(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571312
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20060101AFI20190826BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20190826BHJP
B01D 61/48 20060101ALI20190826BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20190826BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/08
B01D61/48
B01D61/58
C02F1/44 J
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-21037(P2014-21037)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147172(P2015-147172A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月10日
【審判番号】不服2018-13147(P2018-13147/J1)
【審判請求日】2018年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直也
(72)【発明者】
【氏名】笠間 修
【合議体】
【審判長】
豊永 茂弘
【審判官】
金 公彦
【審判官】
櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−137859(JP,A)
【文献】
特開2008−284488(JP,A)
【文献】
特開2010−201361(JP,A)
【文献】
特開2004−33976(JP,A)
【文献】
特開2011−88085(JP,A)
【文献】
特開2001−38359(JP,A)
【文献】
特開2004−82092(JP,A)
【文献】
特開平3−26390(JP,A)
【文献】
特開2000−61271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44- 1/48
B01D61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法において、電気式脱イオン装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置を使用し、上記の各脱塩室の通水方向を上向流とし、上記の各濃縮室への通水方向を下向流することにより、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向にし、電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5〜3.0mg/Lの範囲とすることを特徴とする純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造方法に関し、詳しくは、逆浸透膜装置(RO)とその後段に配置された電気式脱イオン装置(EDI)とを利用した経済的に有利な純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度の純水を製造するための純水製造システムには、一般に、前処理装置としてのROと、得られたRO透過水を高度処理する脱イオン装置としてのEDIとが組み込まれている(例えば特許文献1〜3)。
【0003】
ところで、EDIは、基本的には、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて構成されている。
【0004】
陽極および陰極から直流電流を通ずると、各脱塩室では被処理水(RO透過水)中の不純物イオンが陰イオン交換基および陽イオン交換基により捕捉除去され、純水が製造されると共に、捕捉された不純物イオンは脱塩室の隔膜でもある陰イオン交換膜および陽イオン交換膜により電気透析されて隣接する濃縮室に移動し、濃縮されて排出される。
【0005】
そして、EDIの上記の各脱塩室および濃縮室への通水方向は、特に制限されないが、上から下方向に通水する場合に懸念される空気の巻き込みを防止するとの観点から、脱塩室および濃縮室ともに上向流するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−317457号公報
【特許文献2】特開2001−104959号公報
【特許文献3】特開2002−320971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、EDIの被処理水はイオン交換膜への析出成分(弱電解質であるシリカ)の閉塞等の影響が懸念されるため、水質制限値が規定されている。それ故、EDIの前段に配置されるROの被処理水にも水質制限値が設けられ、EDIの水質制限値を守るためには、ROを二段にする、ROの回収率を下げるなどの対策が講じられるが、それでは、処理システムの煩雑化及び処理費用の増大を招くこととなる。処理費用の削減策として、ROの回収率をアップさせた場合は、ROの経年使用による交換頻度の増大に繋がることが考えられる。因みに、EDIに被処理水として供給されるROの透過水のシリカ濃度は、通常1.0mg/L以下、好ましくは1.0mg/L以下とされている。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、EDIにおけるシリカの除去効果を高めることにより、規定されているEDIの被処理水の水質制限値を上回るRO処理水の通液を可能とした経済的に有利な純水製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、意外にも、EDIの上記の各脱塩室および濃縮室への通水方向によってシリカの除去効果が異なり、通水方向を向流にするならば、シリカの除去効果が顕著に高められるとの知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、逆浸透膜装置とその後段に配置された電気式脱イオン装置とを利用した純水製造方法において、電気式脱イオン装置として、陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室との間に陰イオン交換膜および陽イオン交換膜を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室および濃縮室から構成され、脱塩室および濃縮室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されて成る電気式脱イオン装置を使用し、
上記の各脱塩室の通水方向を上向流とし、上記の各濃縮室への通水方向を下向流することにより、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向にし、電気式脱イオン装置に被処理水として供給される逆浸透膜装置の透過水のシリカ濃度を1.5〜3.0mg/Lの範囲とすることを特徴とする純水製造方法に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軟水器の削減、RO導入本数の低減又はRO水回収率の向上、RO劣化の際の交換頻度の低減が可能であり、従来法より、低コスト、省スペース且つメンテナンスが少なく長期連続運転可能な純水製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はEDIの一例の垂直縦断正面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の純水製造方法においては、ROとその後段に配置されたEDIとを利用する。
【0014】
ROとしては、その形式や膜の種類は特に制限されず、水処理分野で使用されている各種のものを使用することが出来る。運転圧力などの処理条件についても同様である。
【0015】
EDIとしても、上記と同様であり、特に制限されないが、例えば、特開2001−137859号公報により本出願人が提案した
図1に示すものを使用することが出来る。
【0016】
図1に示すEDI(1)は、陽極(2)を備えた陽極室(3)と陰極(4)を備えた陰極室(5)との間に陰イオン交換膜(61)及び陽イオン交換膜(71)を交互に配列して順次形成される複数組の脱塩室(81)、(82)・・・及び濃縮室(91)、(92)・・・から構成される。
【0017】
すなわち、陰イオン交換膜(61)と陽イオン交換膜(71)とに挟まれて脱塩室(81)が構成され、同様にして陰イオン交換膜(62)と陽イオン交換膜(72)とに挟まれて第2の脱塩室(82)が形成される。この様に陰イオン交換膜(61)と陽イオン交換膜(71)とが交互に配列され、図示の装置の場合は5個の脱塩室が形成されている。一方、陽イオン交換膜(71)と陰イオン交換膜(62)とに挟まれて第1濃縮室(91)が形成され、同様にして陽イオン交換膜(72)と陰イオン交換膜(63)とに挟まれて第2濃縮室(92)が形成される。この様にして図示の装置の場合は4個の濃縮室が形成されている。そして、上記の5個の脱塩室には陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(A)がそれぞれ収容されている。また、4個の濃縮室にも陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(a)がそれぞれ収容されている。
【0018】
図1に示すEDI(1)は、上記の様に濃縮室にも陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物(a)を収納しているために電気的安定性に優れる特徴を有する。
【0019】
上記の脱塩室および濃縮室を形成するためのイオン交換膜としては、通常のEDIで採用されているものが使用され、例えば、商品名「セレミオン(旭硝子(株))」、「ネオセプタ(トクヤマ(株))」、「アシプレックス(旭化成(株))」等の市販品が挙げられる。
【0020】
上記の脱塩室に充填されるイオン交換体としては、通常の純水製造時の脱塩処理に使用されているイオン交換樹脂の他に所定厚さの不織布状に加工されたイオン交換繊維を使用することが出来る。イオン交換樹脂は、通常の純水製造に採用されているイオン交換樹脂から適宜選定される。例えば、強酸性陽イオン交換樹脂としては、「ダイヤイオン(三菱化学(株)登録商標)SK1B」、「PK208」等、強塩基性陰イオン交換樹脂としては、「ダイヤイオンSA10A」、「PA316」等が挙げられる。イオン交換繊維としては、具体的には、ポリスチレン系繊維と補助剤との複合繊維にイオン交換基を導入したもの、ポリビニルアルコールの繊維基体にイオン交換基を導入したもの、ポリオレフィン系の繊維に放射線を照射して放射線グラフト重合を利用してイオン交換基を導入したもの等の市販品が利用できる。上記の陽イオン交換体および陰イオン交換体とは、一般的には両者の交換容量が同じとなる量で使用される。
【0021】
また、イオン交換体は、再生型および塩型の何れの型で使用してもよいが、水質の立ち上がりを早くするのには再生型を使用するのがよい。なお、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の再生型混合樹脂としては、例えば、三菱化学(株)製の商品「SMT100L」等がある。
【0022】
本発明の最大の特徴は、上記の各脱塩室の通水方向と上記の各濃縮室への通水方向とを向流方向にしてEDIの運転を行うことにより、EDIに被処理水として供給されるROの透過水のシリカ濃度を1.5〜3.0mg/L(好ましくは1.5〜2.5mg/L)の範囲に高めた点にある。上記の向流方式により、EDIにおけるシリカの除去効果が顕著に高められる(換言すれば、EDIに被処理水として供給されるROの透過水のシリカ濃度を厳しく制限せずに上記のような高濃度の範囲にし得る)理由は次のように推定される。
【0023】
向流の場合、当然ながら、濃縮水の入口側と被処理水の出口側とは並列であり、濃縮水の出口側と被処理水の入口側とは並列になる。このとき、被処理水の塩成分は、電気脱塩により濃縮水側に移動し、濃縮水の塩濃度を上昇させる。この上昇傾向は、被処理水の入口側の方が大きくなる。その結果、向流方式であれば、濃縮水の塩濃度が上昇しても、直ちに出口から濃縮水を排水することができ、濃縮水が濃縮室内部(イオン交換膜、特にアニオン交換膜)に接触する時間も短く、濃縮室内部での塩成分の析出(電圧上昇と脱塩効率の低下の原因)を抑えることが可能になる。
【0024】
濃縮室内部での塩成分の析出を抑えることができれば、電流の流れも阻害されず、脱塩効率を維持し易くなり、弱電解質(シリカ成分)の除去効果も改善される。換言すれば、電圧上昇と脱塩効率の低下の原因である濃縮室内部での塩成分の析出を抑制することにより、弱電解質(シリカ成分)除去効果が維持される。
【0025】
本発明で使用するEDI(1)においては、濃縮室にも陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が収容されているため、空気の巻き込みによる偏流等の影響は殆どなく、濃縮室の通水方向は上向流、下向流どちらも可能である。従って、脱塩室の通水方向を下向流、濃縮室の通水方向を上向流とする向流方式にすることも可能である。
【0026】
しかしながら、
図1に示すように、脱塩室への通水方向を上向流とし、濃縮室への通水方向を下向流とする態様の向流方式が推奨される。何故ならば、イオン交換およびイオンの流れが起こる脱塩室では、より安定した流れが必要とされ、通水方向を上向流とすることにより空気の巻き込みの機会を一層確実に防止するのが好ましいからである。
【0027】
図1に示すEDI(1)は次の様に運転される。5個の各脱塩室には、並行して被処理水(RO透過水)を脱塩室側流入管(131)から供給する。脱イオンされた水(純水)は脱塩室側流出管(132)から流出される。4個の各濃縮室には、並行して濃縮水を濃縮室側流入管(141)から供給する。各濃縮室に供給された濃縮水は、不純物イオンを濃縮した濃縮水として濃縮室側流出管(142)から排出される。また、濃縮室への濃縮水の供給と同時に、被処理水(電極水)を、陽極室側流入管(121)から陽極室(3)に、陰極室側流入管(123)から陰極室(5)にそれぞれ導入し、各々、陽極室側流出管(122)、陰極室側流出管(124)から排出させる。
【0028】
上記の各流路により通水させながら、陽極(2)及び陰極(4)から直流電流を通ずると、各脱塩室では被処理水中の不純物イオンが陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物が有する陰イオン交換基および陽イオン交換基により捕捉除去され、純水が製造されると共に、陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物に捕捉された不純物イオンは脱塩室の隔膜でもある陰イオン交換膜および陽イオン交換膜により電気透析されて隣接する濃縮室に移動して濃縮され濃縮室側流出管(142)から排出される。
【0029】
本発明においては、ROとその後段に配置されたEDIとを利用するが、EDIにおけるシリカ除去率が高められるため、ROは1段処理で充分であるばかりか、EDIの被処理水の水質制限値規定を必要以上に考慮してROの回収率を下げる必要もない。従って、経済的に有利な純水製造方法を実現するため、本発明におけるRO透過水(EDI被処理水)のシリカ濃度は、従来の1.0mg/L以下に対し、大幅に高い範囲、すなわち、1.5〜3.0(好ましく1.5〜2.5)mg/Lの範囲としている。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1:
ROにはモジュール「SU−710」(東レ(株)製)を用いた。EDIには、
図1に示す構造を有し、以下に記載の仕様のものを使用した。
【0032】
(EDIの仕様)
陰イオン交換膜としては、セレミオンAMD[旭硝子(株)製、セレミオンは同社登録商標]を使用し、陽イオン交換膜としては、セレミオンCMD[旭硝子(株)製]を使用した。脱塩室および濃縮室に充填するイオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂の再生型混合樹脂(三菱化学(株)製の商品「ダイヤイオンSMT100L」:含水率50重量%)を使用した。脱塩室数45室、濃縮室数44室、脱塩室は、縦390mm、横130mm、厚さ2mmであり、濃縮室は、縦390mm、横130mm、厚さ2mmである。
【0033】
原水として横浜市水を使用し、活性炭塔で処理した後にROで処理し、シリカ濃度:1.5mg/L、電気伝導度:20μS/cmの透過水を得、これを被処理水としてEDIに供給して処理し、純水を製造した。
【0034】
EDIの運転においては、脱塩室への通水方向を上向流とし、濃縮室への通水方向を下向流とする向流方式を採用した。脱塩室および濃縮室への通水量は、共に、LV100m/hとし、通水と同時に両電極室の電極板に4Aの直流電流を印可した。通水時間は700時間、EDI水回収率は90%とした。
【0035】
比較のために、EDIの運転において、濃縮室への通水方向を上向流に変更して並流方式を採用した以外は、上記と同一の操作を行って純水を製造した。
【0036】
得られた純水中のシリカを分析し、上記の向流方式と並流方式におけるシリカ除去率の比較を行った結果、向流方式のシリカ除去率は並流方式に比して4.9倍高い値であった。シリカの分析はモリブデン青吸光光度法によって行った。
【符号の説明】
【0037】
1:EDI
2:陽極
3:陽極室
4:陰極
5:陰極室
61:陰イオン交換膜
71:陽イオン交換膜
81:脱塩室
91:濃縮室
121:陽極室側流入管
122:陽極室側流出管
123:陰極室側流入管
124:陰極室側流出管
131:脱塩室側流入管
132:脱塩室側流出管
141:濃縮室側流入管
142:濃縮室側流出管
A:陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物
a:陽イオン交換体および陰イオン交換体の混合物