(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶剤がアルキルエーテル、脂肪族炭化水素、脂肪族環式炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選択されるものであり、かつ沸点が130℃以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を基材上に塗布し、表面乾燥性を有する膜を形成し、その後、熱処理、加湿処理、光照射、UVオゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、電子線処理、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる処理を施すことを特徴とするシリカ質膜の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
組成物
本発明による組成物は、特定のアミン化合物と、ポリシラザンと、溶媒とを含んでなるものである。以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0013】
(A)アミン化合物
本発明による組成物は、特定のアミン化合物を含んでなる。本発明において用いられる特定のアミン化合物は、以下の一般式(I):
【化2】
(式中、
R
Aは、それぞれ独立に、水素またはC
1〜C
10の、非置換のまたは置換された炭化水素基を示し、少なくとも1つのR
Aがフェニル置換されたC
1〜C
3の炭化水素基であり、
R
Bは、それぞれ独立に、水素、C
1〜C
10の炭化水素基、環状炭化水素基、または不飽和炭化水素基を示し、ここで二つのR
Bは同時に水素ではなく、
p1およびp2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、かつ
p3は1〜3の整数である)、
で示されるものである。
【0014】
一般式(I)において、R
Aとしては、例えば水素原子、メチル基、エチル基およびプロピル基等のC
1〜C
10の炭化水素基、シクロヘキシルおよびシクロペンチル等の環状炭化水素基、ならびにビニル基、アリル基およびプレニル基等の不飽和炭化水素基などが挙げられる。R
Aの少なくとも一つはフェニル置換されたC
1〜C
3の炭化水素基であることが好ましく、R
Aのうち一つまたは二つがベンジル基であることがより好ましい。ベンジル基ではない残りのR
Aは、水素または短鎖炭化水素基であることが好ましく、例えば水素またはメチル基である。
【0015】
一般式(I)において、R
Bとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基およびプロピル基等のC
1〜C
10の炭化水素基、シクロヘキシルおよびシクロペンチル等の環状炭化水素基、ならびにビニル基、アリル基およびプレニル基等の不飽和炭化水素基などが挙げられる。R
Bは、それぞれ独立に水素またはC
1〜C
3の炭化水素基であることが好ましい。一方がメチル基であり、もう一方が水素であることがより好ましい。
【0016】
このようなアミン化合物は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,2−ブタンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミンなどのジアミンの誘導体である。このようなアミン化合物のうち、特に好ましいものは、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジル−N−メチル−エチレンジアミン、N−ベンジル−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジル−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N−ベンジル−2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジベンジル−2−メチル−1,3−プロパンジアミンからなる群から選択されるものである。
【0017】
これらのアミン化合物は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明により特定されたアミン化合物の存在により本発明の効果が達成されるメカニズムは未だ明らかになっていないが、以下のように推測される。R
Aの1つがフェニル置換されたC
1〜C
3の炭化水素基であることにより、N原子に電子供与し、ポリシラザンのシリカ転化を促進する作用を有する一方で、フェニル基が立体障害となることで、シリカ転化をある程度のところで止め、その状態を維持する働きを有する。熱、プラズマ、光などエネルギーをさらに加える二次加工により緻密なシリカ質膜を形成させることができる。なお、本発明において、シリカ質膜とは、二酸化ケイ素単独からなる膜、または二酸化ケイ素を主成分とするものであるが、その他の窒化ケイ素などを含み得る膜を意味する。
同様に本発明においてシリカ質物質とは、二酸化ケイ素を主成分とし、窒化ケイ素などを含み得る物質を意味する。
【0019】
アミン化合物の配合量は、ポリシラザンの100質量部に対して、一般に50質量部以下、好ましくは40質量部以下とされる。特に、ケイ素にアルキル基などが結合していないペルヒドロポリシラザンを用いる場合には、電子的または立体的に有利に作用するため、アミン化合物の添加量が相対的に少なくても本発明の効果を得ることができる。具体的には、一般に1〜35質量部、好ましくは1〜32質量部とされる。アミン化合物の配合量は、その触媒作用や膜の緻密さを改善する効果を最大限得るために、一定量以上であることが好ましい一方で、組成物の相溶性を維持し、製膜したときの膜ムラを防ぐために一定量以下であることが好ましい。
【0020】
(B)ポリシラザン
本発明に用いられるポリシラザンは特に限定されず、本発明の効果を損なわない限り任意に選択することができる。これらは、無機化合物あるいは有機化合物のいずれのものであってもよい。また。直鎖状であって、分岐鎖状であってもよく、また一部に環状構造を有するものであってもよい。
【0021】
ポリシラザンの例として、例えば、主として一般式(IIa):
【化3】
(式中、R
C、R
DおよびR
Eは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、もしくはこれらの基以外でフルオロアルキル基等のケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。但し、R
C、R
DおよびR
Eの少なくとも1つは水素原子である。)で表される繰り返し単位を有する、数平均分子量が50〜50,000、好ましくは100〜50,000のポリシラザンまたはその変性物が挙げられる。
【0022】
例えば、上記一般式(IIa)でR
CおよびR
Dに水素原子、R
Eにメチル基を有するポリシラザンの製造方法は、非特許文献2に報告されている。この方法により得られるポリシラザンは、繰り返し単位が−(SiH
2NCH
3)−の鎖状ポリマーと環状ポリマーであり、いずれも架橋構造をもたない。
【0023】
また、上記一般式(IIa)でR
CおよびR
Dに水素原子、R
Eに有機基を有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの製造法は、非特許文献2、特許文献8に報告されている。
これら方法により得られるポリシラザンには、−(R
DSiHNH)−を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するものや(R
DSiHNH)
x〔(R
DSiH)
1.5N〕
1−X(0.4<X<1)の化学式で示される分子内に鎖状構造と環状構造を同時に有するものがある。
【0024】
さらに、上記一般式(IIa)でR
Cに水素原子、R
D、R
Eに有機基を有するポリシラザン、またR
CおよびR
Dに有機基、R
Eに水素原子を有するものは−(R
CR
DSiNR
E)−を繰り返し単位として、主に重合度が3〜5の環状構造を有しているものもある。
【0025】
【化4】
で表わされる架橋構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン(非特許文献3)、R
1SiX
3(X:ハロゲン)のアンモニア分解によって得られる架橋構造を有するポリシラザンR
1Si(NH)
x、あるいはR
1SiX
3およびR
22SiX
2の共アンモニア分解によって得られる、下記の構造を有するポリシラザン(特許文献9)が挙げられる。
【0027】
また、無機ポリシラザンとしては、例えば一般式(IIb):
【化6】
で示される構造の繰り返し単位を含むペルヒドロポリシラザンが挙げられる。具体的には、主として式(IIb)の繰り返し単位を含む直鎖状構造を包含し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH
3基を有し、化学分析による元素比率がSi:59〜61、N:31〜34およびH:6.5〜7.5の各質量%であるペルヒドロポリシラザン(特許文献7)、およびポリスチレン換算平均分子量が3,000〜20,000の範囲にあるペルヒドロポリシラザンが挙げられる。
【0028】
これらのペルヒドロポリシラザンは、特許文献7に記載された方法あるいは非特許文献1などに報告されている方法により製造することができ、基本的には分子内に鎖状部分と環状部分を含むもので、
【0029】
【化7】
の化学式で表すことができるものである。ペルヒドロポリシラザン構造の一例を示すと以下である。
【0031】
さらには、分子量を増加させたり、耐加水分解性を向上させたりした無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン(特許文献10〜15)、ポリシラザンに有機成分を導入した厚膜化に有利な共重合シラザン(特許文献16〜19)、などが挙げられる。これらのポリシラザンは2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
組成物に含まれるポリシラザンの含有率は限定されないが、十分な膜厚のシリカ質材料を形成させるために組成物の総質量を基準としたポリシラザンの含有率が0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%とすることがより好ましく、5〜20質量%とすることがさらに好ましい。通常、ポリシラザンの含有量を5〜20質量%とすることで、一般的に好ましい膜厚、例えば2000〜8000Å、を得ることができる。
【0033】
(C)溶媒
本発明による組成物は、前記のポリシラザンおよび前記アミン化合物を溶解し得る溶媒を含んでなる。このような溶媒としては、前記の各成分を溶解し得るものであれば特に限定されるものではないが、好ましい溶媒の具体例としては、次のものが挙げられる:
(a)芳香族化合物、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン等、(b)飽和炭化水素化合物、例えばn−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、i−デカン、n−ウンデカン、i−ウンデカン、n−ドデカン、i−ドデカン等、(c)脂環式炭化水素化合物、例えばエチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、デカヒドロナフタレン、ジペンテン、リモネン等、(d)エーテル類、例えばジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル(以下、MTBEという)、アニソール、ジベンチルエーテル、ジヘキシルエーテル等、および(e)ケトン類、例えばメチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)等。これらのうち、(b)飽和炭化水素化合物、(c)脂環式炭化水素化合物(d)エーテル類、および(e)ケトン類がより好ましい。
【0034】
これらの溶媒は、溶剤の蒸発速度の調整のため、人体への有害性を低くするため、または各成分の溶解性の調製のために、適宜2種以上混合したものも使用できる。
【0035】
このような溶媒として、市販の溶媒も用いることができる。例えば、C8以上の芳香族炭化水素を5質量%以上25質量%以下含有する脂肪族/脂環式炭化水素混合物として、ペガソールAN45(商品名:エクソンモービル社製)、芳香族炭化水素を含まない脂肪族/脂環式炭化水素混合物として、エクソールD40(商品名:エクソンモービル社製)、その他ペガソール3040、エクソールD80、ソルベッソ100、ソルベッソ150、アイソパーH、アイソパーL、(商品名:エクソンモービル社製)、ニューソルベントA、カクタスファインSF−01、カクタスファインSF−02(商品名:JXエネルギー株式会社製)、シェルゾールNC311、シェルゾールMC811、ソルエイトデラックス、ニューシェルブライトソル(商品名:シェルケミカルズジャパン株式会社製)などが市販されているが、これらを用いることもできる。なお、溶媒の混合物を用いる場合、人体への有害性を低減するという観点から、芳香族炭化水素の含有率は溶媒混合物の総質量に対して30質量%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において特定されたアミン化合物は溶解性が比較的高いため、溶媒選択の自由度が高いという特徴がある。このため、安全性の観点から、揮発性の低い溶剤を用いること好ましい。具体的には、前記した溶媒のうち、揮発性の低い次のものを用いることがより好ましい:
(b1)n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、またはi−デカン、
(c1)エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、またはジペンテン、
(d1)ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、またはMTBE、
(e1)MIBK。
さらに前記したエクソールD40(商品名:エクソンモービル社製)も好ましいもののひとつである。
【0037】
好ましい溶媒を選択するための一つの指標として、溶媒の蒸気圧を用いることができる。すなわち、揮発性との関係から、20℃における蒸気圧が、0.8kPa以下である溶媒が好ましく、0.65kPa以下である溶媒がより好ましく、0.5kPa以下である溶媒がさらに好ましい。このような蒸気圧の条件を満たすものとして、ジブチルエーテル(20℃における蒸気圧:0.48kPa)、ペガゾールAN45(20℃における蒸気圧:0.29kPa)、エクソールD40(20℃における蒸気圧:0.18kPa)、サートレックス60(20℃における蒸気圧:0.017kPa)、ソルベッソ150(20℃における蒸気圧:0.083kPa)(それぞれ商品名:エクソンモービル社製)などが挙げられる。これらは例えばキシレン(20℃における蒸気圧:0.87kPa)に比較して揮発性が低く、人体に対する有害性も低いものである。
【0038】
また、本発明においては、膜厚均一性の観点から、沸点が130℃以上の溶剤を1種類以上含むことが好ましい。沸点130℃以上の溶剤は、アルキルエーテル、脂肪族炭化水素、脂肪族環式炭化水素および芳香族炭化水素の群から選ばれるものが好ましい。この沸点130℃以上の溶剤の含有量は、組成物全体の質量に対して、25〜99質量部であることが好ましい。
【0039】
本発明による組成物は、前記した(A)〜(C)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(A)〜(C)以外の成分は、全体の質量に対して、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
【0040】
その他の添加剤
本発明による組成物は、必要に応じてその他の添加剤成分を含有することもできる。そのような成分として、例えば粘度調整剤、架橋促進剤等が挙げられる。
【0041】
シリカ質膜の製造法
本発明によるシリカ質膜の製造法は、前記した組成物を基材に塗布し、必要に応じて加熱などにより、シリカ質膜を形成させるものである。
【0042】
基材表面に対する組成物の塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、転写法、ロールコート、バーコート、刷毛塗り-、ドクターコート、フローコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基材を用いることができる。これらの基材には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0043】
基材表面に形成された組成物層を、必要に応じて130℃以下で加熱し、過剰の有機溶媒を除去したあと、空気中で、引き置きし、表面乾燥膜を形成する。この状態では、ポリシラザンの一部はシリカ質に転化せず、未反応のまま残っている。この表面乾燥膜は、表面乾燥性を有しており、基材表面上に固定されている。ここで、表面乾燥性を有するとは、表面に触れても痕跡が残らない程度に、固まっている状態のことをいう。また、固定されているとは、基材と一体性を保っており、基材から塗膜が容易に剥離しないことをいう。これにより、例えば、基材が柔軟性を有するもの、例えば樹脂材料であった場合、表面乾燥膜が形成された基材を巻き取った後、別の工程で加工するような場合にも、表面乾燥膜が基材の裏面に接触しても転写されず、巻き取られた基材を再度展開すれば問題なく使用できる。この表面乾燥膜の状態では、IRチャート上で、700〜4000cm
−1の全面積に対して、1050〜1150cm
−1の部分が占める面積の比率(以下、簡単のためSiO比率ということがある)が5%以上25%以下状態であると考えられる。表面乾燥膜の状態で、シリカ転化はほとんど進まないと考えられ、一週間程度室温で装置しても、SiO比率が、25%を超えることはない。
本発明においては、表面乾燥膜形成の際には、特に酸素を含む雰囲気下で焼成することを必要としない。
【0044】
表面乾燥膜の形成後、熱処理、加湿処理、光照射、UVオゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、電子線処理、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる処理による二次加工で、緻密なシリカ質膜を形成させることができる。このとき、水蒸気を含む雰囲気下で転化を行う場合には、体積を基準として0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましい。本発明においては、二次加工は、特に酸素と水蒸気とを含む混合ガス雰囲気下で焼成を行うことが好ましい。
【0045】
本発明による2次加工によるシリカ質膜形成において、アミン化合物の添加量を増加させることにより、膜中に含まれるシリカ質物質の量を増加させることもできる。このときの条件は、シリカ質物質の含有量が少ない表面乾燥膜形成時と同じ条件、つまり室温環境下である。
【0046】
シリカ質膜、およびシリカ質膜付き基材
本発明によるシリカ質膜およびシリカ質膜付き基材は、前記した組成物を用いて製造される。本発明による組成物を利用する限り、その製造条件などは特に限定されないが、例えば前記した方法により製造することができる。これらのシリカ質膜またはシリカ質膜付き基材は、電子材料の分野において層間絶縁膜、上面保護膜、光学特性調整膜、保護膜用プライマー等として用いられ、また電子材料以外の分野においても、金属、ガラス、またはプラスチック等の基材表面の保護膜、接着膜等としても有用である。
【0047】
本発明を例を用いて説明すると以下の通りである。
【0048】
合成例1[ペルヒドロポリシラザンの合成]
特許文献1に記載された方法に従い、以下の通りペルヒドロポリシラザンを合成した。
内容積1リットルの四つ口フラスコにガス吹き込み管、メカニカルスターラー、ジュワーコンデンサーを装着した。反応器内部を脱酸素した乾燥窒素で置換した後、四つ口フラスコに脱気した乾燥ピリジンを1500ml入れ、これを氷冷した。次に、ジクロロシラン100gを加えると、白色固体状のアダクト(SiH
2Cl
2・2C
5H
5N)が生成した。反応混合物を氷冷し、撹拌しながらアンモニア70gを吹き込んだ。引き続き、乾燥窒素を液層に30分間吹き込み、余剰のアンモニアを除去した。
【0049】
得られた生成物をブッフナーロートを用いて乾燥窒素雰囲気下で減圧濾過し、濾液1200mlを得た。エバポレーターを用いてピリジンを留去したところ、40gのペルヒドロポリシラザンを得た。得られたペルヒドロポリシラザンの数平均分子量をGPC(展開液:CDC1
3)により測定したところ、ポリスチレン換算で800あった。そのIR(赤外吸収)スペクトルを測定すると、波数(cm
−1)3350、および1200付近のN−Hに基づく吸収:2170のSi−Hに基づく吸収:1020〜820のSi−N−Siに基づく吸収を示すことが確認された。
【0050】
実施例101A〜106Bおよび比較例101A〜108B
容量100mlのガラス製ビーカーに、合成例1で得られたペルヒドロポリシラザン16gとジブチルエーテル64gを導入し、ポリシラザン溶液を調整した。次に、そのポリシラザン溶液に表1に示す通りのN,N’−ジベンジルエチレンジアミン0.29g(ペルヒドロポリシラザンに対して2.4wt%)をスターラーで攪拌しながら、添加して、実施例101Aの組成物を調製した。さらに、実施例101Aに対して、アミン化合物の種類、アミン化合物の添加量を変更して、表1に示された実施例101B〜106Bおよび比較例101A〜108Bの組成物を調製した。
【0052】
各組成物のうち、均一なものとして得られた組成物を、厚さ125μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムにスピンコーターを用い、塗布し(500rpm/5秒、次いで1,000rpm/20秒)、膜厚200nmの組成物層を得た。その際、塗布された組成物層を目視にて確認し、塗布欠陥が確認されなかった場合はa、確認された場合はbとして、塗布性評価を行った。その後、100℃3分間大気条件下でオーブンにてベークを行った。オーブンベークの後に、サンプル表面を指で触れ、触れた部位に接触痕が残らない場合はA、残る場合はBとして、表面乾燥性評価を行った。得られた結果は表2の通りであった。実施例においては、アミン化合物の添加量を増減させても、塗布性および表面乾燥性に優れた結果を示しているが、比較例においては、塗布性と表面乾燥性との両方が優れた結果となることはなかった。なお、アミン化合物を含まない組成物を用いた場合、表面乾燥性はBであり、塗膜は仮に数日間放置しても表面乾燥性を有さない。
【0053】
実施例101Cに対して、溶媒を、ジブチルエーテルから、キシレン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−ノナン、i−ノナン、n−デカン、i−デカン、n−ドデカン、i−ドデカン、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、p−メンタン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、キシレンとn−ノナンの混合溶媒、またはキシレンとドデカンの混合溶媒に変更したものについても、同様に塗布性、表面乾燥性の評価を行ったが、実施例と同様に塗布性および表面乾燥性に優れた結果が得られた。
【0054】
また、各組成物をオーブンベーク後から、室温環境下で放置し、1日後および7日後にそれぞれIRスペクトルを測定して組成物がシリカ質物質に転化した度合いを評価した。
転化により得られるシリカ質膜のIRスペクトルは、一般に1030cm
−1、および450cm
−1付近にあるSi−O結合に基づく吸収、1270cm
−1および780cm
−1付近にあるSi−C結合に基づく吸収、2970cm
−1付近にあるC−H結合に基づく吸収が認められ、転化前に存在している3350cm
−1および1200cm
−1付近にあるN−H結合に基づく吸収、および2200cm
−1にあるSi−H結合に基づく吸収が消失するので、これによりシリカ質膜に転化されたことが確認できる。シリカ質物質の含有量が少ない状態での典型的なIRスペクトルが
図1であり、シリカ質物質の含有量が多い状態での典型的なIRスペクトルを
図2に示す。なお、
図1の、SiO比率は11.3%あり、
図2の状態では、SiO比率は、46.9%である。
各実施例、比較例について、測定したIRスペクトルにおいて、SiO比率を計算した。得られた結果は表2に示す通りである。ここで、SiO比率が5%以上25%以下である場合はαとし、SiO比率が40%以上であるものをβとした。得られた結果は、表2の通りであった。表中、NAと記載しているのは、IRスペクトル測定時に乾燥が不十分であるために、IRスペクトルを測定できなかったものである。
【0055】
実施例において、1日後と7日後の両方のIRがαとなるものが存在する。これは、表面乾燥膜が生成し、その状態を保持していることを示している。一方で、アミン化合物の添加量を増加させると、1日後と7日後の両方のIRの結果がβとなるものが存在する。
これは、アミン化合物の添加量を増加させることにより、膜中に含まれるシリカ質物質の割合を増加させた膜が形成されていることを示す。
【0056】
αまたはβの状態を、二次加工によりシリカ質物質の含有量が高い状態にすることができる。表2の実施例101BのIRがαとなる表面乾燥膜に対して、相対湿度95%80℃の条件で、24時間、加湿および熱処理を行った。その後、IRスペクトルを測定し、SiO比率を測定すると、49.5%であった。これは、シリカ質物質へ転化が進んだβの状態である。つまり、αの状態になり(1段階転化)、それを維持し、加湿および熱処理によりβの状態になった(2段階転化)ことを示しているのである。また、SiO比率が49.2%のβの状態である膜に対して、加湿処理を行ったところ、SiO比率が58.9%である膜が形成された。つまり、βの状態にある膜が、二次加工によりさらにシリカ質物質の含有量が高い状態になったことを示しているのである。