【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題へのソリューションは、独立クレームの特徴を備えたシステム及び方法によって与えられる。このシステム及び方法の実施形態は、各従属項及び以下の説明によって説明を行う。
【0008】
本発明は、唯一のユーザ関連固有デジタル識別子(D−ID)を介して、プライバシー及びセキュリティを考慮したネットワーク内の少なくとも1つのサービスプロバイダの異なるサービスへの各アクセスをユーザに提供するシステムを提供するものである。
【0009】
本システムは、少なくとも、D−IDミドルウェアと、D−IDエージェントとを備える。
【0010】
D−IDエージェントは、ユーザにより、通常は、ユーザの任意且つ所望の端末デバイス上で少なくとも部分的に稼働され、D−ID、ユーザの少なくとも1つのハンドルネーム、及びユーザ規定のハンドルネーム特有のシークレット番号を生成し、シークレット番号及び暗号学的ハッシュ関数を使用して、そのリーフとしてシークレットを有するハンドルネーム特有のMerkle treeのルート値を計算し、ともに認証暗号化法を使用して暗号化された少なくとも1つのハンドルネーム及び対応のルート値をD−IDミドルウェアに送信し、少なくとも1つのサービスプロバイダの異なるサービスのうち、1つのサービスにアクセスする際、必要に応じて、シークレット番号のシークレットを使用するように構成される。
【0011】
ユーザは、任意の好適な端末デバイス、すなわち、D−IDエージェントが少なくとも部分的に実行可能な電子ハードウェアデバイス又は電気機械ハードウェアデバイスを選ぶことができる。そこで、D−IDエージェントは、携帯電話、ラップトップ等で稼働可能である。D−IDエージェントは、異なるプロセッサ上で実行可能である。
【0012】
D−IDミドルウェアは、オペレータによって稼働され、ユーザのD−IDの検証に対する、ユーザの端末デバイス及び少なくとも1つのサービスプロバイダの間のミドルウェアを構成する。D−IDミドルウェアは、ユーザのD−ID、各ハンドルネーム及び対応のルート値を備えるユーザの少なくとも1つのハンドルネームの各々に対するMerkle treeルート要素、並びに各ルート要素に対する信頼レベルを受信及び維持するように構成される。
【0013】
システムは、ユーザが異なるサービスのうち、所望の1つのサービスにアクセスすることを意図する時にはいつでも、ユーザは、少なくとも1つのハンドルネームのうちの1つを選択しなければならず、この選択されたハンドルネームに基づき、D−IDエージェントは、サービスプロバイダに対して、ハンドルネーム特有のシークレット番号のシークレットと、ハンドルネーム特有のMerkle treeから導き出される対応の認証パスとを明らかにし、サービスプロバイダは、対応のルート値及び信頼レベルを受信するために、D−IDミドルウェアにハンドルネームを転送し、シークレット及び認証パスに基づき、ルート値を計算し、それがハンドルネームについてD−IDミドルウェアから受信したルート値に合致するか否かを検証することにより、ユーザがハンドルネームの所有者であることを検証し、そうであれば、選択されたハンドルネームの信頼レベルが少なくとも1つのサービスプロバイダによって要求されたものに対応する場合、ユーザに、所望のサービスへアクセスさせるように構成される。
【0014】
提案のシステムの一実施形態によると、D−IDは、ユーザによって規定され、D−IDミドルウェアにより、個人ID等、適切な手段を介して検証される。
【0015】
提案のシステムの更に他の可能な実施形態によると、信頼レベルは、少なくとも1つのハンドルネーム及び対応のルート値をD−IDエージェントからD−IDミドルウェアに送信する手法に基づき、ミドルウェアによって割り当てられる。
【0016】
更に、各ルート要素について、ミドルウェアは、各ハンドルネーム及び対応のルート値に加え、現在のシークレットカウンタを記憶するように構成される。
【0017】
少なくとも1つのハンドルネームが生成される時、シークレットカウンタは、ゼロに設定され、ユーザがハンドルネーム特有のシークレット番号のシークレットを使用する度に、1ずつ自動で増加される。
【0018】
D−IDミドルウェアに関してまとめると、D−IDミドルウェアは、ユーザのIDの検証に対して、ユーザ(すなわち、ユーザが所望のサービスにアクセスするために実際に使用する、ユーザの各端末デバイス)及びサービスプロバイダの間のミドルウェアであると言える。D−IDミドルウェアは、例えば、通信会社のオペレータや、その他任意の組織によって稼働することができる。
図1は、後述するが、D−IDミドルウェアによって維持される情報の概略図を提供するものである。D−IDミドルウェアは、そのユーザに関する以下の情報を管理する。
−ユーザによって選択され、D−IDミドルウェアのプロバイダによって適切な手段(例えば、個人ID)を介して検証され得る固有識別子である、ユーザのD−ID。
−各ユーザに対するいくつかのMerkle treeルート要素(これらは、ユーザによって生成され、ミドルウェアに送信される)及び各ルート要素の対応信頼レベル(これは、送信方法、すなわち、使用される認証暗号化法に基づき、ミドルウェアによって割り当てられる)。
【0019】
各ルート要素について、以下のパラメータが記憶される。
〇ユーザのハンドルネーム
〇対応のルート要素値(ルート値)
〇現在のシークレットカウンタ(S−Counter)
【0020】
以下、上に挙げた3つの情報をルート要素と指定する。シークレットカウンタは、以下、S−Counterとも称するが、最初は常にゼロであり、ユーザがサービスへのアクセスを得るためにシークレットを使用する度に1ずつ増加することにも留意する。
【0021】
更なる実施形態によると、ハンドルネーム特有のシークレット番号の各シークレットは、ハンドルネーム、現在のシークレットカウンタ(すなわち、シークレットカウンタの現在の値)、及び乱数に基づいて編成される。
【0022】
本発明に係るシステムの更に他の実施形態によると、ハンドルネーム特有のシークレット番号の各シークレットは、サービスプロバイダのサービスにアクセスするために1回に限って使用可能な1回限定シークレットである。
【0023】
ユーザは、対応する異なる種別のサービスに対して異なるハンドルネームを生成することができる。しかしながら、ユーザは、同一種別のサービスに対して異なるハンドルネームを生成することもできる。これは、ユーザが各サービスに対して少なくとも1つのハンドルネームを生成することができるため、サービスプロバイダその他は、ユーザのアクティビティを追跡することができないことを意味する。
【0024】
本発明に係るシステムの1つの可能な実施形態において、D−IDエージェントは、セキュアクラウドにおいて部分的に稼働される。これは、D−IDエージェントが所望のサービスへのアクセスを得るために実際に使用するユーザの各端末デバイス上で部分的に稼働され、セキュアクラウドで部分的に稼働されることを意味する。
【0025】
本発明に係るシステムは、以下の品質特性に繋がる。
−デバイス及び認証方法に依存しない。ユーザは、自らのスマートフォン、ラップトップ、IoT(Internet of Things)、その他を任意のレガシー又は新たな認証方法とともに使用することができる。
−ユーザ中心であり、ユーザは、D−ID及びそのプライバシーに多大なコントロールを有する。
−計算オーバーヘッドの低い、ポスト量子セキュリティ機構を特徴とする。
−動的である。すなわち、リアルタイムで変化することがある。また、その信頼レベルも動的に変化し得る。
−トランザクションレベルで簡易にシェア可能である。
【0026】
ユーザは、本発明に係るシステムを使用することにより、唯一のユーザ関連固有デジタル識別子(D−ID)を使用して、1つ又は異なる端末デバイスから、異なるセキュリティ/信頼レベルを更に要求する異なるサービスプロバイダによって提供される異なるサービスへの各アクセスを得ることができるようになる。このシステムにより、ユーザに、第三者に対してのみならず、各サービスプロバイダに対しても、プライバシーを達成することができるようにする。
【0027】
量子計算は、データに演算を実施するため、重ね合わせ及びもつれ等、量子機構現象を直接使用する論理計算システム(量子コンピュータ)を研究するものである。大型量子コンピュータは、ショアアルゴリズムを使用する整数因数分解等、現在最もよく知られているアルゴリズムを使用した任意の旧知のコンピュータに比較して、格段に速く、特定の問題を論理的に解決することができるであろう。可能な任意の確率的な旧知のアルゴリズムに比較して、速く稼働する、サイモンアルゴリズム等の量子アルゴリズムが存在する。一方で、量子コンピュータは、多くの暗号法の基礎となる問題を効率的に解決することができるため、これらの暗号法を実行不可能なものにしてしまう。しかしながら、本発明に係るシステム及び方法は、ともにMerkle treeの形態でハッシュベースの暗号化を使用するポスト量子セキュリティを提供するものであり、ハッシュベースの暗号化は、量子コンピュータに対して安全である(例えば、https://en.wikipedia.org/wiki/Post−quantum_cryptographyを参照のこと)。
【0028】
本発明は、また、唯一のユーザ関連固有デジタル識別子(D−ID)を介して、プライバシー及びセキュリティを保証するネットワーク内の少なくとも1つのサービスプロバイダの少なくとも1つの、通常は、異なるサービスに対するアクセスをユーザに提供する方法にも関連する。この方法は、少なくとも、以下のステップを備える。
−ユーザの任意且つ所望の端末デバイス上で少なくとも部分的に稼働しているD−IDエージェントを提供するステップと、
−D−IDエージェントにより、ユーザのD−ID、ユーザの少なくとも1つのハンドルネーム、及びユーザ規定のハンドルネーム特有のシークレット番号とを生成するステップと、
−D−IDエージェントにより、シークレット番号及び暗号学的ハッシュ関数を使用して、そのリーフとしてシークレットを有するハンドルネーム特有のMerkle treeのルート値を計算するステップと、
−D−IDエージェントにより、ともに認証暗号化法を使用して暗号化された少なくとも1つのハンドルネーム及び対応のルート値をD−IDミドルウェアに送信するステップと、
−D−IDミドルウェアを、ユーザのD−IDの検証に対する、ユーザ及び少なくとも1つのサービスプロバイダの間のミドルウェアとして提供するステップと、
−D−IDミドルウェアにより、ユーザのD−ID、各ハンドルネーム及び対応のルート値を備えるユーザの少なくとも1つのハンドルネームの各々に対するMerkle treeルート要素、並びに各ルート要素に対する信頼レベルを受信及び維持するステップと、
−ユーザが少なくとも1つのサービスプロバイダの異なるサービスのうち、所望の1つのサービスにアクセスすることを意図する時、少なくとも1つのハンドルネームのうちの1つを選択し、D−IDエージェントにより、サービスプロバイダに対して、ハンドルネーム特有のシークレット番号のシークレットと、ハンドルネーム特有のMerkle treeから導き出される対応の認証パスとを明らかにし、サービスプロバイダにより、対応のルート値及び信頼レベルを受信するために、D−IDミドルウェアにハンドルネームを転送し、サービスプロバイダにより、シークレット及び認証パスに基づき、ルート値を計算し、サービスプロバイダにより、それがハンドルネームについてD−IDミドルウェアから受信したルート値に合致するか否かを検証することにより、ユーザがハンドルネームの所有者であることを検証し、そうであれば、選択されたハンドルネームの信頼レベルが少なくとも1つのサービスプロバイダによって要求されたものに対応する場合、ユーザに、少なくとも1つのサービスにアクセスさせるステップとを備える。
【0029】
本発明の方法の一実施形態によると、信頼レベルは、少なくとも1つのハンドルネーム及び対応のルート値をD−IDエージェントからD−IDミドルウェアに送信する手法に基づき、ミドルウェアによって割り当てられる。
【0030】
したがって、信頼レベルは、ともに暗号化された少なくとも1つのハンドルネーム及び対応のルート値をD−IDミドルウェアに送信する時、他の認証暗号化方法を使用して更新される。認証方法/プロトコルは、通常、ユーザを識別、すなわち、ユーザのアイデンティティを検証し、最善のケースでは、そのユーザがアクティブである(リプレイアタックでない)ことを確認するために使用される方法である。このような認証方法の例として、Kerberos、IPsec、認証ベースSSL、パスワードベースSSL、任意のSingle Sign On Solution等が挙げられる。暗号化方法は、データの暗号化に使用される。通常、認証方法の実施中、キーが導き出され、これらが後に暗号化方法によって使用される。このような暗号化方法の例として、AES、SNOW、3G、又は任意のコード化機構が挙げられる。
【0031】
ユーザが少なくとも1つのサービスプロバイダの異なるサービスのうち、所望の1つのサービスへのアクセスを意図する時、サービスプロバイダは、また、最後に使用したシークレットのシークレットカウンタをD−IDミドルウェアから受信し、更に、現在選択されたシークレットのシークレットカウンタが最後に使用したシークレットのシークレットカウンタ以上であることを検証する。
【0032】
クレームの方法の更に他の実施形態によると、所望のサービスにアクセスするために請求を行うことが必要とされ、サービスプロバイダにユーザのD−IDを取得することが許可されない場合、請求情報は、D−IDミドルウェアによって引き継がれ、D−IDミドルウェアが請求代行を行う。
【0033】
以下の詳細な説明及び添付の図面は、本発明の性質及び効果をより理解させるためのものである。