(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571039
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】食品保存方法、及び、食品保存用収容袋
(51)【国際特許分類】
B65D 81/20 20060101AFI20190826BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20190826BHJP
B65D 30/24 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
B65D81/20 D
B65D81/20 B
B65D33/25 A
B65D30/24 R
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-80000(P2016-80000)
(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-190153(P2017-190153A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2018年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 宣隆
(72)【発明者】
【氏名】殿柿 智也
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠志
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3000485(JP,U)
【文献】
特開2008−295383(JP,A)
【文献】
特開平04−367475(JP,A)
【文献】
特開平08−228697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/20
B65D 30/24
B65D 33/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容した状態で電子レンジ内に設置して一定時間マイクロ波を照射した後、一定時間自然冷却し、その後冷蔵庫で保存するのに用いられる食品保存専用の食品保存用収容袋であって、
耐熱性を有する一対のシート状部材が重なった状態で周囲に形成された溶着部と、
前記溶着部によって画定され、前記食品が収容される収容部と、
前記一対のシート状部材の周囲の一部を溶着することなく形成され、前記収容部に食品を出し入れ可能にする開口領域に設けられて収容部を密閉可能にするシール手段と、
前記収容部と接続され、収容部内の空気を外部に排出すると共に外気の流入を阻止するように、前記シート状部材の一端側をカットして、カットした部分の両方を折り曲げて端部の内面同士を重ね、この重なった部分を溶着すると共にその中間部分に配設された易剥離性の逆止弁と、
を有することを特徴とする食品保存用収容袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に市販される収容袋を用いて各種の食品を保存する方法、及び、その方法を実行するに際して専用に用いられる食品保存用収容袋に関する。
【背景技術】
【0002】
市場において購入した生鮮食品や加工食品、或いは、一般家庭において調理済みの食品を保存したい場合がある。通常、これらの食品の保存に用いられる収容袋として、袋本体の開口側にスライド操作されるファスナーや凹凸係合するチャックを設けて内部を密閉できるものが知られている(以下、内部を密閉する機能を備えた構造をシール手段と総称する)。このような収容袋は、食品を収容した後、冷蔵庫などで保存しておき、次に食べるときには、そのまま電子レンジで加熱するか、別容器に移して電子レンジで加熱することが行われている。
【0003】
ところが、上記した収容袋は、内部の空気を十分に脱気することができず、保存中に食品が腐敗等する可能性があるため、例えば、特許文献1に開示されているような、収容袋の一端に密閉用のシール手段を設け、他端に逆止弁を設けた食品収容袋が知られている。このような食品収容袋は、内部に食品を収容してシール手段を閉じた後、逆止弁を介して専用の脱気ポンプで内部の空気を吸引して内部を無酸素状態にし、これにより、収容した食品の腐敗、変質、変味を有効に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3045689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した公知の食品収容袋は、実際に食品を保存する場合、食品を収容した後、脱気ポンプを接続して脱気操作するため、保存作業が面倒である。また、逆止弁が配設されていることから、食品を収容した収容部を手で押圧することにより内部の空気を排出することも可能であるが、十分な脱気を行なうことは面倒であると共に難しく、保存状態に問題が生じる。すなわち、従来、公知の食品保存用の収容袋では、収容した食品の腐敗、変質、変味を、簡単かつ確実に防止することができない。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、保存する各種の食品に関し、簡単かつ確実に腐敗、変質、変味を生じさせることのない食品保存方法、及び、食品保存用収容袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る食品保存方法は、耐熱性を有する一対のシート状部材の周囲を重ねて収容部を形成し、収容部を開閉して食品を出し入れ可能にするシール手段と、収容部内の空気を外部に流出させるとともに外気の流入を阻止する逆止弁とを備えた食品保存用収容袋を用いて食品を保存するに際し、前記収容部に食品を収容した状態で電子レンジに設置し、マイクロ波を一定時間照射する工程と、マイクロ波が照射された食品保存用収容袋を一定時間自然冷却し、冷蔵庫で保存する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る食品保存用収容袋は、
食品を収容した状態で電子レンジ内に設置して一定時間マイクロ波を照射した後、一定時間自然冷却し、その後冷蔵庫で保存するのに用いられることを前提としており、耐熱性を有する一対のシート状部材が重なった状態で周囲に形成された溶着部と、前記溶着部によって画定され、前記食品が収容される収容部と、前記一対のシート状部材の周囲の一部を溶着することなく形成され、前記収容部に食品を出し入れ可能にする開口領域に設けられて収容部を密閉可能にするシール手段と、前記収容部と接続され、収容部内の空気を外部に排出すると共に外気の流入を阻止する
ように、前記シート状部材の一端側をカットして、カットした部分の両方を折り曲げて端部の内面同士を重ね、この重なった部分を溶着すると共にその中間部分に配設された易剥離性の逆止弁と、を有することを特徴とする。
【0009】
一般的に、家庭用で用いられる電子レンジは、主に食品を調理したり、冷凍されている食品を解凍して食べることを用途としたものであり、食品を保存するために用いることについては何等考慮されていない。このため、各種の食品保存用の収容袋が公知になってはいるものの、いずれも電子レンジを利用して食品を保存するのに適した構造になっていないのが現状である。
【0010】
本発明は、このような現状に基づいて着想されたものであり、上記した食品保存方法、及び、食品保存用収容袋によれば、まず、シール手段を開けて収容部に食品(生鮮食品、加工食品、調理済みの食品等)を収容し、シール手段を閉じて内部を密閉する。この状態で電子レンジに入れて一定時間(収容される食品、電子レンジのワット数によって適宜設定される)加熱してマイクロ波を照射する。この際、収容部内の温度が高くなって内部の空気は膨張するが、この膨張する空気は逆止弁を介して外部に排出される。また、このマイクロ波照射・加熱によって食品に対する殺菌効果が得られる。そして、電子レンジでの加熱後、一定時間自然冷却すると、減圧作用により、収容部内に残っている空気が排出されて内部は真空状態となる。真空状態となった収容袋は、内部の食品が腐敗、変質、変味することはなく、冷蔵庫等で保管することにより、食品を長期保存することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保存する各種の食品に関し、簡単かつ確実に腐敗、変質、変味を生じさせることのない食品保存方法、及び、食品保存用収容袋が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る食品保存用収容袋(熱溶着部分が斜線で示される)を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る食品保存方法に用いられる収容袋の一実施形態を示す図であり、
図1は、食品保存用収容袋を示す斜視図、
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図である。
【0014】
図に示されるように、本実施形態に係る食品保存用収容袋(以下、収容袋と称する)1は、密閉可能な内部空間(収容部)Sを画定する袋本体1Aを備える。袋本体1Aは、柔軟性を有し、一対の四角形状の合成樹脂製のシート(シート状部材)3,4を重ね合わせ、
図1の斜線で示す周囲をヒートバー等によって熱溶着することにより作成される。具体的には、重ねた状態のシート状部材の側縁部5,6および下縁部7同士を熱溶着することにより袋本体1Aが形成される。また、下縁部7と対向する上縁部8については、溶着されることはなく、収容部Sに食品を出し入れする開口部8Aとなる。
【0015】
本実施形態では、前記一方側のシート状部材3の一端側をカットすると共に、カットした部分の
両方を折り曲げて端部
3a,3bの内面同士を重ね、この重なった部分を溶着すると共に、その中間部分に易剥離性の逆止弁10を配設している。なお、この易剥離性の逆止弁は、公知であるため詳細な構造については省略する。
【0016】
前記シート状部材3,4は、耐熱性を有する材料で形成されていれば良く、基材となる基本層と、溶着が成される溶着層(シーラント層)とを備えた複数層で構成されている。前記基本層は、外層側を構成するものであり、バリア性(防臭性)および耐熱性を兼ね備えた素材で構成されたものであれば良く、その素材について特に限定されることはない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレン、ナイロンなどで構成することが可能であり、これを単層構造としたり、複合層構造としたものでも良い。また、シーラント層は、内層側を構成するものであり、相手側のシート状部材と熱溶着できる素材で構成されたものであれば良く、その素材については特に限定されることはない。例えば、ポリエチレン、アイオノマー、ポリプロピレンなどで構成することが可能である。
【0017】
また、前記上縁部8には、開口部8A(収容部S)を密封するシール手段20が設けられている。このシール手段20は、例えば、一方側のシート状部材3の開口部の内面に、そのほぼ全長にわたって形成される凹溝20aと、他方側のシート状部材4の開口部の内面に、そのほぼ全長にわたって形成されて前記凹溝20aとシール状態で係合する凸部20bによって構成(ファスナー構造)することが可能である。これらの凹溝20a及び凸部20bは、帯状のシート部材に取着しておき、それぞれの開口部の内面に取着する構成であっても良い。
【0018】
前記逆止弁10は、収容部S内の内圧が高まった際に、外側に向けて開く開閉可能な封止片を取着した簡易な構造としても良く、具体的な構成については特に限定されることはない。すなわち、収容部Sと接続され、収容部内の空気を外部に排出すると共に、外気の流入を阻止するように機能するものであればその構造については限定されることはなく、また、配設される位置や配設の仕方、設置個数についても限定されることはない。
【0019】
上記した収容袋1は、家庭用の電子レンジに入れられるため、その大きさは限定される。具体的には、図に示すような、平面四角形状であれば、その長さLは190〜230mmの範囲であれば良く、開口幅Wは150〜170mmの範囲であれば良い。すなわち、袋本体をこのような大きさに形成すれば、一般的な家庭用電子レンジを利用して、以下のような保存工程、及び、解凍工程を実施することができる。
【0020】
次に、上記した構成の収容袋1を利用して、食品を保存する工程について説明する。
まず、開口部8Aを通じて収容部S内に食品を収容し、シール手段20によって開口部8Aを閉じて収容部Sを密閉状態にする。
【0021】
この状態で電子レンジに入れて一定時間、加熱してマイクロ波を照射する。この際、収容部S内の温度が高くなって内部の空気は膨張するが、この膨張する空気は逆止弁10を介して外部に排出される。また、このマイクロ波照射・加熱によって食品に対する殺菌効果が得られる。そして、この電子レンジで加熱処理を行なった後、一定時間自然冷却すると、減圧作用により、収容部内に残っている空気が排出されて内部は真空状態となる。この際、内部に空気が残存していれば、手で収容部Sを押圧することで、内部の空気を完全に排出することもできる。
【0022】
上記のように、真空状態となった収容袋1は、電子レンジの加熱処理(マイクロ波の照射)によって殺菌処理が施されており、更には、収容部の空気も脱気された状態となっているため、食品が腐敗、変質、変味することはなく、冷蔵庫等で保管することにより、食品を長期保存することが可能となる。そして、上記のようにして保存された食品は、再び、電子レンジで加熱処理し、開口部8Aを介して取り出して食べることができる。
【0023】
本実施形態に係る収容袋1は、上記したような手順に適した構造となっており、食品を簡単かつ確実に腐敗、変質、変味を生じさせることなく保存することが可能となる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、収容袋を構成するシート状部材の形状、溶着部位、溶着形態は、上記した実施形態に限定されることはなく任意に設定できる。また、袋本袋の開口部を密閉するシール手段の配設位置や構造等についても、上述した実施形態のものに限定されず任意に設定できる。
【符号の説明】
【0025】
1 収容袋
1A 袋本体
3,4 シート状部材
8A 開口部
10 逆止弁
20 シール手段