特許第6571257号(P6571257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571257
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】シール装置及びターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/02 20060101AFI20190826BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F01D11/02
   F16J15/447
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-191150(P2018-191150)
(22)【出願日】2018年10月9日
(62)【分割の表示】特願2014-227257(P2014-227257)の分割
【原出願日】2014年11月7日
(65)【公開番号】特開2019-11768(P2019-11768A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 和幸
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】村田 健一
【審査官】 金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/091599(WO,A1)
【文献】 米国特許第3251601(US,A)
【文献】 米国特許第7971882(US,B1)
【文献】 特開2003−201806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/00−11/24
F02C 7/28
F04D 29/08−29/16,
29/66
F16J 15/40−15/453,
15/54−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する回転体と、
前記回転体を内包する静止体と、
前記回転体と前記静止体との間に形成された隙間流路に設けられ、前記隙間流路からの漏れ流れを抑制するシール装置とを備え、
前記シール装置は、
前記回転体及び前記静止体の少なくとも一方に設けられ、前記回転体の軸方向に並列する複数のシールフィンと、
前記シールフィンの間に形成されたチャンバに向かって突出するように回転側に設けられ、前記チャンバ内における漏れ流れの前記回転体の回転方向の速度の低減を抑制する少なくとも1つの減速抑制体とを有し、
前記シールフィンは、前記回転体から突出するフィンであり、
前記減速抑制体は、前記シールフィンから前記回転体の軸方向の漏れ流れ下流側に突出し、そのシールフィンに隣接している下流側のシールフィンから離隔しているリブであり、
前記リブは、前記回転体の周方向から見て三角形状である
ことを特徴とするターボ機械。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ機械において、
前記複数のシールフィンのうち、漏れ流れの最上流に位置する1段目のシールフィンは、他の段のシールフィンよりも高くなるように構成され、
前記1段目のシールフィンに設けられた前記リブは、前記1段目のシールフィンの高さと同じ高さになるように構成された
ことを特徴とするターボ機械。
【請求項3】
回転軸を有する回転体と、
前記回転体を内包する静止体と、
前記回転体と前記静止体との間に形成された隙間流路に設けられ、前記隙間流路からの漏れ流れを抑制するシール装置とを備え、
前記シール装置は、
前記回転体及び前記静止体の少なくとも一方に設けられ、前記回転体の軸方向に並列する複数のシールフィンと、
前記シールフィンの間に形成されたチャンバに向かって突出するように回転側に設けられ、前記チャンバ内における漏れ流れの前記回転体の回転方向の速度の低減を抑制する少なくとも1つの減速抑制体とを有し、
前記シールフィンは、前記静止体から突出するフィンであり、
前記シール装置は、前記回転体から突出し、前記シールフィンに対向する突条部をさらに備え、
前記減速抑制体は、前記突条部から前記回転体の軸方向の漏れ流れ下流側に突出し、その突条部に隣接している下流側の突条部から離隔しているリブであり、
前記リブは、前記回転体の周方向から見て三角形状である
ことを特徴とするターボ機械。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のターボ機械において、
前記減速抑制体は、前記複数のシールフィン間に形成された各チャンバのすべてに配置された
ことを特徴とするターボ機械。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のターボ機械において、
前記減速抑制体は、漏れ流れの最上流に位置する1段目のシールフィンと前記1段目のシールフィンに隣接する2段目のシールフィンの間に形成されたチャンバのみに配置された
ことを特徴とするターボ機械。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のターボ機械において、
前記減速抑制体は、前記回転軸の周方向に複数配列される
ことを特徴とするターボ機械。
【請求項7】
回転軸を有する回転体と前記回転体を内包する静止体とを備えるターボ機械の前記回転体と前記静止体との間に形成された隙間流路からの漏れ流れを抑制するシール装置であって、
前記回転体及び前記静止体の少なくとも一方に設けられ、前記回転体の軸方向に並列する複数のシールフィンと、
前記シールフィンの間に形成されたチャンバに向かって突出するように回転側に設けられ、前記チャンバ内における漏れ流れの前記回転体の回転方向の速度の低減を抑制する少なくとも1つの減速抑制体とを備え、
前記シールフィンは、前記回転体から突出するフィンであり、
前記減速抑制体は、前記シールフィンから前記回転体の軸方向の漏れ流れ下流側に突出し、そのシールフィンに隣接している下流側のシールフィンから離隔しているリブであり、
前記リブは、前記回転体の周方向から見て三角形状である
ことを特徴とするシール装置。
【請求項8】
回転軸を有する回転体と前記回転体を内包する静止体とを備えるターボ機械の前記回転体と前記静止体との間に形成された隙間流路からの漏れ流れを抑制するシール装置であって、
前記回転体及び前記静止体の少なくとも一方に設けられ、前記回転体の軸方向に並列する複数のシールフィンと、
前記シールフィンの間に形成されたチャンバに向かって突出するように回転側に設けられ、前記チャンバ内における漏れ流れの前記回転体の回転方向の速度の低減を抑制する少なくとも1つの減速抑制体とを備え、
前記シールフィンは、前記静止体からに突出するフィンであり、
前記シール装置は、前記回転体から突出し、前記シールフィンに対向する突条部をさらに備え、
前記減速抑制体は、前記突条部から前記回転体の軸方向の漏れ流れ下流側に突出し、その突条部に隣接している下流側の突条部から離隔しているリブであり、
前記リブは、前記回転体の周方向から見て三角形状である
ことを特徴とするシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置及びターボ機械に係り、更に詳しくは、ターボ機械の回転体と静止体との間に形成された隙間流路の漏れ流れを抑制するシール装置及びそれを備えたターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービン、遠心圧縮機等のターボ機械では、回転軸(回転体)を収めたケーシング(静止体)から作動流体が回転軸に沿って漏れることを防止するために、回転軸とケーシングとの間の隙間流路にラビリンスシールが設けられることが多い。ラビリンスシールは、一般的に、回転軸の軸方向に複数のシールフィンを有しており、これらのシールフィン間には、回転軸の外周に沿うようにチャンバが形成されている。ラビリンスシールは、このチャンバによりシール内を流下する作動流体の漏れ流れに圧力損失を生じさせ、漏れ量を抑制している。
【0003】
このようなラビリンスシールを備えたターボ機械においては、回転軸周方向の速度成分を有する漏れ流れ(旋回流)がシール内に流入すると、軸振動が増大する傾向にある。そこで、このような回転軸の不安定振動を抑制する技術として、例えば、インペラ(回転体)の外周面に高圧側から低圧側に向かって縮径するようにして形成された段差部を設けると共に、インペラ(回転体)の段差部より低圧側かつラビリンスシールの高圧側において、ケーシング(静止体)から半径方向内側に延出する板状部材のスワールブレーカを回転体の回転方向に向くように設けることで、旋回流のラビリンスシールへの流入を抑制するシール装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−7594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載のシール装置においては、ラビリンスシールの入口側に回転方向を向くように板状のスワールブレーカを設けているので、ラビリンスシール入口でスワールブレーカが回転体軸方向に一定の幅を占有した状態となる。このため、回転体軸方向に並列するシールフィンの設置可能な枚数が少なくなる場合がある。この場合、ラビリンスシール本来の機能である漏れ量を抑制する機能が低下する。
【0006】
また、ターボ機械の回転軸の不安定振動に関して、次のことが判明している。一般的なラビリンスシールにおいて、漏れ流れは、シール内を通過する際の静止体との摩擦等により、その回転体回転方向の流速が回転体軸方向において徐々に減速する。このとき、漏れ流れの減速方向に向かって、その減速量に応じて圧力が増加する圧力勾配が生じる。この圧力勾配は、回転軸の不安定振動を助長する要因となる。この圧力勾配の大きさは漏れ流れの回転方向速度の減速量に依存するので、回転軸の不安定振動も漏れ流れの回転方向速度の減速量に応じたものとなる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、シールフィンの数を削減することなく、ターボ機械の回転軸の不安定振動を抑制することができるシール装置及びそれを備えたターボ機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、回転軸を有する回転体と、前記回転体を内包する静止体と、前記回転体と前記静止体との間に形成された隙間流路に設けられ、前記隙間流路からの漏れ流れを抑制するシール装置とを備え、前記シール装置は、前記回転体及び前記静止体の少なくとも一方に設けられ、前記回転体の軸方向に並列する複数のシールフィンと、前記シールフィンの間に形成されたチャンバに向かって突出するように回転側に設けられ、前記チャンバ内における漏れ流れの前記回転体の回転方向の速度の低減を抑制する少なくとも1つの減速抑制体とを有し、前記シールフィンは、前記回転体から突出するフィンであり、前記減速抑制体は、前記シールフィンから前記回転体の軸方向の漏れ流れ下流側に突出し、そのシールフィンに隣接している下流側のシールフィンから離隔しているリブであり、前記リブは、前記回転体の周方向から見て三角形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シールフィン間に配置された減速抑制体が回転体の回転に伴い回転することで、漏れ流れの回転方向速度の低減が抑制されるので、シールフィンの数を削減することなく、ターボ機械の回転軸の不安定振動を抑制することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態を適用した蒸気タービンの要部構造を示す縦断面図である。
図2図1の符号Zで示す本発明のシール装置の第1の実施の形態及びその周囲を拡大した縦断面図である。
図3図1に示す本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態を適用した蒸気タービンをIII−III矢視から見た概略横断面図である。
図4】従来のラビリンスシールのチャンバ内における回転軸が偏心した際の圧力分布を示す説明図である。
図5】本発明のシール装置の第1の実施の形態及び従来のラビリンスシールにおける漏れ流れの軸方向位置に対する漏れ流れの回転方向速度の関係を示す特性図である。
図6】本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態の変形例を示す拡大縦断面図である。
図7】本発明のシール装置及びターボ機械の第2の実施の形態を示す拡大縦断面図である。
図8】本発明のシール装置及びターボ機械の第3の実施の形態を示す拡大縦断面図である。
図9】本発明のシール装置及びターボ機械の第4の実施の形態を示す拡大縦断面図である。
図10】本発明のシール装置及びターボ機械の他の実施の形態を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のシール装置及びターボ機械の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、ここでは、本発明のターボ機械を蒸気タービンに適用した場合を例に説明する。しかし、本発明のターボ機械は、例えば、ガスタービンや遠心圧縮機等にも適用可能である。
【0012】
[第1の実施の形態]
まず、本発明のターボ機械の第1の実施の形態を適用した蒸気タービンの構成を図1を用いて説明する。
図1は本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態を適用した蒸気タービンの要部構造を示す縦断面図である。図1中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Rは回転軸3の回転方向を示す。
【0013】
図1において、蒸気タービンは、回転体1と、回転体1を内包・保持する静止体2とで構成されている。回転体1は、回転軸3と、回転軸3の外周面に周方向に沿って着脱可能に取り付けられた複数の動翼4とを備えている。回転軸3は、例えば、図示しない発電機と接続されている。各動翼4の先端部には、それぞれシュラウド9が設けられている。各シュラウド9は、隣接するシュラウド9と当接することで円環状になるように構成されている。静止体2は、回転軸3を内包・保持すると共に作動流体である主蒸気の流路を形成するケーシング5と、主蒸気の流れAの上流側で動翼4に対向するように周方向に沿ってケーシング5に固定された複数のノズル6とを備えている。ケーシング5の内周側には、環状のノズルダイヤフラム外輪7が固定されており、このノズルダイヤフラム外輪7にノズル6の外周側先端を固定することで、ノズル6がケーシング5に保持されている。ノズル6の内周側先端には、環状のノズルダイヤフラム内輪8が設けられており、ノズルダイヤフラム内輪8は主蒸気の流路の内周壁の一部を形成している。ノズルダイヤフラム外輪7及びノズルダイヤフラム内輪8も静止体2の構成の一部である。蒸気タービンにおいては、ノズル6と動翼4とで段落が構成され、その段落は回転軸3の軸方向に複数段(図1では2段)設置されている。
【0014】
作動流体である主蒸気はノズル6を通過する際に加速されて動翼4に送られ、主蒸気の速度エネルギーが動翼4及び回転軸3の回転運動エネルギーに変換される。蒸気タービンの出力は、回転軸3に接続された図示しない発電機により電気エネルギーとして取り出される。
【0015】
回転体1と静止体2との間には、回転体1の回転を妨げないように隙間流路が設けられている。例えば、回転軸3とノズルダイヤフラム内輪8との隙間流路G1や動翼4とケーシング5(ノズルダイヤフラム外輪7)との隙間流路G2、回転軸3とケーシング5との隙間流路G3が挙げられる。これらの隙間流路G1、G2、G3の高圧側から低圧側に向かって主蒸気の流れAの一部が漏出すると、蒸気タービンの効率低下の一因となるので、隙間流路G1、G2、G3には、それぞれ主蒸気の漏れ流れを抑制するダイヤフラムパッキン11、チップフィン12、及びシャフトパッキン13が設けられている。
【0016】
次に、本発明のシール装置の第1の実施の形態の詳細な構成を図2及び図3を用いて説明する。なお、ここでは、本実施の形態のシール装置を、動翼6とケーシング5との隙間流路G2からの蒸気の漏洩を防ぐチップフィン12として使用する例を説明する。
図2図1の符号Zで示す本発明のシール装置の第1の実施の形態及びその周囲を拡大した縦断面図、図3図1に示す本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態を適用した蒸気タービンをIII−III矢視から見た概略横断面図である。図2中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Bは漏れ流れを、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。図3中、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。なお、図2及び図3において、図1に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0017】
図2において、シール装置20は、ノズルダイヤフラム外輪7におけるシュラウド9の外側に位置する部分に取り付けるシールリング21を備えている。シールリング21は、円弧状の複数の部材を組み立てることで円環状になるように形成されており、シュラウド9の外周面に対向するように配置される。シールリング21は、ノズルダイヤフラム外輪7に取り付ける略円環状の本体部22と、本体部22の内周面から回転軸3の半径方向内周側に向かって突出する突条部23とで構成されている。突条部23は、本体部22の内周面に周方向に延在して円環状に形成されており、本体部22の軸方向に沿って複数段(図2では2段)設けられている。
【0018】
シール装置20は、また、シュラウド9の外周面から回転軸2の半径方向外側に向かって突出するシールフィン24を備えている。シールフィン24は、シュラウド9の外周面に周方向に延在して円環状に形成されており、シュラウド9の軸方向に沿って複数段(図2では4段)設けられている。これら複数段のシールフィン24のうち、いくつかの段は、突条部23に対向するように設けられている。一方、蒸気の漏れ流れBの最上流に位置する1段目のシールフィン24は、突条部23に対向させないで、本体部22に対向するように設けられている。シールフィン24は、その先端とシールリング21との間が等しい間隙となるように、その長さを突条部23に合わせて変えている。シールフィン24は、例えば、旋盤加工で製作される。複数段のシールフィン24の間には、回転軸3の周方向に沿って円環状のチャンバ30が形成されている。
【0019】
シール装置20は、さらに、シールフィン24間のチャンバ30に突出するようにシールフィン24及びシュラウド9に設けたリブ25を備えている。リブ25は、例えば、各段のシールフィン24からそれぞれ回転軸3の軸方向の漏れ流れ下流側に突出するように設けられている。また、リブ25は、シールフィン24の高さ方向に延在し、回転軸3の周方向から見て三角形状に形成されている。さらに、リブ25は、図3に示すように、シールフィン24の周方向に間隔をもって複数配設されており、例えば、個々にシュラウド9を追加工することにより取り付けられる。このように構成されたリブ25は、後述するように、シュラウド9及びシールフィン24の回転に伴い回転することでチャンバ30内の漏れ流れBの回転方向速度の低減を抑制する減速抑制体として機能する。
【0020】
次に、本発明のシール装置の第1の実施の形態の比較例としての従来のラビリンスシールの構成及びその問題点を図4を用いて説明する。
図4は従来のラビリンスシールのチャンバ内における回転軸が偏心した際の圧力分布を示す説明図である。図4中、矢印Cは回転方向流れを、矢印Eは回転軸3の偏心方向を、矢印Rは回転軸3の回転方向を示す。なお、図4において、図1乃至図3に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0021】
図4において、従来のラビリンスシールは、例えば、回転軸3の外周面から回転軸3の半径方向外側に突出し、回転軸3の軸方向に沿って並列する複数の円環状のシールフィン(図4では省略)を備えている。これらのシールフィン間には、回転軸3の外周に沿うように円環状のチャンバ30が形成されている。このようなラビリンスシールには以下のような課題がある。
【0022】
ラビリンスシール内の漏れ流れは、回転軸3の回転による連れ回り効果により、回転軸3の回転方向Rに旋回して、回転方向流れCが生じる。この状況で回転軸3がある方向、例えば矢印Eの方向に偏心(振動変位)すると、チャンバ30内には、矢印Eの方向(偏心方向)に狭窄部が生じる。このため、回転方向流れCはチャンバ30内の回転軸3の偏心方向Eにおける上流側の領域Sで堰き止められる(減速する)ので、この領域Sに高圧部が発生する。このため、チャンバ30内では、図4に示すように、回転軸3の偏心方向Eに対して回転方向流れCの上流側が高圧となる非対称な圧力分布P(回転軸3の周方向に不均一な圧力分布P)が生じる。この非対称な圧力分布Pにより、回転軸3の偏心方向Eに対して直交する方向の流体力が発生し、回転軸3を回転方向Rに押すように作用する。このような状況が繰り返されることで、回転軸3が振れ回り、回転軸3の不安定振動が引き起こされる。
【0023】
また、上記の回転軸3を回転方向に振れ回す流体力は、漏れ流れがラビリンスシールを通過する際の回転方向流れCの減速によっても発生することが判明している。漏れ流れの回転方向流れCがラビリンスシール内を通過する際、静止体との摩擦等により回転軸軸方向において減速すると、ラビリンスシール内では、回転方向流れCの減速方向に向かって、回転方向流れCの減速量に応じて圧力が増加するような圧力勾配が生じる。この圧力勾配もまた、回転軸3の振れ回りを引き起こす流体力を増加させる要因となる。圧力勾配の大きさは、回転方向流れCの減速量に依存するので、この圧力勾配により発生する流体力の大きさも回転方向流れCの減速量に応じたものになる。すなわち、回転方向流れCの減速量が大きいほど、この流体力も大きくなり、回転軸3の不安定振動が増大する。
【0024】
このように、ラビリンスシール内への漏れ流れの流入による回転軸3の不安定振動の要因として、上記の2つの要因が挙げられる。チップフィン12(図1参照)のようなシールフィンの枚数が少ないシールにおいては、回転軸3の偏心方向Eに対して非対称な圧力分布Pにより発生する流体力より、回転方向流れCの減速量に依存した圧力勾配により発生する流体力の方が回転軸3の不安定振動に対する影響が大きくなることが判明している。
【0025】
次に、本発明のシール装置の第1の実施の形態の作用及び効果を従来のラビリンスシールと比較して図2及び図5を用いて説明する。
図5は本発明のシール装置の第1の実施の形態及び従来のラビリンスシールにおける漏れ流れの軸方向位置に対する漏れ流れの回転方向速度の関係を示す特性図である。図5中、縦軸は漏れ流れの回転方向速度(漏れ流れの回転方向流れの速度)V、横軸は漏れ流れの最上流に位置するシールフィンから最下流に位置するシールフィンまでの軸方向位置xを示している。図中の破線Hは従来のラビリンスシールの場合、実線Iは本実施の形態のシール装置の場合の特性曲線を示している。
【0026】
図2において、主蒸気の流れAからシール装置20に流入する漏れ流れBは、その回転方向速度がシュラウド9の周速と同程度である。シール装置20内に流入した漏れ流れBの回転方向速度(回転方向流れの速度)は、その後、シールリング21の内周面との摩擦等により回転軸3の軸方向の漏れ流れ下流側に向かって徐々に減速していく。このとき、漏れ流れBの回転方向速度の減速方向に向かって、その回転方向速度の減速量に応じて圧力が増加する圧力勾配がシール装置20内に生じる。この圧力勾配は、回転軸3の振れ回りを引き起こす流体力を増加させる。この流体力は、漏れ流れBの回転方向速度の減速量に応じて増加する。
【0027】
従来のラビリンスシールの場合、図5の破線Hで示すように、漏れ流れの回転方向速度Vは、シュラウド9の周速の同程度の値からその周速の半分の値に漸近するよう減速する。
【0028】
それに対して、本実施の形態においては、回転軸3の回転に伴いリブ25がシュラウド9の周速度と略同速度で回転し、漏れ流れBに対して回転方向の運動エネルギーを増加させる仕事をするので、漏れ流れBの回転方向速度Vは、図5の実線Iで示すように、シュラウド9の周速の同程度の値からその周速の半分の値よりも高値にしか減速しない。すなわち、シール装置20の通過時の漏れ流れBの回転方向速度Vの減速量は、従来のラビリンスシールの場合より低減する。リブ25は、チャンバ30内の漏れ流れの回転方向速度Vの低減を抑制する減速抑制体として機能する。
【0029】
このように、本実施の形態においては、シール装置20の通過時の漏れ流れBの回転方向速度Vの減速量を従来のラビリンスシールと比較して低減するので、回転方向速度Vの減速量に応じて増加する流体力を、従来のラビリンスシールよりも低減することができる。その結果、回転軸3の不安定振動が従来のラビリンスシールよりも抑制される。
【0030】
ところで、図5の実線Iで示すように、漏れ流れBのチャンバ30内の回転方向速度Vは、上流側より下流側の方が低下した状態にある。回転方向速度Vが低下した状態、すなわち下流側の漏れ流れBに対して運動エネルギーを与えて減速を抑制するよりも、回転方向速度Vの低下が少ない状態、すなわち上流側の漏れ流れBに対して運動エネルギーを与えて減速を抑制する方が回転方向速度Vの最終的な減速量を効果的に抑制することができる。本実施の形態においては、シールフィン24の漏れ流れBの下流側にリブ25を設けているので、回転方向速度Vの低下が少ない状態の漏れ流れBに対する減速が抑制され、回転方向速度Vの減速量を効果的に抑制することができる。その結果、回転方向速度Vの減速量に応じて増加する流体力が効果的に低減され、回転軸3の不安定振動を抑制することができる。
【0031】
また、本実施の形態においては、シール装置20のリブ25をシールフィン24間に配置したので、リブ25を設置するための空間を新たに必要とせず、シールフィン24の枚数を削減する必要がない。このため、シールフィン24の枚数を従来のラビリンスシールと同数とすることが可能であり、シールフィン24の削減による漏れ量の増加を防止することができる。
【0032】
上述したように、本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態によれば、シールフィン24間に配置されたリブ(減速抑制体)25が回転体1の回転に伴い回転することで、漏れ流れBの回転方向速度(回転方向流れCの速度)Vの低減が抑制されるので、シールフィン24の数を削減することなく、蒸気タービン(ターボ機械)の回転軸3の不安定振動を抑制することができる。
【0033】
また、本実施の形態によれば、各段のシールフィン24にそれぞれリブ25を設けたので、シール装置20の全長に亘って漏れ流れBの回転方向速度Vの低減が抑制され、回転方向速度Vの最終的な減速量をさらに低減することができる。その結果、回転方向速度Vの減速量に応じて増加する流体力がさらに低減し、回転軸3の不安定振動を確実に抑制することができる。
【0034】
さらに、本実施の形態によれば、リブ25をシールフィン24の周方向に複数配設したので、漏れ流れBの回転方向速度Vの低減を確実に抑制することができる。
【0035】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態の変形例を図5及び図6を用いて説明する。
図6は本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態の変形例を示す拡大縦断面図である。図6中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Bは漏れ流れを、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。なお、図6において、図1乃至図5に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
図6に示す本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態の変形例は、第1の実施の形態がシール装置20のリブ25を各段のシールフィン24にそれぞれ設けているものであるのに対して(図2参照)、リブ25を一段目のシールフィン24にのみ設けたものである。
【0037】
図5に示すように、漏れ流れBの回転方向速度Vの減速量の割合が最も大きい位置は、x=0近傍、すなわち、漏れ流れBの最上流に位置する1段目のシールフィン24の通過直後である。そこで、図6に示すように、1段目のシールフィン24における漏れ流れBの下流側の面にリブ25を設けることで、回転方向速度Vの減速量を効果的に低減することができ、回転方向速度Vの減速量に応じて増大する流体力が効果的に低減される。
【0038】
上述した本発明のシール装置及びターボ機械の第1の実施の形態の変形例によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、シールフィン24の数を削減することなく、回転軸3の不安定振動を抑制することができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、第1の実施の形態の場合と比較して、リブ25を設ける加工範囲が少なくなるので、加工工数の低減や加工時間の短縮等を図ることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明のシール装置及びターボ機械の第2の実施の形態を図7を用いて説明する。
図7は本発明のシール装置及びターボ機械の第2の実施の形態を示す拡大縦断面図である。図7中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Bは漏れ流れを、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。なお、図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号ものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
図7に示す本発明のシール装置及びターボ機械の第2の実施の形態は、第1の実施の形態がシール装置20の1段目のシールフィン24を3段目のシールフィン24と略同じ高さとなるように構成しているものであるのに対して、シール装置20Aの1段目のシールフィン24Aを他の段のシールフィン24よりも高くなるように構成したものである。
【0042】
具体的には、図7に示すように、シールリング21Aの本体部22Aにおける1段目のシールフィン24Aに対向する位置には、環状溝22bが設けられている。1段目のシールフィン24Aは、その先端部がシールリング21Aの環状溝22b内に入り込むように、他の段のシールフィン24よりも高くなるように構成されている。また、1段目のシールフィン24Aは、その先端部の回転軸3の半径方向の位置が他の段のシールフィン24よりも外側に位置するように構成されている。1段目のシールフィン24Aの漏れ流れBの下流側の面には、その高さと略同一の高さのリブ25Aが設けられている。シールフィン24、24Aの高さは、1段目のシールフィン24Aと環状溝22bの底部との間隙、2段目及び4段目のシールフィン24と突条部23との間隙、及び3段目のシールフィン24と本体部22Aの内周面との間隙がすべて略等しくなるように設定されている。
【0043】
上述した本発明のシール装置及びターボ機械の第2の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、本実施の形態よれば、1段目のシールフィン24Aに設けたリブ25Aを他の段のリブ25よりも高くなるように構成しているので、リブ25Aは、その高くなった分、漏れ流れBに対する回転方向への運動エネルギーを与える面積が他の段のリブ25よりも大きくなる。その結果、減速量の割合が最も大きい1段目のシールフィン24Aの通過後の漏れ流れBの減速量をさらに低減することができるので、漏れ流れBの減速量に応じて増加する流体力が効果的に低減され、回転軸3の不安定振動を確実に抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施の形態よれば、1段目のシールフィン24Aに設けたリブ25Aの先端部が他のリブ25より回転軸3の半径方向外側に位置するように構成されているので、その外側部分は他のリブ25よりも周速が速くなり、その上昇分、漏れ流れBの回転方向に対して与える運動エネルギーが増加する。その結果、減速量の割合が最も大きい1段目のシールフィン24Aの通過後の漏れ流れBの減速量をさらに低減することができるので、漏れ流れBの減速量に応じて増加する流体力が効果的に低減され、回転軸3の不安定振動を確実に抑制することができる。
【0046】
[第3の実施の形態]
次に、本発明のシール装置及びターボ機械の第3の実施の形態を図8を用いて説明する。
図8は本発明のシール装置及びターボ機械の第3の実施の形態を示す拡大縦断面図である。図8中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Bは漏れ流れを、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。なお、図8において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示す本発明のシール装置及びターボ機械の第3の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例がシール装置20のリブ25を1段目のシールフィン24から漏れ流れBの下流側に突出するように設けたものであるのに対して、シール装置20Bのリブ25Bを1段目のシールフィン24と2段目のシールフィン24とに亘って延在するように設けたものである。具体的には、リブ25Bは、1段目のシールフィン24の漏れ流れBの下流側の面及び2段目のシールフィン24の漏れ流れBの上流側の面に接続するように設けられている。
【0048】
上述した本発明のシール装置及びターボ機械の第3の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、リブ25Bを1段目のシールフィン24と2段目のシールフィン24に亘って延在するように設けているので、漏れ流れBに対して回転方向への運動エネルギーを与える面積が第1の実施の形態の変形例の場合よりも増加する。そのため、漏れ流れBの回転方向速度Vの減速量がさらに低減する。特に、減速量の割合が最も大きい1段目のシールフィン24Aの通過後の漏れ流れBの減速量がさらに低減されるので、回転方向速度Vの減速量に応じて増加する流体力が効果的に低減され、回転軸3の不安定振動を確実に抑制することができる。
【0050】
[第4の実施の形態]
次に、本発明のシール装置及びターボ機械の第4の実施の形態を図9を用いて説明する。
図9は本発明のシール装置及びターボ機械の第4の実施の形態を示す拡大縦断面図である。図9中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Bは漏れ流れを、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。なお、図9において、図1乃至図8に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0051】
第1の実施の形態のシール装置20は、シールフィン24を回転体1側に設けると共に突条部23を静止体2側に設けるものである。これに対して、本発明のシール装置及びターボ機械の第4の実施の形態は、シールフィン24Cを静止体2側に設けると共に突条部23Cを回転体1側に設けるものである。
【0052】
具体的には、図9に示すように、シール装置20Cは、シュラウド9の外周面から回転軸3の半径方向外側に向かって突出する突条部23Cを備えている。突条部23Cは、シュラウド9の外周面に周方向に延在して円環状に形成されており、シュラウド9の軸方向に沿って複数段(図9では3段)設けられている。複数段の突条部23Cのうち、漏れ流れBの最上流に位置する1段目の突条部23Cは、シュラウド9の軸方向上流側の先端部に配置されている。
【0053】
シール装置20Cのシールリング21Cは、ノズルダイヤフラム外輪7に取り付ける本体部22と、本体部22の内周面から回転軸3の半径方向内側に向かって突出するシールフィン24Cとで構成されている。シールフィン24Cは、本体部22の内周面に周方向に延在して円環状に形成されており、本体部22の軸方向に沿って複数段(図9では5段)設けられている。これら複数段のシールフィン24Cのうち、第1段目を含むいくつかの段は、突条部23Cに対向するように設けられている。シールフィン24Cは、その先端とシュラウド9又は突条部23との間が等しい間隙となるように、その長さを変えている。
【0054】
シール装置20Cは、また、突条部23Cとシールフィン24Cと間に形成されたチャンバ30に突出するようにシュラウド9及び突条部23Cに設けたリブ25Cを備えている。リブ25Cは、例えば、各段の突条部24Cからそれぞれ回転軸3の軸方向の漏れ流れ下流側に突出するように設けられている。また、リブ25Cは、突条部24Cの高さ方向に延在し、回転軸3の周方向から見て三角形状に形成されている。さらに、リブ25Cは、突条部24Cの周方向に間隔をもって複数配設されている。
【0055】
本実施の形態においては、シールフィン24Cを静止体2(ノズルダイヤフラム外輪7)側に設けた場合でも、回転体1(シュラウド9)側に設けた突条部24Cにリブ(減速抑制体)25Cを設けることで、リブ25Cが回転体1の回転に伴い回転するので、漏れ流れBの回転方向速度Vの低減を抑制することができる。したがって、シールフィン24を回転体1側に設けている場合と同様に、シールフィン24の数を削減することなく、回転軸3の不安定振動を抑制することができる。
【0056】
すなわち、上述した本発明のターボ機械の第4の実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
[その他の実施形態]
なお、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、本シール装置20、20A、20B、20Cを、動翼4とケーシング5との隙間流路G2からの蒸気の漏洩を防ぐチップフィン12として用いる例を示した。しかし、回転軸3の不安定振動に関して、漏れ流れBの回転方向速度Vの減速量に依存した圧力勾配により発生する流体力の方がチャンバ30内の回転軸周方向に不均一な圧力分布Pにより発生する流体力より影響の大きい場合には、ダイヤフラムパッキン11やシャフトパッン13等として本シール装置を適用可能である。
【0058】
また、上述した実施の形態においては、リブ25、25A、25B、25Cの形状を回転軸3の周方向から見て三角形状とした例を示したが、四角形や半円形等の形状も可能である。すなわち、リブは、漏れ流れBの回転方向速度Vの低減を抑制することが可能な形状であればよい。また、複数の各リブは、それぞれ異なる形状・大きさを有するものであってもよい。
【0059】
なお、上述した実施の形態においては、減速抑制体として、シールフィン24、24A又は突条部23Cから漏れ流れBの下流側に突出するリブ25、25A、25B、25Cの例を示したが、減速抑制体は、シールフィン間に形成されたチャンバ30に突出するように回転する側に設けることで、回転体1と共に回転して漏れ流れBの回転方向速度の低減を抑制するものであればよい。例えば、図10に示すように、シール装置20Dの減速抑制体として、1段目及び2段目のシールフィン24の間の任意の位置に、回転軸3の軸方向に沿ってシュラウド9に設けた平面状又は曲面状の板部材26も可能である。この場合においても、漏れ流れBの回転方向速度の低減が板部材26により抑制されるので、上述した実施の形態と同様に、回転軸3の不安定振動を抑制することができる。なお、板部材26は、複数のシールフィン24の間に形成された各チャンバ30にそれぞれ設ける構成も可能である。図10は本発明のシール装置及びターボ機械の他の実施の形態を示す拡大縦断面図である。図10中、矢印Aは主蒸気の流れを、矢印Bは漏れ流れを、矢印Rは回転軸の回転方向を示す。なお、図10において、図1乃至図9に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0060】
また、上述した実施の形態においては、シールリング21、21A、21Cを有するシール装置20、20A、20B、20C、20Dの例を示したが、シール装置は、シールリングを有さず、突条部又はシールフィンを静止体2(ダイヤフラム外輪7)に直接設ける構成も可能である。
【0061】
なお、上述した実施の形態においては、回転体1又は静止体2に設けたシールフィン24、24A、24Cと、静止体2又は回転体1に設けた突条部23、23Cとを組み合わせたシール装置20、20A、20B、20C、20Dの例を示したが、シール装置は、突条部を省き、回転体1又は静止体2にシールフィンのみを設ける構成も可能である。この場合、突条部が無いので、シールフィンの長さは均一にすればよい。さらに、シール装置は、回転体1及び静止体2の両方にシールフィンを設ける構成も可能である。シール装置の減速抑制体は、上述した実施の形態と同様に、回転する側に設ける必要がある。このような場合も、減速抑制体が回転体1の回転に伴い回転することで、漏れ流れBの回転方向速度の低減が抑制されるので、回転軸3の不安定振動を抑制することができる。
【0062】
また、本発明は上述した第1乃至第4の実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 回転体
2 静止体
3 回転軸
7 ダイヤフラム外輪(静止体)
9 シュラウド(回転体)
11 ダイヤフラムパッキン(シール装置)
12 チップフィン(シール装置)
13 シャフトパッキン(シール装置)
20、20A、20B、20C、20D シール装置
21、21A、21C シールリング
23、23C 突条部
24、24A、24C シールフィン
25、25A、25B、25C リブ(減速抑制体)
26 板部材(減速抑制体)
30 チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10