(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクジェット光造形法に用いられ、かつ、モデル材を造形するために使用されるモデル材用組成物と、サポート材を造形するために使用されるサポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセットであって、
前記モデル材用組成物は、
ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上120℃以下のエチレン性不飽和単量体(C)と、
ホモポリマーのガラス転移温度が−65℃以上25℃未満のエチレン性不飽和単量体(D)と、
重量平均分子量が800以上10,000以下の2官能アクリレートオリゴマー(E)と、
アシルフォスフィンオキサイド化合物と、
を含有し、かつ、
2官能以上のアクリレート化合物の含有量が、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して15重量部以下であり、
2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量が、前記モデル材用組成物全体100重量部に対して1〜15重量部であり、
前記サポート材用組成物は、該サポート材用組成物全体100重量部に対して、
20〜50重量部の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)と、
20〜49重量部のオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)と、
35重量部以下の水溶性有機溶剤(c)と、
光重合開始剤(d)と、
を含有する、光造形用インクセット。
前記モデル材用組成物において、エチレン性不飽和単量体(C)が、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及び、ジシクロペンタニルアクリレートから選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の光造形用インクセット。
前記モデル材用組成物において、エチレン性不飽和単量体(D)が、フェノキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、及び、アクリル酸2−(N−ブチルカルバモイルオキシ)エチルから選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の光造形用インクセット。
前記サポート材用組成物において、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が、該サポート材用組成物全体100重量部に対して25〜45重量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の光造形用インクセット。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態ともいう)について詳しく説明する。本発明は、以下の内容に限定されるものではない。なお、以下の説明において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味するものである。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」についても同様である。
【0015】
1.モデル材用組成物
本発明の一実施形態において、本発明の光造形用インクセットを構成するモデル材用組成物は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)及び多官能エチレン性不飽和単量体(B)を含み、前記単官能エチレン性不飽和単量体(A)及び前記多官能エチレン性不飽和単量体(B)のうち少なくとも一方が、ヒドロキシル基又はアミノ基を有し、前記ヒドロキシル基及び前記アミノ基の合計モル分率が、前記単官能エチレン性不飽和単量体(A)及び前記多官能エチレン性不飽和単量体(B)の総量に対して5〜30%である。上記構成のモデル材用組成物により、ゴムのような伸び及び弾性を有する光造形品(モデル材)を形成することができる。
以下、前記モデル材用組成物を含む実施形態(以下、「本発明の実施形態(1)」ともいう)について説明する。
【0016】
<単官能エチレン性不飽和単量体(A)>
本発明の実施形態(1)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)を含有する。前記単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個有する重合性モノマー(単官能モノマー)である。前記エチレン性二重結合を1個有する重合性基としては、例えば、エチレン基((メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、スチレン基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基、ビニルアミド基等)、アセチレン基等が挙げられる。
【0017】
単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する単官能エチレン性不飽和単量体(A1)を含むことが好ましい。なお、前記ヒドロキシル基には、アルコール性ヒドロキシル基のほか、カルボキシル基等が含まれる。また、前記アミノ基には、通常のアミノ基のほか、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合等が含まれる。
【0018】
ヒドロキシル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体(以下、「ヒドロキシル基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1a)」ともいう)は、カルボキシル基としてヒドロキシル基を有するものであってもよく、または、ヒドロキシル基の他にカルボキシル基を有するものであってもよい。カルボキシル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体は、プロトンドナーとアクセプターとの両方を有する。そのため、ヒドロキシル基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1a)としてカルボキシル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体が高分子鎖に含まれている場合には、互いの相互作用が強くなることにより、前記高分子鎖同士を擬似架橋させることができる。
【0019】
ヒドロキシル基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1a)としては、具体的に、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、カプロラクトンアクリレート等のアルコール性ヒドロキシル基含有単官能エチレン性不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸等のカルボキシル基含有単官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
アミノ基を有する単官能エチレン性不飽和単量体(以下、「アミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)」ともいう)としては、下記一般式(i)で表されるいずれかの部分構造を有することが好ましい。つまり、アミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)は、アミド結合、ウレア結合又はウレタン結合を有することが好ましい。下記一般式(i)で表されるいずれかの部分構造を有するアミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)は、2つ以上の分極する部位が互いに近接している。そのため、かかる構造を有するアミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)が高分子鎖に含まれている場合には、互いの相互作用が強くなることにより、前記高分子鎖同士を擬似架橋させることができる。
【0022】
さらに、前記アミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)は、下記一般式(ii)で表されるいずれかの部分構造を有することがより好ましい。つまり、アミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)は、窒素原子に水素原子が結合しているアミド結合、窒素原子に水素原子が結合しているウレア結合、窒素原子に水素原子が結合しているウレタン結合を有することがより好ましい。下記一般式(ii)で表されるいずれかの部分構造を有する単官能エチレン性不飽和単量体は、プロトンドナーとアクセプターとの両方を有する。そのため、かかる構造を有するアミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)が高分子鎖に含まれている場合には、互いの相互作用が強くなることにより、前記高分子鎖同士を擬似架橋させることができる。
【0024】
アミノ基含有単官能エチレン性不飽和単量体(A1b)としては、具体的に、例えば、ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;アクリル酸2−(ブチルカルバモイルオキシ)エチル、下記式(iii)で表される化合物等のウレタンアクリレート;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、各種アミン変性アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ヒドロキシル基又はアミノ基を有する単官能エチレン性不飽和単量体(A1)の分子量は、モデル材用組成物の粘度を調整する(低下させる傾向にある)ことによりインクジェットヘッドからの吐出安定性を向上させる観点から、200〜1,000であることが好ましい。
【0027】
ヒドロキシル基又はアミノ基を有する単官能エチレン性不飽和単量体(A1)を光硬化させることにより得られる硬化物のガラス転移温度は、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材にゴムのような伸び及び弾性を与える観点から、0℃以下であることが好ましい。
【0028】
単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、モデル材用組成物に含まれる多官能エチレン性不飽和単量体(B)がヒドロキシル基又はアミノ基を有する場合には、ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない単官能エチレン性不飽和単量体(A2)であってもよい。また、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する単官能エチレン性不飽和単量体(A1)に加えて、ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない単官能エチレン性不飽和単量体(A2)を含んでいてもよい。前記単官能エチレン性不飽和単量体(A2)としては、例えば、(メタ)アクリル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体、ビニルエーテル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体、アリルエーテル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体、アセチレン基を有する単官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(メタ)アクリル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
ビニルエーテル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ブチルビニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、ブチルブテニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルエトキシビニルエーテル、アセチルエトキシエトキシビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アダマンチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
アリルエーテル基を有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、フェニルアリルエーテル、o−,m−,p−クレゾールモノアリルエーテル、ビフェニル−2−オールモノアリルエーテル、ビフェニル−4−オールモノアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、シクロヘキサンメタノールモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0032】
アセチレン基を有する単官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アセチレン等が挙げられる。
【0033】
単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、単官能(メタ)アクリレート(X)を含んでいてもよい。単官能(メタ)アクリレート(X)としては、例えば、一般式(iv)で表される単官能(メタ)アクリレート(以下、「単官能(メタ)アクリレート(X1)」ともいう)、一般式(v)で表される単官能(メタ)アクリレート(X2)等が挙げられる。前記単官能(メタ)アクリレート(X1)及び前記単官能(メタ)アクリレート(以下、「単官能(メタ)アクリレート(X2)」ともいう)は、上述した単官能エチレン性不飽和単量体(A1)であってもよいし、単官能エチレン性不飽和単量体(A2)であってもよい。
【0035】
一般式(iv)中、R
1は、H又はCH
3を表す。R
2は、炭素原子数6〜12のアリール基で置換されてもよい炭素原子数2〜22のアルキル基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基を表す。
【0037】
一般式(v)中、R
3は、H又はCH
3を表す。R
4は、脂環式炭化水素を有する1価の置換基、又は、炭素原子数6〜12のアリール基で置換されてもよい炭素原子数11〜22のアルキル基を表す。mは2〜4の整数を表す。nは1又は2の整数を表す。
【0038】
単官能(メタ)アクリレート(X1)としては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
単官能(メタ)アクリレート(X2)としては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
モデル材用組成物に含まれる単官能(メタ)アクリレート(X1)及び単官能(メタ)アクリレート(X2)の合計含有量は、単官能(メタ)アクリレート(X)全体100重量部に対して、65重量部以上であることが好ましく、80重量部以上であることがより好ましく、98重量部以下であることが好ましい。なお、単官能(メタ)アクリレート(X1)及び/又は(X2)が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各単官能(メタ)アクリレートの含有量の合計である。
【0041】
単官能(メタ)アクリレート(X)は、分子量が160以上400未満であり、かつ、該単官能(メタ)アクリレートを光硬化させることにより得られる硬化物のガラス転移温度(以下、Tgという)が−20℃以下である単官能(メタ)アクリレート(X’)を含むことが好ましい。本発明において、単官能エチレン性不飽和単量体(A)は、単官能(メタ)アクリレート(X’)を、単官能エチレン性不飽和単量体(A)全体100重量部に対して85重量部以上含有することが好ましい。なお、前記単官能(メタ)アクリレート(X’)は、上述した単官能エチレン性不飽和単量体(A1)であってもよいし、単官能エチレン性不飽和単量体(A2)であってもよい。
【0042】
単官能(メタ)アクリレート(X’)としては、例えば、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2-エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
<多官能エチレン性不飽和単量体(B)>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、多官能エチレン性不飽和単量体(B)を含有する。前記多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を2個以上有する重合性モノマー(多官能モノマー)である。
【0044】
多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、分子中に(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、スチレン基及び(メタ)アクリルアミド基から選択される1種以上の官能基を有することが好ましい。これらの中でも、光重合の感度が良好であることから、アクリル基、メタクリル基、ビニルエーテル基及びアリルエーテル基から選択される1種以上の官能基を有することがより好ましい。前記多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、前記官能基を2つ以上有することが好ましく、多官能エチレン性不飽和単量体(B)が有する官能基は、上記官能基から選択される官能基であることが好ましい。なお、1つの多官能エチレン性不飽和単量体(B)に含まれる複数の官能基は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0045】
アリルエーテル基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B)としては、例えば、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル等が挙げられる。スチレン基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B)としては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B)としては、例えば、N,N−エチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)がヒドロキシル基又はアミノ基を有する単官能エチレン性不飽和単量体を含まない場合には、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B1)を含む。なお、前記ヒドロキシル基には、アルコール性ヒドロキシル基のほか、カルボキシル基等が含まれる。また、前記アミノ基には、通常のアミノ基のほか、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合等が含まれる。
【0047】
ヒドロキシル基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(以下、「ヒドロキシル基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1a)」ともいう)は、カルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有する多官能モノマーは、プロトンドナーとアクセプターとの両方を有する。そのため、ヒドロキシル基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1a)としてカルボキシル基を有する多官能モノマーが高分子鎖に含まれている場合には、互いの相互作用が強くなることにより、高分子鎖同士を擬似架橋させることができる。
【0048】
ヒドロキシル基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1a)としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
アミノ基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(以下、「アミノ基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)」ともいう)は、下記一般式(i)で表されるいずれかの部分構造を有することが好ましい。つまり、多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)は、アミド結合、ウレア結合又はウレタン結合を有することが好ましい。下記一般式(i)で表されるいずれかの部分構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)は、2つ以上の分極する部位が互いに近接している。そのため、かかる構造を有するアミノ基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)が高分子鎖に含まれている場合には、互いの相互作用が強くなることにより、前記高分子鎖同士を擬似架橋させることができる。
【0051】
さらに、アミノ基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)は、下記一般式(ii)で表されるいずれかの部分構造を有することがより好ましい。つまり、多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)は、窒素原子に水素原子が結合しているアミド結合、窒素原子に水素原子が結合しているウレア結合、窒素原子に水素原子が結合しているウレタン結合を有することがより好ましい。下記一般式(ii)で表されるいずれかの部分構造を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)は、プロトンドナーとアクセプターとの両方を有する。そのため、かかる構造を有するアミノ基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)が高分子鎖に含まれている場合には、互いの相互作用が強くなることにより、前記高分子鎖同士を擬似架橋させることができる。
【0053】
アミノ基含有多官能エチレン性不飽和単量体(B1b)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(例えば、共栄社化学社製AH−600等)、ウレタンアクリレートオリゴマー(例えば、サートマー社製CN9002等)、下記式(vi)で表される化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
ヒドロキシル基又はアミノ基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B1)の分子量は、モデル材用組成物の粘度を調整する(高くする傾向にある)ことにより、インクジェットヘッドからの吐出安定性を向上させる観点から、200〜1,000であることが好ましい。
【0056】
ヒドロキシル基又はアミノ基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B1)を光硬化させることにより得られる硬化物のガラス転移温度は、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材にゴムのような伸び及び弾性を与える観点から、0℃以下であることが好ましい。
【0057】
多官能エチレン性不飽和単量体(B)は、モデル材用組成物に含まれる単官能エチレン性不飽和単量体(A)がヒドロキシル基又はアミノ基を有する場合には、ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない多官能エチレン性不飽和単量体(B2)であってもよい。また、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する多官能エチレン性不飽和単量体(B1)に加えて、ヒドロキシル基及びアミノ基を有さない多官能エチレン性不飽和単量体(B2)を含んでいてもよい。多官能エチレン性不飽和単量体(B2)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
多官能(メタ)アクリレート化合物のうち二官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
多官能(メタ)アクリレート化合物のうち三官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
多官能(メタ)アクリレート化合物は、変性物であってもよい。前記変性物としては、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物;カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0061】
多官能ビニルエーテル化合物のうち二官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、ブチレンジビニルエーテル、ジブチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ノルボルニルジメタノールジビニルエーテル、イソバイニルジビニルエーテル、ジビニルレゾルシン、ジビニルハイドロキノン等が挙げられる。
【0062】
多官能ビニルエーテル化合物のうち三官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、グリセリントリビニルエーテル、グリセリンエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数6)、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリビニルエーテルエチレンオキシド付加物トリビニルエーテル(エチレンオキシドの付加モル数3)等が挙げられる。
【0063】
多官能ビニルエーテル化合物のうち四官能以上のビニルエーテル化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンヘキサビニルエーテル、それらのオキシエチレン付加物等が挙げられる。
【0064】
本発明の実施形態(1)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)及び多官能エチレン性不飽和単量体(B)のうち少なくとも一方が、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する。好ましくは、単官能エチレン性不飽和単量体(A)及び多官能エチレン性不飽和単量体(B)のうち少なくとも一方は、アミド結合、ウレア結合及びウレタン結合から選択される1種以上を有する。
【0065】
本発明の実施形態(1)において、モデル材用組成物中のヒドロキシル基及び前記アミノ基の合計モル分率は、単官能エチレン性不飽和単量体(A)及び多官能エチレン性不飽和単量体(B)の総量に対して、5〜30%である。ヒドロキシル基及びアミノ基の合計モル分率が前記範囲内であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品がゴムのような伸び及び弾性を有する。
【0066】
本発明の実施形態(1)において、モデル材用組成物中の多官能エチレン性不飽和単量体(B)に対する単官能エチレン性不飽和単量体(A)のモル分率(単官能エチレン性不飽和単量体(A)/多官能エチレン性不飽和単量体(B))は、92/8〜99.9/0.1であることが好ましい。多官能エチレン性不飽和単量体(B)に対する単官能エチレン性不飽和単量体(A)のモル分率が前記範囲内であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の伸び及び弾性をより向上させることができる。
【0067】
本発明の実施形態(1)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、紫外線、近紫外線又は可視光領域の波長の光を照射するとラジカル反応を促進する化合物であれば、特に限定されない。
【0068】
光重合開始剤としては、例えば、炭素数14〜18のベンゾイン化合物〔例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等〕、炭素数8〜18のアセトフェノン化合物〔例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等〕、炭素数14〜19のアントラキノン化合物〔例えば、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等〕、炭素数13〜17のチオキサントン化合物〔例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等〕、炭素数16〜17のケタール化合物〔例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等〕、炭素数13〜21のベンゾフェノン化合物〔例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等〕、炭素数22〜28のアシルフォスフィンオキサイド化合物〔例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス−(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等〕、これらの化合物の混合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アシルフォスフィンオキサイド化合物が好ましく、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材の耐光性を向上させる観点から、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドがより好ましい。また、入手可能なアシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば、BASF社製のDAROCURE TPO等が挙げられる。
【0069】
本発明の実施形態(1)において、モデル材用組成物中の光重合開始剤の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.01重量部以上であることが好ましく、10重量部以下であることが好ましく、1.5重量部以下であることがより好ましい。なお、2種以上の光重合開始剤が含まれる場合、前記含有量は、光重合開始剤の合計含有量である。
【0070】
本発明の実施形態(1)において、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材は、伸び及び弾性を向上させる観点から、Tgが25℃未満であることが好ましい。前記モデル材のTgは、5℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましく、−25℃未満であることが特に好ましい。
【0071】
本発明の別の一実施形態において、本発明の光造形用インクセットを構成するモデル材用組成物は、ホモポリマーのガラス転移温度が25℃以上120℃以下のエチレン性不飽和単量体(C)と、ホモポリマーのガラス転移温度が−65℃以上25℃未満のエチレン性不飽和単量体(D)と、重量平均分子量が800以上10,000以下の2官能アクリレートオリゴマー(E)と、アシルフォスフィンオキサイド化合物とを含有し、かつ、2官能以上のアクリレート化合物の含有量が、モデル材用組成物全体100重量部に対して15重量部以下である。上記構成のモデル材用組成物により、柔らかく、かつ、引張強度に優れた光造形品(モデル材)を形成することができる。
以下、前記モデル材用組成物を含む実施形態(以下、「本発明の実施形態(2)」ともいう)について説明する。
【0072】
<エチレン性不飽和単量体(C)>
本発明の実施形態(2)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、エチレン性不飽和単量体(C)を含有する。前記エチレン性不飽和単量体(C)は、ホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgという)が25℃以上120℃以下である。エチレン性不飽和単量体(C)のTgが前記範囲であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。記エチレン性不飽和単量体(C)のホモポリマーのTgは、30℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、前記エチレン性不飽和単量体(C)のホモポリマーのTgは、100℃以下であることが好ましい。なお、Tgは、示差熱測定装置(マック・サイエンス社製、TG−DTA(2000S))によって測定することができる。また、エチレン性不飽和単量体(C)の分子量は、150〜600であることが好ましい。
【0073】
エチレン性不飽和単量体(C)は、アクリレート化合物であっても、メタクリレート化合物であってもよいが、アクリレート化合物であることが好ましい。また、前記エチレン性不飽和単量体(C)は、単官能エチレン性不飽和単量体であっても、多官能エチレン性不飽和単量体であってもよいが、単官能エチレン性不飽和単量体であることが好ましい。さらに、前記エチレン性不飽和単量体(C)は、炭化水素環構造を有するエチレン性不飽和単量体であることが好ましい。
【0074】
エチレン性不飽和単量体(C)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
これらの中でも、エチレン性不飽和単量体(C)は、イソボルニルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、及び、ジシクロペンタニルアクリレートから選択される1種以上であることが好ましく、イソボルニルアクリレート及び/又はt−ブチルシクロヘキシルアクリレートであることがより好ましい。これにより、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際に、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。
【0076】
本発明の実施形態(2)において、モデル材用組成物中のエチレン性不飽和単量体(C)の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、1〜30重量部であることが好ましい。エチレン性不飽和単量体(C)の含有量が前記範囲であると、得られるモデル材及び光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際に、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。エチレン性不飽和単量体(C)の含有量は、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましく、10重量部以上であることが特に好ましい。また、エチレン性不飽和単量体(C)の含有量は、25重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましい。なお、2種以上のエチレン性不飽和単量体(C)が含まれる場合、前記含有量は、エチレン性不飽和単量体(C)の合計含有量である。
【0077】
<エチレン性不飽和単量体(D)>
本発明の実施形態(2)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、エチレン性不飽和単量体(D)を含有する。前記エチレン性不飽和単量体(D)は、ホモポリマーのTgが−65℃以上25℃未満である。エチレン性不飽和単量体(D)のTgが前記範囲であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際に、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。エチレン性不飽和単量体(D)のホモポリマーのTgは、−30℃以上であることが好ましく、−10℃以上であることがより好ましい。また、エチレン性不飽和単量体(D)のホモポリマーのTgは、10℃以下であることが好ましい。なお、Tgは、示差熱測定装置(マック・サイエンス社製、TG−DTA(2000S))によって測定することができる。また、エチレン性不飽和単量体(D)の分子量は、150〜600であることが好ましい。
【0078】
エチレン性不飽和単量体(D)は、アクリレート化合物であっても、メタクリレート化合物であってもよいが、アクリレート化合物であることが好ましい。また、前記エチレン性不飽和単量体(D)は、単官能エチレン性不飽和単量体であっても、多官能エチレン性不飽和単量体であってもよいが、単官能エチレン性不飽和単量体であることが好ましい。さらに、前記エチレン性不飽和単量体(D)は、エーテル結合及び/又は炭素数8以上のアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体であることが好ましい。
【0079】
エチレン性不飽和単量体(D)としては、例えば、長鎖アルキル(炭素数8以上)アクリレート化合物、ポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイド鎖を有するアクリレート化合物、フェノキシエチルアクリレート化合物、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリル酸2−(N−ブチルカルバモイルオキシ)エチル(1,2−エタンジオール 1−アクリラート 2−(N−ブチルカルバマート))等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
長鎖アルキルアクリレート化合物としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−イソノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、n−セチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート等が挙げられる。
【0081】
ポリエチレンオキサイド又はポリプロピレンオキサイド鎖を有するアクリレート化合物としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールモノアクリレート、(ポリ)エチレングリコールアクリレートメチルエステル、(ポリ)エチレングリコールアクリレートエチルエステル、(ポリ)エチレングリコールアクリレートフェニルエステル、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノアクリレートフェニルエステル、(ポリ)プロピレングリコールアクリレートメチルエステル、(ポリ)プロピレングリコールアクリレートエチルエステル、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート(エトキシエトキシエチルアクリレート)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。
【0082】
フェノキシエチルアクリレート化合物としては、例えば、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物アクリレート等が挙げられる。
【0083】
これらの中でも、エチレン性不飽和単量体(D)は、フェノキシエチルアクリレート、n−ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、及び、アクリル酸2−(N−ブチルカルバモイルオキシ)エチルから選択される1種以上であることが好ましく、フェノキシエチルアクリレート及び/又はn−ステアリルアクリレートであることがより好ましい。これにより、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際に、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。
【0084】
本発明の実施形態(2)において、モデル材用組成物中のエチレン性不飽和単量体(D)の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、10〜90重量部であることが好ましい。エチレン性不飽和単量体(D)の含有量が前記範囲であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際に、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。エチレン性不飽和単量体(D)の含有量は、30重量部以上であることがより好ましく、40重量部以上であることがさらに好ましく、50重量部以上であることが特に好ましい。また、エチレン性不飽和単量体(D)の含有量は、85重量部以下であることがより好ましく、80重量部以下であることがさらに好ましく、75重量部以下であることが特に好ましい。なお、2種以上のエチレン性不飽和単量体(D)が含まれる場合、前記含有量は、エチレン性不飽和単量体(D)の合計含有量である。
【0085】
また、前記エチレン性不飽和単量体(C)の含有量M(C)と前記エチレン性不飽和単量体(D)の含有量M(D)とは、M(C)<M(D)を満たす(M(C)がM(D)よりも小さい)ことが好ましく、2×M(C)<M(D)を満たす(M(C)を2倍した値がM(D)よりも小さい)ことがより好ましく、3×M(C)<M(D)を満たす(M(C)を3倍した値がM(D)よりも小さい)ことがさらに好ましい。これにより、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の引張強度を向上させることができる。また、後述するサポート材を除去する際に、モデル材が壊れにくくなることにより、成形性を向上させることができる。
【0086】
また、前記エチレン性不飽和単量体(C)の含有量M(C)と前記エチレン性不飽和単量体(D)の含有量M(D)とは、10×M(C)>M(D)を満たす(M(C)を10倍した値がM(D)よりも大きい)ことが好ましく、7×M(C)>M(D)を満たす(M(C)を7倍した値がM(D)よりも大きい)ことがより好ましく、5×M(C)>M(D)を満たす(M(C)を5倍した値がM(D)よりも大きい)ことがさらに好ましい。
【0087】
<2官能アクリレートオリゴマー(E)>
本発明の実施形態(2)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、2官能アクリレートオリゴマー(E)を含有する。前記2官能アクリレートオリゴマー(E)は、重量平均分子量(以下、Mwという)が800以上10,000以下である。前記2官能アクリレートオリゴマー(E)のMwが前記範囲であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。2官能アクリレートオリゴマー(E)のMwは、10,000以下であり、5,000以下であることが好ましい。
【0088】
なお、Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定することができる。より詳細には、東ソー(株)HLC−8220 GPCを用いて、カラムとしてTSK gel SuperAWM−Hを3本連結して使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(10mM LiBr)、流速:0.5mL/min、試料濃度:0.1質量%、注入量:60μL、測定温度:40℃の条件で測定することができる。検出器には、UV又はRI検出装置(示差屈折計)を使用することができる。
【0089】
2官能アクリレートオリゴマー(E)は、アクリロイルオキシ基を有していても、メタクリロイルオキシ基を有していてもよいが、アクリロイルオキシ基を有していることが好ましい。また、2官能アクリレートオリゴマー(E)は、アクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を合計2つ有するオリゴマーである。モデル材用組成物が単官能アクリレートオリゴマーのみを含有すると、得られるモデル材及び光造形品の引張強度が劣る傾向にある。一方、モデル材用組成物が3官能以上のアクリレートオリゴマーのみを含有すると、得られるモデル材及び光造形品の柔らかさが劣る傾向にある。
【0090】
2官能アクリレートオリゴマー(E)の25℃におけるヤング率は、1〜100MPaであることが好ましい。2官能アクリレートオリゴマー(E)のヤング率が前記範囲であると、得られるモデル材及び光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。2官能アクリレートオリゴマー(E)のヤング率は、2MPa以上であることがより好ましく、3MPa以上であることがさらに好ましく、10MPa以上であることが特に好ましい。一方、2官能アクリレートオリゴマー(E)のヤング率は、80MPa以下であることがより好ましく、50MPa以下であることがさらに好ましく、30MPa以下であることが特に好ましい。
【0091】
ここで、前記2官能アクリレートオリゴマー(E)の25℃におけるヤング率とは、該2官能アクリレートオリゴマー(E)の単独重合体(モノポリマー)の25℃におけるヤング率である。前記ヤング率の測定方法は、例えば、以下の方法により行うことができる。Irgacure819(BASF社製)2質量%、Irgacure184(BASF社製)2質量%、及び、測定するオリゴマー96質量%を混合した液体をバーコーターにて100μmの塗布膜を形成し、紫外線(UV)露光機にて硬化させる。この時、硬化膜の重合度の影響が無視できる程度まで硬化をさせた。この硬化膜を15mm×50mmの短冊状に切り出し、引っ張り試験機(オートグラフAGS−X 5KN、(株)島津製作所製)にてヤング率を測定する。また、ヤング率の値は、1%の伸びの部分で測定する。また、試験では、長軸方向に引っ張り、上下約10mm部分をクランプで掴む。
【0092】
2官能アクリレートオリゴマー(E)としては、例えば、オレフィン系(エチレンオリゴマー、プロピレンオリゴマー、ブテンオリゴマー等)、ビニル系(スチレンオリゴマー、ビニルアルコールオリゴマー、ビニルピロリドンオリゴマー、アクリル樹脂オリゴマー等)、ジエン系(ブタジエンオリゴマー、クロロプレンゴム、ペンタジエンオリゴマー等)、開環重合系(ジ−,トリ−,テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチルイミン等)、重付加系(オリゴエステルアクリレート、ポリアミドオリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー等)、付加縮合オリゴマー(フェノール樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等)等が挙げられる。これらの中でも、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、又は、エポキシアクリレートオリゴマーであることが好ましく、ウレタンアクリレートオリゴマーであることがより好ましい。前記ウレタンアクリレートオリゴマー、前記ポリエステルアクリレートオリゴマー、及び、前記エポキシアクリレートオリゴマーとしては、オリゴマーハンドブック(古川淳二監修、(株)化学工業日報社)を参照することができる。また、2官能アクリレートオリゴマー(E)としては、新中村化学工業(株)、サートマー・ジャパン(株)、ダイセル・サイテック(株)、Rahn A.G.社等により市販されているものを用いることができる。
【0093】
本発明の実施形態(2)において、2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、1〜15重量部であることが好ましい。2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量が前記範囲であると、得られるモデル材及び光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量は、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましい。なお、2種以上の2官能アクリレートオリゴマー(E)が含まれる場合、前記含有量は、2官能アクリレートオリゴマー(E)の合計含有量である。
【0094】
前記(C)、(D)及び(E)成分のうち、2官能以上のアクリレート化合物の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、15重量部以下である。
【0095】
また、2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量は、前記2官能以上のアクリレート化合物全体100重量部に対して、50重量部以上であることが好ましい。2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量が前記範囲であると、モデル材用組成物を光硬化させることにより得られるモデル材及び該モデル材を用いて製造される光造形品の柔らかさ及び引張強度をより向上させることができる。2官能アクリレートオリゴマー(E)の含有量は、2官能以上のアクリレート化合物全体100重量部に対して、80重量部以上であることがより好ましく、90重量部以上であることがさらに好ましく、95重量部以上であることが特に好ましい。
【0096】
<アシルフォスフィンオキサイド化合物>
本発明の実施形態(2)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する。モデル材用組成物がアシルフォスフィンオキサイド化合物を含有することにより、得られるモデル材及び光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。また、光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド化合物を用いることにより、光重合開始剤の残留物や分解物等に由来するモデル材及び光造形品の着色を少なくすることができる。
【0097】
アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
本発明の実施形態(2)において、アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、1〜20重量部であることが好ましい。アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量が前記範囲であると、得られるモデル材及び光造形品の柔らかさ及び引張強度を向上させることができる。アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量は、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましい。また、アシルフォスフィンオキサイド化合物の含有量は、15重量部以下であることがより好ましい。なお、2種以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物が含まれる場合、前記含有量は、アシルフォスフィンオキサイド化合物の合計含有量である。
【0099】
また、本発明の実施形態(2)において、モデル材用組成物はアシルフォスフィンオキサイド化合物以外の光重合開始剤を含んでいてもよい。アシルフォスフィンオキサイド化合物以外の光重合開始剤としては、本発明の実施形態(1)におけるモデル材用組成物が含み得る光重合開始剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0100】
<その他の添加剤>
本発明の上記実施形態(1)及び(2)に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物は、それぞれ、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、増感剤、着色剤、分散剤、界面活性剤、重合禁止剤、保存安定化剤、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、塩基性化合物、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、光重合開始剤助剤、剥離促進剤等が挙げられる。
【0101】
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、チオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン等)、チオクロマノン類(例えば、チオクロマノン等)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、チオキサントン類であることが好ましく、イソプロピルチオキサントンであることがより好ましい。
【0102】
増感剤の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。増感剤の含有量が前記範囲であると、得られるモデル材が硬化性及び硬化感度に優れる。増感剤の含有量は、0.5重量部以上であることがより好ましく、3重量部以下であることがより好ましい。なお、増感剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各増感剤の含有量の合計である。
【0103】
着色剤は、用途に応じて、公知の種々の顔料及び染料を適宜選択して用いることができるが、耐光性に優れる観点から、顔料であることが好ましい。顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料、無機顔料、樹脂粒子を染料で染色した顔料等を用いることができる。また、市販の顔料分散体、表面処理された顔料、例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等も、本発明の効果を損なわない限りにおいて、用いることができる。
【0104】
有機顔料及び無機顔料のうちイエロー色を呈するものとしては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17等のジスアゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)等のアゾレーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)等の縮合アゾ顔料;C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料;フラバントロンイエロー(Y−24)等のアントラキノン系顔料;イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)等のイソインドリノン顔料;キノフタロンイエロー(Y−138)等のキノフタロン顔料;イソインドリンイエロー(Y−139)等のイソインドリン顔料;C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)等のニトロソ顔料;C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)等の金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
有機顔料及び無機顔料のうち赤又はマゼンタ色を呈するものとしては、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)等のモノアゾ系顔料;C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)等のジスアゾ顔料;C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)、C.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)等のアゾレーキ顔料;C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)等の縮合アゾ顔料;C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)等のチオインジゴ顔料;C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)等のペリノン顔料;C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)等のペリレン顔料;C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)等のキナクリドン顔料;C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)等のイソインドリノン顔料;C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)等のアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
有機顔料及び無機顔料のうち青又はシアン色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)等のジスアゾ系顔料;C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)等のフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料;C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)等のアントラキノン系顔料;C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)等のアルカリブルー顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
有機顔料及び無機顔料のうち緑色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)等のフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等のアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
有機顔料及び無機顔料のうちオレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)等のイソインドリン系顔料;C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)等のアントラキノン系顔料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
有機顔料及び無機顔料のうち黒色を呈する顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0110】
有機顔料及び無機顔料のうち白色を呈する顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCO
3Pb(OH)
2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO
2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、顔料としての隠蔽力及び着色力が大きく、さらに、酸、アルカリ、その他の環境等に対する耐久性に優れる観点から、酸化チタンであることが好ましい。
【0111】
着色剤の含有量は、着色性及び保存安定性の観点から、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.01〜40重量部であることが好ましい。着色剤の含有量は、0.1重量部以上であることがより好ましく、0.2重量部以上であることがさらに好ましい。また、着色剤の含有量は、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましい。なお、着色剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各着色剤の含有量の合計である。
【0112】
本発明において、分散剤は、Mwが1,000以上の高分子分散剤であることが好ましい。高分子分散剤としては、例えば、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102等(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046等(以上、エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8等(以上、サンノプコ社製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000等の各種ソルスパース分散剤(以上、Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38等(以上、ADEKA社製);イオネットS−20(三洋化成工業社製);ディスパロン KS−860、873SN等(以上、楠本化成社製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0113】
分散剤の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.05〜15重量部であることが好ましい。なお、分散剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各分散剤の含有量の合計である。
【0114】
界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤;有機フルオロ化合物等のフッ素系界面活性剤;ポリシロキサン化合物等のシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤であることが好ましく、ポリシロキサン化合物であることがより好ましい。界面活性剤は、後述するサポート材用組成物を光硬化させることにより得られるサポート材との剥離を容易にする剥離促進剤としても機能する。界面活性剤は、モデル材用組成物及びサポート材用組成物のいずれかに含有させればよいが、これらの両方に含有させることが好ましい。
【0115】
界面活性剤の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.0001〜3重量部であることが好ましい。なお、界面活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各界面活性剤の含有量の合計である。また、剥離促進剤として界面活性剤を用いる場合、その含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.01〜3.0重量部であることが好ましい。界面活性剤の量が前記範囲内であると、モデル材用組成物の液滴が合一して生じる滲みを抑制しながら、剥離性を向上させることができる。
【0116】
重合禁止剤は、モデル材用組成物の保存性を高め、かつ、インクジェットヘッドからの吐出安定性を向上させる。重合禁止剤としては、例えば、ニトロソ系重合禁止剤、ハイドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL(HO−TEMPO)、クペロンAl、ヒンダードアミン等が挙げられる。
【0117】
重合禁止剤の含有量は、モデル材用組成物全体100重量部に対して、0.001〜1.5重量部であることが好ましい。重合禁止剤の含有量が前記範囲であると、モデル材用組成物の保存性をより高め、かつ、インクジェットヘッドからの吐出安定性をより向上させる。重合禁止剤の含有量は、0.01重量部以上であることがより好ましく、0.05重量部以上であることがさらに好ましい。また、重合禁止剤の含有量は、1.0重量部以下であることがより好ましく、0.8重量部以下であることがさらに好ましい。なお、重合禁止剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は、各重合禁止剤の含有量の合計である。
【0118】
光重合開始剤助剤は、第3級アミン化合物であることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物であることがより好ましい。前記芳香族第3級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸イソアミルエチルエステルであることが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、モデル材用組成物を構成する各成分を、混合攪拌装置等を用いて均一に混合することにより製造することができる。
【0120】
このようにして製造された前記モデル材用組成物は、インクジェットヘッドからの吐出性を良好にする観点から、25℃における粘度が、70mPa・s以下であることが好ましい。なお、モデル材用組成物の粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行われる。
【0121】
2.サポート材用組成物
<水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)を含有する。前記水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)は、光照射により重合して、サポート材用組成物を硬化させる成分である。また、サポート材用組成物を光硬化させることにより得られるサポート材をすばやく水に溶解させる成分である。
【0122】
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)は、エネルギー線により硬化する特性を有する分子内にエチレン性二重結合を1個有する水溶性の重合性モノマーである。前記(a)成分としては、例えば、炭素数
2〜15の水酸基含有(メタ)アクリレート〔例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等〕、Mn200〜1,000のアルキレンオキサイド付加物含有(メタ)アクリレート〔例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、モノアルコキシ(炭素数1〜4)ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、PEA−PPAブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等〕、炭素数3〜15の(メタ)アクリルアミド誘導体〔例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等〕、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0123】
これらの中でも、サポート材用組成物の硬化性を向上させる観点から、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)は、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等であることが好ましい。さらに、人体への皮膚低刺激性の観点から、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンであることがより好ましい。
【0124】
水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量は、サポート材用組成物全体100重量部に対して、20〜50重量部である。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が20重量部未満であると、得られるサポート材における自立性が充分ではない。そのため、該サポート材をモデル材の下層に配置した際にモデル材を充分に支えることができない。その結果、得られるモデル材の寸法精度が悪化する。一方、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が50重量部を超えると、得られるサポート材は水への溶解性に劣る。サポート材を完全に除去するまでの水への浸漬時間が長くなると、モデル材がわずかに膨張する。その結果、得られるモデル材の微細構造部分において寸法精度が悪化する場合がある。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量は、25重量部以上であることが好ましく、45重量部以下であることが好ましい。なお、2種以上の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)が含まれる場合、前記含有量は、各(a)成分の含有量の合計である。
【0125】
<オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物は、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)を含有する。ポリアルキレングリコール(b)を含むことにより、得られるサポート材の水への溶解性を高めることができる。
【0126】
ポリアルキレングリコール(b)とは、活性水素化合物に少なくともエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが付加したものである。ポリアルキレングリコール(b)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。活性水素化合物としては、1〜4価アルコール、アミン化合物等が挙げられる。これらの中でも、2価アルコール又は水であることが好ましい。
【0127】
ポリアルキレングリコール(b)の数平均分子量Mnは、100〜5,000であることが好ましい。ポリアルキレングリコール(b)のMnが前記範囲内であると、光硬化前の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)と相溶し、かつ、光硬化後の水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)と相溶しない。その結果、得られるサポート材の自立性を高め、かつ、該サポート材の水への溶解性を高めることができる。ポリアルキレングリコール(b)のMnは、200〜3,000であることがより好ましく、400〜2,000であることがさらに好ましい。
【0128】
ポリアルキレングリコール(b)の含有量は、サポート材用組成物全体100重量部に対して、20〜49重量部である。ポリアルキレングリコール(b)の含有量が20重量部未満であると、得られるサポート材は水への溶解性に劣る。サポート材を完全に除去するまでの水への浸漬時間が長くなると、モデル材がわずかに膨張する。その結果、得られるモデル材の微細構造部分において寸法精度が悪化する場合がある。一方、ポリアルキレングリコール(b)の含有量が49重量部を超えると、サポート材用組成物を光硬化させる際、ポリアルキレングリコール(b)の浸み出しが生じる場合がある。ポリアルキレングリコール(b)の浸み出しが生じると、サポート材とモデル材との界面における密着性が悪くなる。その結果、モデル材が硬化収縮する際にサポート材から剥がれやすくなり、得られるモデル材の寸法精度が悪化する場合がある。また、ポリアルキレングリコール(b)の含有量が49重量部を超えると、サポート材用組成物の粘度が高くなる傾向にある。そのため、サポート材用組成物をインクジェットヘッドから吐出させる際、ジェッティング特性が悪化して、飛行曲がりを起こす可能性がある。その結果、得られるサポート材の寸法精度が悪化し、これによって、該サポート材の上層に成形されたモデル材の寸法精度も悪化しやすくなる。ポリアルキレングリコール(b)の含有量は、25重量部以上であることが好ましく、45重量部以下であることが好ましい。なお、2種以上のポリアルキレングリコール(b)含まれる場合、前記含有量は、各(b)成分の含有量の合計である。
【0129】
<水溶性有機溶剤(c)>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物は、水溶性有機溶剤(c)を含有する。水溶性有機溶剤(c)は、サポート材の水への溶解性を向上させる成分である。また、サポート材用組成物を低粘度に調整する成分である。
【0130】
前記水溶性有機溶剤(c)としては、例えば、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、テトラエチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、サポート材の水への溶解性を向上させ、かつ、サポート材用組成物を低粘度に調整する観点から、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、又は、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることがより好ましい。
【0131】
水溶性有機溶剤(c)の含有量は、サポート材用組成物全体100重量部に対して、35重量部以下である。水溶性有機溶剤(c)の含有量が35重量部を超えると、サポート材用組成物を光硬化させる際に水溶性有機溶剤(c)の浸み出しが生じやすい。そのため、該サポート材の上層に成形されたモデル材の寸法精度が悪化しやすくなる。水溶性有機溶剤(c)の含有量は、得られるサポート材の水への溶解性を向上させ、かつ、サポート材用組成物を低粘度に調整する観点から、5重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましい。また、水溶性有機溶剤(c)の含有量は、30重量部以下であることが好ましい。なお、2種以上の水溶性有機溶剤(c)が含まれる場合、前記含有量は、各(c)成分の含有量の合計である。
【0132】
<光重合開始剤>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物は、光重合開始剤(d)を含有する。光重合開始剤(d)は、紫外線、近紫外線又は可視光領域の波長の光の照射によりラジカル反応を促進する化合物であれば特に限定されず、本発明の実施形態(1)のモデル材用組成物に含有され得る光重合開始剤として先に例示したものと同様の成分を用いることができる。
【0133】
光重合開始剤(d)の含有量は、サポート材用組成物全体100重量部に対して、1〜25重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。光重合開始剤(d)の含有量が前記範囲であると、サポート材用組成物の自立性が良好となる。そのため、かかるサポート材用組成物から形成されるサポート材の上層に成形されたモデル材の寸法精度が向上する。光重合開始剤(d)の含有量は、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましく、7重量部以上であることが特に好ましく、また、18重量部以下であることがより好ましい。なお、2種以上の光重合開始剤(d)が含まれる場合、前記含有量は、各(d)成分の含有量の合計である。
【0134】
<表面調整剤(e)>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物は、組成物の表面張力を適切な範囲に調整するため、表面調整剤(e)を含有することが好ましい。組成物の表面張力を適切な範囲に調整することにより、モデル材用組成物とサポート材用組成物とが界面で混ざり合うことを抑制することができる。その結果、これらの組成物を用いて、寸法精度が良好な光造形品を得ることができる。この効果を得るため、表面調整剤(e)の含有量は、サポート材用組成物全体100重量部に対して、0.005〜3.0重量部であることが好ましい。
【0135】
表面調整剤(e)としては、例えば、シリコーン系化合物等が挙げられる。シリコーン系化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーン系化合物等が挙げられる。具体的には、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリアラルキル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらとして、商品名でBYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570(以上、ビックケミー社製)、TEGO−Rad2100、TEGO−Rad2200N、TEGO−Rad2250、TEGO−Rad2300、TEGO−Rad2500、TEGO−Rad2600、TEGO−Rad2700(以上、デグサ社製)、グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、B−1484、ポリフローATF−2、KL−600、UCR−L72、UCR−L93(共栄社化学社製)等を用いてもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上の表面調整剤(e)が含まれる場合、前記含有量は、各(e)成分の含有量の合計である。
【0136】
<保存安定化剤(f)>
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物は、さらに、保存安定化剤(f)を含有することが好ましい。保存安定化剤(f)は、組成物の保存安定性を高めることができる。また、熱エネルギーにより重合性化合物が重合することで生じるヘッド詰まりを防止することができる。これらの効果を得るため、保存安定化剤(f)の含有量は、サポート材用組成物全体100重量部に対して、0.05〜3.0重量部であることが好ましい。
【0137】
保存安定化剤(f)としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、ハイドロキノン、メトキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、TEMPO、4−ヒドロキシ−TEMPO、TEMPOL、クペロンAl、IRGASTAB UV-10、IRGASTAB UV-22、FIRSTCURE ST−1(ALBEMARLE社製)、t−ブチルカテコール、ピロガロール、BASF社製のTINUVIN 111 FDL、TINUVIN 144、TINUVIN 292、TINUVIN XP40、TINUVIN XP60、TINUVIN 400等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上の保存安定化剤(f)が含まれる場合、前記含有量は、各(f)成分の含有量の合計である。
【0138】
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、その他の添加剤を含有させることができる。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、充填剤等が挙げられる。
【0139】
本実施形態に係る光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、前記(a)〜(d)成分、及び、必要により、前記(e)、(f)成分、その他の添加剤を、混合攪拌装置等を用いて均一に混合することにより、製造することができる。
【0140】
このようにして製造されたサポート材用組成物は、インクジェットヘッドからの吐出性を良好にする観点から、25℃における粘度が、70mPa・s以下であることが好ましい。なお、サポート材用組成物の粘度の測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行われる。
【0141】
3.光造形品及びその製造方法
本実施形態に係る光造形品は、本実施形態に係る光造形用インクセットを用いて造形される。具体的には、インクジェット光造形法により、上述のモデル材用組成物を光硬化させることによりモデル材を得るとともに、上述のサポート材用組成物を光硬化させることによりサポート材を得る工程(I)と、前記サポート材を除去する工程(II)とを経て製造される。前記工程(I)及び前記工程(II)は、特に限定されないが、例えば、以下の方法により行われる。
【0142】
<工程(I)>
図1は、本実施形態に係る光造形品の製造方法における工程(I)を模式的に示す図である。
図1に示すように、三次元造形装置1は、インクジェットヘッドモジュール2及び造形テーブル3を含む。インクジェットヘッドモジュール2は、モデル材用組成物を充填したモデル材用インクジェットヘッド21と、サポート材用組成物を充填したサポート材用インクジェットヘッド22と、ローラー23と、光源24とを有する。
【0143】
まず、インクジェットヘッドモジュール2を
図1中の造形テーブル3に対して、X方向及びY方向に走査させるとともに、モデル材用インクジェットヘッド21からモデル材用組成物を吐出させ、かつ、サポート材用インクジェットヘッド22からサポート材用組成物を吐出させることにより、モデル材用組成物とサポート材用組成物とからなる組成物層を形成する。そして、前記組成物層の上面を平滑にするために、ローラー23を用いて、余分なモデル材用組成物及びサポート材用組成物を除去する。そして、これらの組成物に、光源24を用いて光を照射することにより、造形テーブル3上に、モデル材4及びサポート材5からなる硬化層を形成する。
【0144】
次に、造形テーブル3を、前記硬化層の厚み分だけ、
図1中のZ方向に降下させる。その後、上述と同様の方法で、前記硬化層の上にさらにモデル材4及びサポート材5からなる硬化層を形成する。これらの工程を繰返し行うことにより、モデル材4及びサポート材5からなる硬化物6を作製する。
【0145】
組成物を硬化させる光としては、例えば、遠赤外線、赤外線、可視光線、近紫外線、紫外線等が挙げられる。これらの中でも、硬化作業の容易性及び効率性の観点から、近紫外線又は紫外線であることが好ましい。
【0146】
光源24としては、水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LED、紫外線レーザー等が挙げられる。これらの中でも、設備の小型化及び省電力の観点から、紫外線LEDであることが好ましい。なお、光源24として紫外線LEDを用いた場合、紫外線の積算光量は、500mJ/cm
2程度であることが好ましい。
【0147】
<工程(II)>
図2は、本実施形態に係る光造形品の製造方法における工程(II)を模式的に示す図である。
図2に示すように、工程(I)で作製したモデル材4及びサポート材5からなる硬化物6は、容器7に入れた溶媒8中に浸漬させる。これにより、サポート材5を溶媒8に溶解させて、除去することができる。
【0148】
サポート材を溶解させる溶媒8としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水、井戸水等が挙げられる。これらの中でも、不純物が比較的少なく、かつ、安価に入手できるという観点から、イオン交換水であることが好ましい。
【0149】
以上の工程により本実施形態に係る光造形品が得られる。上述のように、本実施形態に係る光造形用インクセットでは、該光造形用インクセットに含まれるモデル材用組成物を光硬化させることにより、伸び及び弾性を有するモデル材、又は、柔らかく、かつ引張強度に優れたモデル材を得ることができる。また、本実施形態に係る光造形用インクセットでは、該光造形用インクセットに含まれるサポート材用組成物を光硬化させることにより、自立性に優れたサポート材を得ることができる。このようなモデル材及びサポート材を用いて製造された光造形品は、寸法精度が良好である。
【0150】
以下、本実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0151】
(1)本発明の実施形態(1)に関するインクセット
<モデル材用組成物>
(モデル材用組成物の製造)
表1に示す配合で、単官能エチレン性不飽和単量体(A)、多官能エチレン性不飽和単量体(B)、光重合開始剤及び重合禁止剤を、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、本発明の実施形態(1)に従う実施例M1〜M5のモデル材用組成物を製造した。
【0152】
【表1】
【0153】
Genomer1122:ウレタンアクリレート[genomer1122(エチレン性二重結合/1分子:1個)、Rahn社製]
NIPAM:イソプロピルアクリルアミド[NIPAM(エチレン性二重結合/1分子:1個)、興人社製]
ヒドロキシプロピルA:ヒドロキシプロピルアクリレート[ライトエステルHOP−A(エチレン性二重結合/1分子:1個)、共栄社化学社製]
フェノキシエチルA:フェノキシエチルアクリレート[ライトアクリレートPO−A(エチレン性二重結合/1分子:1個)、共栄社化学社製]
フェノキシDEGA:フェノキシジエチレングリコールアクリレート[ライトアクリレートP2H−A(エチレン性二重結合/1分子:1個)、共栄社化学社製]
イソデシルA:イソデシルアクリレート[SR−395(エチレン性二重結合/1分子:1個)、サートマー社製]
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[A−HD−N(エチレン性二重結合/1分子:2個)、新中村化学社製]
DAROCURE TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド[DAROCURE TPO、BASF社製]
TEMPO:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル[TEMPO、エボニック デグサ ジャパン社製]
【0154】
<サポート材用組成物>
(サポート材用組成物の製造)
表2に示す配合で、(a)〜(f)成分を、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、実施例S1〜S4のサポート材用組成物及び比較例s1のサポート材用組成物を製造し、これらのサポート材用組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0155】
【表2】
【0156】
HEAA:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド[HEAA(エチレン性二重結合/1分子:1個)、KJケミカルズ社製]
ACMO:アクリロイルモルフォリン[ACMO(エチレン性二重結合/1分子:1個)、KJケミカルズ社製]
DMAA:N,N’−ジメチルアクリルアミド[DMAA(エチレン性二重結合/1分子:1個)、KJケミカルズ社製]
PPG−400:ポリプロピレングリコール[ユニオールD400(分子量400)、日油社製]
PPG−1000:ポリプロピレングリコール[ユニオールD1000(分子量1,000)、日油社製]
MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル[MTG、日本乳化剤社製]
DAROCURE TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド[DAROCURE TPO、BASF社製]
TEGO−Rad2100:ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコンアクリレート[TEGO−Rad2100、エボニック デグサ ジャパン社製]
H-TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル[HYDROXY−TEMPO、エボニック デグサ ジャパン社製]
【0157】
(粘度の測定)
各サポート材用組成物の粘度は、R100型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃、コーン回転数5rpmの条件下で測定し、下記の基準において評価した。評価結果を表2に示す。
○:粘度 ≦ 70mPa・s
×:粘度 > 70mPa・s
【0158】
(水への溶解性)
直径50mmのアルミカップに、各サポート材用組成物2.0gを採取した。次に、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500mJ/cm
2となるように紫外線を照射して硬化させ、サポート材を得た。その後、サポート材をアルミカップから離型した。続いて、ビーカーに入れたイオン交換水500ml中に、前記サポート材を浸漬した。10分毎にサポート材を目視で観察し、浸漬開始から完全溶解又は元の形状が無くなるまでに要した時間(以下、水溶解時間という)を計測し、下記の基準において溶解性を評価した。評価結果を表2に示す。
○:水溶解時間 ≦ 1時間
△:1時間 < 水溶解時間 < 1.5時間
×:水溶解時間 ≧ 1.5時間
【0159】
(油状浸み出しの評価)
100mm×100mmのアルミ箔に、各サポート材用組成物1.0gを採取した。次に、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500mJ/cm
2となるように紫外線を照射して硬化させ、サポート材を得た。なお、この時点でサポート材は固体状態である。このサポート材を2時間放置し、サポート材表面における油状浸み出しの有無を目視で観察し、下記の基準において評価した。評価結果を表2に示す。
○:油状浸み出しが全く観察されなかった。
△:わずかに油状浸み出しが観察された。
×:油状浸み出しが多く観察された。
【0160】
(自立性の評価)
評価に用いるガラス板(商品名「GLASS PLATE」、アズワン社製、200mm×200mm×厚さ5mm)は、平面視で四角形である。前記ガラス板の上面の四辺に厚さ1mmのスペーサーを配置して、10cm×10cmの正方形の領域を形成した。その領域内に各サポート材用組成物を注型した後、別の前記ガラス板を重ねて載せた。そして、照射手段として紫外線LED(NCCU001E、日亜化学工業株式会社製)を用い、全照射光量が500mJ/cm
2となるように紫外線を照射して硬化させ、サポート材を得た。その後、サポート材をガラス板から離型し、カッターで縦10mm、横10mmの形状に切り出して、試験片を得た。次に、該試験片を10枚重ねて、高さ10mmの試験片群を得た。該試験片群は、上から100gの重しを載せた状態で、そのまま30℃に設定したオーブンの中に入れて、1時間放置した。その後、試験片の形状を観察し、下記の基準において自立性を評価した。評価結果を表2に示す。
○:形状に変化がなかった。
△:形状がわずかに変化し、重しが傾いた状態になった。
×:形状が大きく変化した。
【0161】
表2の結果から分かるように、本発明の要件を全て満たす実施例S1〜S4のサポート材用組成物は、インクジェットヘッドからの吐出に適した粘度であった。また、実施例S1〜S4のサポート材用組成物を光硬化させることにより得られるサポート材は、水への溶解性が高く、かつ、油状浸み出しが抑制された。さらに、S1〜S4のサポート材用組成物を光硬化させることにより得られるサポート材は、充分な自立性を有していた。
【0162】
<光造形品>
(光造形品の寸法精度の評価)
表1に示す各モデル材用組成物と、表2に示す各サポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセットを用いて、硬化物を作成した。該硬化物の形状及び目標とする寸法を、
図3(a)及び(b)に示す。なお、インクジェットヘッドから各モデル材用組成物及び各サポート材用組成物を吐出させる工程は、解像度が600×600dpi、組成物層の1層の厚さが約13〜14μmとなるように行った。また、各モデル材用組成物及び各サポート材用組成物をそれぞれ光硬化させる工程は、スキャン方向に対してインクジェットヘッドの後ろ側に設置された波長385nmのLED光源を用いて、照度250mW/cm
2、組成物層の1層当りの積算光量300mJ/cm
2の条件で行った。次に、前記硬化物をイオン交換水に浸漬することにより、サポート材を除去して、光造形品を得た。その後、得られた光造形品をデシケーター内に24時間静置し、充分に乾燥させた。上述の工程により、各光造形品を、それぞれ5個ずつ製造した。乾燥後の光造形品について、
図3(a)中のx方向及びy方向の寸法を、ノギスを用いて測定し、目標とする寸法からの変化率を算出した。寸法精度は、各光造形品における寸法変化率の平均値を求め、該平均値を用いて下記の基準により評価を行った。評価結果を表3に示す。
○:平均寸法変化率が±1.0%未満
×:平均寸法変化率が±1.0%以上
【0163】
【表3】
【0164】
表3の結果から分かるように、本発明の〔本発明の実施形態(1)に従う〕要件を全て満たす実施例M1〜M5のモデル材用組成物と、本発明の要件を全て満たす実施例S1〜S4のサポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセットは、寸法精度が良好な光造形品を得ることができた。
【0165】
(2)本発明の実施形態(2)に関するインクセット
<モデル材用組成物>
(モデル材用組成物の製造)
表4及び5に示す配合で、エチレン性不飽和単量体(C)、エチレン性不飽和単量体(D)、2官能アクリレートオリゴマー(E)、アシルフォスフィンオキサイド化合物、界面活性剤及び保存安定化剤を、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、本発明の実施形態(2)に従う実施例M1’〜M16’のモデル材用組成物、及び、本発明の実施形態(2)に従わない比較例m1’〜m3’のモデル材用組成物を製造した。
【0166】
【表4】
【0167】
【表5】
【0168】
IBOA:イソボルニルアクリレート[サートマー SR506D(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:94℃)、アルケマ社製]
TBCHA:t−ブチルシクロヘキシルアクリレート[サートマー SR217(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:20℃)、アルケマ社製]
TMCHA:3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート[サートマー SR420(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:27℃)、アルケマ社製]
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート[ファンクリル FA−513AS(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:120℃)、日立化成社製]
PEA:2−フェノキシエチルアクリレート[サートマー SR339A(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:5℃)、アルケマ社製]
ST:ステアリルアクリレート[サートマー SR257(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:9℃)、アルケマ社製]
IDA:イソデシルアクリレート[サートマー SR395(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−60℃)、アルケマ社製]
EOEOEA:エトキシエトキシエチルアクリレート[サートマー SR256(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−54℃)、アルケマ社製]
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート[サートマー SR285(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−15℃)、アルケマ社製]
LA:ラウリルアクリレート[サートマー SR335(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−30℃)、アルケマ社製]
NOAA:n−オクチルアクリレート[NOAA(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−65℃)、大坂有機化学工業社製]
IOAA:イソオクチルアクリレート[サートマー SR440(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−54℃)、アルケマ社製]
NTDAA:n−トリデシルアクリレート[サートマー SR489(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−55℃)、アルケマ社製]
INAA:イソノニルアクリレート[INAA(エチレン性二重結合/1分子:1個、Tg:−58℃)、大坂有機化学工業社製]
CN996:ウレタンアクリレートオリゴマー[CN996(エチレン性二重結合/1分子:2個、Mw:2,850、ヤング率:21MPa)、アルケマ社製]
CN965:ウレタンアクリレートオリゴマー[CN995(エチレン性二重結合/1分子:2個、Mw:5,600、ヤング率:78MPa)、アルケマ社製]
DAROCURE TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド[DAROCURE TPO、BASF社製]
IRGACURE819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニル−フォスフィンオキサイド[IRGACURE819、BASF社製]
TEGO−Rad2100:ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコンアクリレート[TEGO−Rad2100、デグサ社製]
IRGASUTAB UV−10:ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート[IRGASUTAB UV−10、BASF社製]
【0169】
<サポート材用組成物>
(サポート材用組成物の製造)
表6及び7に示す配合で、(a)〜(f)成分を、混合攪拌装置を用いて均一に混合し、実施例S1’〜S17’のサポート材用組成物、及び、比較例s1’〜s6’のサポート材用組成物を製造し、これらのサポート材用組成物を用いて、粘度、水への溶解性、油状浸み出し及び自立性について評価を行った。なお、各評価方法及び評価基準は、本発明の実施形態(1)に関するインクセットにおける実施例S1のサポート材用組成物等の評価と同様の方法及び評価基準である。結果を表6及び7に示す。
【0170】
なお、本実施例では、後述するように、照射手段として紫外線LEDを用いて、サポート材用組成物を硬化させた。実施例S17’(参考例)のサポート材用組成物については、光重合開始剤(d)の含有量が20重量部を超えることから、光重合開始剤(d)が充分に溶解せず、溶け残りが生じた。したがって、実施例S17’のサポート材用組成物については、以下の評価をすべて行わなかった。なお、溶け残りが存在する状態で実施例S17’のサポート材用組成物に紫外線LEDを照射したところ、十分に硬化した。
【0171】
【表6】
【0172】
【表7】
【0173】
HEAA:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド[HEAA(エチレン性二重結合/1分子:1個)、KJケミカルズ社製]
ACMO:アクリロイルモルフォリン[ACMO(エチレン性二重結合/1分子:1個)、KJケミカルズ社製]
DMAA:N,N’−ジメチルアクリルアミド[DMAA(エチレン性二重結合/1分子:1個)、KJケミカルズ社製]
PPG−400:ポリプロピレングリコール[ユニオールD400(分子量400)、日油社製]
PPG−1000:ポリプロピレングリコール[ユニオールD1000(分子量1000)、日油社製]
PEG−400:ポリエチレングリコール[PEG#400(分子量400)、日油社製]
PEG−1000:ポリエチレングリコール[PEG#1000(分子量1000)、日油社製]
MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル[MTG、日本乳化剤社製]
DPMA:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート[ダワノールDPMA、ダウケミカル社製]
DAROCURE TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド[DAROCURE TPO、BASF社製]
TEGO−Rad2100:ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコンアクリレート[TEGO−Rad2100、エボニック デグサ ジャパン社製]
H-TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル[HYDROXY−TEMPO、エボニック デグサ ジャパン社製]
【0174】
表6及び7の結果から分かるように、本発明の要件を全て満たす実施例S1’〜S16’のサポート材用組成物は、インクジェットヘッドからの吐出に適した粘度であった。また、実施例S1’〜S16’のサポート材用組成物を光硬化させることにより得られるサポート材は、水への溶解性が高く、かつ、油状浸み出しが抑制された。さらに、実施例S1’〜S15’のサポート材用組成物を光硬化させることにより得られるサポート材は、充分な自立性を有していた。なお、実施例S16’(参考例)のサポート材用組成物は、光重合開始剤(d)の含有量が3重量部未満であることから、紫外線LEDを照射しても、ラジカル反応が促進せず、得られるサポート材の自立性が充分ではなかった。実施例S16’のサポート材用組成物は、照射手段として水銀灯又はメタルハライドランプを用いた場合には、光重合開始剤(d)の含有量が3重量部であっても、得られるサポート材が充分な自立性を有する。
【0175】
さらに、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が45重量部以下、かつ、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の含有量が25重量部以上である実施例S1’〜S8’、S10’、S11’、S13’〜S16’のサポート材用組成物から得られるサポート材は、水への溶解性がより高かった。オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の含有量が45重量部以下、かつ、水溶性有機溶剤(c)の含有量が30重量部以下である実施例S1’〜S10’、S14’〜S16’のサポート材用組成物から得られるサポート材は、油状浸み出しがより抑制された。水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が25重量部以上である実施例S1’〜S7’、S9’〜S12’、S14’、S15’のサポート材用組成物から得られるサポート材は、より充分な自立性を有していた。
【0176】
一方、比較例s1’のサポート材用組成物は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が20重量部未満であることから、サポート材の自立性が充分ではなかった。比較例s2’のサポート材用組成物は、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(a)の含有量が50重量部を超えることから、サポート材の水への溶解性が低かった。比較例s3’のサポート材用組成物は、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の含有量が49重量部を超えることから、粘度が高く、かつ、サポート材において油状浸み出しが生じた。比較例s4’のサポート材用組成物は、水溶性有機溶剤(c)の含有量が35重量部を超えることから、サポート材において油状浸み出しが生じた。比較例s5’のサポート材用組成物は、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の含有量が20重量部未満であることから、サポート材の水への溶解性が低かった。また、比較例s5’のサポート材用組成物は、水溶性有機溶剤(c)の含有量が35重量部を超えることから、サポート材において油状浸み出しが生じた。比較例s6’のサポート材用組成物は、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を含むポリアルキレングリコール(b)の含有量が49重量部を超えることから、粘度が高く、かつ、サポート材において油状浸み出しが生じた。
【0177】
<光造形品>
(光造形品の寸法精度の評価)
表4及び5に示す各モデル材用組成物と、表6及び7に示す各サポート材用組成物とを組み合わせてなる光造形用インクセットを用いて、上記本発明の実施形態(1)に関するインクセットにおける硬化物(光造形品)の作製と同様の方法により、試験No.1〜10の光造形品を、それぞれ5個ずつ製造した。乾燥後の光造形品について、上記本発明の実施形態(1)に関するインクセットにおける光造形品と同様の方法及び評価基準により評価を行った。評価結果を表8に示す。
【0178】
【表8】
【0179】
表8の結果から分かるように、本発明の〔本発明の実施形態(2)に従う〕要件を全て満たす光造形用インクセットを用いて製造された試験No.1〜7の光造形品は、寸法精度が良好であった。