【文献】
Martin Palou,Mechanism and kinetics of glass-ceramics formation in the LiO2-SiO2-CaO-P2O5-CaF2 system,Central European Journal of Chemistry,VERSITA,2009年,7巻,2号,p.228-233
【文献】
S. C. Mojumdar,FLUOROAPATITE - MATERIAL FOR MEDICINE Growth, morphology and thermoanalytical properties,JOURNAL of Thermal Analysis and Calorimetry,Akademiai Kiado,2004年,78巻,p.73-82
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アパタイト結晶相が、前記ガラスセラミックの0.5〜10重量%、特に、1〜10重量%、好ましくは、2〜8重量%を占め、および/またはアパタイト結晶の平均径が、5〜500nm、特に、10〜300nm、好ましくは、20〜200nmである、請求項1から13のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
前記二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミック、前記出発ガラスまたは前記メタケイ酸リチウムガラスセラミックが、プレスまたは機械加工することによって所望の歯科修復物、特に、ブリッジ、インレイ、オンレイ、ベニア、支台歯、部分歯冠、歯冠またはファセットの形状を与えられる、歯科修復物を調製するための請求項1から14、もしくは18のいずれか一項に記載の二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミック、請求項15、16もしくは18に記載の出発ガラスまたは請求項17もしくは18に記載のメタケイ酸リチウムガラスセラミックの使用。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムと、さらなる結晶相としてのアパタイトとを含み、かつCaO、SrOおよびその混合物の群から選択される2価酸化物と、原子番号39〜79の遷移金属の酸化物およびその混合物の群から選択される遷移金属酸化物とを含むことを特徴とし、ここで、2価酸化物と遷移金属酸化物のモル比は1.0〜20.0、特に、1.0〜17.0、好ましくは、1.5〜16.5の範囲である。
【0010】
「主たる結晶相」という用語は、他の結晶相と比較して体積の割合が最大である結晶相を指す。
【0011】
驚くべきことに、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、非常に高い化学的安定性を特徴とする。化学的安定性を決定するために、酢酸水溶液中での貯蔵中の質量損失を決定することによってISO標準6872(2008)に従ってガラスセラミックを試験した。本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、特に、100μg/cm
2未満、好ましくは、90未満、特に好ましくは、80μg/cm
2未満、極めて特に好ましくは、50μg/cm
2未満の質量損失を示した。
【0012】
さらに、2価酸化物と遷移金属酸化物のモル比に対して与えられた範囲内で、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックの半透明性を制御された様式において調整することが驚くべきことに可能である。遷移金属酸化物を組み込むことによって半透明性が増加するが、アパタイトの結晶化によって本発明に従うガラスセラミックの半透明性が減少する。したがって、これらの反対の効果によって半透明性を所望の通りに調整することができる。特に歯科材料の場合、これは特別な利点である。なぜなら、その使用意図に応じて、多様な光透過量が望まれるからである。ガラスセラミックに存在する遷移金属酸化物は、立体的には比較的大きい成分であり、その結果として、その組み込みによって構造が顕著に変化するはずである。かくして、遷移金属酸化物を組み込んだにも拘わらず、二ケイ酸リチウムおよびアパタイト両方の同時結晶化を達成できることは驚くべきである。
【0013】
本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、好ましくは、52.0〜75.0重量%、特に、54.0〜73.0重量%のSiO
2を含む。
【0014】
二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックが、10.0〜20.0重量%、特に、12.0〜20.0重量%のLi
2Oを含むこともまた好ましい。
【0015】
ガラスセラミック中のSiO
2とLi
2Oのモル比は、好ましくは、1.5〜3.0の範囲に存在する。
【0016】
さらに、4.0〜8.0重量%のP
2O
5を含む二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックが好ましい。
【0017】
本発明に従うガラスセラミックは、特に、2.0〜9.0重量%、好ましくは、3.0〜8.0重量%の2価酸化物またはその混合物を含む。
【0018】
さらなる好ましい実施形態では、本発明に従うガラスセラミックは、2.5〜8.5重量%、特に、3.0〜8.0重量%のCaOおよび/または1.0〜6.5重量%、特に、1.0〜6.0重量%のSrOを含む。
【0019】
0.1〜1.5重量%、特に、0.3〜1.0重量%のFを含む二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックもまた好ましい。
【0020】
フッ素アパタイトの形成は、フッ素を使用することによって可能である。本発明に従うガラスセラミックがアパタイトとしてフッ素アパタイトを含むことが、特に好ましい。カチオンに応じて、フッ素アパタイトは、特に、Ca−フッ素アパタイト、Sr−フッ素アパタイトまたは混合Ca/Sr−フッ素アパタイトとして存在する。
【0021】
アパタイト結晶相が、ガラスセラミックの0.5〜10重量%、特に、1〜10重量%、好ましくは、2〜8重量%を占め、かつ/またはアパタイト結晶の平均径が、5〜500nm、特に、10〜300nm、好ましくは、20〜200nmである本発明に従うガラスセラミックが好ましい。
【0022】
結晶の平均径は、シェラー式:
【数1】
K:シェラー形状因子
λ:波長
θ:回折角
L:格子面に垂直な結晶子の伸長(平均結晶子径)
を使用してX線回折図からLとして計算した。
【0023】
JCPDSファイル01−074−4390を、アパタイト結晶に対する参照パターンとして使用した。
【0024】
好ましい実施形態では、ガラスセラミックはまた、0〜4.0重量%、特に、1.0〜4.0重量%、好ましくは、1.5〜4.0重量%のAl
2O
3を含む。
【0025】
本発明に従うガラスセラミックは、通常、0.5〜8.5重量%、特に、1.0〜8.0重量%、好ましくは、2.0〜7.5重量%の遷移金属酸化物またはその混合物を含む。
【0026】
ガラスセラミックに存在する遷移金属酸化物は、好ましくは、La
2O
3、Y
2O
3、Er
2O
3、ZrO
2、CeO
2、Tb
4O
7、V
2O
5、Ta
2O
5、Nb
2O
5およびその混合物の群から選択される。
【0027】
遷移金属酸化物が、
0〜5.0重量%、特に、2.5〜4.0重量%の量で式Me
2O
3に従って存在し、
0〜6.5重量%、特に、1.0〜6.0重量%の量で式MeO
2に従って存在し、
0〜1.0重量%、特に、0.4〜1.0重量%の量で式Me
4O
7に従って存在し、かつ/または
0〜5.0重量%、特に、0.1〜4.0重量%の量で式Me
2O
5に従って存在する本発明に従うガラスセラミックが、さらに好ましい。
【0028】
所与の式では、「Me」は、原子番号39〜79を有するそれぞれの遷移金属を表す。
【0029】
本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、通常、0〜12.0重量%、特に、2.0〜12.0重量%、好ましくは、3.0〜11.5重量%の量でNa
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2Oおよびその混合物の群から選択される1価酸化物を含む。
【0030】
さらに、以下の成分の少なくとも1つ、特に、すべてを含む二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックが好ましい。
【表1】
【0031】
本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックはまた、特に、着色剤および蛍光剤から選択される追加の成分をさらに含むことができる。着色剤および蛍光剤の例は、d−およびf−元素の酸化物である。
【0032】
さらなる好ましい実施形態では、本発明に従う二ケイ酸リチウムアパタイトガラスセラミックは、全ガラスセラミックに対して10体積%超、好ましくは、20体積%超、特に好ましくは、30体積%超の二ケイ酸リチウム結晶を含む。
【0033】
主たる結晶相として二ケイ酸リチウムを含む本発明に従うガラスセラミックは、特に良好な機械特性を特徴とし、それは、例えば、対応する出発ガラスまたは核を含む対応する出発ガラスまたは対応するメタケイ酸リチウムガラスセラミックの熱処理によって形成することができる。
【0034】
本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、優れた化学的安定性を有し、また非常に良好な機械および光学特性を有することがさらに示された。さらに、一方では遷移金属酸化物の半透明性増加効果、他方ではアパタイトの半透明性減少効果を利用することによって遷移金属酸化物およびアパタイト結晶相によりその半透明性を制御された様式において調整することが可能である。その線熱膨張係数もまた広範囲にわたり調整することができる。
【0035】
かくして本発明の二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、公知のものより優れている。その特性を組み合わせることによって歯科材料として、特に、歯科修復物を調製するための材料として本品を使用することさえ可能である。
【0036】
本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、特に、K
IC値として測定された場合、少なくとも約1.5MPa・m
0.5、特に、少なくとも約1.8MPa・m
0.5の破壊靭性を有する。この値は、ビッカース法を使用して決定し、ニイハラ式を使用して計算した。さらに、それは、特に、少なくとも約200、好ましくは、少なくとも約300MPaの高い二軸破断強度を有する。二軸破断強度は、ISO6872(2008)に従って決定した。
【0037】
本発明はまた、熱処理によって本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを調製できる対応する組成を有する多様な前駆体に関する。これらの前駆体は、対応する出発ガラス、対応する核を含む出発ガラスおよび対応するメタケイ酸リチウムガラスセラミックである。
【0038】
したがって、本発明はまた、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックの成分を含む出発ガラスに関する。
【0039】
かくして、本発明に従う出発ガラスは、CaO、SrOおよびその混合物の群から選択される2価酸化物と、原子番号39〜79の遷移金属の酸化物およびその混合物の群から選択される遷移金属酸化物とを含み、2価酸化物と遷移金属酸化物のモル比は、1.0〜20.0、特に、1.0〜17.0、好ましくは、1.5〜16.5の範囲である。
【0040】
本発明に従う出発ガラスは、さらにまた、特に、主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含む本発明に従うガラスセラミックを形成するのに必要なさらなる成分の適切量を含む。好ましくは、それは、二ケイ酸リチウムの形成を可能にする量でSiO
2およびLi
2Oを含む。さらに、出発ガラスはまた、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックに対して上記で与えられているようなよりさらなる成分を含むことができる。本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックの成分として好ましいとして与えられている実施形態のすべてはまた、出発ガラスの成分として好ましい。
【0041】
本発明はまた、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/またはアパタイトの結晶化のための核を含む出発ガラスに関する。
【0042】
さらに、本発明は、特に主たる結晶相としてのメタケイ酸リチウムと、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックの成分とを含むメタケイ酸リチウムガラスセラミックに関する。
【0043】
かくして、本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、CaO、SrOおよびその混合物の群から選択される2価酸化物と、原子番号39〜79の遷移金属の酸化物およびその混合物の群から選択される遷移金属酸化物とを含み、2価酸化物と遷移金属酸化物のモル比は、1.0〜20.0、特に、1.0〜17.0、好ましくは、1.5〜16.5の範囲である。
【0044】
本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、さらにまた、特に、主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含む本発明に従うガラスセラミックを形成するのに必要なさらなる成分の適切量を含む。さらに、メタケイ酸リチウムガラスセラミックはまた、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックに対して上記で与えられているようなよりさらなる成分を含むことができる。本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックの成分として好ましいとして与えられている実施形態すべてはまた、メタケイ酸リチウムガラスセラミックの成分として好ましい。
【0045】
さらなる実施形態では、本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックはまた、さらなる結晶相(複数可)としてアパタイトおよび/または二ケイ酸リチウムを含む。
【0046】
出発ガラスを熱処理することによって、さらなる前駆体である核を含む出発ガラスおよびメタケイ酸リチウムガラスセラミックを最初に生成することができる。次いで、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを、これらの2つのさらなる前駆体のうちの1つを熱処理することによって生成することができる。核を含む出発ガラスを熱処理することによって本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを直接形成することが好ましい。
【0047】
メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/またはアパタイトを結晶化させるための核を含む出発ガラスを生成するために5〜120分、特に、10〜60分の期間、450〜600℃、特に、450〜550℃の温度で出発ガラスを熱処理することが好ましい。
【0048】
メタケイ酸リチウムガラスセラミックまたは二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを調製するために、5〜120分、特に、10〜60分の期間、600℃超の温度で核を含む出発ガラスを熱処理することがさらに好ましい。二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを調製するために、核を含む出発ガラスの熱処理は、5〜120分、特に、10〜60分の期間、特に好ましくは、700〜1000℃、特に、750〜950℃の温度で行われる。
【0049】
本発明はまた、出発ガラス、核を含む出発ガラスまたはメタケイ酸リチウムガラスセラミックを、450〜1000℃の範囲の少なくとも1回の熱処理に供する、本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを調製するためのプロセスに関する。
【0050】
本発明に従うプロセスで実施される少なくとも1回の熱処理はまた、本発明に従う出発ガラス、核を含む本発明に従う出発ガラスまたは本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックのホットプレス中または焼結中に実施することができる。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明に従うプロセスは、
(a)核を含む出発ガラスを形成するための450〜600℃の温度での出発ガラスの熱処理と、
(b)二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを形成するための700〜1000℃の温度での核を含む出発ガラスの熱処理とを含む。
【0052】
(a)および(b)で実施される熱処理の継続時間は、特に、5〜120分、好ましくは、10〜60分である。
【0053】
出発ガラスを調製するために、手順は、特に、炭酸塩、酸化物、リン酸塩およびフッ化物などの適切な出発材料の混合物を、特に、1300〜1600℃の温度で2〜10時間溶融することである。特に高い均一性を達成するために、得られたガラス溶融物はガラス顆粒を形成するために水中に注がれ、次いで、得られた顆粒が再度溶融される。
【0054】
次いで、溶融物は、金型内に注がれて出発ガラスのブランク、いわゆる固体ガラスブランクまたは一体型ブランクを生成することができる。
【0055】
溶融物を再度水中に入れて顆粒を調製することも可能である。この顆粒は、粉砕し、任意選択で着色剤および蛍光剤などのさらなる成分を添加した後にプレスしてブランク、いわゆる粉末グリーンコンパクトを形成することも可能である。
【0056】
最後に、出発ガラスはまた、顆粒化後に粉末が形成されるように加工することができる。
【0057】
次いで、例えば、固体ガラスブランク、粉末グリーンコンパクトの形態での、または粉末の形態での出発ガラスを少なくとも1つの熱処理に供する。第1の熱処理は、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/またはアパタイト結晶を形成するのに適した核を含む本発明に従う出発ガラスを調製するために最初に実施されることが好ましい。次いで、核を含むガラスを、通常、メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/またはアパタイトを結晶化させるためにより高い温度での少なくとも1つのさらなる熱処理に供する。
【0058】
メタケイ酸リチウムを結晶化させるためのさらなる熱処理は、特に、少なくとも600℃の温度で行われる。二ケイ酸リチウムを結晶化させるために、さらなる熱処理は、特に、少なくとも700℃の温度で行われる。アパタイトを結晶化させるために、さらなる熱処理は、特に、少なくとも750℃の温度で行われる。
【0059】
本発明に従うガラスセラミックおよび本発明に従うガラスは、特に、粉末、顆粒、または任意の形態もしくは大きさのブランク、例えば、一体型ブランク、例えば、プレートレット、直方体または円筒、あるいは粉末グリーンコンパクト(未焼結の、部分焼結のまたは緻密に焼結された形態)の形態で存在する。これらは、これらの形状で容易にさらに加工することができる。しかし、それらはまた、ブリッジ、インレイ、オンレイ、歯冠、ベニア、ファセットまたは支台歯などの歯科修復物の形態で存在することもできる。
【0060】
ブリッジ、インレイ、オンレイ、歯冠、ベニア、ファセットまたは支台歯などの歯科修復物は、本発明に従うガラスセラミックおよび本発明に従うガラスから調製することができる。したがって、本発明はまた、歯科修復物を調製するためのその使用に関する。ガラスセラミックまたはガラスが、プレスまたは機械加工によって所望の歯科修復物の形状を与えられることが好ましい。
【0061】
プレスは、通常、増加した圧力および上昇した温度下で行われる。プレスを700〜1200℃の温度で実施するのが好ましい。プレスを2〜10バールの圧力で実施するのがさらに好ましい。プレス中、所望の形状変化が、使用される材料の粘性流動によって達成される。本発明に従う出発ガラス、特に、核を含む本発明に従う出発ガラス、本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、プレスのために使用することができる。本発明に従うガラスおよびガラスセラミックは、特に、任意の形態もしくは大きさのブランク、例えば、固体ブランクまたは粉末グリーンコンパクト(例えば、未焼結の、部分焼結のまたは緻密に焼結された形態)の形態で使用することができる。
【0062】
機械加工は、通常、材料除去プロセス、特に、摩砕および/または粉砕によって行われる。機械加工が、CAD/CAMプロセスの一部として実施されることが特に好ましい。本発明に従う出発ガラス、核を含む本発明に従う出発ガラス、本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、機械加工をするために使用することができる。本発明に従うガラスおよびガラスセラミックは、特に、ブランク、例えば、固体ブランクまたは粉末グリーンコンパクト(例えば、未焼結の、部分焼結のまたは緻密に焼結された形態)の形態で使用することができる。好ましくは、本発明に従うメタケイ酸リチウムガラスセラミックまたは本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、機械加工をするために使用される。二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックはまた、より低い温度の熱処理によって生成した未だ完全に結晶化していない形態で使用することができる。これは、より容易な機械加工、したがって機械加工のためのより簡単な装置の使用が可能であるという利点を有する。かかる部分的に結晶化した材料を機械加工した後に、後者は、通常、二ケイ酸リチウムおよびアパタイトをさらに結晶化するためにより高い温度、特に、700〜1000℃、好ましくは、750〜950℃での熱処理に供する。
【0063】
一般に、例えば、プレスまたは機械加工によって所望の形状にされた歯科修復物を調製した後に、後者は、特に、出発ガラス、核を含む出発ガラスまたはメタケイ酸リチウムガラスセラミックなどの用いる前駆体を二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックに転換するため、または二ケイ酸リチウムおよび/もしくはアパタイトの結晶化を増進するため、または、例えば、用いる多孔質粉末グリーンコンパクトの空隙率を低減するために再度熱処理する。
【0064】
しかし、本発明に従うガラスセラミックおよび本発明に従うガラスはまた、例えば、ZrO
2セラミックおよびガラスセラミックなどのセラミックのコーティング材料として適している。したがって、本発明はまた、特に、セラミックおよびガラスセラミックをコーティングするための本発明に従うガラスまたは本発明に従うガラスセラミックの使用を対象とする。本発明に従うガラスセラミックが、特に、8.0〜13.5×10
−6K
−1(100〜500℃の範囲で測定)の広い範囲にわたる線熱膨張係数を有することは非常に有益であることが示されている。したがって、所望の膨張係数を有する本発明に従うガラスセラミックは、非常に多様な用途で利用可能である。
【0065】
本発明はまた、セラミックおよびガラスセラミックをコーティングするためのプロセスであって、本発明に従うガラスセラミックまたは本発明に従うガラスがセラミックまたはガラスセラミックに施用され、高温に供するプロセスに関する。
【0066】
これは、特に、焼結中に、好ましくは、プレス中に実施することができる。焼結中の場合、ガラスセラミックまたはガラスは、通常の仕方で、例えば、粉末として、セラミックやガラスセラミックなどのコートすべき材料に施用され、次いで、高温で焼結される。好ましいプレス中の場合、本発明に従うガラスセラミックまたは本発明に従うガラスは、例えば、700〜1200℃の高温で、例えば、2〜10バールの印加圧力で、例えば、粉末グリーンコンパクトまたは一体型ブランクの形態でプレスされる。EP231773に記載の方法およびそこに開示されたプレス炉は、特に、このために使用することができる。適切な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein製のProgramat EP 5000である。
【0067】
コーティングプロセスの終了後、本発明に従うガラスセラミックは、ガラスセラミックは、特に良好な特性を有するように主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを有して存在することが好ましい。
【0068】
本発明に従うガラスセラミックおよび本発明に従うガラスの上記の特性のために、これらは、特に、歯科での使用に適している。したがって、本発明の一主題はまた、歯科材料、特に、歯科修復物の調製のための歯科材料としての、または歯冠、ブリッジおよび支台歯などの歯科修復物用のコーティング材料としての本発明に従うガラスセラミックまたは本発明に従うガラスの使用である。
【0069】
本発明は、非限定的な実施例を参照しながら以下でさらに詳細に説明される。
【実施例】
【0070】
(実施例1〜20)
組成および結晶相
以下の表に記載した組成を有する全部で20の本発明に従うガラスおよびガラスセラミックを対応する出発ガラスを溶融し、続いて制御された核生成および結晶化のための熱処理をすることによって調製した。
【0071】
またガラスのT
g値および制御された核生成および制御された結晶化のために用いた熱処理を表に記載する。以下の意味を適用する。
T
Nおよびt
N 核生成のために使用した温度および時間
T
K1およびt
K1 第1の結晶化のために使用した温度および時間
T
K2およびt
K2 第2の結晶化のために使用した温度および時間
【0072】
このために、最初にバッチ量100〜200gの出発ガラスを1400〜1500℃で慣用の原材料から溶融したが、溶融は、泡または縞の形成もなく非常に容易に可能であった。出発ガラスを水中に注ぐことによって、ガラスフリットを生成させ、次いで、これを均一化するために1〜3時間1450〜1550℃で二回目の溶融を行った。
【0073】
460〜540℃の温度において出発ガラスを熱処理することによって核を含むケイ酸リチウムガラスが形成された。
【0074】
少なくとも1回のさらなる熱処理の結果として、これらの核含有ガラスは、X線回折試験によって確認した場合、結晶化して主たる結晶相としてのメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックまたは主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含むガラスセラミックを形成した。アパタイトは、Ca−フッ素アパタイト、Sr−フッ素アパタイトまたはCa/Sr−フッ素アパタイトとして存在した。
【0075】
実施例1〜4、7、9、10および15では、核含有出発ガラスの最初のさらなる熱処理T
K1によって、主たる結晶相としてメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックがもたらされ、第二のさらなる熱処理T
K2によって、得られたメタケイ酸リチウムガラスセラミックを主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含むガラスセラミックに転換させた。
【0076】
核含有出発ガラスを、実施例13、14、16、17、19および20では、ただ一回のさらなる熱処理によって主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含むガラスセラミックに、実施例18の場合、主たる結晶相としてのメタケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含むガラスセラミックに転換させた。
【0077】
実施例8、11および12では、主たる結晶相としてメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックはまた、第二のさらなる熱処理後に存在した。
【0078】
最後に、実施例5および6は、最初のさらなる熱処理後でさえ主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックの生成を示し、第二のさらなる熱処理によるそのさらなる結晶化を示す。
【0079】
かくして、実施例は、出発ガラスの組成およびその熱処理を変更することによって如何にして多様な本発明に従うガラスセラミックが生成し得るかを総合的に示す。
【0080】
得られた本発明に従う二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックは、ISO試験6872(2008)による優れた化学的安定性を示した。酢酸水溶液中での貯蔵における質量損失は、100μg/cm
2未満、特に、50μg/cm
2未満であった。
【0081】
対照的に、従来の生物活性ガラスセラミックは、非常に大きい質量損失、したがって非常に低い化学的安定性を示す。これらは、口腔内で最も多様な組成を有する流体と繰り返し接触する歯科修復材料としての使用に適していない。
【0082】
生成した二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックはまた、390超、特に、最大約640MPaの非常に高い二軸強度σ
Bを有した。この強度は、試験片についての歯科標準ISO6872(2008)に従って決定した。試験片は、それぞれの二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを形成した1回目の結晶化(T
K1)およびその後の2回目の結晶化(T
K2)後に得られたメタケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工によって生成させた。メタケイ酸リチウムガラスセラミックの機械加工のためにCEREC(登録商標)−InLab機械(Sirona、Bensheim)を使用した。
【0083】
生成した二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックおよび前駆体として生成したメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、CAD/CAMプロセスにおける機械加工によってまたはホットプレスによって多様な歯科修復物の形態へと、非常に満足に加工することが可能であり、必要であれば、この修復物はまたベニアとしても提供された。メタケイ酸リチウムガラスセラミックは、その機械的な特性のために機械加工による形状加工に特に適していることが示された。
【0084】
ガラスセラミックはまた、特に、歯科修復物上へのコーティングとして、例えば、後者を所望のようにべニア加工するためにホットプレスによって施用することが可能であった。
【0085】
最後に、ガラスセラミックは、8.6〜11.1×10
−6K
−1(100〜500℃の範囲で測定)の広い範囲の線熱膨張係数(CTE)を有していた。具体的には、10×10
−6K
−1未満のCTEを有する材料は、例えば、ZrO
2セラミックにべニア加工するのに特に適している。
【0086】
以下の表で、モル比の指示における「TMO」は、遷移金属酸化物を指す。
【0087】
「RT−XRD」は、室温におけるX線回折試験を指す。
【0088】
「CTE」は、線熱膨張係数を指す。
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
本発明の実施形態において、例えば以下のものを含む。
(項目1)
主たる結晶相としての二ケイ酸リチウムおよびさらなる結晶相としてのアパタイトを含み、かつCaO、SrOおよびその混合物の群から選択される2価酸化物ならびに原子番号39〜79の遷移金属の酸化物およびその混合物の群から選択される遷移金属酸化物を含み、2価酸化物と遷移金属酸化物のモル比が1.0〜20.0、特に、1.0〜17.0、好ましくは、1.5〜16.5の範囲である二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミック。
(項目2)
52.0〜75.0重量%、特に、54.0〜73.0重量%のSiO2を含む、項目1に記載のガラスセラミック。
(項目3)
10.0〜20.0重量%、特に、12.0〜20.0重量%のLi2Oを含む、項目1または2に記載のガラスセラミック。
(項目4)
4.0〜8.0重量%のP2O5を含む、項目1から3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目5)
2.0〜9.0重量%、特に、3.0〜8.0重量%の2価酸化物を含む、項目1から4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目6)
2.5〜8.5重量%、特に、3.0〜8.0重量%のCaOを含む、項目1から5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目7)
1.0〜6.5重量%、特に、1.0〜6.0重量%のSrOを含む、項目1から6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目8)
0.1〜1.5重量%、特に、0.3〜1.0重量%のFを含む、項目1から7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目9)
0〜4.0重量%、特に、1.0〜4.0重量%、好ましくは、1.5〜4.0重量%のAl2O3を含む、項目1から8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目10)
0.5〜8.5重量%、特に、1.0〜8.0重量%、好ましくは、2.0〜7.5重量%の遷移金属酸化物を含む、項目1から9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目11)
前記遷移金属酸化物が、La2O3、Y2O3、Er2O3、ZrO2、CeO2、Tb4O7、V2O5、Ta2O5、Nb2O5およびその混合物の群から選択される、項目1から10のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目12)
前記遷移金属酸化物が、
0〜5.0重量%、特に、2.5〜4.0重量%の量で式Me2O3に従って存在し、
0〜6.5重量%、特に、1.0〜6.0重量%の量で式MeO2に従って存在し、
0〜1.0重量%、特に、0.4〜1.0重量%の量で式Me4O7に従って存在し、かつ/または
0〜5.0重量%、特に、0.1〜4.0重量%の量で式Me2O5に従って存在する、項目1から11のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目13)
0〜12.0重量%、特に、2.0〜12.0重量%、好ましくは、3.0〜11.5重量%の量で、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2Oおよびその混合物の群から選択される1価酸化物を含む、項目1から12のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目14)
アパタイトとしてフッ素アパタイトを含む、項目1から13のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目15)
前記アパタイト結晶相が、前記ガラスセラミックの0.5〜10重量%、特に、1〜10重量%、好ましくは、2〜8重量%を占め、および/またはアパタイト結晶の平均径が、5〜500nm、特に、10〜300nm、好ましくは、20〜200nmである、項目1から14のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
(項目16)
項目1から13のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含む出発ガラス。
(項目17)
メタケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウムおよび/またはアパタイトの結晶化のための核を含む、項目16に記載の出発ガラス。
(項目18)
メタケイ酸リチウムを特に主たる結晶相として含み、項目1から13のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含むメタケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目19)
前記ガラスセラミック、前記出発ガラスおよび前記メタケイ酸リチウムガラスセラミックが、粉末、顆粒、ブランクまたは歯科修復物の形態で存在する、項目1から15のいずれか一項に記載のガラスセラミック、項目16もしくは17に記載の出発ガラスまたは項目18に記載のメタケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目20)
項目16もしくは17に記載の出発ガラスまたは項目18に記載のメタケイ酸リチウムガラスセラミックを、450〜1000℃の範囲の少なくとも1回の熱処理に供する、項目1から15のいずれか一項に記載のガラスセラミックを調製するためのプロセス。
(項目21)
(a)核を含む出発ガラスを形成するために、前記出発ガラスを450〜600℃の温度での熱処理に供し、
(b)前記二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミックを形成するために、該核を含む出発ガラスを700〜1000℃の温度での熱処理に供する、項目20に記載のプロセス。
(項目22)
歯科材料としての、特に、歯科修復物をコーティングするための、好ましくは、歯科修復物を調製するための項目1から15、もしくは19のいずれか一項に記載の二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミック、項目16、17もしくは19に記載の出発ガラスまたは項目18もしくは19に記載のメタケイ酸リチウムガラスセラミックの使用。
(項目23)
前記二ケイ酸リチウム−アパタイトガラスセラミック、前記出発ガラスまたは前記メタケイ酸リチウムガラスセラミックが、プレスまたは機械加工することによって所望の歯科修復物、特に、ブリッジ、インレイ、オンレイ、ベニア、支台歯、部分歯冠、歯冠またはファセットの形状を与えられる、項目22に記載の歯科修復物を調製するための使用。