特許第6571055号(P6571055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571055
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ワイヤーロープ清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/12 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   B66B7/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-174744(P2016-174744)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-39610(P2018-39610A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−194386(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039046(WO,A1)
【文献】 特開2013−202541(JP,A)
【文献】 実開昭57−181387(JP,U)
【文献】 特開2003−190888(JP,A)
【文献】 特開2016−088719(JP,A)
【文献】 米国特許第05386882(US,A)
【文献】 中国実用新案第203845626(CN,U)
【文献】 特開2013−249153(JP,A)
【文献】 特開2011−225288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00─ 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープの最外径よりも大きな直径を有する第1清掃孔が形成された第1清掃部と、
前記第1清掃部よりも前記ワイヤーロープの移動方向の下流側に配置され、前記ワイヤーロープの凹凸形状に対応した形状を有する第2清掃孔が形成された第2清掃部と、
前記第1清掃部及び前記第2清掃部のうち少なくとも前記第2清掃部を回転可能に支持し、前記第1清掃部及び前記第2清掃部における前記ワイヤーロープの移動方向への移動を規制する支持台と、
前記第1清掃部と前記第2清掃部との間に設けられ、前記第1清掃孔及び前記第2清掃孔よりも大きな直径を有する貯留孔を有し、前記第2清掃部で除去した油又はゴミを貯留する貯留部と、
前記貯留部の側壁において、前記ワイヤーロープの延在方向と交差する方向に前記側壁を貫通するように設けられ、貯留した油又はゴミが排出可能な排出孔と
を備えたワイヤーロープ清掃装置。
【請求項2】
前記第1清掃部、前記第2清掃部、及び前記貯留部は一体に形成されると共に、前記ワイヤーロープに弾性部材によって固定されており、
前記第1清掃部、前記第2清掃部、及び前記貯留部は前記弾性部材の弾性変形により、前記ワイヤーロープに対して接近及び離反する
請求項1に記載のワイヤーロープ清掃装置。
【請求項3】
前記第1清掃孔は、前記ワイヤーロープの移動方向に向けて径が小さくなるようなテーパー状に構成されている
請求項1に記載のワイヤーロープ清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター、ケーブルカー、リフトやクレーン等のワイヤーロープを清掃する際に用いられるワイヤーロープ清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワイヤーロープは、素線と呼ばれる複数の鋼線が撚り合わされてストランドを形成し、このストランドを中央部の繊維芯のまわりに複数本撚り合わすことで形成されている。そのため、ワイヤーロープには、軸方向に螺旋状の凹凸形状が形成される。
【0003】
また、ワイヤーロープは、摩耗や錆を防ぐために油が塗布されている。しかしながら、ワイヤーロープを経年的に使用すると、ワイヤーロープの表面に埃や砂などのゴミが付着したり油が硬化したりする。そのため、定期的にワイヤーロープの表面に付着したゴミや硬化した油を除去する必要がある。
【0004】
このようなワイヤーロープの表面に付着したゴミや硬化した油を除去する技術としては、例えば、特許文献1に記載されているような技術がある。この特許文献1は、ワイヤーロープの外周の凹凸形状に合わせて型抜きされた係合孔を有する回転部材を備えている。そして、ワイヤーロープの移動により回転部材がワイヤーロープの周方向に回転することで、ワイヤーロープに付着した油やゴミを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−249153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、回転部材が通過する際にワイヤーロープの表面に付着した油により回転部材の係合孔で目詰まりが発生し、回転部材の回転が停止するおそれがあった。その結果、特許文献1に記載された技術では、ワイヤーロープに付着したゴミや油を効率良く除去することができない、という問題を有していた。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、ワイヤーロープに付着したゴミや油を効率良く除去することができるワイヤーロープ清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のワイヤーロープ清掃装置は、第1清掃部と、第2清掃部と、支持台と、貯留部と、排出孔とを備えている。第1清掃部は、ワイヤーロープの最外径よりも大きな直径を有する第1清掃孔が形成されている。第2清掃部は、第1清掃部よりもワイヤーロープの移動方向の下流側に配置されている。また、第2清掃部は、ワイヤーロープの凹凸形状に対応した形状を有する第2清掃孔が形成されている。支持台は、第1清掃部及び第2清掃部のうち少なくとも第2清掃部を回転可能に支持する。そして、支持台は、第1清掃部及び第2清掃部におけるワイヤーロープの移動方向への移動を規制する。貯留部は、第1清掃部と第2清掃部との間に設けられ、第1清掃孔及び第2清掃孔よりも大きな直径を有する貯留孔を有し、第2清掃部で除去した油又はゴミを貯留する。排出孔は、貯留部の側壁において、ワイヤーロープの延在方向と交差する方向に側壁を貫通するように設けられ、貯留した油又はゴミが排出可能な孔である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のワイヤーロープ清掃装置によれば、目詰まりの発生を抑制し、ワイヤーロープの表面からゴミや余分な油等を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置で清掃を行うエレベーターを示す概略構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置を示す側面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置の清掃部材を示す分解斜視図である。
図5】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置の清掃部材における第1部材を示す側面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置の清掃部材を示す平面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置をロープに取り付けた状態を示す側面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置の清掃部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のワイヤーロープ清掃装置の実施の形態例について、図1図8を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0012】
1.第1の実施の形態例
1−1.エレベーターの構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるワイヤーロープ清掃装置で清掃を行うエレベーターの構成の一例について、図1を参照して説明する。
図1は、本例のエレベーターの構成例を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、エレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路に設けられている。エレベーター1は、昇降路内を昇降動作し、人や荷物を載せる乗りかご120と、主ロープ130と、釣合錘140と、巻上機100を備えている。また、エレベーター1は、コンペンロープ131と、反らせ車150と、コンペンプーリ170と、制御部190とを備えている。
【0014】
建築構造物の頂部には、機械室が設けられている。この機械室には、巻上機100と、巻上機100の駆動を制御する制御部190が配置されている。巻上機100には、主ロープ130が巻き掛けられている。主ロープ130の一端には、乗りかご120の上部が接続され、主ロープ130の他端には、釣合錘140の上部が接続されている。そして、巻上機100が駆動することで、乗りかご120及び釣合錘140が昇降路を昇降する。また、巻上機100の近傍には、主ロープ130が装架される反らせ車150が設けられている。
【0015】
また、乗りかご120の下部には、コンペンロープ131の一端が接続されている。コンペンロープ131の他端には、釣合錘140の下部が接続されている。そして、コンペンロープ131は、乗りかご120の下部及び釣合錘140の下部から、昇降路の昇降方向の下方に向けて垂れ下がっている。また、昇降路の昇降方向の下部には、コンペンプーリ170が設置されている。そして、コンペンロープ131は、コンペンプーリ170に巻き掛けられている。
【0016】
ワイヤーロープの一例を示す主ロープ130及びコンペンロープ131は、素線と呼ばれる複数の鋼線が撚り合わされてストランドを形成し、このストランドを中央部の繊維芯のまわりに複数本撚り合わすことで形成されている。そのため、主ロープ130及びコンペンロープ131には、軸方向に螺旋状の凹凸が形成され、周方向に沿って凸部131aと溝部131bが交互に形成される。(図2及び図6参照)。
【0017】
そして、主ロープ130及びコンペンロープ131の汚れを除去するために、ワイヤーロープ清掃装置10が用いられる。なお、本例では、コンペンロープ131の汚れを除去する例について説明する。
【0018】
1−2.ワイヤーロープ清掃装置の構成例
次に、ワイヤーロープ清掃装置10の構成について図2及び図3を参照して説明する。
図2は、ワイヤーロープ清掃装置10を示す斜視図、図3は、ワイヤーロープ清掃装置10を示す側面図である。
図2に示すように、ワイヤーロープ清掃装置10は、清掃部材11と、支持台12と、軸受け部18とを有している。
【0019】
支持台12は、第1支持台12Aと、第2支持台12Bとを有している。第1支持台12A及び第2支持台12Bは、コンペンロープ131の軸方向と直交する方向からコンペンロープ131を挟み込むように重なり合う。また、支持台12には、第1支持台12A及び第2支持台12Bが重なり合うことでコンペンロープ131が挿通する挿通孔13が形成される。支持台12は、コンペンプーリ170や、乗りかご120をガイドするガイドレール等の昇降路内に設けられた部材に固定される。
【0020】
図2及び図3に示すように、支持台12におけるコンペンロープ131の移動方向の上流側の一面(本例では、上下方向の上側の一面)には、樹脂シートからなる軸受け部18が配置されている。この軸受け部18には、清掃部材が配置される。これにより、清掃部材11は、軸受け部18を介して支持台12に、コンペンロープ131の周方向に回転可能に支持される。
【0021】
なお、本例では、清掃部材11を回転可能に支持する軸受け部18として樹脂シートを用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、軸受け部18としては、例えば、ベアリングを用いてもよい。軸受け部18としてベアリングを適用する場合では、支持台12に載置された清掃部材11の外周面に当接するようにベアリングが配置される。
【0022】
次に、清掃部材11の構成について図4図6を参照して説明する。
図4は、清掃部材11を示す分解斜視図である。
図4に示すように、清掃部材11は、略円柱状に形成されている。清掃部材11は、第1部材14と、第2部材15と、第1固定部材16と、第2固定部材17とを有している。清掃部材11は、第1部材14と第2部材15によってコンペンロープ131を挟み込むようにしてコンペンロープ131に取り付けられる。そして、清掃部材11の軸方向は、コンペンロープ131の軸方向、すなわちコンペンロープ131の移動方向と略平行となる。
【0023】
第1部材14及び第2部材15は、円柱を軸方向に略半分に切断した形状に形成されている。第1部材14及び第2部材15における互いに対向する対向面14a、15aは、平面状に形成されている。また、対向面14a、15aと連続する第1部材14及び第2部材15の側周面14b、15bは、円弧状に形成されている。そして、第1部材14及び第2部材15の側周面14b、15bが、清掃部材11の外周面となる。
【0024】
第1部材14の対向面14aには、位置決め突起28が形成されている。また、第2部材15の対向面15aには、第1部材14の位置決め突起28が挿入される不図示の位置決め穴が形成されている。位置決め突起28を位置決め穴に挿入することで、第1部材14と第2部材15の位置決めを行うことができる。
【0025】
図5は、第1部材14を示す側面図、図6は、清掃部材11を示す平面図である。
なお、第1部材14及び第2部材15は、それぞれ略同一の構成を有しているため、ここでは第1部材14について説明する。
【0026】
図5に示すように、第1部材14は、第1清掃部21と、第2清掃部22と、貯留部23と、第1係合凹部24と、第2係合凹部25と、排出孔27を有している。第1清掃部21は、第1部材14における軸方向の一側に形成されている。第2清掃部22は、第1部材14における軸方向の他側に形成されている。そして、貯留部23は、第1清掃部21と第2清掃部22の間に形成される。
【0027】
また、清掃部材11をコンペンロープ131に取り付けた場合、第1清掃部21は、貯留部23及び第2清掃部22よりもコンペンロープ131の移動方向の上流側に配置される。第2清掃部22は、貯留部23よりもコンペンロープ131の移動方向の下流側に配置される。すなわち、第2清掃部22は、第1清掃部21よりもコンペンロープ131の移動方向の下流側に配置される。
【0028】
第1清掃部21には、第1清掃孔21aが形成されている。第1清掃孔21aは、第1部材14の対向面14aに形成されている。第1清掃孔21aは、第1部材14の軸方向に沿って形成された略半円状の溝部である。第1清掃孔21aの軸方向の一端は、第1部材14の軸方向の一端となる。また、第1清掃孔21aの軸方向の他端は、後述する貯留部23の貯留孔23aに連通している。
【0029】
図6に示すように、第1部材14と第2部材15を連結した際に、第1部材14の第1清掃孔21aと、第2部材15の第1清掃孔21aでコンペンロープ131を挟み込む。そして、第1部材14の第1清掃孔21aと第2部材15の第1清掃孔21aで形成される第1清掃孔は、略円柱状に形成される。
【0030】
また、第1部材14の第1清掃孔21aと第2部材15の第1清掃孔21aで形成される第1清掃孔の直径S1は、コンペンロープ131の最外径d1よりも大きく設定されている。
【0031】
第2清掃部22には、第2清掃孔22aが形成されている。第2清掃孔22aは、第1部材14の対向面14aに形成されている。第2清掃孔22aは、第1部材14の軸方向に沿って形成されている。第2清掃孔22aの軸方向の一端は、後述する貯留部23の貯留孔23aに連通している。また、第2清掃孔22aの軸方向の他端は、第1部材14の軸方向の他端となる。
【0032】
さらに、第2清掃孔22aは、コンペンロープ131の外周面に形成された螺旋状の凹凸形状に合わせた形状に形成されている。すなわち、第2清掃孔22aには、螺旋状に形成された清掃突起22bを有している。第1部材14と第2部材15を連結した際に、第1部材14の第2清掃孔22aと、第2部材15の第2清掃孔22aでコンペンロープ131を挟み込む。このとき、第2清掃孔22aの清掃突起22bは、コンペンロープ131の溝部131bに挿入される。そのため、コンペンロープ131が移動した際に、清掃部材11は、コンペンロープ131の螺旋形状に沿ってコンペンロープ131の周方向に回転する。
【0033】
貯留部23には、貯留孔23aが形成されている。貯留孔23aは、第1部材14における対向面14aに形成された凹部である。この貯留孔23aは、第1清掃孔21aと第2清掃孔22aに連通している。また、貯留部23には、排出孔27が形成されている。排出孔27は、第1部材14の側周面14bから貯留孔23aにかけて貫通している。
【0034】
第1係合凹部24は、第1部材14の軸方向の一側、すなわち第1清掃部21側に形成されている。また、第2係合凹部25は、第1部材14の軸方向の他側、すなわち第2清掃部22側に形成されている。第1係合凹部24及び第2係合凹部25は、第1部材14の側周面14bに形成された溝部である。また、第1係合凹部24及び第2係合凹部25は、側周面14bの周方向に沿って連続して形成されている。
【0035】
次に、第1固定部材16及び第2固定部材17について説明する。
第1固定部材16と第2固定部材17は、弾性を有する板バネによって構成されている。第1固定部材16及び第2固定部材17は、一部に開口部16a、17aを有する略円形に形成されている。
【0036】
第1固定部材16は、開口部16aから第1係合凹部24に押し込まれることで、第1部材14及び第2部材15の第1係合凹部24に取り付けられる。また、第2固定部材17は、開口部17aから第2係合凹部25に押し込まれることで、第1部材14及び第2部材15の第2係合凹部25に取り付けられる。これにより、第1部材14及び第2部材15は、第1固定部材16と第2固定部材17によって一体に固定される。
【0037】
なお、本例では、清掃部材11を略円柱状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、清掃部材11の形状は、四角柱や、六角柱のように角柱状に形成してもよい。
【0038】
また、本例の清掃部材11は、2つの固定部材16、17で第1部材14と第2部材15を固定する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一つの固定部材で第1部材14と第2部材15を固定するようにしてもよい。この場合、第2清掃部22の第2清掃孔22aをコンペンロープ131の外周面に確実に接触させるために、固定部材は、清掃部材11における第1清掃部21よりも第2清掃部22側に設けることが好ましい。
【0039】
図7は、ワイヤーロープ清掃装置10をコンペンロープ131に取り付けた状態を示す側面図である。なお、図7では、清掃部材11における第1部材14のみを示している。
図7に示すように、エレベーター1は、1本のコンペンロープ131だけではなく、複数のコンペンロープ131(図7に示す例では、3本)が設けられている。ここで、隣り合うコンペンロープ131の最小間隔が長さL1の場合、清掃部材11の直径S2は、S2/2<L1に設定される。これにより、複数のコンペンロープ131にそれぞれ清掃部材11を取り付けた際、隣り合う2つの清掃部材11、11が互いに接触することを防ぐことができる。
【0040】
その結果、コンペンロープ131の数が増えても、全てのコンペンロープ131に清掃部材11を取り付けることができ、一度に複数のコンペンロープ131の清掃作業を行うことができる。
【0041】
1−3.ワイヤーロープ清掃装置を用いた清掃作業
次に、上述した構成を有するワイヤーロープ清掃装置10をもちいた清掃作業の一例について説明する。
【0042】
まず、図1に示すように、ワイヤーロープ清掃装置10をコンペンロープ131における乗りかご120側の下方に取り付ける。すなわち、図2に示すように、コンペンロープ131を間に挟むようにして第1支持台12Aと第2支持台12Bを重ね合わせる。これにより、支持台12の挿通孔13をコンペンロープ131が挿通する。そして、第1支持台12A及び第2支持台12Bをコンペンプーリ170や、乗りかご120をガイドするガイドレール等の昇降路内に設けられた部材に固定する。
【0043】
次に、第1部材14と第2部材15を支持台12に設けた軸受け部18に載置すると共に、第1部材14と第2部材15でコンペンロープ131を挟み込む。このとき、第1清掃部21が第2清掃部22及び貯留部23よりもコンペンロープ131の移動方向の上流側になるように配置する。
【0044】
次に、第1固定部材16の開口部16aに第1係合凹部24を押し込むようにして、第1固定部材16を第1係合凹部24に取り付ける。同様に、第2固定部材17を第2係合凹部25に取り付ける。これにより、第1部材14と第2部材15は、第1固定部材16と第2固定部材17の弾性力によって挟持される。その結果、第1部材14と第2部材15は、コンペンロープ131を挟持した状態で一体に固定される。
【0045】
このとき、コンペンロープ131は、第1清掃部21の第1清掃孔21a、貯留部23の貯留孔23a及び第2清掃部22の第2清掃孔22aを通り、清掃部材11を軸方向に沿って貫通する。また、第2清掃部22における第2清掃孔22aの清掃突起22bが、コンペンロープ131の溝部131bに挿入される。
【0046】
次に、巻上機100を駆動させて、図1に示す矢印の方向(本例では、乗りかご120が下降する方向)にコンペンロープ131を移動させる。ここで、支持台12は、昇降路内に固定されているため、清掃部材11は、コンペンロープ131の移動方向への移動が支持台12によって規制される。また、第2清掃孔22aの清掃突起22bがコンペンロープ131の溝部131bに挿入されているため、コンペンロープ131が移動すると、清掃部材11は、軸受け部18上をコンペンロープ131の周方向に沿って回転する。なお、清掃部材11を樹脂シートからなる軸受け部18の上に載置したことで、清掃部材11をスムーズに回転させることができる。
【0047】
まず、コンペンロープ131が移動すると、コンペンロープ131は、清掃部材11における第1清掃部21を通過する。このとき、第1清掃部21は、コンペンロープ131の凸部131aに付着したゴミや油を第1清掃孔21aによって除去する。第1清掃孔21aによって除去されたゴミや油は、清掃部材11の軸方向の一端、すなわちコンペンロープ131の移動方向の上流側の端部から外側に排出される。これにより、コンペンロープ131の凸部131aに付着した比較的大きなゴミや過剰な油は、第1清掃部21によって除去される。
【0048】
コンペンロープ131は、第1清掃部21を通過すると、貯留部23を介して第2清掃部22を通過する。このとき、第2清掃部22は、第2清掃孔22a及び清掃突起22bによってコンペンロープ131の凸部131aに残るゴミや油、及び溝部131bに付着したゴミや油を除去する。
【0049】
なお、予め第1清掃部21によって、コンペンロープ131の凸部131aに付着した比較的大きなゴミや過剰な油が除去されているため、第2清掃部22の第2清掃孔22aがゴミや油で目詰まりを起こすことを抑制することができる。これにより、第2清掃孔22aでの目詰まりの発生を防ぐことができ、清掃部材11をコンペンロープ131の周方向にスムーズに回転させることができる。その結果、コンペンロープ131の表面からゴミや油等を効率良く除去することができる。
【0050】
第2清掃部22の第2清掃孔22aで除去された油やゴミは、貯留部23の貯留孔23aに溜まる。貯留孔23aに貯められたゴミや油は、排出孔27から清掃部材11の外側に排出される。これにより、第2清掃部22で除去したゴミや油が、再びコンペンロープ131に付着することを防ぐことができ、清掃効率の向上を図ることができる。また、一時的に貯留部23にゴミや油を貯めることで、清掃部材11から周囲にゴミや油が飛散することを防止できる。
【0051】
なお、第1部材14と第2部材15を固定する第1固定部材16及び第2固定部材17が、弾性を有する板バネによって構成されている。そのため、第1部材14及び第2部材15は、第1固定部材16及び第2固定部材17が弾性変形することで接近及び離反することができる。
【0052】
例えば、コンペンロープ131に第1清掃部21で除去できない大きなゴミが清掃部材11に到達した際、第1固定部材16及び第2固定部材17の開口部16a、17aが弾性力に抗して広がり、第1部材14と第2部材15が一時的に離反する。これにより、第1清掃部21で除去できない大きなゴミが第1清掃部21の第1清掃孔21aや第2清掃部22の第2清掃孔22aで詰まることを防ぐことができる。
【0053】
さらに、コンペンロープ131の外径は、常に一定の長さではない。コンペンロープ131の外径の変化に対応して第1固定部材16及び第2固定部材17が弾性変形することにより、第1部材14と第2部材15が接近及び離反する。このように、第1部材14及び第2部材15の間隔をコンペンロープ131の外径の変化に追従させることができる。これにより、第2清掃部22の第2清掃孔22aをコンペンロープ131の凸部131a及び溝部131bに確実に接触させることができ、清掃部材11をスムーズに回転させることができる。その結果、清掃部材11におけるコンペンロープ131への清掃効率を向上させることができる。
【0054】
清掃部材11によってコンペンロープ131のゴミや油が充分に除去されると、巻上機100の駆動を停止させて、コンペンロープ131の移動を停止させる。そして、コンペンロープ131から支持台12及び清掃部材11を取り外す。これにより、ワイヤーロープ清掃装置10によるコンペンロープ131の清掃作業が完了する。
【0055】
なお、ワイヤーロープ清掃装置10の取り付け箇所及びコンペンロープ131の移動方向の向きは、図1に示す例に限定されるものではない。例えば、ワイヤーロープ清掃装置10をコンペンロープ131における釣合錘140側の下方に配置してもよい。この場合、コンペンロープ131を、図1に示す例と反対方向、すなわち乗りかご120が上昇する方向に移動させる。すなわち、ワイヤーロープ清掃装置10の取り付け箇所及びコンペンロープ131の移動方向の向きは、第1清掃部21が第2清掃部22よりもコンペンロープ131の移動方向の上流側となるように設定される。
【0056】
2.第2の実施の形態例
次に、図8を参照して本発明の第2の実施の形態例について説明する。
図8は、第2の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置における清掃部材を示す側面図である。なお、図8では、第1部材についてのみ示している。
【0057】
この第2の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置が、第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置10と異なる点は、清掃部材の構成である。そのため、ここでは、清掃部材について説明し、第1の実施の形態例にかかるエレベーター1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
図8に示すように、第2の実施の形態例にかかる清掃部材31の第1部材34は、第1清掃部41と、第2清掃部42と、貯留部43と、第1係合凹部44と、第2係合凹部45と、排出孔47と、位置決め突起48を有している。第2清掃部42は、第2清掃孔42aを有しており、貯留部43は、貯留孔43aを有している。なお、第2清掃部42、貯留部43、第1係合凹部44、第2係合凹部45及び排出孔47の構成は、第1の実施の形態例にかかる清掃部材11と同一であるため、その説明は省略する。
【0059】
第1清掃部41には、第1清掃孔41aが形成されている。第1清掃孔41aは、軸方向の一端が第1部材14の軸方向の一端であり、軸方向の他端が貯留部43の貯留孔43aに連通している。また、第1清掃孔41aは、軸方向の他端から一端、すなわちコンペンロープ131の移動方向の下流側から上流側に向かうにつれて径が連続的に大きくなるようなテーパー状に形成されている。なお、第1清掃孔41aにおける軸方向の他端側の直径は、コンペンロープ131の最外径よりも大きくなるように設定されている。
【0060】
第2部材35は、位置決め突起48が挿入される位置決め穴を有している。その他の構成は、第1部材34と同一であるため、その説明は省略する。
【0061】
この第2の実施の形態例にかかる清掃部材31の場合、第1清掃部41の第1清掃孔41aで除去されたゴミや油は、第1清掃孔41aのテーパー面に沿って第1清掃孔41aから清掃部材31の外側へ排出される。これにより、第1清掃部41によるコンペンロープ131の清掃効果を高めることができる。
【0062】
また、第2の実施の形態例にかかる清掃部材31では、第1清掃孔41aを連続的にその径が変化するテーパー状に形成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1清掃孔41aの径を段階的に変化させてもよい。また、第1の実施の形態例にかかる第1清掃孔と同様に円柱状に形成し、軸方向の一端側の角部に面取りを施してもよい。
【0063】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかるワイヤーロープ清掃装置10と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するワイヤーロープ清掃装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかるワイヤーロープ清掃装置10と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0065】
上述した実施の形態例では、ワイヤーロープ清掃装置10をコンペンロープ131に取り付けコンペンロープ131を清掃する例を説明したが、これに限定されるものではない。主ロープ130にワイヤーロープ清掃装置10を取り付け、主ロープ130を清掃してもよい。この場合、第1清掃孔の直径の大きさ及び第2清掃孔の形状は、主ロープ130の最外径の大きさ及び凹凸形状に対応して設定される。
【0066】
また、ワイヤーロープ清掃装置は、コンペンロープ131及び主ロープ130を清掃する例に限定されるものではなく、エレベーターにおける調速機を駆動させる調速ロープやその他各種のワイヤーロープの清掃に用いてもよい。さらに、ワイヤーロープ清掃装置は、エレベーターの各種ロープの清掃に限定されるものではなく、ケーブルカー、リフトやクレーン等その他各種の装置に使用されているワイヤーロープの清掃に用いられるものである。
【0067】
また、上述した実施の形態例では、第1清掃部を第2清掃部及び貯留部と一体に形成し、清掃時には、第1清掃部を第2清掃部と共に回転させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1清掃孔を有する第1清掃部と、第2清掃部及び貯留部とを別部材として構成してもよい。この場合、清掃時に第1清掃部を、第2清掃部及び貯留部と共にロープの移動に合わせて回転させなくてもよい。
【0068】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…エレベーター、 10…ワイヤーロープ清掃装置、 11、31…清掃部材、 12…支持台、 13…挿通孔、 14、34…第1部材、 14a…対向面、 14b…側周面、 15、35…第2部材、 15a…対向面、 16…第1固定部材、 17…第2固定部材、 18…軸受け部、 21、41…第1清掃部、 21a、41a…第1清掃孔、 22、42…第2清掃部、 22a、42a…第2清掃孔、 22b…清掃突起、 23、43…貯留部、 23a、43a…貯留孔、 24、44…第1係合凹部、 25、45…第2係合凹部、 27、47…排出孔、 100…巻上機、 120…乗りかご、 130…主ロープ(ワイヤーロープ)、 131…コンペンロープ(ワイヤーロープ)、 140…釣合錘、 150…反らせ車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8