特許第6571149号(P6571149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571149
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】多重共鳴用プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/12 20060101AFI20190826BHJP
   C07C 229/36 20060101ALI20190826BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   G01N24/12 510P
   C07C229/36
   G01N24/12 510L
   G01N24/12 510C
   G01N24/08 510Q
【請求項の数】1
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-222465(P2017-222465)
(22)【出願日】2017年11月20日
(62)【分割の表示】特願2013-204511(P2013-204511)の分割
【原出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-54622(P2018-54622A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2017年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】青山 安宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 久嗣
(72)【発明者】
【氏名】亀田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐
(72)【発明者】
【氏名】杤尾 豪人
(72)【発明者】
【氏名】白川 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】年光 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】山東 信介
【審査官】 佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−514946(JP,A)
【文献】 特開平04−046143(JP,A)
【文献】 Keiko Kanamori and Brian D. Ross,The First in Vivo Observation of 13C-15N Coupling in Mammalian Brain,Journal of Magnetic Resonance,2001年,153,Pages 193-202
【文献】 山田久嗣,生体内代謝プロセスの多重共鳴NMRモニタリングと多重共鳴MRIに展開可能な高感度化分子プローブの開発,社団法人日本化学会 生体機能関連化学部会 NEWS LETTER,2012年11月 2日,Vol.27, No. 3 ,Pages 17-20
【文献】 Kevin L. Beher and Dougals L. Rothman,In Vivo Nuclear Magnetic Resonance Studies of Glutamate-γ-Aminobutyric Acid-Glutamine Cycling in Rodent and Human Centex: the Central Role of Glutamine,The Journal of Nutrition,2001年 9月 1日,Volume 131, Issue 9,Pages 2498S-2504S
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 22/00−22/04、24/00−24/14、
G01R 33/24、33/26−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経伝達物質の前駆体アミノ酸と前記前駆体アミノ酸から代謝反応によって生成された神経伝達物質とを1H−{13C−15N}三重核磁気共鳴法で同時に検出する用途に用いられる多重共鳴用のプローブであって、式(II):
【化1】
で表わされるL−ドーパ、式(III):
【化2】
で表わされるグルタミン酸および式(VII):
【化3】
で表わされるヒスチジンからなる群より選ばれた神経伝達物質の前駆体アミノ酸を有効成分として含有することを特徴とするプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多重共鳴用プローブに関する。さらに詳しくは、神経伝達物質に関連する代謝反応の解析、神経伝達物質が関与する疾患の診断を行なうための画像情報の取得などに有用な神経伝達物質の前駆体アミノ酸およびそれを有効成分として含有する多重共鳴用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内に存在する化合物は、それぞれ固有の核磁気共鳴(以下、「NMR」ともいう)シグナルを有していることから、前記NMRシグナルを利用するNMR法によれば、生体内における特定の化合物中の核磁気共鳴活性核のNMRシグナルを検出し、当該NMRシグナルの強度を測定することにより、高い定量性でかつ低い侵襲性で、生体内における前記化合物の変化、すなわち、生体内における前記化合物の代謝反応の過程を追跡することができる。前記NMR法は、分子プローブの1H核または13C核を対象とする磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)、磁気共鳴スペクトロスコピーイメージング(MRSI)などに応用されている。しかし、生体内には、1H核または13C核のノイズシグナルを生じる水、脂質などの内在性の化合物が存在しているため、前記MRSおよびMRSIには、分子プローブのNMRシグナルに加えて前記ノイズシグナルまでもが同時に検出されることから、分子プローブのNMRシグナルのみを高い選択性で検出することが困難であるという欠点がある。
【0003】
そこで、分子プローブのNMRシグナルのみを高い選択性で検出する手法として、19F−NMR法が開発されている。前記19F−NMR法は、例えば、分子プローブとして19Fラベル化L−ドーパを用いて脳内における当該19Fラベル化L−ドーパを検出する方法などに利用されている(例えば、非特許文献1などを参照)。しかし、前記19Fラベル化L−ドーパは、L−ドーパの分子内に9個の19F核が導入された化合物であることから、L−ドーパ本来の生理学的活性または薬理学的活性を失っており、生体内において、代謝されないため、分子プローブとして19Fラベル化L−ドーパを用いる方法には、生体内における当該分子プローブの代謝反応の過程を追跡することができないという欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】シェリー・ディングマン(Sherry Dingman)ら、「マウス脳におけるL−ドーパのパーフロオロタグ代謝産物の運命(The Fate of Perfluoro‐Tagged Metabolites of L‐DOPA in Mice Brains)」、ジャーナル・オブ・イムノアッセイ・アンド・イムノケミストリー(Journal of Immunoassay and Immunochemistry)、マーセル・デッカー・インコーポレーティッド(Marcel Dekker Inc)、2004年発行、第25巻、p.359−370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、高い選択性で検出することができる神経伝達物質の前駆体アミノ酸を提供することを課題とする。また、本発明は、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、生体内における代謝反応の過程を追跡することができ、さらに高い選択性で検出することができる多重共鳴用のプローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕神経伝達物質の前駆体アミノ酸であって、式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基またはカルボキシル基を示す)
で表わされる神経伝達物質の前駆体アミノ酸、および
〔2〕多重共鳴用のプローブであって、前記〔1〕に記載の神経伝達物質の前駆体アミノ酸を有効成分として含有することを特徴とするプローブ
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸は、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、高い選択性で検出することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の多重共鳴用プローブは、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、生体内における代謝反応の過程を追跡することができ、さらに高い選択性で検出することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例2〜5において、1H−{13C−15N}三重核磁気共鳴法に用いられたパルスシーケンスを示す図である。
図2】(A)は実施例2で得られた13C/15N−ラベル化L−ドーパの1H−{13C−15N}−NMRスペクトル、(B)は実施例2で得られた13C/15N−ラベル化ドーパミンの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示すチャートである。
図3】実施例3において、13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−NMRスペクトル、1H−{13C}−NMRスペクトルおよび1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示すチャートである。
図4】(A)は実施例4において、肝臓組織抽出液を含む溶液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示すチャート、(B)は肝臓組織抽出液を含まない溶液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示すチャートである。
図5】実施例5において、カルビドパを含む反応液およびカルビドパを含まない反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示すチャートである。
図6】実施例5において、ベンゼラジドを含む反応液およびベンゼラジドを含まない反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸は、前述したように、式(I):
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基またはカルボキシル基を示す)
で表わされる神経伝達物質の前駆体アミノ酸である。
【0014】
本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸は、1H−13C−15N結合を有しているので、生体内において、神経伝達物質の前駆体アミノ酸としての生理学的活性または薬理学的活性を示すものであり、しかも高い選択性で検出することができる。
【0015】
式(I)において、R1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基またはカルボキシル基である。
【0016】
前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記炭素数1〜4のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、チオール基、メチルチオ基、グアニジル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキル基のなかでは、神経伝達物質の前駆体として高い生理学的活性または薬理学的活性を示すことから、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ヒドロキシメチル基が好ましく、カルボキシメチル基およびカルボキシエチル基が好ましい。
【0017】
前記炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、インデニル基、ビフェニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記炭素数6〜12のアリール基が有していてもよい置換基は、前記炭素数1〜4のアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。前記置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基のなかでは、神経伝達物質の前駆体として高い生理学的活性または薬理学的活性を示すことから、ヒドロキシベンジル基、ジヒドロキシベンジル基、ベンジル基が好ましく、ヒドロキシベンジル基およびジヒドロキシベンジル基がより好ましい。
【0018】
前記炭素数3〜10の複素環としては、例えば、インドリル基、イミダゾイル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、2,2’−ビピリジル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記複素環基が有していてもよい置換基は、前記炭素数1〜4のアルキル基が有していてもよい置換基と同様である。前記置換基を有していてもよい炭素数3〜10の複素環基のなかでは、神経伝達物質の前駆体として高い生理学的活性または薬理学的活性を示すことから、インドリル基、ヒドロキシインドリル基、イミダゾイル基が好ましく、ヒドロキシインドリル基およびイミダゾイル基がより好ましい。
【0019】
1のなかでは、神経伝達物質の前駆体として高い生理学的活性または薬理学的活性を示すことから、水素原子、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ベンジル基、ヒドロキシベンジル基、ジヒドロキシベンジル基、インドリル基、ヒドロキシインドリル基およびイミダゾイル基が好ましく、水素原子、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシベンジル基、ジヒドロキシベンジル基、ヒドロキシインドリル基およびイミダゾイル基がより好ましい。
【0020】
前記核磁気共鳴活性核は、放射線を発生しない核磁気共鳴活性な原子核である。前記1H−13C−15N結合は、1Hの磁化を13Cに移動させ、13Cの磁化を15Nに移動させ、15Nの磁化を13Cに戻し、13Cの磁化を1Hに戻すことによって検出することができる。
【0021】
式(I)で表わされる前駆体アミノ酸の具体例としては、例えば、式(II):
【0022】
【化3】
【0023】
で表わされるL−ドーパ、式(III):
【0024】
【化4】
【0025】
で表わされるグルタミン酸、式(IV):
【0026】
【化5】
【0027】
で表わされるグリシン、式(V):
【0028】
【化6】
【0029】
で表わされるL−セリン、式(VI):
【0030】
【化7】
【0031】
で表わされるチロシン、式(VII):
【0032】
【化8】
【0033】
で表わされるヒスチジン、式(VIII):
【0034】
【化9】
【0035】
で表わされる5−ヒドロキシトリプトファンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
式(II)で表わされるL−ドーパは、脱炭酸酵素などの作用によって生体内で代謝され、神経伝達物質(代謝産物)としての式(IIa):
【0037】
【化10】
【0038】
で表わされるドーパミン、式(IIb):
【0039】
【化11】
【0040】
で表わされるノルエピネフィリンまたは式(IIc):
【0041】
【化12】
【0042】
で表わされるエピネフィリンに変換されるという生理学的活性または薬理学的活性を有する。式(III)で表わされるグルタミン酸は、脱炭酸酵素の作用によって生体内で代謝され、神経伝達物質(代謝産物)としての式(IIIa):
【0043】
【化13】
【0044】
で表わされるγ−アミノ酪酸に変換されるという生理学的活性または薬理学的活性を有する。
【0045】
式(IV)で表わされるグリシンおよび式(V)で表わされるL−セリンは、それぞれ、ヒトの体内で代謝されることにより、神経伝達物質(代謝産物)としての式(Va):
【0046】
【化14】
【0047】
で表わされるD−セリンに変換されるという生理学的活性または薬理学的活性を有する。なお、式(IV)で表わされるグリシンは、生体内において、神経伝達物質の前駆体として働くとともに、神経伝達物質としても働く化合物である。式(VI)で表わされるチロシンは、脱炭酸酵素の作用によって生体内で代謝されることにより、神経伝達物質(代謝産物)としての式(VIa):
【0048】
【化15】
【0049】
で表わされるチラミンに変換されるという生理学的活性または薬理学的活性を有する。式(VII)で表わされるヒスチジンは、脱炭酸酵素の作用によって生体内で代謝されることにより、神経伝達物質(代謝産物)としての式(VIIa):
【0050】
【化16】
【0051】
で表わされるヒスタミンに変換されるという生理学的活性または薬理学的活性を有する。式(VIII)で表わされる5−ヒドロキシトリプトファンは、脱炭酸酵素の作用によって生体内で代謝されることにより、神経伝達物質(代謝産物)としての式(VIIIa):
【0052】
【化17】
【0053】
で表わされるセロトニンに変換されるという生理学的活性または薬理学的活性を有する。
【0054】
本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸は、例えば、13C核および15N核でラベルしたグリシンを出発物質として用いて当該グリシンのアミノ基に適切な保護基を導入して誘導体を得、得られた誘導体を不斉アルキル化または不斉水素化させ、保護基を除去することなどによって製造することができる。
【0055】
本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸は、前述したように、生体内において、神経伝達物質の前駆体アミノ酸としての生理学的活性または薬理学的活性を示すものであり、しかも高い選択性で検出することができることから、多重共鳴用のプローブの有効成分として用いることができる。本発明には、前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸を有効成分として含有する多重共鳴用のプローブも包含される。
【0056】
本発明の多重共鳴用のプローブは、式(I)で表わされ、1H、13Cおよび15Nからなる群より選ばれた少なくとも2種類の核磁気共鳴活性核を有し、かつ異なる共鳴周波数を有する少なくとも3個の核磁気共鳴活性核からなる結合を有している前駆体アミノ酸を有効成分として含有しているため、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、しかも高い選択性で検出することができる。また、本発明の多重共鳴用のプローブに含まれる神経伝達物質の前駆体アミノ酸から代謝反応によって生成された神経伝達物質は、前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸と区別しながら同時に検出することができる。したがって、本発明の多重共鳴用のプローブによれば、本発明の多重共鳴用のプローブを用いて多重共鳴NMR法、多核多重磁気共鳴画像化方法などを行なうことにより、生体内における代謝反応の過程を追跡することができる。
【0057】
本発明の多重共鳴用のプローブにおける前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸の含有量は、前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸の種類、多重共鳴用のプローブの用途などによって異なることから、一概には決定することができないので、前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸の種類、多重共鳴用のプローブの用途などに応じて適宜決定することが望ましい。本発明の多重共鳴用のプローブにおける前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸の含有量は、通常、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示す範囲であればよく、神経伝達物質の前駆体アミノ酸から代謝反応によって生成された神経伝達物質の生理学的活性を十分に発揮させる観点から、好ましくは1μmol以上、より好ましくは10μmol以上である。なお、本発明の多重共鳴用のプローブは、前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸のみからなるものであってもよい。
【0058】
本発明の多重共鳴用のプローブは、必要により、当該プローブを用いる部位以外の部位での分解、修飾などによる失活を抑制するための阻害剤、安定化剤、溶解補助剤、薬物運搬体などの助剤を含有していてもよい。
【0059】
本発明の多重共鳴用のプローブは、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、体内における代謝反応の過程を追跡することができ、さらに高い選択性で検出することができることから、多重共鳴NMR法、多核多重磁気共鳴画像化方法などに用いることができる。
【0060】
本発明の多重共鳴用のプローブを多重共鳴NMR法に用いる場合、当該多重共鳴NMR法は、例えば、本発明の多重共鳴用のプローブを用いて代謝反応を行なうことによって得られた反応生成物または本発明の多重共鳴用のプローブからNMR測定用試料を調製し、当該NMR測定用試料の多重共鳴NMRスペクトルを測定することによって実施することができる。
【0061】
本発明の多重共鳴用のプローブを多重磁気共鳴画像化方法に用いる場合、当該多重磁気共鳴画像化方法は、例えば、本発明の多重共鳴用のプローブを検体に付与した後、前記検体に電磁波を照射して前記プローブの前記結合中の各核の間での磁化移動を行ない、当該磁化移動を利用して前記プローブに起因する多重共鳴シグナルを検出し、画像化することによって実施することができる。
【0062】
検体への前記多重共鳴用のプローブの付与は、例えば、皮下注射、経口投与、経皮投与、静脈投与、腹腔内投与などによって行なうことができるが、本発明は、かかる例示に限定されるものではない。
【0063】
前記多重共鳴用のプローブを検体に付与する際には、当該多重共鳴用のプローブを分散媒に溶解させて用いることができる。前記分散媒は、プローブを溶解させるための液状の物質であればよく、例えば、生理食塩水、注射用蒸留水、リン酸緩衝水溶液(PBS)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、前記多重共鳴用のプローブは、分散媒の他に、必要に応じて薬理上許容できる添加物とともに用いてもよい。
【0064】
電磁波の照射に際しては、1H−13C−15N結合に基づく1H−{13C−15N}三重核磁気共鳴法のパルス系列と磁気共鳴撮像法のパルス系列とを用いることができる。前記磁気共鳴撮像法のパルス系列は、例えば、プローブに含まれる磁気共鳴活性核の縦緩和時間(T1)、横緩和時間(T2)などに基づいて適宜設定することができる。前記磁気共鳴撮像法のパルス系列としては、例えば、スピンエコー法、高速スピンエコー法、エコープラナーイメージング法、グラジエントエコー法、スポイルドグラジエントエコー法、コヒーレントグラジエントエコー法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0065】
電磁波を照射して前記プローブの前記結合中の各核の間での磁化移動を行なうことによって、前記プローブの前記結合中の各核磁気共鳴活性核に由来する多重共鳴シグナルの出現、消失、強度変化などに基づき、プローブの位置、存在量、構造などの情報を得、かかる情報に基づき画像を構築することができる。
【0066】
以上説明したように、本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸および当該神経伝達物質の前駆体アミノ酸を有効成分として含有する本発明の多重共鳴用プローブによれば、生体内において、神経伝達物質の前駆体としての生理学的活性または薬理学的活性を示し、しかも高い選択性で検出することができる。また、本発明の多重共鳴用のプローブに含まれる神経伝達物質の前駆体アミノ酸から代謝反応によって生成された神経伝達物質は、当該前駆体アミノ酸の核磁気共鳴活性核に帰属される多重共鳴NMRスペクトルとは異なる多重共鳴NMRスペクトルを示すことから、前記神経伝達物質の前駆体アミノ酸と区別しながら同時に検出することができる。そのため、本発明の多重共鳴用のプローブによれば、生体内における代謝反応の過程を追跡することができる。したがって、本発明の神経伝達物質の前駆体アミノ酸および当該神経伝達物質の前駆体アミノ酸を有効成分として含有する本発明の多重共鳴用プローブは、神経伝達物質に関連する代謝反応の解析、神経伝達物質が関与する疾患の診断を行なうための画像情報の取得などに好適に用いることが期待されるものである。
【実施例】
【0067】
実施例1
以下に示される化合物1(13C−15N−ラベル化グリシン)を出発物質として用い、式:
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
(式中、CbzClは塩化ベンジルオキシカルボニル、Cbzはベンジルオキシカルボニル基、TEBACは塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、t−BuBrは2−ブロモ−2−メチルプロパン、DMAはN,N−ジメチルアセトアミド、t−BuOはtert−ブチルオキシ基、Pd/Cはパラジウム/炭素、EtOHはエタノール、Ph2C=NHはベンゾフェノンイミン、Phはフェニル基、BnOはベンジルオキシ基、Tolueneはトルエン、citric acidはクエン酸、THFはテトラヒドロフラン、Et3SiHはトリエチルシランを示す)
で表わされる反応にしたがって、化合物8(13C/15N−ラベル化L−ドーパ)を調製した。より具体的には、以下の操作を行なうことにより、化合物1(13C−15Nラベル化グリシン)から化合物8(13C/15N−ラベル化L−ドーパ)を調製した。
【0071】
(1)前記式における化合物2の調製
2M水酸化ナトリウム水溶液6.8mLに2−13C−15Nグリシン(1.04g,13.5mmol)を加えて溶解させた後、得られた溶液を0℃に冷却した。前記で得られた溶液に塩化ベンジルオキシカルボニル2.3mL(16.2mmol)を加えた後、当該溶液に4M水酸化ナトリウム水溶液(3.4mL)をゆっくりと滴下し、0℃で20時間撹拌した。前記で得られた溶液をジエチルエーテルで3回洗浄し、水層を分取した。得られた水層に5M塩酸を加えて当該水層のpHを1に調製した後、得られた懸濁液を0℃に冷却し、白色沈殿物を生成させた。前記白色沈殿物を濾別し、減圧下に乾燥させることにより、化合物2〔収量:2.51g(11.89mmol)、収率:88%〕を得た。
【0072】
なお、生成した化合物が前記式における化合物2であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMR、15N{1H}−NMRおよびESI−TOF−MSによって確認された。
【0073】
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 7.37-7.32 (5H), 5.28 (d, JCH= 93 Hz, 1H), 5.14 (2H), 4.05 (dd, J = 138 Hz, 5.4 Hz, 2H)
13C{1H}-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ: 42.4 (d, 1JCN= 14 Hz)
15N{1H}-NMR (CD3OD, 40 MHz) δ: 71.4 (d, 1JCN= 14 Hz)
ESI-TOF-MS [M + Na]+: 234.0484.
【0074】
(2)前記式における化合物3の調製
前記で得られた化合物2(2.26g、10.7mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(75mL)に加えて溶解させた。得られた溶液に、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム2.44g(10.7mmol)と2−ブロモ−2−メチルプロパン67.1g(490mmol)とを加えた後、あらかじめ乾燥させておいた炭酸カリウム36g(260mmol)を加え、55℃で24時間加熱しながら撹拌した。得られた溶液に超純水(1L)と酢酸エチル(250mL)とを加えて抽出を行ない、有機層を分取した。得られた有機層を超純水(100mL)で2回洗浄し、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。洗浄後に得られた溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後、エバポレーターで溶媒を留去し、減圧下に乾燥させることにより、オイル状の化合物3〔収量:2.73g(9.99mmol)、収率93%〕を得た。
【0075】
なお、生成した化合物が前記式における化合物3であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMR、15N{1H}−NMRおよびESI−TOF−MSによって確認された。
【0076】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ: 7.38-7.27 (5H), 5.21 (d, JCH = 88 Hz, 1H, 15NH), 5.12 (s, 2H), 3.87 (dd, J = 140, 3.9 Hz, 2H), 1.47 (s, 9H)
13C{1H}-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ: 43.4 (d, JCN = 14 Hz)
15N{1H}-NMR (CDCl3, 40 MHz) δ: 68.8 (d, JCN = 14 Hz)
ESI-TOF MS [M + Na]+: 290.1355.
【0077】
(3)前記式における化合物4の調製
前記で得られた化合物3(2.67g、9.99mmol)を、アルゴンガス雰囲気下でエタノール20mLに溶解させた後、得られた溶液に5%(パラジウム基準)パラジウム炭素(Pd/C)(300mg)を加え、アルゴンガスを0℃で水素に置換し、室温で5.5時間激しく撹拌した。その後、得られた反応液を珪藻土濾過助剤〔アルファ・エイサー(Alfa Aesar)社製、商品名:Filter aid、Celite Standard Super−cel〕で濾過して当該反応液に含まれるパラジウム炭素を除去し、得られた濾液をエバポレーターで濃縮した。得られた残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチルとを加えて抽出を行ない、有機層を分取した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水し、エバポレーターで濃縮した後、減圧下に乾燥させることにより、化合物4〔収量:0.92g(6.92mmol)、収率:69%〕を得た。
【0078】
なお、生成した化合物が前記式における化合物4であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMR、15N{1H}−NMRおよびESI−TOF−MSによって確認された。
【0079】
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 3.31 (d, J = 136 Hz, 2H), 1.47 (s, 9H)
13C{1H}-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ: 44.7 (d, JCN = 4.5 Hz)
15N{1H}-NMR (CDCl3, 40 MHz) δ = 7.4 (d, JCN = 4.5 Hz)
ESI-TOF MS [M + H]+ 134.1025.
【0080】
(4)前記式における化合物5の調製
前記で得られた化合物4(0.92g、6.92mmol)を塩化メチレン溶液(20.4mL)に溶解させた後、得られた溶液にベンゾフェノンイミン1.26g(6.98mmol)を加え、室温で24時間撹拌し、沈殿物を生成させた。生成した沈殿物を濾過して除去した後、得られた濾液をエバポレーターで濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテル30mLを加えた後、生成した不溶物を濾過して除去した。得られた濾液を超純水30mLで洗浄した後、得られた溶液からエバポレーターで溶媒を減圧下に除去した。得られた固体をエタノールで再結晶させることにより、化合物5〔収量:1.73g(5.
82mmol)、収率:84%〕を得た。
【0081】
なお、生成した化合物が前記式における化合物5であることは、以下の1H−NMRおよびESI−TOF−MSによって確認された。
【0082】
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 7.68-7.16 (10H), 4.11 (d, J = 136 Hz, 2H), 1.46 (s, 9H)
ESI-TOF MS [M + H]+ 298.1497.
【0083】
(5)前記式における化合物6の調製
前記で得られた化合物5(0.450g、1.53mmol)をトルエン溶液(9mL)に溶解させた後、得られた溶液に(R,R)−3,4,5−トリフルオロフェニル−NAS=ブロミド14mg(1.0mol%)と50質量%水酸化カリウム水溶液3mLとを加え、溶液を0℃に冷却した。得られた溶液に、4−ブロモメチル−1,2−ビスフェニルメトキシベンゼン(0.711g、1.86mmol)を加え、0℃で3時間撹拌した。得られた反応液に超純水とジエチルエーテルとを加えて抽出を行ない、有機層を分取した。得られた有機層をエバポレーターで濃縮した後、得られた残渣にテトラヒドロフラン(15mL)と1Mクエン酸水溶液(15mL)とを加え、室温で16時間撹拌した。
得られた反応液からテトラヒドロフランを減圧下に留去し、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和(pH7)した。得られた溶液に塩化メチレンを加えて抽出を行ない、有機層を得た。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、エバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=6/4〕で精製することにより、オイル状の化合物6〔収量:0.339g(0.779mmol)、収率:51%、光学純度:95%ee〕を得た。
【0084】
なお、生成した化合物が前記式における化合物6であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMR、15N{1H}−NMR、ESI−TOF−MSおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認された。HPLCは、分析カラム〔(株)ダイセル製、商品名:CHIRALCEL OD〕および展開用溶媒〔ヘキサン/2−プロパノール(体積比)=4/1〕を用い、流速0.5mL/分の条件で行なった。
【0085】
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 7.46-7.27 (10H), 6.87 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.72 (dd, J = 8.0, 2.0 Hz, 1H), 5.13 (s, 4H) 3.52 (d, J = 140 Hz, 1H), 2.93 (m, 1H), 2.72 (m、1H), 1.47 (br, 2H), 1.42 (s, 9H)
13C{1H}-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ: 56.3 (d, JCN = 4.3 Hz)
15N{1H}-NMR (CDCl3, 40 MHz) δ: 21.9 (d, JCN = 4.3 Hz)
ESI-TOF MS [M + H]+ 436.2179.
HPLC retention time: 15.9 min (S), 18.0 min (R).
【0086】
(6)前記式における化合物7の調製
前記で得られた化合物6(0.339g、0.779mmol)をテトラヒドロフラン溶液(8mL)に加えて溶解させた。得られた溶液に、アルゴンガス雰囲気下に0℃で10(パラジウム基準)パラジウム炭素(40mg)を加えた。さらに、アルゴンガスを0℃で水素に置換し、50℃で4時間加熱しながら撹拌した。得られた反応液を珪藻土濾過助剤〔アルファ・エイサー(Alfa Aesar)社製、商品名:Filter aid、Celite Standard Super−cel〕で濾過して当該反応液に含まれるパラジウム炭素を除去し、得られた濾液をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製することにより、化合物7〔収量:75.4mg(0.299mmol)、収率:38%〕を得た。
【0087】
なお、生成した化合物が前記式における化合物7であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMR、15N{1H}−NMRおよびESI−TOF−MSによって確認された。
【0088】
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz) δ: 6.68 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 6.48 (dd, J = 8.1, 1.8 Hz, 1H), 5.21 (br, 4H), 3.52 (d, J = 141 Hz, 1H), 2.93 (m, 1H), 2.67 (m, 1H), 1.44 (s, 9H)
13C{1H}-NMR (CDCl3, 75 MHz) δ: 55.4 (d, JCN = 4.5 Hz)
15N{1H}-NMR (CDCl3, 40 MHz) δ: 26.2 (d, JCN = 4.5 Hz)
ESI-TOF-MS [M + H]+ 256.1319.
【0089】
(7)前記式における化合物8の調製
前記で得られた化合物7(75.4mg、0.299mmol)を塩化メチレン(0.82mL)に加えて溶解させた。得られた溶液に、アルゴンガス雰囲気下にトリフルオロ酢酸(0.39mL、5.3mmol)とトリエチルシラン(0.16mL、1.0mmol)とを加え、室温で19時間撹拌した。得られた反応液をエバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物をジエチルエーテルで洗浄した後、当該濃縮物をろ過して溶媒を除去した。得られた固体を混合溶媒(水/2−プロパノール(体積比)=6/4)で再結晶させることにより、化合物8(収量:25.3mg(0.127mmol)、収率:42%、光学純度:94%ee)を得た。
【0090】
なお、生成した化合物が前記式における化合物8(13C/15N−ラベル化L−ドーパ)であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMR、15N{1H}−NMR、ESI−TOF−MSおよびHPLCによって確認された。HPLCは、分析カラム〔(株)ダイセル製、商品名:CROWNPAK CR(+)〕および展開用溶媒〔過塩素酸水溶液(pH2)〕を用い、流速0.5mL/分の条件で行なった。
【0091】
1H-NMR (D2O, 300 MHz) δ: 6.75 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 6.67 (d, J = 0.9 Hz, 1H), 6.59 (dd, J = 8.1, 0.9 Hz, 1H), 3.77 (d, 1JCH = 141 Hz 1H), 3.00 (m, 1H), 2.85 (m, 1H)
13C{1H}-NMR (D2O, 75 MHz) δ: 54.9 (d, JCN = 5.9 Hz)
15N{1H}-NMR (D2O, 40 MHz) δ: 33.6 (d, JCN = 5.9 Hz)
ESI-TOF MS [M + H]+ 200.0707.
HPLC retention time: 5.7 min (R, d-dopa) and 6.6 min (S, l-dopa).
【0092】
製造例1
以下に示される化合物9(4−ブロモメチル−1,2−ビスフェニルメトキシベンゼン)を出発物質として用い、式:
【0093】
【化20】
【0094】
(式中、BnOはベンジルオキシ基、NMPはN−メチル−2−ピロリドン、Pd(OH)2/Cは水酸化パラジウム/炭素、EtOHはエタノールを示す)
で表わされる反応にしたがって、化合物11(13C/15N−ラベル化ドーパミン塩酸塩)を調製した。より具体的には、以下の操作を行なうことにより、化合物9(4−ブロモメチル−1,2−ビスフェニルメトキシベンゼン)から化合物11(13C/15N−ラベル化ドーパミン塩酸塩)を得た。
【0095】
4−ブロモメチル−1,2−ビスフェニルメトキシベンゼン(510mg、1.33mmol)をN−メチルピロリドン(3mL)に溶解させた。得られた溶液に[13C,15N]−シアン化カリウム(152mg、2.26mmol)を加え、100℃で20時間加熱しながら攪拌した。得られた反応液に飽和重曹水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー〔ヘキサン/酢酸エチル(体積比)=6/1〕で精製することにより、化合物10(収量:320mg)を得
た。
【0096】
得られた化合物10(320mg)を、アルゴンガス雰囲気下で、エタノール(4mL)/クロロホルム(2mL)混合溶液に、0℃で20%水酸化パラジウム/炭素(80mg)を加えた。さらに、アルゴンガスを0℃で水素に置換し、50℃で終夜加熱撹拌した後、反応溶液を珪藻土濾過助剤〔アルファ・エイサー(Alfa Aesar)社製、商品名:Filter aid、Celite Standard Super−cel〕で濾過して、Pd(OH)2/Cを濾過除去した後、濾液をエバポレーターで濃縮した。残渣を水に溶解し、塩化メチレンで洗浄後、水層を濃縮した。得られた濃縮物を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)で精製することにより、化合物11〔収量:7.7mg(0.05mmol)、収率:3.8%〕を得た。
【0097】
なお、生成した化合物が前記式における化合物11であることは、以下の1H−NMR、13C{1H}−NMRおよびESI−TOF−MSによって確認された。
【0098】
1H-NMR (D2O, 400 MHz) δ: 6.77 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.70 (s, 1H), 6.62 (d, J = 7.8 Hz), 3.09 (dt, J = 144.3, 6.8 Hz, 2H), 2.73 (m, 2H)
13C{1H}-NMR (D2O, 100 MHz) δ: 41.3 (d, J = 4.1 Hz).
ESI-TOF-MS [M]+ 156.0887.
【0099】
実施例2
実施例1で得られた13C/15N−ラベル化L−ドーパ(2.0mM)または製造例1で得られた13C/15N−ラベル化ドーパミンと、5mm TCIクライオプローブを装備した核磁気共鳴装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:Bruker Avance 600(600MHz)〕とを用い、重水中における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを測定した(積算回数16回)。実施例2において、1H−{13C−15N}三重核磁気共鳴法に用いられたパルスシーケンスを図1に示す。図中、細いバーが90°パルス、太いバーが180°パルスを示す。CHおよびCNのカップリング定数1CHおよび1CNに基づき、順に1Hから13Cへの磁化移動、当該13Cから15Nへの磁化移動、さらに当該15Nから13Cへの磁化移動、最終的に13Cから1Hへの磁化移動により、シグナルを検出するように設定し、13C/15N−ラベル化L−ドーパと13C/15N−ラベル化ドーパミンの同時観測を目的として、1CH=149Hzおよび1CN=6.2Hzをパラメータとして設定した。実施例2で得られた13C/15N−ラベル化L−ドーパの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図2(A)、実施例2で得られた13C/15N−ラベル化ドーパミンの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図2(B)に示す。
【0100】
図2(A)に示された結果から、化学シフト値3.84ppmの位置に、13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属される1H−{13C−15N}三重共鳴NMRシグナルが見られることがわかる。また、図2(B)に示された結果から、化学シフト値3.13ppmの位置に、13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属される1H−{13C−15N}三重共鳴NMRシグナルが見られることがわかる。これらの結果から、図1に示されるパルスシーケンスを用いることにより、代謝基質である13C/15N−ラベル化L−ドーパとその代謝産物である13C/15N−ラベル化ドーパミンとを同時に、かつ高い選択性で検出することができることがわかる。
【0101】
実施例3
芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素などの代謝酵素が高発現しているマウス肝臓組織内では、前記芳香族脱炭酸酵素によってL−ドーパからドーパミンを生成する代謝反応が行なわれている。そこで、マウス肝臓組織の抽出液と、実施例1で得られた13C/15N−ラベル化L−ドーパとを用い、13C/15N−ラベル化L−ドーパの代謝反応を調べた。より具体的には、以下の操作を行なうことにより、13C/15N−ラベル化L−ドーパの代謝反応を調べた。
【0102】
マウス(C57BL/6Jマウス、体重:15g)の肝臓組織を20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)中でホモジナイズすることにより、肝臓組織抽出液を得た。得られた肝臓組織抽出液を、その濃度が10体積%となるように、反応用混合液〔組成:500μM 13C/15N−ラベル化L−ドーパ、2mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.1mMエチレンジアミン四酢酸、0.1mM2−メルカプトエタノールおよび100μMピリドキサールリン酸〕に加え、得られた混合液を37℃で45分間インキュベーションすることによって反応を行なった。
【0103】
得られた反応液と、5mm TCIクライオプローブを装備した核磁気共鳴装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:Bruker Avance 600(600MHz)〕とを用い、重水中における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−NMRスペクトル、1H−{13C}−NMRスペクトルおよび1H−{13C−15N}−NMRスペクトルのそれぞれを測定した。パルスシーケンスとして図1に示されたパルスシーケンスを用いた。実施例3において、肝臓組織抽出液を含む溶液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−NMRスペクトル、1H−{13C}−NMRスペクトルおよび1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図3に示す。図中、(a)は3C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−NMRスペクトル、(b)は13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C}−NMRスペクトル、(c)は13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示す。
【0104】
図3に示された結果から、1H−{13C−15N}三重共鳴NMRによれば、代謝基質である13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(3.84ppm)と、13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(3.13ppm)との双方がみられることがわかる。また、図3に示された結果から、代謝基質である13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(3.84ppm)よりも、13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(3.13ppm)が多くなっていることから、13C/15N−ラベル化L−ドーパの代謝反応の進行が確認された。これに対し、1H−NMR〔図中、(a)参照〕では、多数の1Hシグナルがみられることから、13C/15N−ラベル化L−ドーパの代謝反応を調べることは困難であることがわかる。また、1H−{13C}−二重共鳴NMR〔図中、(b)参照〕では、1H−NMRに比べて1Hシグナルの数が少なくなっているが、肝臓抽出液中の夾雑物由来の1Hシグナルが見られることがわかる。これらの結果から、夾雑物が多数存在する生体系においても、1H−{13C−15N}三重共鳴NMRを用いることにより、13C/15N−ラベル化L−ドーパと13C/15N−ラベル化ドーパミンとを同時に、かつ高い選択性で検出することができることがわかる。
【0105】
実施例4
マウス(C57BL/6Jマウス、体重:15g)の肝臓組織を20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)中でホモジナイズすることにより、肝臓組織抽出液を得た。
【0106】
得られた肝臓組織抽出液を、その濃度が10体積%となるように、反応用混合液〔組成:500μM 13C/15N−ラベル化L−ドーパ、2mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.1mMエチレンジアミン四酢酸、0.1mM2−メルカプトエタノールおよび100μMピリドキサールリン酸〕に加え、得られた溶液を37℃で45分間インキュベーションした。一方、前記において、肝臓組織抽出液を前記反応用混合液の代わりにブランクとして超純水を加え、得られた溶液を37℃で45分間インキュベーションした。
【0107】
インキュベーション後に得られた各溶液と、5mm TCIクライオプローブを装備した核磁気共鳴装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:Bruker Avance 600(600MHz)〕とを用い、重水中における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルのそれぞれを測定した。パルスシーケンスとして図1に示されたパルスシーケンスを用いた。実施例4において、肝臓組織抽出液を含む溶液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図4(A)、肝臓組織抽出液を含まない溶液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図4(B)に示す。図中、ピークAは13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル、ピークBは13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナルを示す。
【0108】
図4に示された結果から、肝臓組織抽出液を含む溶液においては、13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークA)および13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークB)の双方がみられるが、肝臓組織抽出液を含まない溶液においては、13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークB)がみられないことがわかる。
【0109】
これらの結果から、1H−13C−15N結合を有する13C/15N−ラベル化L−ドーパを用いることにより、マウスの肝臓組織抽出液中に含まれる芳香族L−アミノ酸脱炭酸酵素による13C/15N−ラベル化L−ドーパから13C/15N−ラベル化ドーパミンへの代謝を調べることができることがわかる。また、1H−{13C−15N}三重共鳴NMRを用いることにより、13C/15N−ラベル化L−ドーパと13C/15N−ラベル化ドーパミンとを同時に、かつ高い選択性で検出することができることがわかる。なお、式(I)で表わされ、かつH、13Cおよび15Nからなる群より選ばれた少なくとも2種類の核磁気共鳴活性核を有するとともに異なる共鳴周波数を有する少なくとも3個の核磁気共鳴活性核からなる結合を有する他の神経伝達物質の前駆体アミノ酸を多重共鳴用のプローブとして用いたときにも同等の傾向が見られる。
【0110】
実施例5
臨床で用いられているL−ドーパ製剤は、脳内での薬効を高めるため、肝臓、腎臓などの臓器における代謝分解を抑制するための脱炭酸酵素阻害剤と併用されている。そこで、13C/15N−ラベル化L−ドーパの脱炭酸代謝反応に対する脱炭酸酵素阻害剤の効果を、13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを測定することによって調べた。より具体的には、以下の操作を行なうことにより、13C/15N−ラベル化L−ドーパの脱炭酸代謝反応に対する脱炭酸酵素阻害剤の効果を調べた。
【0111】
マウス(C57BL/6Jマウス、体重:15g)の肝臓組織を20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)中でホモジナイズすることにより、肝臓組織抽出液を得た。得られた肝臓組織抽出液をその濃度が10体積%となるように反応用混合液〔組成:500μM 13C/15N−ラベル化L−ドーパ、2mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.1mMエチレンジアミン四酢酸、0.1mM2−メルカプトエタノールおよび100μMピリドキサールリン酸〕に加えるとともに、カルビドパ(0.125当量)またはベンゼラジド(0.125当量)を加え、得られた混合液を37℃で45分間インキュベーションすることによって反応を行なった。一方、肝臓組織抽出液をその濃度が10体積%となるように反応用混合液〔組成:500μM 13C/15N−ラベル化L−ドーパ、2mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.1mMエチレンジアミン四酢酸、0.1mM2−メルカプトエタノールおよび100μMピリドキサールリン酸〕に加え、得られた混合液を37℃で45分間インキュベーションすることによって反応を行なった。
【0112】
得られた反応液と、5mm TCIクライオプローブを装備した核磁気共鳴装置〔ブルカー・バイオスピン(Bruker BioSpin)社製、商品名:Bruker Avance 600(600MHz)〕とを用い、13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを測定した。パルスシーケンスとして図1に示されたパルスシーケンスを用いた。実施例5において、カルビドパを含む反応液およびカルビドパを含まない反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図5に示す。図5中、(a)はカルビドパを含まない反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトル、(b)はカルビドパを含む反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示す。また、実施例5において、ベンゼラジドを含む反応液およびベンゼラジドを含まない反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを図6に示す。図6中、(a)はベンゼラジドを含まない反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトル、(b)はベンゼラジドを含む反応液における13C/15N−ラベル化L−ドーパおよび13C/15N−ラベル化ドーパミンそれぞれの1H−{13C−15N}−NMRスペクトルを示す。また、図5および図6中、ピークAは13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル、ピークBは13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナルを示す。
【0113】
図5に示された結果から、カルビドパを含まない反応液においては、13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークA)および13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークB)の双方がみられるが、カルビドパを含む溶液においては、13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークB)がみられないことがわかる。また、図6に示された結果から、ベンゼラジドを含まない反応液においては、13C/15N−ラベル化L−ドーパのメチンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークA)および13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークB)の双方がみられるが、ベンゼラジドを含む溶液においては、13C/15N−ラベル化ドーパミンのメチレンの1H−13C−15Nの1Hに帰属されるシグナル(ピークB)がみられないことがわかる。これらの結果から、13C/15N−ラベル化L−ドーパを用いることにより、13C/15N−ラベル化L−ドーパの脱炭酸代謝反応に対する脱炭酸酵素阻害剤の効果を調べることができることがわかる。
【0114】
以上の結果から、13C/15N−ラベル化L−ドーパに代表される式(I)で表わされる神経伝達物質の前駆体アミノ酸を多重共鳴用のプローブとして用い、1H−{13C−15N}三重共鳴NMR法を行なうことにより、代謝基質であるL−ドーパなどの神経伝達物質の前駆体とその代謝産物であるドーパミンなどの神経伝達物質とを同時に、かつ高い選択性で検出することができ、しかも神経伝達物質の前駆体(代謝基質)から神経伝達物質(代謝産物)への代謝過程を調べることができることが示唆される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6