特許第6571271号(P6571271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・フロイデンベルク・カー・ゲーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571271
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ボリュームのある不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/732 20120101AFI20190826BHJP
   D04H 1/4391 20120101ALI20190826BHJP
【FI】
   D04H1/732
   D04H1/4391
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-507670(P2018-507670)
(86)(22)【出願日】2016年8月11日
(65)【公表番号】特表2018-530680(P2018-530680A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016069151
(87)【国際公開番号】WO2017029191
(87)【国際公開日】20170223
【審査請求日】2018年4月9日
(31)【優先権主張番号】15181388.8
(32)【優先日】2015年8月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510057615
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】ヘルリヒ, ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】シャーフェンベルガー, グンター
(72)【発明者】
【氏名】ザットラー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グリュナエウス, ペーター
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−146250(JP,A)
【文献】 実開昭58−068196(JP,U)
【文献】 中国実用新案第2832859(CN,Y)
【文献】 特表2015−506419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00〜18/04
A47C27/00〜27/22
31/00〜31/12
B68G 1/00〜99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボリュームのある不織布の製造方法であって、以下の工程、すなわち、
(a) 繊維球と結合繊維とを含有する不織布原材料を準備する工程と、
(b) 少なくとも2つのスパイクローラを有し、前記ローラ間に間隙が形成されているエアレイド装置を準備する工程と、
(c) 前記装置中で前記不織布原材料をエアレイド方法で加工する工程であって、前記不織布原材料が前記スパイクローラ間の前記間隙を通過し、前記スパイクにより前記繊維球から繊維または繊維束を引き出す工程と、
(d) 保管器上に落下させる工程と、
(e) 熱硬化させてボリュームのある不織布を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも2対、好適には少なくとも5対、または少なくとも10対のスパイクローラを有する、および/または、前記装置は、好適には前記スパイクローラ間に少なくとも2つ、少なくとも5つまたは少なくとも10個の間隙を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不織布原材料の全重量に対して、それぞれ、前記繊維球の割合は、50〜95重量%、好適には60〜95%、とりわけ70〜90%であり、および/または、前記ボリュームのある不織布中の前記結合繊維の割合は5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%、および特に好適には10〜25重量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記繊維球は、人工のポリマー、とりわけポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラートおよびポリブチレンテレフタラートからなる繊維、および、天然繊維、とりわけ羊毛、綿花もしくは絹からなる繊維、および/または、これらの混合物、および/または、さらなる繊維との混合物から選択された繊維を含有するまたは前記繊維からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合繊維はコア/シース繊維として構成されていて、前記シースは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、コポリアミドもしくはコポリエステルを含み、および/または、前記コアは、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、芳香族ポリアミドおよび/もしくはポリエステルを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記不織布原材料は、少なくとも1つのさらなる成分を含有し、前記さらなる成分は、さらなる繊維、さらなる嵩高化材料およびこれ以外の機能性添加剤から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ボリュームのある不織布の密度は、工程(a)中で入れられる不織布球の密度よりも少なくとも5%、好適には少なくとも10%、より好適には少なくとも25%低い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
繊維製品材料の製造方法であって、すなわち、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法におけるボリュームのある不織布の製造工程と、前記繊維製品材料へさらに加工する工程とを含み、前記繊維製品材料は、とりわけ衣料品、成形材料、クッション材料、充填材、寝具、ろ過マット、真空マット、清掃用繊維、スペーサ、発泡体代替物、包帯および防火材料から選択される、繊維製品材料の製造方法。
【請求項9】
繊維球と結合繊維とを含有するボリュームのある不織布であって、繊維または繊維束が、前記繊維球から引き出されていて、前記ボリュームのある不織布は、熱硬化されていて、密度が、1〜20g/lの範囲である、ボリュームのある不織布。
【請求項10】
繊維球と結合繊維とからなるボリュームのある不織布であって、繊維または繊維束が、前記繊維球から引き出されていて、前記ボリュームのある不織布は、熱硬化されていて、密度が、1〜20g/lの範囲である、ボリュームのある不織布。
【請求項11】
密度が、1〜20g/l、とりわけ2〜15g/l、特に好適には3〜10g/lの範囲であり、前記密度は、特に好適には10g/l未満である、請求項9または10に記載のボリュームのある不織布。
【請求項12】
以下の特性のうちの少なくとも1つ、すなわち、
・最大引張力が、DIN EN29 073−3により計測すると、少なくとも2N/5cmであること、
・最大引張力伸張が、DIN EN29 073−3により計測すると、少なくとも20%であること、
・熱抵抗RCTが、少なくとも0.20Km2/Wであること、および
・明細書中で示された前記工程(1)〜(8)を含む方法に従って導き出すと、回復が少なくとも70%であること
の特性を有する、請求項11のいずれか1項に記載のボリュームのある不織布。
【請求項13】
以下の特性、すなわち、
・最大引張力[N/5cm]/厚さ[mm]の商が、少なくとも0.10[N/(5cm*mm)]であること、および/または
・最大引張力[N/5cm]/秤量[g/m2]の商が、少なくとも0.020[N*2/(5cm*g)]であること、および/または
・熱抵抗RCT[Km2/W]/厚さ[mm]が、少なくとも0.010[Km2/(W*mm)]であること
の特性を有する、
請求項12のいずれか1項に記載のボリュームのある不織布。
【請求項14】
以下の特性、すなわち、
・密度が10g/l未満であること、および
・最大引張力が少なくとも2N/5cmであること、および
・熱抵抗RCTが少なくとも0.20Km2/Wであること、
・および、妥当な場合には、熱抵抗RCT[Km2/W]/厚さ[mm]の商が少なくとも0.010であること
の特性を有する、請求項13のいずれか1項に記載のボリュームのある不織布。
【請求項15】
以下の特性、すなわち、
・最大引張力が、DIN EN29 073−3により計測すると、少なくとも4N/5cmであること、
・密度が、10g/l以下であること、
・最大引張力[N/5cm]/厚さ[mm]の商が、少なくとも0.10[N/(5cm*mm)]、好適には少なくとも0.15[N/(5cm*mm)]であること、
の特性を有する請求項14のいずれか1項に記載のボリュームのある不織布。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれか1項に記載のボリュームのある不織布を含有する繊維製品材料であって、前記繊維製品材料は、とりわけ、衣料品、成形材料、クッション材料、充填材、寝具、ろ過マット、真空マット、清掃用繊維、スペーサ、発泡体代替物、包帯および防火材料から選択されている、繊維製品材料。
【請求項17】
繊維製品材料の製造のための請求項9〜15のいずれか1項に記載のボリュームのある不織布の使用であって、前記繊維製品材料は、とりわけ衣料品、成形材料、クッション材料、充填材、寝具、ろ過マット、真空マット、清掃用繊維、スペーサ、発泡体代替物、包帯および防火材料から選択されている、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリュームのある不織布の製造方法と、この方法により得られるボリュームのある不織布と、その使用に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品に応用するための充填材には多様なものが公知である。例えばファインフェザー、羽毛および羊毛などの獣毛は、長い間毛布や衣料品を充填するために採用されてきた。羽毛からなる充填材は、利用時に非常に心地よいが、この理由は、これには非常に良好な断熱性と軽量性とが組み合わされているからである。しかし、この材料の欠点は、互いに対する結束性が低い点である。
【0003】
羽毛および獣毛の使用に代わるのは、繊維不織布または不織布を充填材として使用することである。不織布は、長さが制限された繊維(ステープル)、フィラメント(無限長繊維)、または、いずれかの様式でいずれかの起源の切断された紡糸からなる造形物であって、何等かの方法で不織布(繊維ウェブ)に繋ぎ合わされ、かつ何等かの方法で互いに連結されている。従来の繊維不織布または不織布の欠点は、羽毛のような嵩高の充填材よりもフワフワ感が少ない点である。さらに、通常の不織布の厚さは、利用の期間が長くなるにしたがって、ますます薄くなる。
【0004】
この種の充填材の使用に代わるのは、繊維球である。繊維球は、多少なりとも球面で互いに巻き付いている繊維を含有し、通常ほぼ球の形状を有する。例えば特許文献1(欧州特許出願公開第0 203 469A号明細書)中では、充填材またはクッション材料として用いられうる繊維球が記載されている。この繊維球は、長さが約10〜60mmで、直径が1〜15mmの螺旋状に丸まって互いに巻き付き合ったポリエステル繊維からなる。この繊維球は、弾性を有し、かつ断熱性を有する。この繊維球の欠点は、羽毛、羽根または獣毛などと同様、互いに対する結束性が小さいことである。この種の繊維球は、したがって、繊維球がゆるく存在すべき平面の繊維製品材料用の充填材としてはあまり適していないが、この理由は、繊維球が、その付着性が小さいがゆえに滑り落ちうるからである。平面の繊維製品材料中での滑り落ちを回避するために、これらの材料はしばしば縫い合わされる。
【0005】
繊維球の連結を改良するために、特許文献2(欧州特許第0 257 658 B1号明細書)では、繊維端部が突出していて、フック状部も有しうる繊維球を採用することを提案している。しかし、この種の材料の製造は比較的コスト高となり、かつ、この繊維端部は、搬送、貯蔵および加工時に折れ曲がるまたは撓む可能性がある。
【0006】
特許文献3(国際公開第91/14035号パンフレット)は、繊維球と結合繊維とからなる不織布原材料を、熱で層状に硬化させ、続いて針で縫うことを提案している。この際、この不織布原材料は、空気流中で、唯一のスパイクローラに導かれ、そこからベルト上に下ろされる。この製品における欠点は、針で縫わない場合、安定性が低い点であるが、この理由は、結合繊維が、嵩高の、ゆるい繊維球をわずかしか安定化させることができないからである。十分な安定性を達成するために、針で縫われ、これにより、この方法は不必要に複雑になり、製品の密度が望ましくない程度に高まってしまう。
【0007】
特許文献4(欧州特許第0 268 099号明細書)は、改変された表面を備えた繊維球の製造方法を開示する。この際、繊維球の表面は、結合繊維を備え付けることが可能である。加熱により、繊維球から結合材が製造されうる。繊維球の製造は、比較的コスト高である。この繊維球は、その表面でのみ結合繊維と連結されるので、結合材料の安定性は限定的である。結合箇所が平面であるがゆえに、さらなる製品特性、例えばフワフワ感および弾性も改良の必要がある。
【0008】
特許文献5(国際公開2012/006300号パンフレット)は、結合繊維を有しかつ連結領域中で熱硬化されている不織布を開示している。この不織布は、粒子形態での固体添加物を含有しうる(20〜28頁)。これらの添加物は、比較的硬い固体であり、研磨剤または多孔性の気泡である。実施形態によれば、スポンジがハンマーミル中で挽かれることにより予め製造された固体の粒子が添加される。この文献は、フワフワ感の高い繊維製品である充填材またはこれ以外の塊材料の製造には関していない。
【0009】
特許文献6(国際公開2005/044529 A1号パンフレット)は、空気力学的方法で様々な材料を均一化しうる装置を記載している。この際、原材料は、回転するスパイクローラを通過する。この方法は、例えばセルロース繊維、合成繊維、金属品、プラスチック部品または粒状物質を加工するために採用されうる。この種の比較的手荒な方法は、なかんずく廃棄物管理で採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 203 469A号明細書
【特許文献2】欧州特許第0 257 658 B1号明細書
【特許文献3】国際公開第91/14035号パンフレット
【特許文献4】欧州特許第0 268 099号明細書
【特許文献5】国際公開2012/006300号パンフレット
【特許文献6】国際公開2005/044529 A1号パンフレット
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、様々な有利な特性を組み合わせたボリュームのある不織布およびその製造方法を提供することである。この不織布は、とりわけ嵩高くあるべきで、密度が小さく、同時に高い安定性を有し、とりわけ良好な引張強度を有するべきである。これが、良好な断熱性と共に、非常に柔らかく、圧縮弾性が高く、軽量で、包まれるべき物体に良好に合うことが組み合わされるべきである。同時に、この不織布は、例えばレーン状品として取り扱い可能になるように、洗濯における十分な安定性および機械的安定性を有するべきである。とりわけこの不織布は、切断可能および巻き上げ可能であるべきである。この不織布は、繊維製品の応用に適しているべきである。
【0012】
この目的は、特許請求項に記載の方法、ボリュームのある不織布および使用により達成される。さらなる有利な実施形態は、明細書中に説明されている。
【0013】
本発明の対象物は、ボリュームのある不織布の製造方法であって、以下の工程、すなわち、
(a)繊維球と結合繊維とを含有する不織布原材料を準備する工程と、
(b)少なくとも2つのスパイクローラを有し、これらのローラ間に少なくとも1つの間隙が形成されているエアレイド装置を準備する工程と、
(c)この装置中で不織布原材料をエアレイド方法で加工する工程であって、不織布原材料がスパイクローラ間の間隙を通過し、スパイクにより繊維球から繊維または繊維束を引き出す工程と、
(d)保管器上に落下させる工程と、
(e)熱硬化させてボリュームのある不織布を得る工程と
を含む方法である。
【0014】
これらの工程は、(a)〜(e)の順序で行われる。
【0015】
ボリュームのある不織布とは、不織布様の製品全般を称し、これは比較的小さい密度を有する。工程(a)では、不織布原材料を準備する。「原材料」との概念は、共になってボリュームのある不織布に加工されるべき成分の混合物を称する。この原材料はゆるい混合物であり、すなわちこれらの成分は互いに連結されず、とりわけ熱で連結されず、針で縫われず、接着されていず、または、目的に応じた化学的または物理的な結合を生成するための類似の方法が実施されていない。
【0016】
工程(a)における不織布原材料は、繊維球を含有する。繊維球は、本技術分野において広く公知であり、充填材として採用される。これは、比較的小さく軽い繊維集塊であり、難なく分離し合うことができる。構造および形状は、採用される材料に応じて、および、ボリュームのある不織布の望ましい特性に応じて変わりうる。とりわけ、繊維球との表現の下では、球形状も、球形状に似た形状、例えば不規則的および/または変形された、例えば、球形状が平らにされたまたは伸ばされた形も含まれると理解されうる。球形状および球形状に似た形状は、フワフワ感および断熱に関連して特に良好な特性を示すことが見いだされた。繊維球の製造方法は、従来技術中で公知であり、例えば欧州特許公開 0 203 469 A号中に記載されている。
【0017】
繊維は、繊維球中で比較的均等に分布されていることができ、密度は、外側に向かって小さくなりうる。この際、例えば繊維球内部で繊維が均等に分布すること、および/または繊維の勾配が存在することが考えられうる。あるいは、繊維が実質的に球状シース中に配置可能である一方で、繊維球の中央では、比較的少ない繊維が配置されていることも可能である。
【0018】
同様に考えられうるのは、繊維球中に球面で巻かれたおよび/または綿毛状に形成された繊維が含有されていることである。集合体の良好な結びつきを確実にするために、繊維が丸まって存在している場合に有利である。この際、繊維は無秩序であることも可能であるし、またはある秩序を有することも可能である。
【0019】
ある実施形態によれば、繊維は、個々の繊維球の内側で雑然としていて、かつ繊維球の外側から見ると球面に配置されている。この構成では、この外観は、繊維球の直径に対して比較的小さい。これにより繊維球の柔らかさをさらに高めることができる。
【0020】
繊維球中に存在する繊維の様式は、例えば適切な表面構造および繊維長により、繊維球を形成するのに適している限り、基本的に問題とならない。好適には、繊維球の繊維は、ステープル、糸および/または紡糸からなる群から選択される。この際、ステープルとは、理論的には、無制限の長さを有するフィラメントとは異なり、限定された長さ、好ましくは20mm〜200mmの繊維であると理解されうる。糸および/または紡糸も、好ましくは長さが限定されていて、とりわけ20mm〜200mmである。この繊維は、単一成分フィラメントおよび/または複合フィラメントとして存在しうる。繊維のタイターも変動しうる。好ましくは、繊維の平均タイターは、0.1〜10dtex、好ましくは0.5〜7.5dtexの範囲内にある。
【0021】
特に好適なのは、採用された繊維球が、熱硬化されていない場合である。これにより、特に柔らかくかつ嵩高のボリュームのある不織布が得られうる。
【0022】
驚くべきことに、繊維球と結合繊維とを含有する嵩高化不織布原材料をエアレイド方法でスパイクローラを用いて加工する場合に、有利なボリュームのある不織布が得られうることが見いだされた。混合物をスパイクローラ間で、エアレイド方法で加工する際に、効率的に不織布原材料を開繊し、混合および配向させることができ、この際、この材料が完全に破壊されることがないことが見いだされた。この点は驚くべきことであるが、この理由は、例えば原材料として採用された繊維球は、極めて繊細であり、その結果、この種の装置中で破壊され、最終製品にとっての安定性および機能性への負荷になるとの前提があったからである。本来構造の破壊に役立つスパイクローラを備えた装置を用いて、そもそも繊維球が加工可能であるか否かは予測不可能であった。
【0023】
好適には、この装置中でスパイクローラは対で配置されていて、その結果、金属製のスポークは互いに噛み合うことができる。金属製のスポークが互いに噛み合うことにより、動的なスクリーンが生じ、これにより不織布原材料が分散されかつ均等に分布されうる。さらに、繊維球の場合、対で配置されているスパイクローラを用いて処理することにより、繊維構造をゆるめ、球状形態を全体として破壊しない。この際、繊維または繊維束は、確かにまだ繊維球と連結されているが、表面からこれを引き出すことができる。この点は有利であるが、この理由は、引き出された繊維が、個々の球を互いにフックで引っ掛け、これにより、ボリュームのある不織布の引張強度を高めるからである。さらに、個々の繊維からなるマトリックスが形成されることができ、この中に球が埋め込まれていて、これによりボリュームのある不織布の柔らかさを高めることができる。
【0024】
同時に、この方法は、結合繊維が、不織布球と非常に密に連結されるという利点がある。スパイクにより、結合繊維の一部も繊維球中に挿入されると考えられる。したがって双方の材料が貫通し合う。これにより、熱硬化の際には、繊維球と結合繊維との間での付着箇所の割合が有意に高まる。この理由からも、不織布は、極めて高い安定性を有する。したがって本発明による不織布は、通常の方法(繊維球のみが開繊されまたは梳綿され、かつ続いて結合繊維と混合される方法)からなる製品よりも明らかにより安定している。
【0025】
この製品の特別な特性は、なかんずくこの方法がエアレイド方法として行われるので得られる。「エアレイド方法」(空気力学的方法)との概念は、繊維球と結合繊維とを含有する不織布原材料が、空気流中でスパイクローラを用いて加工され、かつ落下するという事実を示す。したがって、この不織布原材料は、空気流中でスパイクローラに導かれ、これらによって処理される。これの利点は、不織布原材料が、スパイクローラで加工される際に、ゆるく嵩高の形状で維持されるが、強く互いに混ぜ合わされ、かつスパイクが不織布球を貫通することにある。この方法は、不織布原材料のレーンが梳綿される通常の方法とは有意に異なる。その種の梳綿方法では、不織布原材料は実質的に配向される。レーン状品は非可動であるがゆえに、成分の混合、開繊および互いに対する貫通は、本発明によるエアレイド方法(この場合、不織布原材料がスパイクローラをゆるい形態で、空気流中で通過する)のようには達成されない。本発明によれば、このようにして採用される繊維球の密度よりも密度が小さい製品が得られる。
【0026】
この方法では、原材料を保管ベルト上に非常に均等に分布させることが可能になり、非常に均一なボリュームのある不織布を得ることができ、この中に嵩高化材料が均等に分布して存在することが確認できた。嵩高化材料の均一な分布は、特に断熱性および柔らかさにとって、および、ボリュームのある不織布の回復にとって大きな利点となる。
【0027】
本発明によれば、非常に均一なボリュームのある不織布が得られうる。繊維球および結合繊維は、内部で混ぜ合わされ、非常に均一で均等に分布されて存在する。この点は驚くべきことであったが、その理由は、繊細である繊維球も、これ以外の繊細である成分(例えば羽毛)も、スパイクローラでの処理時に破壊されるとの前提から出発せねばならなかったからである。
【0028】
これにもかかわらず、個々の繊維球の構造は、ボリュームのある不織布中では不均等である。不織布中の繊維球は、その元の形状を少なくとも部分的に失っている。ボリュームのある不織布中の繊維球の構造は、ほつれて、部分的に解繊し、または部分的に破壊されたとして表現可能である。スパイクローラは、各個々の繊維球に偶然に、したがって異なるように作用する。したがって、繊維または繊維束が繊維球から引き出される領域、または結合繊維が繊維球中に入り込む領域の数、サイズおよび構造は、偶然で分布されている。したがって、出発材料として採用される丸い繊維球は、不織布中で、不規則な頂点を備えたほぼ星形状であると表現可能な構造を形成する。解繊した繊維球が結合繊維とまさに内部で十分混合されることにより、結合繊維の結合箇所が製品中で広く分布することになり、これが、不織布に驚くべき高い機械的な安定性を付与することになると考えられる。同時に繊維球はこの製品に対して低密度と、高い柔らかさおよびフワフワ感を付与する。この構造は、公知の不織布(繊維球と繊維とからなり、単純に十分に混合したのみで繊維球を解繊させることなく生成される不織布)とは有意に異なる。この種の不織布は、規定の硬化領域を有し、より強く硬化された領域がゆえにより柔らくなくなり、かつ、非硬化領域がゆえにより安定性が小さくなる。
【0029】
実際の実験からは、本発明による方法が、以下の1つまたは複数の工程を含む場合に、特に良好な結果が得られることが明らかになった。
【0030】
不織布原材料は、少なくとも一対のスパイクローラを具備するエアレイド装置中に、可能な限り均等に置かれ、この中で、成分が開繊され、かつ互いに混合される。続いて、繊維の落下は、不織布形成のために従来の方法で、例えばスクリーンベルト、スクリーンドラムおよび/または搬送ベルト上に行われうる。形成された不織布は、その後、従来の方法で硬化可能である。特に適切であると明らかになったのは、本発明によれば、例えばベルトコンベヤ炉を用いた熱硬化である。このようにして、結合繊維が繊維球と密に連結されている点が利用される。例えば水噴射硬化の際にまたは針で縫う際に起こりうるようなボリュームのある不織布の望ましくない圧縮も回避されうる。二重ベルト温風炉の使用が特に適切であると明らかになった。この種の温風炉の使用が有利である点は、結合繊維の特に有効な活性化が、表面の平滑化および嵩高化と同時に得られうる点である。
【0031】
本発明のある有利な実施形態によれば、スパイクローラは列で配置されて存在している。したがってスパイクローラは、有利な場合には少なくとも1つの列で配置されて存在している。少なくとも1つの列でのスパイクローラの配置が有利な点は、隣接するスパイクローラの金属製のスポークが互いに噛み合いうるという点である。したがって、各ローラが同時にその隣接するローラのそれぞれに対して対を形成することができ、これが動的なスクリーンとして機能しうる。この際、これらの列が対で存在することもでき(二重列)、これにより繊維および繊維球が特に良好に開繊し、かつ混合される。したがってスパイクローラは、有利な場合には少なくとも1つの二重列で配置されて存在する。同様に考えられうるのは、繊維材料の少なくとも一部分は、復帰システムを用いて何度も同じスパイクローラを通って導かれるという点である。復帰のためには例えば循環する無限ベルトまたは空気力学的手段を用いることができ、これらは例えば、材料を上方に噴き上げる管などである。有利な場合には、ベルトは2列のスパイクローラ間に配置可能である。さらに無限ベルトは、複数の前後または上下に配置された二重列のスパイクローラを通って導かれうる。
【0032】
この装置は、スパイクローラを有する。不織布原材料を貫通させるための間隙を形成する2つの対向するローラが回転する場合に、スパイクは、好適にはずれあって噛み合う。スパイク(Spikes)は、好適には、薄い長い形状を有する。スパイクは十分長く、これにより材料および繊維球が良好に貫通しうる。スパイクの長さは、好適には1〜30cm、とりわけ2〜20cm、または5〜15cmである。スパイクの長さは、この際、このスパイクの最も広い直径の少なくとも5倍または少なくとも10倍大きい。
【0033】
スパイクローラ間の間隙を通って不織布原材料が通過するが、この間隙は、好適には、不織布原材料が通過する際にこれが圧縮されないほど広い。不織布球を開繊することにより、材料はむしろゆるめられる。好適にはスパイクの長さは両側でそれぞれ、間隙の(最も狭い)幅の50%以上、好適には少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%である。好適にはスパイクの長さは、両側でそれぞれ、間隙の(最も狭い)幅の50%〜99%以上または60%〜95%以上に相当する。
【0034】
好適には、この装置は、少なくとも2対、好適には少なくとも5対、もしくは少なくとも10対のスパイクローラを有する、および/または、この装置は、好適にはスパイクローラ間に少なくとも2つ、少なくとも5つ、もしくは少なくとも10個の間隙を有する。この種の装置を用いて不織布原材料の特に効率的な処理が行われうる。
【0035】
この装置は、好適にはスパイクローラと不織布原材料との接触面が可能な限り大きいように構成されている。好適には複数のスパイクローラが存在する、例えば少なくとも5つ、少なくとも10個または少なくとも20個のスパイクローラが存在する。好適には、不織布原材料が通過しうる少なくとも5つ、少なくとも10個または少なくとも20個の間隙が、隣り合うローラ対の間に存在する。ローラは、例えば円筒状で構成可能である。通常円筒状のローラは、スパイクと固定的に連結されている。ローラのコアが、周囲にスパイクベルトを備えていることも考えられうる。好適には複数の平面が存在し、その結果、材料は何度も加工される。
【0036】
この装置は、繊維原材料を開繊するために、それぞれ2〜10のスパイクローラを備えた列を対で2〜10個有する。この装置は、それぞれ5つのスパイクローラを備えた列を2対で4つ有しうる。この種のエアレイド装置は、例えばフォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製の商標「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備で入手可能である。この方法は、エアレイド方法、すなわち、空気力学的不織布形成プロセスであり、すなわち、不織布形成は空気を用いて行われる。この方法の基本原理は、不織布原材料を空気流中にゆだね、この空気流が、機械中での長手方向および/または横断方向での不織布原材料の機械的な分布を可能にし、最後に不織布原材料を下方で取り込む搬送ベルト上に均一に落下させることが可能になる。
【0037】
この際、空気は、非常に様々な方法工程で入れられうる。本発明の特に好適な実施形態によれば、不織布原材料の全搬送は、不織布形成時に空気力学的に、例えば設置された空気システムを用いて行われる。しかし、特別な方法工程のみ、例えば繊維をスパイクローラから除去することのみが、添加した空気により支援されることも同様に考えられうる。
【0038】
実際の実験により、エアレイド方法がとりわけ1つまたは複数の以下の工程で行われることが明らかになった。
【0039】
合目的には、不織布原材料の精製または不織布原材料の解繊のプロセスは、不織布形成プロセスの直前に行われる。任意選択的に行われる非繊維材料、例えば羽毛および/または発泡材料粒子との混合は、好ましくは不織布形成システム中での繊維材料の分布時に直接行われる。
【0040】
搬送媒体としての空気を用いて、材料(不織布原材料またはその成分)は、供給および分布システムを介して不織布形成ユニット中に搬送されることができ、ここで、目的に沿って開繊し、旋回および同時に均一な混合および分布が行われる。材料供給を単純に制御可能とするために、各材料成分についての供給を有利な方法で別々に行う。
【0041】
続いて、不織布原材料を、好ましくは少なくとも2つのスパイクローラで処理するが、これらのローラを用いて繊維材料が精製または解繊される。不織布原材料が、スパイクローラとして金属製のスポークを装備した一列の回転するシャフト(いわゆるスパイク)を通って導かれる場合に、特に良好な結果が得られる。ある好適な実施形態では、隣接するスパイクローラが対向している。これにより、特に強い力が不織布原材料上に作用する。金属製のスポークが互いに噛み合うことにより、動的なスクリーンが生じ、これにより、処理量を大きくすることができる。この方法は、したがって、WO91/14035中に記載された方法(この場合、不織布原材料が、単一のスパイクローラにより導かれ、落下する)とは有意に異なる。その場合では、本発明による方法のように、材料にかかる力が、これと関連づけられた構造変化と共に作用可能ではない。
【0042】
有利な場合、不織布形成は、下方で取り込むスクリーンベルト上で行われる。このスクリーンベルト上では、際だった繊維方位のない雑然とした不織布構造が生成され、その密度は、下方での取り込みの強度と関連する。複数の不織布形成ユニットを1つのライン中に配置することにより、層構造が実現可能となる。
【0043】
空気力学的な不織布形成が有利である点は、繊維および妥当な場合には不織布原材料中に存在するさらなる構成成分が、絡み合って配置されうる点であり、これが、非常に高い特性等方性を可能にする。構造面に加えて、この実施形態には経済的な利点もあり、これは、製品化設備用の投資規模および作動コストからも生じる。
【0044】
本発明のある実施形態によれば、不織布形成は、前後で続いて配置された複数の不織布形成ユニット中で行われる。したがって、保管ベルト、例えば下方で取り込むスクリーンベルトが、順々に複数の不織布形成ユニットを通って導かれ、これらのユニット中で、不織布の1つの層の落下を行うことが考えられうる。これにより多層不織布を生成することができる。
【0045】
さらなる工程(e)では、不織布を熱硬化させる。好適にはこの際不織布上に圧力はかけられない。例えば熱硬化は、加圧なしに炉中で行われる。この利点は、不織布が、高い硬度を有するが、非常に嵩高化可能である点である。不織布硬化は、従来の方法で支援されうるが、これは、例えば、結合剤の噴射により化学的に行う、予添加された接着粉末を溶かすことにより熱的に行う、および/または、例えば針で縫うおよび/または水噴射硬化により機械的溶融を行う。
【0046】
実際の実験により、不織布形成が、好ましくは刊行物WO 2005/044529号中に記載された繊維不織布製造装置を用いて行われると、非常に良好な結果を伴うことが明らかになった。この文献中の第2頁第25行〜第4頁第9行、第4頁第15行〜第5頁第9行、および第6頁第22行〜第7頁第19行に記載された装置の有利な構成をここで明示的に言及する。
【0047】
ある好適な実施形態では、それぞれ不織布原材料の全重量に対して、繊維球の割合は、50〜95重量パーセント、好適には60〜95%、とりわけ70〜90%であり、および/または、ボリュームのある不織布中の結合繊維の割合は、5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%、および特に好適には10〜25重量%である。
【0048】
繊維球は、好適には以下の繊維を含有またはこの繊維からなるが、これは、人工のポリマー、とりわけポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラートおよびポリブチレンテレフタラートからなる繊維、および、天然繊維、とりわけ羊毛、綿花もしくは絹からなる繊維、および/または、これらの混合物、および/またはさらなる繊維との混合物から選択される繊維である。
【0049】
基本的に繊維球は非常に様々な繊維からなりうる。したがって、この繊維球は、天然繊維、例えば羊毛繊維、および/または合成繊維、例えばポリアクリル、ポリアクリルニトリル、予備酸化されたPAN、PPS、炭素、ガラス、ポリビニルアルコール、ビスコースウール、セルロースウール、綿花、ポリアラミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、とりわけポリアミド6およびポリアミド6.6、PULP、好適にはポリオレフィン、および非常に特に好適にはポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラートおよびポリブチレンテレフタラート、および/または、これらの混合物を含み、および/またはこれらからなる。ある好適な実施形態によれば、羊毛繊維からなる繊維球が採用される。この場合、特に形状が安定し、遮断性の良いボリュームのある不織布が得られうる。さらなる好適な実施形態によれば、ポリエステルからなる繊維球が採用され、これによりボリュームのある不織布内または複合不織布中での通常のさらなる成分との特に良好な適合性が達成されうる。ある好適な実施形態では、繊維球は、追加的に、好ましくは長さが0.5mm〜100mmの結合繊維さえも含有する。
【0050】
不織布原材料は、工程(a)では、繊維球に加えて結合繊維を含有する。この結合繊維は、ゆるい繊維であり、かつ、繊維球の一成分ではない。ある好適な実施形態では、この結合繊維は、コア/シース繊維として構成されていて、シースは、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド、コポリアミド、コポリエステル、またはポリオレフィン例えばポリエチレンもしくはポリプロピレンなど、および/または、コアは、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリオレフィン例えばポリエチレンもしくはポリプロピレンなど、ポリフェニレンスルファイド、芳香族ポリアミドおよび/またはポリエステルを含む。シースポリマーの融点は、通常コアポリマーの融点より高く、例えば10℃以上である。
【0051】
結合繊維として、通常この目的用に用いられる繊維が採用されうる。結合繊維は、一様の繊維または複数成分繊維でありえる。本発明によれば特に適切な結合繊維は、以下の群の繊維であり、すなわち、
・結合されるべき嵩高化材料の融点より下の融点で、好ましくは250℃未満、とりわけ70〜230℃、特に好適には125〜200℃の融点を有する繊維である。適切な繊維は、とりわけ熱可塑性ポリエステルおよびまたはコポリエステル、とりわけPBT、ポリオレフィン、とりわけポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、またはコポリマーおよびそのコポリマーおよび混合物で、
・接着する繊維、例えば非延伸ポリエステル繊維
である。
【0052】
本発明により特に適切な結合繊維は、複数成分繊維で、好ましくは二成分繊維、とりわけコア/シース繊維である。コア/シース繊維は、軟化温度および/または融点が異なる少なくとも2つの繊維材料を含有する。好適にはコア/シース繊維は、これらの2つの繊維材料からなる。この際、より低い軟化温度および/または融点を有する成分は、繊維表面(シース)に見られ、より高い軟化温度および/または融点を有する成分は、コア中に見られうる。
【0053】
コア/シース繊維では、結合機能は、繊維の表面に配置されている材料により実施されうる。シース用には、非常に様々な材料が採用可能である。シースに好適な材料は、本発明によればPBT、PA、ポリエチレン、コポリアミドまたはコポリエステルである。特に好適であるのはポリエチレンである。コアについては、これも同様に非常に様々な材料を採用可能である。コアに好適な材料は、本発明によればPET、PEN、PO、PPSまたは芳香族PAおよびPESである。
【0054】
結合繊維の存在が有利であるのは、ボリュームのある不織布中の嵩高化材料が、結合繊維によりまとめられ、その結果、ボリュームのある不織布で充填された、繊維シースが利用可能になるが、この際、嵩高化材料が実質的に変位することなく、および充填材が欠けていることにより冷橋が形成されることがない。
【0055】
好ましくは、結合繊維は、長さが0.5mm〜100mm、より好適には1mm〜75mm、および/または、タイターが0.5〜10dtexである。本発明の特に好適な実施形態によれば、結合繊維のタイターは、0.9〜7dtex、より好適には1.0〜6.7dtex、とりわけ1.3〜3.3dtexである。
【0056】
ボリュームのある不織布中の結合繊維の割合は、ボリュームのある不織布のさらなる構成部分の様式および量と、ボリュームのある不織布の所望の安定性とに依存している。結合繊維の割合が小さすぎると、ボリュームのある不織布の安定性は劣化する。結合繊維の割合が高すぎる場合には、ボリュームのある不織布は全体として硬くなりすぎ、その柔らかさを犠牲にする。実際の実験により、安定性と柔らかさとの良好な妥協は、結合繊維の割合が、5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%、特に好適には10〜25重量%の範囲内にある場合に得られることが明らかになった。この場合に、巻くおよび/または折り曲げるのに十分に安定したボリュームのある不織布が得られうる。これによりボリュームのある不織布はより取扱いやすくなり、およびさらなる加工がより容易になる。さらにこの種のボリュームのある不織布は洗濯可能である。例えば、これは十分安定していて、これにより3つの家庭用リネンを40℃で解繊なく保つことができる。
【0057】
結合繊維は、熱溶融により互いにおよび/またはボリュームのある不織布のさらなる成分と結合されうる。特に適切であるのは、加熱され、平坦なまたは刻みが入ったローラを用いた熱梳綿であり、トンネル型温風炉、二重ベルト温風炉を通り抜けることにより、および/または、熱気が貫流するドラム上を通り抜けることによると明らかになった。二重ベルト温風炉の使用が有利であるのは、結合繊維が特に効果的に活性化されると同時に、表面が平滑化し、同時に嵩も得られうるからである。
【0058】
補足的に、ボリュームのある不織布は、妥当な場合には、硬化前の繊維ウェブの各側に、少なくとも一度、流体噴射好ましくは水噴射を当てることによっても硬化されることができる。
【0059】
ある好適な実施形態では、混合物は、少なくとも1つのさらなる成分であって、繊維球または結合繊維ではない成分を含有する。この種のさらなる成分の全割合は、好適には45重量%まで、30重量%まで、20重量%まで、または10重量%までである。
【0060】
好適には、この種のさらなる成分は、さらなる繊維、さらなる嵩高化材料およびこれ以外の機能性添加剤から選択されている。
【0061】
ある実施形態によれば、さらなる成分として、結合繊維ではないさらなる繊維が含有されている。この種の繊維は、不織布に特別な特性、すなわち、柔らかさ、光学特性、耐火性、引き裂き抵抗、伝導性または水分管理性などを備え付けることができる。これらの繊維は、繊維球の形態で存在しないので、非常に様々な表面品質を有しえ、とりわけ平坦な繊維でもありえる。したがって、例えば、ボリュームのある不織布に特別な光沢を備え付けるために、絹繊維をさらなる繊維として採用することも可能である。同様に考えられうるのは、ポリアクリル、ポリアクリルニトリル、予備酸化されたPAN、PPS、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアラミド、ポリマニドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド、とりわけポリアミド6およびポリアミド6.6、ポリオレフィン、ビスコース、セルロース、および好適にはポリエステル、とりわけポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラートおよびポリブチレンテレフタラート、および/またはこれらの混合物の採用である。有利である場合、ボリュームのある不織布中でのこれらのさらなる繊維の割合が、2〜40重量%、とりわけ5〜30重量%である。好ましくは、さらなる繊維は、長さが、1〜200mm、好ましくは5mm〜100mmである、および/または、タイターが0.5〜20dtexである。
【0062】
ある実施形態によれば、さらなる成分として、繊維球ではないさらなる嵩高化材料が含有され、これらは、とりわけ羽毛、ファインフェザーまたは発泡材料粒子である。これらのさらなる材料は密度に影響を与えることができ、かつ、材料に別の所望の特性を備え付けることができる。とりわけ衣料領域において羽毛またはファインフェザーの採用は、繊維製品での応用において特に好適であり、これは熱特性を改良することができる。本発明により羽毛および/またはファインフェザーが嵩高化材料として採用される場合、ボリュームのある不織布中におけるその割合は例えば10〜45重量%、好ましくは15〜45%または少なくとも15重量%である。羽毛および/またはファインフェザーとの概念は、本発明によれば従来の意味合いで理解される。とりわけ羽毛および/またはファインフェザーとは、羽茎が短く、羽枝が非常に柔らかく、長く、線状に配置されていて、実質的に鉤がない羽根であると理解される。
【0063】
ある実施形態によれば、さらなる成分として、繊維または嵩高化材料ではないさらなる機能性材料が含有されうる。本技術分野では、多数のこの種の添加物が公知であり、これらは例えば、着色剤、抗菌剤または付臭剤である。ある好適な実施形態では、ボリュームのある不織布は相変化材料を含有している。相変化材料(phase change material、PCM)は、その潜在的な溶融熱、溶解熱または吸収熱が、実質的に(相変化効果がない場合に)その通常の比熱容量がゆえに蓄えることができる熱よりも大きい材料である。相変化材料は粒子形態および/または繊維様式の形態で複合材料中に含有され、かつ例えば結合繊維を介して、ボリュームのある不織布の残りの成分と連結可能である。相変化材料の存在はボリュームのある不織布の遮断作用を支援することができる。
【0064】
ボリュームのある不織布の繊維の製造のために採用されるポリマーは、着色顔料、帯電防止剤、抗菌剤、例えば銅、銀、金または親水性化もしくは疎水性化添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を、150ppm〜10重量%の量含有しうる。採用されたポリマー中にある上述の添加剤を使用することにより、顧客固有の要件に合わせることができる。
【0065】
ある好適な実施形態では、ボリュームのある不織布の密度は、工程(a)で入れられる不織布球の密度よりも、少なくとも5%、好適には少なくとも10%、より好適には少なくとも25%小さい。この点は、非常に安定性を有するにもかかわらず、特に嵩高の不織布が得られるので有利である。
【0066】
ある好適な実施形態では、この方法は、工程(e)で得られるボリュームのある不織布が機械的には硬化されないように行われる。この点は、非常に小さい密度を有する製品が得られるので有利である。
【0067】
とりわけこの方法では、工程(a)〜(e)の方法で、針で縫うこと、水噴射硬化および/または梳綿が行われない。驚くべきことに、本発明による非常に嵩高の不織布は、この種の追加的な方法工程がなくても、および、密度が小さくても、多いに安定している。好適には不織布原材料の梳綿も行われない。
【0068】
ボリュームのある不織布は、工程(e)の熱硬化後に、化学的な結合または純化をすることができ、これは例えば抗ピリング処理、親水性化もしくは疎水性化、帯電防止処理、耐火性の改良および/もしくは触覚性特性もしくは光沢を変えるための処理、機械的な処理、例えば粗面化、防縮加工、エメリー研磨もしくはタンブラー中での処理および/または色もしくは印刷などの外観を変えるための処理である。
【0069】
本発明によるボリュームのある不織布は、さらなる層を含有することができ、これにより複合不織布が形成される。この際考えられうるのは、さらなる層は、補強層として例えばスクリムの形態で形成され、および/または、補強フィラメント、不織布、織地、編地および/または多軸織物を含む。さらなる層を形成するための好適な材料は、プラスチック例えばポリエステル、および/または、金属である。この際、さらなる層は、有利な場合、ボリュームのある不織布の表面上に配置可能である。本発明のある好適な実施形態によれば、ボリュームのある不織布のさらなる層は両側の表面(上面および下面)上に配置されている。
【0070】
本発明によるボリュームのある不織布は、とりわけ、非常に様々な繊維製品、とりわけ、軽量で、安定していてさらに温熱生理学的に快適であるような繊維製品の製造にとって卓越して適している。本発明の対象物は、したがって、繊維製品材料の製造方法であって、本発明における方法におけるボリュームのある不織布の製造工程と、繊維製品材料へさらに加工する工程とを含む方法でもある。
【0071】
この繊維製品材料は、とりわけ衣料品、成形材料、クッション材料、充填材、寝具、ろ過マット、真空マット、清掃用織物、スペーサ、発泡体代替物、包帯および防火材料から選択されている。
【0072】
このボリュームのある不織布は、したがって、とりわけ成形材料、クッション材料および/または充填材として採用可能で、とりわけ衣料用に採用可能である。しかし、成形材料、クッション材料および/または充填材は、これ以外の応用にも適していて、例えば着席用家具および横たわり用家具、枕、枕カバー、ベッド毛布、シーツ、寝袋、マットレス、マットレス上カバーにも適している。
【0073】
本発明によれば、衣料品との概念は、従来の意味合いで用いられ、好ましくは流行の衣料、余暇用衣料、スポーツウェア、アウトドア用衣料および機能的衣料品、とりわけ上着、例えばジャケット、コート、ベスト、ズボン、オーバーオール、手袋、帽子および/または靴である。中に含有されているボリュームのある不織布が良好な断熱特性を有するがゆえに、本発明によれば、特に好適には衣料品は、断熱性のある衣料品、例えば全気候用のジャケットおよびコート、とりわけ冬用ジャケット、冬用コート、冬用ベスト、スキーおよびスノーボード用ジャケット、このためのズボンおよびオーバーオール、サーモジャケット、サーモコートおよびサーモベスト、スキーおよびスノーボード用手袋、冬用帽子、サーモ帽子および室内ばきである。
【0074】
さらに、本発明によれば、中に含有されているボリュームのある不織布の良好な緩衝特性および通気特性がゆえに、特に好適な衣料品は、特に求められた箇所に緩衝特性を備えた衣料品であり、例えばゴールキーパー用ズボン、自転車用ズボンおよび乗馬用ズボンである。
【0075】
本発明の対象物は、本発明による方法により得られたボリュームのある不織布でもある。本発明によるボリュームのある不織布は、特別な製造方法により実現される特別な構造および特別な特性を特徴としている。とりわけ、極めて安定性を有する非常に軽量な不織布を製造しうる。これらの不織布は、さらに非常に良好な断熱性特性および高い柔らかさ、高い圧縮弾性、良好な復元能力、良好な洗濯可能性、軽量性、高い遮断性および包まれるべき体への良好な適合性を有しうる。
【0076】
本発明の対象物は、繊維球と結合繊維とからなるボリュームのある不織布でもあり、この際、繊維または繊維束は繊維球から引き出されていて、ボリュームのある不織布は熱硬化されていて、密度は、1〜20g/lの範囲である。繊維と繊維束とは、この際一様ではなく、および/または、偶然に繊維球から引き出されている。このボリュームのある不織布もさらなる特徴を有しうるが、これについて以下に説明する。
【0077】
ボリュームのある不織布の厚さは、例えば、0.5mm〜500mm、とりわけ1mm〜200mm、あるいは、2mm〜100mmでありえる。ボリュームのある不織布の厚さは、好ましくは所望の遮断性作用および採用される材料に応じて選択される。通常、厚さ(試験仕様EN 29073−T2:1992により計測)は、2mm〜100mmの範囲で、良好な結果が達成される。
【0078】
本発明によるボリュームのある不織布の秤量は、所望の用途に応じて設定される。多くの応用にとって合目的である秤量は、DIN EN 29073:1992による計測で、15〜1500g/m、好ましくは20〜1200g/mおよび/または30〜1000g/mおよび/または40〜800g/mおよび/または50〜500g/mであることが明らかになった。
【0079】
ある好適な実施形態では、ボリュームのある不織布の密度は小さい。好適には、これは20g/l未満、15g/l未満、10g/l未満または7.5g/l未満である。この密度は、例えば1〜20g/lの範囲、とりわけ2〜15g/lの範囲または3〜10g/lの範囲でありうる。ボリュームのある不織布の多くの応用にとって、好適には、この密度が10g/L以下、とりわけ8g/l以下である。この密度は、好適には秤量と厚さとから算出される。本発明によれば、より高い密度を有する有利な特に安定したボリュームのある不織布を製造することもできる。
【0080】
嵩高化材料を含有する公知の製品とは異なり、本発明によるボリュームのある不織布は、最大引張力が高いことを特徴とする。例えばこの引張強度は、ボリュームのある不織布が単純にレーン状品として製造され、さらに加工され、かつ入れられうるように設定されうる。この際、ボリュームのある不織布は、切断され、巻き上げられうる。さらに、これは、機能を損なうことなく洗濯可能である。
【0081】
本発明によるボリュームのある不織布は、安定性が驚くべき程度に良好に設定可能であることを特徴とする。本願の枠内でDIN EN29 073−3:1992による計測で、このボリュームのある不織布が高い最大引張力を有すると、多くの応用にとって有利であると明らかになった。この際、この最大引張力は、一般に長手方向と横断方向とで同一である。好適には後で示す値は、長手方向にも横断方向にも該当する。
【0082】
さらなるある実施形態では、好適には、ボリュームのある不織布は高い安定性を有する。この際、好適には、ボリュームのある不織布の最大引張力は、少なくとも2N/5cm、とりわけ少なくとも4N/5cm、または少なくとも5N/5cmである。
【0083】
ボリュームのある不織布は、秤量が50g/mの場合に、最大引張力は好適には少なくとも1つの方向で少なくとも0.3N/5cm、とりわけ0.3N/5cm〜100N/5cmである。
【0084】
本発明のある好適な実施形態によれば、秤量が15〜1500g/m、好ましくは20〜1200g/mおよび/または30〜1000g/mおよび/または40〜800g/mおよび/または50〜500g/mの場合に、ボリュームのある不織布の最大引張力は、少なくとも1つの方向で、少なくとも0.3N/5cm、とりわけ0.3N/5cm〜100N/5cmである。
【0085】
本発明のさらなる好適なある実施形態によれば、ボリュームのある不織布の最大引張力は、
(i)秤量が15〜50g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも0.3N/5cm、とりわけ0.3N/5cm〜100N/5cmであり、
(ii)秤量が50〜100g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも0.4N/5cm、とりわけ0.4N/5cm〜100N/5cmであり、
(iii)秤量が100〜150g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも0.8N/5cm、とりわけ0.8N/5cm〜100N/5cmであり、
(iv)秤量が150〜200g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも1.2N/5cm、とりわけ1.2N/5cm〜100N/5cmであり、
(v)秤量が200〜300g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも1.6N/5cm、とりわけ1.6N/5cm〜100N/5cmであり、
(vi)秤量が300〜500g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも2.5N/5cm、とりわけ2.5N/5cm〜100N/5cmであり、
(vii)秤量が500〜800g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも4N/5cm、とりわけ4N/5cm〜100N/5cmであり、かつ、
(viii)秤量が800〜1500g/mの場合、少なくとも1つの方向で、少なくとも6.5N/5cm、とりわけ6.5N/5cm〜100N/5cmである。
本発明の対象物は、場合分け群(i)〜(viii)の各個々の群によるボリュームのある不織布でもある。
【0086】
このボリュームのある不織布は、好適には、最大引張力[N/5cm]/厚さ[mm]の商が、少なくとも0.10[N/(5cmmm)]、好適には少なくとも0.15[N/(5cmmm)]または少なくとも0.18[N/(5cmmm)]である。この際、密度は、好適には10g/L以下であり、とりわけ8g/L以下である。密度が小さいボリュームのある不織布が、(厚さに対して)この種の高いHZKを達成することは稀である。
【0087】
ボリュームのある不織布は、好適には、最大引張力[N/5cm]/秤量[g/m]の商が、少なくとも0.020[N/(5cmg)]、好適には少なくとも0.025[N/(5cmg)]または少なくとも0.030[N/(5cmg)]である。この際、密度は、好適には10g/L以下であり、とりわけ8g/L以下である。ボリュームのある不織布が、秤量に対してこの種の高いHZKを達成することは稀である。
【0088】
ボリュームのある不織布は、好適には、最大引張力伸張が少なくとも20%、好適には少なくとも25%およびとりわけ30%を上回り、DIN EN29 073−3によれば、この際、密度が、好適には10g/L以下であり、とりわけ8g/L以下である。
【0089】
本発明によるボリュームのある不織布は、良好な断熱性特性を特徴とする。好適には、この不織布の熱抵抗(RCT値)は、0.10(K)/Wより上、0.20(K)/Wより上、または0.30(K)/Wより上である。この際、密度は、好適には10g/L以下であり、とりわけ8g/L以下である。本願の枠内では、熱抵抗を、DIN 11092:2014−12により、または、DIN 52612:1979により後で記載する方法で計測する。双方の方法における結果は同等であることが見いだされた。DIN 11092:2014−12による方法は、T=20℃、φ=65%r.F.で、人間の皮膚の体温調節モデルを用いて行われる。
【0090】
このボリュームのある不織布は、好適には、熱抵抗RCT[Km/W]/厚さ[mm]の商が、少なくとも0.010[Km/(Wmm)]、好適には少なくとも0.015[Km/(Wmm)]である。この際、密度は、好適には10g/L以下であり、とりわけ8g/L以下である。小さい密度を有するボリュームのある不織布が、(厚さに対して)この種の高いRCT値を達成することは稀である。
【0091】
ボリュームのある不織布は、好適には、熱抵抗RCT[Km/W]/秤量[g/m]の商が、少なくとも0.0015[Km/(Wg)]、好適には少なくとも0.0020[Km/(Wg)]または少なくとも0.0024[Km/(Wg)]である。この際、密度は、好適には10g/L以下であり、とりわけ8g/L以下である。ボリュームのある不織布が、秤量に対してこの種の高いRCT値を達成することは稀である。
【0092】
断熱性のある衣料品とは、本発明によれば、秤量が15〜1500g/m、好ましくは20〜1200g/mおよび/または30〜1000g/mおよび/または40〜800g/mおよび/または50〜500g/mの場合、熱抵抗が少なくとも0.030(K)/W、とりわけ0.030〜7.000(K)/Wであるボリュームのある不織布を含有する衣料品であると理解される。
【0093】
さらに、このボリュームのある不織布は、秤量が15〜1500g/m、好ましくは20〜1200g/mおよび/または30〜1000g/mおよび/または40〜800g/mおよび/または50〜500g/mの場合、熱抵抗は、少なくとも0.030(K)/W、とりわけ0.030〜7.000(K)/Wである。
【0094】
本発明のさらなる好適なある実施形態によれば、ボリュームのある不織布の熱抵抗は、
a.秤量が15〜50g/mの場合、少なくとも0.030(K)/W、とりわけ0.030(K)/W〜0.235(K)/Wであり、
b.秤量が50〜100g/mの場合、少なくとも0.100(K)/W、とりわけ0.100〜0.470(K)/Wであり、
c.秤量が100〜150g/mの場合、少なくとも0.200(K)/W、とりわけ0.200〜0.705(K)/Wであり、
d.秤量が150〜200g/mの場合、少なくとも0.300(K)/W、とりわけ0.300〜0.940(K)/Wであり、
e.秤量が200〜300g/mの場合、少なくとも0.400(K)/W、とりわけ0.400〜1.410(K)/Wであり、
f.秤量が300〜500g/mの場合、少なくとも0.600(K)/W、とりわけ0.600〜2.350(K)/Wであり、
g.秤量が500〜800g/mの場合、少なくとも1.000(K)/W、とりわけ1.000〜3.760(K)/Wであり、かつ、
h.秤量が800〜1500g/mの場合、少なくとも1.600(K)/W、とりわけ1.600〜7.000(K)/Wである。
本発明の対象物は、場合分け群(a.)〜(h.)の各個々によるボリュームのある不織布でもある。
【0095】
熱抵抗(RCT)は、本願の実施形態によれば、DIN 52612:1979に基づき、サイズが250mm×250mmである試料用の、2つのプレートを有する計測機器で計測した。計測構造部の中央には、一定の電力Pで加熱可能なフィルムが存在する。このフィルムは、上方でも下方でも、それぞれ同じ材料のパターンで覆われる。パターンの上方および下方では、それぞれ1つの銅板が置かれ、これが、外部のサーモスタットを用いて一定の温度(Tauβen)に保たれる。温度センサを用いて、試料の加熱される側と加熱されない側との間の温度差が計測される。全計測構造が、発泡スチロールを用いて内側および外側の温度の損失に対して遮断されている。
【0096】
熱抵抗は、上述の計測構造を用いて、以下のように計測される。
1.2つのパターンを、250mm×250mmに打ち抜く。
2.2つの打ち抜かれたパターンのそれぞれについて、厚さセンサを用いて、0.4gの押圧圧力で、その厚さを計測し、平均値を形成する(d)。
3.上述の計測構造を組み立てて、サーモスタットをTauβen=25℃に設定する。この際、双方の金属プレート間の距離は、パターンが10%圧縮され、これによりこのパターンがプレートに対して十分接触し、加熱可能なフィルムが確保されるように設定される。
4.温度差ΔTが発生するが、これは、電気的に加熱可能なフィルムが電力P(P =10Vまたは30V)で加熱され、Tauβenがサーモスタットを介して一定に保持されることにより発生する。
5.熱平衡を達成した後に、温度差ΔTが引き継がれる。
6.材料の熱伝導性は、以下の式、
λ=Pd/(AΔT)[W/(mK)]
で算出される。
7.熱抵抗(RCT)は、以下の式、
CT=d/λ=ΔTA/P[(K)/W]
で算出される。
【0097】
さらに、本発明によるボリュームのある不織布は、有利な場合には、強い復元力を有する。したがって、ボリュームのある不織布は、好ましくは50、60、70、80または90%を上回る回復を示し、この際、この回復は、以下のように計測される。
(1)6つの試料を上下に重ね合わせて積む(10×10cm)。
(2)高さを折尺で計測する。
(3)試料に鉄製プレートの重しを載せる(1300g)。
(4)重しを載せて1分後に高さを折尺で計測する。
(5)重しを取り除く。
(6)10秒後に、試料の高さを折尺で計測する。
(7)1分後に、試料の高さを折尺で計測する。
(8)(7)と(2)との値を割合にすることにより、回復を算出する。
異なる試料品について、5回、20回または100回計測を行い、計測値を算出する。
その高い安定性がゆえに、ボリュームのある不織布は、例えばレーン状品として、問題なく巻き上げ、かつさらに加工することができる。
【0098】
好適には、ボリュームのある不織布は、以下の特性を有する。
・密度は、10g/l以下である、とりわけ8g/L以下であり、
・最大引張力は、少なくとも2N/5cmであり、
・熱抵抗RCTは、少なくとも0.20Km/Wであり、かつ
・妥当な場合には、熱抵抗RCT[Km/W]/厚さ[mm]の商は、少なくとも0.010[Km/(Wmm)]である。
【0099】
特に好適には、ボリュームのある不織布は以下の特性を有する。
・最大引張力は、DIN EN 29 073−3によれば、少なくとも4N/5cmであり、
・密度は、10g/l以下であり、かつ、
・最大引張力[N/5cm]/厚さ[mm]の商は、少なくとも0.10[N/(5cmmm)]、好適には少なくとも0.15[N/(5cmmm)]である。
本発明による方法により、小さい密度と高い硬度とをこのように有利に組み合わせたボリュームのある不織布を製造することができる点が実施形態により証明される。
【0100】
本発明の特別な実施形態では、ボリュームのある不織布は以下のように製造されうる。
【0101】
35重量%の繊維球(シリコン処理した7dtex/32mmPES(ダクロン ポリエステル ファイバーフィル 287型(Dacron Polyester Fiberfill Type 287)を40%mPCM28℃−PC−温度−エンタルピーに当てた繊維球)と、30重量%のCoPES結合繊維からなる繊維球と、35重量%の羽毛および/またはファインフェザーおよび羽根(ミナルディ(Minardi)社製)とからなる120g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(これは、フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中、ベルト距離10mmで、155℃で硬化させる。滞在時間は36秒である。巻き上げ可能なレーン状材料が製造される。
【0102】
50重量%の綿の繊維球と、50重量%のCoPES結合繊維からなる繊維球とからなる150g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離12mmで、155℃で硬化させる。滞在時間は36秒である。巻き上げ可能なレーン状材料が得られる。
【0103】
50重量%の絹の繊維球と、50重量%のCoPES結合繊維からなる繊維球とからなる150g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離12mmで、155℃で硬化させる。滞在時間は36秒である。巻き上げ可能なレーン状材料が得られる。
【実施例】
【0104】
様々なボリュームのある不織布を製造し、その特性を導き出した。厚さ、密度、秤量、最大引張力、最大引張力伸張、回復および熱抵抗(RCT)は、上述の方法で測定した。
【実施例1】
【0105】
35重量%の繊維球(シリコン処理した7dtex/32mmPES(ダクロン ポリエステル ファイバーフィル 287型(Dacron Polyester Fiberfill Type 287))と、30重量%のCoPES結合繊維からなる繊維球と、35重量%の羽毛・羽根が90:10の割合である混合物(ミナルディ・ピウメ有限会社(Minardi Piume S.r.L)製)とからなる125g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離14mmで、178℃で硬化させる。滞在時間は43秒である。厚さ8mmで密度15.2g/Lの巻き上げ可能なレーン状材料を製造した。
【実施例2】
【0106】
80重量%の繊維球(シリコン処理した7dtex/32mmPES(ダクロン ポリエステル ファイバーフィル 287型(Dacron Polyester Fiberfill Type 287))と、20重量%のCoPES結合繊維とからなる56g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離1mmで、170℃で硬化させる。厚さ6.1mmの巻き上げ可能なレーン状材料を製造した。この材料の密度は、9.18g/Lであった。
【実施例3】
【0107】
80重量%の繊維球(シリコン処理した7dtex/32mmPES(ダクロン ポリエステル ファイバーフィル 287型(Dacron Polyester Fiberfill Type 287))と、20重量%のCoPES結合繊維とからなる128g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離4mmで、170℃で硬化させる。厚さ7.5mmの巻き上げ可能なレーン状材料を製造した。この材料の密度は、17.07g/Lであった。
【実施例4】
【0108】
80重量%の繊維球(シリコン処理した7dtex/32mmPES(ダクロン ポリエステル ファイバーフィル 287型(Dacron Polyester Fiberfill Type 287))と、20重量%のCoPES結合繊維とからなる128g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離30mmで、すなわち、繊維ウェブの負荷なしに、170℃で硬化させる。厚さ25mmの柔らかい巻き上げ可能なレーン状材料が得られた。この材料の密度は、5.12g/Lであった。
【実施例5】
【0109】
80重量%の繊維球(シリコン処理した7dtex/32mmPES(ダクロン ポリエステル ファイバーフィル 287型(Dacron Polyester Fiberfill Type 287))と、20重量%のCoPES結合繊維とからなる723g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離50mmで、170℃で硬化させる。厚さ50mmの巻き上げ可能な安定したレーン状材料を製造した。この材料の密度は、14.5g/Lであった。
【実施例6】
【0110】
85重量%の繊維球(A.モリーナ(A.Molina)社製ミクロロロ(MICROROLLO)(登録商標)222 SM)と、15重量%のPET/PE結合繊維とからなる112g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離40mmで、180℃で硬化させる。厚さ17mmの巻き上げ可能な安定したレーン状材料を製造した。この材料の密度は、6.5g/L、最大引張力は3.84N/5cm、最大引張力伸張は29%、また、RCT値は0.323Km/W(P=10Vの場合)であった。
【実施例7】
【0111】
85重量%の繊維球(A.モリーナ(A.Molina)社製ミクロロロ(MICROROLLO)(登録商標)222 SM)と、15重量%のPET/PE結合繊維とからなる151g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離40mmで、180℃で硬化させる。厚さ19mmの巻き上げ可能な安定したレーン状材料を製造した。この材料の密度は、6.1g/Lであった。別の箇所で取られた167g/mのパターンは、最大引張力は5.14N/5cm、最大引張力伸張は33%、また、RCT値は0.398Km/W(P=10Vの場合)であった。
【実施例8】
【0112】
85重量%の繊維球(A.モリーナ(A.Molina)社製ミクロロロ(MICROROLLO)(登録商標)222 SM)と、15重量%のPET/PE結合繊維とからなる218g/mを、「スパイク(SPIKE)」エアレイド設備(フォルムファイバー・デンマーク非公開有限会社(Formfiber Denmark APS)製で、繊維原材料を開繊するために、それぞれ5つのスパイクローラの列を2対で4つ有する)中で、担体ベルト上に落下させ、二重ベルトコンベヤ炉(ボンビ・メカニア(Firma Bombi Meccania)社製)中で、ベルト距離50mmで、180℃で硬化させる。厚さ31mmの巻き上げ可能な安定したレーン状材料を製造した。この材料の密度は、7.0g/Lであった。別の箇所で取られた259g/mのパターンは、最大引張力が5.45N/5cm、最大引張力伸張は34%、また、RCT値は0.534Km/W(P=10Vの場合)であった。
【実施例9】
【0113】
これらの実施例に従って製造された不織布のさらなる特性を調べた。その結果を表1にまとめている。比較のために表2中に、不織布球の密度を示す。この比較により、本発明によれば、結合繊維の密度がはるかに高いにもかかわらず採用された不織布球よりも明らかに小さい密度を有する製品を得ることが難なく可能であることが示される。したがって、極めて高い秤量を有するにもかかわらず特に軽量であるボリュームのある不織布を製造可能である。このボリュームのある不織布は、非常に良好な回復値も有し、この点は、繊維製品応用にとって非常に重要である。


【0114】
【表1】
【0115】
【表2】