替えたうえで(ただし、上流側配管部1011と補助配管部1012との間は除く)、応答性評価値のばらつきの評価を行った。整流板以外の条件は実施例1と同じとした。
【0085】
図9、
図10、および
図11はそれぞれ、比較例1〜比較例3に係る整流板1071、1072、および1073を示す図である。
【0086】
比較例1に係る整流板1071は、
図9(a)に示すように、その中央部分に網目状の開口部1071aを有している。係る開口部1071aは、整流板1071が第1連結部1050と第2連結部1060とによって挟持された状態においてガス流路FP(ガス流通部1020)全体を覆う位置に設けられている。
図9(b)に示すように、開口部の個々の網目は正方形状をなしている。比較例1においては、網目の一辺の長さaは10mmであり、網目の太さbは2mmである。
【0087】
比較例2に係る整流板1072は、
図10に示すように、弓形の開口部1072aを有している。係る開口部1072aは、整流板1072が第1連結部1050と第2連結部1060とによって挟持された状態において、ガス流路FP(ガス流通部1020)の鉛直方向下部に位置する。なお、比較例2に示す場合においては、開口部1072aの水平方向両端部間の距離cがガス流路FP(ガス流通部1020)の直径よりも大きいために、開口部1072aの一部のみが実際にガス流路FP(ガス流通部1020)に対して開口している場合を示している。
【0088】
比較例3に係る整流板1073は、
図11に示すように、その中央部分に矩形状の開口部1073aを有している。係る開口部1073aは、ガス流路FPが水平面内において一の方向に延在する場合において、該一の方向に直交する鉛直面内において鉛直方向に延在するように設けられている。すなわち、比較例3に係る整流板1073が第1連結部1050と第2連結部1060とによって挟持された状態における開口部1073aの延在方向は、上述した第1の構成例に係るチャンバ1001Aに備わる整流板1070における開口部1070aの延在方向に対して直交する。
【0089】
さらには、実施例2として、上述した第2の構成例に係るチャンバ1001Bを備える検査装置1000を用いて4つのガスセンサ1に対する応答性検査を行い、検査位置ごとの応答性評価値のばらつきを評価した。検査用配管部1010と同じ構成のダミー配管部2010を設けるほかは、実施例1と同様とした。
【0090】
いずれの実施例および比較例においても、全ての検査位置について3回ずつ応答性評価値を求めた。
【0091】
図12、
図13、
図14、
図15、および
図16はそれぞれ、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3、および実施例2に係る検査装置による、検査位置A〜D(
図12〜
図16においては単に位置A〜Dと表示)に配置したガスセンサ1についての応答性評価値を示す図である。なお、
図12ないし
図16においてはいずれも、各検査位置A〜Dにおいて得られた応答性評価値の最大値と最小値と平均値とを示している。
【0092】
図12ないし
図15を比較すると、実施例1についての結果を示す
図12においては、応答性評価値の平均値は検査位置によらず約0.3msecでほぼ一定であり、ばらつき(最大値と最小値の差)については、検査位置Aでは0.1msec程度であったが検査位置B〜検査位置Dではほぼ0であった。
【0093】
これに対し、比較例1および比較例2についての結果を示す
図13および
図14においては、応答性評価値の平均値およびばらつきの双方ともに、検査位置による違いがあった。
【0094】
また、比較例3についての結果を示す
図15においては、応答性評価値の平均値の検査位置による差は小さいながらも存在し、また、ばらつきについては検査位置によらず0.1msec程度であった。
【0095】
以上の結果からは、実施例1のように、検査装置1000のチャンバ1001Aに整流板1070を設ける構成が、比較例1〜比較例3のように整流板1071〜1073を設ける構成よりも、応答性評価値の精度を確保しつつ検査位置間における応答性評価値のばらつきを抑制することに効果があることがわかる。
【0096】
また、実施例1についての結果を示す
図12と実施例2についての結果を示す
図16とを比較すると、前者については上述のように検査位置Aにおける応答性評価値のばらつきが他の検査位置よりも大きかったが、後者においては、応答性評価値の平均値が検査位置によらず約0.3msecでほぼ一定であることに加えて、応答性評価値のばらつきが、全ての検査位置においてほぼ0であった。
【0097】
以上の結果からは、実施例2のように、チャンバ1001Aにおいて検査位置Aを与える検査用配管部1010Aの上流側にダミー配管部2010を設けたチャンバ1001Bを検査装置1000に用いることが、実施例1の構成よりもさらに検査位置間における応答性評価値のばらつきの抑制に効果があることがわかる。
【0098】
(流速分布シミュレーション)
実施例2に係る検査装置1000を対象に、応答性評価を行う際のチャンバ1001B内部における検査用ガスの流速分布のシミュレーションを行った。
図17ないし
図20はそれぞれ、検査位置A〜検査位置Dにおける検査用ガスの流速分布のベクトル図である。なお、係るシミュレーションは、ガスセンサ1全体の下端部である外側保護カバー2の底部と温度センサ配置部1040に配置された温度センサとが接触しているという条件のもとで行った。実際に検査装置1000において検査を行う際には、両者は適宜の距離だけ離隔させられているが、上述した条件は、なるべく外側保護カバー2と内側保護カバー3の内部において検査用ガスの流れを生じさせることを意図したものである。
【0099】
図17ないし
図20からは、検査位置A〜検査位置Dのいずれにおいてもガスセンサ1近傍における検査用ガスの流速は1.0m/s以下であり、ガス流速分布にほとんど差異がないことがわかる。これはすなわち、各検査位置の上流側に整流板1070を設け、さらに、検査位置Aを与える検査用配管部1010Aの上流側にダミー配管部2010を設けた構成においては、検査位置によらず、ガスセンサ1の外側保護カバー2および内側保護カバー3の内部におけるガス流速分布が均一化されていることを意味する。上述した実施例2についての応答性評価の結果を併せ考えると、係るガス流速分布の均一化が、検査位置間における応答性評価値のばらつきの抑制に有効であると考えられる。