(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571110
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】自己発光型マイクロディスプレイエンジンを有する接眼ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
G09G 5/10 20060101AFI20190826BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20190826BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20190826BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20190826BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20190826BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
G09G5/10 B
G02B27/02 Z
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
G09G5/36 520P
G09G3/20 680A
G09G3/20 642F
G09G3/20 691G
G09G3/20 670L
G09G3/20 611A
H04N5/64 511A
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-564248(P2016-564248)
(86)(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公表番号】特表2017-521689(P2017-521689A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】US2015040928
(87)【国際公開番号】WO2016011367
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2016年12月15日
(31)【優先権主張番号】62/026,373
(32)【優先日】2014年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】トレイヴァーズ,ポール ジェイ
【審査官】
斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−053468(JP,A)
【文献】
特開2008−242134(JP,A)
【文献】
特開2009−276425(JP,A)
【文献】
特開2012−088715(JP,A)
【文献】
特表2008−523435(JP,A)
【文献】
特表2013−541026(JP,A)
【文献】
特開平05−304645(JP,A)
【文献】
特開平06−186494(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0114043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00 − 5/42
G02B 27/02
G09G 3/20
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力カプラーおよび出力カプラーを含む透過型導波路と、
前記出力カプラーの前のアイ・ボックス内の前記導波路を通して現実世界のシーンと共に見える仮想画像を生成するために、前記入力カプラーの方向に光を発するマイクロディスプレイを含む自己発光型マイクロディスプレイシステムと、
前記現実世界のシーンの異なる部分内の光のレベルを検出するための二次元光センサと、
前記自己発光型マイクロディスプレイシステムが含む、前記仮想画像と前記現実世界のシーンとの間の所望の局所的なコントラスト値を保存するために前記自己発光型マイクロディスプレイの各画素からの光出力を制御する駆動電子装置と、
を含む接眼ディスプレイであって、
前記駆動電子装置が、前記仮想画像の第1および第2の部分と重なる前記現実世界のシーン内のそれぞれ異なる検出された局所的な光のレベルに応じて、前記仮想画像の前記第1の部分における前記各画素の光出力を、前記仮想画像の前記第2の部分における前記各画素の光出力に対して調節し、
前記マイクロディスプレイが、前記導波路と同一平面上に取り付けられる、接眼ディスプレイ。
【請求項2】
前記入力カプラーおよび前記出力カプラーが、回折格子として形成され、前記入力カプラー回折格子と前記出力カプラー回折格子との間の回折格子の形態のビーム拡大器を更に含む、請求項1記載のディスプレイ。
【請求項3】
前記透過型導波路を通した前記現実世界のシーンからの光の通過を調整する電子光学変調器を更に含む、請求項1記載のディスプレイ。
【請求項4】
前記電子光学変調器が、前記仮想画像と前記現実世界のシーンとの間の所望の局所的なコントラスト値を保存するために前記即時の現実世界のシーンからの光の局所的な通過を差動的に減衰させることに備えた制御電子装置を含む、請求項3記載のディスプレイ。
【請求項5】
前記マイクロディスプレイからの光を前記入力カプラーへと伝えるための正の結像光学系およびミラーを更に含む、請求項1記載のディスプレイ。
【請求項6】
前記マイクロディスプレイと前記導波路との間にヒートシンクを更に含む、請求項1記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記マイクロディスプレイが、ヒートシンクとともに前記導波路に取り付けられる、請求項1記載のディスプレイ。
【請求項8】
前記マイクロディスプレイ及び前記ヒートシンクは、前記導波路に沿って、内部全反射条件を維持するための空隙を設けるためにシムにより取り付けられている、請求項6又は7記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記ミラーが、光を前記マイクロディスプレイから前記正の結像光学系に導くためのプリズム形状の反射構造を含む、請求項5記載のディスプレイ。
【請求項10】
前記正の結像光学系が、前記正の結像光学系と前記マイクロディスプレイとの間の光路長に等しい焦点距離を有する、請求項5記載のディスプレイ。
【請求項11】
アイ・ボックス内の現実世界のシーンと重なる仮想画像を提示する方法であって、
自己発光型マイクロディスプレイシステムを用いて、アイ・ボックスまでの導波路の長さに沿って伝えられる前記仮想画像であって、前記導波路を透過した現実世界のシーンと共に見える前記仮想画像を生成する工程であって、前記マイクロディスプレイシステムが、前記導波路と同一平面上に取り付けられている工程と、
前記現実世界のシーンのそれぞれ異なる部分内の光のレベルを検出する工程と、
前記仮想画像と前記現実世界のシーンとの間の所望の局所的なコントラスト値を保存するために、前記自己発光型マイクロディスプレイシステムの各画素からの光出力を制御する工程と、
を含み、
制御する前記工程が、前記仮想画像の第1の部分および第2の部分と重なる前記現実世界のシーン内の検出されたそれぞれ異なる局所的な光のレベルに従って、前記仮想画像の前記第1の部分における前記各画素の光出力を、前記仮想画像の前記第2の部分における前記各画素の光出力に対して調節することを含む、方法。
【請求項12】
前記仮想画像と前記現実世界のシーンとの間の所望の局所的なコントラスト値を保存するために、前記導波路を通る前記現実世界のシーンからの光の通過を減衰させる工程を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記仮想画像と前記現実世界のシーンとの間の所望の局所的なコントラスト値を保存するために、前記導波路を通る前記現実世界のシーンからの光の局所的な通過を差動的に減衰させる工程を含む、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンパクトディスプレイシステムに関し、特に、マイクロディスプレイエンジンによって生成された、現実世界の視野にオーバーレイされる生成されたパターンの拡大された仮想画像を生じるよう設計された、そのようなシステム、および、ヘッドマウントフレーム内における接眼視界のために構成可能な、または、所定の射出瞳における視界のために構成可能な、そのようなシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人の、別様では遮られない視野(FOV)に、コンピュータによる強化を加える拡張現実システムが、企業から、防衛、エンターテインメントまでの用途において注目されている。ユーザがいる世界の遮られない視野内において、高解像度のダイナミックなデジタル情報を提示できる、例えば眼鏡や安全ゴーグル等の携帯型の(ウェアラブル)デバイスを製造するために、様々な試みが行われている。人間の目が、瞳孔、レンズ、および瞼を用いて適応する高いダイナミックレンジの光レベル環境が、更なる課題を示す。ヘッドアップディスプレイ(HUD)用途であっても、または完全に混合された拡張現実訓練シミュレーションのためであっても、小型で安価で耐久性の高い解決法が必要である。
【0003】
ユーザに対してデジタル画像情報を提示するために、様々な手法が試みられている。情報は、ユーザに対して、没入型環境において、または、ユーザの別様では妨げられない世界の視野にオーバーレイされて、提供され得る。従来の手法は、特に大きな視野が所望される場合には、フットボールのヘルメットのサイズに近い嵩張る光学系、ガラスレンズ、およびビームスプリッタを用いる。更に、これらの嵩張る光学系の手法は、ユーザに、妨げられない世界の視野と同時に高ダイナミックレンジの仮想画像を提供するのに困難を有する。
【0004】
嵩張る光学系の短所を回避するために、コンパクトな接眼ディスプレイは、プレート形状の(通常は平面状の)導波路を用いて、ユーザの目に、仮想画像として、角度のついた画像情報を伝達することができる。一般的に、画像情報は、導波路の一端部付近で入力され、導波路の他端部付近で出力される。画像情報は、導波路に沿って内部反射される複数の角度的に関連したビームとして、導波路の内部に沿って伝搬する。画像情報を導波路に結合するために、回折光学系(例えば回折格子)および屈折光学系(例えばプリズム)がしばしば用いられる。そして、ユーザの目と位置合わせされ得る射出瞳を構成する、整合する回折または屈折出力カプラーによって、導波路内において内部全反射される入射角度を有する光線が出力される。導波路、および導波路の出力端にある関連付けられた回折光学系は、ユーザが導波路を通して周囲環境も見ることができるように、少なくとも部分的に透明であることが多い。そのような透明さは、特に、(a)そのような画像情報が導波路によって伝えられていない場合、(b)画像情報が視野全体を埋めない場合、または(c)追加される仮想現実コンテンツが周囲環境にオーバーレイされる場合に有用となる。
【0005】
回折格子は、それらの平面状の薄い幾何形状に起因して、光を導波路内へと、および導波路から外へと結合するコンパクトな手段を提供する。適正な設計がなされれば、仮想画像出力は、仮想画像入力と同じ角度を維持し、画像コンテンツを導波路の長さに沿って平行移動させる平面状の導波路を生じる。更に、中間の回折格子を用いて、射出瞳を、入射瞳のサイズよりもかない大きいサイズまで拡大することができる。入力回折格子と出力回折格子との間に配置された回折格子は、いわゆる1D(一次元)または2D(二次元)拡大器を用いて、射出瞳を一次元または二次元に拡大するよう設計され得る。1D拡大器の場合には、導波路に注入された光は、画像コンテンツがより広い射出瞳にわたって出力されること以外は、結合された光の伝搬方向に沿った角度関係を維持する。そのようなビーム拡大器は、注入光学系の伝搬方向に沿った寸法を低減することにより、嵩およびコストを低減するためにも用いることができる。しかし、1D(一次元)拡大器は、瞳を直交方向には拡大しない。この問題を低減するために、より大きい注入光学系が用いられ得るが、この手法は、より大きい光学要素を必要とし、システムのコストおよび嵩をかなり増大させ得る。2D(二次元)瞳拡大器は、二次元のサイズがより小さい注入光学系の使用を可能にし、それにより、より軽くなり、接眼ディスプレイの理想的な形状因子に収まり得るので、大きな長所を有する。
【0006】
画像コンテンツを導波路に結合するために、注入光学系は、しばしば、投影光学系と共に、各表示画素の光入射を変調する空間的光変調器マイクロディスプレイを用いて、仮想画像を生じる。しかし、このようにして用いられる透過型空間的光変調器は、光学的に不効率であり得、それにより、光源の電力要求を増加させることがあり得る。その結果、例えば発光ダイオード(LED)等の照明光源をより高い電流で駆動しなければならず、電力消費および発熱が増大する。例えばLCOS(liquid crystal on silicon)またはDLP(Digital Light Processing)等の反射型の空間的光変調器は、光学的により効率的であり得、例えばデジタルプロジェクタ等の幾つかの用途で用いられている。しかし、透過型または反射型システムは、射出光ではなく入射光を変調するので、LED光源からの出力ビームを投影、集光、およびスプリットする更なる光学系を必要とする。ディスプレイ、光源、投影光学系、ビームスプリッタ、偏光器、ヒートシンク等を統合した「エンジン」の小型化のために、業界において多くの努力が注がれているが、技術の最先端における寸法は、依然として接眼ディスプレイには望ましくないほど大きい(即ち、約25mm×25mm×8mm以上)。現行のエンジン技術と関連づけられた更なる短所は、コスト、サイズ、重量、および電力に負の影響を及ぼす。これらのディスプレイは入射光のみを変調するので、画像コンテンツに関係なく光源をオンにしておかなければならない。例えば、明るい全画面の仮想画像も、表示画素の僅か5%のみを占める簡単な矢印も、ほぼ同じ電力を消費する。
【0007】
自己発光型ディスプレイは、上述の問題の多くを回避できる。無機および有機LEDアレイ(OLED)は、所望の画像を生じるために、画素毎に光を生じる。例えばOLED等の自己発光型画素指定可能ディスプレイは、指定されている画素の数、および指定されている各画素の具体的な輝度に応じて電力を消費する。この画素出力を指定可能な手法は、電力消費をかなり低減できる。画素がオフにされた際には光が発せられず、背景光は他のシステム反射またはフレアに大きく限定される(これは実際上、ほぼ解消され得る)ので、コントラスト比も改善できる。自己発光型画素指定可能ディスプレイの別の大きな長所は、そのようなディスプレイが、空間的光変調器ディスプレイを照明するための投影光学系を必要としないことである。従って、内部の照明ビーム投影光学系、ビームスプリッタ等は必要ない。
【0008】
多くの長所にも関わらず、例えばOLED等の自己発光型ディスプレイは、回折導波路に基づく接眼ディスプレイと共に用いるのは、実現困難であると一般的に考えられている。自己発光型デバイスは、典型的には、投影光学系に非効率に結合される大きな拡げられた角度で光を発するランバート発光器である。明るい光学系は光学的な効率をある程度改善できるが、明るい光学系は、導波路に結合される光の角度分布に負の影響を及ぼし得る、即ち、低い結合効率を生じ得る。更に、OLEDデバイスの量子効率は低く、比較的低い輝度を生じる。上記の理由から、2D拡大器を含む回折導波路に最適なディスプレイは、別の光源によって照明される空間的変調器ディスプレイであり続けている。上記の理由から、現在のところ、高い光学出力および低い電力消費を有し、コンパクトな幾何形状および形状因子とを有する、回折導波路および自己発光型ディスプレイを組み込んだ、実現可能なマイクロディスプレイシステムは存在しない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、好ましい実施形態の1以上において、高出力の「画素出力」調節可能な自己発光型マイクロディスプレイを組み込んだ、非常にコンパクトで電力効率のよい接眼ディスプレイシステムを特色とし、この自己発光型マイクロディスプレイは、導波路に物理的に結合可能であり、回折入力カプラーおよび回折出力カプラー並びに2D瞳拡大器を含んでもよく、これらは、センサおよび電子光学ウインドウと共に、仮想世界と現実世界とのコントラスト管理を有する低電力ディスプレイを提供する。これまでの従来技術に見られる導波路に基づく接眼ディスプレイとは異なり、本発明の好ましいバージョンは、別の光源および空間的光変調器を用いる画像投影光学系を必要としない。入力回折格子によって導波路に結合されるデジタル画像は、好ましくは、画素出力を指定可能な自己発光型ディスプレイによって生成される。即ち、このディスプレイは、画素がアクティブにされた場合にのみ電力を必要とする。その結果、透過型または反射型空間的光変調器の一定の照明を必要とする導波路接眼ディスプレイとは異なり、本ディスプレイの電力消費は、画像コンテンツに基づくものとなる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態のために想定される自己発光型マイクロディスプレイにおける画素出力指定可能特性の別の大きな長所は、コントラスト比の大きな改善である。均一に照明された空間的光変調器から発する光を投影する他の手法は、デバイスからの高いオン・オフ比を必要とする。広く用いられているLCOSマイクロディスプレイは、500:1よりかなり低い比をしばしば示す低いコントラスト比を短所とする。より高いコントラストは可能であるが、照明の低下、並びに、偏光器、偏光ビームスプリッタ、および他の素子を含む複雑な補償器の追加という犠牲を伴う。想定される自己発光型ディスプレイの場合には、画素に電力が印加されないときには、画素はオフとなり、発光がなく、非常に高いコントラストを生じる。
【0011】
ランバート光源より狭い角度分布の出力を生じる高出力自己発光型ディスプレイを用いて、導波路に結合可能な光の割合および射出瞳における画像の輝度を高めることができる。改善された光学効率は、画像光源をより低いレベルで動作させることができるので、より低い電力消費も生じる。
【0012】
画素出力指定可能ディスプレイ光源の別の大きな長所は、現実世界の視界に対する仮想画像のコントラストを最大化するために、集合的な平均画素出力を調節できることである。仮想シーンの輝度を現実世界のシーンにおける輝度レベルの関数として調節するために、画素出力指定可能ディスプレイ光源の平均出力および局所的な出力を、現実世界のシーンの関数として調節できる。
【0013】
2D(二次元)拡大回折格子は、ユーザにとって十分に大きい射出瞳を依然として達成しつつ、小型のディスプレイおよびそれに関連づけられた投影光学系の使用を可能にする。瞳拡大を行う実施形態が存在しない、即ち、1D瞳拡大器さえも含まないと、入力カプラー(例えば、回折格子)に大きい仮想画像入力ビームを投影する必要があり、それにより、システムの嵩が増大する。更に、瞳拡大器または1D拡大器さえも含まずに用いられる大きい面積の入力回折格子は、導波路上の更なる面積を占め、導波路の寸法、材料、および製造コストを増大させる。
【0014】
本発明の実施形態は、現行の技術では不可能な程度の小型化を可能にする。従来技術においては、画素化された画像は、導波路の入力回折格子に対して機械的に配置および位置合わせされなければならない別個の投影ディスプレイ「エンジン」を用いて投影されるのが一般的である。一方、本発明の好ましい実施形態は、平面状の導波路にモノリシックに取り付けられた、統合された仮想画像生成エンジンを特徴とする。その結果、システムのコンパクトさがかなり高められ、様々な光学サブシステムを屈曲させる必要性が低減され、システムの機械的ロバスト性が大きく高められる。これらの属性の全ては、従来の眼鏡、工業用途の安全眼鏡、および他の望ましい形態のウェアラブル仮想現実システムと似たロバストな接眼眼鏡の設計を可能にする。また、光学系のかなりの小型化は、関連づけられた電子装置サブシステム、無線機能、ジェスチャーモニタ、光センサ、デジタル撮像センサおよび電子装置等のための更なる空間の自由度を高める。
【0015】
更に、一次元または二次元空間における輝度のような現実世界のシーンの特性を測定するためのセンサを追加した、本発明の更なる実施形態は、局所的な表示強度および全体的な表示強度の両方を調節するための画素出力指定可能ディスプレイを可能にする能動的なコントラスト制御を可能にし、よって、シーンの照明(例えば、曇った日と明るく晴れた日)に基づく最適なコントラスト−出力比およびコントラストマッチングを可能にする。各場合において、シーンの違いの関数としての最適な性能のために、(全体的な表示出力ではなく)平均画素出力を調できる。
【0016】
導波路の前にエレクトロクロミックウインドウを追加すれば、仮想画像輝度と比較したシーンの輝度を更に制御でき、より低い電力消費およびより良好な仮想−シーンマッチングが可能になる。視野にわたる生成された仮想画像との所望のコントラストを保存するために、エレクトロクロミックウインドウによって、伝達された現実世界画像における局所的な光の密度を調節できる。
【0017】
現実世界のシーンにオーバーレイされる所望のコントラストを達成するために、変調器またはその代替物によって現実画像の全体的なまたは局所的な輝度を制御することに加えて、画素出力指定可能ディスプレイの仮想画像を画素毎に制御できる。即ち、現実世界のシーンにおける照明レベルのばらつきに関わらず、視野にわたって所望のコントラストを維持できる。センサは、視野にわたる現実世界のシーンからの入射光をモニタリングでき、オーバーレイされる仮想画像を生成する画素の出力を、それらに近い背景または周囲の感知された入射光のレベルに従って調節できる。従って、オーバーレイされる仮想画像の所望のレベルのコントラストを維持するために、比較的暗い、目に見える現実世界のシーンにおける画素オーバーレイ領域を、比較的明るい、目に見える現実世界のシーンにおける画素オーバーレイ領域より低い出力レベルで駆動できる。
【0018】
本発明の実施形態は、ウェアラブルディスプレイのための小型の低電力ディスプレイエンジン光学系だけでなく、電力消費および仮想−シーン画像マッチングを最良に制御するための閉ループの能動的なシーン/仮想ディスプレイ変調エンジンも企図している。
【発明の効果】
【0019】
本発明の様々な実施形態において想定される接眼ディスプレイは、簡潔さ、コンパクトさ、より軽い重量、より低い電力消費、局所的な発熱の低減、より高いロバスト性、より高いコントラスト比、潜在的により低いコスト、および、従来技術において可能なものよりも広い応用範囲を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】入力カプラー回折格子および出力カプラー回折格子、並びにビーム拡大回折格子を含む、導波路の後面(即ち、ユーザの目に面した側の)図
【
図2】入力カプラー回折格子および出力カプラー回折格子並びにビーム拡大回折格子を含む導波路と、入力カプラー回折格子を覆うように配置された自己発光型マイクロディスプレイシステムと、ビーム拡大回折格子および出力カプラー回折格子を通って伝搬する結合された光線の軌道とを示す後面図
【
図3】導波路、回折格子構造、ミラーに基づく屈曲光学系、投影光学系、および自己発光型マイクロディスプレイを含む入力カプラーの断面図
【
図4】結像光学系にダブレットを用いた、
図3の軸外の例を示す
【
図5】導波路、回折格子構造、プリズムに基づく屈曲光学系、投影光学系、および自己発光型マイクロディスプレイを含む入力カプラーの断面図
【
図6a】コンパクトで電力効率のよい2Dまたは3D接眼ディスプレイシステムの正面図
【
図6b】眼鏡の各テンプルにコンパクトに取り付けられた駆動電子装置を有する自己発光型ディスプレイの斜視図
【
図7】電子光学シーン輝度変調器およびセンサを有するコンパクトで電力効率のよい2Dまたは3D接眼ディスプレイシステムの上面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、光学的に透明な平行平面基体20によって支持された入力カプラー回折格子11、2D瞳拡大回折格子12、および、出力カプラー回折格子13を含む導波路10を示す。回折格子11、12、および13は、基体と類似の屈折率のポリマー材料を用いて基体20上に複製されてもよく、または、基体そのものの一部として作製されてもよい。回折格子は、当該技術分野でよく知られているマイクロリソグラフィ法、ホログラフィ法、スタンピング法、およびエッチング法を用いてパターニングされ得る。基体10および回折格子11〜13の屈折率は、標準的なガラスと類似していてもよいが(例えば1.5)、導波路10に結合可能な角度の範囲およびモードの数を最大化するには、例えば1.7等のより高い屈折率が好ましい。プラスチック基体およびガラス基体は共に、2つの面(前面および後面)が非常に平行であり、伝搬する結合されたモードに対して十分な透過性を有して、導波路にわたって大きな損失を生じない限り、許容可能な基体となり得る。一例として、導波路10は、目の位置に到達するための約60ミリメートルの長さと、約30ミリメートルの高さと、所望のモードの伝搬を支持するための1〜2mmの厚さとを有し得る。例えば、積み重ねられた導波路、湾曲した導波路、所望の波長に合わせて調整された回折格子ピッチ等の他の構成は、従来技術でよく知られている。なお、本発明は、導波路の何らかの具体的な幾何形状または構成には限定されない。
【0022】
図2は、
図1の導波路と類似しているが、自己発光型マイクロディスプレイシステム21が追加された導波路30を示す。自己発光型マイクロディスプレイシステム21は、入力回折格子11を直接覆うように配置され、回折格子の方向に光を発する。幾つかの回折格子特性およびシステム特性を制御することにより、21からの出力光線を導波路に効率的に結合できる。例えば、
図2に示されるように、光線31が導波路に結合され、2D拡大回折格子12の方向に伝搬すると仮定する。2D拡大回折格子パターンは、結合された光線の伝搬方向の方向に対して、角度をつけて配向される。その結果、狭い入力ビーム31を
図2において「w」でラベリングされているより広い幅に拡大する、より大きい数の複数回反射された次数32が生じる。入力回折格子11への画像入力は、位置および角度に幅がある多くの光線で構成されるので、実際上連続した大きいセットの結合された次数が、出力回折格子13に向かって伝搬する。出力回折格子13が入力回折格子11の回折特性に一致する場合には、出力光線は、入力回折格子11を照明する入射光線の角度を保存する。観察者は、画像を見るために、自分の目を、出力回折格子13の前のアイ・ボックス(eyebox)内に配置し、それにより、元々自己発光型マイクロディスプレイシステム21によって注入された画像コンテンツを受け取る。
【0023】
入力カプラーの周囲の領域の側断面図が
図3に示されている。導波路基体20は、基体20の屈折率にほぼ等しい屈折率を有する層41を支持している。当該技術分野でよく知られている方法を用いてインプリントまたは複製された回折格子パターン領域42は、入力回折格子11の寸法を定める。
図3は、便宜上、垂直な回折格子パターンを示しているが、結合効率を向上させるために、回折格子構造(縮尺通りではなく、大きく拡大されている)は、垂直な位置合わせから傾けられてもよい。
【0024】
図3に示されている自己発光型マイクロディスプレイシステム40は、回折格子パターン領域42を直接覆うように配置されている。システム40は、正の結像光学系43、屈曲光学系ミラー44、および自己発光型マイクロディスプレイ45を含む。屈曲光学系ミラー44は、自己発光型マイクロディスプレイシステム40の寸法を低減するために含まれ得る、必要に応じて設けられる特徴である。結像光学系43は、結像要件に応じて、正のシングレット、ダブレットを含んでもよく、更なる要素、および色度が補正された要素を有してもよい。結像光学系43の焦点距離は、マイクロディスプレイ45が結像光学系43のほぼ焦点面に存在するよう選択されるのが好ましい。
図3は、光軸が導波路20に対して垂直な系を示しているが、幾つかの場合には、垂直な入射から傾いているのが望ましい。そのような場合には、良好な仮想画像を達成するために、システム40の要素はそれぞれ傾けられる。
図4は、結像光学系にダブレットレンズ44を用いた軸外の例を示す。
【0025】
他の屈曲光学系手法を用いて、更なる統合および小型化が可能である。
図5は、プリズム形状の反射構造51、正の結像光学系52、および自己発光型マイクロディスプレイ53を含む、より高度に屈曲された系を示す。この場合には、自己発光型マイクロディスプレイ53から発した光は、2回の反射を介して光路54を辿る。好ましくは、正の結像光学系52は、54の全光路長と一致する焦点距離を有する。反射構造51には、ミラーに基づく、プラスチックに基づく、またはガラスに基づく要素のいずれが用いられ得る。より小さな形状因子に加えて、自己発光型マイクロディスプレイ53は、導波路の表面と同一平面上に取り付けられ得る。同一平面上への表面実装は、製造可能性を改善でき、物理的な一体性を高める。更に、コンパクトさおよび機械的ロバスト性を更に改善するために、平面状のヒートシンク55を導波路に直接統合できる。平面状のヒートシンク55は、TIR(内部全反射)条件を維持するために必要な小さい空隙を設けるために、シムによって導波路から僅かに離間され得る。ヒートシンク55が導波路に直接取り付けられる(例えば接着される)場合には、入力回折格子56は、結合された一次モードがヒートシンク55から離れる方向に(即ち、
図5の左側に向かって)移動するよう設計され得る。
図5の回折格子は、正の結像光学系52に隣接した導波路の表面に存在しているが、幾つかの場合には、入力回折格子56を、反射回折格子として同様に作用させるために、導波路基体20の反対側の面に配置するのが望ましい。
【0026】
本発明の実施形態は、非常にコンパクトで平面状の電力効率のよい接眼ディスプレイシステムを可能にする。自己発光型マイクロディスプレイの画素出力指定可能特性は、より低い電力消費、ディスプレイの発熱およびユーザの不快さの低減、別様ではシステムの嵩を増加させ得るヒートシンクおよび熱管理の要件の緩和、および、よりコンパクトなまたは長寿命のバッテリーを生じるより低いバッテリー電力の要求を含む利益を提供する。
【0027】
一例として、
図6aは、アイ・ボックス68内の見る者の目にデジタル画像コンテンツを届けるために、2つの導波路基体66が用いられた、接眼ディスプレイシステム60を示す。
図1〜
図5に示されている実施形態と同様に、各基体66は、入力回折格子61、2Dビーム拡大回折格子62、出力回折格子63、および、
図3〜
図5に示されているものと類似の自己発光型マイクロディスプレイシステム64を含む。駆動電子装置65は、自己発光型マイクロディスプレイシステム64に、各目に対して表示されるデジタル画像コンテンツに対応する入力を供給する。電子装置の出力は、2Dコンテンツまたは3D(立体視)コンテンツのためにフォーマットされ、出力され得る。自己発光型マイクロディスプレイ64の画素指定可能出力要求は、画像を構成する画素の出力に対応する照明を発生するのに必要な際にのみ、電力を必要とする。駆動電子装置は、クロッキングおよび画像フォーマット機能のために、幾分の電力を用いるが、この電力量は一般的に、発光素子に供給される駆動電力と比較して、取るに足りないものである。
図6bは、コンパクトな接眼ディスプレイシステムの別の構成を示す。このケースでは、自己発光型マイクロディスプレイシステム64およびそれに関連づけられた駆動電子装置65は、眼鏡80のテンプルに沿って取り付けられており、従来の眼鏡に似せるために、システムをこのように構成している。自己発光型マイクロディスプレイシステム64および駆動電子装置65の他の構成(例えば、用いられている特定の眼鏡に最良に合うよう光路を案内するミラーを用いた構成)も可能である。
【0028】
電力消費を更に低減するよう構成された別の実施形態が、
図7に示されている。接眼ディスプレイシステムの上述の構成要素に加えて、周囲照明を測定するための光センサ71が含まれている。導波路72は、見る者に現実世界における遮られない視野を提供可能な透過型の要素であるので、周囲照明は、仮想現実デジタルコンテンツの知覚されるコントラスト比に大きく影響し得るものであり、デジタルコンテンツを圧倒する場合もある。逆に、自己発光型ディスプレイシステム73に入力される出力が高過ぎると、例えば夜間または屋内条件等のより暗い周囲環境を圧倒し得る。周囲照明に関わらず、アイ・ボックス88内の見る者の遮られない視野へのデジタル仮想現実コンテンツの効果的な重ね合わせを可能にするために、光センサによって測定すされた周囲照明の測定出力が、A/Dシステム74を用いてデジタル化され、これらのデータが制御電子装置75に入力されるのが好ましい。自己発光型ディスプレイシステム73に入力される出力は、公知のアルゴリズムおよび/またはルックアップテーブル74を用いて最適化され得る(73)。この処理は、周囲照明および接眼ディスプレイシステムによって表示されるデジタルコンテンツ76の両方に応答してダイナミックに行われ得る。本発明によって可能になる接眼ディスプレイは、ウェアラブルであり、多くの設定において有用であり得るので、自己発光型ディスプレイの出力のダイナミックな調節は、ユーザが一つの環境から別の環境へと移動する際(例えば、角を曲がって、日が当たる場所から陰になった歩道に向かう際、または、明るい照明のオフィス環境からエレベーターに乗る際)には、非常に有用である。73への入力信号のダイナミックな変化は、更なる節電も生じ得る。
【0029】
導波路を透過した制御された量の周囲照明をユーザの目に伝達する電子光学光変調器77を用いて、強化された節電および改善されたユーザ体験も達成され得る。液晶ディスプレイ、電子光学セラミック(例えばPLZT)、エレクトロクロミックな電気泳動変調器は、用いられ得る電子光学光変調器の周知の例である。制御電子装置75は、光センサ71の出力に応答した光変調器77の変調効果を調節するために用いられ得る。周囲照明および仮想現実コンテンツの両方に基づく出力デジタル信号78は、D/Aコンバータ79によってアナログ信号に変換され、入力として光変調器77に供給され得る。画像空間内の周囲照明レベルを判定する71に、例えばCMOSセンサまたはCCDセンサ等の二次元画像センサを用いて、この処理の更なる強化が達成され得る。例えば、71に画像センサを用いて、車のスポットライトまたは屋内の灯りからの明るい反射の方向が検出され得る。この仮想現実コンテンツに対する周囲照明の位置に基づいて、導波路への信号入力が、照明光源に空間的に合うよう、および必要であれば周囲照明を補償するよう、変調され得る。更に、単純な均一のフィルタではなく、画素化された光変調器ディスプレイ77が用いられる場合には、ディスプレイの視野内の位置に応じて周囲光を選択的にフィルタリングするために、変調器の空間的な光学濃度が更に制御され得る。伝達される周囲光を低減することにより、自己発光型ディスプレイシステム73による電力要求を低減する能力は、システムに更なる節電を提供する。
【0030】
以上、本発明の様々な実施形態を記載したが、当業者には、上記の詳細な開示は、単に例として示されることを意図したものであることは明らかであり、また、本発明の全体的な教示に従った、様々な変更、改善、および変形は当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0031】
10、30 導波路
11 入力カプラー回折格子
12 2D瞳拡大回折格子
13 出力カプラー回折格子
21、40、53、64、73 自己発光型マイクロディスプレイシステム
45 自己発光型マイクロディスプレイ
60 接眼ディスプレイシステム
61 入力回折格子
62 2Dビーム拡大回折格子
63 出力回折格子
72 導波路
75 制御電子装置
71 光センサ