(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571294
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
B60M 3/06 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
B60M3/06 E
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-544212(P2018-544212)
(86)(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公表番号】特表2019-509209(P2019-509209A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】CN2017075368
(87)【国際公開番号】WO2017148397
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年8月20日
(31)【優先権主張番号】201610121099.X
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515063024
【氏名又は名称】南京南瑞▲継▼保▲電気▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NR ELECTRIC CO., LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】515063046
【氏名又は名称】南京南瑞▲継▼保工程技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NR ENGINEERING CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】楊 浩
(72)【発明者】
【氏名】王 宇
(72)【発明者】
【氏名】謝 曄源
(72)【発明者】
【氏名】劉 洪徳
(72)【発明者】
【氏名】李 長偉
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105034854(CN,A)
【文献】
特開2009−248615(JP,A)
【文献】
特開2010−215048(JP,A)
【文献】
特開2004−358984(JP,A)
【文献】
特表2011−517267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−58/40
B60M1/00−7/00
H02G7/00−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台の回生電力フィードバック設備を含み、回生電力フィードバック設備の直流側陽極は地下鉄トラクションネットワークの陽極バスバーに接続されており、陽極バスバーは第1切り替えスイッチ、第2切り替えスイッチを介して上り接触ネットワーク、下り接触ネットワークにそれぞれ接続されている、融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステムであって、
前記回生電力フィードバック設備の直流側陰極は第3切り替えスイッチを介して下り接触ネットワークまたは上り接触ネットワークに接続されており、直流側陰極は第4切り替えスイッチを介して地下鉄トラクションネットワークの陰極バスバーに接続されており、
前記回生電力フィードバック設備が融氷状態で運転する場合、2台の回生電力フィードバック設備と上り接触ネットワークおよび下り接触ネットワークとの間で電流が流れるように直流側の電気回路が構成されており、1台の回生電力フィードバック設備の直流電圧は他の1台の回生電力フィードバック設備の直流電圧より大きくなるように制御されている、
ことを特徴とする融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステム。
【請求項2】
前記回生電力フィードバック設備はパワー半導体デバイスで構成された整流器を含み、双方向有効電力が流れる機能を備えており、すなわち、有効電力が交流電力ネットワークから地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーへ流れることを制御することができるだけでなく、有効電力が地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーから交流電力ネットワークへ流れることを制御することもできる、ことを特徴とする請求項1に記載の融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステム。
【請求項3】
前記第3切り替えスイッチおよび第4切り替えスイッチが同時に閉することは許可されていない、ことを特徴とする請求項1または2に記載の融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステムの制御方法であって、
回生電力フィードバック設備がエネルギーフィードバック状態で運転する場合、前記制御方法は、
第3切り替えスイッチを開するステップ1と、
第4切り替えスイッチを閉するステップ2と、
機関車が制動する際に、前記回生電力フィードバック設備を起動して、有効電力が地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーから交流電力ネットワークへ流れるように制御するステップ3と、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステムの制御方法であって、
回生電力フィードバック設備が融氷状態で運転する場合、前記制御方法は、
1)第3切り替えスイッチが上り接触ネットワークに接続されている場合、
ステップ101において、第1切り替えスイッチ、第4切り替えスイッチを開し、
ステップ102において、第2切り替えスイッチ、第3切り替えスイッチを閉し、
ステップ103において、1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、直流電圧が安定するように制御し、
ステップ104において、他の1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、接触ネットワークを流れる電流が安定するように制御し、
2)第3切り替えスイッチが下り接触ネットワークに接続されている場合、
ステップ201において、第2切り替えスイッチ、第4切り替えスイッチを開し、
ステップ202において、第1切り替えスイッチ、第3切り替えスイッチを閉し、
ステップ203において、1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、トラクションネットワークの直流電圧が安定するように制御し、
ステップ204において、他の1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、接触ネットワークを流れる電流が安定するように制御する、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステムおよび制御方法に関し、鉄道交通に用いられるハイパワー電力電子技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
機関車回生電力フィードバックシステムは、鉄道交通における回生電力の吸収およびフィードバックの場合に用いられ、回生電力を電力ネットワークにフィードバックする。
【0003】
回生電力フィードバック設備の原理は、以下のように簡単に説明することができる。車両が制動状態に入り、機関車の運動エネルギーが電気エネルギーに変換され、直流電力ネットワークへ電気エネルギーが入力される場合、直流電力ネットワークの電圧が上昇する。回生電力フィードバック設備の制御システムは、直流電力ネットワークの電圧をリアルタイムに検出し、直流電力ネットワークの電圧が上昇してある所定値に達した際に、インバータが起動し、インバータは動作し始め、余剰の電気エネルギーを交流電力ネットワークにフィードバックする。
【0004】
冬季は、気温、空気湿度および風速の共同作用のため、液体の水から氷を形成する着氷現象が存在する。従って、着氷は特定の気象条件で生じた凍結現象であり、架線に大面積の着氷が形成する場合、タワーポールの倒れ、ワイヤの着氷による揺れまたは破断が発生し、架線の正常且つ安全な運転に直接影響を与える。電化鉄道にとって、接触ネットワークが着氷されるため、電流が正常にパンタグラフを流れることができなくなり、ひいてはパンタグラフの破損または破断が発生し、列車が安全且つ定刻通りに運転することに深刻な影響を与える。現在、既存の融氷方法はいずれも余分の融氷設備を追加しなければならず、余分の投資を追加させ、設備の敷地スペースを増加させ、システムの複雑度も増加させる。
【0005】
本発明では、機関車回生電力フィードバックシステムを利用して融氷機能を実現することができ、追加投資する必要がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電化鉄道における接触ネットワーク(Contact network、オーバーヘッドラインともいう)の融氷問題を解決するために鑑みてなされたものであり、機関車電力フィードバックシステムと融氷を兼備する解決手段を提供することを目的とし、追加投資することなく、ステーション内に取り付けられた機関車回生電力フィードバックシステムをトラクションすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的な解決手段は以下のとおりである。
融氷機能を兼備する機関車回生電力フィードバックシステムであって、2台の回生電力フィードバック設備を含み、回生電力フィードバック設備の直流側陽極は地下鉄トラクションネットワークの陽極バスバーに接続されており、陽極バスバーは第1切り替えスイッチ、第2切り替えスイッチを介して上り接触ネットワーク(Uplink contact network)、下り接触ネットワーク(Downlink contact network)にそれぞれ接続されており、回生電力フィードバック設備の直流側陰極は第3切り替えスイッチを介して下り接触ネットワークまたは上り接触ネットワークに接続されており、直流側陰極は第4切り替えスイッチを介して地下鉄トラクションネットワークの陰極バスバーに接続されている。
【0008】
前記回生電力フィードバック設備はパワー半導体デバイスで構成された整流器を含み、双方向有効電力が流れる機能を備えており、すなわち、有効電力が交流電力ネットワークから地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーへ流れることを制御することができるだけでなく、有効電力が地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーから交流電力ネットワークへ流れることを制御することもできる。
【0009】
前記第3切り替えスイッチおよび第4切り替えスイッチが同時に閉することは許可されていない。
【0010】
本発明は、前記機関車回生電力フィードバックシステムの制御方法をさらに含み、前記回生電力フィードバック設備がエネルギーフィードバック状態で運転する場合、前記制御方法は以下のとおりである。
ステップ1において、第3切り替えスイッチを開し、
ステップ2において、第4切り替えスイッチを閉し、
ステップ3において、機関車が制動する際に、前記整流器が起動し、有効電力が地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーから交流電力ネットワークへ流れるように制御する。
【0011】
前記回生電力フィードバック設備が融氷状態で運転する場合、前記制御方法は以下のとおりである。
第3切り替えスイッチが上り接触ネットワークに接続されている場合、
ステップ1において、第1切り替えスイッチ、第4切り替えスイッチを開し、
ステップ2において、第2切り替えスイッチ、第3切り替えスイッチを閉し、
ステップ3において、1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、直流電圧が安定するように制御し、
ステップ4において、他の1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動し、直流電圧を調節することによって接触ネットワークを流れる電流が安定するように制御し、
第3切り替えスイッチが下り接触ネットワークに接続されている場合、
ステップ1において、第2切り替えスイッチ、第4切り替えスイッチを開し、
ステップ2において、第1切り替えスイッチ、第3切り替えスイッチを閉し、
ステップ3において、1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、トラクションネットワークの直流電圧が安定するように制御し、
ステップ4において、他の1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動し、直流電圧を調節することによって接触ネットワークを流れる電流が安定するように制御する。
【発明の効果】
【0012】
1、本発明は、トラクションステーション内における機関車電力フィードバックシステムを利用し、スイッチの切り替えおよび制御方法の調整によって融氷機能を実現することができ、余分の設備を追加する必要ながない。通常、機関車回生電力フィードバックシステムは、昼間の地下鉄運行時間帯に運転され、夜間は接触ネットワークで運行する車両がないため、機関車電力フィードバックシステムを融氷状態に切り替え、接触ネットワークの電流を制御することにより融氷機能を実現することができ、設備の利用率がさらに高い。
【0013】
2、本発明の技術解決手段に係る2台の回生電力フィードバック設備の直流バスバーの電圧は、いずれも一定の範囲内において調節することができ、融氷過程において、電流は制御可能であり、短絡点を設置する必要がなく、動作過程は安全且つ確実である。該技術解決手段はマッチングする抵抗を増加させることによって電流を調節する必要がなく、生じた熱は完全に回線の融氷に用いられ、設備の動作効率が高い。
【0014】
3、本発明の技術解決手段は2つのステーションの間の接触ネットワーク回線全体の融氷を実現することができるため、単一ステーションの融氷方式に比べて、融氷の範囲がさらに大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るシステム全体の構成原理を説明するための図である。
【
図2】回生電力フィードバック設備のトポロジ図である。
【
図3】本発明の技術解決手段の融氷状態で動作する際の直流側の電流回路図である。
【
図4】本発明の技術解決手段の回生電力フィードバック状態で動作する際の電流回路図である。
【
図5】本発明の技術解決手段の融氷状態での等価原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に合わせて本発明についてさらに説明する。
図1に示すように、本実施例では2台の回生電力フィードバック設備1を含み、回生電力フィードバック設備および設備に接続されたスイッチを合計2セット含み、2セットのシステムの構成が同じであり、含まれた2セットの回生電力フィードバック設備の原理図は
図1に示す通りである。隣接する2つのステーションの間は接触ネットワーク(Contact network)により接続されている。各セットの回生電力フィードバック設備の直流側陽極は地下鉄トラクションネットワークの陽極バスバーに接続され、陽極バスバーは第1切り替えスイッチ4、第2切り替えスイッチ5を介して上り接触ネットワーク、下り接触ネットワークにそれぞれ接続されている。
【0017】
本実施例において、回生電力フィードバック設備の直流側陰極は第3切り替えスイッチ2を介して下り接触ネットワークに接続され、直流側陰極は第4切り替えスイッチ3を介して地下鉄トラクションネットワークの陰極バスバーに接続されている。
【0018】
ここで、回生電力フィードバック設備1はパワー半導体デバイスで構成された整流器を含み、双方向有効電力が流れる機能を備え、すなわち、有効電力が交流電力ネットワークから地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーへ流れることを制御することができるだけでなく、有効電力が地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーから交流電力ネットワークへ流れることを制御することもできる。整流器のトポロジ構造は
図2に示す通りであり、本実施例においては、IGBTで構成された三相ブリッジ式整流回路であり、電力の双方向流れを実現することができる。
【0019】
ここで、第3切り替えスイッチ2および第4切り替えスイッチ3にはインターロックが設置され、同時に閉することは許可されていない。
【0020】
本実施例の制御方法は以下のとおりである。
上記回生電力フィードバック設備がエネルギーフィードバック状態で運転する場合、制御方法は、以下の通りである。
ステップ1において、第3切り替えスイッチを開し、
ステップ2において、第4切り替えスイッチを閉し、
ステップ3において、機関車が制動する際に、三相ブリッジ整流器が起動し、有効電力が地下鉄トラクションネットワークの直流バスバーから交流電力ネットワークへ流れるように制御する。電流回路図は
図4に示す通りである。
【0021】
上記回生電力フィードバック設備が融氷状態で運転する場合、制御方法は以下のとおりである。
本実施例の第3切り替えスイッチが下り接触ネットワークに接続されている場合、ステップは、以下の通りである。
ステップ1において、第2切り替えスイッチ、第4切り替えスイッチを開し、
ステップ2において、第1切り替えスイッチ、第3切り替えスイッチを閉し、
ステップ3において、1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動して、トラクションネットワークの直流電圧が安定するように制御し、
ステップ4において、他の1台の回生電力フィードバック設備の整流器を起動し、直流電圧を調節することによって接触ネットワークを流れる電流が安定するように制御する。電流回路図は
図3に示す通りである。
【0022】
融氷状態での等価原理図は
図5に示す通りであり、
図5を参照しながら、融氷電流を制御する具体的な方法を説明する。図において、回生電力フィードバック設備1は直流電圧をUdc1=1800Vに調節し、接触ネットワークの抵抗をRL1=RL2=0.2Ωに想定する場合、接触ネットワークの総抵抗は0.4Ωであり、必要な融氷電流の制御目標が800Aである場合、接触ネットワークの抵抗における電圧降下は320Vであり、この場合、回生電力フィードバック設備2の直流電圧を制御すれば実現することができ、Udc2=1800V−320V=1480Vである。この場合、回生電力フィードバック設備1のコンデンサは放電状態にあり、コンデンサは一定の1800Vに維持され、回生電力フィードバック設備1により交流電力ネットワークからP1のパワーを取得しなければならず、回生電力フィードバック設備2のコンデンサは充電状態にあり、コンデンサ電圧を安定するように維持するためには、余剰なパワーP2を電力ネットワークに戻さなければならず、P1−P2のエネルギー差は、接触ネットワークの抵抗に消耗され、熱エネルギーの方式により融氷を実現する。
【0023】
上記実施例は本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではなく、上記実施例を参照して行われた様々な形態の修正や変更は、いずれも本発明の保護範囲内である。
【符号の説明】
【0024】
1 回生電力フィードバック設備、
2 第3切り替えスイッチ、
3 第4切り替えスイッチ、
4 第1切り替えスイッチ、
5 第2切り替えスイッチ。