特許第6571242号(P6571242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6571242
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20190826BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20190826BHJP
   C08L 63/02 20060101ALI20190826BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20190826BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20190826BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20190826BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20190826BHJP
   D03D 49/62 20060101ALN20190826BHJP
【FI】
   C08G59/24
   C08G59/50
   C08L63/02
   C08K3/26
   C08K3/08
   B22F1/00 N
   B22F9/08 A
   !D03D49/62 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-107317(P2018-107317)
(22)【出願日】2018年6月5日
【審査請求日】2019年4月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗木 智史
【審査官】 山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−159450(JP,A)
【文献】 特開平04−264154(JP,A)
【文献】 特表2007−535600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C08G 59/00 − 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール系エポキシ樹脂を全体の15〜25重量%、ビスフェノール類とエピクロロヒドリン、ビスフェノール類仕込み1に対し、エピクリロロヒドリンの仕込みは1よりも多く仕込んで作製されたエポキシ化合物、またはエメラルドパフォーマンス社製、商品名:HyPoxRA−840(カルボキシ変成ニトリルゴムのビスフェノールAジグリシジレート付加体、エポキシ当量は350)、またはダウケミカル社製、商品名:DER732(プロピレングリコールジグリシジレート、エポキシ当量は320)から選択される柔軟性付与エポキシ樹脂を全体の5〜15重量%、アミン系の硬化剤を全体の10〜20%含み、炭酸カルシウムを全体の40〜60重量%、アトマイズ法で得られたアルミニウム紛を全体の1〜10重量%含むエポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の筬の筬枠材と筬羽の固定用に適したエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は三次元織物の織成に関する織機公報である。織機は縦糸と横糸を織りなす為、筬が必要となる。
また、特許文献2は耐摩耗性と耐食性を備え、特にUVカット用の酸化チタン塗布繊維などの特殊繊維糸にも適用できる筬羽材質に関する公報である。
【0003】
筬は縦糸を正間隔に整列させ、横糸の搬送をガイドし、打ち込む必要がある為、筬羽を等間隔に配する必要があり、横糸を打ち込んでも筬羽がズレないだけの打ち込み耐性が必要と成る。
【0004】
特許文献2は筬枠材に対する筬羽固着方法は示されていないが、この固着が接着剤にて行われる場合がある。
特許文献2に示す様に筬羽材質は金属で、仮に通常の接着剤で固着したとするとその部分が目立ってしまい外観上好ましくない。
接着剤にて固着しているか否か分からない様にし、意匠性を持たせた固着方法が取られる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-191741
【特許文献2】特開2004-225085
【特許文献3】特開2005-325149
【特許文献4】特開平4-88077
【特許文献5】特開2004-99887
【特許文献6】特開2000-336333
【0006】
特許文献3、特許文献4の組成物は、金属調外観は示すものの、別の目的を達成する為に金属調外観を示す様に成っているだけで、筬羽固着用には向かなかった。また、特許文献5は、時計等の飾り石を装飾品用基体に固着するための接着剤組成物を示してあるが、筬羽固着用としてはふさわしくなかった。
【0007】
特許文献6はエポキシ樹脂組成物公報であるが、筬羽固着用としては打ち込み耐性に改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
接着剤にて固着しているか否か、分からない様にして意匠性を持たせ、且つ打ち込みを行っても筬羽がずれないだけの打ち込み耐性を持った筬枠材と筬羽を固着するエポキシ樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ビスフェノール系エポキシ樹脂を全体の15〜25重量%、柔軟性付与エポキシ樹脂を全体の5〜15重量%、アミン系の硬化剤を全体の10〜20%含み、炭酸カルシウムを全体の40〜60重量%、アトマイズ法で得られたアルミニウム紛を全体の1〜10重量%含むエポキシ樹脂組成物を得た。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエポキシ樹脂組成物は筬枠材、筬羽に対し安定した固着性を示し打ち込み耐性を持ち、且つ接着剤で固定しているか否か分からない様に意匠性を持たせることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ビスフェノール系エポキシ樹脂を全体の15〜25重量%、柔軟性付与エポキシ樹脂を全体の5〜15重量%、アミン系の硬化剤を全体の10〜20%含み、炭酸カルシウムを全体の40〜60重量%、アトマイズ法で得られたアルミニウム紛を全体の1〜10重量%含むエポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0012】
本願、エポキシ樹脂組成物は2液タイプである。
主剤に含まれるビスフェノール系エポキシ樹脂量は、全体の10〜30重量%、より好適には全体の15〜25重量%である。
ビスフェノール系エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジレート、ビスフェノールFジグリシジレート、ビスフェノールEジグリシジレート、ビスフェノールSジグリシジレート等が挙げられ、水素添加(水添)タイプで有っても良い。分子量については400以下で、ビスフェノールA型エポキシ基本構造式を式(1)に示すが、n=0体となる。

...(1)

・・・(2)
【0013】
主剤にはビスフェノール系エポキシ樹脂の他に、柔軟性付与エポキシ樹脂を含む。添加量としては全体の1〜20重量%、より好適には全体の5〜15重量%である。
柔軟性付与エポキシ樹脂とは、硬化したエポキシ組成物の架橋点が下がる様な化合物、即ち、エポキシ当量が大きいエポキシ樹脂の事である。
ビスフェノールAジグリシジレートのエポキシ当量は190、ビスフェノールFジグリシジレートのエポキシ当量は170であり、柔軟性付与エポキシ樹脂のエポキシ当量は、220以上と言う事に成る。
柔軟性付与エポキシ樹脂を具体的に示すと、ビスフェノール系では式(2)に示す様に、ビスフェノール類とエピクロロヒドリン、ビスフェノール類仕込み1に対し、エピクリロロヒドリンの仕込みは1よりも多く仕込んで作製されたエポキシ化合物を挙げる事が出来る。具体的な製品としては、アデカ社製、製品名:アデカレジンEP−4000(nとmの合計が2で、エポキシ当量は320)等が挙げられる。
非ビスフェノール系の具体的な製品としては、エメラルドパフォーマンス社製、商品名:HyPoxRA−840(カルボキシ変成ニトリルゴムのビスフェノールAジグリシジレート付加体、エポキシ当量は350)、ダウケミカル社製、商品名:DER732(プロピレングリコールジグリシジレート、エポキシ当量は320)等のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0014】
主剤には希釈剤を添加することもできる。希釈剤としてはグリシジル化された脂肪族化合物、グリシジル化されたエーテル化合物が上げられ、グリシジル化された数は任意である。代表例としては、四日市合成社製、商品名:DY−BP(ブチルグリシジルエーテル)、商品名:CY−BP(ブチルグリシジルエーテル)、商品名:エポゴーセーEN(C12〜13混合アルコールグリシジルエーテル)、商品名:エポゴーセーAN(C12〜13混合アルコールグリシジルエーテル)、商品名:エポゴーセー2EH(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、商品名:エポゴーセーHD(M)(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0015】
硬化剤としてはアミン化合物が挙げられる。添加量としては全体の5〜25重量%、より好適には10〜20重量%である。
アミン系硬化剤の具体的な製品名を挙げると、エボニック・ジャパン社製、商品名:アンカマイド260A、商品名:アンカマイド350A、商品名:アンカマイド375A、商品名:アンカマイド910、商品名:アンカマイド2050、商品名:アンカマイド2137、商品名:アンカマイド2353、商品名:アンカマイド2396、商品名:アンカマイド2426、商品名:アンカマイド2445、商品名:アンカマイド910、商品名:アンカミン1110、商品名:アンカミン1561、商品名:アンカミン1618、商品名:アンカミン1618F、商品名:アンカミン1693、商品名:アンカミン1704、商品名:アンカミン1769、商品名:アンカミン1884、商品名:アンカミン1895、商品名:アンカミン1934、商品名:アンカミン2071、商品名:アンカミン2072、商品名:アンカミン2074、商品名:アンカミン2075、商品名:アンカミン2143、商品名:アンカミン2280、商品名:アンカミン2199、商品名:アンカミン2205、商品名:アンカミン2228、商品名:アンカミン2368、商品名:アンカミン2405、商品名:アンカミン2432、商品名:アンカミン2422、商品名:アンカミン2502、商品名:アンカミン2505、商品名:アンカミン2609、商品名:アンカミン1618、商品名:アンカミン1884、商品名:アンカミン1934、商品名:アンカミン2074、商品名:アンカミン2143、商品名:アンカミン2280、商品名:アンカミン2596、商品名:アンカミン2643、商品名:アンカミン2644、商品名:アンカミン2706、商品名:アンカミン2730、商品名:アンカミン2049、商品名:アンカミン2264、商品名:アンカミンK−54、商品名:アンカミンK−61B、ピイ・ティ・アイ・ジャパン社製、商品名:ハードナーPH−770、商品名:ハードナーPH−776P、商品名:ハードナーPH777P、商品名:ハードナーPH−780、商品名:ハードナーPH−781、商品名:ハードナーPH782、商品名:ハードナーPH785、商品名:ハードナーPH−798、商品名:ハードナーKA−861、商品名:ハードナーKA−935等が挙げられる。
【0016】
本願、エポキシ樹脂組成物は色目調整と粘度調整を兼ねて、主剤、硬化剤に炭酸カルシウムを含む。炭酸カルシウム添加量は、主剤、硬化剤二液混合後に全体の40〜60重量%である。
炭酸カルシウムは、日東粉化工業社、白石カルシウム社、丸尾カルシウム社、井上石灰工業社、清水工業社等より市販されている。
炭酸カルシウムの種類としては石灰石を破砕して得られる重質炭酸カルシウム、消石灰に二酸化炭素を反応して得られる軽質炭酸カルシウム等が有るが、何れを用いてもよい。炭酸カルシウムの表面処理については未処理品、シランカップリング剤等にて処理した処理品、何れも用いる事ができる。
本願では丸尾カルシウム社製、商品名:スノーライトSSSを使用した。
【0017】
本願、エポキシ樹脂組成物は色目調整と粘度調整を兼ねてアトマイズ法にて作製されたアルミニウム粉を含む。添加量は、全体の0.5〜15重量%、より好適には全体の1〜10重量%であり、主剤、硬化剤どちらか片方にだけ添加しても良いし、両方に添加してもよい。
本願では、アトマイズ法にて作製されたアルミニウム粉は、ミナルコ社製、商品名:Al−At−200を使用した。
【0018】
本願、エポキシ樹脂組成物は炭酸カルシウム、アトマイズ処理されたアルミニウム粉以外に外観、接着強度を損なわない範囲で、シリカ、カオリン、焼成カオリン、クレー、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、タルク、ゼオライト、ガラスビーズ、シラスバルーン等の無機系充填材を添加する事が出来る。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリカーボネート等の有機系充填材を添加する事が出来る。
【0019】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお、部数は全て重量部である。
【実施例】
【0020】
実施例1の主剤作製
ビスフェノールAジグリシジレート(表1〜3中、BisAEPと記載):21.2重量部、DER732:9.9重量部、スノーライトSSS:29.5重量部、Al−At−200:5.5重量部を秤取り、均一になるまで攪拌し、実施例1の主剤を得た。
【0021】
実施例2〜8、比較例1〜5の主剤作製
表1、表2、表3に示した配合割合で、実施例1の主剤作製と同様の手順で、実施例2〜8、比較例1〜5の主剤を作製した。尚、BisFEPは、ビスフェノールFジグリシジレート、No.600は、福田金属箔粉工業製、粉砕アルミニウム粉である。
【0022】
実施例1の硬化剤作製
アンカマイド375A:12.9重量部、ハードナーPH−770:2.7重量部、スノーライトSSS:18.3重量部を秤取り、均一になるまで攪拌し、実施例1の硬化剤を得た。
【0023】
実施例2〜8、比較例1〜5の硬化剤作製
表1、表2、表3に示した配合比割合で実施例1の硬化剤作製と同様の手順で実施例2〜8、比較例1〜5の主剤を作製した。
【0024】
二液撹拌方法
主剤、硬化剤を重量比2:1に成るように秤取り、泡が入らないようにゆっくりと撹拌し、均一になるまで撹拌した。この2液混合溶液を用いて外観確認を行った上でせん断試験片、T字剥離験片を作製した。
【0025】
外観確認
前述の2液混合物をアルミニウム板に塗布し、23℃環境にて5日間保管し、硬化後の外観確認を行った。
硬化物が金属調で、アルミニウム板に同調している場合を(○)、明らかにアルミニウム板に樹脂が塗布されていると判断される場合を(×)とした。
尚、比較例5に関しては、外観が非常に悪かったので、せん断試験、T字剥離試験は行っていない。
【0026】
せん断試験
せん断試験は、市販のSPCC板を用いて行った。
25mm×100mm×1.6mm厚のSPCC板2枚のうち1枚に前述の2液混合物を塗布し、もう一枚のSPCC板を重ね合わせ接触面積が25mm×12.5mmに成るように貼り合わせた。クリップ2個を使い圧締し、23℃環境にて5日間保管した。クリップを取り外し、せん断験片とし、せん断試験を行った。
尚、せん断速度は5mm/分、接着強度測定環境温度は23℃/50%RHであった。
せん断試験は13MPa以上を(○)、13MPaを下回る場合を(×)とした。
【0027】
T字剥離試験
T字剥離試験は、市販のアルミニウム板を用いて行った。
25mm×100mm×0.5mm厚のアルミニウム板2枚のうち一枚に前述の2液混合物をアルミニウム板の端部を残し塗布し、接着面積が25mm×約70mmに成るようにもう一枚のアルミニウム板を重ね合わせた。0.05MPaの圧力が均一にかかるように、おもり載せ、23℃環境にて5日間保管した。硬化後、接着していない部分のアルミニウム板を大よそ90°それぞれ反対方向に曲げて、T字剥離試験片を作製し、T字剥離試験を行った。
尚、剥離速度は50mm/分、接着強度測定環境温度は23℃/50%RHであった。
T字剥離試験は0.6N/mm以上を(○)、0.6N/mmを下回る場合を(×)とした。
【0028】
ビスフェノール系エポキシ樹脂を全体の15〜25重量%、柔軟性付与エポキシ樹脂を全体の5〜15重量%、アミン系の硬化剤を全体の10〜20%、炭酸カルシウムを全体の40〜60重量%、アトマイズ法で得られたアルミニウム紛を全体の1〜10重量%含む実施例1〜8は、外観、せん断試験、T字剥離試験共に(○)となった。
【0029】
ビスフェノール系エポキシ樹脂よりも柔軟性付与エポキシ樹脂であるDER732が多い比較例1はせん断試験が(×)となった。
また、DER732の添加量が極端に少ない比較例2と変性エポキシ樹脂を添加していない比較例3はせん断試験、T字剥離試験が(×)となり、これは、横糸を通した時、筬羽がずれてしまう恐れがあることを示している。
【0030】
アトマイズ法で作製されたアルミニウム粉ではなく粉砕法にて作製されたアルミニウム粉のNo.600を添加した比較例4は、外観確認で(×)となった。また、炭酸カルシウムを添加していない比較例5も外観が(×)となった。
アトマイズ法で作製されたアルミニウム粉と炭酸カルシウムが必須成分である事が示された。
【表1】

【表2】

【表3】




















【要約】
【課題】
接着剤にて固着しているか否か分からない様にして意匠性を持たせ、打ち込みを行っても筬羽がずれないだけの打ち込み耐性を持った筬枠材と筬羽を固着するエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
ビスフェノール系エポキシ樹脂を全体の15〜25重量%、柔軟性付与エポキシ樹脂を全体の5〜15重量%、アミン系の硬化剤を全体の10〜20%含み、炭酸カルシウムを全体の40〜60重量%、アトマイズ法で得られたアルミニウム紛を全体の1〜10重量%含むエポキシ樹脂組成物を得ることである。
【選択図】なし