特許第6571112号(P6571112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップの特許一覧

特許6571112移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ
<>
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000015
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000016
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000017
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000018
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000019
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000020
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000021
  • 特許6571112-移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571112
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】移動する金属ストリップのメッキ法およびそれにより製造された被覆金属ストリップ
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/38 20060101AFI20190826BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20190826BHJP
   C25D 3/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   C25D11/38 303
   C25D7/06 B
   C25D3/06
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-567068(P2016-567068)
(86)(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公表番号】特表2017-519103(P2017-519103A)
(43)【公表日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】EP2015061332
(87)【国際公開番号】WO2015177314
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】14169312.7
(32)【優先日】2014年5月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500252006
【氏名又は名称】タタ、スティール、アイモイデン、ベスローテン、フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TATA STEEL IJMUIDEN BV
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【弁理士】
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】ジャック、フーベルト、オルガ、ジョセフ、ベイエンベルグ
(72)【発明者】
【氏名】イエルーン、マルティン、リンク
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/143928(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/126137(WO,A1)
【文献】 特開平08−337897(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/153123(WO,A1)
【文献】 特開昭59−166695(JP,A)
【文献】 特開2012−082475(JP,A)
【文献】 特開平11−200091(JP,A)
【文献】 特開2007−153791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも100m・min−1のライン速度(v1)で運転する連続高速メッキラインにおける金属クロム−酸化クロム被覆層で被覆された鋼基材製造方法であって、 ラインを通り移動する、ストリップの形態である導電性基材の片側または両側が、メッキ工程を用いることにより単一電解質からの金属クロム−酸化クロム被覆層で被覆され、
前記基材が、陰極の働きをする鋼基材であり、
酸化クロム堆積が、HからH(g)への還元に起因する、基材/電解質界面(即ち、表面pH)でのpHの増大により推進され、
pHの増大が、電解質の全体から基材/電解質界面へのHイオンの拡散流束により反対作用され、
該電解質の全体から基材/電解質界面へのHイオンの拡散流束が、
(1)電解質の運動学的粘度を増大させることによって、および/または
(2)前記鋼ストリップが、速度(v1)で前記メッキラインを介して移送され、かつ前記電解質が、v2の速度で前記ストリップメッキラインを介して移送される、前記ストリップおよび前記電解質を、並流でメッキラインを通して移動させることによって低減され、それにより酸化クロムを堆積するために電流密度を低減させ、かつ基材/電解質界面で形成されたH(g)の量を低減させることを特徴とする、鋼基材製造方法。
【請求項2】
前記ラインを通り移動する導電性基材の片側または両側が、3価クロム化合物、キレート剤、および伝導性強化塩を含む3価クロム電解質に基づくメッキ工程を用いることにより、単一電解質からの金属クロム−酸化クロム被覆層で被覆される、請求項1に記載の被覆された鋼基材の製造方法。
【請求項3】
電解質溶液が、塩化イオンを含まない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電解質溶液が、緩衝剤を含まない、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
好適な伝導性強化塩を50℃で測定した際に少なくとも1・10−6・s−1(1.0cSt)の運動学的粘度を有する電解質が得られるような濃度で用いることにより、運動学的粘度が増大される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
運動学的粘度が、硫酸ナトリウムを伝導性強化塩として用いることにより増大される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
運動学的粘度が、増粘剤を用いることにより増大される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キレート剤がギ酸ナトリウムである、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ストリップおよび前記電解質が、並流でメッキラインを通り移動し、(v1/v2)の比が、少なくとも0.1、最大で10である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
複数(>1)の金属クロム−酸化クロム被覆層が、単一ステップで堆積された、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電解質が、硫酸クロム(III)、硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウム、不可避不純物を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
金属クロム−酸化クロム被覆層で被覆される前の前記導電性鋼基材が、
・堆積されたか、または流動溶融されたブリキ、
・少なくとも80%のFeSn(鉄50原子%およびスズ50原子%)からなる鉄−スズ合金で拡散焼き鈍しされたブリキ、
・1回または2回還元された、冷間圧延された硬質ブリキ原板、
・冷間圧延され、かつ再結晶焼き鈍しされたブリキ原板および
・冷間圧延され、かつ回復焼き鈍しされたブリキ原板、
からなる群より選択される1つであり、
得られた被覆された鋼基材が、包装用途での使用を目的とした、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続高速メッキラインで被覆された鋼基材の製造方法および当該方法を用いて製造された被覆金属ストリップに関する。
【0002】
電気メッキまたは(省略して)メッキは、溶解した金属カチオンが電極上でコヒーレント(coherent)な金属被覆を形成するよう、それらを低減させるために電流を用いる工程である。電気メッキまたは電着は、物体の表面特性(例えば、耐磨耗性および耐摩耗性、腐食予防、潤滑性、審美的資質等)を変更するために最初に用いられる。メッキする部分は、回路中の陰極である。通常、陽極はその部分上にメッキされる金属からなる。両構成部分は、1種以上の溶解した金属塩ならびに電気の流れを可能とする他のイオンを含有する電解質とよばれる溶液中に浸される。
電力供給源は、陽極へ直流を供給し、金属原子を酸化させ、溶液中に金属原子を溶解させる。
陰極では、金属イオンが陰極上で「メッキだされる」ように、電解質溶液中に溶解した金属イオンが、溶液と陰極間の界面で低減される。回路を流れている電流について、陽極が溶解される速度は、陰極がメッキされる速度と同等(equal)である。この様式で、電解質浴中のイオンは、陽極により連続的に補充される。
【0003】
他の電気メッキ工程では、鉛または炭素等の非消耗陽極を用いてもよい。これらの技術において、メッキする金属のイオンは、溶液から取り出されるため浴中に補充しなければならない。
【0004】
クロムメッキは、クロムの薄層を金属物体上に電気メッキする技術である。クロム層は装飾的であり得、耐腐食性を提供し得、または表面硬化性を増大させ得る。
【0005】
伝統的にクロム電着は、電流を、6価クロム(Cr(VI))を含有する電解質溶液に流すことにより達成していた。しかし、Cr(VI)電解質溶液の使用は、Cr(VI)化合物の毒性および発癌性の性質という観点から問題がある。そのため近年の研究では、Cr(VI)を主成分とする電解質に代わる好適な代替案を見出すことが中心とされてきた。一代替案としては、3価クロムCr(III)を主成分とする電解質を提供することであり、それは、3価クロムCr(III)を主成分とする電解質が、毒性でなく、かつCr(VI)電解質溶液から堆積されたクロム被覆と類似のクロム被覆を提供するためである。
【0006】
幾つかの種類の包装鋼用に、クロム被覆鋼が製造されている。包装用のクロム被覆鋼は、通常、クロムおよび酸化クロム層で<20nmの被覆厚さで電解被覆された鋼のシートまたはストリップである。元々はTFS(無錫鋼)とよばれ、現在は、頭字語ECCS(電解クロム被覆鋼)としてよく知られている。ECCSは、典型的には、DRD(絞りおよび再絞り)2ピース缶、および缶蓋(end)、蓋、王冠コルク、ネジ切りキャップ、ならびにエアロゾルの底部および上部等の、溶接されなくてよい構成部品の製造で用いられている。ECCSは、ビスフェノールA(Bisphenol A)およびBADGEの両者を含まない、広範囲の刺激性充填品に対して頑丈な保護、ならびに卓越した食物安全基準を与える、有機被覆、PETまたはPP被覆等のラッカー被覆およびポリマー被覆の両方に対する接着にすぐれる。現在までECCSは、Cr(VI)工程に基づいて製造されていた。従来のCr(III)工程では、Cr(III)工程が、結晶性および高密度ではなく不定形および/または多孔性の層をもたらしたため、Cr(VI)を主成分とする層の品質を再現できないことが証明された。しかし、最近の開発では、国際公開第2013143928号パンフレットで実証されているように、被覆層がCr(III)を主成分とする電解質に基づいてうまく堆積され得ることが示されている。
【0007】
産業的工程においては、迅速かつ高い費用対効果で製造することが重要である。しかし、従来の方法は、より高いトリップ速度でかつ、より高い電流密度を適用する必要性がある。電流密度が高ければ高いほど、堆積速度を向上させることができるが、電気および高電力装置のための費用も上昇してしまう。
【0008】
本発明の目的は、より低いメッキ電流密度かつ高速で、単一メッキステップにより鋼基材上にクロム−酸化クロム(Cr−CrOx)層を設ける方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、単純電解質から高速で、単一メッキステップにより鋼基材上にクロム−酸化クロム(Cr−CrOx)層を製造する方法である。
【0010】
また、本発明の目的は、3価Cr化学に基づいて、単純電解質から高速で、クロム−酸化クロム(Cr−CrOx)層を鋼基材上にメッキすることによりクロム−酸化クロム(Cr−CrOx)層を製造する方法である。
【0011】
1つ以上のこれらの目的は、
少なくとも100m・min−1のライン速度(v1)で運転する連続高速メッキラインで、金属クロム−酸化クロム(Cr−CrOx)被覆層で被覆された鋼基材を製造することにより達成され、ラインを通り移動する、ストリップ形態の導電性基材の片側または両側が、メッキ工程を用いることにより単一電解質からの金属クロム−酸化クロム(Cr−CrOx)被覆層で被覆され、基材が、陰極の働きをする鋼基材であって、かつCrOx堆積が、HからH(g)への還元に起因する基材/電解質界面(即ち、表面pH)でのpHの増大により推進され、かつpHの増大が、電解質の全体から基材/電解質界面へのHイオンの拡散流束によって反対作用され、かつこの電解質の全体から基材/電解質界面へのHイオンの拡散流束が、電解質の運動学的粘度を増大することにより、ならびに/またはストリップおよび電解質を並流でメッキラインを通して移動させることにより低減され、鋼ストリップが、速度(v1)でメッキラインを通して移送され、かつ電解質が、v2の速度でストリップメッキラインを介して移送され、それによりCrOxを堆積するために電流密度を低減させ、かつ基材/電解質界面で形成されたH(g)の量を低減させる。金属の種類によっては、幾つかの酸化金属をさらに金属へ低減させることが可能である。本発明者らは、これがCrの場合に起こることを見出した。
【0012】
用語、酸化金属は、Me化合物を含む全ての化合物だけでなく、水酸化Me(OH)等の化合物またはそれらの混合物をも含む(式中、xおよびyは、整数または実数であってよく、、Me=Crである。)。
【0013】
高速連続メッキラインは、少なくとも100m・min−1の速度で移動し、通常ストリップの形態である、メッキされる基材が通るメッキラインと定義される。鋼ストリップのコイルは、メッキラインの入口端部に配置され、その目(eye)は水平面に広がっている。コイル状ストリップの先端は、次いで伸ばされ、既に処理されているストリップの末端に溶接される。ラインから排出された後に、コイルは、再度分離されコイル状にされるか、または異なる長さに切断され(通常は)コイル状にされる。
従って、電着工程は、中断することなく継続的に行うことができ、ストリップアキュムレーター(accumulator)の使用によって溶接中の速度低下の必要性を回避することができる。さらに早い速度を許容する電着工程を用いることが好ましい。
従って本発明による方法は、好ましくは少なくとも200m・min−1の速度で、より好ましくは少なくとも300m・min−1の速度で、さらに好ましくは少なくとも500m・min−1の速度で運転する、連続高速メッキラインでの被覆鋼基材の製造を可能にする。
最大速度に制限はないが、堆積工程の制御、引き出し(drag−out)およびパラメータのメッキ防止、およびそれらの制御は、速度が速くなればなるほど難しくなることは明白である。好適な最大値としては、最大速度が900m・min−1で制限される。
【0014】
本発明は、ストリップメッキラインにおける電気分解法による水溶性電解質からの、クロムおよび酸化クロム層(Cr−CrOx)の堆積に関する。CrOxの堆積は、(陰極である)ストリップ表面でのH(より正式には:H)からH(g)への還元に起因する表面pHの増大によって推進され、金属イオンがMen+(aq)+n・e→ Me(s)による電流の手段で放電される規則的メッキ工程によってではない。このような工程において、ストリップ速度が上昇する際に同一のメッキされた厚さを達成するためには、電流密度を増大させることで十分である(ただし、金属イオンの基材への拡散は制限要因ではない)。
【0015】
一態様において、本発明は、ストリップメッキラインにおける電気分解法を用いた3価クロム電解質からのクロムおよび酸化クロム層(Cr−CrOx)の堆積に関する。CrOxの堆積は、Hの還元に起因する表面pHの増大によって推進され、金属イオンが電流の手段で放電される規則的メッキ工程によってではない。図3において示される直線的関係性は、電極表面上のCr(HCOO)(H0)3(OH)(s)の堆積が拡散流束により推進されるという仮説に対する証拠となる。第二段階において、Cr(HCOO)(H0)(OH)(s)堆積は、部分的にさらにクロム金属へ低減され、部分的にクロム炭化物へ変換される。
【0016】
Cr(III)を主成分とする電解質からの堆積工程機構は以下のように考えられている。電流密度が増大すると、表面pHはよりアルカリ性になり、pH>5の場合にCr(OH)が堆積する。この実験的反応は、以下の:
【数1】
または、より正確には、ギ酸イオン(HCOO)が錯形成剤である場合は:
[Cr(HCOO)(H0)2++OH→[Cr(HCOO)(OH)(H0)+H0(レジームI)
[Cr(HCOO)(OH)(H0)+OH→Cr(HCOO)(OH)(H0)+H0(レジームII)
Cr(HCOO)(OH)(H0)+OH→[Cr(HCOO)(OH)(H0)+H0(レジームIII)
の一連の平衡反応を前提とすることで定性的に説明することができる。
レジームI〜IIIは、クロムの堆積が電流密度に対してプロットされた際に明らかとなる(例えば図4を参照のこと)。レジームIは、電流が存在するがまだ堆積がない範囲である。クロム堆積のための表面pHが不十分である。レジームIIは、堆積が開始し、その堆積は、頂点に達すると共に、落ち始める、堆積が溶解を開始するレジームIIIまで、電流密度とともに直線状に増大する。
表面pHのアルカリ性が高すぎるとき(pH>11.5)、Cr(OH)は再び溶解する:
【数2】
イオンは、ストリップ表面で還元されるため、Hイオンの濃度はストリップ表面付近で低下する。その結果として、濃度勾配がストリップ表面に隣接して確立される。図1は、電極に隣接したネルンスト拡散層(c:表面濃度[mol・m−3]、c:全体濃度[mol・m−3]、δ:拡散層厚さ[m]、x:電極からの距離[m])を示す。
【0017】
用語、単一メッキステップとは、Cr−CrOxが1つの電解質から1つの堆積ステップで堆積されることを意味する。
レジームII内における電流密度において、堆積が起こると、基材表面上への錯体Cr(HCOO)(H0)(OH)(s)の堆積直後にCr−金属、Cr−炭化物、および他の残CrOxの形成が続く。
レジームIIにおいて用いられる電流密度が高ければ高いほど、最終堆積におけるクロム金属の量が多い(図7を参照のこと)。明らかに、1つ以上の層を続けて堆積することを選択できる。例えば2つの層を堆積する場合、これらの各層は1つの堆積ステップで1つの電解質から堆積される。
【0018】
公知のネルンスト拡散層概念において、厚さδの停滞層は、電極表面付近に存在すると推測する。この層の外側では、対流が全体濃度について一定濃度を維持する。この層内では、物質移動は拡散によってしか発生しない。
【0019】
ストリップ表面での拡散流束Jは、フィックの第一法則:
【数3】
で与えられ、
[式中、
Dは、拡散係数[m−1]である。]
【0020】
科学文献において、拡散層の厚さに対する表現は、回転ディスク(Levich)、回転シリンダ(Eisenberg)、チャンネル内の流れ(Pickett)、および移動するストリップ(Landau)等の多数の実用的事例のために派生してきた。Landauに由来する表現によると、ストリップ表面での拡散流束は、ストリップ速度と力が
【数4】
で比例する。これは、増大するストリップ速度で拡散層の厚さがより薄くなることを意味する。
【0021】
通常のストリップメッキ工程(例えば、ブリキ、ニッケルまたは銅のメッキ)では、このストリップ速度の増加に伴う、拡散流束の増大は、非常に有意であり、それはその結果、より高い電流密度を適用することができ、より高い堆積速度を得られるからである。これら金属のメッキ工程において、金属イオンは、電流の手段により陰極で金属へ放電され(還元され)、還元した金属イオン(即ち、金属原子)は、陰極(金属ストリップ)上に堆積する。
【0022】
しかし、CrOx堆積の場合、このストリップ速度の増大に伴う拡散流束の増大は、非生産的であり、それはCr(OH)を堆積するために必要とされる表面pHの増大が、Hイオンの電解質の全体からストリップ表面へのより早い移送(補充)によって、阻止される(反対作用する)からである。
従って、ストリップ速度が早ければ早いほど、同量のCr(OH)を堆積するためにはますます高い電流密度が必要となる。
図2は、陰極(即ち、鋼ストリップ)での表面pHの増大につながっている、Hの電気分解を介したCr(OH)の堆積が示している。一度CrOx(例えば、Cr(OH)の形態)が堆積されると、この堆積の一部が金属クロムへ還元される。
【0023】
図3は、Cr(OH)として60mg・m−2のCrを堆積するために必要なストリップ速度の関数としての電流密度を示す。これらのデータは、回転シリンダ電極(RCE)の研究から、RCEとストリップメッキライン(SPL)の物質移動速度式を同等にすることにより得られた。明白には、より早いストリップ速度で同量のCr(OH)を堆積するためには、より高い電流密度が必要とされる。
【0024】
電流密度が高ければ高いほど、強力(かつ高価)な整流器が要求されるだけでなく、Cr(III)からCr(VI)への酸化等の、陽極での不要な副反応のリスクが高くなることを意味する。さらに、ストリップ表面でH(g)が形成されればされるほど、水素−空気混合物の爆発限界を下回ったままでいるために大容量の排気システムが必要となる。また高い電流密度では、陽極上の触媒層を損傷するリスクも増大する。
【0025】
また、ストリップ表面でH(g)が形成されればされるほど、金属表面に付着したH泡の結果として、コーティング中のピンホール形成のリスクが同様に増大する。
【0026】
本発明は従って、拡散層の厚さを増大させるという概念に基づくものであり、それは薄い拡散層から恩恵を受けているほとんどの電着反応とは相反するものである。
【0027】
発明者らは、電解質の運動学的粘度を増大することにより、拡散層の厚さを増大させることができると見出した。
【0028】
本発明は、以下において非制限的態様により、詳細に説明される。
【0029】
国際公開第2013143928号パンフレットにおいて、Cr−CrOx堆積に120g・l−1の塩基性硫酸クロム、250g・l−1の塩化カリウム、15g・l−1の臭化カリウムおよび51g・l−1のギ酸カリウムを含む電解質が使用された。
pHは、硫酸の添加により、25℃で測定して2.3〜2.8の間の値に調節した。さらなる検証で、Cl(g)形成を防止するために、塩化物を硫酸と置換することが好ましいことが示された。
本発明者らは、米国特許第3954574号明細書、米国特許第4461680号明細書、米国特許第4804446号明細書、米国特許第6004448号明細書および欧州特許出願第0747510号明細書において不当に請求されているような、塩化物を主成分とする電解質中の臭素は陽極でのCr(III)からCr(VI)への酸化を防止しないが、臭素は塩素の形成を低減させることを発見した。
従って、塩化物が硫酸と置換された場合、臭素は、もはや目的を果たしたために電解質から安全に取り除かれる。
好適な陽極を用いることにより、硫酸系電解質中における陽極でのCr(III)からCr(VI)への酸化を防止することができる。
次いで電解質は、Cr(III)塩、好ましくは硫酸Cr(III)、硫酸カリウムの形態の伝導性強化塩およびキレート剤としてギ酸カリウムおよび場合により、25°で所望のpHを得るための多少の硫酸の水溶液からなる。この溶液は、比較された本発明に対する基準として採用された。
【0030】
【表1】
pHは、HS0の添加により、25°Cで2.9に調節した。
【0031】
【表2】
pHは、HS0の添加により、25℃で2.9に調節した。表からも明らかなように、NaS0(1.76M)の溶解度は、KS0(0.46M)の溶解度よりはるかに高かった。電着実験では、酸化イリジウムまたは酸化合金の触媒性被覆を含むチタン陽極が選ばれる。水素ガス拡散陽極を用いることにより、類似の結果を得ることができる。RCEの回転速度は、10s−1(Ω0,7=5.0)で一定に保たれた。基材は、厚さ0.183mmの冷間圧延されたブリキ原板材であって、シリンダの寸法は、113.3mmxφ73mmであった。シリンダを、メッキ前に以下の条件で洗浄し、活性化した。
【表3】
【0032】
粘度測定のためにAnton Paar Model MCR 301流量計を用いた。運動学的粘度v(m・s−1)は、測定した動力学的粘度(kg・m−1・s−1)を密度(kg・m−3)で割ることにより計算することができる。伝導性は、Radiometer CDM 83伝導性計(conductivity meter)で測定した。
【0033】
50℃で測定した粘度および伝導性の結果は、以下のとおりである。
【表4】
同濃度においてカリウム溶液の伝導性が、ナトリウム溶液の伝導性より高かったにも関わらず、250g・l−1の硫酸ナトリウムの伝導性は、80g・l−1の硫酸カリウムの伝導性より高い。表の端の欄では、錯形成剤としてギ酸カリウム(51.2g/lまたは0.609M)が使用されたかまたはギ酸ナトリウム(41.4g/lまたは0.609M)が使用されたかを示している。ギ酸塩の違いによっても、何故250g/lのNaS0を有する電解質が、200g/lのNaS0を有する電解質より低い伝導性を有するかが説明される。
【0034】
RCEの拡散流束は、v−0.344と比例する(Eisenberg, J. Electrochem. Soc, 101 (1954), 306)。
【数5】
[式中、
ω=2πΩである。]
測定した運動学的粘度の値(拡散係数Dは、比のため割り切る)を挿入すると、NaS0電解質の拡散流束(および電流も)は、KS0電解質の拡散流束より24%小さいと期待される:
【数6】
電流が小さくなると、電位も低くなり、それは電位が電気回路中の全てのオーム抵抗の電流と正比例するからである(オームの法則:V=IRによる)。
電極で分極抵抗を放棄すると、整流力は、
P = VI = l
[式中、
Rは、電気回路(電解質、バスバー(bus bar)、バスジョイント(bus joint)、陽極、コンダクターロール(conductor roll)、炭素ブラシ、ストリップ等)中の全ての抵抗の合計を表す。]
より与えられる。
従って、期待される整流省力は、約42%(0.76=0.58)となるであろう。
ストリップメッキラインでは、拡散流束がv−0.59と比例するため(Landau, Electrochem. Society Proceedings, 101 (1995), 108)、期待される整流省力はさらにはるかに大きくなるであろう(60%):
【数7】
さらに、NaS0電解質の伝導性は、11%大きく、追加の整流省力を伴う。
【0035】
mg・m−2対i(A・dm−2)でのCrの堆積は、Cr−CrOxの堆積が開始される前の閾値を示し、頂点に続いて突然、急に落ち込み、停滞に終わる。
S0からNaS0へ電解質を変更することで、Cr−CrOx堆積に必要とされる電流密度が非常に低いものとなることが示される。
100mg・m−2のCr−CrOxを堆積するためには、34.6A・dm−2ではなく、21.2A−dm−2しか必要ない(図4の矢印を参照のこと)。この低下は、拡散流束の比(0.61対0.76)に基づいて予想していた低下の程度より大きく、堆積機構のおおよその特徴によって恐らく引き起こされている。
【0036】
XPS測定は、NaS0またはKS0電解質から製造されたCr−CrOx堆積物の組成物に有意な差異が無いことを示している。
必要とされる電流密度が低く、そのためH(g)泡の形成が減少するため、電解質の運動学的粘度の上昇に伴い、多孔性の度合いは低下した。
被覆の重さが約100mg・m−2のCr−CrOxを有するサンプルもXPS法により分析された(表4)。
【表5】
残部は、多少のCr(S0(それぞれ0.8および0.6mg・m−2)である。
【0037】
(多くの用途に好適な目標値である)100mg/mのCr−CrOxを堆積するための電流密度および最大量のCrが堆積される電流密度が、表5で与えられている。伝導性塩の濃度は、その限界溶解度によって制限されている。
【表6】
100mg/mのCr堆積に必要な電流密度は、伝導性塩として塩化カリウムまたは硫酸カリウムの代わりに硫酸ナトリウムを使用することによってはるかに低い値に変化していることがわかる(図6の分解図における矢印で示されている)。
【0038】
より低い電流密度および関連の明白な有意性の他に、より低い電流密度において陽極での不要な副反応の結果としての(Cr−CrOxの場合)Cr(VI)形成リスクも低減され、触媒性酸化イリジウム被覆の寿命は延長され、H(g)の発生が少ないため、H(g)の排気システムは(はるかに)小さくてよい。
【0039】
本発明の一態様において、ラインを通り移動する導電性基材の片側または両側が、3価クロム化合物、キレート剤および伝導性強化塩を含む3価クロム電解質に基づくメッキ工程を用いることにより、単一電解質からのCr−CrOx被覆層で被覆される。また、電解質溶液が、好ましくは塩化物イオンを含まずかつ好ましくは緩衝剤も含まない。
好適な緩衝剤はホウ酸であるが、これは潜在的に有害な化学薬品であるため、可能であればその使用は回避すべきである。この比較的単純な水溶性電解質は、Cr−CrOxを堆積することに最も有効であると証明された。塩化物がなく、好ましくホウ酸がないことは、化学を単純化し、塩素ガスの形成リスクも排除し、ホウ酸がないため電解質をより良性にする。
この浴は、まず1つの電解質からCr金属を形成し、次いで別の電解質において上にCrOx被覆を製造するのではなく、ワンステップで、単一電解質からCr−CrOxの堆積を可能とする。
その結果として、酸化クロムは、ワンステップ堆積工程から得られたクロム−酸化クロム被覆全体に分布されるのに対して、ツーステップ工程では、酸化クロムはクロム−酸化クロム被覆の表面に集中する。
【0040】
米国特許出願第6004488号明細書によれば、三価のCr化学を介してECCSを製造するには、二つの異なる電解質が必要である。Cr金属は、ホウ酸緩衝剤を含む第1の電解質から堆積させ、そして引き続き、酸化Crは、ホウ酸緩衝剤を含まない第2の電解質から堆積させる。この特許出願によれば、連続高速ラインにおいて第1の電解質からのホウ酸が、第1の電解質を含有する容器から引き出されて、第2の電解質を含有する容器内に入ることにより、第2の電解質にますます取り込まれることになり、その結果としてCr金属の堆積が増加し、酸化Crの堆積が低減または停止さえする問題が生じる。この問題は、取り込まれた緩衝剤を中和する錯形成剤を第2の電解質に添加することにより解決される。
本発明者らは、三価のCr化学を介してECCSを製造するには、緩衝剤を必要としない、ただ1つの単純電解質が必要であることを発見した。この単純電解質は緩衝剤を含有しないが、本発明者らは、驚くべきことに酸化CrからCr金属への部分的還元により、この電解質からCr金属も堆積されることを発見した。この発見は、米国特許出願6004488号において不当に推測されたようなCrを堆積するための緩衝剤を有する電解質を必要とせず、緩衝剤を必要としない、、ただ1つの単純電解質を必要とし、それは緩衝剤を有する電解質の汚染問題も解決するため、全体的なECCS製造を極めて単純化する。
【0041】
本発明の一態様において、電解質の全体から基材/電解質界面へのHイオンの拡散流束は、電解質の運動学的粘度を増大することにより、かつ/またはストリップおよび電解質を、並流でメッキラインを通って移動させることにより低減される。
金属ストリップが、少なくとも100m・s−1の速度(v1)でメッキラインを通って移送され、かつ電解質が、v2(m・s−1)の速度でストリップメッキラインを通って移送される。
両方とも、電解質の全体から基材/電解質界面へのHイオンの拡散流束を低減することにより、pHの増大に対し反作用し、Cr−CrOx堆積にとって有益である、より厚い拡散層をもたらす。
【0042】
本発明の一態様において、運動学的粘度は、運動学的粘度を50℃で測定した際に少なくとも1・10−6・s−1(1.0cSt)の運動学的粘度を有する電解質を得られるような濃度で好適な伝導性強化塩を用いることにより増大する。これは、電解質は50℃でしか用いられないという意味ではないことを留意すべきである。50℃の温度は、本明細書において運動学的粘度測定の基準点を提供することを意図している。本発明の好ましい態様において、電解質の運動学的粘度は、全て50℃で測定された際に少なくとも1.25・10−6・s−1(1.25cSt)、より好ましくは少なくとも1.50・10−6・s−1(1.50cSt)、さらにより好ましくは1.75・10−6・s−1(1.75cSt)である。
電解質が液体である限り、物理的には、運動学的粘度の上限はなく、各増大により、さらに粘性な電解質をもたらすが、ある段階において、粘度は、ドラッグアウトの増大(より粘性な液体は、ストリップに付着する)および厳しい拭き取り作業を伴う実用上の問題を引き起こす。
運動学的粘度の好適な上限は、1・10−5・s−1である。
【0043】
本発明の一態様において、運動学的粘度は、伝導性塩として硫酸ナトリウムを用いることにより増大する。水中で高い溶解度を有するこの塩を用いることにより、硫酸カリウムと同レベルに伝導性を増大することができ、またはそのレベルを超えさえし、かつ同時により高い運動学的粘度を提供する。
【0044】
本発明の一態様において、運動学的粘度は、増粘剤を用いることにより増大する。運動学的粘度はまた、増粘剤の添加により電解質の粘性を高めることで増大できる。
【0045】
増粘剤は、無機物(例えば、焼成シリカ)であっても、または有機物(例えば、多糖類)であってもよい。好適な多糖類のゲル化剤または増粘剤の例として、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、カラヤゴム、寒天、グア−ガムまたはヒドロキシプロピルグア−ガム、ローカストビーンガム等のアルギン酸またはそれらの塩が挙げられる。微生物培養によって作られた多糖類(例えば、キサンチンガム)を使用することができる。多糖類の混合物を使用することができ、温度安定性である低いせん断粘度を与えるために有利となり得る。代替の有機ゲル化剤は、ゼラチンである。アクリルアミドまたはアクリル酸またはそれらの塩のポリマー等の合成ポリマーゲル化剤または合成ポリマー増粘剤(例えば、ポリアクリルアミド)一部加水分解されたポリアクリルアミドまたはポリアクリル酸ナトリウム、またはポリビニルアルコールを、代わりに使用することができる。好ましくは、増粘剤は多糖類である。
【0046】
本発明の一態様において、キレート剤はギ酸ナトリウムである。(例えば、ギ酸カリウムに代え、)ギ酸ナトリウムを用いることにより、化学はさらに単純化される。この変更によって堆積層の組成物は影響されない。
【0047】
本発明の別の態様において、拡散層の厚さは、ストリップ基材および電解質を、並流でストリップメッキラインを通って移動させることによって増大され、(v1/v2)の比が、少なくとも0.1および/または最大で10である。
v1/v2=1のとき、ストリップ基材および電解質は、同じ速度で移動する。
流動様式は層流であることが好ましい。乱流は、拡散層の厚さに不利に影響するであろう。
【0048】
本発明の一態様において、(v1/v2)の比は少なくとも0.25、および/または最大で4である。
本発明の好ましい一態様において、(v1/v2)の比は少なくとも0.5、および/または最大で2である。
【0049】
本発明の一態様において、複数の(>1)Cr−CrOx被覆層は、伝導性基材の片側または両側に堆積され、各層が、単一ステップにおいて続くメッキ電解槽、同一メッキラインを通って続く経路、または続くメッキラインを通って続く経路で堆積される。
【0050】
CrOxの堆積機構は、ストリップ表面(陰極)でのHからH(g)への還元に起因する表面pHの増大によって推進される。
これは、水素泡がストリップ表面で形成されることを意味する。これらの泡の大部分は、メッキ工程中に除去されるが、少数は、潜在的に金属および酸化金属層(Cr−CrOx)の僅かな程度の多孔性につながるそれらの箇所で下地メッキ(underplating)を引き起こすために十分な時間基材に付着し得る。被覆層の多孔性の程度は、伝導性基材の片側または両側に上に、複数(>1)のCr−CrOx被覆層を互いの上に堆積することにより低減される。
例えば、従来的にはクロム(Cr)の層が第一に堆積され、次いで第二工程ステップでCrOx層が上に製造された。
本発明の工程によると、CrおよびCrOxは同時に(即ち、ワンステップで)形成され、Cr−CrOx層として示される。
しかしながら、単一層を有し、このようにCr−CrOx被覆層中に多少の多孔性を有する製品でさえも、Cr−CrOx被覆層を有する鋼基材がポリマー被覆で提供される包装用途に対する全ての性能試験に合格した。その性能は、従ってポリマー被覆を有する従来の(Cr(VI)−を主成分とする)ECCS材料に匹敵する。多孔性の程度は、伝導性基材の片側上または両側上に、複数(>1)のCr−CrOx被覆層を互いの上に堆積することにより低減された。この場合、各単一Cr−CrOx層は、単一ステップで堆積され、多数の単一層は例えば、続くメッキ電解槽中で、または続くメッキライン中で、または単一電解層またはメッキラインを1回以上通ることによって堆積された。これは、全体としてCr−CrOx被覆層システムの多孔性をさらに低減する。
【0051】
多数層の堆積との間に、水素泡がストリップ表面から除去されることが望ましい。これは、例えば電解質を進出および再進入するストリップによって、パルスメッキ整流器を用いることによって、または振動動作またはブラッシング動作等の機械的動作によって行うことができる。
【0052】
本発明の好ましい態様において、電解質は、硫酸クロム(III)、硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウム、不可避不純物および場合により、硫酸、25°Cでの2.5〜3.5、好ましくは少なくとも2.7および/または最大で3.1のpHを有する水溶性電解質の水溶液からなる。
メッキの間、基材からの幾つかの材料は溶解し、電解質の中で終わることがある。これは、浴中の不可避不純物と認められるであろう。また、製造または電解質の維持のために100%純粋な化学薬品を用いない場合、浴中に意図していない材料が混入している可能性がある。これも浴中の不可避不純物と認められる。最初に電解質中に存在していなかった、電解質中における材料の存在の結果をもたらす、一切の不可避副反応も浴中の不可避不純物と認められる。
理想的には、浴は、硫酸クロム(III)、硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウム(全て好適な形態で添加された)、場合によりpHを調製するための硫酸のみが、浴の初回調製および浴の使用最中の補充の最中に添加される水溶液である。
電解質は、引き出し(ストリップへ接着する電解質)の発生の結果として、および電解質からの(Cr−)CrOx堆積の結果として、その使用の最中に補充される必要がある。
【0053】
好ましくは、単一ステップでCr−CrOx層を堆積するための電解質は、硫酸クロム(III)、硫酸ナトリウムおよびギ酸ナトリウム、および場合により、硫酸、25°Cでの2.5〜3.5、好ましくは少なくとも2.7および/または最大で3.1のpHを有する水溶性電解質の水溶液からなる。好ましくは、電解質は、80〜200g・l−1の硫酸クロム(III)、好ましくは80〜160g・l−1の硫酸クロム(III)、より好ましくは100〜320g・l−1の硫酸クロム(III)、さらにより好ましくは160〜320g・l−1の硫酸クロム(III)および30〜80g・l−1のギ酸ナトリウムを含有する。
【0054】
本発明による方法は、任意の導電性基材に適用可能であるが、導電性基材を以下の:
・堆積されたか、または流動溶融されたブリキ、
・少なくとも80%のFeSn(鉄50原子%およびブリキ50原子%)からなる鉄−ブリキ合金で拡散焼き鈍しされたブリキ、
・1回または2回還元された、冷間圧延された硬質ブリキ原板、
・冷間圧延され、かつ再結晶焼き鈍しされたブリキ原板、
・冷間圧延され、かつ回復焼き鈍しされたブリキ原板、
から選択することが好ましく、結果として得られた被覆鋼基材が、包装用途での使用を意図されている。
【0055】
本発明の第二の側面は、本発明の方法に従い製造された被覆金属ストリップに関する。
【0056】
本発明の第三の側面は、本発明の方法に従い製造された被覆金属ストリップから製造された包装に関する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、電極(c)(x=0での破線のブロック)から全体濃度(c)へのHイオンの濃度勾配を示す。δは、ネルンスト拡散層概念における停滞層(拡散層の厚さ)を示している。この層の外側で対流が全体濃度で濃度を一定に維持する。この層の範囲内において、物質移動は拡散によってしか発生しない。δの厚さは、電極(∂c/∂x)x=0での濃度勾配によって決定される。
図2図2は、基材上のCr(OH)の堆積機構の概略図である。H濃度プロファイルは、単純にするために直線により近似されたことを留意すべきである。δは、またネルンスト拡散層概念における停滞層を示している。
図3図3は、メッキラインを通り移動するストリップの速度が増大する際に、固定量のCr(OH)堆積に必要な電流密度がどのように増大するかを示す。Men+(aq)+n・e→Me(s)に基づく電着に対しては、電流密度の増大で十分であろう。Cr(OH)堆積に基づく機構に対しては、高速によってより薄い拡散層の厚さがもたらされ、従って不要な電極へのHの拡散も同様に早まる。測定によって、60mg・m−2のCr−CrOxを堆積するために、100m・min−1のライン速度に対して24.3A・dm−2の電流密度が必要である一方で、300m/minに対して73A・dm−2が必要であり、600m・min−1に対して約150A・dm−2必要であることが示された。
図4図4は、Cr−CrOx対電流密度のプロット:Cr−CrOx堆積が開始される前の閾値を示し、頂点に続いて突然、急に落ち込み、停滞に終わる。
図5図5は、異なる電解質およびリン酸ナトリウムの変動値に対するCr−CrOx対電流密度のプロットを示す。
図6図6は、図5からの切り取り図であり、好適な目標値である100mg/mのCrを堆積するための電流密度を示す。
図7図7は、1秒の堆積時間での200g/lのNaS0について電流密度に対する被覆組成物をプロットしていて、
図8図8は、200g/lのNaS0について20A/dmの電流密度での堆積時間に対する被覆組成物重量がプロットされている。最大電流密度を超過すると(レジームIII−200g/lのNaS0に対して約25A/dmである、図4および5で示されるように)Cr金属量は落ち込み、被覆が、増大する電流密度でますます酸化Crから構成される。最大に向かう直線的レジームIIにおいて、Cr金属含有量は主に酸化Crを消費して増大する電解質時間で増加する。Cr炭化物の量は、図8の全堆積時間においてほぼ同じである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8