特許第6571301号(P6571301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6571301
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】造影剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20190826BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20190826BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190826BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20190826BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20190826BHJP
【FI】
   A61K49/04
   A61K9/10
   A61P43/00 171
   A61B6/03 375
   B82Y30/00
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-42730(P2019-42730)
(22)【出願日】2019年3月8日
【審査請求日】2019年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2019-13941(P2019-13941)
(32)【優先日】2019年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (その1) 発行日 2019年2月8日 刊行物 2018年度 修士論文公開審査会《要旨集》 (その2) 開催日 2019年2月13日から2019年2月15日 集会名、開催場所 2018年度 修士論文公開審査会 長浜バイオ大学 大講義室▲2▼(滋賀県長浜市田村町1266)
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503303466
【氏名又は名称】学校法人関西文理総合学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−057592(JP,A)
【文献】 特表2013−513594(JP,A)
【文献】 個体レベルの新規分子イメージング技術の開発とその有効性の検証(S1201037),(平成24 年度〜平成28 年度)私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 研究成果報告書,2017年 5月,p1−17,64−74,URL,https://www.nagahama-i-bio.ac.jp/wordpress/wp-content/uploads/2017/05/research-result-report_03.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像を取得するために、前記動物の管腔器官に注入される造影剤であって、
前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、
前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は1nmから500nmの範囲内であり、
前記造影剤に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、3%(重量/重量)から55%(重量/重量)であり
前記造影剤の注入時の動粘度は、JISK2283−2000年に基づいて23℃において測定した時に2.5mm/秒{cSt}以下である、
造影剤(但し、前記酸化チタン(IV)粒子から、希土類元素によってドープされた酸化チタン(IV)粒子は除かれる)。
【請求項2】
前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は1nmから100nmの範囲内である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項3】
前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は70nmから500nmの範囲内である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項4】
前記酸化チタン(IV)粒子が、第1の酸化チタン(IV)粒子と第2の酸化チタン(IV)粒子とを含み、第1の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が1nmから100nmの範囲内であり、第2の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が70nmから500nmの範囲内である、請求項1に記載の造影剤。
【請求項5】
前記管腔器官が血管である、請求項1からのいずれか一項に記載の造影剤。
【請求項6】
酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像を取得するために、前記動物の管腔器官に注入される造影剤を調製するための液剤であって、
前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、
前記液剤は、(a)酸化チタン(IV)粒子のスラリー液及び/又は(b)酸化チタン(IV)粒子のゾル液を含み、
前記スラリー液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから500nmの範囲内であり、前記スラリー液に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から55%(重量/重量)であり、
前記ゾル液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから100nmの範囲内であり、前記ゾル液に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から40%(重量/重量)であり
前記造影剤の注入時の動粘度は、JISK2283−2000年に基づいて23℃において測定した時に2.5mm/秒{cSt}以下である、
前記液剤(但し、前記酸化チタン(IV)粒子から、希土類元素によってドープされた酸化チタン(IV)粒子は除かれる)。
【請求項7】
酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像を取得するために、前記動物の管腔器官に注入される造影剤を調製するためのキットであって、
前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、
前記キットは、(a)酸化チタン(IV)粒子のスラリー液及び/又は(b)酸化チタン(IV)粒子のゾル液を含み、
前記スラリー液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから500nmの範囲内であり、前記スラリー液に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から55%(重量/重量)であり、
前記ゾル液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから100nmの範囲内であり、前記ゾル液に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から40%(重量/重量)であり
前記造影剤の注入時の動粘度は、JISK2283−2000年に基づいて23℃において測定した時に2.5mm/秒{cSt}以下である、
前記キット(但し、前記酸化チタン(IV)粒子から、希土類元素によってドープされた酸化チタン(IV)粒子は除かれる)。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の造影剤を、動物の管腔器官に注入する工程と、
造影剤を注入した動物の器官のX線画像を取得する工程を含む、
動物の器官の造影方法(但し、前記動物からは生きたヒトは除かれる)。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の造影剤を、動物の血管に前記動物の正常の血流速と同等の範囲の流速で注入する工程と、
造影剤を注入した動物の血管のX線画像を取得する工程を含む、
動物血管の造影方法(但し、前記動物からは生きたヒトは除かれる)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、造影剤、造影剤を調製するための試薬及びキット、並びに造影方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
造影法は循環障害のみならず腫瘍の診断にも効果を発揮する重要な技術として医療現場で広く使用されている。
【0003】
マウスをはじめとする実験動物は、ヒトの病態をかなり正確に再現できるため、モデル動物として有用である。しかし、小動物の血管等の管腔器官はサイズが小さいので、ヒトに用いられる造影剤を小動物に使用すると非常に大きい血管しか造影できない。
【0004】
非特許文献1には、0.1%メチルセルロース−2.5%二酸化チタン又は50%グリセリン−2.5%二酸化チタンを主成分とする造影剤により、25μm径の血管を造影したことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】私立大学戦略的研究基盤形成支援事業研究成果報告書・2012年度採択「個体レベルの新規分子イメージング技術の開発とその有効性の検証」(事業期間:2012年度〜2016年度)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
小動物の器官、特に細い管腔器官を造影可能な造影剤を開発することは、これまで充分に解析されていなかった実験動物の細い管腔器官の病変を可視化することを可能にする有用な技術となる。
【0007】
しかし、非特許文献1に記載の血管造影剤は、粘度が高いため、血管に注入する際に高い圧力をかけなければならず、細い血管に膨張等の変形を来すという課題があった。また、従来の造影剤では25μm未満の管腔径の器官を造影することは困難であった。本発明は、器官を高解像度で造影可能な造影剤を提供することを課題とする。また、好ましくはより細い管腔器官を造影可能な造影剤を提供することを課題とする。さらに、管腔器官に注入した際に、特に細い管腔器官の変形をできるだけ引き起こさない造影剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、酸化チタン(IV)粒子を含む造影剤が上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
項1.酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像又は超音波画像を取得する際に、前記動物の管腔器官に注入される造影剤であって、前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は1nmから500nmの範囲内であり、前記造影剤に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、3%(重量/重量)から55%(重量/重量)である、造影剤(但し、生きたヒトに使用されるものを除く)。
項2.前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は1nmから100nmの範囲内である、項1に記載の造影剤。
項3.前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は70nmから500nmの範囲内である、項1に記載の造影剤。
項4.前記酸化チタン(IV)粒子が、第1の酸化チタン(IV)粒子と第2の酸化チタン(IV)粒子とを含み、第1の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が1nmから100nmの範囲内であり、第2の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が70nmから500nmの範囲内である、項1に記載の造影剤。
項5.前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が5%(重量/重量)から35%(重量/重量)である、項1から4のいずれか一項に記載の造影剤。
項6.前記酸化チタン(IV)粒子の表面が中性である、項1から5のいずれか一項に記載の造影剤。
項7.前記酸化チタン(IV)の結晶形がアナタース形又はルチル形である、項1から6のいずれか一項に記載の造影剤。
項8.造影剤の動粘度が、少なくとも注入時に3mm/秒{cSt}以下である、項1から7のいずれか一項に記載の造影剤。
項9.酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が1nmから100nmの範囲内である場合に、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液は、酸化チタン(IV)粒子の集合体のスラリー液、酸化チタン(IV)粒子のゾル液、酸化チタン(IV)粒子の集合体のスラリー液及び酸化チタン(IV)粒子のゾル液の混合液、又はこれらの希釈液である、項2から8のいずれか一項に記載の造影剤。
項10.酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が70nmから500nmの範囲内である場合に、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液は、酸化チタン(IV)粒子のスラリー液、又はこの希釈液である、項3から9のいずれか一項に記載の造影剤。
項11.前記器官が血管である、項1から10のいずれか一項に記載の造影剤。
項12.前記動物が、マウス、ラット、モルモット、スナネズミ、ウサギ、イヌ、ネコ、フェレット、サル、又はニワトリである、項1から11のいずれか一項に記載の造影剤。項13.酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像又は超音波画像を取得する際に、前記動物の管腔器官に注入される造影剤を調製するための試薬であって、前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、前記試薬は、(a)酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)粒子の集合体のスラリー液及び/又は(b)酸化チタン(IV)粒子のゾル液を含み、前記スラリー液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから500nmの範囲内であり、前記スラリー液に含まれる成分の合計を100%としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から55%(重量/重量)であり、前記ゾル液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから100nmの範囲内であり、前記ゾル液に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から40%(重量/重量)である、前記試薬(但し、前記造影剤からは生きたヒトに使用されるものを除く)。
項14.酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像又は超音波画像を取得する際に、前記動物の管腔器官に注入される造影剤を調製するためのキットであって、前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、前記キットは、(a)酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)粒子の集合体のスラリー液及び/又は(b)酸化チタン(IV)粒子のゾル液を含み、前記スラリー液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから500nmの範囲内であり、前記スラリー液に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から55%(重量/重量)であり、前記ゾル液に含まれる前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから100nmの範囲内であり、前記ゾル液に含まれる成分の合計を100%としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、5%(重量/重量)から40%(重量/重量)である、前記キット(但し、前記造影剤からは生きたヒトに投与されるものを除く)。
項15.項1から12のいずれか一項に記載の造影剤を、動物の管腔器官に注入する工程と、造影剤を注入した動物の器官のX線画像又は超音波画像を取得する工程を含む、動物血管の造影方法(但し、前記動物からは生きたヒトは除かれる)。
項16.項1から12のいずれか一項に記載の造影剤を、動物の血管に前記動物の正常の血流速と同等の範囲の流速で注入する工程と、造影剤を注入した動物の血管のX線画像又は超音波画像を取得する工程を含む、動物血管の造影方法(但し、前記動物からは生きたヒトは除かれる)。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される造影剤によれば、器官を高解像度で造影することができる。また、ある一効果として、直径が25μmよりも細い管腔器官を造影することができる。さらに、造影剤を注入した際の管腔器官への物理的な負荷が少ないため、細い管腔器官の構造を生体内に近い状態で可視化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】各造影剤の顕微鏡像を示す。
図2】各造影剤の経時的分散性を示す。
図3】腎臓の造影結果を示す。Aは、実施例1の造影剤を用いて撮像した造影結果を示す。BはHE染色を示す。Cは、参考例4の造影剤を用いて撮像した造影結果を示す。
図4図3Aの血管径の計測結果を示す。
図5】実施例1の造影剤を用いて撮像した脳の造影結果を示す。Aは、背面からの造影画像を示す。Bは、側頭からの造影画像を示す。Cは、血管径の計測結果を示す。
図6】実施例2造影剤を用いて肝臓を造影した結果を示す。Aは、造影結果を示す。Bは、血管径の計測結果を示す。
図7】Aは、比較例1の造影剤による造影結果を示す。Bは、ヨード造影剤による造影画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.造影剤
本開示のある実施形態は、動物の器官を撮像するための造影剤に関する。
【0012】
造影剤は、酸化チタン(IV)粒子を含む、X線撮影又は超音波撮影で目的の器官の造影を可能とする組成物である。本開示において造影とは、X線撮影又は超音波撮影で目的の器官(特に管腔器官)をより鮮明に写し出すことを意図する。
【0013】
酸化チタン(IV)は、二酸化チタン(TiO)とも称される。酸化チタン(IV)粒子は、好ましく結晶形態である。前記結晶形態には、アナタース形、ルチル形、及びブルッカイト形が含まれるが、好ましくは、アナタース形、又はルチル形である。
【0014】
本明細書において、「酸化チタン(IV)粒子」は一次粒子を意図する。酸化チタン(IV)粒子は、一次粒子径が1nmから500nm程度の範囲内であることが好ましい。好ましくは、一次粒子径の下限は、1nm、2nm、3nm、5nm、6nm、8nm、及び10nmから適宜選択し得る。一次粒子径の上限は、500nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、100nm、80nm、70nm、60nm、及び50nmから適宜選択し得る。下限と上限の組み合わせも適宜設定することができる。より好ましくは、2nmから350nm、5nmから300nmの範囲内を挙げることができる。
【0015】
前記酸化チタン(IV)粒子として、好ましくは、異なる一次粒子径を有する第1の酸化チタン(IV)粒子と、第2の酸化チタン(IV)粒子を挙げることができる。また第1の酸化チタン(IV)粒子と第2の酸化チタン(IV)粒子とを組み合わせて造影剤に添加することができる。
【0016】
例えば、第1の酸化チタン(IV)粒子は、一次粒子径が1nmから100nm程度の範囲内であることが好ましい。第1の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径の下限は、1nm、2nm、3nm、5nm、6nm、8nm、及び10nmから適宜選択し得る。第1の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径の上限は、100nm、80nm、70nm、60nm、及び50nmから適宜選択し得る。より好ましくは、第1の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、1nmから70nm、又は5nmから50nmの範囲内を挙げることができる。
【0017】
また、第2の酸化チタン(IV)粒子は、一次粒子径が70nmから500nm程度の範囲内であることが好ましい。第2の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径の下限は、70nm、80nm、100nm、150nm及び200nmから適宜選択し得る。第1の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径の上限は、500nm、400nm、350nm、300nm、及び250nmから適宜選択し得る。より好ましくは、第2の酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は、80nmから400nm、又は100nmから300nmの範囲を挙げることができる。
【0018】
一次粒子は酸化チタン(IV)の結晶であってもよい。一次粒子が酸化チタン(IV)の結晶である場合、一次粒子径は、酸化チタン(IV)の結晶子径となる。
【0019】
一次粒子径の測定方法は、例えば、特開2000−191325号公報、及び特開2011−12031号公報に記載されているように公知である。一次粒子径は、X線回折法等で測定することができる。また、X線回折法による測定上限値(100nm)を超える場合には、後述する酸化チタン(IV)粒子集合体の粒子径の測定方法に準じて測定することができる。好ましくは、一次粒子径は透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡下で各粒子の一次粒子径を測定し、数平均で求めた数平均粒子径を意図する。数平均粒子径の求め方は特開2011−12031号公報等に記載されている。ここで、一次粒子径とは、一次粒子の最短部の粒子径を意図し、最短部の粒子径とは、一次粒子の中心を通る最短の長さを意味する。例えば、金属酸化物微粒子の形状が球状であれば、球の直径を意味し、形状が楕円体状であれば、短径を意味し、形状が多角体状であれば、一次粒子の中心を通る最短の長さを意味し、形状が鱗片状、(六角)板状などの薄片状であれば、板面方向に垂直な方向(すなわち、厚さ方向)において、一次粒子の中心を通る最短の長さ(=厚さ)を意味し、形状が針状、柱状、棒状、筒状などであれば、長さ方向に対して垂直方向に測定される一次粒子の中心を通る最短の長さを意味する。
【0020】
市販の酸化チタン(IV)粒子を使用する場合には、製品の添付書類に記載されている酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が、上記粒子径の範囲に入っていればよい。
【0021】
また、酸化チタン(IV)粒子は、所定の粒度分布の範囲内に入ることが好ましい。一次粒子径が1nmから100nm程度の範囲内である場合、許容される粒度分布は、下限値が0.5nm程度、上限値が200nm程度でありうる。好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは3nm〜50nm程度である。一次粒子径が70nmから500nm程度の範囲内である場合、許容される粒度分布は、下限値が50nm程度、上限値が700nm程度でありうる。好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは3nm〜50nm程度である。所定の粒度分布の範囲内に入るとは、酸化チタン(IV)粒子の分散液に含まれる酸化チタン(IV)粒子の90%以上、93%以上、95%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上又は100%以上が、前記粒度分布の範囲に入ることを意図する。
【0022】
酸化チタン(IV)粒子は、酸化チタン(IV)粒子そのものが溶媒にスラリー状に分散するか、酸化チタン(IV)粒子の集合体(以下、酸化チタン(IV)集合体ともいう)を形成した状態で溶媒にスラリー状に分散しうる(以下、スラリー液ともいう)。また、酸化チタン(IV)粒子は、ゾル状態で溶媒に分散し得る(以下、ゾル液ともいう)。
【0023】
酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が70nmから500nmである場合には(好ましくは結晶形がルチル形の場合には)、酸化チタン(IV)粒子がスラリー状に分散するため、分散粒子径は一次粒子径と同じとなる。酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径が1nmから100nm程度の範囲内である場合には、溶媒の中で集合体を形成しスラリー状に分散し得る。
【0024】
酸化チタン(IV)粒子が、酸化チタン(IV)集合体として分散している場合(すなわち、スラリー液では)、酸化チタン(IV)集合体の見掛け上の平均粒子径(分散粒子径)は、酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径に依存するが、例えば、10nm〜300nm、好ましくは50nm〜100nmの範囲を例示することができる。酸化チタン(IV)集合体の形状は制限されないが、例えば、球状であることが好ましい。ここで、球状とは、平均軸比が0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上をいう(真球の軸比は1)。軸比は、一塊の酸化チタン(IV)集合体(以下、1試料という)について最長方向で測定した軸長(例えばx nm)と該最長方向に対して垂直な方向の軸長(例えばy nm)との比(軸比=y/x)を意図する。
【0025】
1試料の軸長は、例えば、酸化チタン(IV)集合体の透過型顕微鏡画像を取得し、1試料ずつ軸長を計測することにより測定することができる。平均粒子径は、1試料が球形であると仮定して、計測した軸長の平均値として求めることができる。平均は、酸化チタン(IV)粒子の一定単位重量あたりについて求められる重量平均であってもよく、計測した試料数の平均であっても良い。
【0026】
さらに、酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体は、所定の比表面積を有することが好ましい。比表面積は、例えば、150m/g以上である。比表面積は、好ましくは200m/g〜350m/g、より好ましくは、250m/g〜320m/gの範囲である。比表面積は、例えば比表面積測定装置(湯浅アイオニクス株式会社)等を使用して測定することができる。
【0027】
酸化チタン(IV)集合体をスラリー状に分散させる場合、酸化チタン(IV)粒子の結晶形は、好ましくはアナタース形又はルチル形である。
【0028】
酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、無機化合物(アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、メタリン酸等)で処理する方法、有機化合物(ステアリン酸、イソステアリン酸、又はラウリン酸等の脂肪酸;アルギン酸等の多糖類;シリコーンオイル;アルキルシラン化合物(アルキルの炭素数は1から4)等)で処理する方法が挙げられる。
【0029】
酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面のpHは、作業雰囲気下、若しくは造影剤内で、塩基性、酸性、又は中性を示し得るが、好ましくは中性である。塩基性とは、例えばpH8より高く、好ましくはpH8.5からpH11の範囲内であることを意図する。酸性等は、例えばpH1.5以上、pH4.5未満を意図する。中性とは、pH4.5以上、pH8程度、好ましくはpH6からpH8程度の範囲を意図する。
【0030】
酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面のpHは、表面処理に依存し得る。例えば、アルミナで処理した場合には、酸化チタン(IV)粒子の表面のpHは、塩基性を示し得る。シリカ、ジルコニアで処理した場合には、酸化チタン(IV)粒子の表面のpHは、酸性を示し得る。チタニア、ジルコニア、有機化合物で処理した場合には、酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面のpHは、中性を示し得る。また、酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面のpHが塩基性になる処理と、酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面のpHが酸性になる処理とを組み合わせることにより、酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面のpHを、中性、又は所望のpHに制御し得る。
【0031】
酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)集合体の表面処理方法として、例えば特開2000−219819号公報(ケイ素、アルミニウム水、及びアルギン酸で表面処理)、特開2018−20952公報(シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤で表面処理)等に記載の方法を例示することができる。
【0032】
上記のような特性を有する酸化チタン(IV)粉体として、テイカ株式会社製のAMT−100(アナタース形、一次粒子径6nm、比表面積280m/g、中性)、TKP−101(アナタース形、一次粒子径6nm、比表面積300m/g、弱酸性)、JR−301(ルチル形、一次粒子径300nm、Al処理、pH 6.0〜8.0)、JR−403(ルチル形、一次粒子径250nm、Al・Si処理、pH 6.0〜8.0)、JR−405(ルチル形、一次粒子径210nm、Al処理、pH 6.0〜8.0)、JR−600A(ルチル形、一次粒子径250nm、Al処理、pH 6.0〜8.0)、JR−605(ルチル形、一次粒子径250nm、Al処理、pH 6.0〜8.0)、JR−600E(ルチル形、一次粒子径270nm、Al処理、pH 6.0〜8.0)、JR−603(ルチル形、一次粒子径280nm、Al・Zr処理、pH 6.0〜8.0)、JR−805(ルチル形、一次粒子径290nm、Al・Si処理、pH 6.5〜8.5)、JR−806(ルチル形、一次粒子径250nm、Al・Si処理、pH 6.5〜8.5)、JR−701(ルチル形、一次粒子径270nm、Al・Si・Zn処理、pH 6.0〜8.0)、JRNC(ルチル形、一次粒子径270nm、Al・Si・Zn処理、pH 6.0〜8.0)、JR−800(ルチル形、一次粒子径270nm、Al・Si処理、pH 6.5〜8.5)、JR(ルチル形、一次粒子径270nm、pH 6.5〜9.5)等を例示できる。
【0033】
スラリー液には、スラリー液に含まれる全成分の合計を100%(重量)とした時に、酸化チタン(IV)粒子を5%(重量/重量)から55%(重量/重量)程度、好ましくは10%(重量/重量)から50%(重量/重量)程度含有させることができる。
【0034】
スラリー液の調製において、酸化チタン(IV)集合体をスラリー状に分散させる溶媒としては、アクリル酸エステル共重合物、アクリル酸エステル等を挙げることができる。アクリル酸エステル共重合物としては、アクリル酸と炭素数1〜3のアルコール(直鎖であっても分岐鎖であってもよい)のエステルの共重合物を例示することができる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸と炭素数1〜3のアルコール(直鎖であっても分岐鎖であってもよい)のエステルを例示することができる。
【0035】
スラリー液は、市販の製品を購入してもよい。例えば、市販の製品としては、テイカ株式会社より販売されている、TKD−801(AMT−100の中性の水スラリーであり、酸化チタン(IV)の含有量は10〜20%)、TKD−802(TKP−101の中性の水スラリーであり、酸化チタン(IV)の含有量は15〜20%)、WD0456(酸化チタン(IV)の含有量は35〜45%、一次粒子径及び分散粒子径250nm)等を例示することができる。
【0036】
また、酸化チタン(IV)粒子がゾル状態で溶媒に分散している場合(すなわち、ゾル液では)、酸化チタン(IV)粒子は、酸化チタンヒドロゾル(溶媒は水、水溶液等)又は酸化チタンオルガノゾル(溶媒は、メタノール、エタノール等)の状態で分散していることが好ましい。より好ましくは酸化チタンハイドロゾルである。酸化チタン(IV)粒子の結晶形はアナタース形であってもルチル形であってもよい。好ましくはアナタース形である。
【0037】
ゾル状の酸化チタン(IV)粒子の平均分散粒子径(平均ミセル径)は、3nm〜1,000nmを例示することができる。平均分散粒子径の下限値は、例えば3nm、5nm、6nm、8nm、10nm、12nm、15nm及び20nmの中から選択することができる。平均分散粒子径の上限値は、例えば1,000nm、500nm、300nm、200nm、100nm、及び50nmの中から選択することができる。前記下限値及び上下値は適宜組み合わせることができる。結晶形がアナタース形の場合には、平均分散粒子径の下限値は、好ましくは5nm、6nm、8nm、10nm、12nmから選択することができ、上限値は、300nm、200nm、100nm、及び50nmの中から選択することができる。結晶形がルチル形の場合には、平均分散粒子径の下限値は、6nm、8nm、10nm、12nm、15nm及び20nmの中から選択することができ、上限値は、1,000nm、500nm、300nm、200nm、及び100nmの中から選択することができる。
【0038】
ゾル液には、ゾル液に含まれる全成分の合計を100%(重量)としたときに、酸化チタン(IV)粒子を5%(重量/重量)から40%(重量/重量)程度、好ましくは10%(重量/重量)から35%(重量/重量)程度含有させることができる。
【0039】
ゾル状の酸化チタン(IV)粒子は、例えば特開2007−246351号公報(ケイ素の水酸化物、又はケイ素、スズ、アルミニウム、及びジルコニウムの水酸化物で酸化チタンを被覆)、特開2000−290015号公報(リン酸で酸化チタンを被覆)等に記載の方法により調製することができる。ゾル状の酸化チタン(IV)粒子は、市販の製品を購入してもよい。例えば、市販の製品としては、テイカ株式会社より販売されている、TKS−203(一次粒子径は6nm、酸化チタン(IV)の含有量は15〜25%、中性チタニアゾル)等を例示することができる。
【0040】
造影剤中で、酸化チタン(IV)粒子は、酸化チタン(IV)集合体がスラリー状で及び/又はゾル状で分散して存在する。すなわち、造影剤は酸化チタン(IV)粒子の分散液である。
【0041】
造影剤は、酸化チタン(IV)集合体のスラリー液をそのまま、或いは希釈液で希釈して使用することができる。また、造影剤は、別の態様として、酸化チタン(IV)粒子のゾル液をそのまま、或いは希釈液で希釈して使用することができる。スラリー液とゾル液を混合して造影剤として使用しても良く、スラリー液とゾル液の混合液をさらに希釈液で希釈して造影剤として使用してもよい。造影剤を調製するタイミングは制限されないが、好ましくは使用時に、具体的には使用する5分前、3分前、又は2分前に行うことができる。
【0042】
希釈液としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等を例示することができる。
【0043】
造影剤は、動物の血流の速度と同等の速度で器官内に注入できる粘度を有するものである限り制限されない。造影剤をこのような仕様とすることで、細い管腔器官、例えば管腔器官の内径が25μm以下、好ましくは20μm程度の管腔器官に物理的な負荷をかけることを低減でき、本来の器官の形態に近い形態で造影することができる。
【0044】
造影剤に含まれる酸化チタン(IV)粒子の含有量は、造影剤に含まれる全成分の合計を100%(重量)としたときに、3%(重量/重量)から55%、好ましくは5%(重量/重量)から40%(重量/重量)程度とすることができる。
【0045】
造影剤として好ましくは、テイカ株式会社製のTKD−801、TKD−802及びこれらの希釈液(例えば、容積比で1.2倍から3倍希釈液、好ましくは1.4倍から2倍希釈液)を例示することができる。造影剤の別の態様では、テイカ株式会社製のTKS−203及びその希釈液(例えば、容積比で1.2倍から3倍希釈液、好ましくは1.4倍から2倍希釈液)を例示することができる。造影剤の別の態様では、テイカ株式会社製のWD0456及びその希釈液(例えば、容積比で1.2倍から3倍希釈液、好ましくは1.4倍から2倍希釈液)を例示することができる。造影剤の別の態様では、テイカ株式会社製のTKS−203及びWD0456の混合液(混合比率は、例えば容積比で1〜3:3〜1程度)を例示することができる。例えば肝臓の造影には、テイカ株式会社製のTKD−801のPBS希釈液(例えば、容積比で1.2倍から3倍希釈液、好ましくは1.4倍から2倍希釈液、より好ましくはTKD−801:PBS=4:2)を使用することが好ましい。
【0046】
造影剤は、少なくとも動物に注入時に造影対象となっている動物の正常の血流(好ましくは収縮期)と同等の流速の範囲で血管に注入できる粘度であることが好ましい。このような条件を満たすことができる粘度は、血液の粘度(概ね3から4程度)以下である。具体的には、造影剤の粘度は、3.0以下、好ましくは2.5以下である。前記粘度は、粘度計 キャノン・フェンスケ(不透明液用)逆流計(SF) 粘度計番号50(柴田科学株式会社026120−0004)で、JISK2283−2000年に基づいて測定した23℃における動粘度(mm/秒{cSt})である。より好ましくは、25Gの翼状針(テルモ社製)を使って、マウスの血管に流速8.5ml/分で注入できる粘度以下である。
【0047】
本開示において動物は、無脊椎動物であっても、脊椎動物であっても良い。脊椎動物には、哺乳類、鳥類、魚類、は虫類、両生類等を含み得る。動物として、好ましくは実験に使用される動物であり、より好ましくは哺乳類又は鳥類である。実験動物としては、マウス、ラット、モルモット、スナネズミ、ウサギ、イヌ、ネコ、フェレット、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、ニワトリ等を挙げることができる。動物は、生体であっても死体であってもよいが、動物が生体である場合、本開示の造影剤からは、生きたヒトに投与されるものは除かれる。より好ましくはヒトに投与されるものは除かれる。
【0048】
前記造影剤は、動物の器官を造影するために使用される。前記器官は、他の器官から独立した器官であってもよく、他の器官内に存在する管腔器官であってもよい。
【0049】
動物の器官は、特に制限されない。例えば、器官として、循環器系器官(心臓、動脈、静脈、リンパ管等)、呼吸器系器官(鼻腔、副鼻腔、喉頭、気管、気管支、肺等)、消化器系器官(口唇、頬部、口蓋、歯、歯肉、舌、唾液腺、咽頭、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、胆管、胆道、膵臓、膵管等)、泌尿器系器官(尿道、膀胱、尿管、腎臓)、神経系器官(大脳、小脳、中脳、脳幹、脊髄、末梢神経、自律神経等)、女性生殖器系器官(卵巣、卵管、子宮、膣等)、乳房(乳腺)、男性生殖器系器官(陰茎、前立腺、精巣、精巣上体、精管)、内分泌系器官(視床下部、下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、副腎等)、外皮系器官(皮膚、毛、爪等)、造血器系器官(血液、骨髄、脾臓等)、免疫系器官(リンパ節、扁桃、胸腺等)、骨軟部器官(骨、軟骨、骨格筋、結合組織、靱帯、腱、横隔膜、腹膜、胸膜、脂肪組織(褐色脂肪、白色脂肪)等)、感覚器系器官(眼球、眼瞼、涙腺、外耳、中耳、内耳、蝸牛等)が挙げられる。器官として、好ましくは心臓、動脈、静脈、毛細血管、リンパ管、気管、気管支、肺、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、S状結腸、直腸、肝臓、胆嚢、胆管、胆道、膵臓、膵管、尿道、膀胱、尿管、腎臓、卵管、精管等の管腔構造を有する器官(管腔器官ともいう)を挙げることができる。動脈、静脈、毛細血管等の血管、及びリンパ管等は、他の器官内に存在し得る管腔器官である。
器官は、体内に存在していてもよいが、摘出されていてもよい。
【0050】
また、前記造影剤は、好ましくは、各器官に含まれる血管を造影するために使用することができる。血管造影が特に有用な器官として、脳、心臓、肝臓、腎臓、肺等を挙げることができる。
【0051】
2.造影剤を調製するための試薬及びキット
本開示のある実施形態は、上記1.で述べた酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の器官のX線画像又は超音波画像を取得する際に、前記動物の器官に注入される造影剤を調製するための試薬及びキットに関する。
【0052】
試薬は、上記1.で述べた酸化チタン(IV)粒子又は酸化チタン(IV)粒子の集合体のスラリー液(以下、「a試薬」ともいう)、及び上記1.で述べた酸化チタン(IV)粒子のゾル液(以下、「b試薬」ともいう)のどちらか一方又は両方を含み得る。1つの試薬にa試薬とb試薬の両方を含む場合配合剤の形態となる。
【0053】
またキットは、独立してa試薬を含む包装及び独立してb試薬を含む包装から選択される少なくとも1種の包装か、a試薬とb試薬との両方が配合された包装を含み得る。キットには、キットの使用方法を記した説明書、或いは説明書が掲載されたWebページのURL、又は前記URLのQRコード(登録商標)を記した書面が含まれていてもよい。さらにキットには、上記1.で述べた希釈液がa試薬及び/又はb試薬とは独立した包装で含まれていてもよい。
【0054】
3.造影方法
本開示のある実施形態は、器官の造影方法に関する。なお本実施形態は,好ましくは生きたヒトには適用されない。
【0055】
器官の造影方法は、少なくとも、上記1.に記載の造影剤を動物の管腔器官に注入する工程と、造影剤を注入した動物から摘出した器官のX線画像又は超音波画像を取得する工程を含む。ここで、器官の造影には、器官に存在する管腔器官を造影することにより、器官の全体又は一部を造影することを含む。動物の器官への造影剤の注入は管腔器官又は器官内に存在する管腔器官に行われることが好ましい。
【0056】
造影剤を動物の管腔器官に注入する方法は、特に制限されないが、シリンジ等に造影剤を充填し注射針(針の太さは、管腔器官の内径に応じて選択することができる。例えば25Gから18G)を使って、目的の管腔器官に注入することができる。造影処置を始める前に、動物は深麻酔で眠らせておくか、犠牲死させておくことが好ましい。管腔器官に内容物が入っている場合には、あらかじめ生理食潜水、PBS等を灌流することで内容物を除去することができる。また、管腔器官の内容物を除去した後、造影剤を注入する前に、組織固定液(例えば4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液等)を灌流し、組織を固定してもよい。
【0057】
管腔器官が血管である場合、造影剤は、ペリスタポンプにつないだ注射針又は翼状針等を使って前記動物の正常の血流速と同等の流速の範囲で注入することが好ましい。例えば、マウスであれば、流速7.0ml/分から9.0ml/分程度、好ましくは流速8.5ml/分程度で注入することが好ましい。管腔器官が血管以外の器官の場合には、造影対象器官に生理的な条件下で負荷される内圧を超えない範囲で、造影剤を注入することが好ましい。このようにすることで、管腔器官に注入した際の、特に細い管腔器官の変形を低減することができる。
【0058】
X線画像又は超音波画像を取得する際には、造影対象器官の摘出を行っても、行わなくてもよいが、X線画像を取得する場合には、造影対象器官を摘出することが好ましい。造影対象器官を摘出する場合には、注入した造影剤が漏れないように、管腔器官の近位部位と遠位部位を結紮してから器官を摘出することが好ましい。
【0059】
X線画像又は超音波画像の取得は、造影対象器官の撮像ができる限り制限されない。このような撮像装置は公知である。X線画像の取得は、単純撮影であってもCT撮影であってもよいが、好ましくはCT撮影である。CT撮影装置は、動物の器官の大きさに対応した解像度を有する限り制限されない。例えばCT撮影装置としては、実験動物用3DマイクロX線CT (micro−CT Scan X mate E090 Scanner コムスキャンテクノ株式会社)等を挙げることができる。超音波画像の取得は、例えば小動物用 超音波高解像度イメージングシステム Vevo(登録商標)2100等を用いて行うことができる。
【0060】
取得した画像を、例えばOsiriX(ニュートン・グラフィックス)等を用いて3次元構築してもよい。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示して本発明についてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。
また、本実施例における動物実験は、長浜バイオ大学付属実験施設運営委員会の承認の元に行った。
【0062】
1.調製例
本実施形態の一例として表1に示す組成で造影剤を調製した。
WD0456、TKS−203、TKD−801は、テイカ株式会社より譲渡を受けた。二酸化チタンは富士フイルム和光純薬(株)社製のTitanium(IV) Oxide, Anatase Form(製造元コード205-01715)を使用した。メチルセルロースは富士フイルム和光純薬(株)社製のメチルセルロース(製造元コードM294945)を使用した。分散剤は、サンノプコ株式会社製のSN デフォーマー 265を使用した。
【0063】
【表1】
【0064】
2.実験例1
調製した造影剤を位相差顕微鏡下(400倍)で観察し、酸化チタン粒子の分散性を評価した。図1に示すように、参考例1から3の造影剤は、顕微鏡で観察すると大きさの不揃いな大きな酸化チタン(IV)粒子の凝集塊(5〜20μm程度)が認められた。非特許文献1に記載の造影剤である参考例4の造影剤は、参考例1から3の造影剤に比べると、凝集塊はやや小さかった。これに対して実施例1及び実施例2の造影剤は、粒子に不揃いは認められず、均一に酸化チタン(IV)粒子が分散していた。また、実施例1及び実施例2の造影剤の粒子径は参考例4の造影剤よりも小さかった。
【0065】
3.実験例2
粘度計 キャノン・フェンスケ(不透明液用)逆流計(SF) 粘度計番号50(柴田科学株式会社026120−0004)を用いて、JISK2283−2000年に基づいて23℃における動粘度(mm2/秒{cSt})を測定した。
【0066】
混合20分後に測定した実施例1の造影剤の粘度は1.009であった。この測定における蒸留水の粘度は、1.005であった。また、市販の造影剤であるマイクロフィル(Flow Tek社)は調製後20分における粘度が4.00-5.00を示した。このことから、本発明の造影剤は、一般的な造影剤と比較しても粘度が低いことが示された。
【0067】
4.実験例3
次に造影剤を調製してからの分散性の経時的変化を観察した。その結果を図2に示す。参考例4は、顕微鏡下では比較的分散粒子径が小さかったが、造影剤調製直後から酸化チタン(IV)粒子の沈降が起こった。
【0068】
実施例1及び実施例2の造影剤は、調製してから15分経過しても分散したままであった。実施例1の造影剤は、調製してから30分経過後に酸化チタン(IV)粒子の沈降が認められたが、実施例2の造影剤は、調製してから30経過しても分散していた。
【0069】
5.実験例4
実施例1、又は実施例2の造影剤を用いて実際にマウスの血管の造影を行い、解像度を検討した。
【0070】
(1)方法
シリコンチューブ(内径2 mm× 外径4 mm アズワン社)に三栓コックで翼状針(25G TERUMO社)をつなぎ、シリコンチューブをペリスタポンプ(ATTO SJ-1211 II -H ATTO社)にセットした。シリコンチューブの先にマウスに注入する生理食塩水をセットした。ペリスタポンプは、流速8.5ml/min にセットし、注入まで翼状針側のコックを閉栓した。10週齢ICRマウス(雌)にソムノペンチル(64.8mg/min)を腹腔内投与し、深く麻酔がかかったところで開胸して心臓を露出した。露出した心臓の左心室に翼状針を3mmほど穿刺し、翼状針側のコックを開栓し生理食塩水の心臓への注入を開始した。心臓が膨らんだのを確認したのちに右心耳を切除して出血させて約3分間全身灌流を行った。
【0071】
切除した右心耳から流れ出る生理食塩水に血が混ざっていないことを確認し、翼状針側のコックを閉栓し灌流を停止した。続いて生理食塩水を実施例1又は実施例2の造影剤に付け替え、翼状針側のコックを開栓し、造影剤を流速8.5ml/minで注入した。臓器ごとに大きな血管(腎臓; 腎動静脈、肝臓; 門脈、肝静脈)の遠位部及び近位部をナイロン糸で結紮し、造影剤が漏れ出さないようにした後に、各臓器を摘出した。
摘出した臓器は、CT装置(micro-CT (Scan X mate E090 Scanner) コムスキャンテクノ(株))でCT撮影を行った。また撮影画像は、OsiriXを用いて画像の三次元構築を行った。
【0072】
比較例として、2.0% 二酸化チタン-0.6%メチルセルロース/PBS(比較例1)又は参考例4の造影剤を実施例1又は実施例2の造影剤に変えて注入した。比較例1の造影剤は、粘度が高いため、流速3 ml/分程度で注入した。また、比較例2として、市販されているヨード造影剤(和光純薬、ヨウ化カリウム 製造元コード164-03972)を注入した。
【0073】
(2)結果
図3Aに実施例1の造影剤を用いて腎臓を造影した結果を示す。図3Bは腎臓皮質の位置を示すためのHE染色像を示す。また、図3Cに参考例4の造影剤を使用した造影結果を示す。図3Aでは、実施例1の造影剤が腎臓皮質部分の血管にも注入されていた。図3Cでは皮質の血管は造影されていないため、実施例1の造影剤は参考例4と比較してより解像度が高く、より細い血管を造影できることが示された。また、図4図3Aの拡大画像を示す。血管径を測定したところ20μmの太さ(内径)まで造影されていた。
【0074】
図5に実施例1の造影剤を用いて脳を造影した結果を示す。図5Aは、背面からの造影画像を示す。また、図5Bは、側頭からの造影画像を示す。図5Cは、図5Aの拡大画像を示す。脳においても主要な血管の造影が可能であった。また、図5Cに示すように、血管径を測定したところ20μmの太さ(内径)まで造影されていた。
【0075】
図6Aに、実施例2造影剤を用いて肝臓の右葉を造影した結果を示す。また、図6Bに、図6Aの拡大画像を示す。脳においても主要な血管の造影が可能であった。また、図5Bに示すように、血管径を測定したところ20μmの太さ(内径)まで造影されていた。
【0076】
図7Aに比較例1の造影剤による造影結果を示す。比較例1の造影剤は、特に矢印に示した部分において血管の膨張が認められた。血管は本来であれば末梢に行くほど細くなるため、血管径が近位側よりも遠位側で太くなる場合には、血管の閉塞等の異常が考えられる。図7Aの矢印部分は、遠位側の方が太くなっているため、造影剤の注入による血管腔の膨張(変形)が起こっていると考えられた。これに対して、図5A及び図6Aではこのような所見は認められなかった。図4Aにおいて、末梢血管側(特に皮質側)で球状に見える部位分は、腎臓の糸球体であると考えられる。糸球体は組織としては毛細血管が絡み合い球状を呈するが、CT撮像装置の解像度の限界から球状に撮像されたと考えられた。さらに図7Bのヨード造影剤による造影画像では、造影剤が血管から漏れ出てしまい、臓器全体が一様に造影され、血管を視認することができなかった。
【0077】
以上の結果から、本発明に係る造影剤は、従来の造影剤として解像度(特に細い血管の造影能)の点で優れていることが示された。さらに、今回左心室から造影剤の注入を行っているため、動脈が造影されるはずであるが、図6Aでは肝動脈を肝静脈の双方が造影された。このことは動脈に注入された造影剤が末梢血管を通過して、静脈に流れ込んでいることを示している。
【0078】
以上の結果から、本発明の造影剤により細い血管を変形させることなく造影できることが示された。また、従来の造影剤よりも解像度が高いことが示された。
【要約】
【課題】
管腔器官を高解像度で造影可能な造影剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
酸化チタン(IV)粒子を含む、動物の管腔器官のX線画像又は超音波画像を取得する際に、前記動物の器官に注入される造影剤であって、前記造影剤は、前記酸化チタン(IV)粒子の分散液であり、前記酸化チタン(IV)粒子の一次粒子径は1nmから500nmの範囲内であり、前記造影剤に含まれる成分の合計を100%(重量)としたときの前記酸化チタン(IV)粒子の含有量が、3%(重量/重量)から55%(重量/重量)である、造影剤(但し、生きたヒトに使用されるものを除く)を提供する。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7