特許第6571209号(P6571209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6571209発電機用のステータリング、並びに発電機及び該発電機を備えた風力発電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571209
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】発電機用のステータリング、並びに発電機及び該発電機を備えた風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/20 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   H02K1/20 Z
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-561844(P2017-561844)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公表番号】特表2018-516526(P2018-516526A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】EP2016062605
(87)【国際公開番号】WO2016198324
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2017年11月28日
(31)【優先権主張番号】102015210662.4
(32)【優先日】2015年6月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】クノープ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ツィームス、ヤン カルシュテン
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504725(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0028728(US,A1)
【文献】 実開昭55−045618(JP,U)
【文献】 実開昭57−072759(JP,U)
【文献】 特開2011−099439(JP,A)
【文献】 特開2005−269730(JP,A)
【文献】 特開2011−099442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/20
H02K 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機用のステータリングあって、
ステータ巻線(W)を受容するための多数の溝部(17)と、磁気ヨーク(J)を備えており、
前記ステータリング(16)は、前記磁気ヨークの領域において、互いに対向する2つの冷却壁(39、41)を備えた少なくとも1つの冷却穴(15)と、第1冷却体(19)と第2冷却体(21)を有し、これらの冷却体は、前記冷却穴内に設されており、々、互いに向かい合い且つ互いに滑り合う楔面(31、33)と、各々、前記楔面の反対側で、前記冷却壁の方を向いており前記冷却壁の1つから熱エネルギーを排出するための熱連結面(35、37)とを有し、そして前記熱連結面が前記冷却壁に対して押し付けられるように、互いに摺動されていること
を特徴とするステータリング。
【請求項2】
前記冷却体(19、21)の1つは両方、各々、流体冷却システムへ接続するための少なくとも1つの流体路(23、23’)を有すること
を特徴とする、請求項1に記載のステータリング。
【請求項3】
前記第1冷却体(19)と前記第2冷却体(21)の前記熱連結面(35、37)の輪郭は、前記冷却壁(39、41)の輪郭へ適合されていること
を特徴とする、請求項1又は2に記載のステータリング。
【請求項4】
前記熱連結面(35、37)及び/又は前記楔面(31、33)には、各々、熱伝導ペーストが設けられていること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項5】
前記冷却体(19、21)の1つ又は両方は、少なくとも部分的に、又は全体的に、以下の材料、即ちアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうち1つの材料から構成されていること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項6】
前記冷却体(19、21)の少なくとも1つは、複数部材式で、第1部分体が前記楔面(31、33)を有し、第2部分体が少なくとも1つの前記流体路(23、23’)を有するように構成されていること
を特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項7】
少なくとも1つの前記冷却穴(15)の互いに対向する前記冷却壁(39、41)は、半径方向において互いに離間されていること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項8】
少なくとも1つの前記冷却穴(15)の互いに対向する前記冷却壁(39、41)は、周方向において互いに離間されていること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項9】
前記ステータリング(16)は、多数のステータ積層鉄心を有し、前記冷却穴(15)は、記ステータリングの軸方向第1端面から前記ステータリングの反対側の軸方向第2端面に至るまで、前記ステータ積層鉄心を貫通して延在していること
を特徴とする、請求項〜8のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項10】
少なくとも1つの前記冷却穴(15)は、矩形形状の横断面を有すること
を特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項11】
少なくとも1つの前記冷却穴(15)は、組立目的で前記ステータリングに設けられた穴であるか、又は、組立目的で前記ステータリングに設けられた穴であり、該穴は、から前記冷却体(19、21)へ適合させるために拡大されたものであること
を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のステータリング。
【請求項12】
ロータとステータを備え、前記ステータはステータリングを有する、発電機あって、
前記ステータリング(16)は、請求項1〜11のいずれか一項に記載のステータリングにより構成されていること
を特徴とする発電機。
【請求項13】
発電機備えた、風力発電装置あって、
前記発電機(1)は、請求項12に記載の発電機により構成されていること
を特徴とする風力発電装置。
【請求項14】
風力発電装置の発電機のステータリング内の冷却穴から熱エネルギーを排出するための冷却体装置の使用であって、
前記冷却穴(15)は、互いに対向する2つの冷却壁(39、41)を有し、
前記冷却体装置(14)は、第1冷却体(19)と第2冷却体(21)を有し、これらの冷却体は、各々、前記冷却壁の方を向いた熱連結面(35、37)を有し、そして前記熱連結面が前記冷却壁に対して押し付けられるように互いに摺動されていること
を特徴とする使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機用のステータリング、特に風力発電装置の同期発電機ないし環状発電機(リングジェネレータ)用のステータリングに関する。また本発明は、そのような同期発電機ないし環状発電機に関する。更に本発明は、そのような発電機を備えた風力発電装置に関する。また最後に本発明は、冷却穴(クーリングリセス)から熱エネルギーを排出するための冷却体装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
前述の形式のステータリングは、基本的に既知である。それらのステータリングは、通常、ステータ巻線を受容するための多数の溝部を有し、ステータ巻線には、ステータ巻線に沿って回転するロータにより電力が誘導される。ステータリングは、典型的には、溝部を支持する部分に隣接してステータリングが磁気ヨーク(磁気継鉄)を有するように構成されている。インナロータ(内側回転子)用のステータリングでは、磁気ヨークは、半径方向において、溝部が設けられている領域の外側にある。アウタロータ(外側回転子)用のステータリングでは、磁気ヨークは、それに対応して逆の構成となる。この際、それらの溝部は、半径方向において磁気ヨークの外側にある。
【0003】
電力の誘導の結果、前述の形式の発電機、特にステータリングには、熱が発生することになる。それに起因する出力損失をできるだけ僅かに保つために、効率的な熱排出は、追求するに値することである。
【0004】
従来技術から、熱をステータリングから直接的にも排出させる様々な試みが知られている。例えば下記特許文献1は、より良い熱伝達をもたらすように、複数の穴において固定的に密着するために、ステータリングを通って延在し且つ液圧的に拡開される複数の管材の使用を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 2 419 991 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば前述の形式による冷却は、実際には一般的に機能する能力があるとされているが、要求される装置上の手間や、管材を取り付けるため及び管材を拡開するために必要な時間手間は欠点と見なされる。更に管材は、一度拡開されると、ステータリングから再び取り外すことは極めて困難である。このことも欠点と見なされる。
【0007】
この背景から本発明の基礎を成す課題は、従来技術からの欠点ができるだけ十分に克服される、前述の形式のステータリングを提供することである。特に本発明の基礎を成す課題は、組立手間が軽減されると共にステータリングの効率的な冷却を可能とするステータリングを提供することである。更に本発明の基礎を成す課題は、特に冷却機構を後からも比較的簡単に取り外すことのできる冷却可能性を有するステータリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明の基礎を成す前記課題を、冒頭に記載した形式のステータリングにおいて、ステータリングが、磁気ヨークの領域において、互いに対向する2つの冷却壁を備えた少なくとも1つの冷却穴(冷却空所 Kuehlausnehmung)を有し、この際、冷却穴内には、第1冷却体と第2冷却体が配設されており、これらの冷却体は、各々、互いに向かい合い且つ互いに滑り合う楔面と、各々、楔面の反対側で、冷却壁の方を向いており冷却壁の1つから熱エネルギーを排出するための熱連結面とを有し、更にこれらの冷却体は、熱連結面が冷却壁に対して押し付けられるように、互いに摺動されていることにより解決する。本発明により、互いに滑り合う楔面は、それらの冷却体が互いに摺動することによりそれらの冷却体の熱連結面の間の間隔が変化されるように配向されている。
即ち本発明の第1の視点により、発電機用のステータリングであって、ステータ巻線を受容するための多数の溝部と、磁気ヨークを備えており、前記ステータリングは、前記磁気ヨークの領域において、互いに対向する2つの冷却壁を備えた少なくとも1つの冷却穴と、第1冷却体と第2冷却体を有し、これらの冷却体は、前記冷却穴内に配設されており、各々、互いに向かい合い且つ互いに滑り合う楔面と、各々、前記楔面の反対側で、前記冷却壁の方を向いており前記冷却壁の1つから熱エネルギーを排出するための熱連結面とを有し、そして前記熱連結面が前記冷却壁に対して押し付けられるように、互いに摺動されていることを特徴とするステータリングが提供される。
更に本発明の第2の視点により、ロータとステータを備え、前記ステータはステータリングを有する、発電機であって、前記ステータリングは、前記第1の視点に記載のステータリングにより構成されていることを特徴とする発電機が提供される。
更に本発明の第3の視点により、発電機を備えた、風力発電装置であって、前記発電機は、前記第2の視点に記載の発電機により構成されていることを特徴とする風力発電装置が提供される。
更に本発明の第4の視点により、風力発電装置の発電機のステータリング内の冷却穴から熱エネルギーを排出するための冷却体装置の使用法であって、前記冷却穴は、互いに対向する2つの冷却壁を有し、前記冷却体装置は、第1冷却体と第2冷却体を有し、これらの冷却体は、各々、前記冷却壁の方を向いた熱連結面を有し、そして前記熱連結面が前記冷却壁に対して押し付けられるように互いに摺動されていることを特徴とする使用法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲において場合により付記される図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)発電機用のステータリング、特に風力発電装置の同期発電機ないし環状発電機用のステータリングであって、ステータ巻線を受容するための多数の溝部と、磁気ヨークを備えており、前記ステータリングは、前記磁気ヨークの領域において、互いに対向する2つの冷却壁を備えた少なくとも1つの冷却穴を有し、前記冷却穴内には、第1冷却体と第2冷却体が配設されており、これらの冷却体は、各々、互いに向かい合い且つ互いに滑り合う楔面と、各々、前記楔面の反対側で、前記冷却壁の方を向いており前記冷却壁の1つから熱エネルギーを排出するための熱連結面とを有し、そして前記熱連結面が前記冷却壁に対して押し付けられるように、互いに摺動されていること。
(形態2)前記ステータリングにおいて、1つの冷却体又は両方の冷却体は、各々、流体冷却システムへ接続するための少なくとも1つの流体路を有することが好ましい。
(形態3)前記ステータリングにおいて、前記第1冷却体と前記第2冷却体の前記熱連結面の輪郭は、前記冷却壁の輪郭へ適合されていることが好ましい。
(形態4)前記ステータリングにおいて、前記熱連結面及び/又は前記楔面には、各々、熱伝導ペーストが設けられていることが好ましい。
(形態5)前記ステータリングにおいて、前記冷却体の1つ又は両方は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、以下の材料、即ちアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうち1つの材料から構成されていることが好ましい。
(形態6)前記ステータリングにおいて、前記冷却体の少なくとも1つは、複数部材式で、第1部分体が前記楔面を有し、第2部分体が少なくとも1つの前記流体路を有するように構成されていることが好ましい。
(形態7)前記ステータリングにおいて、少なくとも1つの前記冷却穴の互いに対向する前記冷却壁は、半径方向において互いに離間されていることが好ましい。
(形態8)前記ステータリングにおいて、少なくとも1つの前記冷却穴の互いに対向する前記冷却壁は、周方向において互いに離間されていることが好ましい。
(形態9)前記ステータリングにおいて、前記ステータリングは、多数のステータ積層鉄心を有し、前記冷却穴は、好ましくは前記ステータリングの軸方向第1端面から前記ステータリングの反対側の軸方向第2端面に至るまで、前記ステータ積層鉄心を貫通して延在していることが好ましい。
(形態10)前記ステータリングにおいて、少なくとも1つの前記冷却穴は、矩形形状の横断面を有することが好ましい。
(形態11)前記ステータリングにおいて、少なくとも1つの前記冷却穴は、組立目的で前記ステータリングに設けられた穴であり、該穴は、必要に応じて後から前記冷却体へ適合させるために拡大されたものであることが好ましい。
(形態12)前記ステータリングにおいて、ロータとステータを備え、前記ステータはステータリングを有する、発電機、特に風力発電装置の同期発電機ないし環状発電機であって、前記ステータリングは、前記ステータリングにより構成されていること。
(形態13)発電機、特に同期発電機ないし環状発電機を備えた、風力発電装置、特にギアレス風力発電装置であって、前記発電機は、形態12に記載の発電機により構成されていること。
(形態14)風力発電装置の発電機のステータリング内の冷却穴から熱エネルギーを排出するための冷却体装置の使用であって、前記冷却穴は、互いに対向する2つの冷却壁を有し、前記冷却体装置は、第1冷却体と第2冷却体を有し、これらの冷却体は、各々、前記冷却壁の方を向いた熱連結面を有し、そして前記熱連結面が前記冷却壁に対して押し付けられるように互いに摺動されていること。
【0010】
本発明は、楔形状の冷却体構造により、それらの冷却体を冷却穴内へ挿入することが、これらはまだ直接的に締付固定されている必要はないので、容易に可能であるという認識を利用している。それらの冷却体の摺動による後からの締付固定は、著しい装置上の手間を伴うことなく外から極めて簡単に行うことができる。また締付固定の解除も、同様に外から、変わらずに僅かな装置上の手間で可能である。従って楔形状に構成された互いに滑り合う冷却体(第1冷却体と第2冷却体)を用いることにより、極めて簡単な方式で、これらの冷却体とステータリングの間の熱伝達連結が達成される。また第1冷却体と第2冷却体を用いた本発明による冷却システムの後付け(後装着)も簡単に実現される。
【0011】
本発明は、有利には、1つの冷却体又は両方の冷却体が、各々、流体冷却システムへ、特に冷却水循環回路へ接続するための少なくとも1つの流体路を有することにより更に構成される。
【0012】
本発明の更なる有利な一構成において、第1冷却体と第2冷却体の熱連結面の輪郭は、各々、熱連結面が向けられている冷却壁の輪郭へ適合されている。押し付け(プレッシング)が十分に強い場合には、確かに弾性変形が原因で表面輪郭の適合も発生するが、対応の面を以下のように互いに適合させること、即ち、押し付けが極めて僅かな場合又は面の押し付けが無い場合でも、熱連結面と冷却壁の間の面接触が既に行われ得るように互いに適合させることは、有利と見なされる。このことは熱連結(Waermekopplung)をより良くする。
【0013】
好ましくは、熱連結面及び/又は楔面には、各々、熱伝導ペーストが設けられている。
【0014】
本発明の更なる有利な一実施形態においては、冷却体の1つ又は両方が、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、以下の材料、即ちアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうち1つの材料から構成されている。
【0015】
本発明は、最も簡単な一実施例において、第1冷却体と第2冷却体が、各々、一部材式で構成されているという構造形式から出発する。しかし有利な一実施形態においては、選択的に、冷却体の少なくとも1つが、複数部材式で、第1部分体が他方の冷却体と相互作用するための楔面を有し、第2部分体が少なくとも1つの流体路を有するように構成されていることが提案されている。このようにして製造技術的な利点が達成される。
【0016】
どのくらいのスペースをステータリングが構造上の制約に基づいて発電機内で半径方向において占めるべきなのかに応じ、第1冷却体と第2冷却体を半径方向において摺動により押し付けるか、又は周方向において摺動により押し付けることは、有利であり得る。それに応じ、第1の選択的な有利な一構成において、少なくとも1つの冷却穴の互いに対向する冷却壁は、半径方向において互いに離間されており、それに対して第2の選択的な有利な一構成において、それらの冷却壁は、周方向において互いに離間されている。互いに半径方向における離間の場合には、場合により比較的多数の冷却穴と冷却体をステータリングの周部にわたり配分することができ、それに対して互いに周方向における離間の場合には、ステータリングの磁気ヨークをより幅狭に構成することができる。
【0017】
本発明の特に有利な一実施形態において、ステータリングは、多数のステータ積層鉄心を有し、この際、冷却穴は、好ましくはステータリングの軸方向第1端面からステータリングの反対側の軸方向第2端面に至るまで、ステータ積層鉄心を貫通して延在する。ステータ積層鉄心(Statorblechpaket)としては、本発明の意味において、上下に積み重ねられた、好ましくはダイナモ鋼板の形式により構成された複数のステータ鋼板(Statorbleche)から成る装置として理解される。これらのステータ鋼板は、例えば絶縁紙を用いて又は絶縁塗料を用いて互いに分離することが可能である。
【0018】
本発明の有利な一実施形態において、冷却穴は、特に冷却穴の延在方向において、この延在方向は好ましくはステータリングの軸方向であるが、矩形形状の横断面を有する。矩形形状の横断面を有する冷却穴により、冷却体の幾何学形状は、特に簡単に製造することが可能である。この際、冷却壁の方を向いた熱連結面は、同様に平坦に構成することができる。
【0019】
ステータリングの更なる有利な一実施形態において、冷却穴は、組立目的又は固定目的でステータリング内に設けられた穴であり、該穴は、必要に応じて後から(例えばステータ鋼板の組立後に)冷却体へ適合させるために拡大されたものである。
【0020】
本発明は、この観点に関し、特に、冷却体のために専用の冷却穴を作成する代わりに、磁気ヨーク内にいずれにせよステータ鋼板の組立ないし固定のために設けられている開口を既に使用できるということを利用している。冷却体の組立と分解を可能とするために、所望の冷却能力に応じ、これらの組立穴又は固定穴を更に拡大するか、又は第1冷却体と第2冷却体の幾何学形状へ適合させることが必要であり得る。しかし冷却体を後から受容するためのこれらの穴の2回目の使用により、特殊な相乗作用が達成される。
【0021】
本発明は、更なる一観点において、冒頭に記載したように、ロータとステータを備え、ステータはステータリングを有する、発電機、特に風力発電装置の同期発電機ないし環状発電機(リングジェネレータ)に関する。
【0022】
本発明は、発電機において、最初に記載された課題を、ステータリングが前述の有利な実施形態の1つにより構成されていることにより解決する。発電機は、好ましくは、1メートルよりも大きい直径、特に数メートルの直径を有する発電機である。また発電機は、特に1MWよりも大きい出力クラスの発電機である。更に発電機は、特に、40回転/分よりも低い回転速度、特に30回転/分よりも低い回転速度、特に大きな実施形ではむしろ20回転/分よりも低い回転速度で低速回転する発電機である。そのような本発明による発電機の重量は、1トンよりも重く、特に数トンである。
【0023】
液体冷却機構も用いた効率的な熱排出の必要性は、発電機の前述の大きさの程度(オーダ)から説明される。
【0024】
本発明の第3の視点において、本発明は、冒頭に述べたように、特に同期発電機ないし環状発電機(リングジェネレータ)である発電機を備えた、風力発電装置、特にギアレス風力発電装置に関する。本発明は、本発明の基礎を成す課題を、そのような風力発電装置において、発電機が前述の有利な実施形態の1つにより構成されており、特にここで記載された有利な実施形態の1つによるステータリングを有することにより解決する。
【0025】
本発明の第4の視点において、本発明は、風力発電装置の発電機のステータリング内の冷却穴から熱エネルギーを排出するための冷却体装置の使用に関する。本発明は、本発明の基礎を成す課題を、そのような使用において、冷却穴が、互いに対向する2つの冷却壁を有し、冷却体装置が、第1冷却体と第2冷却体を有し、これらの冷却体は、各々、冷却壁の方を向いた熱連結面を有し、そして熱連結面が冷却壁に対して押し付けられるように互いに摺動されていることにより解決する。本発明により使用される冷却体装置は、好ましくは前述の実施形態の1つにより構成されている。
【0026】
以下、添付の図面に関連し、有利な実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一風力発電装置を模式的に斜視図として示す図である。
図2図1の風力発電装置のナセルを模式的に斜視断面図として示す図である。
図3図1及び図2の風力発電装置のステータの模式的な簡略斜視図を示す図である。
図4図3のステータの模式的な部分断面図を示す図である。
図5図4の図面に対して横方向の模式的な横断面図を示す図である。
図6図6a〜図6eは、前記図面の発電機用の冷却体装置の様々な投影図を示す図である。
【実施例】
【0028】
図1は、タワー102とナセル104を備えた風力発電装置100を示している。ナセル104には、3つのロータブレード108と1つのスピナ110とを備えたロータ106が配設されている。ロータ106は、運転時には風力により回転運動を行い、それによりナセル104内の発電機1(図2)を駆動する。
【0029】
図2には、ナセル104が示されている。ナセル104は、回転可能にタワー102に取り付けられており、方位駆動部(アジマス駆動部)7を用いて周知の方式で駆動されるように連結されている。更に周知の方式でナセル104には、機械支持体9が配設されており、機械支持体9は、同期発電機1を保持している。同期発電機1は、本発明に従って構成されており、特に低速回転する多極式の同期環状発電機(シンクロナスリングジェネレータ)である。同期発電機1は、ステータ3と、その内側で回転するロータ5を有し、ロータ5は、回転子とも称される。ロータないし回転子5は、ロータハブ13と結合されており、ロータハブ13は、風力によりもたらされるロータブレード108の回転運動を同期発電機1へ伝達する。
【0030】
図3は、ステータ3を単独で示している。ステータ3は、内周面18を備えたステータリング16を有する。内周面18には、多数の溝部17が設けられており、これらの溝部17は、導体束の形式のステータ巻線を受容するために構成されている。
【0031】
図4の横断面図から見てとれるように、ステータ3のステータリング16は、第1半径方向領域Wにおいてステータ巻線を有する。ステータ巻線は、導体束12の形式で、内周面18から延在する溝部17内に格納されている。第1半径方向領域Wに隣接して磁気ヨーク(磁気継鉄)が構成されている。ステータリング16の内側で回転方向Uに運動するロータ5により示唆された内側回転子(インナロータ)を有する図示の発電機1では、磁気ヨークJは、半径方向において、ステータ巻線を有する第1半径方向領域Wの外側に配設されている。外側回転子(アウタロータ:非図示)を有する代替的な同様に本発明による発電機では、ロータは、半径方向において、ステータの外側で回転し、従って磁気ヨークは、半径方向において、ステータ巻線の領域に隣接してステータ巻線の領域の内側に配設されるであろう。追加的な図示は、ここでは図面の見易さのために省略する。
【0032】
ステータ3とロータ5の間には、空隙Sが構成されている。
【0033】
磁気ヨークの領域Jには、ステータリング16内に複数の冷却穴(冷却空所:クーリングリセス)15が構成されている。これらの冷却穴15には、各々、冷却体装置14が配設されており、ステータリング16から熱を排出するために整えられている。
【0034】
図5は、冷却体装置14の更なる詳細を示している。
【0035】
図4の切断線A-Aに沿って経過する図5の横断面図は、冷却体装置14の取付け状態を示している。冷却体装置14は、第1冷却体19と第2冷却体21を有する。冷却路23が(ステータリングの回転軸線に関して)軸方向において第1冷却体19を通って延在している。冷却路23は、好ましくは冷却循環回路29へ接続されている。冷却穴15は、ステータリング16の軸方向第1端面25からステータリング16の反対側の軸方向第2端面27に至るまで延在している。
【0036】
第1冷却体19と第2冷却体21は、互いに滑り合う楔面31、33を有し(図6a〜図6e)、これらの楔面31、33は、矢印P1及び/又はP2の方向に互いに相対的に第1冷却体19と第2冷却体21を摺動させることにより、これらの冷却体19、21がこれらの冷却体19、21の方を各々向いた冷却穴15の冷却壁39、41に対して(楔効果により)押し付けられるように構成されている。それにより冷却体装置14とステータリング16の間のより良い熱伝達が達成される。第1冷却体19と第2冷却体21の更なる詳細は、図6a〜図6eからも見てとれる。
【0037】
図6aに図示されているように、第1冷却体19と第2冷却体21は、第1冷却体19の楔面31が第2冷却体21の楔面33と面接触状態にあるように互いに配設されている。両方の楔面31、33は、各々、好ましくは実質的に半径方向に配向された冷却体装置14の端面34、36に対し、各々90°と等しくない角度(傾斜角度)α、βを有する。特に有利には、角度α、βは、互いに同じである。楔面31、33の角度を付けた配向は、図5の矢印P1及びP2により第1冷却体19と第2冷却体21を摺動させることにより、第1冷却体19の熱連結面35と第2冷却体21の熱連結面37との間の間隔が矢印Qの方向に変化されることをもたらす。それにより技術的に極めて簡単な方式で、冷却体装置14を冷却穴15内へ固定的に圧入し、一方の冷却壁39、41と他方の熱連結面35、37との間の良好な熱伝達を保証することが可能である。
【0038】
図6a〜図6eには、更なる有利な一構成により、オプションとして、第2冷却体21内に第2冷却路23’が設けられている。選択的に又は追加的に1つの冷却体又は両方の冷却体19、21内に複数の冷却路を設けることも可能である。
【0039】
冷却ダクト自体に関しては、多岐にわたる幾何学形状構成が可能であり、それは、本発明においては、管の厳密な円筒状ないし中空円筒状の幾何学形状が必要とされているわけではなく、例えば押出し成形法により、例えば好ましくは蛇行形状(メアンダ形状)の冷却路のような、任意の冷却ダクト幾何学形状が実現可能なためである。また各々の図面の冷却穴の矩形の幾何学形状へ適合されている、図示された矩形の楔断面形状に対して選択的に、各々好ましくは冷却穴の輪郭及び冷却穴の冷却壁の輪郭へ適合されている特に熱連結面35、37の異なった幾何学形状も考慮できる。
【符号の説明】
【0040】
1 発電機(同期発電機)
3 ステータ(固定子)
5 ロータ(回転子)
7 方位駆動部(アジマス駆動部)
9 機械支持体
12 導体束
13 ロータハブ
14 冷却体装置
15 冷却穴(クーリングリセス)
16 ステータリング
17 溝部
18 内周面
19 第1冷却体
21 第2冷却体
23 冷却路
23’ 冷却路
25 軸方向第1端面
27 軸方向第2端面
29 冷却循環回路
31 第1冷却体の楔面
33 第2冷却体の楔面
34 冷却体装置の端面
35 第1冷却体の熱連結面
36 冷却体装置の端面
37 第2冷却体の熱連結面
39 冷却穴の冷却壁
41 冷却穴の冷却壁

J 磁気ヨークの領域
P1 第1冷却体の摺動方向
P2 第2冷却体の摺動方向
S 空隙
U ロータの回転方向
W 第1半径方向領域

α 楔面の角度(傾斜角度)
β 楔面の角度(傾斜角度)

100 風力発電装置
102 タワー
104 ナセル
106 ロータ
108 ロータブレード
110 スピナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e