(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のペースパルス検出器と関連付けられる第1の沈黙タイマーであって、前記第1のペースパルス検出器による前記第1の型式のパルスの検出に応えて、当該第1のペースパルス検出器が別のパルスを検出するのを第1の時間期間に亘って阻止する第1の沈黙タイマーと、
前記第2のペースパルス検出器と関連付けられる第2の沈黙タイマーであって、前記第2のペースパルス検出器による前記第2の型式のパルスの検出に応えて、当該第2のペースパルス検出器が別のパルスを検出するのを第2の時間期間に亘って阻止する第2の沈黙タイマーと、
を更に備えている請求項1に記載の装置。
前記第1及び前記第2のペースパルス検出器を含んでいるペースパルス検出モジュールであって、前記第1及び前記第2の型式のペーシングパルスの検出を示唆する1つ又はそれ以上のペース検出信号を出力するように構成されているペースパルス検出モジュールと、
前記1つ又はそれ以上のペース検出信号の少なくとも1つを得て、前記ペース検出信号が前記第1又は前記第2の型式のペーシングパルスの検出を示唆していることに応えて動作を修正する1つ又はそれ以上の構成要素であって、
(a)ペース検出信号の少なくとも1つを受信し、前記ペース検出信号の前記少なくとも1つが前記第1の型式のペーシングパルスの検出を示唆している場合にブランキング制御信号をアクティブにするブランキング制御モジュールと、
前記ブランキング制御信号を受信し、前記ブランキング制御信号がアクティブにされている場合に前記感知される電気信号を現在の値に保持するブランキングモジュール、及び/又は、
(b)ペース検出信号の少なくとも1つを受信し、前記ペース検出信号の前記少なくとも1つを解析して頻脈性不整脈検出アルゴリズムを修正するべきかどうかを判定する制御モジュール、
の少なくとも一方を含んでいる1つ又はそれ以上の構成要素と
を更に備えている請求項1から請求項3の何れか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0026]
図1は、患者12内に植え込まれている一例としての心臓システム10を示す概念図である。心臓システム10は、胸郭及び/又は胸骨より上に植え込まれている皮下ICDシステム14と、患者12の心臓18内に植え込まれているリードレス心臓ペーシング装置16と、を含んでいる。ここに更に詳細に説明されている様に、皮下ICDシステム14は、ペーシング装置16によって送達されるペーシング療法を、感知される電気信号を解析することによって検出するように、及びペーシング療法を検出していることに応えて感知及び/又は頻脈性不整脈検出を修正するように、構成されている。
【0014】
[0027]皮下ICDシステム14は、少なくとも1つの植え込み型心臓除細動リード22へ接続された植え込み型心臓除細動器(ICD)20を含んでいる。
図1のICD20は、患者12の左側部の皮膚の下、但し胸郭より上に皮下的に植え込まれている。除細動リード22は皮下的に皮膚の下を但し胸郭より上をICD20から患者12の体幹部の中心に向かって延び、体幹部の中心付近で曲がり又は向きを変え、皮下的に皮膚の下を但し胸郭及び/又は胸骨より上を延びている。除細動リード22は、外側方向に胸骨の左又は右へオフセットされていてもよいし、胸骨を越えて配置されていてもよい。除細動リード22は、実質的に胸骨に平行であってもよいし、近位端か遠位端のどちらかのところで胸骨から側方に角度を付けられていてもよい。
【0015】
[0028]除細動リード22は、ICD20へ接続されるように構成されているコネクタを含んでいる近位端と、1つ又はそれ以上の電極を含んでいる遠位部分と、を有する絶縁性リード本体を含んでいる。除細動リード22は、更に、リード本体内に電気的伝導経路を形成していて電気的コネクタと電極各々を相互接続している1つ又はそれ以上の導体を含んでいる。
【0016】
[0029]除細動リード22は、除細動電極24を、除細動リード22の遠位部分寄り、例えば除細動リード22の胸骨に沿って延びている部分寄りに含んでいる。除細動リード22は、胸骨に沿って、除細動電極24とICD20によって又はICD20上に形成されているハウジング電極(又は療法ベクトルの他方である第2の電極)との間の療法ベクトルが実質的に心臓18の心室を横切るような具合に設置されている。療法ベクトルは、1つの実施例では、除細動電極24上の或る点(例えば除細動電極24の中心)からICD20のハウジング電極上の或る点へ延びている線として見ることができる。除細動電極24は、1つの実施例では、細長のコイル電極とすることができる。
【0017】
[0030]除細動リード22は、更に、除細動リード22の遠位部分に沿って配置されている感知電極26及び28の様な1つ又はそれ以上の感知電極を含んでいる。
図1に示されている実施例では、感知電極26と28は除細動電極24によって互いから分離されている。但し他の実施例では、感知電極26と28はどちらもが除細動電極24の遠位に又はどちらもが除細動電極24の近位にあってもよい。他の実施例では、リード22はより多い又はより少ない電極を含んでいることもある。
【0018】
[0031]ICDシステム14は、電気信号を、電極26及び28とICD20のハウジング電極との組合せを含む1つ又はそれ以上の感知ベクトルを介して感知することができる。例えば、ICD20は、電極26と電極28の間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を得る、電極26とICD20の導電性ハウジング電極との間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を得る、電極28とICD20の導電性ハウジング電極との間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を得る、又はそれらの組合せを使用して感知される電気信号を得る、ことができる。幾つかの事例では、ICD20は、除細動電極24と、電極26と28の一方又はICD20のハウジング電極と、を含んでいる感知ベクトルを使用して心臓の電気信号を感知していることさえある。
【0019】
[0032]感知される固有信号は、心筋によって生成される電気信号であって心臓周期中の様々な時点での心臓18の脱分極及び再分極を示唆する電気信号を含んでいるであろう。加えて、感知される電気信号は、ペーシング装置16によって生成され心臓18へ送達される電気信号、例えばペーシングパルス、を含んでいる場合もある。ICD20は、1つ又はそれ以上の感知ベクトルによって感知される電気信号を解析して、心室頻拍又は心室細動の様な頻脈性不整脈を検出する。頻拍を検出していることに応えて、ICD20は、1つ又はそれ以上のコンデンサの積重体の様な貯蔵要素を充電し始め、充電されたときに、なおも頻脈性不整脈が存在していて除細動療法を必要とすると判定されれば1つ又はそれ以上の除細動ショックを除細動リード22の除細動電極24を介して送達するようになっている。ここに更に詳細に説明されている様に、ICD20は、リード22上の感知される電気信号を解析してペーシング装置16によって提供されるペーシング療法を検出し、ペーシング療法を検出していることに応えて、ペーシング療法がICD20の感知及び検出に悪影響を与える公算を引き下げるべく感知及び/又は頻脈性不整脈検出を修正する。
【0020】
[0033]以上に説明されている様に、心臓システム10は、更に、少なくとも1つの心臓ペーシング装置16を含んでいる。
図1に示されている実施例では、心臓ペーシング装置16は、ペーシング療法を心臓18へペーシング装置16のハウジング上に担持されている一対の電極を介して提供する植え込み型リードレスペーシング装置である。一例としての心臓ペーシング装置が、グリーンハット(Greenhut)らへ「リードレスペーシング及びショック療法のためのシステム及び方法」と題された米国特許出願第13/756,085号に記載されている。心臓ペーシング装置16は2つ又はそれ以上の電極をそのハウジング外部に担持させて含んでいるので、他のリード又は構造体を心臓18の他の房室に常在させる必要はない。
【0021】
[0034]
図1の実施例では、心臓ペーシング装置16は、心臓18の電気的活動を感知し、ペーシング療法、例えば抗頻拍ペーシング(ATP)療法、徐脈ペーシング療法、及び/又はショック後ペーシング療法を心臓18へ送達するように心臓18の右心室内に植え込まれている。ペーシング装置16は、心臓18の右心室の壁へ、組織に貫入する1つ又はそれ以上の定着要素を介して付着されていてもよい。これらの定着要素は、ペーシング装置16を心臓組織へ固定し、電極(例えばカソード又はアノード)を心臓組織と接触に保持することができる。また一方、他の実施例では、システム10は、追加のペーシング装置16を心臓12のそれぞれの房室(例えば右又は左心房及び/又は左心室)内に含んでいることもある。更なる実施例では、ペーシング装置16は、ペーシング装置16が心臓18の外に配置されるように心臓18の外表面へ(例えば心外膜と接触に)付着されていることもある。
【0022】
[0035]ペーシング装置16は、ペーシング装置16のハウジング上に担持されている電極を使用して電気信号を感知することができる。これらの電気信号は、心筋によって生成されている電気信号であって心臓周期中の様々な時点での心臓18の脱分極及び再分極を示唆する電気信号である。ペーシング装置16は、感知される信号を解析して、心室頻拍又は心室細動の様な頻脈性不整脈を検出する。頻脈性不整脈を検出していることに応え、ペーシング装置16は、頻脈性不整脈の種類に依存して例えばATP療法をペーシング装置16の電極を介して送達し始める。ATP療法に加えて又はATP療法の代わりに、ペーシング装置16は、更に、徐脈ペーシング療法及びショック後ペーシング療法を送達することもできる。
【0023】
[0036]心臓ペーシング装置16及び皮下ICDシステム14は、互いに完全に独立して動作するように構成されている。言い換えれば、ペーシング装置16と皮下ICDシステム14は、感知及び/又は療法についての情報を一方向通信又は二方向通信を使用してやり取りするための互いとのテレメトリ通信セッションを確立する能力がない。代わりに、ペーシング装置16と皮下ICDシステム14の各々は、各自の電極を介して感知されるデータを解析して頻脈性不整脈検出及び/又は療法決定を行っている。そういうものとして、各装置は、他方が頻脈性不整脈を検出しようとしているのかどうか、他方が療法を提供しようとしているのかどうか又は何時療法を提供することになるのか、など、を知らない。
【0024】
[0037]ATPか又は除細動ショックの何れかを用いて治療することができ得る頻脈性不整脈中は、確実にATP療法が重複したり除細動ショック後に起こったりしないようにすることが肝要である。除細動ショック後のATP印加は不整脈を誘発しないとも限らず、患者へ害を与えかねない。また、ペーシング装置16からのペーシングの送達は皮下ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出に干渉しないとも限らない。この干渉は、感度の低下(例えば、心室頻拍(VT)及び/又は心室細動(VF)を検出することができない)又は特異度の低下(例えば、上室性頻拍(SVT)、洞性頻拍(ST)、正常洞調律、心房細動、心房粗動、などの様な、除細動ショック不要と判定される頻脈性不整脈について療法を差し控えることができない)という形となって現れるかもしれない。皮下ICDシステム14とペーシング装置16の間の装置間通信を提供するようにシステムを設計することもできたかもしれないが、これではシステムに複雑性が加わることになるし、しかも望まれない除細動ショック後ATP療法を予防できるほど極めて有効又は迅速というわけにはいかないかもしれない。ここに説明されている技法は、皮下ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出への干渉を低減し、場合によっては干渉を排除する。
【0025】
[0038]
図1は皮下ICDシステム14及びリードレスペーシング装置16の文脈で説明されているが、本技法は他の共在システムへ適用することもできる。一例として、肋骨及び/又は胸骨より上に植え込まれる代わりに遠位部分が少なくとも部分的に胸骨の下(又は他の心膜外場所)に植え込まれているリードを含んでいるICDシステムがある。別の例として、リードレスペーシング装置の代わりに、ペースメーカーと、ペースメーカーへ接続されていてペースメーカーから心臓の1つ又はそれ以上の房室の中へ延びるか又は心臓の外部へ付着されてペーシング療法を1つ又はそれ以上の房室へ提供するようになっている1つ又はそれ以上のリードと、を有するペーシングシステムが植え込まれるということもある。また、本開示の技法は、加えて、ICD20を含んでいない植え込み型医療装置に有用であろう。例えば、心臓の異なる房室に植え込まれているリードレスペーシング装置同士が互いによって送達されるペーシングパルスを検出できるようになり、その結果、直接の通信が何も要らなくなる、というのは有益であろう。そういうものとして、
図1の実施例は、単に例示を目的に示されているものであり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。
【0026】
[0039]
図2は、一例としてのICD20の電子的構成要素の構成例の機能ブロック線図である。ICD20は、制御モジュール30、感知モジュール32、療法モジュール34、通信モジュール38、及びメモリ40を含んでいる。電子的構成要素は、充電式又は非充電式のバッテリであってもよいパワー源36からパワーを受け取ることができる。他の実施形態では、ICD20は、より多い又はより少ない電子的構成要素を含んでいることもある。説明されているモジュールは、共通のハードウェア構成要素上にまとめて実装されていてもよいし、個別ではあるが相互動作できるハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素として別々に実装されていてもよい。異なる機構をモジュールとして描写しているのは、異なる機能的態様を強調表示することを意図したものであり、必ずしもその様なモジュールが別々のハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを示唆するものではない。そうではなく1つ又はそれ以上のモジュールと関連付けられている機能性は、別々のハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素によって遂行されていてもよいし、共通の又は別々のハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素内に統合されていてもよい。
【0027】
[0040]感知モジュール32は、電極24、26、及び28の幾つか又は全てへ、リード22の導体及び1つ又はそれ以上の電気的フィードスルーを介して電気的に連結されており、更にハウジング電極へICD20のハウジングに内在の導体を介して電気的に連結されている。感知モジュール32は、電極24、26、及び28とICD20のハウジング電極の1つ又はそれ以上の組合せを介して感知される電気信号を得るように、及び得られた電気信号を処理するように、構成されている。
【0028】
[0041]感知モジュール32は、1つ又はそれ以上のアナログ構成要素、デジタル構成要素、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。感知モジュール32は、感知される信号をデジタル形式へ変換し、デジタル信号を処理又は分析のために制御モジュール30へ提供することができる。例えば、感知モジュール32は、感知電極からの信号を増幅し、増幅された信号を、アナログデジタル変換器(ADC)を使用してマルチビットデジタル信号へ変換するようになっていてもよい。感知モジュール32は、更に、処理された信号を閾値と比較して心房脱分極又は心室脱分極(例えばP波又はR波)の存在を検出し、心房脱分極(例えばP波)の存在又は心室脱分極(例えばR波)の存在を制御モジュール30へ指し示すようになっていてもよい。感知モジュール32は、更に、感知される信号を処理して心電図を制御モジュール30へ出力するようになっていてもよい。
【0029】
[0042]制御モジュール30は、VT又はVFの様な頻脈性不整脈を監視する感知モジュール32からの信号を処理することができる。頻脈性不整脈を検出していることに応え、制御モジュール30は、療法モジュール34を制御して、療法モジュール34内の貯蔵要素を充電させ、必要になれば、頻脈性不整脈を終止させるべくカーディオバージョンシパルス又は除細動パルスを送達させることができる。カーディオバージョンシパルス又は除細動パルスは、リード22の除細動電極24とICD20のハウジング電極の間の療法ベクトルを使用して提供されるようになっていてもよい。療法モジュール34は、例えば、1つ又はそれ以上のコンデンサ、変圧器、スイッチ、など、を含んでいてもよい。制御モジュール30は、療法モジュール34を制御して、前縁電圧、傾き、送達されるエネルギー、パルス位相、など、を含む、数多くの波形特性の何れかを有するカーディオバージョンシショック又は除細動ショックを生成させ、送達させることができる。
【0030】
[0043]以上に
図1に関して説明されている様に、ペーシング装置16は独立して頻脈性不整脈を検出し、場合に依っては頻脈性不整脈を終止させようとしてATPを提供する。ペーシング装置16によって提供されるATP療法は、ICD20の感知モジュール32による感知及び頻脈性不整脈検出に干渉しかねない。この干渉は、感度の低下(例えば、VT又はVFを検出することができない)又は特異度(例えば、VT又はVFで療法を必要としない律動について看破すること)の低下という形となって現れないとも限らない。ICD20は、ペーシング装置16によって提供されるATPを、リード22からの感知される電気信号を解析することによって検出するように、及びATPを検出していることに応えて感知及び/又は検出を調節するように、構成されている。これを果たすために、感知モジュール32は、リード22からの感知される電気信号内のペーシングスパイクを検出するように構成されている追加の構成要素を含んでいてもよい。例えば、感知モジュール32は、
図3及び
図5に関して更に詳細に説明されている様にペースパルス検出器を含んでいてもよい。
【0031】
[0044]通信モジュール38は、臨床医のプログラマ又は患者監視装置の様な外部装置と通信するための何れかの適したハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの何れかの組合せ、を含んでいる。例えば、通信モジュール38は、アンテナ42を介してデータを送信及び受信するのに適切な変調部構成要素、復調部構成要素、周波数変換部構成要素、フィルタ処理部構成要素、及び増幅器構成要素を含んでいてもよい。アンテナ42はICD20のコネクタブロック内又はハウジングICD20内に配置させることができる。
【0032】
[0045]ICD20の各種モジュールは、何れかの1つ又はそれ以上のプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はアナログ回路機構又はデジタル回路機構又は論理回路機構を含む同等の離散型又は集積型回路機構、を含んでいてもよい。メモリ40は、制御モジュール30又はICD20の他の構成要素によって実行されるとICD20の1つ又はそれ以上の構成要素に本開示でのそれら構成要素に帰属する様々な機能を遂行させるコンピュータ可読命令を含んでいてもよい。メモリ40は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、スタティック不揮発性RAM(SRAM)、電子的消去可能プログラム可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、又は何れかの他の非一時的コンピュータ可読記憶媒体の様な、何れの揮発性、不揮発性、磁気式、光学式、又は電気式の媒体を含んでいてもよい。
【0033】
[0046]
図3は、
図2の感知モジュール32の様な感知モジュールの一例としての感知チャネルのブロック線図である。感知チャネルは、第1の感知ベクトル上の感知される信号を処理するための感知チャネルであってもよい。感知モジュール32は、処理されるべき感知ベクトルの各々のための類似の感知チャネルを含んでいてもよい。複数の感知チャネルの場合には、感知モジュール32が二重の構成要素を含んでいてもよいし、各感知フィルタが1つ又はそれ以上の構成要素を共有していてもよい。
【0034】
[0047]
図3に示されている感知チャネルは、前置フィルタ50、前置増幅器52、低域通過フィルタ54、アナログデジタル変換器(ADC)56、デシメータ58、ブランキングモジュール60、ペースパルス検出器62、ブランキング制御モジュール64、感知デジタルフィルタ66、ECG形態デジタルフィルタ67、及びECGフィルタ68を含んでいる。感知チャネルの当該構成は、本質的に例示であり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。感知モジュール32の感知チャネルは、
図3に示され説明されているより多い又は少ない構成要素を含んでいることもある。
【0035】
[0048]リード22の感知ベクトル上で感知される電気信号は、感知モジュール32の前置フィルタ50へ提供される。前置フィルタ50へ提供される電気信号は差分信号である。前置フィルタ50は、直流、高周波数、及び高電圧の過渡信号をフィルタ除去するために1つ又はそれ以上の受動抵抗器−コンデンサ(RC)帯域通過フィルタ及び保護ダイオードを含んでいてもよい。前置フィルタ50からの事前フィルタ処理された信号が前置増幅器52へ提供され、前置増幅器52は入力信号を或る利得で増幅し、事前フィルタ処理された差分信号をシングルエンド形信号へ変換する。
【0036】
[0049]前置増幅器52は、幾つかの事例では、更に、入力レベル又は出力レベルが前置増幅器の範囲を超過する場合に信号(
図3に「前置増幅器オーバーレンジ」と標記)を生成するようになっている。前置増幅器の範囲は、±10−20ミリボルト(mV)の間であってもよい。とはいえ、当該範囲は他の実施形態ではより狭い又はより広いこともある。前置増幅器52は、入力信号が前置増幅器を振り切らせている場合に前置増幅器オーバーレンジ信号を生成する。その様な条件は、1−5mVにより近いはずである心室収縮に対応する電気信号の期待振幅より遥かに大きい、大凡10−20mVより大きい入力信号を示唆している場合もある。前置増幅器オーバーレンジ信号は、以下に更に説明されている様にペーススパイク又はペースアーチファクトが検出されているかどうかを判定する段階での解析のためにペースパルス検出器62へ提供される。
【0037】
[0050]事前増幅処理された信号は、前置増幅器52によって低域通過フィルタ54へ出力される。低域通過フィルタ54は、デジタル化前にアンチエイリアスフィルタリング及びノイズ除去を提供することができる。低域通過フィルタ54によって出力されるフィルタ処理済みの信号は、アナログ信号をデジタルビットストリームへ変換するADC56へ提供される。1つの実施例では、ADC56は、シグマ−デルタ変換器(SDC)とされているが、他の型式のADCを使用することもできる。ADC56の出力は、解像度を増加させサンプリングレートを減らすデジタル低域通過フィルタとして機能するデシメータ58へ提供される。1つの実施例では、ADCは、8ビット解像度及び16キロヘルツ(kHz)サンプリングレートを有している。デシメータ58は、16ビット解像度及び1kHzサンプリングレートを有している。これらの値は、単に例示が目的であり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。
【0038】
[0051]ADC56は、更に、入力範囲及びスルーレート範囲の様な他の特性を有していてもよい。1つの実施例では、ADC56の入力範囲は25−825mVの間であり、スルーレート範囲は、0から6.24mV/ms、3.12mV/ms、1.56mV/ms、又は0.78mV/msまでであってもよい。ADC56は、入力信号がADC56の入力範囲より大きい場合にはADC入力オーバーレンジ信号を生成するように構成されていてもよい。その様な条件は、例えば、期待心室収縮1−5mVより遥かに大きいとされる大凡10−20mVピークより大きい感知信号を示唆している場合もある。代替的又は追加的に、ADC56は、スルーレートが、ADC56が追跡できるより速い場合にはスルーレートオーバーレンジ信号を生成するように構成されていてもよい。例えば、ADC56に内在の蓄積された電圧誤差信号が比較器を用いて監視されていて、誤差信号が比較器の閾値を超えたときにスルーレートオーバーレンジが発動されるというようになっていてもよい。スルーレートオーバーレンジは、1つの事例では、入力信号のスルーレートが4mV/msより大きい又は4mV/msに等しい場合に生成され又はアサートされるようになっている。ADCの入力オーバーレンジ信号及び/又はスルーレートオーバーレンジ信号は、ペーススパイク又はペースアーチファクトが検出されているかどうかを判定する段階での解析のためにペースパルス検出器62へ提供される。
【0039】
[0052]従来型感知チャネルでは、デジタル化された信号は直接に感知フィルタ66及びECGフィルタ68へ提供されている。感知デジタルフィルタ66は、帯域通過フィルタ(例えば10乃至32Hz)、整流器、及び閾値検出器を含んでいる。感知デジタルフィルタ66は、1つの実施例では、感知デジタルフィルタ66への信号入力のピーク値の或るパーセンテージとプログラムされている最小値との間で動的に変動する自動調節式の閾値を含んでいる。制御モジュール30へ提供される感知デジタルフィルタ66の出力は、感知された電気信号が閾値を超えている場合はいつも心臓事象が検出されていることを、例えば心室感知チャネルの場合ならR波又は心房感知チャネルの場合ならP波が検出されていることを示唆する。感知デジタルフィルタ66による処理と並行して、診断ECGフィルタ68が広帯域幅フィルタを適用してECG信号を出力し、形態ECGフィルタ67がフィルタ(例えば、2.5乃至32Hzの帯域幅)を適用して、制御モジュール30による形態解析(以下に更に詳細に説明されているグロス形態の解析及び拍動ベースの形態解析を含む)のための信号を出力する。
【0040】
[0053]以上に説明されている様に、ペーシング装置16によって送達されるペーシングパルスは、感度を低下させる及び/又は特異度を低下させるの何れかによって皮下ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出に干渉しないとも限らない。
図4A及び
図4Bは、ペーシングパルスが心室頻拍の上を送達されている一例としての電気信号を示している。
図4Aは律動のECGを示し、
図4Bは感知デジタルフィルタ66内に起こっている動作を表すプロットを示している。
図4Bに示されているプロットでは、実線の信号は帯域通過フィルタ処理され整流されたECGである。点線の信号は、感知デジタルフィルタ66の自動調節式感知閾値であり、当該閾値は、以上に説明されている様に、感知デジタルフィルタ66への信号入力のピーク値の或るパーセンテージとプログラムされている最小値との間で動的に変動し得る。ECG信号が自動調節式感知閾値を超えると、縦の太い破線によって指し示される様に、感知事象が検出される。感知デジタルフィルタは、これらの検出された感知事象を、更なる処理/解析のために制御モジュール30へ出力する。
【0041】
[0054]
図4A及び
図4Bの図から分かる様に、ペーシングパルスの大きい振幅は、自動調節式感知閾値を、ペーシングパルスの後に続く基礎律動の心臓事象の少なくとも幾つかを検出するにはあまりにも大きい値へ増加させる。翻せば、制御モジュール30は頻脈性不整脈を検出する段階での使用にとって精度の高い心臓事象の表示を持てなくなる。大きいペーシングパルスは、更に、当該ペーシングパルスが前置増幅器の入力範囲を超過している、ADCの入力範囲を超過している、ADCのスルーレートを超過している、又はそれ以外に感知チャネルの構成要素に影響を及ぼしているせいで、ペーシングパルス後の短時間に亘ってECG信号にアーチファクトを引き起こすこともある。
【0042】
[0055]ペーシング装置62によって提供される独立したペーシング療法が引き起こす、ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出での起こり得る干渉を勘案するために、ICD20は、ペースパルス検出器62、ブランキングモジュール60、及びブランキング制御モジュール64を、(単数又は複数の)感知チャネル内に含んでいる。ペースパルス検出器62は、デシメータ58と並列して、ADC56によって出力される信号を得る。ペースパルス検出器62は、ADC56から得られる信号を処理してペーシングパルスの特性を識別する1つ又はそれ以上の構成要素を含んでいてもよい。1つの実施例では、ペースパルス検出器62は、ADC56から信号入力を処理して信号の振幅、信号のスルーレート、及び/又は信号のパルス幅を解析するようになっている。ペースパルス検出器62は、ペーシングパルスに対応している電気信号を通過させ心臓の電気信号を拒絶するように構成されているフィルタ(例えば、一例として大凡100Hzから2000−4000Hzの間の周波数を有する信号を通過させる帯域通過フィルタ又は100Hzより大きい周波数を有する信号を通過させる高域通過フィルタ)を含んでいてもよい。代替的又は追加的に、ペースパルス検出器62は、微分器、差分フィルタ、又は1次微分フィルタを含み、それを感知信号のスルーレートを表す信号を得るのに使用していてもよい。
【0043】
[0056]ペースパルス検出器62は、更に、1つ又はそれ以上の閾値検出器を含んでいてもよい。例えば、ペースパルス検出器は、微分器又は1次微分フィルタの出力をスルーレート閾値と比較するスルーレート閾値検出器を含んでいてもよい。スルーレートがスルーレート閾値を超えていれば、ペースパルス検出器62は信号がペーシングパルスに対応していると判定する。ペースパルス検出器62は同じく入力信号の振幅を解析するようになっていてもよい。幾つかの事例では、ペースパルス検出器62は、スルーレートと振幅の組合せを解析してペーシングパルスの存在を検出するようになっている。例えば、スルーレートがスルーレート閾値を超えていれば、ペースパルス検出器62は感知される信号の振幅を振幅閾値検出器を使用して1つ又はそれ以上の振幅閾値に比較するようになっていてもよい。
【0044】
[0057]幾つかの事例では、ペースパルス検出器62が複数のペースパルス検出器を含んでいることもある。1つの実施形態では、ペースパルス検出器62は2つのペースパルス検出器を含んでいる。例えばここにペースアーチファクト検出器と呼称される第1の検出器は、例えば振幅、スルーレート、又はパルス幅がICD20の頻脈性不整脈検出の感度に影響を与えるほどに大きいペーシングパルスのみを検出するように構成されている第1の閾値を有している。その様なペーシングパルスはここではペースアーチファクトと呼称されている。1つの実施例では、ペースアーチファクト検出器は、大凡1msのパルス幅について2−10mVより大きい又は2−10mVに等しい振幅を有するペーシングパルスを検出するように構成されている。別の実施例では、ペースアーチファクト検出器は、4mVより大きい又は4mVに等しい振幅及び大凡1msのパルス幅を有するペーシングパルスを検出するように構成されている。但し、ペースアーチファクト検出器が検出するように構成されている対象のペーシングパルスの特性は異なっていてもよい。
【0045】
[0058]例えばここにペーススパイク検出器と呼称される第2の検出器は、全てのペーシングパルスを、それらが頻脈性不整脈検出に影響を与えるほどに大きい又は影響を与える他の特性を有しているかどうかにかかわらず検出するように構成されている第2の閾値を有している。これらのペーシングパルスはここではペーススパイクと呼称されている。1つの実施例では、ペーススパイク検出器は、1mVより大きい又は1mVに等しい振幅及び大凡1msのパルス幅を有するペーシングパルスを検出するように構成されている。但し、ペーススパイク検出器が検出するように構成されている対象のペーシングパルスの特性は異なっていてもよい。これらのより小さいペーシングスパイクについては電気信号の修正が起こることはないにせよ、制御モジュール30はなおもこの情報を自身の頻脈性不整脈検出に利用することができる。ペーススパイク検出器は、小さい振幅及び/又はパルス幅を有するペーシングパルスを検出することができるようにペースアーチファクト検出器より高い感度を有しているであろう。その結果、ペースアーチファクトはペーススパイクとしても検出されることになる。この様に、ペースパルス検出器62は、スルーレート、振幅、パルス幅、又はペースアーチファクト及びペーススパイクを検出するための他の特性、を解析するようになっている。
【0046】
[0059]更なる事例では、ペースパルス検出器62は、単一の検出器しか含んでいないこともあれば、2つより多いパルス検出器を含んでいることもある。例えば、ペースパルス検出器62は、ノイズを検出するため、又はペーシングパルス信号(例えばスパイク又はアーチファクト)のピークと第1及び第2のペースパルス検出器の一方又は両方の閾値との間のマージンを確定するため、第3のパルス検出器を含んでいてもよい。3つの検出器を含んでいる一例としてのペースパルス検出器62’が以下に
図8に関連して説明されている。
【0047】
[0060]ADC56からの信号の入力に加え、ペースパルス検出器62は、更に、前置増幅器52からの前置増幅器オーバーレンジ信号、ADC56からのADC入力オーバーレンジ信号、及びADC56からのスルーレートオーバーレンジ信号を得る。これらの信号の全て又は少なくとも幾つかがペーシングアーチファクトを示唆している場合もある。例えば、前置増幅器オーバーレンジ信号が閾値の時間期間に亘って存在している又はアサートされているということは、感知されている信号が期待心室収縮1−5mVより遥かに大きいことを示唆している可能性がある。別の実施例として、ADCのスルーレートオーバーレンジ信号が閾値の時間量である例えば大凡1msより多い時間量に亘って存在している又はアサートされているということは、ペーシングアーチファクトを示唆している可能性があり、というのも、ADC56のスルーレート限界は、EMIの場合なら極めて長い時間に亘って超過されるはずがなく(例えば1msより小さい)、また心室収縮の感知なら決して超過されることはないからである。幾つかの事例では、閾値時間は調節式であってもよい。更なる実施例では、ADC入力オーバーレンジ信号が閾値の時間量である例えば約1msより多い時間量に亘って存在している又はアサートされているなら、感知されている信号が心室収縮より遥かに長時間に亘って高い振幅を有していることが示唆される可能性がある。この様に、これらのオーバーレンジ信号の各々は、振幅及び/又はパルス幅がICD20による頻脈性不整脈検出の感度に影響を与えるほどに高いペースパルス即ちペースアーチファクトの存在を示唆している可能性があるとされる特定の判定基準に合致する場合もある。これらの判定基準はオーバーレンジ条件と呼称されている。他の実施例では、オーバーレンジ条件が起こっているという単純な事実(それがどれほど長時間に亘って起こっているかは無関係)がオーバーレンジ条件とされていることもある。
【0048】
[0061]ペースパルス検出器62は、以上に説明されている様に遂行されるペーススパイク解析及び/又はペースアーチファクト解析と共にこれらのオーバーレンジ信号を解析し、それら解析に基づいてペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号を出力する。1つの実施例では、ペースパルス検出器62は、オーバーレンジ条件の何れかが合致しているか又は振幅、スルーレート、及びパルス幅の解析がペーシングアーチファクトの存在を示唆している場合に、ペースアーチファクト検出信号を生成し及び/又はアサートする。同じく、ペースパルス検出器62は、オーバーレンジ条件の何れかが合致しているか又は振幅、スルーレート、及びパルス幅の解析がペーシングスパイクの存在を示唆している場合に、ペーススパイク検出信号を生成し及び/又はアサートする。ペースアーチファクト解析及びペーススパイク解析は上述のオーバーレンジ条件をトリガするほどには大きくないペースアーチファクト及びペーススパイクを検出できることもある。ペースパルス検出器62は、ペースアーチファクト検出信号をブランキング制御モジュール64へ出力し、ペーススパイク検出信号を制御モジュール30へ出力する。
【0049】
[0062]ブランキング制御モジュール64は、ペースアーチファクト検出信号がアサートされると、電気信号からのパルス除去を開始する。ここにはパルスを電気信号から除去することとして説明されてはいるが、パルスは電気信号から完全に除去されるとは限らず、感知精度へのその影響が本質的に中和されるということである。例えば、パルスが固有の心臓事象(例えば心室事象)と勘違いされないように電気信号が修正されるのである。この様に、ブランキング制御モジュール64は、オーバーレンジ条件の何れか1つが合致する又は振幅及び/又はパルス幅が頻脈性不整脈検出の感度に影響を与えるほどに高いペーシングパルスの存在をペースアーチファクト検出解析が示唆すると、ブランキングを開始する。パルスを除去するための感知チャネルへの修正は、既定の時間期間に亘って、又はペースアーチファクト検出信号がデアサートされるまで、又はペースアーチファクト信号が特定の時間期間に亘ってデアサートされてしまうまで、継続してもよい。幾つかの事例では、ブランキング制御モジュール64は、デシメータ58又は感知チャネルの他の構成要素を通る信号の何らかの遅延を勘案してパルス除去の開始を遅らせるように構成されていてもよい。遅延はプログラム可能であり、≧1ミリ秒(ms)と≦60msの間の値を有していてもよく、≧5msと≦25msの間の値が望ましい。これは、パルスを除去するように実施される感知チャネル修正の全体的持続時間を縮めることができる。幾つかの事例では、ブランキングモジュール64は、現在の検出されているペーシングパルスについてブランキングすることが適切であるかどうかの信頼を確立するなどのために、先のパルスについて行われたブランキングに関する情報を使用してブランキングの長さを確定するようにしている。
【0050】
[0063]1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、ペーシングアーチファクトが検出された感知チャネルのみでブランキングを開始している。別の実施例では、ブランキング制御モジュール64は、ペーシングアーチファクトが感知チャネルの何れか1つに検出されると感知チャネル全てでブランキングを開始している。例えば、ブランキング制御モジュール64は、第1の感知チャネルのブランキングモジュール60に加え第2の感知チャネルの第2のブランキングモジュールにもブランキングを行わせるようになっていてもよい。ブランキングが所望されると、ブランキング制御モジュール64は制御信号をブランキングモジュール60へ提供してデシメータ58から出力される信号のブランキングを開始させる。ブランキングモジュール60は、1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64からの制御信号を受信していることに応えて、信号の値を現在の値に保持するサンプルアンドホールド回路を含んでいてもよい。現在の値は、検出されるパルスより前の電気信号の値であってもよい。ブランキングモジュール60は、ブランキング制御モジュール64が制御信号を解除する又はデアサートするまで、感知される電気信号の値を保持し続ける。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は制御信号又はホールド信号を印加し、而してブランキングを大凡40ミリ秒(ms)より小さい又は大凡40msに等しい時間に亘って生じさせるようになっている。別の実施例では、ブランキング制御モジュール64は大凡30ミリ秒(ms)より小さい又は大凡30msに等しい時間に亘って保持信号を印加している。別の実施例では、ブランキング制御モジュール64は、大凡20msより小さい又は大凡20msに等しい時間に亘って保持信号を印加している。他の実施形態では、ブランキングモジュール60は、制御信号が開始又はアサートされた時点(例えば検出されているパルスより前)の第1の値と制御信号が解除又はデアサートされた時点(例えば検出されているパルスに後続)の第2の値の間の線形補間又は他の補間を提供する補間モジュールを含んでいてもよい。この時間期間は、パルスを除去するよう電気信号が本質的にブランキングされているのでブランキング期間と見なすことができる。
【0051】
[0064]ブランキングモジュール60は、幾つかの事例では、更に、サンプルアンドホールド回路より前の電気信号に遅延を導入して、ペースパルス検出器62によるペーシングパルスの検出とブランキング制御モジュール64による入力の解析が、電気信号をブランキングするべきかどうかを、ペーシングパルスからのアーチファクトが感知及びECG出力へ伝搬する機会を持つ前に判定できるようにする、遅延ブロックを含んでいてもよい。感知チャネルの中へ導入される遅延は、感知チャネルの何処でブランキングが起こるか及びブランキングモジュール60が上述の補間を遂行するかどうかにも依存するが、大凡1−20msの間とすることができる。幾つかの事例では、デシメータ58が同様にADC出力とブランキングモジュール60の間に幾らかの遅延を提供しているため、この遅延ブロックが存在していない又はより短い時間期間に亘って存在しているという場合もある。
【0052】
[0065]他の事例では、ペースパルス検出器62は、信号がADC56からパルス除去モジュール60へ伝搬するのに要する時間より速くペーシングアーチファクトを処理及び検出している。この場合、パルス除去制御モジュール64は、パルス除去モジュール60にデシメータ58及び/又は感知チャネルの他の構成要素を通る感知信号の何らかの遅延を勘案するよう感知信号を保持及び/又は補間させるために信号の印加を遅らせることができる。これは、より精度の高い感知信号をもたらすブランキング時間の全体的持続時間を縮めることができる。
【0053】
[0066]ブランキングモジュール60の出力は、以上に動作が説明されている感知デジタルフィルタ66、ECG形態フィルタ67、及び診断デジタルECGフィルタ68へ提供される。以上に説明されている様にブランキングを提供することによって、ペースアーチファクトは
図5A及び
図5Bのプロットに示されている様に有意に低減される。
図5Aは、
図4Aと同じ信号を示しているが、ペースパルスを除去するように信号が修正された後のものである。
図5Aの実施例の修正は24msのブランキングが検出されたペースアーチファクトの各々へ適用されたものである。同じく、
図5Bは、デジタル感知フィルタ66内の動作のプロットを示している。
図5Bから見て分かる様に、ペースアーチファクトを検出していることに応えて感知チャネルをブランキングすることによって、自動調節式の閾値は心臓事象全てを検出することの可能なゾーン内に留まっており、而して感知不足の公算が小さくなる。また、デジタル感知フィルタ66は、誤ってペーススパイクを固有R波として検出しないので、過剰感知の公算が小さくなる。本開示の技法は、従って、頻脈性不整脈を監視するためのより精度の高い感知情報を制御モジュール30に提供する。
【0054】
[0067]
図3に示されている感知チャネルは、一例としての感知チャネルである。感知チャネルの他の構成又は感知チャネル内の構成要素の他の配列を、本開示の範囲から逸脱することなく利用することもできる。他の実施形態では、例えば、ペースパルス検出器62が、自身の入力を、感知チャネルの処理段的により早い他の構成要素、例えば前置フィルタ50、前置増幅器52、又は低域通過フィルタ54から、得るようになっていてもよい。別の実施例では、ブランキングモジュール60は、感知チャネル内の、前置増幅器52と低域通過フィルタ54の間の様な、何処か他の場所に置かれていてもよい。その様な実施例では、ブランキングは、抵抗器を、サンプルアンドホールド回路を作成するスイッチと直列に使用して実装されていてもよい。
【0055】
[0068]
図6は、一例としてのペースパルス検出器62を示すブロック線図である。ペースパルス検出器62は、フィルタ90、微分(dV/dt)フィルタ91、整流器92、ペースアーチファクト検出器94、及びペーススパイク検出器96を含んでいる。ペースパルス検出器62は、ADC56によって出力されている信号を入力する。この信号は、フィルタ91、dV/dtフィルタ91、ペースアーチファクト検出器94、及びペーススパイク検出器96へ提供される。但し、ペースパルス検出器62の様々な構成要素は、信号を、例えば前置増幅器52から直接に得るといった様に、感知チャネルの他の構成要素から得ていてもよい。
【0056】
[0069]ペースパルス検出器62のフィルタ90は、ADC56から出力された信号をフィルタに掛ける。フィルタ90は、ペーシングパルスに対応する電気信号を通過させ心臓の電気信号を拒絶するように構成されていてもよい。フィルタ90は、1つの実施例では、大凡100Hzから1000−4000Hzの間の周波数を有する信号を通過させる帯域通過フィルタとされている。別の実施例では、フィルタ90は、100Hzより大きい周波数を有する信号を通過させる高域通過フィルタとされている。他の実施例では、フィルタ90は、微分フィルタの様な別の型式のフィルタのこともある。更なる実施例では、信号は一切フィルタに掛けられていない。整流器92は、フィルタ90からのフィルタ処理された信号を整流する。整流された信号は、次いで、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96へ提供される。
【0057】
[0070]dV/dtフィルタ91は、ADC56の出力の差分信号(例えば、x(n)−x(n−1))を生成する。差分信号は、高スルーレートを有する信号部分に対応しているスパイクを含んでいる。差分信号もペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96へ提供される。
【0058】
[0071]ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、ADC56からの生の入力信号、整流器92からの整流された信号、dV/dtフィルタ91からの差分信号、の幾つか又は全てを解析して、ペースアーチファクト及びペーススパイクの存在をそれぞれ検出する。1つの実施例では、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、振幅のみ又はスルーレートのみを使用してペースアーチファクト及びペーススパイクをそれぞれ検出している。別の実施例では、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、振幅、スルーレート、及びパルス幅の組合せを使用してペースアーチファクト及びペーススパイクをそれぞれ検出している。遂行される解析の種類に依存して、ペースパルス検出器62は、示されている構成要素の幾つか(例えば、フィルタ90、dv/dtフィルタ91、及び/又は整流器92)を含んでいない場合もある。例えば、ペース検出器94及び96がスルーレートを解析しないなら、検出器62はdv/dtフィルタ91を含んでいなくてもよい。但し、他の実施形態では、ペースパルス検出器62は全ての構成要素を含んでいて、感知される信号の異なるアスペクトを解析するように構成されていてもよい。
【0059】
[0072]ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、ADC56からの生の入力信号、整流器92からの整流された信号、dV/dtフィルタ91からの差分信号をそれぞれの閾値と比較して、ペースアーチファクト及び/又はペーススパイクを検出するようになっていてもよい。ペースアーチファクト検出器94の閾値とペーススパイク検出器96の閾値が異なっていてもよく、その場合、ペースアーチファクト検出器94は制御モジュール30によって遂行される頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えるほどに大きい振幅を有するペースアーチファクトのみを検出するように構成され、方やペーススパイク検出器94はペーシングパルスをそれらが制御モジュール30によって遂行される頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えるほどに大きいかどうかにかかわりなく検出するように構成されている。そうすると、(単数又は複数の)ペースアーチファクト閾値(例えばアーチファクトスルーレート閾値又はアーチファクト振幅閾値)は、而して一般的に(単数又は複数の)ペーススパイク閾値(例えばスパイクスルーレート閾値又はスパイク振幅閾値)より大きい。そういうものとして、ペーススパイク検出器94は、より小さい振幅及びパルス幅を有するペーシングパルスを検出することができるようにペースアーチファクト検出器96より高い感度を有しているであろう。1つの実施例では、ペースパルス検出器62の閾値は、ペースアーチファクト検出器94が大凡1msのパルス幅で2−10mVより大きい又は2−10mVに等しいペーシングパルスを検出するように構成され、ペーススパイク検出器96が大凡1msのパルス幅で1mVより大きい又は1mVに等しいペーシングパルスを検出するように構成される、という具合に設定されていてもよい。但し、閾値は、異なる特性を有しているペーシングスパイク及びペーシングアーチファクトを検出するように構成可能である及び/又は構成されているのであってもよい。
【0060】
[0073]幾つかの事例では、ペースアーチファクト閾値及びペーススパイク閾値の幾つか又は全ては自動調節式であってもよい。例えば、ペースアーチファクト振幅閾値及びペーススパイク振幅閾値の一方又は両方が、検出されるパルスのピーク振幅に基づいて動的に調節されて、検出されるペースパルスの振幅が大きければEMIを回避するように閾値をより高く引き上げられるようになっていてもよい。代替的又は追加的に、ペースアーチファクト振幅閾値とペーススパイク振幅閾値の一方又は両方が、基線R波振幅に基づいて動的に調節されるようになっていてもよい。この場合、R波が大きければ、ペースアーチファクト及びペーススパイクを感知するための閾値はより高く設定される必要があろう。1つの実施例では、増加は比例式になっていて、例えば感知されるR波振幅の50%増加なら結果としてペーシングアーチファクト検出閾値の50%増加につながるというようになっていてもよい。
【0061】
[0074]
図6に更に示されている様に、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、更に、感知チャネルの様々な構成要素からのオーバーレンジ信号(例えば、前置増幅器52からの前置増幅器オーバーレンジ信号、ADC56からのADC入力オーバーレンジ信号、及びADC56からのスルーレートオーバーレンジ信号)を受信する。オーバーレンジ信号の解析及びADC56によって出力される信号の処理に基づいて、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96はペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号をそれぞれ出力する。1つの実施例では、ペースアーチファクト検出器94は、オーバーレンジ条件の何れかが合致している、又はADC出力の振幅、スルーレート、及び/又はパルス幅の解析がペーシングアーチファクトの存在を示唆している場合に、ペースアーチファクト検出信号を生成し及び/又はアサートする。同じく、ペーススパイク検出器96は、オーバーレンジ条件の何れかが合致している、又は振幅、スルーレート、及び/又はパルス幅の解析がペーシングスパイクの存在を示唆している場合に、ペーススパイク検出信号を生成し及び/又はアサートする。
【0062】
[0075]ペースアーチファクト検出信号は、以下に更に詳細に説明されている感知チャネルの1つ又はそれ以上のブランキングを開始させるようにブランキング制御モジュール64へ提供される。(単数又は複数の)感知チャネルのブランキングはECG信号にアーチファクトを導入しかねないので、ブランキングは、十分な頻脈性不整脈検出感度ひいてはより高いペースアーチファクト閾値が必要な場合に限って行われるのが望ましい。
【0063】
[0076]ペーススパイク検出信号及び場合に依りペースアーチファクト検出信号は、頻脈性不整脈検出の一環として使用するため制御モジュール30へ提供されてもよい。ペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号は、ペースパルス検出器62によって直接に制御モジュール30へ提供されていてもよいし、ブランキング制御モジュール64経由で制御モジュールへ中継されていてもよい。ペースアーチファクト信号とペーススパイク検出信号は個別に制御モジュール30へ提供されていてもよい。代替的に、ペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号は、論理的に組み合わされ(例えば、論理的OR演算され)、制御モジュール30へ提供されるというようになっていてもよい。複数の感知チャネルが解析される事例では、感知チャネルの各々についてのペースアーチファクト信号及びペーススパイク検出信号は、個別に提供されていてもよいし、論理的に組み合わされて提供されていてもよい。
【0064】
[0077]ペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号は、多くの技法の何れを使用して制御モジュール30へ提供されていてもよい。例えば、感知チャネルの一方又は両方からのペースアーチファクト検出信号出力及びペーススパイク検出信号出力は、或る信号出力を生成するように論理的に組み合わされることもあれば、制御モジュー30への割り込み信号を生成するように使用されることもあり得る。信号を組み合わせること及び割り込みを生成することの利点は、ペーシング事象の通告を非常に短い時間で提供するので制御モジュール30がペーシングパルスに迅速に応答できるようになることにある。欠点は、或る特定の条件で過剰な数の割り込みが生成されないともかぎらず、制御モジュール30の割り込みを取り扱う能力に負荷が掛かり過ぎたり或いは過剰な電流流出を引き起こしたりということが起こり得るということである。代わりに、全ての活性チャネルからのペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号を単一のレジスタ内へ組み合わせ、メモリへの記憶と以後の解析のために制御モジュール30へ継続的にストリーミングさせることもできるであろう。これは、ペーシングパルスの振幅について及びパルスがどのチャネルで検出されているかについてのより多くの情報が提供されるという利点をもたらす。それにより、更に、制御モジュール30がペーシング情報を定期的に処理する、即ち割り込みではなしに頻脈性不整脈検出のためのデータ処理時に処理することが可能になり、割り込み取り扱いに伴う制御モジュール30の過剰負担に係る懸念が軽減される。この手法にとっての欠点は、追加のメモリが必要になること、及びペーシングパルスが検出されてから制御モジュール30が情報に働きかけることができるまでの待ち時間が増加することである。幾つかの事例では、追加の情報がペースパルス検出データと共に送られている。例えば、制御モジュール30への信号は、ペースパルス検出がV−V間隔内の何処で起こっているかを特定していてもよい。幾つかの事例では、ICD20又は制御モジュール30は、感知モジュール32からの情報の幾つか又は全てを制御モジュールへ提供する事象待ち行列を含んでいる。その様な事象待ち行列の1つの実施例が、「装置プロセッサ動作パワーを制御するペースメーカー事象待ち行列」と題された米国特許第8,855,780号(ハンセン(Hansen)ら)に記載されている。
【0065】
[0078]
図6のペースパルス検出器62は、その様な検出器の1つの実施例である。他の実施形態では、ペースパルス検出器62は、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96に代えて単一の検出器しか含んでいないこともある。更なる実施形態では、ペースパルス検出器62は、2つより多いパルス検出器を含んでいることもある。例えば、ペースパルス検出器62は、ノイズを検出するため、又はペーシング信号のピークとペースアーチファクト検出器94又はペーススパイク検出器96のそれぞれの閾値との間のマージンを確定するため、第3のパルス検出器を含んでいてもよい。これは
図8に関連して更に説明されている。但し、ノイズ及び/又は信号マージンは他の技法を使用して検出されていてもよい。例えば、ペースパルス検出器62は、検出されるペーシングパルスのピークを測定するように構成されているピーク検出器を含んでいて、当該ピークを使用して、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96がペーシングパルスの信頼できる検出にとって適正なマージンを有しているかどうかを判定するようになっていてもよい。
【0066】
[0079]
図7は、ペースパルス検出器62の一例としての動作を示す概念図である。
図7は、少なくとも3つのペーシングパルス72を含んでいるペーシング列70を含む感知される電気信号の一例を示している。
図7は、更に、ペースパルス検出器62のフィルタ90(例えば、差分フィルタ又は1次微分フィルタ)によって出力されているスルーレート信号74の一例を示している。
図7に示されている様に、スルーレート信号74は、ペーシングパルス72の縁と一致するスパイク76を有している。ペースパルス検出器62は、スルーレート信号74をスルーレート閾値78に比較し、スルーレート信号74がスルーレート閾値を超えている場合に、ペースパルス検出器62はペーシングスパイクの存在を検出することになる。ペーシングパルス72の後縁を別個のペーシングパルスとして検出することを回避するために、ペースパルス検出器62は、先のスパイク76から特定の時間期間内、例えば2ms内に起こっている何れのスパイク76も別個のペーシングパルスとして数えないようにしている。また一方で、幾つかの事例では、ペースパルス検出器62はこれらの密に近接するスパイクを追跡してペーシングパルスのパルス幅を推定している。他の実施例では、スルーレート閾値を超えるスルーレートを検出していることが、結果として、感知される電気信号の振幅を調べるといった様な検出される信号の他の特性の分析を生じさせることになる。1つの事例では、一例としてのスルーレート閾値は4mV/msに等しくてもよい。但し他の閾値を利用することもできる。
【0067】
[0080]
図8は、別の例としてのペースパルス検出器62’を示すブロック線図である。ペースパルス検出器62’は、デシメータ180、CICフィルタ182、移動平均フィルタ184、帯域通過フィルタ186、微分(dV/dt)フィルタ188、閾値検出器190A−190C、及びノイズ検出器192A−192B、を含んでいる。ペースパルス検出器62’は、
図3の感知チャネルの様な感知チャネルで利用することができる。言い換えれば、ペースパルス検出器62’は、ペースパルス検出器62の代わりに利用することができる。
【0068】
[0081]ペースパルス検出器62’は、ADC56によって出力される信号を入力する。ペースパルス検出器62’は、高周波数ノイズを減衰させるため及びより低い周波数でのより短いフィルタの使用を可能にしてパワーを節約するためにデシメーションを活用している。デシメータ180は、ADC56からのデジタル化されたデータ出力をデシメートする。1つの実施例では、デシメータ180は信号をデシメーション係数2でデシメートしている。例えば、ADC56が8ビット信号を32kHzで出力しているとして、デシメータは信号のサンプリングレートを削減して16kHzの信号を出力するようになっている。とはいえ、デシメータ180は、他のデシメーション係数を使用するデシメーションを遂行していてもよい。
【0069】
[0082]カスケード・インテグレータ・コーム(CIC)フィルタ182は、デシメータ180によって出力される信号を入力する。CICフィルタ182は、特定の周波数帯域より上の周波数を減衰させ、更にデシメータ180によって出力される信号をデシメートする。1つの実施例では、CICフィルタ182は2次CICフィルタである。1つの実施例では、CICフィルタ182は、デシメータ180によって出力される16kHzの信号を入力し、当該信号を4kHzへデシメートし、解像度を14ビットへ増加させる。CICフィルタ182は、更に、4kHzより上の周波数を減衰させることができる。別の実施例では、デシメーション機能をCICフィルタと組み合わせて、別建てのデシメーション機能を使用することなく直接に32Khz/8ビットから4Khz/14ビットへデシメートさせている。他のデシメーション及び解像度変更が、本開示の範囲から逸脱することなく使用されてもよい。
【0070】
[0083]移動平均フィルタ184は、CICフィルタ182によって出力される信号を入力する。移動平均フィルタ184は、CICフィルタ182によって出力される信号からの多数のサンプルを平均して出力信号の各サンプルを現出させる。この方式では、移動平均フィルタ184は、更に、高周波数減衰を提供することができる。1つの実施例では、移動平均フィルタ184は、2次移動平均フィルタであってもよいが、他の移動平均フィルタが利用されていてもよい。
【0071】
[0084]帯域通過フィルタ186は、移動平均フィルタ184によって出力される信号を入力する。帯域通過フィルタ186は、或る特定の範囲内の周波数を通過させ当該範囲外の周波数を拒絶する(又は減衰させる)。1つの実施例では、帯域通過フィルタ186は200Hz帯域通過フィルタとされている。帯域通過フィルタ186の出力は閾値検出器190A−190Cへ一斉に提供される。
【0072】
[0085]閾値検出器190A−190Cは、各々、帯域通過フィルタ186から出力される信号をそれぞれの振幅閾値と比較し、当該比較に基づいて信号(検出1、検出2、検出3)を出力する。例えば、帯域通過フィルタ186の信号出力がそれぞれの振幅閾値を超えていると、それぞれの閾値検出器190の検出信号が或る時間期間に亘ってアクティブになる。各閾値検出器190の閾値は、以下に更に詳細に解説されている様に互いとは異なっていてもよい。
【0073】
[0086]例えば、閾値検出器190Aが第1の閾値を有し、閾値検出器190Bが第1の閾値より小さい第2の閾値を有し、閾値検出器190Cが第1の閾値及び第2の閾値のどちらよりも小さい第3の閾値を有していてもよい。閾値検出器190Aの第1の閾値は、感知デジタルフィルタ66によって固有のR波、VT、又はVFとして検出されるほどに及び/又は制御モジュール30によって遂行される頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えるほどに大きい振幅を有するペースパルス(例えばペースアーチファクト)を検出するレベルへ設定されていてもよい。1つの実施例では、閾値検出器190Aの閾値は、閾値検出器190Aが
図6のペースアーチファクト検出器94と同様に大凡1msのパルス幅について2−10mVより大きい又は2−10mVに等しい振幅を有するペーシングパルスを検出するように設定されていてもよい。別の実施例では、閾値検出器190Aの閾値は、閾値検出器190Aが大凡1msのパルス幅について4mVより大きい又は4mVに等しい振幅を有するペーシングパルスを検出するように設定されていてもよい。但し、ペースアーチファクト検出器が検出するように構成されている対象のペーシングパルスの特徴は異なっていてもよい。
【0074】
[0087]閾値検出器190Bの閾値は、閾値検出器190Bがペースパルス(例えばペーススパイク)を、それらペースパルスが固有のR波として検出されることになるかどうか及び/又は頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えることになるかどうかにかかわらず検出するレベルへ設定されていてもよい。以上に説明されている様に、検出器190Bの閾値は検出器190Aの閾値より小さい。1つの実施例では、閾値検出器190Bの閾値は、閾値検出器190Bが
図6のペーススパイク検出器96と同様に1mVより大きい又は1mVに等しい振幅及び大凡1msのパルス幅を有するペーシングパルスを検出するように設定されていてもよい。
【0075】
[0088]閾値検出器190Cの閾値は、閾値検出器190Cがノイズを検出するレベルへ設定されてもよい。以上の実施例に説明されている様に、検出器190Cの閾値は検出器190A及び190Bの閾値より小さい。この場合、検出器190Cは、190A又は190Bの何れかによって検出されるはずの信号より振幅が低い信号を検出する。一例として、検出器190Cのための閾値は、検出器190Bの閾値の或る割合又はパーセンテージ、例えば0.5X−0.75Xに設定されていてもよく、ここに「X」は検出器190Bの閾値である。これらの低振幅パルスは、それらが高周波数で起こっている又はそれらがペーシングパルスについて期待されるのとは異なる心臓周期内の点で起こっているならばノイズとして解釈されることもある。而して、閾値検出器190Cは、ペースアーチファクト/スパイクとは異なる特性、例えばより低い周波数、異なるスルーレート、及び異なる周波数(例えばパルスが起こっている頻度)を有しているであろうEMIノイズ及びアーチファクトを検出するように設定されればよい。幾つかの事例では、検出器190Cの閾値はノイズフロアを推定するために異なるレベルへ周期的に調節されるようになっていて、検出器190Cを使用することによって確定されるノイズフロアより上のレベルへ閾値190A及び190Bを設定できるようにしていてもよい。
【0076】
[0089]或る代わりの実施形態では、閾値検出器190Aが第1の閾値を有し、閾値検出器190Bが第1の閾値より小さい第2の閾値を有し、閾値検出器190Cが第1の閾値と第2の閾値のどちらか一方又は両方より大きい第3の閾値を有していてもよい。第1の閾値及び第2の閾値は、第1の閾値検出器190Aが感知デジタルフィルタ66によって固有のR波として検出されるほどに又は制御モジュール30によって遂行される頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えるほどに大きい振幅を有するペースパルス(例えばペースアーチファクト)を検出し、第2の閾値検出器190Bがペースパルス(例えばスパイク)を、それらペースパルスが固有のR波として検出されることになるかどうか及び/又は頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えることになるかどうかにかかわらず検出するようなレベルに設定されていてもよい。一例としての閾値は以上の実施例に説明されている。
【0077】
[0090]また一方で、この実施形態では、閾値検出器190Cの閾値は、閾値検出器190Cが閾値検出器190A又は閾値検出器190Bのどちらかより大きい信号振幅を検出するレベルへ設定されていてもよい。この方式では、閾値検出器190Cは、検出器190A及び/又は検出器190Bの閾値が適正なマージンを有しているかどうかを判定するのに使用することができる。以上に説明されている様に、検出器190Cの閾値は、検出器190Aの閾値と検出器190Bの閾値のどちらか又は両方より大きくてもよい。1つの実施例では、検出器190Cの閾値は、「X」を検出器190Bの閾値として検出器190Bによって検出されるより大きい係数の例えば1.5X−2Xであるパルスを閾値検出器190Cが検出するレベルへ設定されていてもよい。190Bによって検出されるペーシングスパイクを検出器190Cは検出できないことが判定されれば、ペース検出器62’は検出器190Bが不適正なマージンを有していると判定することができる。代わりの実施形態では、ペース検出器62’は、閾値検出器190A及び/又は190Bが適正なマージンを有しているかどうかを判定するのに使用することのできる第3の閾値検出器190Cの代わりにピーク検出器を含んでいてもよい。適正なマージンが存在しなければ、検出信号(検出1、検出2、検出3)の1つ又はそれ以上が無視又は度外視される。代わりに、ペース検出器62’は、マージンが不適正であると判定していることに応えて検出器190B及び/又は190Aの閾値をより低いレベルへ自動的に調節するようになっていてもよい。
【0078】
[0091]更なる実施形態では、例えば閾値190Bの0.5X−0.75Xという閾値の使用による十分な閾値対ノイズマージンの検証、及び例えば閾値190Bの1.5X−2Xという閾値の使用による信号対閾値マージンの検証、の両方に検出器190Cを使用することができる。この情報は、適正な閾値対ノイズ比及び適正な信号対閾値比の両方を提供するように190Bの閾値を経時的に調節するのに使用することができる。
【0079】
[0092]幾つかの事例では、それぞれの閾値検出器がペースパルスにつき1つのペース検出より多くを指し示すことを抑止することのできる複数の沈黙タイマー194をペース検出器62’が含んでいてもよい。1つの実施例では、各閾値検出器190が各自の沈黙タイマー194を有している。別の実施例では、閾値検出器190の1つ又はそれ以上が共通の沈黙タイマー194を有している。閾値検出器190各々の信号がプログラムされている閾値を超えると沈黙タイマー194の出力がアクティブになる。沈黙タイマー194の1つ又はそれ以上がアクティブになると、それら沈黙タイマーと関連付けられる閾値検出器190A−190Cは更なるペースパルスを検出しない。この方式では、沈黙タイマー194は、沈黙タイマー194が各自の出力を非アクティブ化させるまで更なるペース検出を阻む。1つの実施例では、沈黙タイマー194は、当該沈黙タイマー194と関連付けられる閾値検出器190がアクティブな検出信号を出力した際に、自身の出力を≧10ms且つ≦40msの間アクティブ化する。別の実施例では、沈黙タイマー194は自身の出力を30msの間アクティブ化する。幾つかの事例では、沈黙タイマー194は、再トリガモード(プログラム可能な特徴)で動作するようになっていて、沈黙タイマー194の出力がアクティブである間に別の検出が起これば沈黙タイマー194が再起動される。他の事例では、ペースパルス検出器62’は沈黙タイマー194を含んでいない。
【0080】
[0093]
図8に示されている実施例では、微分フィルタ188も移動平均フィルタ184からの信号出力を得る。微分フィルタ188及びノイズ検出器192は、帯域通過フィルタ186及び閾値検出器190と並列して、感知される電気信号を処理する。微分フィルタ188は1次差分微分フィルタであってもよい。例えば、微分フィルタは、移動平均フィルタ184の出力の差分信号(例えば、x(n)−x(n−1))を生成することができる。他の実施形態では、他の微分フィルタが利用されていてもよい。
【0081】
[0094]幾つかの実施形態では、ペースパルス検出器62’は、微分フィルタ188の出力を解析してノイズ信号を検出するノイズ検出器192を含んでいる。他の実施例では、ノイズ検出がペースパルス検出器62’によって遂行されていない。ペースパルス検出器62’が実際にノイズ検出器192を含んでいる事例では、ノイズ検出器192の各々が特定の周波数のノイズを監視するようになっていてもよく、例えば、ノイズ検出器192Aが60Hzのノイズを監視し、ノイズ検出器192Bが50Hzのノイズを監視していてもよい。ペースパルス検出器62’は、他の実施形態では、単一のノイズ検出器しか含んでいないこともあれば、2つより多いノイズ検出器を含んでいることもある。
【0082】
[0095]移動平均フィルタの出力が4kHzである上述の実施例では、ノイズ検出器192の各々は、ゼロクロッシング間の4kHz周期の数を数えるゼロクロッシングカウンタを含んでいてもよい。代わりに、ゼロクロッシングカウンタがたった1つしかなく、それが複数のノイズ検出器192によって共有されていてゼロクロッシング間の4kHz周期の数を追跡するようになっていてもよい。ノイズ検出器192の各々は、更に、ゼロクロッシングが起こったときにゼロクロッシングカウンタの値の関数として増分及び減分されるノイズカウンタを含んでいる。ノイズ検出器192は、ノイズカウンタの値に基づいてノイズを検出する。60Hzノイズを監視しているノイズ検出器192Aの場合、ゼロクロッシングの発現に際し、ノイズ検出器192Aは、ゼロクロッシングカウンタの値を確定し、ゼロクロッシングカウンタの値が60Hzノイズを示唆する範囲内にあれば、例えば32と36の間にあれば、60Hzノイズカウンタを増分させ、ゼロクロッシングカウンタの値が60Hzノイズを示唆する範囲内になければ、例えば32より小さいか又は36より大きければ、60Hzノイズカウンタを減分させる。16.67msの持続時間を有している60Hzノイズについて、ゼロクロッシングは大凡8.33ms毎に起こるものと予想される。4kHzクロック周期は0.25msであり、従って8.33msは、ゼロクロッシング間クロック周期の計数33.3に等しい。当該範囲は幾分ばらつきのある構築である。同じく、50Hzノイズを監視しているノイズ検出器192Bの場合、ゼロクロッシングの発現に際し、ノイズ検出器192Bは、ゼロクロッシングカウンタの値を確定し、ゼロクロッシングカウンタの値が50Hzノイズを示唆する範囲内にあれば、例えば39と43の間にあれば、50Hzノイズカウンタを増分させ、ゼロクロッシングカウンタの値が50Hzノイズを示唆する範囲内になければ、例えば39より小さいか又は43より大きければ、50Hzノイズカウンタを減分させる。当該範囲は60Hzノイズ範囲と同様の方式で60Hzノイズ信号の代わりに50Hz信号の期間を使用して選択されている。60Hzノイズカウンタ又は50Hzノイズカウンタの何れかが例えば1つの実施例では7とされる閾値より大きい又か又は閾値に等しければ、各自のノイズ検出信号(ノイズ検出1又はノイズ検出2それぞれ)がアクティブになる。特定のノイズ検出信号は、それぞれのノイズカウンタが例えば1つの実施例では4とされる第2の閾値より下に落ちるまでアクティブのままであり、第2の閾値より下に落ちた時点でアクティなノイズ検出信号は非アクティブになる。第2の閾値を第1の閾値より低くしておくことは、ノイズ検出器をノイズ検出中と非ノイズ検出中の間で頻繁に切り替えさせない緩衝器となる。制御モジュール30は、ペース検出がノイズに因る偽検出であるかどうかを判定するのにノイズ検出器192A及び/又は192Bの出力を利用することができる。
【0083】
[0096]他の事例では、ゼロクロッシングカウンタは、各ゼロクロッシング間のデータサンプルの数を数えることができ、閾値は相応に設定されてもよいであろう。別の代替形では、ゼロクロッシングのタイムスタンプを信号の周波数を確定するのに利用することもできるであろう。更に別の事例では、ノイズ検出器は、50Hzノイズ及び60Hzノイズに加え他のノイズ又はアーチファクトを検出していてもよい。
【0084】
[0097]
図9は、ここに説明されている技法による、1つ又はそれ以上の感知チャネルのブランキングの一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、ペースパルス検出器62は、感知チャネル内のペーシングパルスの検出と関連付けられる1つ又はそれ以上の入力を得て解析する(80)。
図3の一例としての感知モジュール30では、例えば、ペースパルス検出器62は、ペースアーチファクト検出信号(例えば、スルーレート、振幅、パルス幅、又は受信される信号の他の特性に基づく)、前置増幅器オーバーレンジ信号、ADC入力オーバーレンジ信号、及びADCスルーレートオーバーレンジ信号、のうちの幾つか又は全てを解析する。但し、他の実施形態では、これらの信号のうちの1つのみ又はこれらの信号の2つ又はそれ以上の何れかの組合せがペースパルス検出器62によって解析されている。加えて、感知チャネル内のペーシングパルス又は他のアーチファクトを示唆する他の信号がペースパルス検出器62によって解析されていてもよい。単一入力又は複数入力を使用している異なる手法なら、感度、特異度、複雑性の間の異なるトレードオフをもたらすことになろう。幾つかの事例では、ペースパルス検出器62は、感知チャネルのブランキングを、ペースパルスが頻脈性不整脈検出の感度又は特異度に影響を与える可能性がある事態、例えばより高い振幅のペースパルス又はペースアーチファクト、に限定することにしている。
【0085】
[0098]ペースパルス検出器62は、入力の何れかが、ブランキングが必要になるペーシングパルス即ちペーシングアーチファクトを示唆しているかどうかを判定する(82)。以上に
図3に関して説明されている様に、ペースパルスは、感知される信号(例えば感知されるR波又は感知されるP波)とは異なる振幅、スルーレート、又は他の特性を有していることもある。例えば、大凡10−20mVより大きい振幅を有するペースパルスは、結果的に前置増幅器52及び/又はADC56を入力オーバーレンジ条件の1つ又はそれ以上で動作させることになりかねない。別の例として、ペースパルスは、ADC56のスルーレート限界を超えるスルーレートを有していて、その結果、ADCスルーレートオーバーレンジ信号の起動を生じさせるかもしれない。同じく、ペースアーチファクト検出器94は、アーチファクトを引き起こしそうなペースパルスを、ADC56若しくは他の構成要素からの信号の振幅、スルーレート、又は他の特性に基づいて検出することができる。入力信号のどれもが、ブランキングが必要になるペーシングパルスを示唆していない場合(ブロック82の「NO」分岐)、ブランキング制御モジュール64は1つ又はそれ以上の入力を解析することを続行する(80)。
【0086】
[0099]入力信号の何れか1つが、ブランキングが必要になるペーシングパルスを示唆している場合(ブロック82の「YES」分岐)、ペースパルス検出器62はペースアーチファクト検出信号をアサートする(83)。ペースアーチファクト検出信号のアサーションに応えて、ブランキング制御モジュール64は感知チャネルが閾値の時間期間内にブランキングされていたかどうかを判定する(84)。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルが前にブランキングされた最後の時点以来少なくとも30−60msの期間が経過するまで感知チャネルをブランキングしようとはしない。これは、継続的EMI環境での過剰なブランキングを予防することを意図したものであるが、なおも心房ペーシング事象と心室ペーシング事象の両方での大凡200ms未満の間隔でのブランキングを許容する。ブランキングが閾値の時間期間内でトリガされてしまっている場合(ブロック84の「YES」分岐)、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルをブランキングしようとはせず、1つ又はそれ以上の入力を解析することを続行する(80)。
【0087】
[0100]ブランキングが閾値の時間期間内でトリガされていなかった場合(ブロック84の「NO」分岐)、ブランキング制御モジュール64は感知チャネルのブランキングを開始する(86)。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、以上に
図3に関して説明されている様に、制御信号をブランキングモジュール60へ提供してブランキングモジュールに感知される信号の値を保持させることによって、感知チャネルのブランキングを開始するようになっている。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、ペーシングアーチファクトが検出された感知チャネルに限定してブランキングを開始するようになっている。別の実施例では、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルの何れか1つでペーシングアーチファクトが検出されている場合は感知チャネル全てでブランキングを開始するようになっている。
【0088】
[0101]感知チャネルのブランキングを開始した後、ブランキング制御モジュール64は、チャネルがブランキングされていた時間量がブランキング閾値より大きいかどうかを判定する(88)。幾つかの事例では、ブランキング制御モジュール64は、既定の時間期間である例えば20msに亘ってブランクキングするように構成されている。感知チャネルが既定の時間期間に亘ってブランキングされていなかった場合(ブロック88の「NO」分岐)、ブランキング制御モジュール64は引き続き感知チャネルをブランクキングする。感知チャネルが既定の時間期間に亘ってブランキングされていた場合(ブロック88の「YES」分岐)、ブランキング制御モジュール64は感知チャネルのブランキングを打ち切る(89)。
【0089】
[0102]別の実施形態では、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルを既定の時間期間に亘ってブランキングすることはしてはいない。代わりに、ブランキング制御モジュール64は、入力全てがブランキングを要するペーシングパルスの存在をもはや示唆しなくなるまで、又は感知チャネル構成要素を落ち着かせるだけの余裕を考慮した閾値の時間期間である例えば5−20msに亘って入力全てがペーシングパルスの存在をもはや示唆しなくなるまで、又は感知チャネルのブランキングを開始してからの時間量が最大ブランキング持続時間である例えば大凡10−30msより大きいか又はそれに等しくなるまで、感知チャネルのブランキングを継続するようになっていてもよい。
【0090】
[0103]
図10は、一例としての頻脈性不整脈検出アルゴリズムの状態
図100である。通常動作中、ICD20は、制御モジュール30が1つ又はそれ以上の感知チャネル上の感知される電気信号の心拍数を推定している非関与状態102で動作している。ICD20の制御モジュール30は、感知チャネル上の複数のR−R間隔(即ち、連続的に感知されている心室事象間の間隔)を測定し、測定された複数のR−R間隔に基づいて感知チャネルの心拍数を推定している。1つの実施例では、制御モジュール30は、感知チャネル上の直近の12のR−R間隔を記憶している。但し、制御モジュール30は、12より多い又は少ない直近R−R間隔を記憶するようになっていてもよい。心拍数を推定するため、制御モジュール30は記憶されたR−R間隔を最も短いR−R間隔から最も長いR−R間隔までソートし、R−R間隔のサブセットのみを使用して心拍を推定する。1つの実施例では、制御モジュール30は心拍数を測定されたR−R間隔のサブセットの平均値(例えば、直近の12のR−R間隔のうち7番目に短いR−R間隔から10番目に短いR−R間隔までの平均値)として推定するようになっている。より多い又はより少ないR−R間隔が心拍数の推定に使用されていてもよい。別の実施例では、制御モジュール30は、測定されたR−R間隔の中央値又は当該群内の他の特定のR−R間隔、例えば9番目に短いR−R間隔、を使用して心拍数を推定している。以上に説明されている一例としての心拍数推定技法は、VT又はVFの症例の様な短いR−R間隔に対する適正な感度を維持しつつも過剰感知の影響を受け難い心拍数推定を提供する。
【0091】
[0104]ここに説明されている実施例では、ICD20は、以上に
図1に関して説明されている感知ベクトル2つで独立に心拍数を推定し、推定された心拍数を頻脈性不整脈心拍数閾値、例えばVT/VF閾値と比較する。1つの実施例では、頻脈性不整脈心拍数閾値は、180拍動毎分へ設定されていてもよい。但し、他の閾値が使用されていてもよい。また、他の事例では制御モジュール30は単一の感知ベクトルしか解析していないこともあれば、他の事例では2つより多い感知ベクトルを解析していることもある。「非関与」状態での動作例は、「医療装置での不整脈を検出するための方法及び機器」と題されたガネムらヘの米国特許第7,761,150号(本明細書ではガネムらと呼称)の提出されている明細書の段落[0064]−[0075]及び
図7A、
図8に記載されている。
【0092】
[0105]制御モジュール30が感知ベクトルの一方又は両方で心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値より上であると判定すると、制御モジュール30は関与状態104へ移行する。関与状態104では、制御モジュール30は、心拍数とECG信号形態情報の組合せを使用して、要ショック療法律動をショック療法を必要としないものから鑑別する。関与状態104では、例えば、制御モジュール30は、感知される電気信号の複数の既定のセグメントの形態メトリックを解析し、各セグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。制御モジュール30はこの形態解析を両方の感知ベクトルの電気信号で並列して遂行することができる。
【0093】
[0106]1つの実施例では、制御モジュール30は、電気信号の複数の3秒セグメントに亘る形態を解析し、3秒セグメントの各々について、当該特定の3秒セグメント内のEGMをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。他の実施例では、関与状態で制御モジュール30によって解析されるセグメントの長さは、3秒より短い又は長い場合もある。
【0094】
[0107]この関与状態での形態解析は、メトリックがQRS群の位置に関係なくセグメント全体に亘る電気信号について算定されるグロス形態の解析を含んでいてもよい。形態メトリックは、1つの実施例では、信号エネルギーレベル、ノイズ対信号比、筋ノイズパルス計数、正規化平均整流振幅、平均周波数、スペクトル幅、及び低勾配含量を含んでいる。これらのメトリックは、使用することのできるメトリックの種類の一例であり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。他のグロス形態メトリックが、以上に挙げられているメトリックに加えて又は代わりに使用されてもよい。
【0095】
[0108]制御モジュール30は、グロス形態メトリックを解析して、セグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。制御モジュール30は、セグメントのグロス形態メトリックの1つ又はそれ以上を解析して、当該特定のセグメント内の信号がノイズ及び/又はアーチファクトによって損なわれているかどうかを判定することができる。損なわれていれば、制御モジュール30は、セグメントをショック可能でないとして分類するか、又は当該セグメントを他方の感知ベクトル内の同セグメントの分類に基づいて分類する。制御モジュールがセグメント内の信号はノイズ及び/又はアーチファクトによって損なわれていないと判定すれば、制御モジュール30は、グロス形態メトリックの1つ又はそれ以上を解析してセグメント内の信号がVTショックゾーン又はVFショックゾーンの何れかに入っているかどうかを判定し、入っていれば、セグメントをショック可能であるとして分類する。セグメントがVTショックゾーン又はVFTショックゾーンに入っていないと判定されれば、セグメントはショック可能でないとして分類される。「関与」状態での動作中のグロス形態の一例としての解析が、ガネムらの提出されている明細書の段落[0076]−[0130]及び[0138]−[0141]、及び
図7B−
図7E、
図7H、
図7I、
図9A−
図9C、
図10、及び
図11A−
図11Bに記載されている。
【0096】
[0109]セグメントのグロス形態分類がショック可能であるとされれば、制御モジュール30は、幾つかの事例では、更に、セグメント内のQRS群又は拍動の形態を解析してセグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。この解析は、制御モジュール30がセグメント全体の代わりに拍動を中心としたウィンドーの形態しか解析しないので拍動ベースの形態解析と呼称されている。ウィンドーは例えば120−200msの間の範囲を有していてもよい。1つの実施形では、制御モジュール30は、ウィンドー内の拍動の形態を既定のテンプレート形態と比較して、拍動が既定のテンプレートに一致する(例えば、60%より大きい又は60%に等しい一致度スコア閾値を有する)かどうかを判定する。セグメント内の拍動のうち閾値数より多い拍動、例えばセグメント内の拍動の75%より多い拍動がテンプレートに一致しなければ、セグメントはショック可能であるとして分類される。そうでなければ、セグメントはショック可能でないとして分類される。この様に、グロス形態と拍動ベースの形態の両方が解析される場合、セグメントはショック可能であるとして分類されるには両方の解析を満たさなければならない。但し、他の実施形態では、制御モジュール30はセグメントのショック可能である又はショック可能でないとしての分類を以上に説明されているグロス形態解析のみに基づいて行っている。感知される電気信号のセグメントの拍動ベースの形態解析の1つの実施例が「2つの感知ベクトルを使用する医療装置での頻拍事象を鑑別するための方法及び機器」と題された米国特許出願第14/250,040号、特に
図4、
図10、及び
図11、及びにそれらの図の関連説明に記載されている。当該出願の内容全体をここにそっくりそのまま援用する。
【0097】
[0110]制御モジュール30は、両方の感知ベクトルのセグメントの分類を記憶し、複数のセグメントの分類を解析して、コンデンサの充電が始まる活性状態へ移行するべきか否かを判定する。制御モジュール30が律動はショック療法が必要ではない(例えば、ショック可能であるとして分類されているセグメント数が閾値数より少ない)そして少なくとも一方の感知ベクトルで心拍数は閾値心拍数より小さい又は閾値心拍数に等しいと判定すれば、制御モジュール30は非関与状態102へ移行する。制御モジュール30が、律動はショック療法が必要ではないが両方の感知ベクトルで心拍数は閾値心拍数より大きいと判定すれば、制御モジュール30は関与状態104で引き続き電気信号の後続の3秒セグメントに亘る形態メトリックを解析する。制御モジュール30が関与状態104中に律動はショック可能であると判定すれば(例えば両方の感知チャネルでセグメント3つのうちの2つより多くがショック可能であるとして分類されれば)、制御モジュール30は活性状態106へ移行する。
【0098】
[0111]活性状態106では、制御モジュール30は、除細動コンデンサの充電を開始する。加えて、制御モジュール30は、ショック可能な律動の終止に向け信号形態(グロス形態単独若しくはグロス及び拍動ベースの形態)を引き続き解析する。制御モジュール30は、引き続き、例えば以上に関与状態104に関し説明されている様に感知信号のセグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類し、関与状態104か又は活性状態106の何れかの状態中にショック可能であるとして分類されているセグメントの数を解析するようになっていてもよい。制御モジュール30が要ショック療法律動は終止してしまったと判定すれば、制御モジュール30は非関与状態102へ戻る。制御モジュール30は、例えば両方の感知信号で最後の8つのセグメントのうちショック可能であると分類されるセグメントが3つより少ない及び感知信号の少なくとも一方で心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値より小さい場合に、律動は終止してしまったと判定する。制御モジュール30が、コンデンサの充電が完了した時点で要ショック療法律動が依然として存在していると判定すれば、即ち、例えば最後の8つの3秒セグメントのうち少なくとも5つがショック可能であるとして分類されている場合、制御モジュール30は活性状態106からショック状態108へ移行する。「活性」状態での動作例は、ガネムらの提出されている明細書の段落[0131]−[0136]及び
図7Fに記載されている。
【0099】
[0112]ショック状態108では、制御モジュール30は療法モジュール34を制御して除細動電極24を含んでいる療法ベクトルを介してショックを送達させ、活性状態106へ戻って送達された療法の成功を評価する。例えば、制御モジュール30は、頻脈性不整脈が終止してしまっており非関与状態へ移行するべきかどうかを判定する、又は頻脈性不整脈が再度検出されているかどうかを判定することができる。制御モジュール30は、例えば両方の感知チャネルで3つのセグメントのうち少なくとも2つがショック可能であるとして分類されている場合、頻脈性不整脈を再度検出している。「ショック」状態での動作例は、ガネムらの提出されている明細書の段落[0137]及び
図7Gに記載されている。非関与状態、関与状態、活性状態、及びショック状態での動作のための1つの例としての技法がガネムらに記載されている。
【0100】
[0113]制御モジュール30は、例えば
図9の関与状態104又は活性状態106での、感知される電気信号の既定のセグメントの形態メトリックが解析中である検出状態で動作しているときは、ペーシング列を検出し、ペーシング列を検出していることに応え、1つ又はそれ以上の頻脈性不整脈検出修正がなされる修正検出状態109へ移行することができる。以上に説明されている様に、ペーシング装置16によるペーシングの送達は制御モジュール30による頻脈性不整脈検出に干渉しかねない。従って、制御モジュール30は、ペーシングの送達に対し、損なわれる公算を下げるように頻脈性不整脈検出解析を修正することによって応える。以下で流れ線図に関して更に説明されている様に、頻脈性不整脈検出はペーシングがペーシング装置16によって提供されている間中修正されることになる。
【0101】
[0114]
図11は、ペーシング列を検出し、ペーシング列を検出していることに応えて頻脈性不整脈検出を修正している制御モジュール30の一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、制御モジュール30は、1つ又はそれ以上の感知チャネルからのペーススパイク検出信号(又は、ペーススパイク検出信号とペースアーチファクト検出信号の論理的組合せ)を解析して、ペーシング列の開始を検出する(110)。1つの実施例では、制御モジュール30は、ペーススパイク検出信号が2つのペーシングスパイクを互いの1500ミリ秒内に識別したときにペーシング列の開始を検出する。言い換えれば、1500msより小さい単一のペーシングされた周期が検出され次第、ペーシング列の開始が検出されたということになる。但し、制御モジュール30はペーシング列の開始を検出するのに1500msとは異なる閾値を使用していてもよい。
【0102】
[0115]制御モジュール30は、ペーシング列の周期長さを推定する(112)。1つの実施例では、制御モジュール30はペーシング列の2つの直近の周期長さを3つの直近に検出されているペーシングスパイクを使用して算定し、当該ペーシング列の周期長さを2つの直近の周期長さのうち最も短い方の長さとして推定する。これは、ペーシング列内のペーシングスパイクの或る程度の検出不足を許容する。例えば、仮に最後の4つのペースから3つが検出されていて、観察される周期長さがXと2Xであったなら、制御モジュール30はペーシング列の周期長さをXであると推定することになる。他の事例では、制御モジュール30は、2つより多い直近の周期長さを使用していること(例えば3つ、4つ、5つ、又はそれより多い直近の周期長さを使用することによる)もあれば、単一の周期長さしか使用していないこともある。更に、制御モジュール30は、2つの直近の周期長さのうち最も短い方をペーシング列の推定周期長さとして選択する代わりに、複数の直近の周期長さの平均値又は中央値の様な他の技法を使用してペーシング列の周期長さを推定するようになっていてもよい。
【0103】
[0116]制御モジュール30は、推定周期長さが第1の周期長さ閾値より小さい又は第1の周期長さ閾値に等しいかどうかを判定する(114)。第1の周期閾値は、確信的にATPとして分類することのできる最小周期長さとすることができる。1つの実施例では、最小周期長さ閾値は、200ミリ秒に等しくされている。推定周期長さが第1の周期長さ閾値より小さい又は第1の周期長さ閾値に等しいとき(ブロック114の「YES」分岐)、制御モジュール30は検出されたペーシング列がEMIらしいと判定し、信号は無視される(116)。
【0104】
[0117]推定周期長さが最小周期長さ閾値より大きい場合(ブロック114の「YES」分岐)、制御モジュール30は、推定周期長さを第2の周期長さ閾値に比較する(118)。第2の周期長さ閾値は、確信的にATPとして分類することのできる最大周期長さとすることができる。1つの実施例では、第2の周期長さ閾値は、330ミリ秒に等しくされている。推定周期長さが第2の周期長さ閾値より小さい又は第2の周期長さ閾値に等しい場合(ブロック118の「NO」分岐)、制御モジュール30は、ペーシング列がATPであると判定し、ATPの存在を勘案するように検出アルゴリズムを修正する(120)。以下、
図12は、感知される電気信号内のATPを勘案するようになされる検出修正の1つの実施例を説明している。当該実施例では、頻脈性不整脈検出は、ATPが終止してしまうまで一部抑止される。但し、感知される信号内のATPを勘案するように他の修正がなされてもよい。他の実施例では、推定周期長さを有する検出されたペーシング列がATPであることをより確信的に断定するために、推定周期長さを調べる以外に追加の解析が遂行されている。例えば、制御モジュール30は、ペーシングパルス間隔の規則性、ペーシングアーチファクト振幅の一貫性、ペーシングパルススルーレートの一貫性、及び/又はペーシングパルス極性の一貫性、を解析するようになっていてもよい。典型的に、ATPはこれらの特徴の全てではないにしても幾つかに一貫性を有しているはずである。
【0105】
[0118]制御モジュール30は、感知モジュール32からのペーススパイク検出信号及び/又はペースアーチファクト検出信号を解析して、ペーシング列が終止してしまったかどうかを判定する(122)。例えば、制御モジュール30は、2つの条件のうちの一方、即ち(1)ペーシングスパイクが閾値の時間期間に亘って検出されなかった又は(2)ペーシング列の開始を検出してからの時間量が閾値の時間量を超えている、が合致していればペーシング列は終止してしまったと検出する。1つの実施例では、制御モジュール30は、ペーススパイク検出信号上に及び/又はペースアーチファクト検出信号上に、少なくとも複数の推定周期長さのペーシングスパイクに亘って、ペースパルスが何も検出されなかった場合に、ペーシング列の終了を検出する。複数とは2より大きい何れかの数とされる。1つの特定の実施例では、当該複数は推定周期長さの2.25倍とされている場合もある。但し、他の事例では、制御モジュール30は異なる複数を利用していてもよい。代わりに、制御モジュール30は、ペーシング列の開始から特定の時間量が経過してしまった後、ペーシング列の終了を検出することができる。例えば、制御モジュール30は、ペーシング列の開始から3秒後、4秒後、5秒後、又は他の既定の時間期間後、ペーシング列の終了を検出することができる。その様な特徴はATPを検出するのに許容される最大持続時間を設定する。
【0106】
[0119]制御モジュール30がペーシング列は終止していないと判定した場合(ブロック122の「NO」分岐)、制御モジュール30は、ATPの存在を勘案するように引き続き検出アルゴリズムを修正する(120)。制御モジュール30がペーシング列は終止してしまったと判定した場合(ブロック122の「YES」分岐)、制御モジュール30は、未修正の頻脈性不整脈検出アルゴリズムへ復帰する(124)。
【0107】
[0120]決定ブロック118に戻って、推定周期長さが第2の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック118の「YES」分岐)、制御モジュール30は、周期長さが第3の周期長さ閾値より大きいかどうかを判定する(126)。1つの実施例では、第3の周期長さ閾値は400msに等しくされている。推定周期長さが330msより大きく400msより小さい場合(ブロック126の「NO」分岐)、ペーシング列を推定周期長さのみに基づいてATP又は速い徐脈ペーシングとして確信的に分類するのは無理である。而して制御モジュール30は、ペーシングに至るまでのオンセット又はペーシングに至るまでのショック可能との律動分類があるかどうかを判定する(130)。ペーシングがATPであれば、それに先行してHRの急増化(「オンセット」)があるはずだし、おそらくはペーシングより先のセグメントについてショック可能との律動分類を有しているはずである。対照的に、ペーシングが速い徐脈ペーシングであれば、経時的に緩やかな心拍数上昇を有しているはずであり(即ち、オンセット無し)、おそらくはペーシングより先のそれらセグメントについてはショック可能でないとの律動分類を有しているはずである。他の実施例では、推定周期長さを有する検出されたペーシング列がATPであることをより確信的に断定するため、ペーシングに至るまでのオンセット又は律動分類を調べる以外の追加の解析が遂行されている。例えば、制御モジュール30は、ペーシングパルス間隔の規則性、ペーシングアーチファクト振幅の一貫性、ペーシングパルススルーレートの一貫性、及び/又はペーシングパルス極性の一貫性、を解析するようになっていてもよい。典型的に、ATPはこれらの特性の全部ではないにしても幾つかに一貫性を有しているはずである。
【0108】
[0121]制御モジュール30が、ペーシングに至るまでのオンセット又はペーシングに至るまでのショック可能との律動分類があると判定した場合(ブロック130の「YES」分岐)、制御モジュール30は、ペーシング列はATPであると判定し、ATPの存在を勘案するように検出アルゴリズムを修正する(120)。制御モジュール30が、ペーシングに至るまでのオンセット又はペーシングに至るまでのショック可能との律動分類は無いと判定した場合(ブロック130の「NO」分岐)、制御モジュール30は、速い徐脈ペーシングを検出し、速い徐脈ペーシングを勘案するように検出アルゴリズムを修正する(132)。1つの実施例では、頻脈性不整脈検出アルゴリズムへ、新たな拍動ベース形態一貫性の鑑別部が追加されている。但し、感知される信号内の速い徐脈ペーシングを勘案するのに他の修正がなされてもよい。制御モジュール30は、律動の周期長さ(例えば心拍数)がVT/VFゾーンを外れるまで修正された拍動ベースの検出アルゴリズムで動作し続ける。
【0109】
[0122]決定ブロック126に戻って、推定周期長さが第3の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック126の「YES」分岐)、制御モジュール30は、推定周期長さを第4の周期長さ閾値に比較する(128)。第4の周期長さ閾値は、最大の速い徐脈ペーシング周期長さに相当していてもよく、1つの実施例では600msに等しくされている。推定周期長さが第4の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック128の「YES」分岐)、制御モジュールは未修正の検出アルゴリズムで動作する。推定周期長さが第4の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック128の「NO」分岐)、制御モジュール30は、速い徐脈ペーシングを検出し、速い徐脈ペーシングを勘案するように検出アルゴリズムを修正する(132)。
【0110】
[0123]
図11に説明されている実施例で使用されている閾値は、単腔ペースメーカーのペーシングスパイク列を検出するのに使用することができる。二腔ペースメーカー又はCRTペースメーカーについては、ペース間でタイミングが異なることもあるので(例えば、AV遅延又はVV遅延)、閾値は異なっていてもよい。心臓の1つより多い房室へ提供されるペーシング列については他の解析技法を遂行することが必要かもしれない。
【0111】
[0124]
図12は、ATPを勘案して修正された頻脈性不整脈検出アルゴリズムを実施している制御モジュールの一例としての動作を示す流れ図である。最初に、制御モジュール30はATP列を検出する(140)。1つの実施例では、制御モジュール30は、検出されているペーシング列の推定周期長さが200−330msの間又は330−400msの間にあればATP列を検出し、しかもATP検出の直前にショック可能な分類の心拍数オンセットを伴っている。但し、他の実施例では、制御モジュールは、異なる周期長さ範囲を使用してATPペーシングを検出している。
【0112】
[0125]制御モジュール30は、頻脈性不整脈検出アルゴリズムが頻脈性不整脈検出閾値を超える心拍数を検出したかどうかを判定する(142)。以上に
図10に関して説明されている様に、制御モジュール30は、心拍数が頻脈性不整脈検出閾値である例えば180拍動毎分を超えるまでは、選択された感知ベクトル上では心拍数しか解析されない非関与状態102で動作している。感知ベクトルの両方で推定心拍数が頻脈性不整脈検出閾値を超えていない場合(ブロック142の「NO」分岐)、制御モジュール30は引き続き未修正の非関与状態102で動作する(144)。
【0113】
[0126]頻脈性不整脈検出アルゴリズムが、心拍数は頻脈性不整脈検出閾値を超えていることを検出したとき又は例えばATP列を検出するより前に検出していたら(ブロック142の「YES」分岐)、制御モジュール30は、
図10の関与状態104又は活性状態106で動作している可能性が最も高い。以上に
図10に関して説明されている様に、関与状態104及び活性状態106中、制御モジュール30は、感知される電気信号のセグメントを、セグメントのグロス形態の解析及び/又はセグメント内の拍動ベースの形態の解析に基づいてショック可能である又はショック可能でないとして分類してゆく。
【0114】
[0127]制御モジュール30は、感知チャネルでの感知を継続しており、活性状態106で動作している場合なら除細動コンデンサの充電を継続する(146)。制御モジュール30は全ての検出状態変数を現在の状態に保持する(148)。例えば、それらセグメントのショック可能である又はショック可能でないとの直近の例えば8つの分類を維持するバッファは維持されることになる。制御モジュール30は、EGMの何れかの不完了セグメント又はEGMの過去に遡るセグメントでATP列を含んでいるセグメントを無視することになる(150)。
【0115】
[0128]制御モジュール30は、最後に検出されているペースパルスから既定の時間期間後に新たなセグメント(例えば3秒セグメント)を始める(152)。例えば、制御モジュール30は、最後に検出されているペースパルスから330ms後に新たな3秒セグメントを始めることができる。他の実施例では、制御モジュール30は、最後に検出されているペースパルス後の信号の新たなセグメント(例えば3秒セグメント)を推定周期長さに基づいて始めている。制御モジュール30は、ATP列が終止してしまったかどうかを判定する(154)。以上に説明されている様に、例えば、制御モジュール30は、2つの条件のうちの一方、即ち(1)ペーシングパルスが閾値の時間期間(例えば、2.25X推定周期長さ又は何らかの既定の閾値)に亘って検出されなかった又は(2)ペーシング列の開始を検出してからの時間量が閾値の時間量(例えば5秒)を超えている、が合致すればペーシング列は終止してしまったと検出する。ペーシング列の終了を検出するための判定基準は、新たな3秒形態セグメント取得の開始後に充たされることになる、ということに留意されたい。言い換えれば、実行できる3秒形態解析ウィンドーの始点はペーシング列の終了が検出される前に開始され得るということである。
【0116】
[0129]ペーシング列の終了が検出されない場合(ブロック154の「NO」分岐)、制御モジュール30は、データのセグメントを無視し、直近に検出されているペーシングパルスから既定の時間期間後に新たな実行できる形態セグメントが再び開始されることになる(150、152)。別の実施例では、制御モジュール30はブロック154でATPが終止したことが検出された後に初めて形態セグメント(例えば3秒セグメント)を取得することができる。制御モジュール30がATP列は終止してしまったと判定した場合(ブロック154の「YES」分岐)、制御モジュール30は通常の検出動作に戻り、新たな形態セグメントの形態解析を遂行して、セグメントがショック可能である又はショック可能でないのどちらであるかを判定する(156)。制御モジュール30は、而して、検出状態をそれがATP前の解析と切れ目なく連続しているかのように更新してゆく。
【0117】
[0130]
図13は、速い徐脈ペーシングを勘案するように頻脈性不整脈検出アルゴリズムを修正している制御モジュールの一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、制御モジュール30は、速い徐脈ペーシングの列を検出する(160)。1つの実施例では、制御モジュール30は、以上に
図11に関して説明されている様に、検出されるペーシング列の周期長さを推定し、検出されるペーシング列の推定周期長さが400msより大きい場合に速い徐脈ペーシングの列を検出することができる。但し、他の実施例では、制御モジュールは、異なる周期長さ閾値又は他の技法を使用して速い徐脈ペーシングを検出していることもある。
【0118】
[0131]制御モジュール30は、感知ベクトルの両方で感知される心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値である例えば180拍動毎分より上であるかどうかを判定する(162)。制御モジュール30が心拍数は頻脈性不整脈心拍数閾値より上ではないと判定した場合(ブロック162の「NO」分岐)、制御モジュール30は頻脈性不整脈検出修正を一切行わない(164)。制御モジュール30が心拍数は閾値心拍数より上であると判定した場合(ブロック162の「YES」分岐)、制御モジュール30は追加の拍動ベースの形態解析を実施して、形態の一貫性を監視する。ショックが必要でない場合にショック可能であるとの分類を生じさせかねない1つの例としてのシナリオは、ペーシング誘発応答が幅広のQRS及び大きいT波のせいで二重計数を生じさせてしまう場合である。その様なシナリオの周囲では、ECG形態は、一貫した過剰感知によって引き起こされる及びペーシングパルスが一貫した捕捉に至れば引き起こされるA−B−A−Bパターンとなるであろう。
【0119】
[0132]このシナリオ、又は不適切なショック分類を生じさせかねない他のシナリオを識別するために、制御モジュール30は、現在のセグメント内の第1の感知事象の形態を当該セグメント内の既定数の後続の感知事象の形態と比較し、比較の各々を一致又は不一致として分類する(166)。各々の感知事象又は拍動は、一致度スコアが閾値である例えば60%より大きい又は閾値に等しい場合に一致として分類され、そうでなければ拍動は不一致として分類される。他の事例では、制御モジュール30は、セグメント内でATP検出後の第1の感知事象の形態を後続の感知事象の形態と比較し、比較の各々を一致又は不一致として分類している。以上に
図10で説明されている様に、関与状態104及び活性状態106で遂行される拍動ベースの形態解析は、拍動ウィンドーの形態を固有心拍数形態の既定のテンプレートと比較しているのに対し、追加的な拍動ベースの形態一貫性鑑別部は、頻脈性不整脈の第1の感知事象の形態を既定数の後続の感知事象の形態と比較する。1つの実施例では、後続の感知事象の既定数は11に等しくされている。但し、既定数は11より大きくても又は11より小さくてもよい。
【0120】
[0133]制御モジュール30は、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数が第1の閾値より小さいかどうかを判定する(168)。1つの実施例では、第1の閾値は、後続の感知事象の既定数が11に等しい場合には3に等しくされている。但し、第1の閾値は他の値に等しくてもよく、後続の感知事象の既定数が11より大きい又は11より小さい場合は特にそうである。制御モジュール30が、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数は第1の閾値より小さいと判定した場合(ブロック168の「YES」分岐)、制御モジュール30は、他のグロス形態解析及び拍動ベースの形態解析がショック可能であると示唆していれば、当該セグメントをショック可能であるとして特徴付ける(170)。これは、例えば、頻脈性不整脈がVF又は多形性VTである場合に起こり得る。
【0121】
[0134]制御モジュール30が、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数が第1の閾値より大きい又は第1の閾値に等しいと判定した場合(ブロック168の「NO」分岐)、制御モジュール30は、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数が第2の閾値より大きいかどうかを判定する(172)。1つの実施例では、後続の感知事象の既定数が11に等しい場合、第2の閾値は7に等しくされている。但し、第2の閾値は他の値に等しくてもよく、後続の感知事象の既定数が11より大きい又は11より小さい場合は特にそうである。
【0122】
[0135]制御モジュール30が、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数は第2の閾値より大きいと判定した場合(ブロック172の「YES」分岐)、制御モジュール30は、他のグロス形態解析及び拍動ベースの形態解析がショック可能であると示唆していれば、当該セグメントをショック可能であるとして特徴付ける(170)。これは、例えば、頻脈性不整脈が単形性VTである場合に起こり得る。制御モジュール30が、頻脈性不整脈(又はセグメント)の第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数は第2の閾値より小さい又は第2の閾値に等しいと判定した場合(ブロック172の「NO」分岐)、制御モジュール30は、他のグロス形態解析及び拍動ベールの形態解析がショック可能であると示唆しているかどうかにかかわりなく、当該頻脈性不整脈(又はセグメント)をショック可能でないとして特徴付ける(174)。これは、例えば、頻脈性不整脈の検出が過剰感知の結果でありそうな場合に起こり得る。
【0123】
[0136]様々な実施例を説明してきた。以上に述べられている様に、本開示内の概念はICDを有していない植え込み型のシステムで使用することもできる。例えば、1つより多いリードレスペーシング装置(例えば心房内LPDと心室内LPD)を有している植え込み型の医療システムでは、リードレスペーシング装置の一方又は両方が、ペース検出、ブランキング、検出修正、など、を遂行するようになっていてもよい。これは特にLPDがVT/VFを検出しATPを提供するように構成されている場合である。これら及び他の実施例は付随の特許請求の範囲による範囲の内にある。