【文献】
太田達也、矢野博夫、橘秀樹,“低周波音領域を含む環境騒音測定のための防風スクリーンの試作”,日本音響学会講演論文集,日本,日本音響学会,2011年 3月,pp.1195-1196(3-10-13)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0018】
(第1実施例)
本実施例は、低周波風防の内外にマイクを配置し、各マイクの出力信号をコントローラで処理する。この際、コントローラは、測定対象音が存在しない条件下で測定された測定値が記録された管理テーブルと、測定対象音が存在する条件下で測定された測定値とを比較し、この比較結果を基に、風雑音が除去された測定対象音を求めるものである。
【0019】
図1は、低周波音測定装置の第1実施例を示す構成図である。
図1において、低周波音測定装置は、略半球形状に構成された低周波風防10と、低周波風防10の外側に配置された外側マイクロホン(以下、外側マイクと称することがある。)12と、低周波風防10の内側に配置された内側マイクロホン(以下、内側マイクと称することがある。)14と、コントローラ16から構成される。
【0020】
低周波風防10は、地表面上に設置された金属円盤18上に配置される。なお、低周波風防10は、地表面上に直接配置することも可能である。
【0021】
内側マイク12と外側マイク14は、それぞれ空気(音波)の振動に応答して電気信号を出力するセンサとして構成され、低周波風防10の中心軸(仮想の中心軸)20に沿って互いに離隔して配置される。外側マイク12は、外側マイク12に内蔵されたダイヤフラム(図示せず)が、低周波風防10の表面と同一面となるように、低周波風防10の頂部に配置される。内側マイク14は、金属円盤18の表面から、1mm〜数mm離れた位置に設置される。
【0022】
外側マイク12と内側マイク14は、それぞれ無指向性であって、低周波風防10の中心軸20に沿って設置されるので、各マイクの出力信号を処理または補正する際に、風向きに依存することがない。
【0023】
また、外側マイク12と内側マイク14は、低周波風防10の中心軸20に沿って設置されるので、外側マイク12が設置される部分の風速に対応した風雑音が、各マイクによって検出されることになる。また、内側マイク14は、金属円盤18の表面に近接して設置されるので、正確な表面音圧を収音できる。
【0024】
コントローラ16は、ヘッドアンプ22、24と、サウンドカード26と、パーソナルコンピュータ28から構成される。
【0025】
ヘッドアンプ22は、外側マイク12に接続され、外側マイク12の出力による電気信号を増幅し、増幅した信号をサウンドカード26に出力する。
【0026】
ヘッドアンプ24は、内側マイク14に接続され、内側マイク14の出力による電気信号を増幅し、増幅した信号をサウンドカード26に出力する。
【0027】
サウンドカード26は、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器として構成されており、ヘッドアンプ22、24の出力による電気信号をそれぞれデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をパーソナルコンピュータ28に出力する。
【0028】
パーソナルコンピュータ28は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、メモリ、入出力インタフェース(いずれも図示せず)などを有するコンピュータ装置として構成されており、メモリには、制御プログラムや管理テーブルなどが格納される。
【0029】
CPUは、メモリに格納された制御プログラムや管理テーブルを基に各種の演算処理を実行し、外側マイク12と内側マイク14の出力信号を基に風雑音の影響を受けない、測定対象音の二乗実効値(真値)や風速を求める処理を実行する。
【0030】
また、CPUは、低周波風防10による挿入損失、或いは外側マイク12と内側マイク14の種類の違いなどにより、測定対象音測定時に、外側マイク12の出力と内側マイク14の出力とが異なる場合には、周波数帯域毎に、周波数補正のための処理を実行する。
【0031】
以下、CPUの具体的な処理手順について説明する。
【0032】
ここで、本実施例では、風雑音が、風速vに対して略1対1に対応することを前提に、外側マイク12と内側マイク14の各出力信号を基に風速を推定するとともに、風速に対応する風雑音の二乗実効値として、内側マイク14に残存する風雑音(残留風雑音)の二乗実効値を算出し、この算出値を補正し、補正した算出値を基に測定対象音の二乗実効値を正確に推定することとしている。
【0033】
具体的には、外側マイク12と内側マイク14の各出力信号を基に、外側マイク12と内側マイク14でそれぞれ検出される測定対象音の音圧と、外側マイク12と内側マイク14でそれぞれ検出される風雑音の音圧と、を含む出力信号の二乗実効値を算出する。この際、以下の式を基に、内側マイク14の出力信号の二乗実効値と、外側マイク12の出力信号の二乗実効値を算出する。
【0035】
ここで、内側マイク14と外側マイク12との間には出力信号に差があることを考慮し、周波数帯域ごとに、周波数補正係数aを用いて周波数補正処理(イコライジング)を行い、両者の実効値出力が、真の風雑音実効値に等しくなるようにする。
【0036】
即ち、CPUは、以下の処理を実行する。
【数2】
【0037】
この後、外側マイク12の出力信号に、周波数補正係数aを掛け算するための処理を実行する。この際、低周波風防10の風切音低減効果により、内側マイク14で検出される風雑音の二乗実効値が、外側マイク12で検出される風雑音の二乗実効値よりも1/qだけ下がったと仮定すると、以下の式が成立する。
【数3】
【0038】
上記(2)式×a−(1)式の演算を、以下に示すように、(6)式と(1)式を用いて行うと、(5)式より、風とともに、各マイク12、14に入る騒音・音響の影響がキャンセルされ、(7)式右辺の風雑音の項だけが残る。
【数4】
【0039】
一方、実際の測定に先立ち、屋内の静かな場所(無音屋外)、即ち、測定対象音が存在しない条件下で、様々な風速(v(m/s))の下で、内側マイク14と外側マイク12で検出される風雑音の二乗実効値を、周波数帯域ごと、例えば、1Hz〜20kHzの範囲で、1/3オクターブ毎に計測し、各計測結果を、風速計の計測値とともに、
図2に示す管理テーブル30に記録し、さらに、引数となる(7)式右辺の演算を周波数帯域ごとに行い、各演算結果を、風速計の計測値に対応づけて管理テーブル30に記録する。
【0040】
この際、内側マイク14に残留する、残留雑音の二乗実効値には、残留雑音以外の成分として、内側マイク14の自己雑音やプリアンプ24の電気ノイズまたは測定現場の暗騒音なども含まれるが、風速が小さい場合には、これらの成分を内側マイク14に残留する残留雑音の二乗実効値として処理する。
【0041】
実際の測定に際しては、測定対象音が存在する条件下で、外側マイク12と内側マイク14の各出力信号を基に、(1)式〜(7)式の演算を行い、(7)式右辺の値(演算値)を引数として、この引数の値を基に管理テーブル30を参照する。この際、引数の値が、例えば、92.19であった場合、この引数の値に対応する残留風雑音の二乗実効値として、80.12を得ることができるとともに、この引数の値に対応する風速として、風速0.10m/sを得ることができる。
【0042】
次に、求める測定対象音の二乗実効値は、以下の(8)式から求められる。
【数5】
【0043】
(8)式において、積分の第2項は、直交関数の積の積分により、零となり、積分の第3項と第4項は、風雑音の二乗実効値であって、本来、等しいものであるので、積分の過程で零となる。
【0044】
上述したように、内側マイク14と外側マイク12の各出力信号基に、(1)式〜(7)式の演算を行い、(7)式右辺の演算値を引数とし、この引数の値を基に管理テーブル30を参照することで、内側マイク14に残留する残留風雑音の二乗実効値と風速を求めることができる。さらに、内側マイク14の出力信号の二乗実効値と、内側マイク14に残留する、残留風雑音の二乗実効値との差を(8)式で演算することで、風雑音の影響を受けない、測定対象音の二乗実効値(真値)を求めることができる。
【0045】
本実施例によれば、内側マイク14に残留する残留風雑音の影響を最小化するようにしたため、低周波風防10の風切音低減効果(20dB程度)と合わせて、40dB以上の風雑音低減効果を得ることができるとともに、高速・無指向性の風速計を構築することができる。
【0046】
また、本実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0047】
(1)物理的な風雑音低減手段とは独立であって、電気的な信号処理手段を用いて、風雑音を低減するための処理を行っているので、物理的な風雑音低減手段の効果と電気的な信号処理手段の効果を合わせることで、高い風雑音低減効果が得られる。
【0048】
(2)風速の推定に内側マイク14と外側マイク12を用いているので、応答性が高く、且つ風速計の出力から風雑音を推定する方法よりも、各マイク間に存在し得る不確定性の影響を受けにくい。また、低周波音測定装置を風速計として構成する場合、内側マイク14と外側マイク12に無指向性マイクを使えば、高速且つ風向きによらず風速計を製作できる。
【0049】
(3)内側マイク14と外側マイク12の指向性中心軸は、円対象の低周波風防10の対象軸(中心軸20)に一致させているので、風向きによらず、風雑音は(無音下)外側マイク10の出力による風雑音の二乗実効値と略1対1に対応し、高い安定性を持って、内側マイク14の出力による残留風雑音の二乗実効値を求めることができる。
【0050】
(4)また、実際の測定では、測定対象となる騒音・音響が存在するため、外側マイク12の出力による風雑音の二乗実効値だけから、内側マイク14に残留する残留風雑音の二乗実効値を推定する方法だと、これら騒音・音響の影響を受け、正しい残留風雑音の二乗実効値を推定することができない。
【0051】
これに対して、本実施例では、外側マイク12の出力による風雑音の二乗実効値と、内側マイク14の出力による残留風雑音の二乗実効値との差、即ち、(7)式右辺の値を引数として、管理テーブル30を参照し、内側マイク14に残留する、残留風雑音の二乗実効値を求めているため、各マイク間で騒音・音響の影響は相殺され、正しい残留風雑音の二乗実効値を推定することができる。
【0052】
(5)内側マイク14に残留する、残留風雑音の二乗実効値には、測定対象音の二乗実効値以外の全ての雑音成分、例えば、内側マイク14の自己雑音やプリアンプ24の電気的ノイズなどの雑音成分も含まれるが、これらの雑音成分も、残留風雑音の二乗実効値の一部として除去される。さらに、測定現場でどうしても回避できない暗騒音源がある場合、暗騒音源がある条件下で、管理テーブル30に残留風雑音の二乗実効値を記録することで、暗騒音源の影響を回避することができる。
【0053】
(6)併用する物理的な低周波風防10だけで、過度に風雑音を低減しなくても、小型の低周波音測定装置を用いることで、低域まで高い風雑音低減効果を実現できる。また、低周波風防10として、風防層も軽微なもの(通気性の良い=流れ抵抗の小さい、また密実でないもの=開口率の小さいもの)を使用できるため、音響透過性が高く、広域での挿入損失を最小化できる。
【0054】
次に、
図3に、マイクにコンデンサマイクロホンを用いた第2実施例を示す。
【0055】
図3において、内側マイク14は、プリアンプを内蔵した無指向性コンデンサマイクロホンで構成され、低周波風防10の中心軸20に沿って、先端側を金属円盤18に向けて吊り下げるように、配置される。この際、内側マイク14は、その先端側のダイヤフラム面が、金属円盤18に近接し、且つ金属円盤18に触れないように配置されている。この場合、内側マイク14と金属円盤18とのギャップを、1m〜5mm程度に設定することで、内側マイク14は、オーディオ周波数範囲(1Hz〜20kHz)で、正確な地表面音圧を収音することができる。
【0056】
一方、外側マイク12は、プリアンプを内蔵した無指向性コンデンサマイクロホンで構成され、低周波風防10の中心軸20に沿って、配置される。この際、外側マイク12は、ダイヤフラム面が、低周波風防10の表面に略一致するように、略1mm程度、低周波風防10の外に突き出すように、上向きあるいは外向きで設置される。これにより、外側マイク12は、低周波風防10表面を通過する風による風雑音を有効に収音できる。
【0057】
内側マイク14と外側マイク12は、それぞれ無指向性であって、低周波風防10の中心軸20に沿って配置されるので、風向きによらず、風雑音の収音効果及び風雑音の低減効果は一定である。
【0058】
因みに、風雑音は、主に風の通過によるダイヤフラムへの負圧変動によるものであるので、外側マイク12のダイヤフラムが、低周波風防10表面と面一に設置されていても、外側マイク12から風雑音が停止、または低減することをほとんどない。
【0059】
また、測定対象音である騒音・低周波音は、平面波として(波長に対し)遠方から到来するので、内側マイク14と外側マイク12からは、略同じ成分が出力される。各マイクで異なるのは、風雑音の大きさ、即ち、外側マイク12の出力による、風雑音の二乗実効値と、内側マイク14の出力による、残留風雑音の二乗実効値の大きさのみである。このため、無風化で、外側マイク12の出力による、風雑音の二乗実効値と、内側マイク14に残留する、残留風雑音の二乗実効値を測定し、各測定値を風速に対応づけて管理テーブル30に記録することで、内側マイク14に残留する、残留風雑音の二乗実効値や風速を得ることができる。
【0060】
また、コントローラ16は、騒音計や低周波音圧計として構成することもできる。また、内側マイク14を、主風防32内に挿入し、内側マイク14を主風防32で覆うこともできる。
【0061】
また、低周波風防10としては、多孔質シートを含む半円形保護ネット34を、低周波風防10の頂部から放射状に配置された複数の金属フレーム36に固定する構造が採用されたものを用いることができる。金属円盤18としては、円形のアルミベースを用いることができる。
【0062】
次に、
図4に、外側マイクにシリコンマイクロホンを用い、内側マイクにコンデンサマイクロホンを用いた場合の第3実施例を示す。
【0063】
図4において、内側マイク14は、プリアンプを内蔵した無指向性コンデンサマイクロホンで構成され、低周波風防10の中心軸20に沿って配置される。内側マイク14は、主風防32で略覆われ、その一部が、主風防32から露出される。この際、内側マイク14のダイヤフラムと金属円盤18とのギャップは、1mm程度に設定されている。このため、内側マイク14は、オーディオ周波数範囲(1Hz〜20kHz)で、正確な地表面音圧を収音することができる。
【0064】
一方、外側マイク12は、プリアンプを内蔵した無指向性シリコンマイクロホンで構成され、低周波風防10の中心軸20に沿って配置される。この際、外側マイク12は、厚さが約1mm程度で構成され、低周波風防10の頂部に露出した状態で固定される。
【0065】
次に、
図5に、外側マイクにシリコンマイクロホンを用い、内側マイクにエレクトレットコンデンサマイクロホンを用い、風防に空中音圧測定用球形風防を用いた場合の第4実施例を示す。
【0066】
図5において、内側マイク14は、プリアンプを内蔵した無指向性エレクトレットコンデンサマイクロホンで構成され、球形風防40の中心軸42に沿って配置される。内側マイク14の先端側は、防水性ステンレス繊維シートを含む保護用金属ネット50で覆われる。保護用金属ネット50は、主風防として、略円筒形に構成され、円筒型金属ホルダ52の先端側に装着される。円筒型金属ホルダ52と内側マイク14との間には、円筒形の気密ゴムパッキン54が装着される。
【0067】
この際、円筒型金属ホルダ52は、空中に配置されて支持装置(図示せず)によって支持されるので、内側マイク14は、オーディオ周波数範囲(1Hz〜20kHz)で、正確な空中音圧を収音することができる。
【0068】
一方、外側マイク12は、プリアンプを内蔵した無指向性シリコンマイクロホンで構成され、球形風防40の中心軸42に沿って配置される。この際、外側マイク12は、厚さが約1mm程度で、長さが50mm〜200mm程度の大きさで構成され、球形風防40の頂部に露出した状態で固定される。
【0069】
球形風防40は、多孔質素材、例えば、0.5mm角以下の金属ネット44と、2〜4mm角の金属ネット46が組み合わされた中空構造または充填構造で構成される。
【0070】
次に、
図6に、外側マイクにシリコンマイクロホンを用い、内側マイクにシリコンマイクロホンを用い、風防に表面音圧測定用円筒型風防を用いた場合の第5実施例を示す。
【0071】
図6において、内側マイク14は、無指向性コンデンサマイクロホンで構成され、円筒型風防60の中心軸62に沿って配置される。この際、内側マイク14は、機体・車体などの測定対象64の表面に配置される。このため、内側マイク14は、オーディオ周波数範囲(1Hz〜20kHz)で、測定対象64の表面音圧を正確に収音することができる。
【0072】
一方、外側マイク12は、無指向性シリコンマイクロホンで構成され、円筒型風防60の中心軸62に沿って配置される。この際、外側マイク12は、円筒型風防60の頂部に露出した状態で固定される。
【0073】
円筒型風防60は、略円筒形状に形成され、機体・車体などの測定対象64上に設置される。円筒型風防60は、表面音圧測定という目的から、円筒型に構成され、内側マイク14と外側マイク12には、小型であることを特徴とするシリコンマイクロホンが用いられる。
【0074】
円筒型風防60としては、球形風防40と同様、防風層の基本的な構造は、多孔質素材で構成した中空構造でも、充填構造でも構わない。
【0075】
第2実施例〜第5実施例においても、第1実施例と同様な効果を得ることができる。
【0076】
次に、
図7に、風雑音低減効果を説明するための特性図を示す。
【0077】
図7において、特性曲線200、202、204は、送風機からの風を低周波音測定装置10で測定したときの測定結果である。
【0078】
風防無しに相当する外側マイク12の風雑音は、外側マイク12の出力信号に含まれる風雑音の二乗実効値であって、特性曲線200で示される。
【0079】
これに対して、内側マイク14の風雑音は、低周波風防10による風雑音の低減効果が得られるので、外側マイク12の出力信号と内側マイク14の出力信号を、(1)式から(7)式を基にコントローラ16で処理しない場合、特性曲線202で示され、外側マイク12よりも低減される。但し、内側マイク14に残留する残留風雑音の低減効果は、20dB程度であって、十分ではない。
【0080】
一方、外側マイク12の出力信号と内側マイク14の出力信号を、(1)式から(7)式を基にコントローラ16で処理した場合、残留風雑音は、特性曲線204で示される。この場合、内側マイク14に残留する残留風雑音は、低周波風防10による風雑音の低減効果に加えて、さらに10〜15dB低減していることが分かる。
【0081】
(低周波音測定システム)
図8は、本発明に係る風雑音低減拡張方法が適用された低周波音測定システムの第1実施例を示す構成図である。
【0082】
図8において、低周波音測定システムは、マイクロホン100と、マイクロホンを覆う主風防102と、マイクロホン100および主風防102を覆う2次風防104と、金属円盤106を有する低周波音測定装置と、独立ネット110と、を備えて構成される。
【0083】
マイクロホン100と、主風防102及び2次風防104は、地表面に設置された金属円盤108上に配置される。マイクロホン100は、内側マイク14と同一の機能を有し、
図1のコントローラ16と同一構成のコントローラ(図示せず)に接続される。
【0084】
このコントローラは、例えば、パーソナルコンピュータを用いて構成され、マイクロホン100の出力による電気信号を処理し、風雑音が除去された測定対象音を抽出することができる。
【0085】
2次風防104は、例えば、半球体で構成され、この半球体の開口側が、金属円盤106上に配置される。この際、マイクロホン100は、2次風防104の中心軸108に沿って配置される。
【0086】
独立ネット110は、風雑音の低減度合いを更に拡張することを目的として、主風防102と2次風防104を含む低周波風防(JIS C 1400-11:2005やIEC61400-11;2002に規定された規準に沿って作成された低周波風防)の外側にあって、以下の条件を満足するように、低周波風防とは独立して、測定対象音を発生する音源と低周波風防との間に設置され、且つ通風性・風透過性を有する風雑音低減拡張ユニットとして、金属または金属以外の材料を用いて構成される。
【0087】
具体的には、独立ネット110は、低周波風防よりも地表面からの高さが高く、低周波風防よりも幅が広く、平板状の枠体112と、枠体112に固定されたネット素材114を備え、以下の項目で規定された条件を満足するように構成される。
【0088】
(1)開口率が70%以上であって、通風性があり、オーディオ帯域(20Hz〜20kHz)で、音響透過性が90%以上であり、且つ、挿入損失が±2dB以内であって、金属または金属以外の材料を用いて構成される。
【0089】
(2)JISなどで規定される既存の風防の形状、例えば、半球型の形状であるのに対して、基本的には異なる形状、形態を有する。
【0090】
(3)金属円盤108とは振動的に縁が切れるように、地表面に直接設置される。なお、独立ネット106を、防振手段を介して、金属円盤108とは異なる位置に設置することもできる。
【0091】
(4)測定対象音を発生する音源との対向面または風の発生源との対向面が、地表面と直角な鉛直軸を基準に、低周波風防側に僅かに傾斜、例えば、θ=1〜5度傾斜して設置される。
【0092】
次に、低周波音測定システムの第2実施例〜第5実施例を
図9乃至
図12に示す。
【0093】
図9において、独立ネット120は、矩形形状に形成され、低周波風防よりも地表面からの高さが高く、低周波風防よりも幅が広く、上記(1)〜(4)の項目で規定された条件を満たすネットとして構成される。この際、独立ネット120は、矩形形状の枠体122と、枠体122に固定されたネット素材124を備え、仮想の中心線126を基準に、折れ曲がり、「く」の字型に構成される。
【0094】
図10において、独立ネット130は、略円錐形状に形成され、矩形形状に形成され、低周波風防よりも地表面からの高さが高く、低周波風防よりも幅が広く、上記(1)〜(4)の項目で規定された条件を満たすネットとして構成される。
【0095】
この際、独立ネット130は、複数の鳥よけ棒132が組み合わされて、略円錐形状の枠体が構成され、この枠体にネット素材134が固定される。
【0096】
図11において、独立ネット140は、略円筒状に形成され、低周波風防よりも地表面からの高さが高く、低周波風防よりも幅が広く、上記(1)〜(4)の項目で規定された条件を満たすネットとして構成される。
【0097】
この際、独立ネット140は、上下に配置された円形枠142、144の周囲にネット素材146が固定される。ネット素材146のうち、円形枠142と円形枠144との間に配置されて、斜面を形成するネット素材146は、斜面に沿って開閉自在に取り付けられる。
【0098】
図12において、独立ネット150は、略半球型形状に形成され、上記(1)〜(4)の項目で規定された条件を満たすネットとして構成される。
【0099】
この際、独立ネット150は、略半球型形状に形成された枠体152の周囲にネット素材154が固定される。
【0100】
上記各独立ネット110、120、130、140、150は、風雑音低減拡張ユニットとして、運搬時に、嵩張らないように、折り畳みができるように構成することができる。この際、独立ネット130、140、150を、蝙蝠傘や折り畳み傘のように構成することもできる。
【0101】
また、各独立ネット130〜150としては、ネット素材134、146、154に防水性の素材を用い、内部の2次風防104やマイクロホン100などに水が浸入しない構成とすることもできる。また、ネット素材134、146、154に金属製の網状素材や金属製繊維板あるいはシートを用い、風防効果と同時に電磁周動効果を持つように構成することもできる。
【0102】
上記独立ネット110、120、130、140、150によれば、以下の効果を奏することができる。
【0103】
(1)形状、形態などが既存の風防(低周波風防)の防風層の構造とは異なり、既存の風防とは、振動的に縁切りとして設置されるため、それぞれが風防とは独立に機能し、効果的に風雑音の低減度を向上させることができる。
【0104】
(2)ほとんど風を通す通風性の独立ネットであるため、新たな空気渦流れを誘発せず、既存の風防の最外防風層に侵入する風の速さだけを効果的に低減し、風防系全体の風雑音の低減が実現できる。
【0105】
(3)同時に、独立ネットには、非常に開口率の高い素材を使うので、通風性であるばかりではなく、音響透過性を阻害する懸念はほとんどない。
【0106】
(4)通風性の独立ネットは、既存の風防の外側に設置されるため、概して大型化するきらいはあるが、例えば、蝙蝠傘などのように折り畳めるので、運搬にはほとんど支障を生じない。
【0107】
なお、低周波音測定システムを構成する場合、第1実施例〜第5実施例の低周波音測定装置(
図1、
図3〜
図6に示す低周波音測定装置)のうちいずれかの一つの低周波音測定装置と、独立ネット110、120、130、140、150のうちいずれか一つの独立ネットを組み合わせることもできる。
【0108】
次に、
図13に、独立ネットの有無によって風雑音が変化することを説明するための特性図を示す。
【0109】
図13に示す特性図を得るための測定では、独立ネット140などを使用しない場合、既存の風防から、数m離れた位置に送風機を配置し、この送風機から、既存の風防に向けて風速7m/sの風を送り、内側マイク14と外側マイク12で風雑音を計測し、この計測結果を記録した。
【0110】
一方、独立ネット140などを使用する場合、独立ネット140などから1m離れた位置に送風機を配置し、この送風機から、独立ネット140などに向けて風速7m/sの風を送り、内側マイク14と外側マイク12で風雑音を計測し、この計測結果を記録した。
【0111】
図13において、特性曲線300は、独立ネット140などが無い状態で、風防として、既存の風防を用いた場合に、外側マイク12から出力される風雑音の特性曲線である。特性曲線302は、独立ネット140などがある状態で、風防として、既存の風防を用いた場合に、外側マイク12から出力される風雑音の特性曲線である。特性曲線304は、独立ネット140などの内側に50mm厚のグラスウール(ファイバガラス)を付加し、風防として、既存の風防を用いた場合に、外側マイク12から出力される風雑音の特性曲線である。特性曲線300、302、304から、独立ネット140などが無い状態では、風防を用いても、十分な風雑音低減効果を得られないことが分かる。
【0112】
一方、特性曲線400は、独立ネット140などが無い状態で、風防として、既存の風防を用いた場合に、内側マイク14から出力される風雑音の特性曲線である。
【0113】
特性曲線402は、独立ネット140などがある状態で、風防として、既存の風防を用いた場合に、内側マイク14から出力される風雑音の特性曲線である。この場合、独立ネット160が無いときよりも、全周波数帯域で、風雑音が10〜15dB低減し、10Hzでも、風雑音が35dB前後低減していることが分かる。
【0114】
特性曲線404は、独立ネット140などの内側に50mm厚のグラスウール(ファイバガラス)を付加し、風防として、既存の風防を用いた場合に、内側マイク14から出力される風雑音の特性曲線である。この場合、独立ネット140などが無いときよりも、全周波数帯域で、風雑音が10〜15dB低減している。但し、特性402が得られた構成のときよりも、挿入損失が悪化し、4Hz以上では、風雑音が増加している。なお、特性曲線406は、送風機のファンノイズの特性である。
【0115】
図13に示す測定結果から、独立ネット140などを構成するに際して、通風性を有するネット素材を用いて構成することの妥当性が示されることになる。これは、独立ネット140などの開口率が高いので、音響透過性にほとんど影響がないことは当然である。即ち、独立ネット140などは、挿入損失が、略零であることになる。
【0116】
なお、独立ネット110、120、130、140、150のうちいずれか一つの独立ネットと、第1実施例〜第5実施例の低周波音測定装置のうちいずれかの一つの低周波音測定装置とを組み合わせる代わりに、
図8乃至
図12に示されるように、独立ネット110、120、130、140、150のうちいずれか一つの独立ネットと、既存の低周波音測定装置(例えば、
図8〜
図12に示す低周波音測定装置)とを組み合わせても、独立ネットが無いものよりも、風雑音を低減することができる。