(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571248
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】相間移動触媒を用いて1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/25 20060101AFI20190826BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20190826BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20190826BHJP
C07C 19/10 20060101ALN20190826BHJP
【FI】
C07C17/25
C07C21/18
C07B61/00 300
!C07C19/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-136493(P2018-136493)
(22)【出願日】2018年7月20日
(62)【分割の表示】特願2015-556193(P2015-556193)の分割
【原出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2018-184442(P2018-184442A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年7月20日
(31)【優先権主張番号】61/760,321
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/168,065
(32)【優先日】2014年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】コットレル,スティーヴン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキ,コンスタンティン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】シャンクランド,イアン
【審査官】
早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−520421(JP,A)
【文献】
特表2007−501843(JP,A)
【文献】
特開昭54−109928(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第1580042(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/35
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)を含む有機反応物質を、有効量の相間移動触媒の存在下において無水フッ化水素(HF)でフッ素化することを含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)の製造方法。
【請求項2】
有機反応物質がHCO−1230zaをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機反応物質がHCO−1230zdをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
相間移動触媒が、第4級ホスホニウム塩又は第4級アンモニウム塩からなる群から選択されるオニウム塩を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年2月4日出願の米国仮特許出願61/760,321(その開示事項を参照として本明細書中に包含する)の利益を主張する。
本発明は、ハロゲン化有機化合物を製造する方法、より詳しくはヒドロクロロフルオロオレフィンを製造する方法、更により詳しくは相間移動触媒を用いて1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HFC−240fa)から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)をベースとする化学物質は、中でも冷媒、エアゾール噴射剤、発泡剤、及び溶媒などとして、種々の異なる用途において産業界で広く用いられている。しかしながら、幾つかのCFCは地球のオゾン層を破壊すると推測されている。したがって、より環境に優しい置換物がCFCに代わるものとして紹介されている。例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)は、フォーム発泡剤及び溶媒のような幾つかの工業用途のために好ましい物理特性を有すると認識されており、したがってこれらの用途のためにこれまで用いられているCFCに代わる良好な置換物であると考えられている。残念なことに、工業用途においてHFC−245faなどの幾つかのヒドロフルオロカーボンを用いることは、現在では地球温暖化に寄与すると考えられている。したがって、ヒドロフルオロカーボンに対するより環境に優しい置換物が現在求められている。
【0003】
HCFO−1233zd又は簡単に1233zdとしても知られている化合物の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、発泡剤及び溶媒としての使用などの幾つかの用途においてHFC−245faに代わる候補物質である。1233zdは、Z異性体及びE異性体を有する。これらの2つの異性体の間の物理特性の違いによって、純粋な1233zd(E)、純粋な1233zd(Z)、又は2つの異性体の幾つかの混合物は、冷媒、噴射剤、発泡剤、溶媒としての特定の用途のため、又は他の使用のために好適である可能性がある。
【0004】
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、液相反応器内において1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン( HCC−240fa)をフッ素化することに
よって製造することができることが公知である。無水HFを用いる無触媒HCC−240faフッ素化は、それらの低い溶解性、及びHCC−240faとHFの間の限定された接触表面積のために低速である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、反応速度を向上させ、及び/又はHCC−240faの1233zdへの転化率を上昇させる方法も公知である。これらとしては、撹拌速度の増加、及び/又は反応温度の上昇が挙げられる。しかしながら、撹拌速度を増加させても、2つの相の間の接触表面積は一定の程度までしか増加させることができない。而して、撹拌速度の増加によっては反応速度又は転化率は限定される。温度を上昇させると反応速度が増加することは事実であるが、溶液温度を上昇させることによって副生成物が付随して形成される。したがって、これらの有害な影響を起こすことなく反応速度を向上させることができる手段に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様においては、本発明は、無水HFによる240faのフッ素化を、これら2つの非相溶性の反応成分の間の反応を促進する相間移動触媒の存在下で行って、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生成させるプロセスに関する。
【0007】
他の態様においては、本発明方法は、相間移動触媒の存在下、及び場合によっては極性非プロトン性溶媒の存在下において、無水HFを用いて1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)を含む有機反応物質の単一工程フッ素化反応を行って、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)及び副生成物としてHClを生成させることを含む。有機反応物質材料としてHCC−240faに加えて、240faは、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)及び/又は1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)の1以上との混合形態にすることができる。或いは、1230za及び/又は1230zdのそれぞれを主要有機反応物質材料とすることができ、これは場合によって240fa及び/又は1230zd若しくは1230zaの他のものとの混合形態にすることができる。
【0008】
本発明の任意の特定の形態及び/又は態様に関して本明細書に記載する任意の特徴は、組合せの適合性を確保するために必要に応じて修正を加えて、本明細書に記載する本発明の任意の他の形態及び/又は態様の1以上の任意の他の特徴と組み合わせることができることは、本発明が関係する技術における当業者によって認識される。かかる組合せは、本開示によって意図される本発明の一部であるとみなされる。
【0009】
上記の一般的な説明及び下記の詳細な説明は両方とも例示及び例証のみのものであり、特許請求する発明を限定するものではない。他の態様は、本明細書に開示する発明の詳細及び実施を考慮すれば当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記に示したように、本発明は、無水HFによる240faを含む有機材料のフッ素化を、これら2つの非相溶性の反応成分の間の反応を促進させる相間移動触媒の存在下で行うプロセスに関する。
【0011】
一態様においては、本発明のこのプロセスに関する反応化学は、相間移動触媒の存在下、及び場合によっては極性非プロトン性溶媒の存在下において、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)、1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)、又はこれらの種々の混合物を含む有機反応物質の無水HFによる単一工程フッ素化反応を行って、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)、及び副生成物としてHClを生成させることを含む。好ましい有機反応物質材料は240faを含む。
【0012】
フッ素化反応は、好都合には、及び好ましくは相間移動触媒の存在下で行う。相間移動触媒は、これらの異類の非相溶性の成分、即ち選択された有機反応物質とHFの反応を促進する。種々の相間移動触媒を種々の方法で機能させることができるが、これらの作用機構は、相間移動触媒がフッ素化反応を促進するならば、本発明におけるそれらの有用性を決定するものではない。
【0013】
1つの有用な相間移動触媒は、第4級ホスホニウム塩及び第4級アンモニウム塩などのオニウム塩を含む。かかる化合物の例としては、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(Aliquat 336及びAdogen 464のブランドで商業的に入
手できる)、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムクロリド、4−ジアルキルアミノピリジニウム塩、例えばテトラフェニルアルソニウムクロリド、ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン]イミニウムクロリド、及びテトラトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。相間移動触媒の1つの好ましいが非限定的な例はAliquat 336
である。
【0014】
所望の反応を行うために有効量の相間移動触媒を用いなければならず、かかる量は、反応物質、プロセス条件、及び相間移動触媒を選択したら、限られた実験によって容易に決定することができる。通常は、選択される反応物質の量に対して用いる触媒の量は、約0.001〜約10モル%;好ましくは約0.01〜約5モル%;更により好ましくは約0.05〜約5モル%;である。
【0015】
フッ素化反応は、場合によっては、良好な結果のために、相間移動触媒の存在に加えて極性非プロトン性溶媒の存在下で行うことができる。極性非プロトン性溶媒の非限定的な例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。所望の反応を行うために有効量の溶媒を用いなければならず、かかる量は、反応物質、プロセス条件、及び相間移動触媒を選択したら、限られた実験によって決定することができる。通常は、選択される反応物質の量に対して用いる溶媒の量は、約0.001〜約10モル%;好ましくは約0.01〜約5モル%;更により好ましくは約0.05〜約5モル%;である。
【0016】
HCC−240fa、HCO−1230za、HCO−1230zd、又はこれらの種々の混合物のフッ素化反応は、液相の撹拌反応器内で行うことができる。好ましくは、反応器は、ハステロイC、インコネル、モネル、インカロイ、又はフルオロポリマーライニング鋼製容器のようにHF及びHClの腐食作用に対して抵抗性の材料から構成する。反応器には撹拌器を装備する。かかる液相フッ素化反応器は当該技術において周知である。
【0017】
好ましい態様においては、反応器には、所望の生成物を(副生成物のHCl、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)のような軽質有機物質、及び共沸性組成物におけるよりも多い量のフッ化水素と一緒に)放出させ、一方でHFのバルク、並びに1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(HCFC−241fa)、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(HCFO−1231zd)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(HCFC−242fa)、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232zd)、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロパン(HCFC−243fa)などのような過小フッ素化有機物質を残留させる精留カラムを更に装備する。
【0018】
HF、有機供給物質、即ちHCC−240fa又はHCO−1230za又はHCO−1230zd或いはこれらの種々の混合物、相間移動触媒、及び場合によっては極性非プロトン性溶媒をフッ素化反応器に充填することができ、撹拌を維持しながら所望の反応温度に加熱すると、直ちに反応を開始させることができる。反応器へのHFの流れを再開することができ、選択された反応物質の添加を直ちに開始して、連続反応を引き起こすことができる。
【0019】
或いは、大量のHCC−240fa又はHCO−1230za又はHCO−1230zd或いはこれらの種々の混合物をバッチ充填物として一度に加えることができ、次にHF
を反応器に徐々に加えることができる(半バッチ運転)。或いは、大量のHFをバッチ充填物として一度に加えることができ、次にHCC−240fa又はHCO−1230za又はHCO−1230zd或いはこれらの種々の混合物を反応器に徐々に加えることができる(半バッチ運転)。
【0020】
精留カラムの最適運転を有効にするためには、冷却剤の適切な温度制御及び十分な還流作用が望ましい。反応及び精留カラムに関して良好に作用することが分かった一般的な運転条件は、精留カラムからの排出流に対する制御バルブによって維持される100psig〜500psigの反応器運転圧力;主として反応器ジャケット中への水蒸気流によって供給され、更にHF供給材料を高圧水蒸気によって70℃〜180℃に過熱することによって与えられる65℃〜175℃の反応器温度;還流を誘発するための精留カラムの頂部上の熱交換器への−40℃〜35℃の冷却の適用;反応器内のものよりも約5℃〜60℃低いストリッパーの中央部分における温度;である。
【0021】
好ましくは、反応は、1233zdの(Z)異性体に対する(E)異性体の相対比を増加させ、一方でHFと得られる1233zdとの反応(これによってHFC−244faが形成され、これが次に更に反応してHFO−1234zeを生成させる可能性がある)を最小にするのに有効な温度及び/又は圧力の条件下に維持する。反応を下記の運転条件、特に65℃〜175℃、より好ましくは85℃〜155℃、最も好ましくは95℃〜150℃の温度範囲下に維持することによって、1233zd(Z)に対する1233zd(E)の高い比が生成することが分かった。
【実施例】
【0022】
下記は本発明の実施例であり、限定としては解釈されない。
比較実施例:
実施例1:
このバッチ式実験においては、相間移動触媒は用いなかった。282.9gのHF、及び246.2gのHCC−240fa(1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン)(12.4:1のHF:HCC−240faのモル比)を、室温において1ガロンの撹拌Parr反応器に充填した。次に、ミキサーを始動して反応器の内容物がよく混合されることを確保した。次に、反応器を所望の温度に加熱した。加熱すると、フッ素化反応の結果としてHCl副生成物が生成されるにつれて圧力が上昇し始めた。反応器を約110℃に数時間かけて加熱し、その温度に保持した。反応中に生成したHClをドライアイストラップ(DIT)に排出することによって、圧力を250psig〜325psigの範囲に制御した。
【0023】
反応の終了時、即ち約9.5時間後(HCl生成の消失によって決定)において、反応器からの圧力をDIT中に排出した。DITからの粗生成物を、約400gの水と共に1Lのモネル吸収シリンダー(ドライアイス中で冷凍)中に移した。吸収シリンダーを室温まで加温し、シリンダー中で形成された有機層の試料(放出時において、水性層及び有機層がシリンダー内に存在していた)を回収し、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。GC結果は、4.48GC%の245fa、90.61GC%の1233zd(E)、0.22GC%の244fa、2.93GC%の1233zd(Z)を示した。
【0024】
回収された有機物質の量を、その後に異なる段階の更なる分析によって定量すると75.4gになった。排出後に反応器内に残留していた有機物質は、約300〜400gの水で反応器をクエンチしてHF及びHClを吸収し、次に約100gの四塩化炭素を加えることによって回収した。次に、反応器を開放し、その内容物をプラスチック製のビンの中に排出した。分液漏斗を用いて有機物質を水性相から分離した。回収された有機相の全重量から反応器に加えたCCl
4の重量を減じることによって反応器から回収された重質物
質の量を計算したところ、96.9gになった。次に有機層のGC/MS及びGC分析を行ったところ、過小フッ素化種のHCFC−241fa(91.057GC%)、HCFC−242fa(0.760GC%)、及び出発材料のHCC−240fa(8.183GC%)に起因する3つの別個のピークが現れた。
【0025】
実施例2:
同じ装置及び手順を用いたが、相間移動触媒を用いて実施例1に記載の実験を繰り返した。2gのAliquat 336(多くの同等の反応性の商業的に入手できる第4級タイプの相間
移動触媒の1つ)も反応器中に充填した。反応器を110℃に加熱し、その温度に維持した。5時間以内に反応が完了したことが分かった。約80gの軽質有機物質が粗生成物として回収された。GC結果は、この有機物質が、3.48GC%の245fa、91.61GC%の1233zd(E)、0.12GC%の244fa、3.03GC%の1233zd(Z)を含んでいたことを示した。反応器から約90gの重質有機物質が回収された。GC分析は、この有機物質が、過小フッ素化種のHCFC−241fa(90.03GC%)、HCFC−242fa(2.48GC%)、及び出発材料のHCC−240fa(6.50GC%)を含んでいたことを示した。
【0026】
本明細書において用いる単数形の「a」、「an」、及び「the」は、記載が他に明確に示していない限りにおいて、複数のものを包含する。更に、量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターを、範囲、好ましい範囲、又はより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストのいずれかとして与える場合には、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意のより高い範囲限界又は好ましい値と、任意のより低い範囲限界又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解すべきである。明細書において数値の範囲が示されている場合には、他に示されていない限りにおいて、この範囲はその端点及びこの範囲内の全ての整数及び小数を含むと意図される。本発明の範囲を、範囲を規定する際に示される具体的な値に限定することは意図しない。
【0027】
本発明の他の態様は、本明細書及びここに開示する本発明の実施を考慮することにより当業者に明らかになるであろう。本明細書及び実施例は例示のみとしてみなすべきであり、発明の真の範囲及び精神は特許請求の範囲及びその均等範囲によって示されると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)、1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)、又はこれらの混合物からなる群から選択される有機反応物質を、有効量の相間移動触媒の存在下において無水フッ化水素(HF)でフッ素化することを含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)の製造方法。
[2]
有機反応物質がHCC−240faを含む、[1]に記載の方法。
[3]
HCC−240faが、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)、1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)からなる群から選択される化合物、又は1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)と1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)の混合物との混合形態である、[2]に記載の方法。
[4]
有機反応物質がHCO−1230zaを含む、[1]に記載の方法。
[5]
HCO−1230zaが、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)からなる群から選択される化合物、又は1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)と1,3,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230zd)の混合物との混合形態である、[2]に記載の方法。
[6]
有機反応物質がHCO−1230zdを含む、[1]に記載の方法。
[7]
HCO−1230zdが、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)からなる群から選択される化合物、又は1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)と1,1,3,3−テトラクロロプロペン(HCO−1230za)の混合物との混合形態である、[6]に記載の方法。
[8]
相間移動触媒が、第4級ホスホニウム塩又は第4級アンモニウム塩からなる群から選択されるオニウム塩を含む、[1]に記載の方法。
[9]
第4級ホスホニウム塩が、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムクロリド、4−ジアルキルアミノピリジニウム塩、例えばテトラフェニルアルソニウムクロリド、ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン]イミニウムクロリド、及びテトラトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムクロリドからなる群から選択される、[8]に記載の方法。
[10]
第4級アンモニウム塩が、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、及びテトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩からなる群から選択される、[8]に記載の方法。