特許第6571276号(P6571276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571276
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】描画デバイスの電子的な消去
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/167 20190101AFI20190826BHJP
   G02F 1/1676 20190101ALI20190826BHJP
   G09G 3/34 20060101ALI20190826BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   G02F1/167
   G02F1/1676
   G09G3/34 C
   G09G3/20 642J
   G09G3/20 691B
   G09G3/20 622C
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-510742(P2018-510742)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公表番号】特表2018-526684(P2018-526684A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016049626
(87)【国際公開番号】WO2017040609
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年4月17日
(31)【優先権主張番号】62/212,469
(32)【優先日】2015年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】パオリニ, リチャード ジェイ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−504696(JP,A)
【文献】 特開2010−002499(JP,A)
【文献】 特開2011−048333(JP,A)
【文献】 特開2008−186009(JP,A)
【文献】 特開2011−224417(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0214697(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15−1/19
G09G 3/20
G09G 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子的に消去可能な描画デバイス(100;300;500;600)であって、
少なくとも1つの光学特性が異なる少なくとも2つの光学状態を表示することが可能な電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)
を備え、
前記2つの光学状態のうちの1つは、黒色状態であり、前記2つの光学状態のうちの別の1つは、白色状態であり、
前記描画デバイス(100;300;500;600)は、
前記電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)の1つの表面に隣接して配置される、互いに組み合わせられた電極(332、334)と、
前記電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)の少なくとも一部が前記媒体の前記2つの光学状態の中間の状態に駆動されるように、前記互いに組み合わせられた電極(332、334)の電位を制御し、前記互いに組み合わせられた電極(332、334)に電圧を印加可能である電圧制御手段と
を特徴とする、描画デバイス(100;300;500;600)。
【請求項2】
前記互いに組み合わせられた電極(332、334)上の電圧は、フリンジ電場を前記電気光学媒体に印加するように配列される、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項3】
前記電圧制御手段は、異なる極性の電圧を前記互いに組み合わせられた電極の異なるものに印加するように構成される、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項4】
前記電圧制御手段は、交流電圧を前記互いに組み合わせられた電極(332、334)のうちの少なくとも1つに印加するように構成される、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項5】
前記電気光学ディスプレイ媒体は、流体内に配置され電場の影響下で前記流体を通して移動することが可能な複数の電気的に荷電された粒子(1、2、3)を備える、電気泳動材料(13;316;516)を備える、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項6】
前記電気的に荷電された粒子(1、2、3)および前記流体は、複数のカプセル(342a−342g)もしくはマイクロセル内に閉じ込められるか、またはポリマー材料を備える連続相によって囲繞される複数の個々の液滴として存在する、請求項5に記載の描画デバイス。
【請求項7】
前記互いに組み合わせられた電極のピッチが、同一方向における前記カプセル、マイクロセル、または複数の個々の液滴の平均反復距離とほぼ等しい、かつ/または前記互いに組み合わせられた電極間の平均間隙が、前記平均反復距離の半分とほぼ等しい、請求項6に記載の描画デバイス。
【請求項8】
前記互いに組み合わせられた電極は、第1および第2の互いに組み合わせられた電極を備え、前記第1および第2の互いに組み合わせられた電極は、それぞれ、前記電気光学ディスプレイ媒体の第1および第2の部分を駆動するように配列され、前記電圧制御手段は、相互に独立して前記第1および第2の互いに組み合わせられた電極を制御するように構成される、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項9】
前記ディスプレイ媒体の前記1つの表面の対向側上の描画表面と、前記描画表面にわたって移動可能な可動描画具(20;20a;20b)とをさらに備え、前記電圧制御手段は、前記互いに組み合わせられた電極のうちの少なくとも1つと前記描画具との間の電位差を制御し、前記ディスプレイ媒体の一部の光学状態を改変するように構成される、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項10】
前記ディスプレイ媒体は、カラーディスプレイ媒体である、請求項1に記載の描画デバイス。
【請求項11】
電子的に消去可能な描画デバイス(100;300;500;600)であって、
少なくとも1つの光学特性が異なる少なくとも2つの光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)
を備え、
前記2つの光学状態のうちの1つは、黒色状態であり、前記2つの光学状態のうちの別の1つは、白色状態であり、
前記描画デバイスは、
前記電気光学ディスプレイ媒体の1つの表面に隣接して配置される少なくとも2つの電極(332、334)と、
フリンジ電場を前記ディスプレイ媒体に印加し、それによって、前記ディスプレイ媒体の少なくとも一部を前記媒体の前記2つの光学状態の中間の状態に駆動するように、前記少なくとも2つの電極(332、334)の電位を制御するための電圧制御手段と
を特徴とする、描画デバイス。
【請求項12】
前記電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)は、流体内に配置され電場の影響下で前記流体を通して移動することが可能な複数の電気的に荷電された粒子(1、2、3)を備える、電気泳動材料を備える、請求項11に記載の描画デバイス。
【請求項13】
前記電気的に荷電された粒子(1、2、3)および前記流体は、複数のカプセル(342a−342g)またはマイクロセル内に閉じ込められるか、もしくはポリマー材料を備える連続相によって囲繞される複数の個々の液滴として存在する、請求項12に記載の描画デバイス。
【請求項14】
少なくとも1つの光学特性が異なる少なくとも2つの光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)を駆動するための電子描画具(20、20a、20b)であって、前記2つの光学状態のうちの1つは、黒色状態であり、前記2つの光学状態のうちの別の1つは、白色状態であり、前記描画具は、少なくとも2つの電極(26a、26b、26c)が、フリンジ電場を前記ディスプレイ媒体(13;316;516)に前記ディスプレイ媒体の片側から印加するように構成され、前記フリンジ電場は、前記少なくとも2つの電極(26a、26b、26c)に隣接する前記ディスプレイ媒体(13;316;516)の一部を中間光学状態に駆動するように構成され、前記少なくとも2つの電極(26a、26b、26c)は、前記ディスプレイ媒体に対して移動可能であることを特徴とする、描画具。
【請求項15】
電磁場を前記ディスプレイ媒体に印加するように配列される、請求項14に記載の描画具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学描画デバイス、特に、電気泳動描画デバイスを用いて作成された画像を電子的に消去するためのデバイスおよび技法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明は、
2つの極限光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体と、
電気泳動ディスプレイ媒体の1つの表面に隣接して配置される、互いに組み合わせられた電極と、
電気光学ディスプレイ媒体の少なくとも一部が媒体の2つの極限光学状態の中間の状態に駆動されるように、互いに組み合わせられた電極の電位を制御し、互いに組み合わせられた電極電圧を印加可能であるための電圧制御手段と、
を備える、電子的に消去可能な描画デバイスを提供する。
【0003】
本電子的に消去可能な描画デバイスでは、互いに組み合わせられた電極上の電圧は、フリンジ電場を電気光学媒体に印加するように配列されてもよい。電圧制御手段は、異なる極性の電圧を互いに組み合わせられた電極の異なるものに印加する、または交流電圧を互いに組み合わせられた電極のうちの少なくとも1つに印加するように配列されてもよい。電気光学媒体は、流体内に配置され、電場の影響下で流体を通して移動可能な複数の電気的に荷電された粒子を備える、電気泳動媒体を備えてもよい。流体は、液体またはガス状であってもよい。電気的に荷電された粒子および流体は、複数のカプセルもしくはマイクロセル内に閉じ込められる、またはポリマー材料を備える連続相によって囲繞される複数の個々の液滴として存在してもよい。互いに組み合わせられた電極のピッチは、同一方向におけるカプセル、マイクロセル、または複数の離散液滴内の平均反復距離とほぼ等しくてもよく、互いに組み合わせられた電極間の平均間隙は、本平均反復距離の半分とほぼ等しくてもよい。描画デバイスは、それぞれ、電気光学ディスプレイ媒体の第1および第2の部分を駆動するように配列される、第1および第2の互いに組み合わせられた電極を備えてもよく、電圧制御手段が、相互に独立して第1および第2の互いに組み合わせられた電極を制御するように構成されてもよい。描画デバイスは、互いに組み合わせられた電極を支承するディスプレイ媒体の1つの表面の対向側上の描画表面を有してもよい。描画デバイスはさらに、描画表面にわたって移動可能な可動描画具を備えてもよく、電圧制御手段が、互いに組み合わせられた電極のうちの少なくとも1つと描画具との間の電位差を制御し、ディスプレイ媒体の一部の光学状態を改変するように配列されてもよい。ディスプレイ媒体は、カラーディスプレイ媒体、例えば、異なる光学および電気泳動特性を有する少なくとも3つの異なるタイプの電気泳動粒子を備える、カラー電気泳動ディスプレイ媒体であってもよい。
【0004】
本発明はまた、
2つの極限光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体と、
電気泳動ディスプレイ媒体の1つの表面に隣接して配置される、少なくとも2つの電極と、
フリンジ電場をディスプレイ媒体に印加し、それによって、ディスプレイ媒体の少なくとも一部を媒体の2つの極限光学状態の中間の状態に駆動するように、少なくとも2つの電極の電位を制御するための電圧制御手段と、
を備える、電子的に消去可能な描画デバイスを提供する。
【0005】
本発明の本描画デバイスは、前述の描画デバイスの随意の特徴のいずれかを有してもよい。特に、電気光学材料は、流体内に配置され、電場の影響下で流体を通して移動可能な複数の電気的に荷電された粒子を備える、電気泳動材料を備えてもよい。流体は、液体またはガス状であってもよい。電気的に荷電された粒子および流体は、複数のカプセルもしくはマイクロセル内に閉じ込められる、またはポリマー材料を備える連続相によって囲繞される複数の個々の液滴として存在してもよい。
【0006】
本発明はまた、2つの極限光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体を駆動するための電子描画具(スタイラスの形態であってもよい)であって、フリンジ電場をディスプレイ媒体にディスプレイ媒体の片側から印加するように構成される、少なくとも電極を備え、フリンジ電場は、少なくとも2つの電極に隣接するディスプレイ媒体の一部を中間光学状態に駆動するように構成され、少なくとも2つの電極は、ディスプレイ媒体に対して移動可能である、描画具を提供する。
【0007】
そのような描画具では、異なる極性の電圧が、少なくとも2つの電極の異なるものに印加されてもよい、および/または交流電圧が、少なくとも2つの電極のうちの2つの間に印加されてもよい。少なくとも2つの電極はまた、磁場をディスプレイ媒体に印加可能であってもよい。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
電子的に消去可能な描画デバイス(100;300;500;600)であって、
2つの極限光学状態を表示することが可能な電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)
を備え、
前記描画デバイス(100;300;500;600)は、
前記電気泳動ディスプレイ媒体(13;316;516)の1つの表面に隣接して配置される、互いに組み合わせられた電極(332、334)と、
前記電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)の少なくとも一部が前記媒体の2つの極限光学状態の中間の状態に駆動されるように、前記互いに組み合わせられた電極(332、334)の電位を制御し、前記互いに組み合わせられた電極(332、334)に電圧を印加可能である電圧制御手段と
を特徴とする、描画デバイス(100;300;500;600)。
(項目2)
前記互いに組み合わせられた電極(332、334)上の電圧は、フリンジ電場を前記電気光学媒体に印加するように配列される、項目1に記載の描画デバイス。
(項目3)
前記電圧制御手段は、異なる極性の電圧を前記互いに組み合わせられた電極の異なるものに印加するように配列される、項目1に記載の描画デバイス。
(項目4)
前記電圧制御手段は、交流電圧を前記互いに組み合わせられた電極(332、334)のうちの少なくとも1つに印加するように配列される、項目1に記載の描画デバイス。
(項目5)
前記電気光学材料は、流体内に配置され、電場の影響下で流体を通して移動することが可能な複数の電気的に荷電された粒子(1、2、3)を備える、電気泳動材料(13;316;516)を備える、項目1に記載の描画デバイス。
(項目6)
前記電気的に荷電された粒子(1、2、3)および前記流体は、複数のカプセル(342a−342g)もしくはマイクロセル内に閉じ込められる、またはポリマー材料を備える連続相によって囲繞される複数の個々の液滴として存在する、項目5に記載の描画デバイス。
(項目7)
前記互いに組み合わせられた電極のピッチは、同一方向における前記カプセル、マイクロセル、または複数の離散液滴内の平均反復距離とほぼ等しい、および/または前記互いに組み合わせられた電極間の平均間隙は、前記平均反復距離の半分とほぼ等しい、項目6に記載の描画デバイス。
(項目8)
第1および第2の互いに組み合わせられた電極を備え、前記第1および第2の互いに組み合わせられた電極は、それぞれ、前記電気光学ディスプレイ媒体の第1および第2の部分を駆動するように配列され、前記電圧制御手段は、相互に独立して前記第1および第2の互いに組み合わせられた電極を制御するように構成される、項目1に記載の描画デバイス。
(項目9)
前記ディスプレイ媒体の前記1つの表面の対向側上の描画表面と、前記描画表面にわたって移動可能な可動描画具(20;20a;20b)とをさらに備え、前記電圧制御手段は、前記互いに組み合わせられた電極のうちの少なくとも1つと前記描画具との間の電位差を制御し、前記ディスプレイ媒体の一部の光学状態を改変するように配列される、項目1に記載の描画デバイス。
(項目10)
前記ディスプレイ媒体は、カラーディスプレイ媒体である、項目1に記載の描画デバイス。
(項目11)
電子的に消去可能な描画デバイス(100;300;500;600)であって、
2つの極限光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)
を備え、
前記描画デバイスは、
前記電気泳動ディスプレイ媒体の1つの表面に隣接して配置される、少なくとも2つの電極(332、334)と、
フリンジ電場を前記ディスプレイ媒体に印加し、それによって、前記ディスプレイ媒体の少なくとも一部を前記媒体の2つの極限光学状態の中間の状態に駆動するように、前記少なくとも2つの電極(332、334)の電位を制御するための電圧制御手段と、
を特徴とする、描画デバイス。
(項目12)
前記電気光学材料(13;316;516)は、流体内に配置され、電場の影響下で流体を通して移動することが可能な複数の電気的に荷電された粒子(1、2、3)を備える、電気泳動材料を備える、項目11に記載の描画デバイス。
(項目13)
前記電気的に荷電された粒子(1、2、3)および前記流体は、複数のカプセル(342a−342g)またはマイクロセル内に閉じ込められる、もしくはポリマー材料を備える連続相によって囲繞される複数の個々の液滴として存在する、項目12に記載の描画デバイス。
(項目14)
2つの極限光学状態を表示可能な電気光学ディスプレイ媒体(13;316;516)を駆動するための電子描画具(20、20a、20b)であって、前記電子描画具は、少なくとも電極(26a、26b、26c)が、フリンジ電場を前記ディスプレイ媒体(13;316;516)に前記ディスプレイ媒体の片側から印加するように構成され、前記フリンジ電場は、前記少なくとも2つの電極(26a、26b、26c)に隣接する前記ディスプレイ媒体(13;316;516)の一部を中間光学状態に駆動するように構成され、前記少なくとも2つの電極(26a、26b、26c)は、前記ディスプレイ媒体に対して移動可能であることを特徴とする、描画具。
(項目15)
異なる極性の電圧を前記少なくとも2つの電極の異なるものに印加する、および/または前記少なくとも2つの電極のうちの2つの間の交流電圧ならびに/もしくは磁場を前記ディスプレイ媒体に印加するように配列される、項目14に記載の描画具。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】添付の図面の図1は、本発明の第1の描画デバイスを通した概略断面図である。
【0009】
図2図2は、ディスプレイをアドレス指定するための本発明の描画具を通した概略断面図である。
【0010】
図3A図3Aは、本発明の第2の描画デバイスを通した概略断面図である。
【0011】
図3B図3Bは、図3Aの描画デバイスを組み込む、描画システムを通した概略断面図である。
【0012】
図3C図3Cは、図3Aのものに類似する概略断面図である。
【0013】
図3D図3Dは、図3A−3Cの描画デバイスにおいて使用される互いに組み合わせられた電極のセットの上部平面図である。
【0014】
図4A図4Aは、本発明の第2の描画具を通した図2のものに類似する概略断面図である。
【0015】
図4B図4Bは、図4Aに示される描画具の底部平面図である。
【0016】
図5図5Aおよび5Bは、本発明の第2の描画システムを通した図3Bのものに類似する概略断面図である。
【0017】
図6A図6Aは、本発明のカラー描画デバイスを通した図3Aのものに類似する概略断面図である。
【0018】
図6B図6B−6Dは、図6Aの描画デバイスを組み込む描画システムの3つの異なる光学状態を示す、図3Bのものに類似する概略断面図である。
図6C図6B−6Dは、図6Aの描画デバイスを組み込む描画システムの3つの異なる光学状態を示す、図3Bのものに類似する概略断面図である。
図6D図6B−6Dは、図6Aの描画デバイスを組み込む描画システムの3つの異なる光学状態を示す、図3Bのものに類似する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に示される本発明の具体的実施形態を詳細に説明する前に、電気光学ディスプレイに関するある背景情報を記載することが適切であると考えられる。
【0020】
用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用されるように、結像技術分野におけるその従来的な意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料であって、材料への電場の印加によって、その第1からその第2の表示状態に変化される、材料を指すために、本明細書で使用される。光学特性は、典型的には、ヒトの眼に知覚可能な色であるが、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または機械読取のために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射の変化の意味における擬似色等の別の光学特性であってもよい。
【0021】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体の外面を有するという意味で固体であるが、材料は、内部液体または気体充填空間を有し得、多くの場合、それを有する。そのような固体電気光学材料を使用するディスプレイは、以降では、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称され得る。したがって、用語「固体電気光学ディスプレイ」は、回転2色部材ディスプレイ、カプセル化電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル化液晶ディスプレイ(全て以下により詳細に議論される)を含む。
【0022】
「グレー状態」という用語は、画像技術におけるその従来の意味において、画素の2つの極限光学状態の中間の状態を指すために、本明細書で使用され、必ずしもこれら2つの極限状態の間の黒白遷移を暗示するわけではない。用語「黒色」および「白色」は、ディスプレイの2つの極限光学的状態を指すように以降で使用される場合があり、例えば、前述の白色および濃青色状態等の厳密には黒色ならびに白色ではない極限光学的状態を通常含むものとして理解されるべきである。
【0023】
用語「消去する」は、本明細書では、結像技術分野におけるその従来的な意味で使用され、ディスプレイの一部(例えば、ピクセル、複数のピクセル、領域、またはディスプレイ全体)を情報を視認者に伝達する状態(例えば、ディスプレイ全体の場合、対比光学特性を有する領域を用いて)から情報を伝達しない状態(ディスプレイ全体の場合、極限状態または中間状態であり得る、均一状態)に設定するプロセスを指す。
【0024】
「双安定」および「双安定性」という用語は、当技術分野におけるそれらの従来の意味において、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えるディスプレイであって、その第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を呈するように、有限持続時間のアドレス指定パルスを用いて、所与の要素が駆動されてから、アドレス指定パルスが終了した後に、表示要素の状態を変化させるために必要とされるアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなディスプレイを指すために、本明細書で使用される。米国特許第7,170,670号では、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、その極限の黒色および白色状態においてだけではなく、また、それらの中間グレー状態においても、安定しており、同じことがいくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。本タイプのディスプレイは、双安定性よりもむしろ「多安定性」と正しくは呼ばれるが、便宜上、「双安定性」という用語が、双安定性および多安定性ディスプレイの両方を網羅するために本明細書で使用され得る。
【0025】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、知られている。例えば、以下である。
a)回転2色部材タイプ(例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、第6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号参照(本タイプのディスプレイは、多くの場合、「回転2色ボール」ディスプレイと称されるが、前述のいくつかの特許では、回転部材は球形ではないため、「回転2色部材」という用語が、より正確なものとして好ましい))。本タイプの電気光学媒体は、典型的には、双安定である。
b)エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導電性金属酸化物から形成される電極と、電極に取り付けられる、可逆変色が可能な複数の色素分子とを備える、ナノクロミックフィルムの形態のエレクトロクロミック媒体(例えば、O'Regan, B., et al., Nature 1991,353,737およびWood, D., Information Display,18(3),24(March 2002)参照。また、Bach, U., et al., Adv. Mater., 2002,14(11),845ならびに米国特許第6,301,038号、第6,870,657号、および第6,950,220号参照)。本タイプの媒体もまた、典型的には、双安定性である。
c)Philipsによって開発され、Hayes, R.A., et al.,"Video−Speed Electronic Paper Based on Electrowetting", Nature, 425,383−385(2003)に説明される、エレクトロウェッティングディスプレイ。米国特許第7,420,549号において、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイが、双安定性に作製され得ることが示されている。
【0026】
長年にわたって集中的な研究および開発の対象とされてきた、電気光学ディスプレイの一タイプは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、複数の荷電粒子は、電場の影響下で流体を通って移動する。
【0027】
前述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。従来技術の電気泳動媒体の殆どにおいて、本流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生成され得、例えば、Kitamura, T., et al.,"Electrical toner movement for electronic paper−like display",IDW Japan, 2001, Paper HCS1−1、およびYamaguchi, Y., et al.,"Toner display using insulative particles charged triboelectrically",IDW Japan, 2001,Paper AMD4−4を参照されたい。また、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。
【0028】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLC、ならびに関連する企業に譲渡された、またはそれらの名義である多数の特許および出願は、カプセル化およびマイクロセル電気泳動ならびに他の電気光学媒体において使用される種々の技術を説明する。カプセル化電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを備え、そのそれぞれ自体は、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含有する内相と、内相を囲繞するカプセル壁とを備える。典型的には、カプセルは、それ自体がポリマー結合剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成する。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、代わりに、典型的にはポリマーフィルムである、搬送媒体内に形成された複数の空洞内に保定される。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および米国特許出願公開第2014/0065369号参照)
(d)マイクロセルを充填およびシールするための方法(例えば、米国特許第7,144,942号および米国特許出願公開第2008/0007815号参照)
(e)電気光学材料を含有するフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照)
(f)バックプレーン、接着材層、および他の補助層、ならびにディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)
(g)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号参照)
(h)ディスプレイを駆動するための方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、ならびに米国特許出願公開第2003/0102858号、第2004/0246562号、第2005/0253777号、第2007/0070032号、第2007/0076289号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2007/0176912号、第2007/0296452号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0169821号、第2008/0218471号、第2008/0291129号、第2008/0303780号、第2009/0174651号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0194733号、第2010/0194789号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2010/0283804号、第2011/0063314号、第2011/0175875号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0221740号、第2012/0001957号、第2012/0098740号、第2013/0063333号、第2013/0194250号、第2013/0249782号、第2013/0321278号、第2014/0009817号、第2014/0085355号、第2014/0204012号、第2014/0218277号、第2014/0240210号、第2014/0240373号、第2014/0253425号、第2014/0292830号、第2014/0293398号、第2014/0333685号、第2014/0340734号、第2015/0070744号、第2015/0097877号、第2015/0109283号、第2015/0213749号、第2015/0213765号、第2015/0221257号、第2015/0262255号、第2016/0071465号、第2016/0078820号、第2016/0093253号、第2016/0140910号、および第2016/0180777号参照)
(i)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照)
(j)米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に説明されるような非電気泳動ディスプレイならびにディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用(例えば、米国特許第7,615,325号ならびに米国特許出願公開第2015/0005720号および第2016/0012710号参照)
【0029】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体内の個々のマイクロカプセルを囲繞する壁は、連続相によって取って代わられ得、したがって、いわゆるポリマー分散型電気泳動ディスプレイを生成し、電気泳動媒体は、複数の個々の電気泳動流体の液滴と、ポリマー材料の連続相とを備え、そのようなポリマー分散型電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の個々の液滴は、個々のカプセル膜がそれぞれの個々の液滴と関連付けられないにもかかわらず、カプセルまたはマイクロカプセルとして見なされ得ると認識し、例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本出願の目的のために、そのようなポリマー分散型電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種として見なされる。
【0030】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、実質的にディスプレイを通しての可視光線の伝送を遮るため)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「シャモード」で動作するように作製され得、1つのディスプレイ状態は、実質的に不透明であり、1つは光透過性である。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイと類似するが、電場強度における変動に依拠する、電気泳動ディスプレイは、類似モードで動作し得る。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイもまた、シャッタモードで動作することも可能であり得る。シャッタモードで動作する電気光学媒体は、フルカラーディスプレイのための多層構造において有用であり得、そのような構造では、ディスプレイの視認表面に隣接する少なくとも1つの層は、視認表面からより遠い第2の層を暴露または隠蔽するために、シャッタモードで動作する。
【0031】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来の電気泳動デバイスの集塊化および沈降失敗モードを被らず、多種多様の可撓性および剛性基板上にディスプレイを印刷または被覆する能力等のさらなる利点を提供する。(「印刷」という言葉の使用は、限定ではないが、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の事前計量コーティング、ナイフオーバーロールコーティング、フォワード・リバースロールコーティング等のロールコーティング、グラビアコーティング、浸漬コーティング、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電印刷プロセス、感熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動堆積(米国特許第7,339,715号参照)、および他の類似技法を含む、あらゆる形態の印刷ならびにコーティングを含むことを目的としている。)したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体を(種々の方法を使用して)印刷することができるため、ディスプレイ自体を安価に作製することができる。
【0032】
他のタイプの電気光学媒体もまた、本発明のディスプレイで使用されてもよい。
【0033】
電気光学ディスプレイ上への画像のレンダリングは、異なる電場またはインパルスを電気光学材料の異なる領域に印加することによってもたらされる。(用語「インパルス」は、本明細書では、時間に対する電圧の積分のその従来の意味において使用される。しかしながら、いくつかの双安定電気光学媒体は、電荷変換器として作用し、そのような媒体では、インパルスの代替定義、すなわち、経時的電流の積分(印加される総電荷に等しい)が、使用され得る。インパルスの適切な定義は、媒体が電圧時間インパルス変換器または電荷インパルス変換器として作用するかどうかに応じて使用されるべきである。)いくつかの単安定電気光学媒体、例えば、液晶では、ディスプレイの各ピクセルに印加される電場を制御することのみ必要である。すなわち、液晶材料は、最終的に、印加された電場の値と関連付けられたグレーレベルを採用する。双安定電気光学媒体では、通常、印加された電場および印加される周期の両方を制御することが必要であって、駆動方法に関して前述の特許および公開出願のいくつかにおいて議論されるように、メモリ効果、電場に対する非線形応答等に起因して、付加的複雑性が存在する。さらに、双安定電気光学媒体は、両方向、例えば、白色から黒色および黒色から白色に駆動されなければならない。
【0034】
単安定電気光学媒体を使用する電気光学ディスプレイ上での画像の消去は、単に、全印加された電場をオフにし、それに応じて、電気光学媒体の全体がその単一安定状態に戻り、したがって、均一光学状態を採用することによって、容易に達成されることができる。双安定媒体を使用する電気光学ディスプレイ上での画像の消去は、(全ピクセルが同一光学状態になり得るように)任意の具体的ピクセルを1つの具体的光学状態に駆動するために必要とされるインパルスが、消去に先立ってピクセルの光学状態に伴って変動するため、それほど単純ではない。さらに、ある手順が、ディスプレイの駆動に関して前述の特許および出願のいくつかに議論されるように、あるタイプの電気光学ディスプレイの電気光学特性に損傷および有害作用を生じさせ得る、DC不平衡の問題を導入するであろうため、例えば、黒色/白色ディスプレイの全ピクセルが、黒色移行電場を長期間印加することによって均一黒色に駆動され得ると考えられ得る。
【0035】
バックプレーン上に固定電極を有する電気光学ディスプレイ上での画像の消去(そのようなディスプレイは、直接駆動、パッシブマトリクス、またはアクティブマトリクスタイプであり得る)は、ディスプレイの種々のピクセルを均一光学状態に駆動するための波形の慎重な選択によって達成されることができる。しかしながら、画像の消去は、画像が、電場が描画具内の電極とディスプレイ内の電極との間に形成されるように、スタイラスまたは印刷ヘッド等の描画具を電気光学ディスプレイの描画表面に近接近させる、またはそれと接触させることによって形成される、いわゆる「外部アドレス指定」ディスプレイ(便宜上、以降、「スタイラス駆動式」ディスプレイと称され得る)では、深刻な問題である。これまで、スタイラス駆動式ディスプレイ上での画像の消去は、筆記具を消去されるべきディスプレイの部分にわたって移動させることを要求する、局所的消去、すなわち、描画具を消去される必要のないディスプレイの部分と接触させることによって光学状態における望ましくない変化を非常に生成しやすいという点において、非常にエラーを被りやすい、低速かつ煩雑なプロセスによって達成されている。本消去手順の低速、煩雑、かつエラーを被りやすい性質は、スタイラス駆動式ディスプレイの市場での容認を著しく阻んでいる。故に、スタイラス駆動式ディスプレイの大域的消去のための方法の必要性があり、大域的消去方法は、他のタイプのディスプレイにも有用に適用されることができる。(「大域的消去」とは、ディスプレイの全ピクセルを本質的に均一光学状態にリセットすることを要求する。これは、全ピクセルがちょうど同時にアドレス指定されることを要求するものではないが、例えば、数秒を上回らない短時間内に全ピクセルがアドレス指定されることが好ましい。)
【0036】
本発明によると、スタイラス駆動式および他の電気光学ディスプレイの消去は、媒体の反対表面上の電極間に電場を発生させるのではなく、ディスプレイの電気光学媒体の同一側の電極間に電場を発生させることによって、達成されることができる。電場は、フリンジ電場であってもよく、この用語は、本明細書では、異なる電位に保持される2つの電極が位置する平面から外に発生される、電場を指すために使用される。電気技術における当業者に周知であるように、異なる電位が、共通平面内に位置する2つの(またはそれを上回る)電極に印加されると、電極間の電場は、隣接する力線間の反発のため、共通平面に閉じ込められず、本平面と垂直な両方向において外向きに延在する。電極は、互いに組み合わせられてもよく、この用語は、本明細書では、2つの手の上で組み合わせられた指に類似するというその通常の意味で使用される。より具体的には、2つの電極は、一方の電極の伸長部分が他方の電極の2つの伸長部分との間に延在し、それと略平行である場合、互いに組み合わせられると考えられる。
【0037】
本発明の描画デバイスおよび描画具は、ディスプレイ全体が、非常に短い時間量(例えば、1秒未満)で、非常に単純な制御機構を使用して(例えば、デバイスの電極に印加される信号を制御するスイッチをアクティブ化して)、消去される(すなわち、大域的に消去される)ことを可能にすることができる。本発明の描画具は、スタイラス駆動式ディスプレイの一部を局所的に消去するために使用されてもよい。描画具は、2つまたはそれを上回る電極を含んでもよく、描画具の先端に近接するピクセルは、フリンジ電場を描画具の電極間に発生させることによって消去されてもよい。
【0038】
本発明は、本開示において、消去可能電子ディスプレイを提供する。ディスプレイは、パターン化された電極(例えば、互いに組み合わせられた電極)を含む、バックプレーンを有してもよい。ディスプレイを大域的または領域別に消去するために、バックプレーン内の隣接する電極は、フリンジ電場(例えば、フリンジ電場)がディスプレイ媒体を通して形成されるように、異なる電位(例えば、異なる極性の電位)に設定されてもよい。ディスプレイがカプセル化された電気泳動媒体を使用する場合、フリンジ電場は、ディスプレイ媒体のカプセルの内容物を旋回させ、それによって、ディスプレイ全体を通して、またはアクティブ化される電極によって被覆される領域内のカプセルを「消去」してもよい。互いに組み合わせられた電極以外の電極構成が、代替として、または加えて、フリンジ電場を生成し、消去を行うために使用されてもよい。
【0039】
本発明はまた、消去可能電子ディスプレイのための描画具を提供する。描画具は、複数の電極を含んでもよい。ディスプレイを局所的に消去するために、描画具内の隣接する電極は、フリンジ電場がディスプレイ媒体を通して形成されるように、異なる電位(例えば、異なる極性の電位)に設定されてもよい。ディスプレイがカプセル化された電気泳動媒体を使用する場合、フリンジ電場は、ディスプレイ媒体のカプセルの内容物を旋回させ、それによって、描画具の近傍のカプセルを「消去」してもよい。
【0040】
前述の本発明の種々の側面ならびにさらなる側面が、ここで、以下に詳細に説明されるであろう。これらの側面は、相互に排他的ではない限り、単独で、全て併せて、または2つもしくはそれを上回るものの任意の組み合わせで使用されてもよいことを理解されたい。
【0041】
図1は、ディスプレイ10と、モバイル描画具またはスタイラス20とを備える、描画システム(概して、100として指定される)を示す。ディスプレイ10はさらに、ケーシング12と、ケーシング12の内側に配置される背面電極層14と、背面電極層14に隣接して配置される電気光学媒体13の層と、ディスプレイ媒体13に隣接して配置される保護層18とを備える。
【0042】
保護層18は、描画表面としての役割を果たしてもよい。描画具20は、電荷伝導機構を含んでもよく、筆記デバイス(例えば、スタイラス)であってもよい。ディスプレイ10は、描画表面に対して移動されるロボットアームまたは電荷搬送印刷ヘッドを用いて機械的にアドレス指定されてもよい。例えば、外部印刷頭部が、描画表面上に描画するために使用されてもよい。道具20が描画表面に接触すると、道具20および背面電極層14は、電磁場(例えば、電場および/または磁場)をディスプレイ媒体13を横断して印加し、それによって、画像をシステム100の描画表面上に表示してもよい。
【0043】
ケーシング12は、電気光学ディスプレイ媒体13、背面電極層14、および/または任意の必要電子機器を保持可能なプラスチック容器(または別の材料の容器)であってもよい。ケーシング12は、玩具用途のための小サイズから大型のプレゼンテーションディスプレイにおける用途のための大サイズまで及ぶ任意のサイズであってもよく、モバイル描画具20および/または他の付属品を格納するためのコンパートメントを含んでもよい。
【0044】
電気光学材料13は、粒子ベースの電気泳動材料であってもよく、少なくとも2つの相、すなわち、電気泳動造影剤相17(すなわち、不連続相)と、コーティング/結合相16(すなわち、連続相)とを含んでもよい。電気泳動相17は、いくつかの実施形態では、クリアもしくは染色媒体中に分散される単一種の電気泳動粒子、またはクリアもしくは染色媒体中に分散される明確に異なる物理的および電気特性を有する1つを上回る種の電気泳動粒子を含む。いくつかの実施形態では、電気泳動相17は、カプセル壁19が電気泳動粒子および懸濁流体を囲繞するようにカプセル化される。電気光学材料13は、電気泳動および他の電気光学媒体に関する前述の特許ならびに出願に議論される先行技術タイプのいずれかであってもよい。
【0045】
描画具20は、例えば、道具20とディスプレイ10との間で電気信号を搬送するように構成される1つまたはそれを上回るワイヤによって、ディスプレイ10に機械的に結合されてもよい。ディスプレイ10は、道具20のための電源を提供してもよい。代替として、道具20は、ワイヤレス(すなわち、道具20は任意のワイヤによってディスプレイ10に結合されなくてもよい)であってもよく、その独自の電源を含んでもよい。
【0046】
図2は、微細な線の描画を可能にするために小さくてもよく、かつ丸みを帯びていてもよい先端24を伴う、伸長プローブ22を備える、描画具20a(例えば、スタイラス)を通した概略断面を示す。先端24は、先端24の表面と同一平面またはそれに隣接する、電極26を含んでもよい。電極26は、先端24より小さい面積を包含してもよく、1つまたはそれを上回るワイヤ21を通して電圧源(図示せず)に接続されてもよい。道具20aの丸みを帯びた先端は、道具20aのより広い面積が描画表面に接触することを可能にする一方、描画表面を貫通せずに、微細な線が描写されることを可能にする。電極26は、誘電コーティング(図示せず)で被覆され、これは、道具20aを保護し、環境への電極26の暴露を防止する。道具20aの先端24は、エラストマー材料を備えてもよい。
【0047】
本装置において使用される描画具またはスタイラスは、その先端の中に内蔵された制振機構(例えば、ばね)を含み、描画表面を物理的力(例えば、ユーザの手の運動によって生じる物理的力)から和らげてもよい。
【0048】
図3Aは、背面電極層314と、ディスプレイ媒体316とを備える、ディスプレイユニット310を通した断面である。ディスプレイ媒体316は、描画表面341と背面電極層314との間に介在される。背面電極層314は、2つまたはそれを上回る電極(例えば、第1の電極332および第2の電極334)を含んでもよい。2つまたはそれを上回る電極の電位は、独立して制御されてもよく、これは、例えば、本明細書に説明されるように、フリンジ電場を生成するために有益であり得る。
【0049】
ディスプレイ媒体316は、複数のカプセル342を備える、電気泳動ディスプレイ媒体であってもよい。図3Aでは、各カプセル342は、実質的にクリアな懸濁流体中に懸濁された異なる(例えば、造影)光学特性を伴う、第1および第2のタイプの粒子を含むが、これは、限定ではなく、ディスプレイ媒体316のカプセルは、任意の好適な懸濁流体中に懸濁された任意の好適な数の粒子タイプを含んでもよい。
【0050】
ディスプレイユニット310は、ディスプレイ媒体316に隣接して配置される、保護層318を含んでもよい。保護層318の表面は、描画システムのための描画表面341としての役割を果たしてもよい。好適な保護層は、図1を参照して前述されている。ディスプレイユニット310のいくつかの変形は、ディスプレイ媒体316の描画表面側(「正面」)上に電極を含まなくてもよい。代わりに、ディスプレイ媒体316は、モバイル描画具によって外部からアドレス指定されてもよい。
【0051】
ディスプレイユニット310は、背面電極層314内の電極の電位を制御することによって、ディスプレイユニット310の動作を制御し得る、ディスプレイコントローラ(例えば、制御回路)(図示せず)を含んでもよい。ディスプレイコントローラは、図1を参照して前述のように、電荷発生機構(図示せず)によって背面電極層314への電荷の印加を制御することによって、背面電極層314内の電極の電位を制御してもよい。ディスプレイコントローラは、任意の好適な処理デバイス(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路等)を使用して実装されてもよい。ディスプレイコントローラは、ディスプレイユニット310を「描画モード」または「消去モード」で動作するように選択的に構成してもよい。ディスプレイコントローラは、背面電極層314の電極を同一電位(例えば、電気接地)に設定し、それによって、描画具が描画具の電極を異なる電位に設定することによりディスプレイ媒体316を外部からアドレス指定することを可能にすることによって、ディスプレイユニット310を「描画モード」で動作するように構成してもよい。ディスプレイコントローラは、背面電極層314の電極を異なる電位に設定することによって(例えば、AC電圧を電極層314の電極を横断して印加することによって)、描画ユニット310を「消去モード」で動作するように構成してもよい。ユーザは、任意の好適な技法(例えば、ディスプレイコントローラに通信可能に結合されるボタンを押下する、ディスプレイコントローラに通信可能に結合されるスイッチをアクティブ化する、音声コマンドを発する、ソフトウェアベースのユーザインターフェースを動作させる等)を使用して入力をディスプレイコントローラに提供することによって、描画システムの動作モードを制御してもよい。描画および消去モードは、以下でさらに詳細に議論される。
【0052】
図3Bは、ディスプレイユニット310と、描画具320とを含む、ディスプレイシステム300を通した断面を示す。描画具は、スタイラスであってもよい。描画具の先端の幅366は、カプセル342の幅346の少なくとも2倍であってもよい。代替として、描画具320は、印刷ヘッドまたはその一部であってもよい。モバイル描画具のいくつかの実施形態は、図2を参照して前述されている。
【0053】
道具320は、電位352に設定され得る、電極(図示せず)を含んでもよい。電位352が背面電極層314内の対向電極の電位と異なるとき、電場が、道具320と背面電極層314との間に配置される1つまたはそれを上回るカプセル342に印加され、それによって、1つまたはそれを上回るカプセルを対応する光学状態に駆動する。
【0054】
図3Bは、背面電極層314の電極が接地される(図3Bでは、ゼロで示される)、描画モードで動作する描画システム300を図示する。背面電極層314の電極の接地は、描画モードに必須ではないが、背面電極層314の電極を面積全体を通して共通電位に設定することは、その面積全体を通して描画システムの光学特性の均一性を向上させ得る。例えば、背面電極層314の電極が、共通電位に設定され、道具320が、ディスプレイ媒体を外部からアドレス指定するために使用されるとき、描画システム300によって表示されるマーキングは、十分に均一な色であり得る。共通電位は、限定ではないが、電気接地を含む、任意の好適な電位であってもよい。
【0055】
描画モードでは、道具320の電極は、電位352に維持されてもよい。道具320の先端が、ディスプレイ媒体316に近接して(例えば、描画表面341と接触して)設置されると、背面電極層314と描画具の電極との間の電圧差が、描画具の先端に隣接するカプセル342を通して電場を背面電極層314と描画具の電極との間に形成させるであろう。本電場は、これらのカプセルの内容物を対応する光学状態(例えば、色)に駆動させてもよい。ディスプレイ媒体316が双安定(または多安定)であるため、これらのカプセルは、電場が除去された後も(例えば、描画具320の先端がカプセルから離れて移動された後も)、その光学状態を留保する。
【0056】
図3Bでは、描画具320の電極は、正電位352に荷電され、描画具の電極と背面電極層314との間に形成される電場は、白色の負に荷電された粒子をカプセルの上部に伴い、黒色の正に荷電された粒子をこれらのカプセルの底部に伴って、カプセル342b−342dを白色状態に駆動する。描画具320によってアドレス指定されないカプセル342aおよび342e−gは、グレー状態に留まり、白色および黒色粒子は、各カプセル全体を通して均一に分散される。
【0057】
図3Bに示される光学状態および電位は、非限定的実施例である。カプセル342は、カプセルのグレー状態の色が灰色であるように、実質的にクリアな懸濁流体中に分散されるほぼ等量の黒色および白色インク粒子を含んでもよい。代替として、カプセル342は、カプセルのグレー状態の色が実質的に白色であるように、黒色インク粒子より多くの白色インク粒子を含んでもよい。描画具320の電極は、背面電極層314に対して正または負電位に荷電され、それぞれ、描画具の先端の近傍におけるカプセルを白色または黒色状態に駆動してもよい。したがって、描画システム300は、例えば、ユーザが、カプセル342の組成物ならびに描画具320および背面電極層314の相対的電位に応じて、灰色上黒色、灰色上白色、または白色上黒色を描画することを可能にしてもよい。
【0058】
道具320は、描画具の電極の電位を制御することによって描画具320の動作を制御し得る、道具コントローラ(例えば、制御回路)(図示せず)を含んでもよい。道具コントローラは、電荷発生機構(図示せず)によって電極の電荷の印加を制御することによって、描画具の電極の電位を制御してもよい。電荷発生機構のいくつかの実施形態は、前述の通りである。道具コントローラは、任意の好適な処理デバイス(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路等)を使用して実装されてもよい。
【0059】
道具コントローラは、第1の光学状態(例えば、第1の色)または第2の光学状態(例えば、第2の色)で描画するように描画具320を選択的に構成してもよい。道具コントローラは、描画具の電極を背面電極層314に対して負電位に設定することによって第1の光学状態で、描画具の電極を背面電極層314に対して正電位に設定することによって第2の光学状態で描画するように描画具320を構成してもよい。ユーザは、任意の好適な技法を使用して(例えば、道具コントローラに通信可能に結合されるボタンを押下する、道具コントローラに通信可能に結合されるスイッチをアクティブ化する、音声コマンドを発する、ソフトウェアベースのユーザインターフェースを動作させる等)、入力を道具コントローラに提供することによって描画具の動作を制御してもよい。
【0060】
図3Cは、消去モードにおける第2の状態にある描画ユニット310を通した断面を示す。消去モードでは、電圧(「消去電圧」)が、背面電極層314の隣接する電極間に確立され、それによって、電場を電極間に形成させてもよい。得られたフリンジ電場は、カプセル342を透過し、それらをグレー状態に駆動する。フリンジ電場は、電気浸透流をカプセル342内に誘発し得、これは、カプセル内の粒子を「旋回」させ得る(例えば、ランダムに混合させる)。粒子の旋回は、カプセルをグレー状態に迅速かつ効率的に駆動し得る。ディスプレイ媒体316を効率的に消去するために好適な「消去電圧」のいくつかの実施形態および電極層314の構成は、以下に説明される。
【0061】
ディスプレイ媒体316(またはその一部)は、ディスプレイ媒体の同一側上の電極(例えば、背面電極層314内の電極332および334)を横断して「消去電圧」を確立することによって消去されてもよい。消去電圧を確立するために電極に印加される電位は、同一極性または反対極性を有してもよい。図3Cでは、電極332および334に印加される電位は、それぞれ、「+」および「−」記号によって示されるように、反対極性を有する。消去電圧の振幅は、典型的には、10〜240ボルト、好ましくは、10〜120ボルトであってもよい。消去電圧は、AC電圧であってもよく、これは、1〜1000Hz(例えば、10〜100Hzまたは10〜60Hz)の周波数を有してもよい。代替として、消去電圧は、DC電圧であってもよい。しかしながら、AC消去電圧は、ディスプレイ媒体の消去される部分を横断してより均一な光学状態を産生する傾向にあり得る一方、DC消去電圧は、ディスプレイ媒体の消去される部分を横断してより細いストライプを産生する傾向にあり得る。
【0062】
消去電圧の印加によって誘発される粒子の旋回は、電気泳動粒子をランダムに混合させ得る。カプセルの電気泳動粒子をランダムに混合させることによって、消去電圧は、カプセルの前の光学状態にかかわらず、カプセルをグレー状態に駆動し得、したがって、要求される消去電圧は、カプセルの前の光学状態に依存しない。また、消去電圧がディスプレイ媒体316に隣接する電極に印加されると、ディスプレイ媒体のその部分の好適な消去が、いくつかの実施形態では、比較的に短い時間期間(例えば、1秒未満)にわたって消去電圧を印加することによって達成され得る。
【0063】
電極層314の電極は、互いに組み合わせられ、消去を促進してもよい。図3Dは、互いに組み合わせられた電極332および334を伴う、背面電極層314の上部平面図である。互いに組み合わせられた電極の桁間間隙379、桁幅377、およびピッチ375は、少なくとも部分的に、カプセル342の幅346(「インク幅」)および厚さ348(「インク厚さ」)に基づいて判定されてもよい。インク幅346の公称値は、50ミクロンであってもよく、インク厚さ348の公称値は、20ミクロンであってもよい。
【0064】
互いに組み合わせられた電極は、任意の好適な寸法を有してもよいが、消去モードにおける性能を向上させるいくつかの電極構成が、描画モードにおける性能を妨害し得、その逆も同様であることが経験的に観察されている。例えば、描画モードでは、性能は、互いに組み合わせられた電極の桁間の桁間間隙379が可能な限り小さいとき、均一電位に設定される電極層314の面積の増加が描画システムの外部アドレス指定の分解能を改良し得るため、向上され得る。同様に、外部アドレス指定の分解能は、互いに組み合わせられた電極の各伸長部分の幅377がカプセルの幅346とほぼ等しいときと、各カプセル342が伸長部分の上部に心合されるとき、描画モードにおいて向上され得る。対照的に、消去モードでは、性能は、互いに組み合わせられた電極の桁間間隙379および桁幅377の両方が、インクカプセルの厚さ348とインクカプセルの幅346の2倍との間にあるとき、これらの構成が、フリンジ電場を産生させ、これが電気泳動粒子をより均一に混合させ得るため、向上され得る。
【0065】
描画モードおよび消去モードの両方において好適な性能を提供する、電極構成(例えば、外部アドレス指定のための好適な分解能および消去されるカプセル間の好適な均一性を提供する、電極構成)が、識別されている。互いに組み合わせられた電極の桁間間隙379、桁幅377、およびピッチ375は、それぞれ、インク幅346の半分(例えば、25ミクロン)、インク幅346の半分(例えば、25ミクロン)、およびインク幅(例えば、50ミクロン)に等しくてもよい。
【0066】
図3Dにおける背面電極層314は、ディスプレイ媒体316全体の下にある、単一の対の互いに組み合わせられた電極を含むが、これは、必須ではなく、背面電極層314の電極は、電極を好適な電位に設定することがディスプレイ媒体316のカプセルを消去するために好適なフリンジ電場を発生させるように、任意の好適なパターンで構成されてもよい。背面電極層314の電極は、互いに組み合わせられなくてもよい。電極は、電極への好適な電位の印加が、ディスプレイ媒体316を消去し、パターンをディスプレイ媒体316上に形成させるように構成されてもよい(例えば、罫線付きの紙のシート上の線が判読可能な筆記を促進する様式に類似する、ディスプレイ媒体上での判読可能な筆記を促進するための線のパターン)。
【0067】
背面電極層は、ディスプレイ媒体316の対応する領域の消去を制御するように構成される、2つまたはそれを上回る電極のセットを含んでもよい。領域別消去動作では、消去電圧が、1つの電極のセットに印加され、ディスプレイ媒体316の対応する領域を消去してもよい一方、領域間消去動作では、消去電圧が、2つまたはそれを上回る電極のセットに印加され、ディスプレイ媒体316の対応する領域を消去してもよく、大域的消去動作では、消去電圧が、電極の全セットに印加され、ディスプレイ媒体316の全領域を消去してもよい。これらの動作は、ディスプレイコントローラを通してユーザによって制御されてもよい。
【0068】
図4Aおよび4Bは、それぞれ、相互から絶縁される2つまたはそれを上回る電極26を含む、描画具20bの概略断面および下面平面図である。1つまたはそれを上回る電圧が、電極26の全部または一部に印加され、描画具によってディスプレイデバイス上に描画される線の幅および/または形状を制御してもよい。例えば、電磁場が電極26aのみを通して印加されると、細い線が、描画表面上に描画されてもよい。しかしながら、電磁場が電極26aおよび26bの両方を通して印加されると、より太い線が、描画されてもよく、さらに太い線が、電磁場が3つの電極26a、26b、および26cを通して印加されると、描画されてもよい。描画される線の幅は、ディスプレイ媒体を横断して印加された電圧を変動させること以外によって制御されてもよい。例えば、印加される電圧のデューティサイクルもしくは大きさおよび/または持続時間が、変動されることができる。
【0069】
描画具20bは、電極26の電位を制御することによって、描画具20bの動作を制御し得る、道具コントローラ(例えば、制御回路)27を含んでもよい。コントローラ27は、前述のように、電荷発生機構(図示せず)によって電極への電荷の印加を制御することによって、電極26の電位を制御してもよい。コントローラ27は、任意の好適な処理デバイス(例えば、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路等)を使用してもよい。
【0070】
コントローラ27は、第1の光学状態(例えば、第1の色)または第2の光学状態(例えば、第2の色)で描画するように描画具20bを選択的に構成してもよい。コントローラは、電極26を描画システムの背面電極層に対して負電位に設定することによって第1の光学状態で描画し、電極26を描画システムの背面電極層に対して正電位に設定することによって第2の光学状態で描画するように描画具20bを構成してもよい。ユーザは、任意の好適な技法を使用して(例えば、道具コントローラに通信可能に結合されるボタンを押下する、道具コントローラに通信可能に結合されるスイッチ25をアクティブ化する、音声コマンドを発する、ソフトウェアベースのユーザインターフェースを動作させる等)、入力を道具コントローラに提供することによって描画具の動作を制御してもよい。
【0071】
図5Aは、ディスプレイユニット510がモバイル描画具520によって印加されたフリンジ電場によって消去され得る、第1の状態における描画システム500を通した断面である。描画システム500は、多くの点において描画システム300に類似し得る。例えば、描画システム500は、ディスプレイデバイス510と、モバイル描画具520とを含んでもよい。ディスプレイデバイス510は、背面電極層514と、保護層518と、背面電極層と保護層との間に配置されるディスプレイ媒体516とを含んでもよい。ディスプレイ媒体516は、複数のカプセル542を含み得る、電気泳動ディスプレイ媒体を備えてもよい。保護層518の1つの表面は、描画表面541としての役割を果たしてもよい。ディスプレイデバイス510は、背面電極層514の電位を制御し得る(例えば、電荷発生機構によって背面電極層514への電荷の印加を制御することによって)、ディスプレイコントローラ(例えば、制御回路)(図示せず)を含んでもよい。
【0072】
しかしながら、描画システム500は、いくつかの点において描画システム300と異なる。背面電極層514は、ディスプレイ媒体516の下にある単一電極(例えば、プレート電極)を備えてもよい。しかしながら、これは、必須ではなく、背面電極層514は、任意の好適な数および/または構成の電極を備えてもよい。ディスプレイコントローラは、背面電極層514の電極を一定電位(例えば、電気接地)に設定するように構成されてもよい。ディスプレイ媒体516は、2つまたはそれを上回る電極562と、電極562の電位を制御することによって道具520の動作を制御するように構成される、道具コントローラ(例えば、制御回路)(図示せず)とを含み得る、モバイル描画具520によって、外部からアドレス指定されてもよい。コントローラは、2つもしくはそれを上回る光学状態(例えば、色)のうちの1つで描画する、またはディスプレイ媒体516の一部を消去するように描画具520を選択的に構成してもよい。
【0073】
電極562の電位552が、背面電極層514の電位と異なるとき、電場が、描画具520と背面電極層514との間に配置される1つまたはそれを上回るカプセル542に印加され、それによって、1つまたはそれを上回るカプセルを対応する光学状態に駆動するであろう。したがって、コントローラは、1つまたはそれを上回る電極562を背面電極層514に対して正電位に設定し、残りの電極562が電気的に浮動状態または背面電極層514と同一電位に設定されることによって、第1の光学状態(例えば、色)で描画するように描画具520を制御してもよい。代替として、コントローラは、1つまたはそれを上回る電極562を背面電極層514に対して負電位に設定し、任意の残りの電極562が電気的に浮動状態または背面電極層514と同一電位に設定されることによって、第2の光学状態(例えば、色)で描画するように道具520を制御してもよい。
【0074】
図5Aは、ディスプレイ媒体516上で描画するために使用される道具520と、接地された背面電極層514と、背面電極層の電位に対して正電位に設定される電極562とともに、「描画モード」で動作する描画システム500を示す。したがって、道具520によってアドレス指定されるカプセルは、グレー状態から白色状態に駆動される。
【0075】
図5Aに示される光学状態および電位は、限定ではない。前述のように、道具520がディスプレイ媒体を駆動する光学状態は、道具520と背面電極層514との間の電圧と、カプセル542の内容物(例えば、電気泳動粒子および懸濁流体の光学特性ならびに相対的量)とに依存する。背面電極層514は、描画モードでは、限定ではないが、電気接地を含む、任意の好適な電位に設定されてもよく、1つまたはそれを上回る電極562が、描画モードでは、限定ではないが、背面電極層514の電位を上回る第1の電位または背面電極層514の電位未満の第2の電位を含む、任意の好適な電位に設定されてもよく、第1および第2の電位は、それぞれ、ディスプレイ媒体516の第1および第2の光学状態に対応する。
【0076】
図5Bは、消去モードで動作する描画システム500を通した断面を示す。消去モードでは、1つまたはそれを上回る電圧(「消去電圧」)が、道具520の隣接する電極間に確立され、それによって、電場と関連付けられたフリンジ電場が描画具の先端に隣接するカプセル542に透過し、それらのカプセルをグレー状態に駆動し(例えば、カプセルの内容物を旋回させることによって)、それによって、描画具の先端に対して局所的な面積内のカプセルを消去するように、これらの電場を電極間に形成させてもよい。ディスプレイ媒体516を消去するために好適な描画具の電極の「消去電圧」および構成は、以下に説明される。
【0077】
道具520の先端に隣接するディスプレイ媒体516の一部は、道具520の電極を横断して「消去電圧」を確立することによって消去されてもよい。消去電圧を確立するために電極に印加される電位は、同一極性、または図5Bに示されるように、反対極性を有してもよい。消去電圧の大きさは、典型的には、10〜240ボルト、好ましくは、10〜120ボルトであってもよい。消去電圧は、AC電圧であってもよく、1〜1000Hz(例えば、10〜100Hzまたは10〜60Hz)の周波数を有してもよい。代替として、消去電圧は、DC電圧であってもよい。描画具の先端に隣接するディスプレイ媒体の部分の好適な消去は、比較的に短い時間期間(例えば、1秒)にわたって消去電圧を描画具の電極に印加することによって達成され得る。
【0078】
好適な電極構成に関して、描画システム300の背面電極層314内で電極に適用される同一考慮点はまた、描画具520の電極562にも適用可能である。描画具の先端内の隣接する電極562間の間隙579、電極562の幅577、および電極562のピッチ575は、少なくとも部分的に、カプセル542の幅(「インク幅」)および厚さ(「インク厚さ」)に基づいて判定されてもよい。電極間間隙579、電極幅577、および電極ピッチ575は、それぞれ、例えば、インク幅の半分(例えば、25ミクロン)、インク幅の半分(例えば、25ミクロン)、およびインク幅(例えば、50ミクロン)に等しくてもよい。道具520の電極は、電極をディスプレイ媒体516のカプセルを消去するために好適なフリンジ電場を発生させるために好適な電位に設定するように、任意の好適なパターンで構成されてもよい。電極562は、図4Aおよび4Bに示されるように、同心円形で配列されてもよい。
【0079】
道具コントローラは、道具520を制御し、消去電圧を道具の電極の2つまたはそれを上回るものの間に確立することによって、道具の先端に隣接する1つまたはそれを上回るカプセルを消去してもよい。道具520内の任意の残りの電極562は、電気的に浮動状態または背面電極層514と同一電位に設定されてもよい。
【0080】
図5Bでは、背面電極層514は、接地され、消去電圧は、道具520の電極562aと562bとの間に確立される。描画具の電極間の電圧は、電場を電極間に形成させ、フリンジ電場は、カプセル542b−dを透過し、それによって、カプセル542b−dを消去する。図5Bに示される光学状態および電位は、非限定である。
【0081】
描画システム300および描画システム500の側面は、組み合わせられてもよい。例えば、描画システムは、ディスプレイ媒体の領域別、領域間、および/または大域的消去を行うように構成可能な2つまたはそれを上回る電極を伴う、背面電極層314と、ディスプレイ媒体上で描画し、および/またはディスプレイ媒体の局所的消去を行うように構成される、描画具520とを含んでもよい。
【0082】
本発明は、カラー描画システム(例えば、3つもしくはそれを上回る色で描画するための描画システム、および/または黒色、白色、もしくは灰色以外の少なくとも1つの色で描画するための描画システム)に適用されることができる。そのようなカラー描画システムは、カラーディスプレイ媒体の領域別、領域間、および/または大域的消去を行うように構成可能な2つもしくはそれを上回る電極を伴う背面電極層を有する、カラーディスプレイユニットを含んでもよい。大域的消去(または領域別もしくは領域間消去)は、色を選択し、ディスプレイユニット上で描画することに先立って、カラーディスプレイユニット(またはその一部)を中間光学状態にリセットするために行われてもよい。カラー描画システムは、ディスプレイ媒体上で描画する(例えば、3つもしくはそれを上回る色、および/または黒色、白色、もしくは灰色以外の少なくとも1つの色で)、および/またはディスプレイ媒体の局所的消去を行うように構成可能な描画具を含んでもよい。カラーディスプレイのために好適な描画具は、電磁場を使用して、異なる電気電荷および/または異なる磁気特性を有し得る、異なる色の粒子を制御してもよい。
【0083】
図6Aは、カラー描画システム(概して、600として指定される)を通した断面である。カラー描画システムの電気泳動ディスプレイ媒体のカプセルは、3つまたはそれを上回る異なるタイプの顔料粒子を含有してもよい。図6Aでは、各カプセルは、1、2、および3として指定される、3つの異なるタイプの顔料粒子を含む。異なるタイプの顔料粒子は、光学的に相互に異なってもよい。例えば、粒子は、反射または透過性であってもよく、白色、黒色、または有色であってもよい。全3つの顔料タイプは、散乱してもよい。これらの異なるタイプの顔料粒子はまた、異なる電気泳動応答を有してもよい。例えば、粒子は、異なるタイプの粒子が電磁場に異なるように応答するように、正に荷電される、負に荷電される、荷電されない、および/または磁性であってもよい。粒子1、2、および3は、透過性顔料粒子であってもよく、粒子1および2は、反対に荷電されてもよく、粒子3は、荷電されず、強磁性または超常磁性であってもよい。例えば、顔料粒子1は、白色であって、負に荷電されてもよく、顔料粒子2は、赤色であって、正に荷電されてもよく、顔料粒子3は、シアン色であって、強磁性または超常磁性であってもよい。
【0084】
図6Aでは、カラー描画システム600のディスプレイユニットは、消去モードで動作しており、ディスプレイユニットのカプセル内の顔料粒子は、中間光学状態にある。カラー描画システム600のカプセルを通したフリンジ電場の印加は、カプセルの顔料粒子の旋回をもたらし得る。電気的に荷電された粒子は、電場の印加に応答して旋回を開始し得、電気的に荷電された粒子の移動によって生成される流体運動は、任意の荷電されない顔料粒子(例えば、荷電されない磁気顔料粒子)を効果的に旋回させ得る。
【0085】
描画具は、電場、磁場、および/または電磁場をカラーディスプレイユニットに選択的に印加してもよい。前述のように、ユーザは、任意の好適な技法を使用して入力を描画具の道具コントローラに提供することによって、描画具の動作モードを制御してもよい。
【0086】
図6B−6Dは、3つの光学状態で動作するカラー描画システム600の断面図を示す。図6Bでは、ディスプレイユニットは、描画モードで動作しており、描画具は、磁場を以前に消去された状態であったディスプレイユニットのカプセル上に付与しており、それによって、磁気顔料粒子3をカプセルの正面表面(図示されるような上側表面)に持って来る。図6Cでは、ディスプレイユニットは、描画モードで動作しており、描画具は、正電圧を以前に消去された状態であったディスプレイユニットのカプセルを横断して生成しており、それによって、負に荷電された顔料粒子1をカプセルの正面表面に持って来る。図6Dでは、ディスプレイユニットは、描画モードで動作しており、描画具は、負電圧を以前に消去された状態であったディスプレイユニットのカプセルを横断して生成しており、それによって、正に荷電された顔料粒子2をカプセルの正面表面に持って来る。
【0087】
図6A−6Dに示される光学状態によって産生される色は、表1に示される。
【0088】
【表1】
【0089】
別の類似ディスプレイでは、粒子タイプ1は、負電気電荷を伴う透過性マゼンタ色であってもよく、粒子タイプ2は、正電気電荷を伴う透過性黄色であってもよく、粒子タイプ3は、透過性シアン色および磁性であってもよい。流体は、ディスプレイユニットのカプセルの視認表面近傍の顔料粒子のみがユーザに可視となるように、十分な中立(例えば、荷電されていない、非磁性)白色粒子を含んでもよい。そのような粒子を伴うカプセルを有するカラーディスプレイは、表2に示されるようにアドレス指定され、表2に列挙される色を産生してもよい。
【0090】
【表2】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D