(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571195
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】水溶性ジブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 293/00 20060101AFI20190826BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20190826BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20190826BHJP
C09D 153/00 20060101ALI20190826BHJP
C09D 11/326 20140101ALI20190826BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20190826BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20190826BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20190826BHJP
B01F 17/52 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
C08F293/00
C08L53/00
C08K3/00
C09D153/00
C09D11/326
C09B67/20 L
A61Q1/00
C11D3/37
B01F17/52
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-533530(P2017-533530)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公表番号】特表2017-538846(P2017-538846A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】FR2015053465
(87)【国際公開番号】WO2016102803
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2017年8月17日
(31)【優先権主張番号】1463207
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イヌブリ, ラベール
(72)【発明者】
【氏名】ブーリゴー, シルヴァン
【審査官】
内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−149147(JP,A)
【文献】
特開2012−193249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08L 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造P(BA−MPEGMA)−b−P(BA−S−MAA)のブロックコポリマーであって、
前記コポリマーが、水又は水性媒体に部分的に又は完全に可溶性であり、熱可塑性ブロックの質量比率が、前記コポリマーの重量の50%を超える、ブロックコポリマー。
【請求項2】
ブロックコポリマー中のカルボキシル官能基を有するモノマーの質量含有率が、前記コポリマーの重量に対して、10から40%、好ましくは20から35%の範囲である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
熱可塑性ブロックの質量比率が、前記コポリマーの重量の60%を超える、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
押出可能及び顆粒化可能である、請求項1から3の何れか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
室温で108Paを超えるせん断弾性係数G’を有する、請求項1から4の何れか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
窒素酸化物媒介物の存在下での制御ラジカル重合による、請求項1から5の何れか一項に記載のブロックコポリマーを調製する方法。
【請求項7】
重合開始剤が、式II
のアルコキシアミンである、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
特に、水性媒体中での顔料又は無機フィラーのための分散剤としての、請求項1から5の何れか一項に記載のブロックコポリマーの使用。
【請求項9】
ビチューメンなどの有機生成物のエマルジョンのための分散剤又は補助安定剤としての、請求項1から5の何れか一項に記載のブロックコポリマーの使用。
【請求項10】
請求項1から5の何れか一項に記載のブロックコポリマー、炭酸カルシウム、粘土、酸化鉄、ケイアルミン酸ナトリウム若しくはゼオライトなどの無機フィラー、及び/又は1種若しくは複数の着色剤、及び任意選択的に、天然の若しくは合成の結合剤、及びまた任意選択的に、分散剤、コアレッサー、殺生物剤、界面活性剤若しくは消泡剤などのその他の成分を含む、充填された及び/又は着色された水性組成物。
【請求項11】
化粧品組成物、捺染用糊料、ゼオライトの水性懸濁液、掘削流体、精錬用クリーム状配合物、洗浄剤配合物、塗料及びその他のコーティング組成物から選択される、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマーの分野、特に、2つのブロックからなり、そのうちの主要なブロックが、親水性の熱可塑性ブロックである、水溶性又は水分散性コポリマーの分野に関する。本発明は、制御ラジカル重合によって前記ジブロックコポリマーを調製する方法にもまた関する。最後に、本発明は、顔料のための分散剤として、又は、掘削泥水、捺染用糊料、化粧品、若しくは洗浄剤、及び塗料などのその他のコーティング組成物などの多様な適用におけるレオロジー改質剤として、並びに様々な分野、例えば植物防疫における、粗い無機若しくは有機フィラーのための沈降防止剤及び/若しくは懸濁剤としての、これらのジブロックコポリマーの様々な使用に向けられている。
【背景技術】
【0002】
ブロックコポリマーは、数多くの適用にとって注目すべき特性を有する1つのクラスの化合物に相当する。
【0003】
本出願者は、国際公開第2006/106277号において、20℃を超えるガラス転移温度を有する、少なくとも1つの第1のブロックA、15℃未満のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの第2のブロックB、及び20℃を超えるガラス転移温度を有する、少なくとも1つの第3のブロックCを含む、直鎖エチレンブロックコポリマーをすでに記載していて、前記第1のブロックA及び第3のブロックCは、同じ又は異なっていて、そのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのカルボキシル及び/又はカルボン酸官能基を含む、少なくとも1つのモノマー単位を含む。ブロックBは、前記ブロックコポリマー中で支配的であり、それによって、接着剤、特に熱溶融性接着剤として、前記コポリマーは使用されることになる。
【0004】
欧州特許第1525283号において、本出願者は、ナノドメインの形態で分散されている少量相を構成する、少なくとも1つの強固な親水性ブロック(B)及び主要な連続相を構成する、20%未満の吸水度を有する弾性の性質の少なくとも1つの疎水性ブロック(A)を有する、ブロックコポリマーを結合剤として含む、湿式媒体における接着のための接着剤組成物を記載した。
【0005】
しかし、その他の適用は、接着特性のない、水に溶解することができる、熱可塑性ブロックコポリマーを必要とする。
【0006】
したがって、室温を超える、優先的には100℃を超えるガラス転移温度(Tg)と、例えば、室温で10
8Paを超える弾性係数の形態で表現される高い機械的強度を同時に有する、ブロックコポリマーを調製する必要性があり、このブロックコポリマーは、上に述べた、分散剤又はレオロジー改質剤などの種類の適用にとって適切であり得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、第一に、
− 30℃未満のTgを有し、少なくとも1種の親水性モノマーを含む、部分的に又は完全に親水性の弾性ブロック、及び
− 30℃を超えるTgを有し、カルボキシル基を有する少なくとも1種のモノマーを含む、水溶性の熱可塑性ブロック
からなるジブロックコポリマーに関する。
【0008】
特徴として、熱可塑性ブロックの質量比率は、前記コポリマーの重量に対して50%を超える、好ましくは、60%以上である。これによって、ブロックコポリマーは、熱可塑性の性質になる。
【0009】
一実施態様によれば、本発明によるジブロックコポリマーは、押出可能であり、室温で熱可塑性ポリマー挙動を有する。
【0010】
一実施態様によれば、前記ジブロックコポリマーは、顆粒化可能であり、切削温度で10
5Paを超える弾性係数G’を有する。或る係数レベル未満で、水中切削も含み、ポリマーを顆粒化することが困難になることが、当業者にとって知られている。この係数限界は、ダルキスト粘着性基準によって提示される値に関連する可能性があり、その理由は、この限界(10
5Pa)未満で、固化防止剤を使用してすらも、固化の問題を回避することが不可能となるからである。
【0011】
さらに、前記コポリマーは、水又は水性媒体に部分的に又は完全に可溶性である。一実施態様によれば、前記コポリマーは、8を超える、優先的には10を超えるpHを有するアルカリ性媒体に可溶性である。
【0012】
有利なことに、ジブロックコポリマー中のカルボキシル官能基を有するモノマーの質量含有率は、前記コポリマーの重量に対して、10から40%、好ましくは20から35%の範囲である。
【0013】
本発明は、制御ラジカル重合により前記ブロックコポリマーを調製するための方法にもまた関する。
【0014】
本発明の別の対象は、顔料のための分散剤、又は、掘削泥水、捺染用糊料、化粧品、若しくは洗浄剤、及び塗料などのその他のコーティング組成物などの多様な適用におけるレオロジー改質剤として、並びに様々な分野、例えば植物防疫における、粗い無機若しくは有機フィラーのための沈降防止剤及び/若しくは懸濁剤などの種類の、本発明によるブロックコポリマーの様々な適用に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】コポリマーの重量損失について測定された、水性媒体中の本発明によるジブロックコポリマーの溶解度を時間の関数として示すグラフである。
【
図2】本発明によるコポリマーの弾性係数G’の変動を温度の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
これから、本発明を、以下の明細書中においてより詳細に非限定的に説明する。
【0017】
第一の態様によれば、本発明は、第1の弾性ブロック及び第2の熱可塑性ブロックから形成されるコポリマーに関する。
【0018】
第1のブロックは、30℃未満のTgを有し、少なくとも1種の親水性モノマーを含む、弾性ブロックである。用語「モノマー」は、ラジカル経路を通じて重合可能又は共重合可能である、任意のモノマーを意味する。用語「モノマー」は、いくつかのモノマーの混合物を網羅する。
【0019】
用語「Tg」は、ASTM E1356によるDSCによって測定される、ポリマーのガラス転移温度を表す。用語「モノマーのTg」は、前記モノマーのラジカル重合によって得られる、少なくとも10000g/molの数平均分子量Mnを有するホモポリマーのTgを表すためにもまた使用される。
【0020】
前記親水性モノマーは、
− アクリル酸又はメタクリル酸、
− アルキル基が、2から4個の炭素原子を含む、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル及び(メタ)アクリルアミド、特に、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ジメチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド;末端官能基がアルキル基、リン酸基、ホスホン酸基若しくはスルホン酸基で置換されていてもよい、アクリル酸及びメタクリル酸ポリエチレングリコール又はグリコール
から有利に選択される。
【0021】
第2のブロックは、30℃を超えるTgを有する、熱可塑性ブロックである。第2のブロックは、カルボキシル基を有する少なくとも1種のモノマーを含む。このモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、ビニル安息香酸、式CH
2=CH−CONHCH(OH)COOHのアクリルアミドグリコール酸、ビニル結合を有するカルボン酸無水物、及びまたそれらの塩;並びにそれらの混合物から、好ましくは選択される。上に述べられたエステルについて、重合の後で加水分解されて、−CO
2H官能基を有する単位になると理解される。
【0022】
水分子で水素結合を確立することが可能であるカルボキシル官能基を含む親水性モノマーのおかげで、熱可塑性ブロックは、水溶性又は水分散性である。
【0023】
ポリマーは、25℃、少なくとも5重量%の比率で、水に可溶性である場合(換言すれば、透明な溶液を形成する場合)、「水溶性」であると言われる。前記熱可塑性ブロックは、流水又は塩基性水に、特に可溶性である。
【0024】
ポリマーは、25℃、5%の濃度で、細かい、一般的に球状の粒子の安定した懸濁液を形成する場合、「水分散性」であると言われる。前記分散体を構成する粒子の平均サイズは、1μm未満であり、より一般的には、5から400nm、好ましくは10から250nmの範囲である。これらの粒径は、光散乱によって測定される。
【0025】
親水性の熱可塑性ブロックは、室温で強固であり、本発明によるブロックコポリマーの主要な相を構成する。
【0026】
一実施態様によれば、本発明によるジブロックコポリマーは、室温で10
8Paを超えるせん断弾性係数G’を有し、これは、ダルキスト粘着性基準によれば、粘着性の性質がないことを示す。
【0027】
第二の態様によれば、本発明は、上に記載されたジブロックコポリマーを調製する方法に関する。一実施態様によれば、このジブロックコポリマーは、制御又はリビングラジカル重合によって得られる。制御ラジカル重合によって、成長するラジカル種、特に停止工程の反応を低下させることが可能であり、これらは、標準重合においては、停止反応を制御することなくポリマー鎖の成長を不可逆的に妨害する反応である。この問題を解決し、停止反応の確率を低下させるために、所望の通り、重合を遮断し再出発させることが可能である、低い解離エネルギーの結合の形態での「休眠」ラジカル種を使用することが提案された。したがって、必要に応じて、活性ラジカル種の成長の期間及び成長の停止の期間が得られる。この交代は、反応の進行に応じて平均分子量の増加をもたらすと同時に、その遂行を制御する。この制御は、標準ラジカル経路より狭い分子量分布(より低い多分散指数)に反映される可能性があり、また、とりわけ、「休眠」ポリマー種を使用して新しいモノマーで重合を再出発させることによって、ブロックコポリマーを合成することを可能にし得る。
【0028】
原則的に、モノマーの選択と適合する、任意のリビングラジカル重合法を、ブロックコポリマーを調製するために使用してよい。好ましい方法は、窒素酸化物媒介物存在下での制御ラジカル重合であり、その理由は、この重合によって、幅広い種類のモノマー、特に、アクリルモノマー及びカルボキシル基で官能化されたアクリルモノマーを重合することが可能になるからである。この目的に向けて、例えば、欧州特許第0970973号、国際公開第00/49027号、国際公開第2005/082945号及び欧州特許第1527079号に記載されている通り、安定したフリーラジカルとして、SG1又はそのアルコキシアミン誘導体などの窒素酸化物を使用する方法を使用してよい。好ましい制御ラジカル重合開始剤は、下の式(I)
(I)
(式中、
*R
1及びR
3は、同一又は異なっていてよく、1から3個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する、直鎖又は分枝アルキル基を表し、
*R
2は、水素原子又は、1から8個の範囲のいくつかの炭素原子を含有する、直鎖若しくは分枝アルキル基、フェニル基、Li、Na、Kなどのアルカリ金属、NH4
+、NHBu
3+などのアンモニウムイオンを表し、
好ましくは、R
1及びR
3は、CH
3であり、R
2は、Hであり、略称「Bu」は、ブチル基を意味する)
のアルコキシアミンである。
【0029】
名称BlocBuilder(登録商標)で表示される、本発明のジブロックコポリマーを設計するために使用できるアルコキシアミンは、下の式(II)
(式中の略称「Et」は、エチル基を意味する)
に対応する。
【0030】
重合は一般に、いくつかの工程で以下の一般スキームに従って進行する。
− 第1の工程において、第1のモノマー又は少なくとも1種の親水性モノマーを含むモノマーの混合物の重合を実施して、マクロ開始剤又は前駆体を形成する。
− 第2の工程において、モノマー又はカルボキシル基を有する少なくとも1種のモノマーを含むモノマーの混合物によって構成される、第2のブロックの重合を、マクロ開始剤の終わりで、実施する。
【0031】
この方法を使用することで、溶液、懸濁液、バルク、有機溶媒又はエマルジョン中で、本発明によるジブロックコポリマーが合成され、これらのコポリマーの水安定性エマルジョンを含む水性ラテックスの形態の生成物を得ることが可能になる。
【0032】
有機溶媒は、重合方法を実行するために必要である場合、トルエン、キシレン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジメチルホルムアミドから選択できる。
【0033】
本発明の方法は、0.5から20barの範囲であってよい気圧、及び50から180℃、好ましくは90から110℃の範囲であってよい温度で、一般的に実施される。
【0034】
得られたジブロックコポリマーは、制御された分子量及び分子量分布を有する。有利なことに、ジブロックコポリマーの重量平均分子量
は、10000から1000000g/molの間、好ましくは50000から300000g/molの間である。数平均分子量
は、好ましくは10000から50000の間である。
【0035】
分子量分布又は多分散指数
は、一般的に4未満、有利には2未満、好ましくは1.5以下である。本発明の質量
は、ポリエチレングリコール当量として表され、分子ふるいクロマトグラフィー、SECによって測定され、この技術は、ゲル浸透クロマトグラフィーの略称であるGPCとしてもまた知られている。
【0036】
本発明のコポリマーは、水溶性モノマーを主に含み、水性媒体中での特に顔料又は無機フィラーのための分散剤として、特に使用されてよい。これらのコポリマーによって、鉱物粒子の水性分散体に、より詳細には、セメント及び石膏などの水硬性結合剤をベースとする組成物に、良好な流動性を与えることが、特に可能になる。
【0037】
本発明によるジブロックコポリマーは、ビチューメンなどの有機生成物のエマルジョンのための分散剤又は補助安定剤として、また役立ち得る。これらのジブロックコポリマーは、標準界面活性剤と組み合わせて、時間をかけ、これらのエマルジョンをより安定させることを可能にする。
【0038】
これらのコポリマーは、ナノ多孔性フィルムの形成における又は防汚塗料成分としての適用を見出し得る。
【0039】
本発明は、本発明によるコポリマーを含有する、充填された及び/又は着色された水性組成物にもまた関する。充填された及び/又は着色された水性組成物は、より詳細には、本発明のコポリマーの他に、炭酸カルシウム、粘土、酸化鉄、ケイアルミン酸ナトリウム若しくはゼオライトなどの無機フィラー、及び/又は1種若しくは複数の着色剤、及び任意選択的に、天然の若しくは合成の結合剤、及びまた任意選択的に、分散剤、コアレッサー、殺生物剤、界面活性剤若しくは消泡剤などのその他の成分を含有するものである。
【0040】
本発明によるコポリマーを含有する全てのこれらの水性組成物のうちで、挙げることができる例には、化粧品組成物、捺染用糊料、ゼオライトの水性懸濁液、掘削流体、特に水ベースの流体、精錬用クリーム状配合物、洗浄剤配合物、塗料及びその他のコーティング組成物がある。
【0041】
一実施態様によれば、弾性ブロックは、P(BA−MPEGMA)−b−P(BA−S−MAA)ジブロックコポリマーを形成するアクリル酸ブチル(BA)及びメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(MPEGMA)を含有し、熱可塑性ブロックは、アクリル酸ブチル、メタクリル酸(
MAA)及びスチレン(S)を含有する。
【0042】
実施例
以下の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を例証する。
【0043】
実施例1
P(BA−MPEGMA)−b−P(BA−S−MAA)コポリマーの合成
このジブロックコポリマーの合成は、2つの工程で行う。
バルク重合による第1のブロックP(BA−MPEGMA)の合成と、それに続く未反応のモノマーの除去、
溶媒法による第2のブロックP(BA−S−MAA)の合成。
【0044】
1.1.
ブロックP(BA−MPEGMA)の合成
この第1のブロックの合成は、Ingenieur Buro型の反応器を使用するバルク重合法によって実施される。
試薬:
− アクリル酸ブチル(BA) 624g
− メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(MPEGMA) 126g
− BlocBuilder(登録商標) 8.26g
転換率75%で数平均分子量27000g/molが目標とされる。
試薬を計量して取り出し、次に、磁気撹拌によって混合し、次に、真空加圧によって反応器中に導入する。反応器を撹拌する(250rpm)。媒体を、3循環の窒素圧及び真空を交互に行うことによって脱気する。重合は、60分間90℃、次に、90分間100℃、次に、110℃の3段階の温度で行う。重合時間は、345分である。転換率を、試料から1時間毎に収集された乾燥抽出物によってモニターする。MPEGMAは、揮発性ではないので、アクリル酸ブチルの転換率のみが、固体含有量を測定することによってモニターできる(125℃熱天秤及び125℃真空オーブン)。
目標の転換率に達したら、温度を80℃に低下させる。公称温度に到達した時点で、システムを、真空下に徐々に置き、未反応のモノマーを、蒸留して取り出す(液体窒素トラップ中で回収)。システムを、80℃で約90分間及び最大真空下に放置する。蒸留が完了したら、公称温度を40℃に低下させる。この公称温度に到達した時点で、媒体を希釈するために、エタノール400gを導入する(真空加圧によって)。溶液を完全に均質化するために、システムを、40℃で数時間、撹拌したままにする。次に、この溶液を回収する。
【0045】
1.2.
ブロックP(BA−S−MAA)の合成
合成を、質量比60/40のエタノール/トルエン混合物を使用して、溶媒法で実施する。合成を、全ての供給原料に対して45%の溶媒で実施する。
30/30/40質量比のBA/S/MAA混合物を導入する。
第2のブロックの転換率65%を有し、質量組成30/70を有するP(BA−MPEGMA)−b−P(BA−S−MAA)コポリマーが目標とされる。
供給原料を、下に示した通り調製する。
エタノール中で希釈された第1のブロック:200g
BA/S/MAA:104/104/138.7(g)
エタノール/トルエン:138.4/161.2(g)
このコポリマーのモル質量(PS当量)は、以下の通りである。
Mp=93600g/mol
Mn=55100g/mol
Mw=97300g/mol
Ip=1.77
【0046】
実施例2
ジブロックコポリマーP(BA−MPEGMA)−b−P(BA−S−MAA)の水性媒体中における溶解度の測定
溶解度試験のために、直径20mm及び厚さ1mmのペレットを、圧力をかけて、120℃の温度で調製する。
ペレットを、穏やかに撹拌した水性媒体中に入れ、質量損失を時間の関数として測定する。得られた結果を、添付の
図1に表す。
毎分ほぼ0.25%程度の質量損失の率での試料の溶解が観察される。
【0047】
実施例3
P(BA−MPEGMA)−b−P(BA−S−MAA)ジブロックコポリマーの動的機械分析(DMA)によるせん断弾性係数(G’)の測定
せん断弾性係数を、ARES歪み制御レオメータ(TA Instrument)を使用して測定する。寸法が40×10×2mmの長方形の棒を、鋳型法によって調製する。分析(1Hzの周波数での温度走査)を、長方形をねじった種類の形状で実施する。
温度(−80から150℃)の関数としての係数G’の変動を、
図2に表示する。
室温で、約4×10
8Paの弾性係数G’を測定することが観察され、これは熱可塑性型の本発明によるコポリマーの挙動の証拠である。