(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトJagged1に結合する単離抗体であって、配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;XがA、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T又はVから選択される任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3;配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、抗体。
a)配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3;配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3;又は
b)配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3;配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3;又は
c)配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3;配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3
を含む、請求項1に記載の単離抗体。
アレルギー、喘息、自己免疫性疾患、杯細胞異形成(例えば、肺の)及び過剰な粘液と関連する疾患から選択される疾患をがんを有する個体において治療するための医薬であって、請求項1から27のいずれか一項に記載の抗体又は請求項31に記載のイムノコンジュゲートの有効量を含む、医薬。
【発明を実施するための形態】
【0046】
I.定義
本明細書において、「アクセプターヒトフレームワーク」は、下に規定されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むことができるか、又はそれはアミノ酸配列変化を含有することができる。一部の実施態様では、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下又は2以下である。一部の実施態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0047】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で用いるように、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYへの親和性は、解離定数(Kd)によって一般的に表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む当該技術分野で公知の一般方法を用いて測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例証的及び例示的な実施態様は、以下に記載される。
【0048】
「親和性成熟」抗体は、そのような改変を有さない親抗体と比較して、1つ又は複数の超可変領域(HVR)に1つ又は複数の改変を有する抗体を指し、そのような改変は抗原への抗体の親和性の向上をもたらす。
【0049】
用語「抗Jagged抗体」及び「Jaggedに結合する抗体」は、Jaggedを標的にすることにおいて抗体が診断薬及び/又は治療剤として有益であるのに十分な親和性でJagged1、Jagged2又はJagged1及び2(Jagged1/2)に結合することが可能な抗体を指す。一実施態様では、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定したとき、無関係な非Jaggedタンパク質への抗Jagged抗体の結合の程度は、Jaggedへの抗体の結合の約10%未満である。ある特定の実施態様では、Jaggedに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10
−8M以下、例えば10
−8Mから10
−13M、例えば10
−9Mから10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施態様では、抗Jagged抗体は、異なる種からのJaggedの間で保存されているJaggedのエピトープに結合する。用語「抗Jagged1抗体」及び「Jagged1に結合する抗体」は、Jagged1を標的にすることにおいて診断薬及び/又は治療剤として抗体が有益であるのに十分な親和性でJagged1に結合することが可能な抗体を指す。
【0050】
本明細書において、用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、限定されずにモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、それらが所望の抗原結合活性を示す限り抗体断片を含む、様々な抗体構造物を包含する。
【0051】
本明細書で用いるように、「喘息」は、基礎をなす炎症と関連しても関連していなくてもよい、不定の及び再発性の症候、可逆的空気流閉塞(例えば、気管支拡張剤による)並びに気管支応答性亢進で特徴付けられる複合障害を指す。喘息の例には、アスピリン感受性/憎悪喘息、アトピー性喘息、重度の喘息、軽度の喘息、中等度ないし重度の喘息、コルチコステロイドナイーブ喘息、慢性喘息、コルチコステロイド抵抗性喘息、コルチコステロイド抗療性喘息、新たに診断された未処置の喘息、喫煙による喘息、コルチコステロイドで制御できない喘息、及びJ Allergy Clin Immunol(2010)126(5):926−938で指摘される他の喘息が含まれる。
【0052】
「ブロッキング」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を有意に阻害する(部分的又は完全に)ものである。
【0053】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されずに、Fv、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0054】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいてその抗原への参照抗体の結合を50%以上ブロックする抗体を指し、反対に、参照抗体は競合アッセイにおいてその抗原へのその抗体の結合を50%以上ブロックする。例示的な競合アッセイが、本明細書で提供される。
【0055】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部は特定の供給源又は種に由来するが、重鎖及び/又は軽鎖の残部は異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0056】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1及びIgA
2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、α、δ、ε、γ及びμとそれぞれ呼ばれている。
【0057】
本明細書で用いられる用語「細胞傷害性剤」は、細胞の機能を阻害若しくは阻止し、及び/又は細胞の死若しくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞傷害性剤には、限定されずに、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体);化学療法の剤又は薬物(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びその断片;抗生物質;その断片及び/又は変異体を含む毒素、例えば小分子毒素又は細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素活性毒素;並びに下で開示される様々な抗腫瘍又は抗がん剤が含まれる。
【0058】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に帰せられる生物活性を指す。抗体のエフェクター機能の例には、以下のものが含まれる:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化。
【0059】
薬剤、例えば薬学的製剤の「有効量」は、必要な投薬量及び期間で、所望の治療的又は予防的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0060】
本明細書の用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために用いられる。この用語は、天然配列のFc領域及び変異Fc領域を含む。一実施態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸びている。しかし、Fc領域のC末端のリジン(Lys447)は、存在しても存在しなくてもよい。本明細書で特記されない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付け系による。
【0061】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4から一般になる。したがって、HVR及びFR配列は、VH(又はVL)において以下の配列で一般に出現する:FR1−H1(L1)−FR2−H2(L2)−FR3−H3(L3)−FR4。
【0062】
本明細書において、用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は互換的に使用されて、天然の抗体構造に実質的に類似した構造を有するか、又は本明細書に規定されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0063】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」は互換的に使用されて、そのような細胞の子孫を含む、外因性の核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、それらには、一次形質転換細胞及び継代数に関係なくそれに由来する子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸内容が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含有することができる。当初形質転換された細胞でスクリーニング又は選択されたのと同じ機能又は生物活性を有する突然変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0064】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞によって生成される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列、又はヒト抗体レパートリー、若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用する、ヒト以外の供給源に由来するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、ヒト以外の抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に排除する。
【0065】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、一連のヒト免疫グロブリンのVL又はVHフレームワーク配列で最も一般的に見られるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、NIH Publication 91−3242、Bethesda MD(1991)、1−3巻の中のサブグループである。一実施態様では、VLについては、サブグループは、上記のカバット等におけるサブグループカッパIである。一実施態様では、VHについては、サブグループは、上記のカバット等におけるサブグループIIIである。
【0066】
「ヒト化」抗体は、ヒト以外のHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、及び一般的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そこにおいて、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てはヒト以外の抗体のそれらに対応し、FRの全て又は実質的に全てはヒト抗体のそれらに対応する。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を任意選択的に含むことができる。抗体、例えばヒト以外の抗体の「ヒト化形」は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0067】
本明細書で用いる用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変である(「相補性決定領域」又は「CDR」)及び/又は構造的に規定されたループを形成する(「超可変ループ」)及び/又は抗原接触残基を含有する(「抗原接触部」)抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)及びVLに3つ(L1、L2、L3)。本明細書において、例示的なHVRには、以下のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3)で見られる超可変ループ(Chothia及びLesk、J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b)アミノ酸残基24−34(L1)、50−56(L2)、89−97(L3)、31−35b(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)で見られるCDR(Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD (1991));
(c)アミノ酸残基27c−36(L1)、46−55(L2)、89−96(L3)、30−35b(H1)、47−58(H2)及び93−101(H3)で見られる抗原接触部(MacCallum等、J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));及び
(d)HVRアミノ酸残基46−56(L2)、47−56(L2)、48−56(L2)、49−56(L2)、26−35(H1)、26−35b(H1)、49−65(H2)、93−102(H3)及び94−102(H3)を含む(a)、(b)及び/又は(c)の組合せ。
【0068】
別途指示がない限り、本明細書において、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、上記のカバット等に従って番号付けされる。
【0069】
「イムノコンジュゲート」は、限定されずに細胞傷害性剤を含む1つ又は複数の異種分子にコンジュゲートされる抗体である。
【0070】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されずに、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。ある特定の実施態様では、個体又は対象はヒトである。
【0071】
「単離」抗体は、その天然の環境の構成要素から分離されたものである。一部の実施態様では、抗体は、例えば電気泳動(例えば、SDS−PAGE、等電点電気泳動(IEF)、毛細管電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって判定したときに、95%又は99%を超える純度まで精製される。抗体純度の調べるための方法の概説については、例えば、Flatman等、J.Chromatogr.B 848:79−87(2007)を参照されたい。
【0072】
「単離」核酸は、その天然の環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離核酸には、その核酸分子を通常含有する細胞に含有される核酸分子が含まれるが、その核酸分子は染色体外に存在するか又はその天然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する。
【0073】
「抗Jagged抗体をコードする単離核酸」は、単一のベクター又は別個のベクター中のそのような核酸分子(複数可)を含む、抗体重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1つ又は複数の核酸分子を指し、そのような核酸分子(複数可)は宿主細胞の1つ又は複数の位置に存在する。
【0074】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」は、可能な変異体抗体、例えば天然に存在する突然変異を含有するか又はモノクローナル抗体調製物の生成の間に生じる、一般に少量存在する変異体を除いて、実質的に均一な抗体の集団、すなわち集団を構成する個々の抗体が同一であり及び/又は同じエピトープに結合する集団から得られる抗体を指す。異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を一般的に含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の性格を示し、いかなる特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈するべきでない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、限定されずに、ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法は本明細書に記載される。
【0075】
「ネイキッド抗体」は、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)とコンジュゲートしていなく、放射標識されてもいない抗体を指す。ネイキッド抗体は、薬学的製剤中に存在していてよい。
【0076】
「天然の抗体」は、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然のIgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖で構成される、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。N末端からC末端にかけて、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端にかけて、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの1つに割り当てることができる。
【0077】
用語「添付文書」は、適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症及び/又はそのような治療製品の使用に関する警告に関する情報を含む、治療製品の市販パッケージに慣習的に含まれる説明書を指すために用いられる。
【0078】
参照ポリペプチド配列に関して「アミノ酸配列パーセント(%)同一性」は、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさずに、最大のパーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率と規定される。アミノ酸配列パーセント同一性を判定するためのアラインメントは、当該分野の技術の範囲内である様々な方法で、例えば公開されているコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含め、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかし、本明細書において、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を用いて生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムはGenentech,Inc.によって書かれ、ソースコードはU.S.Copyright Office、Washington D.C.、20559の利用者文書に提出され、そこにおいてそれは米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Californiaから公開されているか、又はソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステムで用いるためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータはALIGN−2プログラムによって設定され、変更されない。
【0079】
ALIGN−2がアミノ酸配列比較のために用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの又はそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列%同一性(それは、代わりに、所与のアミノ酸配列Bに、それと又はそれに対してある特定のアミノ酸配列%同一性を有するか含む所与のアミノ酸配列Aと言い表すことができる)は、以下の通りに計算され:
分数X/Y×100
上式で、XはAとBのそのプログラムのアラインメントにおいて配列アラインメントプログラムALIGN−2により同一の組合せとして評価されるアミノ酸残基の数であり、YはBの中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合は、AのBとのアミノ酸配列%同一性は、BのAとのアミノ酸配列%同一性と等しくない。特記されていない限り、本明細書で用いられる全てのアミノ酸配列同一性%値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを用いて直前の段落に記載の通りに得られる。
【0080】
用語「薬学的製剤」は、そこに含まれる有効成分の生物活性を有効にするような形であり、製剤が投与される対象に許容されないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0081】
「薬学的に許容される担体」は、薬学的製剤中の、有効成分以外の対象に無毒である成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されずに、バッファー、賦形剤、安定剤又は保存剤が含まれる。
【0082】
別途指示がない限り、本明細書で用いられる用語「Jagged」又は「Jag」は、霊長類などの哺乳動物(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む任意の脊椎動物源からの任意の天然のJaggedを指す。本用語は、「完全長」の未処理のJaggedに加えて、細胞でのプロセシングからもたらされる任意の形のJaggedを包含する。本用語は、Jaggedの天然に存在する変異体、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子変異体も包含する。例示的なヒト及びマウスのJagged1及びJagged2のアミノ酸配列を、
図1及び2(配列番号1−4)にそれぞれ示す。
【0083】
本明細書で用いるように、「治療」(及び「治療する」又は「治療すること」などの文法上のその変異体)は、治療する個体の自然経過を変化させる企てにおける臨床介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程で実施することができる。治療の望ましい効果には、限定されずに、疾患の発生又は再発を予防すること、症候の緩和、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的帰結の減少、転移の予防、疾患進行の速度を低下させること、病態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。一部の実施態様では、本発明の抗体は、疾患の発達を遅延させるために、又は疾患の進行を遅くするために用いられる。
【0084】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗原への抗体の結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は類似の構造を一般に有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。(例えば、Kindt等、Kuby Immunology、6版、W.H. Freeman and Co.、p91 (2007)を参照されたい)。抗原結合特異性を付与するのに、単一のVH又はVLドメインで十分なことがある。さらに、相補的なVL又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングするために、抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを用いて、特定の抗原に結合する抗体を単離することができる。例えば、Portolano等、J. Immunol. 150:880-887 (1993);Clarkson等、Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい)。
【0085】
本明細書で用いるように、用語「ベクター」は、それが結合する別の核酸を増殖させることが可能な核酸分子を指す。本用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、並びにそれが導入されている宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結されている核酸の発現を導くことが可能である。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
【0086】
II.組成物及び方法
一態様では、本発明は、抗Jagged抗体及びその断片の同定に一部基づく。ある特定の実施態様では、少なくとも1つのJaggedに結合する抗体が提供される。本発明の抗体は、例えば、がんの診断又は治療のために有益である。したがって、本発明は、抗Jagged抗体に関係する方法、組成物、キット及び製造品を提供する。
【0087】
A.例示的な抗Jagged1抗体
一態様では、本発明は、Jagged1に結合する単離抗体を提供する。
【0088】
一部の実施態様では、抗体は、Jagged1介在性シグナル伝達のアンタゴニストである。一部の実施態様では、抗体は、ヒト及びマウスのJagged1に結合する。一部の実施態様では、抗体は、ヒト、マウス及びカニクイザルのJagged1に結合する。一部の実施態様では、抗体はJagged1に結合するが、Jagged2に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒトJagged1に結合するが、ヒトJagged2に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒト及びマウスのJagged1に結合するが、ヒト、マウスのJagged2に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒト、マウス及びカニクイザルのJagged1に結合するが、ヒト、カニクイザル、マウスのJagged2に結合しない。一部の実施態様では、抗体はJagged1に結合するが、Jagged2、DLL1に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒトJagged1に結合するが、ヒトJagged2、ヒトDLL1に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒト及びマウスのJagged1に結合するが、ヒト、マウスのJagged2にも、ヒト、マウスのDLL1にも結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒト、マウス及びカニクイザルのJagged1に結合するが、ヒト、マウス、カニクイザルのJagged2にも、ヒト、マウス、カニクイザルのDLL1にも結合しない。一部の実施態様では、抗体はJagged1に結合するが、Jagged2、DLL1、DLL4に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒトJagged1に結合するが、ヒトJagged2、ヒトDLL1、ヒトDLL4に結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒト及びマウスのJagged1に結合するが、ヒト、マウスのJagged2にも、ヒト、マウスのDLL1にも、ヒト、マウスのDLL4にも結合しない。一部の実施態様では、抗体はヒト、マウス及びカニクイザルのJagged1に結合するが、ヒト、マウス、カニクイザルのJagged2にも、ヒト、マウス、カニクイザルのDLL1にも、ヒト、マウス、カニクイザルのDLL4にも結合しない。
【0089】
一部の実施態様では、抗体はヒトJagged1に2nM又はより強力な(すなわち、2nM未満の)親和性(Kd)で結合する。一部の実施態様では、抗体はヒトJagged1に1.5nM若しくはより強力な、又は1nM若しくはより強力な、又は0.9nM若しくはより強力な、0.8nM若しくはより強力な、又は0.7nM若しくはより強力な(すなわち、1.5nM未満、1nM未満、0.9nM未満、0.8nM未満又は0.7nM未満の)親和性(Kd)で結合する。一部の実施態様では、抗体はマウスJagged1に2nM又はより強力な(すなわち、2nM未満の)親和性(Kd)で結合する。一部の実施態様では、抗体はマウスJagged1に1.5nM若しくはより強力な、又は1nM若しくはより強力な、又は0.9nM若しくはより強力な、0.8nM若しくはより強力な、0.7nM若しくはより強力な、又は0.6nM若しくはより強力な、又は0.5nM若しくはより強力な(すなわち、1.5nM未満、1nM未満、0.9nM未満、0.8nM未満、0.7nM未満、0.6nM未満、又は0.5nM未満の)親和性(Kd)で結合する。
【0090】
一部の実施態様では、抗体は天然の折り畳まれたJagged1に結合するが、変性したJagged1に結合しない。一部の実施態様では、抗体は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)でJagged1に結合するが、ウェスタンブロットでJagged1に結合しない。一部の実施態様では、抗体は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)で折り畳まれたJagged1に結合するが、ウェスタンブロットで変性したJagged1に結合しない。一部の実施態様では、抗体は生理的条件の下で折り畳まれたJagged1に結合するが、変性したJagged1に結合しない。「天然の折り畳まれた」Jagged1は、生理的条件の下でタンパク質折畳みを受け、折り畳まれた状態で維持されているJagged1を指す。一部の実施態様では、Jagged1は溶液状で折り畳まれた状態で維持されている。
【0091】
一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。
【0092】
一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。一部の実施態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−H3;(d)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(e)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(f)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1、2、3、4、5又は6つのHVRを含む抗Jagged1抗体を提供する。
【0093】
一態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。別の実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3、及び配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。さらなる実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3、及び配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2を含む。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。
【0094】
一態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。別の実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3、及び配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。さらなる実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2を含む。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。
【0095】
一態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。別の実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。さらなる実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2を含む。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。
【0096】
一態様では、本発明は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。別の実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3、及び配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。さらなる実施態様では、抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3、配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3、及び配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2を含む。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。さらなる実施態様では、抗体は、(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(c)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む。
【0097】
別の態様では、本発明は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVLHVR配列を含む抗体を提供する。一実施態様では、抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一実施態様では、抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一実施態様では、抗体は、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。
【0098】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(ii)配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン、並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン、並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン、並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2;及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン、並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。
【0099】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号59から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。
【0100】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号37から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号64から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号64から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVH HVR配列を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ又は全3つのVL HVR配列を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。
【0101】
別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号37から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号64から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。別の態様では、本発明の抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号64から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。
【0102】
一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、(a)(i)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号71のアミノ酸配列であって、式中、X1はP及びGから選択され、X2はD及びNから選択され、X3はT及びSから選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(iii)配列番号72から選択されるアミノ酸配列であって、式中、X1はS以外の任意のアミノ酸であり、X2はW又はLであるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含むVHドメイン;並びに(b)(i)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2を含むVLドメイン、並びに(c)配列番号74のアミノ酸配列であって、X1はS又はYであり、X2はP又はAであり、X3はP又はTであるアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施態様では、配列番号72のX1は、S又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、配列番号72のX1は、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、配列番号72のX1はTである。
【0103】
一実施態様では、抗Jagged1抗体は上記の実施態様のいずれかの場合のようにHVRを含み、アクセプターヒトフレームワーク、例えばヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークをさらに含む。別の実施態様では、抗Jagged1抗体は上記の実施態様のいずれかの場合のようにHVRを含み、配列番号47のアミノ酸配列を含むFR1;配列番号48のアミノ酸配列を含むFR2;配列番号49のアミノ酸配列を含むFR3;及び配列番号50のアミノ酸配列を含むFR4から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ又は4つのFRを含むVHをさらに含む。別の実施態様では、抗Jagged1抗体は上記の実施態様のいずれかの場合のようにHVRを含み、配列番号43のアミノ酸配列を含むFR1;配列番号44のアミノ酸配列を含むFR2;配列番号45のアミノ酸配列を含むFR3;及び配列番号46のアミノ酸配列を含むFR4から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ又は4つのFRを含むVLをさらに含む。
【0104】
別の態様では、抗Jagged1抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号54、58又は62のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。一部のそのような実施態様では、VH配列は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のHVR−H3を含む。一部の実施態様では、VHは:(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号55又は59のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)配列番号37又は64のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される1つ、2つ又は3つのHVRを含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。別の態様では、抗Jagged1抗体は、配列番号33、65又は66のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。一部のそのような実施態様では、VH配列は、配列番号37又は64のHVR−H3を含む。一部の実施態様では、VHは:(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号28又は36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)配列番号37又は64のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される1つ、2つ又は3つのHVRを含む。ある特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗Jagged1抗体は、少なくとも1つのJagged1に結合する能力を保持する。ある特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、HVRの外の領域(すなわち、FR)で起こる。ある特定の実施態様では、抗Jagged1抗体は、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。一部のそのような実施態様では、VH配列は、配列番号37のHVR−H3を含む。一部の実施態様では、VHは:(a)配列番号35又は78のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(b)配列番号36のアミノ酸配列を含むHVR−H2、及び(c)配列番号37のアミノ酸配列を含むHVR−H3から選択される1つ、2つ又は3つのHVRを含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号33、65又は66のVH配列を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号33のVH配列を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号65のVH配列を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号66のVH配列を含む。
【0105】
別の態様では、配列番号10、26又は34のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、抗Jagged1抗体が提供される。ある特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含むが、その配列を含む抗Jagged1抗体は、Jagged1に結合する能力を保持する。ある特定の実施態様では、配列番号10、26又は34において、合計1から10個のアミノ酸が置換、挿入及び/又は削除されている。ある特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、HVRの外の領域(すなわち、FR)で起こる。一部の実施態様では、VLは、(a)配列番号38のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR−L2;及び(c)配列番号16又は40のアミノ酸配列を含むHVR−L3から選択される1つ、2つ又は3つのHVRを含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号10、26又は34のVL配列を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号34のVL配列を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号10のVL配列を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む、配列番号26のVL配列を含む。
【0106】
別の態様では、上で提供される実施態様のいずれかの場合のようにVHを含み、及び上で提供される実施態様のいずれかの場合のようにVLを含む、抗Jagged1抗体が提供される。一実施態様では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号54、及び配列番号34それぞれのVH及びVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号58、及び配列番号10それぞれのVH及びVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号62、及び配列番号26それぞれのVH及びVL配列を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。
【0107】
別の態様では、上で提供される実施態様のいずれかの場合のようにVHを含み、及び上で提供される実施態様のいずれかの場合のようにVLを含む、抗Jagged1抗体が提供される。一実施態様では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、配列番号33及び配列番号34それぞれのVH及びVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、配列番号65及び配列番号10それぞれのVH及びVL配列を含む。一実施態様では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、配列番号66及び配列番号26それぞれのVH及びVL配列を含む。
【0108】
一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号57の配列を含む重鎖、及び配列番号53の配列を含む軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号67の配列を含む重鎖、及び配列番号75の配列を含む軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、XがS以外の任意のアミノ酸である配列番号68の配列を含む重鎖、及び配列番号76の配列を含む軽鎖を含む。一部の実施態様では、XはS以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、XはS又はH以外の任意のアミノ酸である。一部の実施態様では、Xは、A、D、E、G、I、K、L、N、Q、R、T及びVから選択される。一部の実施態様では、XはTである。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、配列番号51の配列を含む重鎖、及び配列番号53の配列を含む軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、配列番号52の配列を含む重鎖、及び配列番号53の配列を含む軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、配列番号69の配列を含む重鎖、及び配列番号75の配列を含む軽鎖を含む。一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、配列番号70の配列を含む重鎖、及び配列番号76の配列を含む軽鎖を含む。
【0109】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で提供される抗Jagged1抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。例えば、ある特定の実施態様では、配列番号33のVH配列及び配列番号34のVL配列を含む抗Jagged1抗体と同じエピトープに結合する抗体が提供される。
【0110】
さらなる態様では、本発明は、本明細書で提供される抗体のいずれかとの結合に関して競合する抗体を提供する。
【0111】
本発明のさらなる態様では、上記の実施態様のいずれかによる抗Jagged1抗体は、キメラ、ヒト化又はヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一実施態様では、抗Jagged1抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ又はF(ab’)
2断片である。別の実施態様では、抗体は、完全長抗体、例えば、インタクトなヒトIgG1抗体、又は本明細書に規定される他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0112】
さらなる態様では、上記の実施態様のいずれかによる抗Jagged1抗体は、下のセクション1−7に記載されるように、特徴のいずれかを単独に又は組合せで組み込むことができる。
【0113】
1.抗体親和性
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM(例えば、10
−8M以下、例えば10
−8Mから10
−13M、例えば10
−9Mから10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0114】
一実施態様では、Kdは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。一実施態様では、RIAは目的の抗体のFabバージョン及びその抗原で実施される。例えば、抗原へのFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系列の存在下で(
125I)標識抗原の最小限の濃度でFabを平衡させ、次に、抗Fab抗体でコートされたプレートで結合抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen等、J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コートし、その後室温(およそ23℃)で2−5時間、PBS中の2(w/v)%ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)において、100pM又は26pMの[
125I]抗原を目的のFabの段階希釈と混合する(例えば、Presta等、Cancer Res. 57:4593-4599 (1997)での抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一貫する)。次に、目的のFabを、一晩インキュベートする;しかし、平衡に確実に到達するように、インキュベーションはより長い期間(例えば、約65時間)続いてもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために、混合液を捕捉プレートに移す。溶液を次に除去し、PBS中の0.1%ポリソルベート20(TWEEN20(登録商標))でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したとき、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT−20(商標);Packard)を加え、10分間、プレートをTOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)で計数する。競合結合アッセイで用いるために、最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度が選択される。
【0115】
別の実施態様により、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いてKdが測定される。例えば、BIACORE(登録商標)2000又はBIACORE(登録商標)3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を用いるアッセイを、〜10反応単位(RU)の固定化抗原CM5チップにより25℃で実行する。一実施態様では、供給業者の指示書に従って、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)を、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。結合タンパク質のおよそ10反応単位(RU)を達成するために、5μl/分の流速で注入する前に、抗原を10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈する。抗原の注入の後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基をブロックする。反応速度論的測定のために、Fabの二倍段階希釈(0.78nM−500nM)を、25℃の0.05%ポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤を有するPBS(PBST)におよそ25μl/分の流速で注入する。会合及び解離センサーグラムを同時に取り付け、簡単な1対1のLangmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いることによって、会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を計算する。平衡解離定数(Kd)は、比k
off/k
onとして計算する。例えば、Chen等、J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによって会合速度が10
6M
−1s
−1を超えるならば、会合速度は、流動停止を備えた分光光度計(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定されるような漸増濃度の抗原の存在下で、PBS中の20nM抗抗原抗体(Fab形)、pH7.2の蛍光放出強度(励起=295nm、放出=340nm、16nm帯域通過)の増加又は低下を25℃で測定する蛍光消光技術を用いて判定することができる。
【0116】
2.抗体断片
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、限定されずに、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)
2、Fv及びscFv断片、並びに下記の他の断片が含まれる。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson等、Nat.Med.9:129−134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113、Rosenburg及びMoore編、(Springer-Verlag、New York)、p269−315(1994)中のPluckthunを参照;国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5571894号及び5587458号も参照する。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFab及びF(ab’)
2断片の考察については、米国特許第5869046号を参照されたい。
【0117】
ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson等、Nat.Med.9:129−134(2003);及びHollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson等、Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
【0118】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全体若しくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6248516B1号を参照されたい)。
【0119】
本明細書に記載されるように、抗体断片は、限定されずに、インタクトな抗体のタンパク質分解並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)又はファージ)による生成を含む、様々な技術によって作製することができる。
【0120】
3.キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号;及びMorrison等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851−6855(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチ」された抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合性断片を含む。
【0121】
ある特定の実施態様では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。一般的に、非ヒト抗体はヒトへの免疫原性を低減するためにヒト化されるが、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性は保持される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、1つ又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、ヒト定常領域の少なくとも一部も任意選択的に含む。一部の実施態様では、例えば抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、ヒト化抗体の一部のFR残基は、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
【0122】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法は、例えば、Almagro及びFransson、Front.Biosci.13:1619−1633(2008)で概説され、さらに、例えば、Riechmann等、Nature 332:323−329(1988);Queen等、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989);米国特許第5821337号、7527791号、6982321号及び7087409号;Kashmiri等、Methods 36:25−34(2005)(特異性決定領域(SDR)移植を記載する);Padlan、Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェイシング」を記載する);Dall’Acqua等、Methods 36:43−60(2005)(「FRシャフリング」を記載する);Osbourn等、Methods 36:61−68(2005)及びKlimka等、Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャフリングの「誘導選択」手法を記載する)に記載されている。
【0123】
ヒト化のために用いることができるヒトフレームワーク領域には、限定されずに以下のものが含まれる:「最良適合」方法を用いて選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims等、J. Immunol. 151:2296 (1993)を参照されたい);軽鎖又は重鎖の可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:4285 (1992);及びPresta等、J. Immunol.、151:2623 (1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞突然変異した)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson、Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照されたい);及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca等、J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997)及びRosok等、J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照されたい)。
【0124】
4.ヒト抗体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で公知である様々な技術を用いて生成することができる。ヒト抗体は、van Dijk及びvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg、Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に一般に記載されている。
【0125】
ヒト抗体は、抗原投与に応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を生成するように改変されているトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製することができる。そのような動物はヒト免疫グロブリン遺伝子座の全体又は一部を一般に含有し、それらは内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、又はそれらは染色体外に存在するか若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれる。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg、Nat.Biotech.23:1117−1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する米国特許第6075181号及び6150584号;HUMAB(登録商標)技術を記載する米国特許第5770429号;K−M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7041870号、及びVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照する。そのような動物によって生成されるインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに改変することができる。
【0126】
ヒト抗体は、ハイブリドーマをベースとした方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の生成のための、ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が記載されている(例えば、Kozbor J. Immunol.、133: 3001 (1984);Brodeur等、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、p51-63 (Marcel Dekker, Inc.、New York、1987);及びBoerner等、J. Immunol.、147: 86 (1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を通して生成されるヒト抗体も、Li等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557−3562(2006)に記載されている。追加の方法には、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の生成を記載する)及びNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載する)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers及びBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927−937(2005)及びVollmers及びBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185−91(2005)に記載されている。
【0127】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと次に組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択する技術は、下に記載される。
【0128】
5.ライブラリー由来の抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリーをスクリーニングするために、様々な方法が当該技術分野で公知である。そのような方法は、例えば、Methods in Molecular Biology 178:1−37(O'Brien等編、Human Press、Totowa、NJ、2001)中のHoogenboom等で概説され、さらに、例えば、McCafferty等、Nature 348:552−554;Clackson等、Nature 352:624−628(1991);Marks等、J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003)中のMarks及びBradbury;Sidhu等、J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Lee等、J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);及びLee等、J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)に記載されている。
【0129】
ある特定のファージディスプレイ方法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングし、ファージライブラリーでランダムに組み換え、次に、それらをWinter等、Ann.Rev.Immunol.、12:433−455(1994)に記載されている通り、抗原結合性ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、抗体断片を一般的に単鎖Fv(scFv)断片として又はFab断片として提示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原へ高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths等、EMBO J,12:725−734(1993)に記載される通り、いかなる免疫化なしに広範囲の非自己及び自己抗原へ抗体の単一供給源を提供するために、ナイーブレパートリーをクローニングする(例えば、ヒトから)ことができる。最後に、Hoogenboom及びWinter、J.Mol.Biol.、227:381−388(1992)に記載されている通り、幹細胞から、組換えを起こしていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを用いて、高度可変CDR3領域がコードされ、且つインビトロで組換えが起きるようにすることによって、ナイーブライブラリーを合成により作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許公報には、例えば:米国特許第5750373号並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号及び第2009/0002360号が含まれる。
【0130】
ヒト抗体ライブラリーから単離される抗体又は抗体断片は、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体断片とみなされる。
【0131】
6.多重特異性抗体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施態様では、結合特異性の1つはJagged1に対してであり、他は任意の他の抗原に対してである。ある特定の実施態様では、二重特異性抗体は、Jagged1の2つの異なるエピトープに結合することができる。Jagged1を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために、二重特異性抗体を用いることもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0132】
多重特異性抗体の作製技術には、限定されずに、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組換え共発現(Milstein及びCuello、Nature 305: 537 (1983)、国際公開第93/08829号、及びTraunecker等、EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照されたい)、及び「ノブ−イン−ホール」操作(例えば、米国特許第5731168号を参照されたい)が含まれる。多重特異的抗体は、抗体Fcヘテロダイマー分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004A1号);2つ以上の抗体又は断片を架橋させること(例えば、米国特許第4676980号及びBrennan等、Science、229: 81 (1985)を参照されたい);二重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを用いること(例えば、Kostelny等、J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照されたい);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を用いること(例えば、Hollinger等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6444-6448 (1993)を参照されたい);及び単鎖Fv(sFv)ダイマーを用いること(例えば、Gruber等、J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい);及び、例えばTutt等、J.Immunol.147:60(1991)に記載されるような三重特異性抗体を調製することによって作製することもできる。
【0133】
「タコ抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0134】
本明細書において、抗体又は断片は、Jagged1並びに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」も含む。(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0135】
7.抗体変異体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を向上させることが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。そのような改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列中の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入及び/又はその置換が含まれる。その最終コンストラクトが所望の特徴、例えば抗原結合性を有する限り、最終コンストラクトに到達するために欠失、挿入及び置換の任意の組合せを作成することができる。
【0136】
a)置換、挿入及び欠失変異体
ある特定の実施態様では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換型突然変異誘発のための目的の部位には、HVR及びFRが含まれる。表1に「好ましい置換」の項目名の下に、保存的置換を示す。表1に「例示的な置換」の項目名の下に、及びアミノ酸側鎖クラスに関して下でさらに記載されるように、より実質的な変化が提供される。アミノ酸置換を目的の抗体に導入することができ、生成物を所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合性、低下した免疫原性又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0137】
アミノ酸は、共通する側鎖特性によって分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0138】
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0139】
置換型変異体の1つのタイプは、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域の残基を置換することを含む。一般に、さらなる研究のために選択される生じた変異体(複数可)は、親抗体と比較してある特定の生物学的特性(例えば、増加した親和性、低減した免疫原性)の改変(例えば、改善)を有し、及び/又は実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型変異体は親和性成熟抗体であり、それは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイをベースとした親和性成熟技術を用いて都合よく生成することができる。簡潔には、1つ又は複数のHVR残基を突然変異させ、変異体抗体をファージの上で提示し、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0140】
例えば、抗体親和性を改善するために、HVRに変更(例えば、置換)を加えることができる。そのような変更はHVRの「ホットスポット」で、すなわち、体細胞成熟過程において高頻度で突然変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照されたい)、及び/又は抗原と接触する残基で加えることができ、生じる変異体VH又はVLは結合親和性について試験される。二次ライブラリーから構築及び再選択することによる親和性成熟が、例えば、Methods in Molecular Biology 178:1−37(O'Brien等編、Human Press、Totowa、NJ、(2001))中のHoogenboom等に記載されている。親和性成熟の一部の実施態様では、様々な方法(例えば、変異性PCR、鎖シャッフリング又はオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発)のいずれかによる成熟のために選択される可変遺伝子に、多様性が導入される。二次ライブラリーを次に作製する。所望の親和性を有する抗体変異体を特定するために、次にライブラリーをスクリーニングする。多様性を導入する別の方法は、HVR指定手法を含み、この手法ではいくつかのHVR残基(例えば、一度に4−6残基)がランダム化される。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発又はモデル化を用いて、特異的に特定することができる。特に、CDR−H3及びCDR−L3がしばしば標的にされる。
【0141】
ある特定の実施態様では、置換、挿入又は欠失は、そのような変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ又は複数のHVRの中で起こることができる。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書で規定される保存的置換)を、HVRに加えることができる。そのような変更は、例えば、HVRの抗原接触残基の外にあってもよい。上で提供される変異体VH及びVL配列のある特定の実施態様では、各HVRは不変であるか、1つ以下、2つ又は3つのアミノ酸置換を含有する。
【0142】
突然変異誘発のために標的にすることができる抗体の特定の残基又は領域の特定のための有益な方法は、Cunningham及びWells(1989)Science、244:1081−1085に記載のように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基又は標的残基の群(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)が特定され、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうか判定するために中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。初期置換への機能的感受性を示しているアミノ酸位置に、さらなる置換を導入することができる。あるいは、又はさらに、抗体と抗原の間の接触点を特定するための、抗原抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換のための候補として標的にするか又は排除することができる。それらが所望の特性を有するかどうか判定するために、変異体をスクリーニングすることができる。
【0143】
アミノ酸配列の挿入には、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さのアミノ及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入型変異体には、抗体の血清中半減期を増加させる酵素(例えばADEPT)又はポリペプチドに対する抗体のN又はC末端への融合が含まれる。
【0144】
b)グリコシル化変異体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように変更される。抗体に対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が形成又は除去されるように、アミノ酸配列を変更することによって簡便に達成することができる。
【0145】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を変更することができる。哺乳動物細胞によって生成される天然抗体は、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合する、分枝状の二分岐オリゴ糖を一般に含む。例えば、Wright等、TIBTECH 15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GIcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」のGIcNAcに結合したフコースを含めることができる。一部の実施態様では、ある特定の改善された特性を有する抗体変異体を作製するために、本発明の抗体のオリゴ糖の改変を加えることができる。
【0146】
一実施態様では、Fc領域に結合する(直接的又は間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%又は20%から40%であってもよい。例えば国際公開第2008/077546号に記載される通り、フコースの量は、MALDI−TOF質量分析によって測定したときの、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計と比較した、Asn297の糖鎖中のフコースの平均量を計算することによって判定される。Asn297は、Fc領域の297位(Fc領域残基のEu番号付け)あたりに位置するアスパラギン残基を指す。しかし、抗体中の軽微な配列差異のために、Asn297は、297位から約±3アミノ酸上流又は下流に、すなわち294位から300位の間に位置することもできる。そのようなフコシル化変異体は、向上したADCC機能を有することができる。例えば、米国特許出願公開番号US2003/0157108(Presta、L.);US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。一部の実施態様では、N297G又はN297A突然変異を含むIgG1定常領域は、エフェクター機能を実質的に欠く。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関する刊行物の例には、以下のものが含まれる:US2003/0157108;国際公開第2000/61739号;国際公開第2001/29246号;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;国際公開第2003/085119号;国際公開第2003/084570号;国際公開第2005/035586号;国際公開第2005/035778号;国際公開第2005/053742号;国際公開第2002/031140号;Okazaki等、J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004);Yamane−Ohnuki等、Biotech.Bioeng.87:614(2004)。脱フコシル化抗体の生成が可能な細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka等、Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);米国特許出願番号US2003/0157108A1、Presta、L;及び国際公開第2004/056312A1号、Adams等、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki等、Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y.等、Biotechnol. Bioeng.、94(4):680-688 (2006);及び国際公開第2003/085107号を参照されたい)が含まれる。
【0147】
二分されたオリゴ糖を有する、例えば抗体のFc領域に結合する二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は、低減したフコシル化及び/又は向上したADCC機能を有することができる。そのような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean−Mairet等);米国特許第6602684号(Umana等);及びUS2005/0123546(Umana等)に記載されている。Fc領域に結合するオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も、提供される。そのような抗体変異体は、向上したCDC機能を有することができる。そのような抗体変異体は、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel等);国際公開第1998/58964号(Raju、S.);及び国際公開第1999/22764号(Raju、S.)に記載されている。
【0148】
c)Fc領域変異体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つ又は複数のアミノ酸改変を導入し、それによってFc領域変異体を生成することができる。Fc領域変異体は、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含むことができる。
【0149】
ある特定の実施態様では、本発明は、エフェクター機能の全てではなく一部を有する抗体変異体を企図し、このような抗体変異体であれば、抗体のインビボ半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能(例えば、補体及びADCC)が不要又は有害である適用のための望ましい候補となる。CDC及び/又はADCC活性の低減/消失を確認するために、インビトロ及び/又はインビボ細胞傷害性アッセイを実行することができる。例えば、抗体がFcγR結合を欠いている(したがって、ADCC活性を欠いている可能性がある)がFcRn結合能力を保持することを確実にするために、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行することができる。ADCCを介在する一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIだけを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464ページの表3で要約されている。目的の分子のADCC活性を調べるインビトロアッセイの非限定例は、米国特許第5500362号(例えば、Hellstrom, I.等、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照されたい)及びHellstrom, I等、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);第5821337号(Bruggemann, M.等、J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を採用することができる(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照されたい)。そのようなアッセイのための有益なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又はさらに、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes等、Proc. Nat’l Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)に開示されているものなどの動物モデルにおいてインビボで評価してもよい。抗体がC1qに結合することができず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイを実行することもできる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を調べるために、CDCアッセイを実行することができる(例えば、Gazzano-Santoro等、J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S.等、Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, M.S.及びM.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照されたい)。当該技術分野で公知の方法を用いて、FcRn結合及びインビボでのクリアランス/半減期判定を実施することもできる(例えば、Petkova, S.B.等、Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照されたい)。
【0150】
エフェクター機能の低減した抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6737056号)。そのようなFc突然変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297及び327の2つ以上の置換を有するFc突然変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。
【0151】
FcRへの結合が向上又は減少したある特定の抗体変異体が記載される。(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号及びShields等、J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい)。
【0152】
ある特定の実施態様では、抗体変異体は、ADCCを向上させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えばFc領域の298位、333位及び/又は334位(残基のEU番号付け)の置換を有するFc領域を含む。
【0153】
一部の実施態様では、例えば米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号及びIdusogie等、J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されているように、変更された(すなわち、向上又は減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす変更がFc領域に加えられる。
【0154】
半減期が増加した、及び胎児への母体IgGの移動を担う(Guyer等、J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim等、J. Immunol. 24:249 (1994))新生児Fc受容体(FcRn)への結合が向上した抗体が、US2005/0014934A1号(Hinton等)に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を向上させる1つ又は複数の置換をその中に有するFc領域を含む。そのようなFc変異体には、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の1つ又は複数の置換、例えばFc領域残基434の置換を有するものが含まれる(米国特許第7371826号)。
【0155】
Fc領域変異体の他の例に関する、Duncan&Winter、Nature 322:738−40(1988);米国特許第5648260号;米国特許第5624821号;及び国際公開第94/29351号も参照する。
【0156】
d)システイン操作抗体変異体
ある特定の実施態様では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されるシステイン操作抗体、例えば「thioMAb」を作製することが望ましいことがある。特定の実施態様では、置換される残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。本明細書にさらに記載されるように、それらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体のアクセス可能な部位に置かれ、抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー−薬物部分にコンジュゲートさせてイムノコンジュゲートを作製するために用いることができる。ある特定の実施態様では、以下の残基の任意の1つ又は複数をシステインで置換することができる:軽鎖のV205(カバット番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。例えば米国特許第7521541号に記載されるように、システイン操作抗体を生成することができる。
【0157】
e)抗体誘導体
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で公知であって直ちに利用できるさらなる非タンパク質部分を含有するように、さらに改変することができる。抗体の誘導体化のために適する部分には、限定されずに水溶性ポリマーが含まれる。
水溶性ポリマーの非限定例には、限定されずに、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダム共重合体)、及びデキストラン又はポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために製造上の利点を有することができる。ポリマーは任意の分子量であってもよく、分枝状であっても非分枝状であってもよい。抗体に付着するポリマーの数は異なってもよく、1を超える数のポリマーが付着する場合は、それらは同じか又は異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために用いられるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されずに、改善する抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が規定条件下の療法で用いられるかどうか、などを含む考慮事項に基づいて決定することができる。
【0158】
別の実施態様では、抗体と、照射への曝露によって選択的に加熱することができる非タンパク質部分のコンジュゲートが提供される。一実施態様では、非タンパク質部分は、カーボンナノチューブである(Kam等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。照射は任意の波長であってもよく、限定されずに、通常の細胞を害しないが、抗体−非タンパク質部分に隣接する細胞が死滅する温度まで非タンパク質部分を加熱する波長を含む。
【0159】
B.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を用いて生成することができる。一実施態様では、本明細書に記載される抗Jagged1抗体をコードする単離核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることができる。さらなる実施態様では、そのような核酸を含む1つ又は複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施態様では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような実施態様では、宿主細胞は、以下のものを含む(例えば、以下のもので形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一実施態様では、宿主細胞は真核生物、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様では、抗Jagged1抗体を作製する方法であって、上で提供されるような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を抗体の発現に適する条件下で培養すること、及び任意選択的に宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することを含む方法が提供される。
【0160】
抗Jagged1抗体の組換え生成のために、例えば上記のような抗体をコードする核酸を単離して、さらなるクローニング及び/又は宿主細胞での発現のために1つ又は複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手法を用いて(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に単離し、配列決定を行うことができる。
【0161】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現のために適する宿主細胞には、本明細書に記載される原核生物又は真核生物の細胞が含まれる。例えば、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が不要なときは、抗体を細菌で生成することができる。細菌での抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば米国特許第5648237号、第5789199号及び第5840523号を参照されたい。(大腸菌での抗体断片の発現を記載する、Charlton、Methods in Molecular Biology、248巻(B.K.C. Lo編、Humana Press、Totowa、NJ、2003)、p245-254も参照する)。発現の後、抗体を可溶性分画中の細菌細胞ペーストから単離することができ、さらに精製することができる。
【0162】
原核生物に加えて、そのグリコシル化経路が「ヒト化され」、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の生成をもたらす真菌類及び酵母株を含む、糸状菌又は酵母などの真核生物の微生物が、抗体をコードするベクターのために適するクローニング又は発現宿主である。Gerngross、Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)及びLi等、Nat.Biotech.24:210−215(2006)を参照されたい。
【0163】
グリコシル化抗体の発現のために適する宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために昆虫細胞と共に用いることができる、多数のバキュロウイルス株が同定された。
【0164】
植物細胞培養物を、宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5959177号、第6040498号、第6420548号、第7125978号及び第6417429号を参照されたい(トランスジェニック植物で抗体を生成するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)。
【0165】
脊椎動物細胞を、宿主として用いることもできる。例えば、懸濁液で成長するように適合させた哺乳動物細胞株が利用可能である。有益な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1株(COS−7);ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham等、J. Gen Virol. 36:59 (1977)に記載される、293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol. Reprod. 23:243-251 (1980)に記載されるTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳房腫瘍(MMT060562);例えば、Mather等、Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)に記載されるTRI細胞;MRC 5細胞;及びFS4細胞である。他の有益な哺乳動物の宿主細胞株には、DHFR
−CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生のために適するある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki及びWu、Methods in Molecular Biology、248巻(B.K.C. Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、p255−268(2003)を参照されたい。
【0166】
C.アッセイ
本明細書で提供される抗Jagged1抗体は、当該技術分野で公知の様々なアッセイによってそれらの物理的/化学的特性及び/又は生物学的活性について特定するか、スクリーニングするか又は特徴付けることができる。
【0167】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様では、本発明の抗体は、例えば、ELISA、ウェスタンブロットなどの公知の方法によって、その抗原結合活性について試験される。
【0168】
別の態様では、ヒト又はマウスのJagged1への結合に関して、抗体A、A−1、A−2又はA−1(S101T)と競合する抗体を特定するために、競合アッセイを用いることができる。ある特定の実施態様では、そのような競合抗体は、A、A−1、A−2又はA−1(S101T)が結合するのと同じエピトープ(例えば、線状又は立体配置的エピトープ)に結合する。
【0169】
抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Methods in Molecular Biology、66巻(Humana Press、Totowa、NJ)中のMorris(1996)“Epitope Mapping Protocols”で提供される。
【0170】
例示的な競合アッセイでは、固定化されたJagged1を、Jagged1に結合する第1の標識化抗体(例えば、A、A−1、A−2又はA−1(S101T))及びJagged1への結合に関して第1の抗体と競合するその能力について試験される第2の非標識化抗体を含む溶液中でインキュベートする。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在してもよい。コントロールとして、固定化されたJagged1を、第1の標識化抗体を含んでいるが第2の非標識化抗体を含まない溶液中でインキュベートする。Jagged1への第1の抗体の結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、過剰な未結合の抗体を除去し、固定化されたJagged1に結合している標識の量を測定する。固定化されたJagged1に結合している標識の量がコントロール試料に対して試験試料で実質的に低減されている場合は、そのことは、Jagged1への結合に関して第2の抗体が第1の抗体と競合していることを示す。Harlow及びLane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY)を参照されたい。
【0171】
2.活性アッセイ
一態様では、生物活性を有する、その抗Jagged1抗体を特定するためのアッセイが提供される。生物活性には、例えば、Notch1を通したJagged1誘導シグナル伝達の阻害を含めることができる。ある特定の他の実施態様では、本発明の抗体は、Jagged1誘導Notchシグナル伝達に応答性であるリポーター遺伝子の発現を阻害するその能力について試験される。非限定的な例示的アッセイは、実施例で提供される。ある特定の実施態様では、本発明の抗体は、そのような生物活性について試験される。インビボ及び/又はインビトロでそのような生物活性を有する抗体も、提供される。
【0172】
D.イムノコンジュゲート
本発明は、1つ又は複数の細胞傷害剤、例えば化学療法剤若しくは薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物起源のタンパク質毒素、酵素活性毒素、又はその断片)、又は放射性同位体にコンジュゲートされる本明細書の抗Jagged抗体を含むイムノコンジュゲートも提供する。
【0173】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、抗体が1つ又は複数の薬物、例えば、限定されずに、メイタンシノイド(米国特許第5208020号、第5416064号及び欧州特許EP0425235B1を参照されたい);モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのアウリスタチン(米国特許第5635483号及び第5780588号及び第7498298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5712374号、第5714586号、第5739116号、第5767285号、第5770701号、第5770710号、第5773001号及び第5877296号;Hinman等、Cancer Res. 53:3336-3342 (1993)及びLode等、Cancer Res. 58:2925-2928 (1998)を参照されたい);ダウノマイシン又はドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz等、Current Med. Chem. 13:477-523 (2006);Jeffrey等、Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006);Torgov等、Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005);Nagy等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000);Dubowchik等、Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002);King等、J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);及び米国特許第6630579号を参照されたい);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル及びオルタタキセルなどのタキサン;トリコテセン;並びにCC1065にコンジュゲートされる抗体−薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0174】
別の実施態様では、イムノコンジュゲートは、限定されずに、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンを含む、酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。
【0175】
別の実施態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載の抗体を含む。放射性コンジュゲートの生成のために、様々な放射性同位体が利用できる。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体が含まれる。放射性コンジュゲートを検出のために用いる場合は、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばTc99若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像化(磁気共鳴画像化、mriとしても知られる)のためのスピン標識、例えば、再度ヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン若しくは鉄を含むことができる。
【0176】
抗体と細胞傷害性剤のコンジュゲートは、様々な二官能基タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能基誘導体(ジメチルアジピミダートHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6−ジイソシアネートなど)及びビス活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)を用いて作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta等、Science 238:1098(1987)に記載のように調製することができる。炭素14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞傷害薬の放出を促進する「開裂可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸に対して不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari等、Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)を用いることができる。
【0177】
本明細書のイムノコンジュゲート又はADCは、限定されずに、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.、Rockford、IL.、U.S.Aから)架橋試薬、例えば、限定されずに、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC及びスルホ−SMPB及びSVSB(スクシンイミジル−(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)によって調製されるコンジュゲートを明示的に企図する。
【0178】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施態様では、本明細書で提供される抗Jagged1抗体のいずれも、生物学的試料中のJagged1の存在を検出するのに有益である。本明細書で用いる用語「検出する」は、定量的又は定性的検出を包含する。ある特定の実施態様では、生物学的試料は、がん性組織などの細胞又は組織を含む。
【0179】
一実施態様では、診断又は検出の方法で用いるための抗Jagged1抗体が提供される。さらなる態様では、生物学的試料中のJagged1の存在を検出する方法が提供される。ある特定の実施態様では、この方法は、Jagged1への抗Jagged1抗体の結合を許容する条件下で、本明細書に記載される抗Jagged1抗体と生物学的試料を接触させること、及び抗Jagged1抗体とJagged1との間で複合体が形成されるかどうか検出することを含む。そのような方法は、インビトロ又はインビボの方法であってもよい。一実施態様では、抗Jagged1抗体は、例えばJagged1が患者の選択のためのバイオマーカーである場合に、抗Jagged1抗体による療法に適格な対象を選択するために用いられる。
【0180】
本発明の抗体を用いて診断することができる例示的な障害には、がん、例えば、乳がん、肺がん、脳がん、子宮頸がん、結腸がん、肝がん、胆管がん、膵がん、皮膚がん、B細胞悪性腫瘍及びT細胞悪性腫瘍が含まれる。
【0181】
ある特定の実施態様では、標識化抗Jagged1抗体が提供される。標識には、限定されずに、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光性、発色性、高電子密度、化学発光及び放射性の標識)、並びに、例えば酵素反応又は分子相互作用を通して間接的に検出される酵素又はリガンドなどの部分が含まれる。例示的な標識には、限定されずに、放射性同位体
32P、
14C、
125I、
3H及び
131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、HRPなどの色素前駆体を酸化するために過酸化水素を採用する酵素に結合した複素環式オキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ又はミクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定したフリーラジカルなどが含まれる。
【0182】
F.薬学的製剤
本明細書に記載される抗Jagged1抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有するそのような抗体を、1つ又は複数の任意選択の薬学的に許容される担体(Remington's Pharmaceutical Sciences 16版、Osol, A.編(1980))と、凍結乾燥製剤又は水溶液の形で混合することによって調製される。薬学的に許容される担体は、採用される投薬量及び濃度でレシピエントに一般に無毒であり、限定されずに以下のものが含まれる:バッファー、例えばリン酸、クエン酸及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンザルコニウムクロライド;ベンゼトニウムクロライド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体には、間質性の薬物分散剤、例えば可溶型中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えばヒト可溶型PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、例えばrHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)がさらに含まれる。rHuPH20を含む有用なある特定の例示的なsHASEGP及び方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPはコンドロイチン分解酵素などの1つ又は複数の追加のグリコサミノグリカナーゼと組み合わされる。
【0183】
例示的な凍結乾燥された抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤には、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されるものが含まれ、後者製剤にはヒスチジン−酢酸バッファーが含まれる。
【0184】
本明細書の製剤は、治療中の特定の適応症のために必要に応じて1を超える有効成分、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的な活性を有するものを含有することもできる。例えば、細胞傷害性剤、例えば化学療法剤をさらに提供することが望ましいことがある。そのような有効成分は、好適には、意図した目的のために有効な量で組み合わされて存在する。
【0185】
有効成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルによって調製されるマイクロカプセルに、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョンの形で取り込むことができる。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16版、Osol,A.編(1980)に開示されている。
【0186】
徐放性調製物を調製することができる。徐放性調製物の適する例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、そのマトリックスは造形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形である。
【0187】
インビボ投与のために用いられる製剤は、一般に無菌である。無菌状態は、例えば滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成することができる。
【0188】
G.治療方法及び組成物
本明細書で提供される抗Jagged1抗体のいずれも、治療方法で用いることができる。
【0189】
一態様では、医薬としての使用のための抗Jagged1抗体が提供される。さらなる態様では、異常なNotchシグナル伝達と関連する疾患又は障害、例えばがんの治療における使用のための抗Jagged1抗体が提供される。ある特定の実施態様では、治療方法で用いるための抗Jagged1抗体が提供される。ある特定の実施態様では、本発明は、抗Jagged1抗体の有効量を個体に投与することを含むがんを有する個体を治療する方法で用いるための、抗Jagged1抗体を提供する。そのような一実施態様では、この方法は、例えば下記のように、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。そのような一実施態様では、この方法は、例えば下記のように、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。
【0190】
さらなる実施態様では、本発明は、肺がん増殖の阻害で用いるための抗Jagged1抗体を提供する。ある特定の実施態様では、本発明は、肺がん増殖の低減に有効な抗Jagged1抗体を個体に投与することを含む個体での肺がん増殖の低減方法で用いるための、抗Jagged1抗体を提供する。ある特定の実施態様では、本発明は、乳がん増殖の低減に有効な抗Jagged1抗体を個体に投与することを含む個体での乳がん増殖の低減方法で用いるための、抗Jagged1抗体を提供する。上記の実施態様のいずれかによる「個体」は、好ましくはヒトである。
【0191】
一部の実施態様では、抗Jagged1抗体は、アレルギー、喘息、自己免疫性疾患、杯細胞異形成(例えば、肺での)及び/又は過剰な粘液と関連する疾患の治療のために提供される。本明細書で提供される抗Jagged1抗体で治療することができる他のアレルギー性疾患には、限定されずに、アレルギー性鼻炎、アトピー皮膚炎、食物過敏性及びじんま疹;水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎を含む免疫介在性皮膚疾患;乾癬、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節炎を含む自己免疫性疾患;炎症性腸疾患(すなわち、潰瘍性大腸炎、クローン病);特発性間質性肺炎、杯細胞異形成と関連する疾患(例えば、喘息、COPD、嚢胞性線維症及びバレット食道)、嚢胞性線維症などの肺疾患、グルテン過敏性腸症及びホイップル病;好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎などの肺の免疫学的疾患;慢性閉塞性肺疾患、RSV感染症、ブドウ膜炎、強皮症、骨粗しょう症及びホジキンリンパ腫が含まれる。
【0192】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における抗Jagged1抗体の使用を可能にする。一実施態様では、医薬は、異常なNotchシグナル伝達と関連する疾患又は障害の治療のためのものである。一実施態様では、医薬は、がんの治療のためのものである。さらなる実施態様では、医薬は、がんを有する個体に医薬の有効量を投与することを含むがんを治療する方法で用いるためのものである。そのような一実施態様では、この方法は、例えば下記のように、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。上記実施態様のいずれによる「個体」も、ヒトであってもよい。
【0193】
さらなる態様では、本発明は、異常なNotchシグナル伝達と関連する疾患又は障害を治療する方法を提供する。一実施態様では、この方法は、そのような疾患又は障害を有する個体に抗Jagged1抗体の有効量を投与することを含む。一実施態様では、この方法は、がんを有する個体に抗Jagged1抗体の有効量を投与することを含む。そのような一実施態様では、この方法は、下記のように、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。そのような一実施態様では、この方法は、下記のように、少なくとも1つの追加の治療剤の有効量を個体に投与することをさらに含む。上記の実施態様のいずれかによる「個体」は、ヒトであってもよい。
【0194】
さらなる態様では、本発明は、個体でがん細胞増殖を阻害する方法を提供する。一実施態様では、この方法は、がん細胞増殖を阻害するために抗Jagged1抗体の有効量を個体に投与することを含む。一実施態様では、「個体」はヒトである。
【0195】
一部の実施態様では、本発明は、個体においてアレルギー、喘息、自己免疫性疾患、杯細胞異形成(例えば、肺での)及び/又は過剰な粘液と関連する疾患を治療する方法を提供する。一部の実施態様では、本発明は、アレルギー性鼻炎、アトピー皮膚炎、食物過敏性及びじんま疹;水疱性皮膚疾患、多形性紅斑及び接触性皮膚炎を含む免疫介在性皮膚疾患;乾癬、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節炎を含む自己免疫性疾患;炎症性腸疾患(すなわち、潰瘍性大腸炎、クローン病);特発性間質性肺炎、杯細胞異形成と関連する疾患(例えば、喘息、COPD、嚢胞性線維症及びバレット食道)、嚢胞性線維症などの肺疾患、グルテン過敏性腸症及びホイップル病;好酸球性肺炎、特発性肺線維症及び過敏性肺炎などの肺の免疫学的疾患;慢性閉塞性肺疾患、RSV感染症、ブドウ膜炎、強皮症、骨粗しょう症及び/又はホジキンリンパ腫を個体で治療する方法を提供する。一部の実施態様では、この方法は、本明細書で提供される抗Jagged1抗体の有効量を個体に投与することを含む。一部の実施態様では、「個体」はヒトである。
【0196】
さらなる態様では、本発明は、例えば上記の治療方法のいずれかで用いるための、本明細書で提供される抗Jagged1抗体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一実施態様では、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗Jagged1抗体のいずれか及び薬学的に許容される担体を含む。別の実施態様では、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗Jagged1抗体のいずれか及び例えば下記の少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
【0197】
本発明の抗体は、療法において単独で、又は他の薬剤と組み合わせて用いることができる。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と共投与することができる。ある特定の実施態様では、追加の治療剤は、細胞傷害性剤である。ある特定の実施態様では、追加の治療剤は、抗体である。
【0198】
上述のそのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じか又は別々の製剤に含まれる)及び別個の投与を包含し、この場合には、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤(複数可)の投与の前、同時及び/又は後に起こることができる。一実施態様では、抗Jagged1抗体の投与及び追加の治療剤の投与は、互いから約1カ月以内、又は約1、2若しくは3週以内、又は約1、2、3、4、5若しくは6日以内に起こる。本発明の抗体は、放射線療法と併用することもできる。
【0199】
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内及び鼻腔内、及び、局所治療のために所望の場合は病巣内投与を含む、任意の適する手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下の投与が含まれる。投与は、一部、投与が短期であるか又は長期であるかによって、任意の適する経路、例えば注射、例えば静脈内又は皮下注射によることができる。限定されずに様々な時点での単一又は複数の投与、ボーラス投与及びパルス注入を含む、様々な投与スケジュールが本明細書で企図される。
【0200】
本発明の抗体は、医学行動規範と一致した様式で製剤化、投薬及び投与されるだろう。この関係において考慮すべき因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画及び医療施術者に公知である他の因子が含まれる。抗体は、その必要はないが、問題の障害を予防又は治療するために現在用いられている1つ又は複数の薬剤と一緒に任意選択的に製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害又は治療のタイプ及び上述の他の因子に依存する。これらは本明細書に記載されるのと同じ投薬量及び投与経路で、又は本明細書に記載される投薬量の約1から99%で、又は適切であると経験的/臨床的に判定される任意の投薬量及び任意の経路によって一般に用いられる。
【0201】
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の適切な投薬量(単独で用いられるか又は1つ若しくは複数の他の追加の治療剤と併用されるとき)は、治療する疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗体が予防又は治療目的で投与されるのか、以前の療法、患者の病歴及び抗体への応答、並びに主治医の裁量に依存する。抗体は、好適には、単回で又は一連の治療にわたって患者に投与される。例えば、1回を超える別個の投与によるものであれ又は連続的注入によるものであれ、疾患のタイプ及び重症度によって、約1μg/kgから15mg/kg(例えば0.1mg/kg−10mg/kg)の抗体が患者への投与のための初期候補投薬量であってもよい。1つの一般的な日投薬量は、上で指摘した因子によって、約1μg/kgから100mg/kg以上の範囲内であってもよい。数日以上にわたる反復投与のためには、状態により、治療は病徴の所望の抑制が起こるまで一般に維持される。抗体の1つの例示的な投薬量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲内であろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はその任意の組合せ)の単回又は複数回の用量を患者に投与することができる。そのような用量は、断続的に、例えば毎週又は3週毎に投与することができる(例えば、患者が約2から約20用量、又は例えば約6用量の抗体を受けるように)。より高い初回負荷用量と、続く1回又は複数回のより低い用量を投与することができる。例示的な投薬レジメンは、約4mg/kgの初回負荷用量の投与、続いて抗体の約2mg/kgの毎週の維持量の投与を含む。しかし、他の投薬レジメンが利用可能なことがある。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易に監視される。
【0202】
抗Jagged1抗体の代わりに又はそれに加えて本発明のイムノコンジュゲートを用いて、上記の製剤又は治療方法のいずれかを実行することができることが理解される。
【0203】
H.製造品
本発明の別の態様では、上記の障害の治療、予防及び/又は診断のために有益な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器、及び容器の上に又はそれに関連して表示又は添付文書を含む。適する容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料で形成することができる。容器は、それ自体が有効であるか、又は状態を治療、予防及び/若しくは診断するために有効な別の組成物と組み合わされた組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で穿刺可能なストッパを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体である。表示又は添付文書は、組成物が選択された状態を治療するために用いられることを示す。さらに、製造品は、(a)本発明の抗体を含む組成物を含有する第1の容器;及び(b)さらなる細胞傷害性の、さもなければ治療用の薬剤を含む組成物を含有する第2の容器を含むことができる。本発明のこの実施態様で、製造品は、特定の状態を治療するために組成物を用いることができることを示す添付文書をさらに含むことができる。あるいは、又はさらに、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液及びデキストローズ溶液を含む第2の(又は第3の)容器をさらに含むことができる。それは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む、商業的及びユーザーの見地から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0204】
上記の製造品のいずれかは、抗Jagged1抗体の代わりに又はそれに加えて、本発明のイムノコンジュゲートを含むことができることが理解される。
【実施例】
【0205】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上に提供される概説を考慮して、様々な他の実施態様を実施できることが理解される。
【0206】
実施例1 抗Jagged抗体の生成
a.抗Jagged1抗体を特定するライブラリー選別及びスクリーニング
M13バクテリオファージ粒子の表面に提示されるFab断片を選別するために、ヒトIgGレパートリーの天然の多様性を模倣する、選択された相補性決定領域に合成による多様性を有するヒトファージ抗体ライブラリーを用いた。ライブラリー選別のための抗原として、ヒトJag1−DSL−EGF1−4(配列番号6)又はヒトJag2−DSL−EGF1−4(配列番号8)を用いた。Nunc96穴Maxisorpイムノプレートを標的抗原(10μg/ml)により4℃で一晩コーティングし、ファージブロッキングバッファーPBST(リン酸緩衝食塩水(PBS)及び1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)及び0.05%(v/v)Tween−20)により室温で1時間ブロックした。抗体ファージライブラリーVH(例えば、Lee等、J. Immunol. Meth. 284:119-132 (2004)を参照されたい)及びVH/VL(Liang等、JMB. 366: 815-829 (2007) を参照されたい)を抗原プレートに別々に加え、室温で一晩インキュベートした。翌日、抗原でコーティングしたプレートをPBT(0.05% Tween−20を含むPBS)で10回洗浄し、結合したファージを50mM HCl及び500mM NaClで30分間溶出し、等量の1Mトリス塩基(pH7.5)で中和した。回収したファージを、大腸菌XL−1ブルー細胞で増幅した。以降の選択ラウンドの間に、抗原でコーティングしたプレートとの抗体ファージのインキュベーションを2−3時間に短縮し、プレート洗浄のストリンジェンシーは徐々に増加させた。
【0207】
4ラウンドのパニングの後、有意な濃縮が観察された。それらがヒトJagged1に、又はJagged2に特異的に結合したかどうか判定するために、VH及びVH/VLライブラリー選別から96個のクローンを各々選び出した。これらのクローンの可変領域をPCRで配列決定を行って、ユニーク配列クローンを特定した。スポット競合ELISAを用いて、ファージ抗体の親和性をランク付けした。競合的ファージ結合ELISAを用いて、ファージ抗体IC50値をさらに判定した。ヒトJagged1(Jagged2でなく)、Jagged2(Jagged1でなく)又はJagged1とJagged2の両方に特異的に結合する特異ファージ抗体を選択して、インビトロ細胞アッセイでの評価のために再び完全長IgGの形式にした。
【0208】
個々のクローンのV
L及びV
H領域をヒトカッパ定常ドメインを含有するpRK哺乳動物細胞発現ベクター(pRK.LPG3.HumanKappa)及び完全長ヒトIgG1定常ドメインをコードする発現ベクター(pRK.LPG4.HumanHC)にそれぞれクローニングすることによって、目的のクローンを再びIgGの形式にした(Shields等、J Biol Chem 2000; 276: 6591-6604)。次に抗体を哺乳動物のCHO細胞で一時的に発現させ、プロテインAカラムで精製した。
【0209】
b.V
H又はV
HV
Lライブラリーに由来するクローンの親和性向上のためのライブラリーの構築
ファージミドpV0350−2bに由来するファージミドpW0703(Lee等、J. Mol. Biol 340、1073-1093 (2004)、全てのCDR−L3位置に終止コドン(TAA)を含有し、M13バクテリオファージの表面に一価のFabを提示する)が、親和性成熟のためのV
Hライブラリーからの目的のクローンの重鎖可変ドメイン(V
H)を移植するためのライブラリー鋳型としての役目を果たした。親和性成熟のために、ハード及びソフトの両方のランダム化戦略を用いた。ハードなランダム化のために、天然のヒト抗体を模倣するように設計されたアミノ酸を用いて、3つの軽鎖CDRの選択された位置を有する1つの軽鎖ライブラリーをランダム化し、設計されたDNA縮重はLee等(J. Mol. Biol 340、1073-1093 (2004))に記載された通りであった。選択された位置でおよそ50%の突然変異率を導入したソフトなランダム化状態を達成するために、野生型ヌクレオチドを好む塩基の70−10−10−10混合物で変異原性DNAを合成した(Gallop等、Journal of Medicinal Chemistry 37:1233-1251 (1994))。ソフトなランダム化のために、CDR−L3の91−96位、CDR−H1の30−33、35位、CDR−H2の50、52、53−54及び56位、CDR−H3の95−98位の残基を標的にし;CDRループの3つの異なる組合せ、H1/L3、H2/L3及びH3/L3をランダム化のために選択した。
【0210】
V
HV
Lライブラリーに由来したクローンについては、各CDRに4つの終止コドン(TAA)を含有し、M13バクテリオファージの表面に一価のFabを提示するファージミドが個々に生成され、親和性成熟ライブラリーの構築のためのクンケル突然変異誘発のための鋳型としての役目を果たした。CDR−L3の多様性が未処置ライブラリーに構築されたので、V
HV
Lライブラリーに由来するクローンのためにソフトなランダム化戦略だけを用いた。ソフトなランダム化状態を達成するために、CDR−L1の28−31位、CDR−L2の50、53−55位、CDR−L3の91−96位、CDR−H1の30−35位、CDR−H2の50−56位、CDR−H3の95−100位の残基を標的にし;CDRループの4つの異なる組合せ、H1/L3
*、H2/L3
*及びH3/L3
*、及びL1/L2/L3
*(ここで、
*は鋳型上の終止コドンの位置を表す)をランダム化のために選択した。
【0211】
c.親和性向上を起こすファージ選別戦略
親和性向上選択のために、限界試薬条件下でJag1又はJag2抗原を先ずビオチン化した。ファージライブラリーを、1ラウンドのプレート選別と、ストリンジェンシーを増加させた5ラウンドの溶液選別にかけた。プレート選別の最初のラウンドのために、10μg/mlの抗原を先ずMaxisorpプレートの上にコーティングし、ブロッキングバッファー(PBS中に1%BSA及び0.05%Tween20)で前ブロックした。ブロッキングバッファー中の3O.D./mlのファージ投入量を、抗原プレートにインキュベートした。ウェルを、PBS−0.05%Tween20で10回洗浄した。結合したファージを150μl/ウェルの50mM HCl、500mM KClで30分間溶出し、その後50μl/ウェルの1MトリスpH8によって中和し、滴定して、次のラウンドために増殖させた。以降のラウンドのために、溶液相でファージライブラリーのパニングを実行したが、ここでは、ファージライブラリーを、1%Superblock(Pierce Biotechnology)及び0.05%Tween20を含有する100μlのバッファー中の100nMのビオチン化標的タンパク質(濃度は親のクローンファージのIC50値に基づく)と室温で2時間インキュベートした。混合液を1%Superblockでさらに10倍に希釈し、弱く振盪させながら室温で30分間、100μl/ウェルをニュートラアビジンでコーティングしたウェル(10μg/ml)に加えた。バックグラウンド結合を判定するために、ファージを含有するコントロールウェルをニュートラアビジンでコーティングしたプレートの上で捕捉した。最初のラウンドのために記載したように、結合したファージを次に洗浄し、溶出し、増殖させた。さらなる5ラウンドの溶液選別を、選択ストリンジェンシーを増加させながら実行した。その最初の数ラウンドは、ビオチン化標的タンパク質濃度を100nMから0.1nMに低下させることによる会合速度選択のためであり、最後の2ラウンドは、室温でより弱い結合体を競合から外すために過剰量の非ビオチン化標的タンパク質(300−1000倍より多い)を加えることによる解離速度選択のためである。
【0212】
d.ハイスループット親和性スクリーニングELISA(単一スポット競合)
コロニーを、第6ラウンドのスクリーニングから選び出した。96ウェルプレート(Falcon)において、50μg/mlカルベニシリン及び1×10
10/mlのM13KO7を含む150μl/ウェルの2YT培地で、コロニーを37℃で一晩増殖させた。同じプレートから、XL−1感染親ファージのコロニーを、コントロールとして選び出した。96ウェルNunc Maxisorpプレートを、100μl/ウェルのPBS中のJag1又はJag2(0.5μg/ml)により4℃で一晩コーティングした。150μlのPBS20中の1%BSA及び0.05%Tween20で、プレートを1時間ブロックした。
【0213】
ファージ上清の35μlを、5nMJag1又はJag2の有り無しのELISA(酵素結合免疫吸着検定法)バッファー(0.5%BSA、0.05%Tween20を含むPBS)で75μlに希釈し、Fプレート(NUNC)に室温で1時間インキュベートさせた。混合液の95μlを、抗原でコーティングしたプレートに並べて移した。プレートを15分間静かに振盪させ、PBS−0.05%Tween20で10回洗浄した。ELISAバッファー(1:2500)中のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートした抗M13抗体を加え、室温で30分間インキュベートすることによって、結合を数量化した。プレートを、PBS−0.05%Tween20で10回洗浄した。次に、100μl/ウェルのペルオキシダーゼ基質をウェルに加え、室温で5分間インキュベートした。各ウェルに100μlの0.1Mリン酸(H
3PO
4)を加えることによって反応を停止し、室温で5分間インキュベートさせた。各ウェルで黄色のO.D.(光学濃度)を標準のELISAプレートリーダーを用いて450nmで判定した。親のファージのウェル(100%)のOD
450nmの低減(%)との比較では、OD
450nmの低減(%)が50%未満のクローンを配列分析のために選び出した。それぞれの親のクローンと比較したJag1又はJag2に対する結合親和性(ファージIC50)を判定するために、ファージ調製のために特異なクローンを選択した。次に、抗体産生及びさらなるBIAcore結合動態学的分析及び他のインビトロ又はインビボアッセイのために、最も親和性が向上したクローンを再びヒトIgG1の形式にした。
【0214】
さらなるスクリーニングラウンドは、ELISAで判定したときに、Jaggedファミリーメンバーの1つだけに特異的な抗体を特定した。抗体Aは、ヒト及びマウスのJagged1に結合したが、Jagged2に結合しなかった(
図8;配列番号9に示す重鎖可変領域配列、配列番号10に示す軽鎖可変領域配列)。反対に、抗体B(抗体B−3の親抗体)はヒト及びマウスのJagged2に結合したが、Jagged1に結合しなかった(
図8)。C−1は、Jagged1とJagged2の両方に結合し、コントロールとしての役目を果たした。抗体C−1の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、
図4に示す。
【0215】
実施例2 抗体結合親和性及びエピトープマッピング
BIAcore(商標)−3000機器を用いる表面プラズモン共鳴(SRP)によって、抗Jagged1ファージ抗体の結合親和性を測定した。およそ150反応単位(RU)を達成するために、CM5センサーチップにコーティングされたマウス抗ヒトIgGによって、抗Jagged1/2ファージヒトIgGを捕捉した。反応速度論的測定のために、ヒト又はマウスJag1/2DSL_EGF1−4の二倍段階希釈(1.95nM−250nM)を、30ml/分の流量で25℃のPBTバッファー(0.05%Tween20を含むPBS)に注入した。簡単な1対1のLangmuir結合モデル(BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いることによって、会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を計算した。平衡解離定数(k
d)は、比k
off/k
onとして計算した。
【0216】
表2は、精製されたヒトJagged1、ヒトJagged2及びマウスJagged2への、抗体A、A−1、A−2、B及びB−3の結合の結合定数を要約する。親抗体Aは、ヒト及びマウスのJagged1に特異的に結合した。親和性成熟抗体A−1及びA−2は、ヒト及びマウス両方のJagged1に高い親和性で結合した。抗体A、A−1及びA−2は、ヒト、マウスのJagged2に結合しなかった。反対に、抗体B及びB−3は、ヒト、マウスのJagged1に結合しなかった。B−3は、ヒト及びマウスのJagged2に特異的に結合した。
【0217】
抗体Aの重鎖及び軽鎖可変領域配列は、配列番号9及び10にそれぞれ示す。抗体A−1の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、配列番号17及び18にそれぞれ示す。抗体A−2の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、配列番号25及び26にそれぞれ示す。抗体B−3の重鎖及び軽鎖可変領域配列は、配列番号41及び42にそれぞれ示す。抗体Bの重鎖及び軽鎖可変領域配列は、
図4に示す。
【0218】
実施例3 抗Jaggedアンタゴニスト抗体は、インビトロでJagged1誘導シグナル伝達を阻害する
抗Jagged抗体がJagged誘導Notchシグナル伝達のアンタゴニストとして作用することができるかどうか判定するために、基本的にWu等、Nature 464、1052-1057(2010年4月15日)に記載される通りに、共培養実験を実施した。NotchリガンドとしてJagged1を発現するように操作されたNIH−3T3細胞を、Notch1を安定して発現し、Notch応答性TP−1(12XCSL)ホタルルシフェラーゼリポーター、及び構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼリポーター(pRL−CMV、Promega)を発現するように一時的にトランスフェクトされたNIH 3T3細胞と共培養した。共培養で、強力なNotchリポーターシグナル(ホタルルシフェラーゼ)が観察された(
図12、J1誘導ポジティブコントロール)。γ−セクレターゼ阻害剤を共培養に加えたら、リポーター発現がバックグラウンドレベルにまで低減され、これから、リポーター構築物のNotch依存的発現が実証された。データ示さず。
【0219】
漸増量(0.016−50μg/ml)の抗Jagged抗体A−2(それぞれ配列番号25及び26の重鎖及び軽鎖可変領域配列)又はB−3(それぞれ配列番号41及び42の重鎖及び軽鎖可変領域配列)の添加は、リポーター発現の用量依存的阻害をもたらした(
図9)。シグナル伝達はJagged1(
図9A、暗灰色のカラム)又はJagged2(
図9B、明灰色のカラム)によって誘導され、阻害は上記のように判定した。コントロールには、リガンドで刺激せず、抗体で処置しなかった培養(
図9A及びB、無処置)、リガンドで刺激しなかったもの(
図9A及びB、刺激なし)、5−10μg/mlアイソタイプコントロール抗体で処置したもの(
図9A及びB、agD)、リガンドで刺激したが抗体で処置しなかったもの(
図9A及びB、Stim/ABなし)、5μMのガンマ−セクレターゼ阻害剤DAPT又はDMSOのDAPTビヒクルコントロールが含まれた。
【0220】
抗体A−2は、Jagged1誘導シグナル伝達を用量依存的に阻害したが、Jagged2誘導シグナル伝達は阻害しなかった(
図9A)。Jagged1阻害に関してのA−2のIC
50は2−10μg/mlであったが、Jagged2阻害は、50μg/mlの最高濃度でさえほとんど又は全く観察されなかった。これらの結果は、抗体A−2がJagged1選択的アンタゴニストであること、すなわち、抗体A−2はJagged1介在性シグナル伝達を阻害するがJagged2介在性シグナル伝達を阻害しないことを実証する。対照的に、抗体B−3は試験した最低濃度でJagged2誘導シグナル伝達を強力に阻害したが、試験した最高濃度でJagged1誘導シグナル伝達を阻害せず、これによって、B−3がJagged1選択的アンタゴニストであることが立証された(
図9B)。
【0221】
実施例4 体重に及ぼす抗Jagged抗体治療の影響
上記のように、ガンマ−セクレターゼ阻害剤、及び複数のNotch受容体の他の阻害剤は体重減少及び腸管杯細胞異形成を引き起こし、それは臨床投与のために望ましくない。本明細書に記載される抗体が体重及び腸の健康にどのように影響するかを判定するために、マウスに、抗Jagged1抗体A−2(5−20mpk;それぞれ配列番号25及び26の重鎖及び軽鎖可変領域配列)、抗Jagged2抗体B−3(5−20mpk;それぞれ配列番号41及び42の重鎖及び軽鎖可変領域配列)、抗体A−2及びB−3を一緒に(それぞれ5mpk)、Jagged1とJagged2の両方に結合する抗Jagged1/2抗体(C−1;1kgマウス体重につき5−10mgの抗体(mpk);
図4に示す重鎖及び軽鎖可変領域配列)、又はアイソタイプコントロール抗gD抗体(20mpk)を1週間につき2回投薬した。各投薬の総抗体濃度を20mpkにするために、アイソタイプコントロール抗体も用いた。抗体の最初の投与の前に各マウスの全体重を判定し、試験の12日目まで監視した。平均体重変化を
図10に、開始時体重の百分率でグラフに示す。抗Jagged1/2抗体C−1又はJagged1特異的抗体A−2とJagged2特異的抗体B−3の組合せを用いる、Jagged1及びJagged2の二重阻害は、急速で実質的な体重減少を引き起こした(
図10A)。4日目までに、抗Jagged1/2抗体C−1を投与された一部のマウスはそれらの体重の5%を超えて体重を失っており、それは7日目までに体重のほぼ8−10%の減少にまで進行した(
図10A)。A−2とBー3の両方を投与されたマウスも速やかに体重が減り、一部の場合には11日目までに最高17%減った(
図10A)。対照的に、5又は20mpkのいずれにおいても、試験期間にわたってJagged1特異的抗体又はJagged2特異的抗体のいずれも単独では体重減少を引き起こさなかった(
図10A)。抗Jagged1抗体と抗Jagged2抗体の組合せによる治療は、食物摂取の減少(
図10B)をもたらし、それは体重の観察された低下(
図10A)と相関し、食物摂取の減少が相関した体重低下を部分的又は全体的に説明し得ることを示唆した。
【0222】
実施例5 抗Jagged1アンタゴニスト抗体は、ヒト肺がん細胞増殖をインビボで阻害する
Harlan無胸腺ヌードマウスに、Calu−6細胞、ヒト非小細胞肺がん株を皮下接種した。腫瘍体積がおよそ200立方mmに到達した後、マウスに、20mpkの抗gDアイソタイプコントロール抗体(n=10)又は抗Jagged1抗体A−2(n=10;それぞれ配列番号25及び26の重鎖及び軽鎖可変領域配列)のいずれかを1週間につき2回(0、4、7、11、14及び18日目)、腹腔内(IP)に注射した。さらに19日間、各マウスでの腫瘍体積をノギスで測定した。試験期間中、各マウスの全体重を監視した。
【0223】
抗Jagged1で治療したマウスの腫瘍は、コントロール群での腫瘍と比較して腫瘍体積の有意な低下を示した(
図11A)。抗Jagged1抗体による治療の効果は、治療から7日目の早い時期に検出することができた(
図11A)。18日目に、抗Jagged1抗体を投与されたマウスの平均腫瘍体積は、およそ500mm
3に到達したが、コントロール動物の平均腫瘍体積は18日目におよそ750mm
3に到達した。治療群とコントロール群の間で、体重の有意な変化は観察されなかった(
図11B)。
【0224】
実施例6 抗Jagged1及び抗Jagged2抗体は、ヒト乳がん細胞増殖をインビボで阻害する
C.B−17 SCID.bgマウスに対して、MDA−MD−468細胞、ヒト基底乳がん系を乳房の脂肪パッドに接種した。腫瘍体積がおよそ200立方mmに到達した後、マウスに、IPによる30mpkの抗gDアイソタイプコントロール抗体(ヒトIgG1アイソタイプ)、抗ブタクサアイソタイプコントロール抗体(マウスIgG2aアイソタイプ)、ヒトIgG1骨格の抗Jagged1抗体A−2(それぞれ配列番号25及び26の重鎖及び軽鎖可変領域配列)、マウスIgG2a骨格の抗Jagged1抗体A−2、又はヒトIgG1骨格の抗Jagged2抗体B−3(それぞれ配列番号41及び42の重鎖及び軽鎖可変領域配列)のいずれかを、0、4、7、12、15、18、22、25、29、32、36、43、50及び57日目に投薬した。腫瘍体積(y軸)は、最初の注射から60日間ノギスで測定した。各群(1群につきn=9)の腫瘍体積を、線形混合効果モデルを用いてプロットした(
図12A)。各群の各マウスの腫瘍体積は、
図12Bに表す。
【0225】
実施例7: 抗Jagged1抗体は、重鎖で切断される
重鎖及び軽鎖の完全性について、抗体A(それぞれ配列番号9及び10の重鎖及び軽鎖可変領域配列)、A−1(それぞれ配列番号17及び18の重鎖及び軽鎖可変領域配列)及びA−2(それぞれ配列番号25及び26の重鎖及び軽鎖可変領域配列)をSDS−PAGE及び質量分析によって分析した。SDS−PAGE分析のために、10mM DTTの非存在及び存在下で、各抗体試料を2×トリス−グリシンSDS試料バッファー(Novex LC2676)と1:1のv/v比で混合した。試料は95℃で5分間加熱し、各試料の2μgをNovex 4−20%SDS−PAGE、1.0mmゲル(Novex EC6025)に加えた。10μLのMark12分子量標準(Invitrogen 100006637)も、ゲルに加えた。追跡色素がゲルの底に到達するまで、一定の250Vにおいて1×トリス−グリシンSDSランニングバッファー(Invitrogen LC2675−5)で電気泳動を実行した。Coommassieをベースとした染色法(Expedeon InstantBlue #ISB1L)で、ゲルを次に染色した。
【0226】
質量分析のために、PBSで各抗体を1mg/mLの最終濃度に希釈した。1:10のv/vの1.0Mトリス、pH8.0の添加により、抗体のpHを8.0に高くした。抗体を還元するために、溶液に10mMの最終濃度までのDTTを加えた。次に、試料を37℃で15分間加熱した。次に、Agilent 1200 HPLCシステムを用いて、80℃に加熱したPLRP−S 1000Å、8μm、2.1×50mmカラム(Agilent、PL1912−1802)に試料を注入し、続いてAgilent 6210 TOF LC/MSシステムでのエレクトロスプレーイオン化にかけた。
【0227】
それらの分析の結果を、
図13に示す。SDS−PAGE分析(
図13A)は、各々の抗体で、重鎖(HC)の一部が切断されることを明らかにした。インタクトなHC及び軽鎖(LC)並びにHCのカルボキシ(C)末端及びアミノ(N)末端切断断片に対応するバンドを、ゲルの右側にマークする。抗体A−1の代表的質量分析を、
図13Bに示す。
図13CのHCアミノ酸配列に図示するように、この分析は、切断部位がCDR3のHCアミノ酸G100とS101(カバット番号付けによるG96及びS97に対応する連続番号付け)の間にあることを示し、矢印は切断位置を表わす。同様の分析は、これらの抗体の全ての試験調製物でHC切断が起こったこと(2つの異なる細胞型CHO及び293での発現の後を含む)、及び切断が抗体Fc領域のタイプ(ヒトIgG1又はマウスIgG2a)とは無関係に起こったことを明らかにした。
【0228】
抗Jagged1抗体のSDS−PAGEゲルは、実質的に上記の通りに実行した。クマシーに基づく染色法で染色するのではなく、XCellブロットモジュール(Invitrogen EI9051)を定常の0.35Aで用いてPVDF膜(Invitrogen LC2002)に抗体を移した。膜を、クマシーブルーR−250で染色した。Niall、1973、Meth.Enzymol.27:942−1010に記載される配列決定原理によってApplied Biosystems Prociseシーケンサー494を用いて、膜の上の試料をN末端配列分析にかけた。
【0229】
配列決定分析の結果を、
図14に示す。この方法によって、切断部位が、HC配列のG100とS101(カバット番号付けによるG96及びS97に対応する連続番号付け)の間の、質量分析結果から予測された切断部位と同じであることが確認された。
【0230】
抗Jagged1抗体A、A−1及びA−2の重鎖切断は、予想外だった。切断部位を囲むアミノ酸配列の分析では、公知のプロテアーゼ切断部位が特定されなかった。切断機構は不明であり、抗体の配列から容易に判別できない。
【0231】
実施例8: 重鎖S101の突然変異は、抗Jagged1抗体重鎖の切断を低減する
抗Jagged1抗体の観察された切断が予想外であり、その機構が不明であったので、抗体配列への変更が、抗体の親和性及び有効性を保持しながら切断を阻止できるかどうかわからなかった。さらに、切断を阻止するために抗体配列のどの位置(複数可)を変更すべきであるかわからなかった。重鎖配列を変更することによって抗体切断を阻止できるかどうか判定するために、重鎖のS101位(カバット番号付けによるS97に対応する、配列番号17の重鎖可変領域配列の連続番号付け)に一連のアミノ酸変更を加えた。抗体は哺乳動物細胞で発現させ、標準手順によって精製した。実施例7に記載の通り、切断はSDS−PAGEによって分析した。結果を、
図15に示す。S101位のアミノ酸変化はHC切断を有意に低減又は消失させたが、S101H突然変異で多少の切断が検出された(
図15、レーン5)。これらの結果は、実施例7に記載されている通りに実施した質量分析によって確認された。
【0232】
精製されたJag1細胞外ドメインタンパク質断片への結合に及ぼす変化の効果を判定するために、突然変異体A−1抗体結合親和性を、BIAcoreを用いて測定した。表3は、突然変異体A−1抗体の各々の断片化及びJagged1結合親和性の要約を示す。
【0233】
表3に示すように、S101Hを除いて、101位のアミノ酸残基の変更は、検出不可能なレベルにまで切断を低減した。さらに、切断機構が未知であったので、100位の変更、G100Aも試験した。G100A突然変異体は、なお切断された。表3を参照されたい。驚くべきことに、突然変異がHVR−H3に加えられた場合にも、S101突然変異体抗体はJagged1に結合する能力を保持した。
【0234】
実施例9: 抗Jagged1抗体重鎖の切断に及ぼす温度及び凍結融解循環の影響
抗Jagged1抗体切断が温度上昇下でのインキュベーションによって増加するかどうか調べるために、抗Jagged1抗体A−1(それぞれ配列番号17及び18の重鎖及び軽鎖可変領域配列)及びA−2(それぞれ配列番号25及び26の重鎖及び軽鎖可変領域配列)並びにアイソタイプコントロール抗体(抗Jagged1でない)の様々な独立した調製物を、70℃又は95℃で10分間インキュベートした。切断の程度は、標準のSDS−PAGE及びタンパク質染色を用いて調べた。結果を、
図16に示す。抗Jagged1抗体調製物の各々は70℃で切断されたが、コントロール抗体は切断されなかった(
図16A)。表(
図16B)に要約されているように、抗Jagged1切断の程度は、70℃に対し95℃でのインキュベーションによって有意に又は一貫して変化することはなかった。
【0235】
切断が抗Jagged1抗体調製物の凍結融解循環からもたらされたかどうか調べるために、抗体A−1(それぞれ配列番号17及び18の重鎖及び軽鎖可変領域配列)を−80℃での複数回の凍結と続く解凍に供した。示した通り非還元(−DTT)又は還元(+DTT)条件下で、各試料の2μgをSDS−PAGE及びタンパク質染色によって次に分析した。染色したゲルはBiorad GelDoc Easy Imager機器を用いて画像化し、Biorad Image Labソフトウェアを用いて濃度測定分析を実施した。その実験の結果を、
図17に示す。F/T1は元の試料を指し、増加する数字は凍結融解サイクルの追加ラウンド数を示す。各サイクルについて、A−1抗体を−80℃で凍結させ、次に室温で解凍した。SDS−PAGEのために分取した。凍結融解をさらに2回、合計3凍結融解サイクル繰り返し、各融解工程の後に分取した。表(
図17B)は、各条件下の切断の百分率を要約する。凍結融解のラウンドを追加しても、切断の百分率にほとんど影響しないことを、この実験は明らかにした。
【0236】
実施例10: インビトロでのA−1及びA−1(S101T)のJagged1ブロッキング活性
A−1(それぞれ配列番号17及び18の重鎖及び軽鎖可変領域配列)及びA−1(S101T)(それぞれ配列番号33及び34の重鎖及び軽鎖可変領域配列)のJag1ブロッキング活性を測定するために、Jag1誘導Notchリポーター活性のインビトロ共培養アッセイを実施した。トランスフェクション効率の調整のために、高レベルのNotch2を発現するU87MG細胞に、Notch応答性TP−1(12XCSL)ホタル(FF)ルシフェラーゼリポーター、及び構成的に発現されるウミシイタケルシフェラーゼリポーター(pRL−CMV、Promega)をコトランスフェクトした。Wu等、2010、Nature 464:1052−1057を参照されたい。トランスフェクションの6時間後に、抗Jagged1抗体A−1若しくはA−1(S101T)、アイソタイプコントロール抗体、5μMDAPT(Calbiochem)又はDMSOビヒクルコントロールを、リガンド発現細胞(ヒトJag1又は無リガンドコントロールを安定してトランスフェクトしたNIH−3T3細胞)と共に加えた。20時間の共培養(Promega、Dual Glo Luciferase)の後に、ルシフェラーゼ活性を測定した。一般的に、各条件について4反復を分析し、値を相対的ルシフェラーゼ単位(ウミシイタケシグナルで割ったホタルシグナル)として表し、抗ブタクサコントロールあたりのJag1誘導活性の百分率としてグラフ表示した。
【0237】
その実験の結果を、
図18に示す。標準の方法によりFF及びウミシイタケのルシフェラーゼを測定し(それぞれ、
図18B及びC)、FF対ウミシイタケのルシフェラーゼ比をJag1誘導Notch活性の正規化測定値としてグラフ表示した(
図18A)。結果は、A−1及びA−1(S101T)のいずれも、Jag1誘導Notchシグナル伝達を用量依存的に阻害することを示す。
図18A及びBを参照されたい。したがって、A−1(S101T)は、親抗体A−1の抗Jagged1ブロッキング活性を保持する。
【0238】
実施例11: インビボでのA−1及びA−1(S101T)のJagged1ブロッキング活性
インビボでの抗Jagged1抗体のJagged1ブロッキング活性を調べるために、コントロール又は抗Jagged1抗体をマウスに投薬した後に、マウス肺細気管支上皮のクラブ及び繊毛細胞の組成を測定した。0日目に、野生型の8週齢BALB/c雌マウス(1群につき3匹のマウス)に以下の通り投薬した(細気管支上皮を感作して、抗Jagged1活性のはっきりと測定可能な効果を明らかにするために、全ての群は抗Jagged2抗体(B−3)を含有していた):
1.コントロール1×−アイソタイプコントロール(1kgマウス体重につき15mgの抗体)+抗Jag2B−3(15mg/kg;それぞれ配列番号41及び42の重鎖及び軽鎖可変領域配列)
2.A−1 1×−抗Jag1 A−1(15mg/kg;それぞれ配列番号17及び18の重鎖及び軽鎖可変領域配列)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
3.A−1 .5×−抗Jag1 A−1(7.5mg/kg)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
4.A−1 .25×−抗Jag1 A−1(3.75mg/kg)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
5.A−1−S101T 2×−抗Jag1 A−1(S101T)(30mg/kg;それぞれ配列番号33及び34の重鎖及び軽鎖可変領域配列)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
6.A−1−S101T 1×−抗Jag1 A−1(S101T)(15mg/kg)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
7.A−1−S101T .5×−抗Jag1 A−1(S101T)(7.5mg/kg)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
8.A−1−S101T .25×−抗Jag1 A−1(S101T)(3.75mg/kg)+抗Jag2 B−3(15mg/kg)
【0239】
5日目に、以下の通りに肺を収集し、膨張させ、固定して、免疫蛍光法(IF)のために染色した。肺は、PBS中の4%PFAで膨張させた。全体の肺を10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に移し、室温で一晩固定した。固定した肺を、少なくとも24時間、70%エタノールに移した。肺は、パラフィンに包埋し、5μmで切片にした。繊毛性及びClara細胞のための免疫蛍光染色は、以下の通りだった。125℃で15分の間、圧力調理器具内のクエン酸バッファー(Dako S1700)中でスライドを沸騰させることによって、スライドを脱パラフィンし、抗原を回収した。スライドを2×PBS中で簡単に水洗し、45分間又は3×15分間、PBS中の0.2%Triton−X100で次に透過化した。5%FBS/2%BSAで1時間、切片をブロックした。スライドは、2から3時間、又は一晩、ブロッキングバッファー中のヤギ抗CC10(1:1000)及びマウス抗アセチル化アルファチューブリン(1:200)と次にインキュベートした。スライドを、PBSで15分間、3回洗浄した。スライドを二次抗体と1時間インキュベートし(1:1000希釈のInvitrogen Alexa Fluor二次抗体)、次にPBSで15分間、2回水洗した。核は、DAPI(0.5μg/ml)で15分間染色した。スライドを次にPBSで15分間、2回水洗し、カバーガラスを載せた。
【0240】
その実験の結果を、
図19に示す。Jagged1及びJagged2シグナル伝達のブロッキングは、マウス細気管支上皮において繊毛細胞数の増加(赤色のαチューブリンの免疫蛍光検出によってマークされる)、及びクラブ細胞数の減少(緑色のCC10の免疫蛍光検出によってマークされる)を引き起こす。Jagged1とJagged2の両方のブロッキングはクラブ細胞のほぼ完全な消失をもたらす結果、生じる上皮は主に繊毛細胞からなる(赤色;
図19の「A−1、1×」及び「A−1−S101T、2×」を参照されたい)。A−1及びA−1(S101T)は、インビボでJagged1誘導Notchシグナル伝達を両方とも用量依存的に阻害した。したがって、A−1(S101T)は、親抗体A−1の抗Jagged1ブロッキング活性をインビボで保持する。
【0241】
実施例12: 抗Jagged1抗体A−1及びA−1(S101T)は、肝がん腫瘍の増殖をインビボで阻害する
ヒト患者由来の肝がん腫瘍、LIV#78(Genendesign、China)を、BALB−c免疫不全ヌードマウスで皮下異種移植として増殖させた。腫瘍が150から200mm
3の間まで成長したとき、1群につき10匹のマウスで7つの処置群にマウスを分け、指示抗体の指示用量(マウス体重1kgあたりの抗体のmg数)で1週間につき1回(3週おきに1回投薬された第5群を除いて)投薬した(A−1(S101T)抗体はそれぞれ配列番号51及び53の重鎖及び軽鎖配列を有し;「A−1−DANG(エフェクターのない)」はそれぞれ配列番号52及び53の重鎖及び軽鎖配列を有し;A−1抗体はそれぞれ配列番号81及び53の重鎖及び軽鎖配列を有する)。
図20Bを参照されたい。腫瘍体積は、ノギス測定によって調べた(長さ×幅×高さ/2)。
【0242】
図20Aは、試験期間中の各処置群での腫瘍体積のLME(線形混合効果)グラフを示す。
図20Bは、増殖統計、群同一性及び投薬レジメンを要約する。抗Jagged1抗体A−1及びA−1(S101T)は、肝がん増殖をインビボで有意に阻害した。抗Jagged1抗体の各々で、複数のPR(部分寛解)が観察された。同様に、抗Jagged1処置群のいずれも44日間の試験中に腫瘍体積の倍増を示さなかったが、コントロール群は18.5日の、腫瘍倍増への進行までの時間(TTP 2×)を示した。
図20Bを参照されたい。コントロール群と比較した1日あたりの曲線下面積の関数(AUC/日)としての腫瘍増殖阻害の百分率(%TGI、「下限値」及び「上限値」は、それぞれ各群の個々の動物の最低及び最高の%TGI測定値を指す)は、抗Jagged1 A−1−S101Tの用量に依存し、Jagged1阻害の程度を反映する腫瘍増殖阻害と整合していた。同様に、腫瘍増殖の阻害は、A−1又はA−1(S101T)を用いても類似していた。例えば、
図20Bの第3群及び第7群を比較されたい。エフェクター機能を欠くA−1の重鎖N297G突然変異形がA−1と同じくらい効果的に腫瘍増殖を阻害したので、腫瘍増殖阻害は抗体エフェクター機能に依存しなかった。
図20Bの第6群及び第7群を比較されたい。
【0243】
図21Aは、
図20に示すマウスの経時的マウス体重のLME(線形混合効果)グラフを示す。
図20Bは、試験最終日の体重の%変化(最終日の%BW)、体重の最大%変化(最大%BW)及び体重の最大変化が起こった日(最大%BWの日)並びに(AUC/日(下限値、上限値))を含む、処置群の様々な体重パラメータを示す。コントロール群を含む処置群の体重グラフは統計学的に区別できず、抗Jagged1治療が十分な耐容性を示したことを示す。
【0244】
実施例13: Jagged1のブロッキングは、杯細胞異形成をインビボで阻害する
腹腔内に注射されたオボアルブミンへの35日間の感作の後、7日連続でマウスをエアゾール化オボアルブミンで抗原投与し、その後それらを屠殺して杯細胞数について分析した。最初のエアゾール抗原投与の24時間及び96時間後に、コントロール、抗Jagged1 A−2抗体(マウスIgG2a Fcと)、抗Jagged2 B−3抗体(マウスIgG2a Fcと)又は抗Jagged1+抗Jagged2抗体の組合せでマウスを処置した。
【0245】
図23Aは、抗Jagged1、抗Jagged2、抗Jagged1+抗Jagged2又はコントロール抗体で処置したマウスでの、肺気道の定期的な酸−シッフ染色を示す。
図23Bは、異なる処置群の気道での、杯細胞の数量化を示す。コントロール及び抗Jagged2群で、豊富な杯細胞が明白である。抗Jagged1群ではわずかな杯細胞しか存在せず、抗Jagged1+抗Jagged2群では杯細胞は事実上検出されなかった。
図23Cは、ヘマトキシリンエオシン(H&E)染色によって評価した炎症指数を示す。Jagged1又は2のブロッキング抗体のいずれによる治療も、肺の炎症に影響しない。
【0246】
Jagged1誘導Notchシグナル伝達は、気道での細胞運命を、繊毛細胞運命ではなく分泌性細胞(杯細胞を含む)運命へと偏らせる。Jagged1シグナル伝達は分泌性細胞運命の維持にとって重要であり、Jagged1シグナル伝達の阻害は杯細胞異形成を阻止した。我々は、クラブ細胞から繊毛細胞への変換が直接的であり、細胞分裂を伴わなかったことも示した(データ示さず)。クラブ細胞は、肺で杯細胞を生成する。別の細胞型への1つの細胞型のこの分化転換は成人の肺で起こり、傷害後又は発生中などの前駆体細胞分裂を伴う細胞運命選択とは異なる。杯細胞異形成又は過剰な粘液は、いくつかの気道疾患、例えば喘息、嚢胞性線維症、COPD及びバレット食道の特質である。これらのJagged阻害結果は、気道疾患(例えば、喘息、COPD、嚢胞性線維症)及びバレット食道の場合のように、杯細胞異形成の予防又は反転のための、及び過剰な粘液で特徴付けられる状態の治療のための、Jagged1又はJagged2阻害剤の使用を含む治療的適用のための基礎を提供する。
【0247】
実施例14: 抗Jagged1及び抗Jagged2抗体の特異的結合
標準の酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて、組換え体の精製されたNotchリガンドヒトJagged1(hJag−1)、ヒトJagged2(hJag−2)、マウスJagged2(mJag−2)、ヒトデルタ様1(hDLL1)、マウスデルタ様1(mDLL1)及びヒトデルタ様4(hDLL4)への結合について、抗体A−2(
図24、左パネル)及びC−1(
図24、右パネル)を試験した。PBS pH7.4中の1μg/mlのNotchリガンドタンパク質(示す通り)を、一晩40℃でELISAプレート(Nunc Maxisorp)にコーティングした。PBS中のカゼインブロッカー(Pierce)で、プレートを室温で1時間ブロックした。PBSTバッファー(0.5(w/v)%BSAを含むPBTバッファー(PBS+0.05(v/v)%Tween20))中の抗体IgG(示す通り)の段階3倍希釈溶液をプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。次にプレートをPBSTで洗浄し、結合した抗体をペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトFab特異的IgG(Sigma)で検出した。TMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を用い、標準のELISAプレートリーダーを用いて630nMの吸光度を読み取った。KaleidaGraph(Synergy Software)を用いて、IgGの濃度に対して吸光度をプロットした。
図24は結果を示し、y軸上のA
630は結合程度を表す。
【0248】
抗体A2はヒト及びマウスのJagged1に結合したが、ヒトのJagged2、マウスのJagged2、ヒトのDLL1、マウスのDLL1、ヒトのDLL4、マウスのDLL4に結合しなかった(
図24、左パネル)。抗体C1はヒト及びマウスのJagged1、ヒト及びマウスのDLL1、ヒト及びマウスのJagged2に結合したが、ヒト、マウスのDLL4に結合しなかった(
図24、右パネル)。
【0249】
BIAcore(商標)−T200機器を用いる表面プラズモン共鳴(SPR)によって、抗体結合親和性及び速度定数を測定した。およそ150反応単位(RU)を達成するために、CM5センサーチップにコーティングされたマウス抗ヒトIgGによって、ヒトIgG1抗体を捕捉した。動態学的又は親和性測定のために、ヒトJagged1、マウスJagged1、ヒトJagged2、マウスJagged2、ヒトDLL1、マウスDLL1、ヒトDLL4、マウスDLL4及びラットJagged1の4倍段階希釈溶液を、25℃において30ml/分の流量でHBS−Tバッファー(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.05v/v%界面活性剤P20、GE Healthcare)に注入した。リガンド断片は、ラットJagged1を除いて、R&D Systemsから購入したDSL−EGF1−4断片であった。簡単な1対1のLangmuir結合モデル(BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン2.0)を用いることによって、会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)を計算した。平衡解離定数(k
d)は、比k
off/k
onとして計算した。親和性分析のために、定常状態親和性モデルを用いてK
dを計算した(BIAcore T200 Evaluationソフトウェアバージョン2.0)。
【0250】
表3は、精製されたヒトJagged1、マウスJagged1、ヒトJagged2、マウスJagged2、ヒトDLL1、マウスDLL1、ヒトDLL4、マウスDLL4及び/又はラットJagged1に結合する抗体A−2、B−3、C−1、A−1及びA−1 S101Tの結合定数を要約する。n.d.=検出せず、n.t.=試験せず。抗体A−2、A−1及びA−1−S101T.NG(N297G突然変異を有する抗体A−1S101T)は、ヒト及びマウスのJagged1に高い親和性で特異的に結合した。抗体A−1及びA−1−S101T.NGは、ラットJagged1にも高い親和性で結合した。抗体B−3は、ヒト及びマウスのJagged2に高い親和性で特異的に結合した。抗体C−1は、ヒト及びマウスのJagged1及びJagged2に特異的に結合した。抗体B−3及びC−1は、ヒト及びマウスのDLL1への多少の結合を示したが、抗体A−2は示さなかった。試験した抗体のいずれも、ヒト、マウスのDLL4に結合しなかった。
【0251】
実施例15:抗Jagged1 A−1−S101T抗体の薬物動態
1、10及び100mg/kgの単一の静脈内注射の後の抗Jagged1 A−1−S101T抗体の薬物動態学的プロファイルを、雌Balb/cヌードマウス(Charles River Laboratories、Hollister、CA)で評価した。マウスは5−8週齢であって、およそ17.3−21.8gの重量であった。血清試料を収集し、抗体濃度を特異的酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって分析した。特異的ELISAはJAG1細胞外ドメイン−ヒスチジンでコーティングし、ヤギ抗ヒトFcで検出した。アッセイ感度は、6.25ng/mLの標準値未満である。薬物動態学的パラメータは、非コンパートメントモデルをPhoenix(商標)WinNonlin(登録商標)(v.6.3;Pharsight Corporation;Mountain View、CA)と用いて推定した。全てのPK分析は、個々の動物データの未処置プールに基づいた。
【0252】
1及び100mg/kgの用量範囲内の抗Jagged1 A−1−S101T抗体のIV投与の後に、用量比例増加を超える曝露の増加が観察され、抗体の標的介在性クリアランス機構を示唆した(
図25及び表4)。クリアランス値は、およそ13から75mL/日/kgの範囲内だった。
【0253】
理解の明瞭さのために上の発明を図示及び例により多少詳細に説明したが、説明及び例は本発明の範囲を限定するものと解釈するべきでない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照により完全に明示的に組み込まれる。