【実施例】
【0106】
(実施例1)
cAMP−インコンピテントACの送達により心機能が増大する
この実施例では、本発明の例示的な実施形態:心不全を処置するためにcAMP−インコンピテントACを心筋細胞に送達することの有効性が実証される。この研究では、本発明者らは、LVにおけるcAMP産生を減少させるAC変異体分子が、Ca
2+ハンドリングに対するその効果のみによって左心室(LV)機能に対する好都合な効果を有するかどうかを検討した。
【0107】
陽性変力物質の多くの臨床試験が失敗しており、現在はcAMPを増加させる薬剤は不全心臓に対して有害であることが自明である。代替戦略は、cAMPに影響を及ぼさない薬剤を使用して心筋のCa
2+ハンドリングまたはCa
2+に対する筋フィラメント応答を変更させることである。左心室(LV)機能はアデニリルシクラーゼ(AC)活性と密接に関連するが、ACの有益な効果はcAMPには依存せず、その代わりにCa
2+ハンドリングに対する効果から生じる可能性がある。
【0108】
この研究では、本発明者らは、環状アデノシン一リン酸−インコンピテント(cAMP−インコンピテント)6型アデニリルシクラーゼ(AC6)ポリペプチド、いわゆる「AC6変異体」または「AC6mut」の心臓を対象とする発現を有するトランスジェニックマウスを生成した。これらのAC6mutトランスジェニックマウスの心筋細胞ではイソプロテレノールに応答したcAMP産生が損なわれたが(74%の低下;p<0.001)、LVのサイズおよび機能は正常であったことが示された。単離した心臓ではイソプロテレノール刺激に応答したLV機能の保持が示された。AC6mut発現に伴って筋小胞体によるCa
2+の取り込みが増加し、SERCA2a活性化についてのEC50が低下した。AC6mutマウスから単離した心筋細胞では、イソプロテレノールに応答したCa
2+トランジェントの振幅の増加が示された(p=0.0001)。AC6mut発現には、LVにおけるS100A1の発現の増加(p=0.03)およびホスホランバンタンパク質の発現の減少(p=0.01)も伴った。この研究では、cAMP生成が損なわれているにもかかわらず、LVにおけるAC変異体の発現に正常な心機能が伴うことが決定された。この機構は、cAMPの減少にもかかわらず生じる効果であるCa
2+ハンドリングに対する効果によるようである。
【0109】
以前の研究からのデータにより、哺乳動物の心筋細胞で発現する優性ACアイソフォームである心臓の6型AC(AC6)の増加[6]には不全左心室(LV)に対する不定形の有益な効果があることが示された[7]、[8]、[9]、[10]、[11]、[12]。これらの予想外の有益な効果は、ベータ(β)アドレナリン作動性受容体(βAR)刺激および細胞内cAMPの上昇の心臓に対する悲惨な結果と一致するはずである[13]、[14]、[15]、[16]、[17]、[18]。実際に、不全心臓におけるAC6発現の明らかな利益は逆説的なものである。以前の研究からのデータにより、薬理学的阻害剤を使用すると、心臓におけるAC6発現の増加の有益な効果のいくつかはcAMP生成の増加に依存するものではないことが示唆される[2]、[3]。培養した心筋細胞における薬理学的阻害を使用した研究の固有の限界が原因で、Mg
2+の結合を変更させるが、Gタンパク質のダイナミクスには影響を及ぼさないことが予測される変化である触媒コアの426位(426位:配列番号16に基づく位置番号)におけるAspのAlaによる置換によって、本発明者らは、触媒として不活性なマウスAC6変異体(AC6mut)分子を生成した[4]。このマウスAC6mut分子は、in vitroにおいて研究した場合には、cAMP生成を著しく損なうが、AC6に関連する細胞分布パターンを保持する[4]。そのようなin vitroにおける研究は、そのような分子がin vivoにおいて心機能にどのように影響し得るかを確立するには程遠いものである。
【0110】
したがって、本発明者らは、心臓を対象とするAC6mutの発現を有するトランスジェニックマウス系列を生成した。そのような系列により、インタクトな正常な心臓の機能に対するcAMPの効果とCa
2+ハンドリングの効果の区別に対するさらなる洞察がもたらされることが期待された。さらに、そのような研究により、AC6mutによってcAMPの増加の潜在的な悪影響がない変力的刺激がもたらされるかどうかも示される可能性があった。本発明者らの仮説は、cAMP生成力の顕著な減少にもかかわらず、AC6によって付与されるCa
2+ハンドリングに対する有益な釣り合わせ効果によりLV機能は正常なままであることであった。
【0111】
方法
AC6mutトランスジェニックマウスの生成(
図1A)。動物の使用は、Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Careガイドラインに従い、Institutional Animal Care and Use Committee of VA San Diego Healthcare Systemに認可されたものであった。心臓を対象とするAC6mutの発現を有するマウスを生成するために、C末端にAU1タグを有するマウスAC6mut cDNA[4]をα−ミオシン重鎖プロモーターとSV40ポリAの間にサブクローニングした。カリフォルニア大学(University of California)、San Diegoのトランスジェニックマウス設備(近交系C57BL/6)において行われた前核注射のために、発現カセットを含有する9.2kbの断片を使用した。尾部先端から調製したゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってファウンダーマウスを同定した。
【0112】
AC6mut遺伝子を、α−MHCプロモーターと相同なプライマーを使用して検出した(フォワード:5’CACATAGAAGCCTAGCCCACACC)(配列番号1);リバースプライマーはAC6領域についてのものであった(5’CAGGAGGCCACTAAACCATGAC)(配列番号2)。
【0113】
以下のプライマーを使用してAC6mut mRNAを検出し、内因性AC6 mRNAに対してAC6mut mRNAの倍数増加の定量を可能にした:(フォワード:5’TGGGCCTCTCTACTCTGCAT(配列番号3);リバース:5’TGGATGTAACCTCGGGTCTC)(配列番号4)。
【0114】
内因性AC6 mRNAを、その3’非翻訳領域と相同なプライマーを使用して検出した(フォワード:5’GGCATTGAGTGGGACTTTGT(配列番号5);リバース:5’TCTGCATCCAAACAAACGAA)(配列番号6)。この3’非翻訳領域はAC6mut cDNAには存在しないものであり、これにより内因性AC6の定量が可能になった。
【0115】
ファウンダー動物を同じ系統の野生型マウスと交雑し、選択された動物を心臓における導入遺伝子の発現の分析のために使用した。本発明者らは、本発明者らの研究に関して、独立した系列および選択された系列においてAC6mutタンパク質の発現が17倍に増加するという(内因性AC6に対して)多様な導入遺伝子の発現を実証した。以前に記載の通り定量的RT−PCRを使用して2型〜9型のACのLVにおける発現レベルを決定した[5]。
【0116】
心エコー検査。5%イソフルランを用いて麻酔を誘導し(酸素1L/分の流速)、酸素中1%イソフルランで維持した。以前に報告されている通り、16L MHzのリニアプローブおよびSonos 5500(登録商標)Echocardiograph system(Philips Medical Systems、Bothell、WA)を使用して画像を得た[7]。データを獲得し、群同一性に関する知見を用いずに解析した。
【0117】
単離した灌流心臓:LV収縮機能。以前に報告されている通り、反射活性化または麻酔に影響されない様式でLV収縮機能を評価するために、単離した灌流心臓において心機能を評価した[7]。室内バルーンカテーテルを配置して等容性LV圧を測定した(LV拡張終期圧10mmHg;1.7mMのイオン化Ca
2+)。イソプロテレノールをボーラス用量(0.1nMから300nMまで)、5分間隔で送達し、LV圧を記録した。その後、LV圧の最初の導関数(LV dP/dt)が得られ、これをLV収縮機能の代用物として使用した。データを獲得し、群同一性に関する知見を用いずに解析した。
【0118】
カルシウムの取り込み。LVホモジネートにおけるATP依存性の筋小胞体(SR)によるCa
2+の取り込みの初速度を以前に記載の通り改変Millipore濾過技法によって測定した[11]。
【0119】
カルシウムトランジェント。細胞質ゾルのカルシウムトランジェントを以前に記載の通りIndo−1を使用して測定した[19]。心筋細胞を、ラミニンをコーティングしたカバーガラス上にプレーティングし、indo−1/AM(3μM、Calbiochem、La Jolla CA)および分散剤プルロニックF−127(0.02mg/ml、Calbiochem、La Jolla CA)を30分にわたってローディングした。色素をローディングした後、カバーガラスを表面灌流(superfusion)チャンバーに載せ、すすいで過剰なindo−1/AMを除去し、モノクロメータを介して励起波長を365nmに設定したPhoton Technologies photometry system(Birmingham NJ)とインターフェースで接続した40×対物レンズを備えるNikon DIAPHOT(商標)落射蛍光顕微鏡に載せた。蛍光発光を分割し、それぞれ405および485nmに集中した20nmのバンドパスフィルタによって2つの光電子増倍管に導いた。F405/F485比は、[Ca
2+]iについての測定基準を表す。これらの測定の間に、心筋細胞を、2mMのCaCl
2を含有する25mMのHEPES(pH7.3)を用いて表面灌流した。筋細胞を0.3Hzで電界刺激した。イソプロテレノールにより刺激されたCa
2+トランジェントを、イソプロテレノール(10μM)を緩衝液に添加することによって決定した。群当たり少なくとも3つの心臓について、心臓当たり少なくとも20個の細胞からカルシウムトランジェントを記録した。拡張期および収縮期の細胞内Ca
2+レベルを、それぞれサイクル毎の基底のF405/F485比および最大のF405/F485比から得た。
【0120】
心筋細胞単離。心筋細胞単離を以前に記載の通り実施した[4]。
【0121】
サイクリックAMP測定。単離した心筋細胞をイソプロテレノール(10μM、10分)または水溶性フォルスコリン類似体NKH477(10μM、10分)で刺激し、次いで、溶解させた(2.5%臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、0.05Mの酢酸ナトリウム、pH5.8、および0.02%ウシ血清アルブミン)。以前に報告されている通り、cAMP BIOTRAK(商標)酵素イムノアッセイ系(GE Healthcare、Pittsburgh、PA)を使用してサイクリックAMPを測定した[4]。
【0122】
PKA活性アッセイ。単離した心筋細胞をイソプロテレノール(10μM、10分)またはNKH477(10μM、10分)で刺激した。心筋細胞を緩衝液A:20mMのトリス−HCl(pH7.4)、0.5mMのEGTA、0.5mMのEDTA、およびInvitrogenからのプロテアーゼ阻害剤カクテル)中にホモジナイズし、遠心分離した(14,000×g、5分、4℃)。上清を、[γ−
32P]ATPの存在下、PKAビオチン化ペプチド基質(SignaTECT(登録商標)(SIGNATECT(登録商標))cAMP−Dependent Protein Kinase Assay System(Promega、Madison WI))と一緒にインキュベートした。ストレプトアビジンマトリックスを用いて
32P標識したビオチン化基質を回収し、PKAの特異的活性を決定した。
【0123】
心筋細胞におけるリアノジン受容体−2、PLB、およびトロポニンIのイソプロテレノールにより刺激されたリン酸化。本発明者らは、重要なCa
2+調節タンパク質の動的リン酸化を決定するために、各群から単離した心筋細胞の培養物におけるRyR2、PLBおよびTnIの基底のリン酸化およびイソプロテレノールにより刺激されたリン酸化の研究を行った(
図2C)。これらの研究では培養した心筋細胞(ウェル当たり細胞100,000個)を使用し、イソプロテレノール(10μM、10分)と一緒にインキュベートする前およびその後に免疫ブロッティングを実施した。細胞を溶解緩衝液:20mMのトリス−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1mMのNa2EDTA、1mMのEGTA、1%トリトン、2.5mMのピロリン酸ナトリウム、1mMのβ−グリセロリン酸塩、1mMのNa3VO4、1μg/mlのロイペプチン)中に溶解させた。Bradford法を使用してタンパク質の濃度を測定した。免疫ブロットをGAPDHに対して正規化し、比較した(
図2D)。
【0124】
PDE活性アッセイ。Cyclic Nucleotide Phosphodiesterase Assay Kit(Enzo)を使用してホスホジエステラーゼ活性をアッセイした。LV組織を、10mMのトリス−HCl(pH7.4)、1mMのPMSF、10mMの活性化オルトバナジン酸塩、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Life Sciences)を含有する緩衝液中にホモジナイズし、微量遠心機中、10,000rpmで遠心分離した(10分)。組織ホモジネートを、Desalting Column Resin(Enzo)を使用したゲル濾過によって脱塩した。タンパク質(Bradford)20μgを各ウェルに加え、PDE活性を測定した。
【0125】
免疫蛍光法。単離した心筋細胞をラミニンコーティングした2ウェルチャンバースライドに1時間にわたって付着させ、洗浄し、固定し(10%ホルマリン、15分、23℃)、正常ヤギ血清を用いてブロッキングし(1時間)、抗AU1抗体(Fitzgerald、1:300;AC6mut導入遺伝子タンパク質を検出するため);抗Cav3抗体(BD Pharmagen、1:100;カベオラを検出するため);抗PDI抗体(Invitrogen、1:1000;SRを検出するため);抗ラミンA(Abcam、1:200;核エンベロープを検出するため);抗CREM−1抗体(Santa Cruz、1:50);または抗ホスホ−CREB抗体(Upstate、1:100)と一緒にインキュベートした(4℃、一晩)。心筋細胞をPBSで洗浄し、次いで、二次抗体(Alexia Fluo 488または594コンジュゲート、1:1000希釈)と一緒に1時間インキュベートした。核を同定するために、細胞をHoechst色素と一緒にインキュベートした(1:1000希釈、20分)。次いで、心筋細胞を以前に記載の通り画像化した[2]。
【0126】
mRNAの検出および免疫ブロッティング。定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−qPCR)を使用してmRNAを定量し、免疫ブロッティングを使用してタンパク質含有量を定量した[4]。RyR2に対するプライマーを含めた(フォワード:5’AACCTACCAGGCTGTGGATG)(配列番号7);および(リバース:5’GACTCGATGGGCAAGTCAAT)(配列番号8)。
【0127】
本発明者らは、抗AC5/6抗体を使用して内因性AC6およびAC6mutを同定した(Santa Cruz、1:200希釈)。AC5/6抗体に対するエピトープはAC6およびAC6mutのC末端にある(配列:KGYQLECRGVVKVKGKGEMTTYFLNGGPSS(配列番号9);タンパク質受託番号O43306およびQ01234)。本発明者らは、AU1抗体(Fitzgerald、1:2,000)を使用してAC6mutタンパク質を検出した。使用した追加的な抗体には:カルレティキュリン(ABR Affinity、1:1,000);カルセケストリン(Novus Biologicals、1:1,000);GAPDH(Fitzgerald、1:20,000);PDE3A(Advam);PKA触媒サブユニット(BD Transduction、1:1,000);p−PKA触媒サブユニット(Cell Signaling、1:1,000);PKA−RIIαおよびPKA−RIIβ(BD Transduction、1:1,000);ホスホ−PKA−RIIα(S96)およびホスホ−PKA−RIIβ(S114)(Santa Cruz、1:200);PKCα触媒サブユニット(Santa Cruz、1:200);PLB(Affinity Bioreagents、1:5,000);ホスホS16−PLB(Badrilla、1:3,000希釈);ホスホ−RyR2(S2808)(Abcam、1:1,000);S100A1(Epiyomics、1:1,000);SERCA2a(Enzo、1:1,000);トロポニンIおよびホスホ−TnI(S22/23)(Cell Signaling、それぞれ1:1,000)が含まれた。
【0128】
統計解析。データは平均±SEを示す;ANOVA、続いてボンフェローニt検定、または、適切な場合には、スチューデントのt検定(対応のない、両側)のいずれかを使用して群間の差異を統計的有意性について検定した。p<0.05の場合に帰無仮説を棄却した。
【0129】
結果
AC6mutトランスジェニックマウス。AC6mutマウスは、それらの導入遺伝子陰性同胞とは物理的に区別できなかった。成体マウスの剖検により、体重、脛骨の長さ、LVの重量、および肺の重量に群間の差異は示されなかったことが示された(表1)。
【0130】
LVにおけるAC6mutの発現。内因性AC6のレベルに対してAC6mut mRNAは62倍増加し、タンパク質は17倍増加し、これは、内因性AC6と導入遺伝子AC6mutの両方に共通の領域に対するプライマーおよび抗体をRT−PCRおよび免疫ブロッティングにおいて使用して検出した(
図1Bおよび1C)。
【0131】
内因性AC型のLVにおける発現。内因性AC2型〜9型のmRNAに群間の差異は示されなかった(データは示していない)。
【0132】
LVにおけるcAMP産生。AC6mutマウス由来のLV試料では、イソプロテレノール(74%の低下;p<0.001)または水溶性フォルスコリン類似体であるNKH477(52%の低下;p=0.05)を用いて刺激した場合にcAMP産生の減少が示された(
図1D);基底のcAMP産生は変化しなかった。したがって、トランスジェニック系列は、AC6mut発現の増加の存在下、βARにより刺激されるcAMP産生の減少の、LV機能に対する全体的な効果を試験するために適したものであった。
【0133】
PKA活性および発現。AC6mutマウスから単離した心筋細胞では、基底のPKA活性の48%の低下が示された(p=0.01)。さらに、イソプロテレノールにより刺激されたPKA活性の低下(38%の低下;p=0.006);およびNKH477により刺激されたPKA活性の低下(38%の低下;p=0.001)が見られた(
図2A、上)。AC6mut発現により、PKA触媒サブユニットのLVにおける発現(
図2A、下)も、PKA−RII−αおよびβの発現、リン酸化も(ホスホ−PKA−RIIα:AC6mut、0.32±0.04du;Con、0.30±0.03du、p=0.7;ホスホ−PKA−RIIβ:AC6mut、7.1±1.1du;Con、10.6±01.4du;p=0.09;
図2B)変更されなかった。PKC触媒サブユニットの発現にも群間の差異は示されなかった(PKCα:AC6mut、0.8±0.1du;Con、0.7±0.1du、p=0.4;
図2B)。
【0134】
心筋細胞におけるリアノジン受容体−2、PLBおよびトロポニンIのイソプロテレノールにより刺激されるリン酸化。RyR2、PLBおよびTnIの基底のリン酸化に群間の差異は示されなかった(P−RyR2:AC6mut、4.4±0.6対Con、2.4±0.5du、p=0.06;P−PLB:AC6mut、0.3±0.03対Con、0.2±0.1du、p=0.8;P−TnI:AC6mut、0.8±0.2対Con、1.0±0.01du、p=0.24、
図2C)。両群でイソプロテレノール刺激に伴ってRyR2、PLB、およびTnIのリン酸化が増加したが(無刺激に対して)、リン酸化の程度は、一般にAC6mutマウス由来のLVにおいて高かった(P−RyR2:AC6mut、30.0±1.1対Con、7.4±1.1du、p=0.001;P−PLB:AC6mut、16.8±2.4対Con、5.3±0.1du、p=0.01;P−TnI:AC6mut、5.8±1.4対Con、2.2±0.7du、p=0.07;
図2C)。TnIタンパク質の発現は群間で異ならなかった(AC6mut、0.9±0.1対Con、0.7±0.2du;p=0.5;
図2B。RyR2 mRNAの発現に群間の差異は示されなかった。
【0135】
PDE活性およびPDE3A発現。LV試料におけるPDE活性に群間の差異はなかった(AC6mut:1252±23単位/mg、n=7;対照;1293±39単位/mg、n=6;p=0.38)。LVにおけるPDE3Aタンパク質の発現に群間の差異は示されなかった(AC6mut:0.3±0.1対Con、0.4±0.1du、p=0.6、
図2B)。
【0136】
AC6mutの細胞内分布。AC6mutタンパク質をカベオラ(主に原形質膜に関連する)、SR、および核エンベロープに関連して同定した(
図1E)。
【0137】
心エコー検査。心エコー検査により、基底の心臓の構造および機能は心臓を対象とするAC6mutの発現によって変化しないことが示された。LVの寸法は群間で異ならず、基底のLV駆出率および周辺の線維の短縮の速度は同様であった(表2)。したがって、AC6mutマウスではLVにおけるcAMP生成力の顕著な低下にもかかわらず、LVの構造および基底の機能は変更されなかった。
【0138】
イソプロテレノールに応答したLV収縮機能。自律神経の影響、内因性カテコールアミン、および麻酔に依存しない様式での心臓の収縮性を評価するために、単離した灌流心臓におけるLV圧の発生を測定した。LVにおけるcAMP生成力の顕著な低下にもかかわらず、基底LV dP/dtおよびイソプロテレノールで刺激したLV dP/dtに群間の差異は示されなかった(
図3)。
【0139】
Ca
2+の取り込みおよびCa
2+関連タンパク質。AC6mutマウスおよび導入遺伝子陰性同胞対照マウス由来のプールしたLVホモジネートにおけるATP依存性のSRによるCa
2+の取り込み速度を決定した。AC6mut発現の増加に伴ってSRによるCa
2+の取り込みが増加した(
図4A、上のパネル)。さらに、SERCA2aのCa
2+に対する親和性の増加は、最大半量効果に必要なCa
2+濃度の低下に反映された(EC50:AC6mut 1.1μmol/L;対照3.7μmol/L、n=6、
図4A、下のパネル)。
【0140】
Ca
2+ハンドリングにおけるこれらの生理的変化に伴って、SRによるCa
2+の取り込みを調節するタンパク質のLVにおける発現が変更された。例えば、AC6mut発現に伴って、LVにおけるPLBタンパク質の発現が43%低下し(p=0.01)、LVにおけるS100A1タンパク質含有量が73%増加した(p=0.03)(
図4Bおよび4C)。LV SERCA2a、カルレティキュリン、およびカルセケストリンの含有量は変化せず、Ser16におけるPLBリン酸化は変化しなかった(
図4D)。
【0141】
転写因子。AC6mut発現に伴って、CREM−1のLVにおける発現が2倍増加し(p=0.03、
図4B)、Ser133におけるCREBのリン酸化が1.7倍増加した(p=0.01、
図4C)。総CREBタンパク質含有量は変更されなかった。核においてCREM−1およびホスホ−CREBが増加したかどうかを決定するために、単離した心筋細胞の免疫蛍光染色を、抗CREM−1抗体および抗ホスホ−CREB(S133)抗体を使用して実施した。本発明者らは、AC6mutマウスにおいてCREM−1およびホスホ−CREBの核への局在化の増加を検出した(
図4E)。
【0142】
カルシウムトランジェント:AC6mut発現に伴うSRによるCa
2+の取り込みの増加が細胞質ゾルの[Ca
2+]iに影響を及ぼすかどうかを決定するために、心筋細胞リアルタイム[Ca
2+]iを、レシオメトリック色素Indo−1を使用して評価した。収縮の間の基底のCa
2+放出は変化しなかった(
図5A)。しかし、AC6mut発現に伴って、イソプロテレノール刺激後のピーク収縮期Ca
2+トランジェント振幅が増加し(p=0.0001、
図5Bおよび5C)、ピーク振幅までの時間が短くなった(p=0.03、
図5D)。さらに、AC6mutマウス由来の心筋細胞では50%弛緩までの時間(tau)が短くなった(p=0.04)(
図5E)。したがって、SERCA2a活性、PLBおよびS100A1の発現、ならびにイソプロテレノールにより刺激されるCa
2+トランジェントの全てが、AC6mut発現により、LV機能に好都合に影響を及ぼす様式で変更された。
【0143】
考察
この研究の最も驚くべき重要な知見は、βARにより刺激されるcAMP産生を著しく損なう変異体AC6分子の心臓を対象とする発現に伴ってイソプロテレノール刺激に応答したLV機能が保持されることである。これは心エコー検査および単離した灌流心臓における収縮機能の研究によって確認された。他の状況では心臓におけるcAMP生成の顕著な減少に比例してLV収縮機能が低下する。例えば、cAMPの損失が一般に50%低下する心不全の大多数のモデルでは、LV dP/dtおよびβAR応答性が同様に低下する[10]、[11]、[12]、[13]、[14]。さらに、cAMP生成力の60%の低下が伴うAC6の欠失には、LV収縮機能の同様の低下も伴った[5]。それでは何によってイソプロテレノールで刺激したLV収縮機能の保持が説明されるだろうか。
【0144】
AC6mut系列において、cAMP生成が著しく損なわれているにもかかわらずLV機能が保持されることに関する最も近い機構は、Ca
2+ハンドリングの好都合な変化であった。本発明者らは、AC6の心臓を対象とする発現により不全心臓の機能が増大するが、AC6のβARシグナル伝達に対する影響が著しいので、これらの有益な効果がCa
2+ハンドリングに対するβARシグナル伝達自体の増強を反映する程度を決定することは不可能であることを以前報告した[10]、[11]。AC6欠失にはCa
2+ハンドリングに対して著しい有害作用があるが[5]、AC6欠失後にはcAMP生成力が低下したので、AC6のCa
2+ハンドリングに対する独立した影響を確認するのは難しかったという知見により、AC6とCa
2+ハンドリングの関連が裏付けられる。しかし、TGマウスにおいて、AC6変異体分子がCa
2+ハンドリングに対する親分子の好都合な効果を模倣し、それにより、たとえcAMP生成力が著しく減弱していてもLV機能が保持されるようであることが本研究で新たに実証される。Ca
2+ハンドリングに対するAC6の影響は、cAMP生成を必要とせず、したがって、代替機構によって生じるに違いないことは明らかである。
【0145】
本発明者らは、AC6mut発現にLVホモジネートにおけるSRによるCa
2+の取り込みの増加およびインタクトな心筋細胞における弛緩時間の短縮を伴うCa
2+トランジェントの上昇が伴うことを見出した。これらの生理的に好都合なAC6mut発現の効果に伴って、SERCA2a活性を阻害するCa
2+調節物質であるPLBの発現が減少した。PLB含有量の減少またはSer16におけるPLBリン酸化の増加に伴って、その阻害効果が低下し、それによりSERCA2a活性が増加する[20]、[21]、[22]。本発明者らは、AC6またはAC6mutを発現する培養した心筋細胞ではPLB発現が減少することを以前に見いだしたが[4]、本研究はこの効果がin vivoでも認められることを最初に実証するものである(
図4B)。AC6mutマウスから単離した心筋細胞におけるRyR2、PLB、およびより少ない程度に、TnIのイソプロテレノールにより刺激されるリン酸化の程度の上昇(
図2C)により、LV収縮機能も増加することが予測される。
【0146】
AC6mut発現に伴って、CREB/ATFファミリーの転写抑制因子であるCREM−1の発現および核移行が増加した(
図3Bおよび3E)[23]。本発明者らは、AC6発現の状況で、新生児ラット心筋細胞におけるATF3の増加により、PLBプロモーターのCRE部位を通じてPLBプロモーターが負に調節されることを以前に同定した[2]。本発明者らは、本研究では、AC6mut発現に伴うATF3発現の増加を認めなかった。しかし、ATF3とCREM−1はどちらも同じCRE部位を認識し、したがって、CREM−1のAC6mutに関連する増加がPLB発現の減少において機構的に重要であり得ることはもっともらしい。これにはさらなる研究が必要である。
【0147】
AC6mut発現に伴って、RyR2およびSERCA2aを調整することによって収縮機能を増加させるCa
2+感受性タンパク質であるS100A1のLVにおける発現が予期せず増加した[24]。AC6mut発現がLVにおけるS100A1発現の増加にどのように関連し得るのだろうか。AC6mut発現に伴って、CREB活性化に必要なプロセスであるCREBのリン酸化および核移行が増加した(
図4Cおよび4E)。CREBは、多くの遺伝子を、それらのプロモーターのCRE部位(複数可)を通じて調節する転写活性化因子である[25]。S100A1プロモーターはCRE部位を有し[26]、これは、S100A1発現がAC6mut発現によって活性化され得たことが妥当であることを示している。さらに、PKAおよびcAMPの区画化も因子になり得る[27]、[28]。
【0148】
Ca
2+ハンドリングの実質的な改善により、cAMP生成の顕著な減少にもかかわらずLV機能が保持されたようである。AC6mutの量の増加が転写調節ならびに最終的に心筋細胞の生理的挙動およびLV機能に影響を及ぼす正確な経路に関してはさらなる研究が必要である。組織学的研究(
図1E)により、相当量の導入遺伝子AC6mutが原形質膜だけではなく複数の細胞内区画に存在することが確認される。これにより、AC6mutタンパク質が、細胞内シグナル伝達に影響を及ぼし、それにより生理機能に影響を及ぼす重要な細胞内のタンパク質と相互作用することが可能になる。
【0149】
Ca
2+ハンドリングに対するAC6の重要性が最近AC6欠失によって強調された[5]。この状況では、本研究におけるものほどではないとはいえcAMP生成力が低下したが、Ca
2+ハンドリングが著しく損なわれた。本研究では、本発明者らは、cAMP生成がより顕著に損なわれるが、Ca
2+ハンドリングが低下するのではなく増加することを認めている。これは、AC6欠失とは異なり、cAMP生成力が欠損しているとはいえAC6分子がCa
2+ハンドリングに影響を及ぼし得る細胞質内に存在するからである。
【0150】
本発明者らは、生理学的効果がAC6mut発現のレベルに比例するかどうかを決定するための、AC6mutの発現量が減少しているトランスジェニック系列の調査は行わなかった。AC6mutタンパク質の17倍の増加(内因性AC6に対して)が非特異的な様式でシグナル伝達に影響を及ぼす可能性があることを示すことができる。本発明者らのデータではこの可能性を無視することができないが、内因性AC6が、存在量が非常に少ないタンパク質である−例えばGsαのおよそ100分の1の存在量であることを認識することが重要である[29]。したがって、内因性AC6よりも17倍高いレベルで発現したとしても、なおGsαよりも相当に少ない存在量である。さらに、触媒として活性な(正常な)AC6の同様の増加に伴って、動員可能なcAMP産生が顕著に増加する[30]。これらの観察結果により、この知見が特異的なものであることが示唆される。
【0151】
結論。Ca
2+ハンドリングの実質的な改善により、cAMP生成の顕著な減少にもかかわらずLV機能が保持されるようである。免疫蛍光法により、AC6mutが核エンベロープ上に位置し、それによりAC6muが転写因子の発現および機能に影響を及ぼす機会がもたらされることが示される。転写抑制因子であるCREM−1の増加およびホスホ−CREBの増加(
図4E)がそれぞれPLBおよびS100A1の発現の変更に関与し得る。本発明者らは、AC6mutにより、cAMP生成の減少にもかかわらず、Ca
2+ハンドリングが増加し、タンパク質の発現が変更されることによって心機能が保持されると結論づける。これらの結果により、LV機能に対するCa
2+ハンドリングとβARシグナル伝達の間の相互作用に関する洞察がもたらされ、AC6mutにより、cAMPの増加の潜在的な悪影響のない変力的刺激がもたらされ得ることが示される。データにより、心筋細胞アポトーシスの減少に伴って不全心臓においてAC6mutが発現することが示され、これは本発明者らの研究室で進行中の研究の焦点である。
【0152】
図の説明文
【0153】
図1.AC6mutの設計、発現、活性および細胞分布
A.この図には、AC6mutの構築における、C1ドメイン(細胞内ループ)の426位(配列番号16に基づく位置番号)におけるアスパラギン酸(asp)のアラニン(ala)による置換の部位が示されている。この置換により、Mg
2+の結合が阻害され、触媒コアのGsα媒介性活性化の効率が変更され、これによりAC6の酵素活性が損なわれ、その結果、cAMP産生が減少する。M1およびM2はAC6の膜貫通ドメインであり、C1およびC2は、触媒コアを形成するAC6の細胞質ドメインであり、βARはβ−アドレナリン作動性受容体であり、βYおよびαは、グアノシン5’−三リン酸(GTP)結合性タンパク質、Gsの成分である。
B.AC6mut mRNAの発現を内因性AC6と導入遺伝子AC6mutに共通のプライマーを使用したqRT−PCRによって評価した。GAPDH mRNAを検出するためのプライマーをqRT−PCR反応の内部対照として使用した。AC6mut mRNAは内因性AC6に対して62倍増加した。棒中の動物数+SE;スチューデントのt検定、対応のない、両側。
C.抗AC5/6抗体を使用した免疫ブロッティングでAC6mutタンパク質を検出し、抗AU1タグ抗体を使用して確認した。AC6mutタンパク質は内因性AC6に対して17倍増加した。
D.AC6mutマウスおよび対照マウスから単離した心筋細胞における、イソプロテレノール(Iso;10μM、10分)またはNKH477(NKH;10μM、10分)を用いた刺激前(基底)および刺激後のサイクリックAMP産生;cAMP酵素イムノアッセイ。AC6mutマウス由来の心筋細胞(M対C、対照)ではIsoおよびフォルスコリン類似体であるNKH477に応答したcAMP産生が損なわれたことが示された。棒は平均+SEを示す;一元配置ANOVA、続くボンフェローニの事後検定からのp値(n=6、各群)。
E.抗AU1抗体(赤色);抗カベオリン3(Cav−3)抗体(緑色、カベオラについて);抗タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)抗体(緑色、筋小胞体について);抗ラミンA抗体(緑色、核エンベロープについて)、および抗電位依存性アニオン選択チャネルタンパク質(VDAC)抗体(緑色、ミトコンドリアについて)を使用した、AC6mutマウスから単離した心筋細胞と、対照マウスから単離した心筋細胞におけるAC6mutタンパク質の2重免疫蛍光染色。核は青色である。AC6mut導入遺伝子はカベオラ、SR、および核エンベロープにおいて検出されたが、ミトコンドリアに関連しなかった。
【0154】
図2.PKA、PKSおよびPDEの活性および発現
A.上のグラフ:刺激していない(基底)またはイソプロテレノール(Iso;10μM、10分)もしくはNKH477(NKH;10μM、10分)を用いて刺激した、単離した心筋細胞におけるPKA活性。AC6mut発現により、基底のPKA活性が低下し(p=0.01)、Iso活性(p=0.001)とNKH活性(p=0.001)の両方も低下した(n=3、各群)。
下のゲル:LVホモジネート中のPKAタンパク質。LVにおけるPKA触媒サブユニットタンパク質の発現はAC6mut発現によって変更されなかった。
B.AC6mutマウスおよび対照マウス由来の左心室ホモジネートを使用した免疫ブロットにおいて、重要なシグナル伝達タンパク質の発現およびそれらのリン酸化が示されている。群間の差異は観察されなかった。ホスホ(P)および総(T)PKA調節性サブユニットII−αおよびII−β、PKCα、ホスホジエステラーゼ3A型(PDE3A)、ホスホトロポニンI(P22/23−TnI)、および総TnIが示されている。
C.イソプロテレノール刺激の前後のRyR2、PLBおよびTnIのリン酸化を各群から単離した心筋細胞の培養物において評価した。RyR2、PLBおよびTnIの基底のリン酸化に群間の差異は示されなかった。イソプロテレノール刺激に伴って両群でRyR2、PLB、およびTnIのリン酸化が増加したが、AC6mutマウス由来の心筋細胞の方が広範囲にわたった(
図2C)。
D.AC6mutマウス由来の心筋細胞においてイソプロテレノール刺激に伴ってRyR2、PLB、およびTnIのリン酸化が増加したことを示す
図2Cからのデータがローディング(GAPDH)に対して正規化したグラフ形式で示されている。TnIリン酸化の増加は統計的に有意ではなかった(p=0.07)。
【0155】
図3.左心室収縮機能
AC6mut TGマウスから単離した心臓(黒塗りの丸;n=11)では、広範囲のイソプロテレノール用量によるイソプロテレノール刺激に応答してLV dP/dtの保持が示された。データを獲得し、群同一性に関する知見を用いずに解析した。白抜きの丸、導入遺伝子陰性対照マウス(n=12)。群間の差異はなかった(二元配置ANOVA)。データ点は平均±SEを示す。
【0156】
図4.SRによるCa
2+の取り込み、Ca
2+シグナル伝達タンパク質、および転写因子
A.上:AC6mutマウスおよびTG陰性同胞対照マウス由来のプールしたLV試料におけるCa
2+の取り込み活性(n=6、両群)
下:AC6mutの発現により、Ca
2+に対するSERCA2aの親和性が低下した。50%最大効果(EC
50)のためのCa
2+の有効濃度を、異なる遊離のCa
2+濃度における最初のATP依存性のCa
2+の取り込み速度から算出した。
B.上:AC6mut発現に伴ってLVにおけるホスホランバン(PLB)発現が減少した。
下:AC6mut発現に伴ってLVにおけるCREM−1タンパク質の発現が増加した。
C.上:AC6mut発現に伴ってLVにおけるS100A1タンパク質の発現が増加した。
下:AC6mut発現に伴ってLVにおけるP133−CREBタンパク質の発現が増加した。総CREB発現は両群で同様であった。
D.AC6mut発現は、SERCA2a、カルレティキュリン、カルセケストリンまたはホスホ−S16−PLBタンパク質のLVにおける発現に影響を及ぼさなかった(n=4、両群)。
E.AC6mutマウスおよび対照マウスから単離した心筋細胞における抗AU1抗体(赤色)および抗CREM−1抗体(緑色)または抗AU1および抗ホスホ−CREB(S133、緑色)を使用した、AC6mutタンパク質の2重免疫蛍光染色。核は青色で示された。AC6mut発現により、CREM−1およびホスホ−CREBの核への局在化が増加した。
グラフ(A、B、C)中、棒は平均+SEを示し、棒の中の数字は群のサイズを示し、棒の上の数字(member)はスチューデントのt検定(対応のない、両側)からのp値を示す。
【0157】
図5.AC6mutマウスおよび対照マウスから単離した心筋細胞における細胞質ゾルのCa
2+トランジェント
A.放出された基底のCa
2+(収縮期Ca
2+−拡張期Ca
2+)に群間の差異は示されなかった。
B.イソプロテレノール(Iso;10μM)を用いて刺激した心筋細胞における代表的なIndo−1 Ca
2+トランジェント記録はAC6mutマウス由来の心筋細胞の方が高かった。要約データがパネルCに示されている。
C.イソプロテレノールの存在下で放出されるCa
2+がAC6mutマウス由来の心筋細胞では増加した。
D.イソプロテレノールの存在下でのピークCa
2+トランジェントまでの時間がAC6mutマウス由来の心筋細胞では短くなった。
E.イソプロテレノールの存在下での50%弛緩までの時間(tau)がAC6mutマウス由来の心筋細胞では短くなった。
実験を4回繰り返した。棒は平均+SEを示し、棒の中の数字は心筋細胞の数を示し、棒の上の数はスチューデントのt検定(対応のない、両側)からのp値を示す。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0158】
【表1】
【表2】
【0159】
本発明のいくつかの実施形態が記載されている。それにもかかわらず、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態が以下の特許請求の範囲の範囲内に入る。