特許第6571313号(P6571313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571313
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61B6/03 330A
   A61B6/03 350X
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-110585(P2014-110585)
(22)【出願日】2014年5月28日
(65)【公開番号】特開2015-6328(P2015-6328A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-112332(P2013-112332)
(32)【優先日】2013年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰男
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−180715(JP,A)
【文献】 特開2011−239888(JP,A)
【文献】 特開2000−157534(JP,A)
【文献】 特開2003−116833(JP,A)
【文献】 特開平11−028202(JP,A)
【文献】 特開平10−248835(JP,A)
【文献】 特開平11−019078(JP,A)
【文献】 特開2006−014882(JP,A)
【文献】 特開2001−104292(JP,A)
【文献】 特開2007−014755(JP,A)
【文献】 特開平11−332862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の医用画像内の領域において、前記第1の医用画像と比較して高精細な第2の医用画像を取得する領域を指定する指定操作を受け付ける受付部と、
前記受付部によって指定操作を受け付けた領域に対応する部位にX線が照射されるように、スライス方向及びチャンネル方向で前記X線の照射領域を調整する制御部と、
前記第1の医用画像を初期画像として、前記制御部によってX線の照射領域が調整され、収集された投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行することにより、前記第2の医用画像を取得する再構成制御部と、
を備える、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記再構成制御部は、前記第1の医用画像を初期画像とし、X線の照射領域が調整されて収集された投影データを用いた逐次近似再構成によって、前記第1の医用画像内の指定された領域が高精細な第2の医用画像に更新された医用画像を生成する、請求項1記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記医用画像を表示部にて表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項2記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記X線が照射されている間、当該X線が前記指定操作を受け付けた領域に照射されるように照射領域の調整を継続して実行する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記再構成制御部は、コンボリューション逆投影法によって前記第1の医用画像を再構成させ、前記第1の医用画像を初期画像として、前記投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行する、請求項1〜4のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記受付部は、画像中のノイズを低減するように取得された第1の医用画像内の領域において、前記第1の医用画像と比較して高精細な第2の医用画像を取得する領域を指定する指定操作を受け付ける、請求項1〜5のいずれか一つに記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
第1の医用画像内の領域において、前記第1の医用画像と比較して高精細な第2の医用画像を取得する領域を指定する指定操作を受け付け、
前記指定操作を受け付けた領域に対応する部位にX線が照射されるように、スライス方向及びチャンネル方向で前記X線の照射領域を調整し、
前記第1の医用画像を初期画像として、前記X線の照射領域が調整され、収集された投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行することにより、前記第2の医用画像を取得する
ことを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置は、被検体にX線を照射し、被検体を透過したX線を検出することによって投影データを収集し、収集した投影データから画像を再構成する。ここで、一般的なX線CT装置における空間分解能は「0.35mm」程度である。X線CT装置における空間分解能は、検出器の画素サイズ、画素ピッチ、X線焦点サイズなどによって規定される。
【0003】
近年では、最高解像度を向上させる取り組みも進められており、一部では、検出器の画素サイズを小さくしたり、X線焦点サイズを小さくしたりすることで、「0.12mm」程度の空間分解能を実現するX線CT装置も報告されている。また、画像を再構成する再構成法としては、コンボリューション逆投影法が一般的であるが、近年、逐次近似法によって再構成することで、ノイズを低減させるX線CT装置も知られている。
【0004】
しかしながら、上述した従来技術においては、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を得ることが困難となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−239888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を得ることを可能とする医用画像診断装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用画像診断装置は、受付部と、制御部と、再構成制御部とを備える。受付部は、第1の医用画像内の領域において、前記第1の医用画像と比較して高精細な第2の医用画像を取得する領域を指定する指定操作を受け付ける。制御部は、前記受付部によって指定操作を受け付けた領域に対応する部位にX線が照射されるように、スライス方向及びチャンネル方向で前記X線の照射領域を調整する。再構成制御部は、前記第1の医用画像を初期画像として、前記制御部によってX線の照射領域が調整され、収集された投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行することにより、前記第2の医用画像を取得する
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る解像度の異なるCT画像の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る制御部の構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るスキャン制御部による標準解像度モードでのスキャン制御の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る入力装置による処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るスキャン制御部による関心領域の特定の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るスキャン制御部による高解像度モードでのスキャン制御の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る再構成制御部による処理を模式的に示した図である。
図9図9は、第1の実施形態に係るX線CT装置の処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願に係る医用画像診断装置及び制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下では、医用画像診断装置としてX線CT装置を例に挙げて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置20と、コンソール装置30とを有する。
【0011】
架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール装置30に出力する装置であり、X線照射制御部11と、X線発生装置12と、検出器13と、データ収集部14と、回転フレーム15と、架台駆動部16とを有する。
【0012】
回転フレーム15は、X線発生装置12と検出器13とを被検体Pを挟んで対向するように支持し、後述する架台駆動部16によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。
【0013】
X線発生装置12は、X線を発生し、発生したX線を被検体Pへ照射する装置であり、X線管12aと、ウェッジ12bと、コリメータ12cとを有する。
【0014】
X線管12aは、図示しない高電圧発生部により供給される高電圧により被検体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム15の回転にともなって、X線ビームを被検体Pに対して照射する。X線管12aは、ファン角及びコーン角を持って広がるX線ビームを発生する。
【0015】
ウェッジ12bは、X線管12aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ12bは、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0016】
コリメータ12cは、後述するX線照射制御部11の制御により、ウェッジ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。
【0017】
X線照射制御部11は、高電圧発生部として、X線管12aに高電圧を供給する装置であり、X線管12aは、X線照射制御部11から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御部11は、X線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量を調整する。
【0018】
また、X線照射制御部11は、ウェッジ12bの切り替えを行なう。また、X線照射制御部11は、コリメータ12cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。なお、本実施形態は、複数種類のウェッジを、操作者が手動で切り替える場合であっても良い。
【0019】
架台駆動部16は、回転フレーム15を回転駆動させることによって、被検体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置12と検出器13とを旋回させる。
【0020】
検出器13は、被検体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被検体Pの体軸方向(図1に示すZ軸方向)に沿って複数列配列されている。具体的には、第1の実施形態における検出器13は、被検体Pの体軸方向に沿って320列など多列に配列されたX線検出素子を有し、例えば、被検体Pの肺や心臓を含む範囲など、広範囲に被検体Pを透過したX線を検出することが可能である。
【0021】
データ収集部14は、検出器13によって検出されたX線を用いて投影データを生成し、生成した投影データをコンソール装置30の投影データ記憶部34に送信する。
【0022】
寝台装置20は、被検体Pを載せる装置であり、図1に示すように、寝台駆動装置21と、天板22とを有する。寝台駆動装置21は、天板22をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム15内に移動させる。天板22は、被検体Pが載置される板である。
【0023】
なお、架台装置10は、例えば、天板22を移動させながら回転フレーム15を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンするヘリカルスキャンを実行する。または、架台装置10は、天板22を移動させた後に被検体Pの位置を固定したままで回転フレーム15を回転させて被検体Pを円軌道にてスキャンするコンベンショナルスキャンを実行する。または、架台装置10は、天板22の位置を一定間隔で移動させてコンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行なうステップアンドシュート方式を実行する。
【0024】
コンソール装置30は、操作者によるX線CT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された投影データを用いてX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール装置30は、図1に示すように、入力装置31と、表示装置32と、スキャン制御部33と、投影データ記憶部34と、画像再構成部35と、画像記憶部36と、制御部37とを有する。
【0025】
入力装置31は、X線CT装置1の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、制御部37に転送する。例えば、入力装置31は、操作者から、X線CT画像データの撮影条件や、X線CT画像データを再構成する際の再構成条件や、X線CT画像データに対する画像処理条件等を受け付ける。
【0026】
表示装置32は、操作者によって参照されるモニタであり、制御部37による制御のもと、X線CT画像データを操作者に表示したり、入力装置31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0027】
スキャン制御部33は、後述する制御部37の制御のもと、X線照射制御部11、架台駆動部16、データ収集部14及び寝台駆動装置21の動作を制御することで、架台装置10における投影データの収集処理を制御する。
【0028】
投影データ記憶部34は、データ収集部14により生成された投影データを記憶する。すなわち、投影データ記憶部34は、X線CT画像データを再構成するための投影データを記憶する。
【0029】
画像再構成部35は、投影データ記憶部34が記憶する投影データを用いてX線CT画像データを再構成する。再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法や、コンボリューション逆投影法による逆投影処理が挙げられる。画像再構成部35は、再構成方法として逐次近似法による再構成を実行する。また、画像再構成部35は、X線CT画像データに対して各種画像処理を行なうことで、画像データを生成する。画像再構成部35は、再構成したX線CT画像データや、各種画像処理により生成した画像データを画像記憶部36に格納する。画像記憶部36は、画像再構成部35によって生成された画像データを記憶する。
【0030】
制御部37は、架台装置10、寝台装置20及びコンソール装置30の動作を制御することによって、X線CT装置1の全体制御を行う。具体的には、制御部37は、スキャン制御部33を制御することで、架台装置10で行なわれるCTスキャンを制御する。また、制御部37は、画像再構成部35を制御することで、コンソール装置30における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、制御部37は、画像記憶部36が記憶する各種画像データを、表示装置32に表示するように制御する。
【0031】
以上、第1の実施形態に係るX線CT装置1の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を得ることを可能にする。ここで、従来技術において、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度(高分解能)の画像(高精細画像)を得ることが困難となる場合について説明する。一般的に、従来のX線CT装置においては、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域(関心領域)について高解像度の画像を得るために、まず、広い領域に対して低線量のX線でスキャンを実行し、スキャンされた領域内で指定された関心領域について高解像度の画像を得るスキャンを実行する。
【0032】
ここで、X線CT装置においては、解像度を調整するために、信号束ね処理や、スライス厚の調整を行う。例えば、信号束ね処理は、検出器における複数の検出素子それぞれで検出されたアナログの信号を、チャンネル方向及びスライス方向のうち少なくとも一方向に所定の単位で合成することであり、この合成単位を変更することにより、解像度を調整する。一例を挙げると、X線CT装置は、4個の検出素子を1単位として合成する標準解像度モードや、合成しない高解像度モードなどを有する。そして、X線CT装置では、広い領域に対して標準解像度モードで低線量のX線でスキャンを実行する。ここで、標準解像度モードにより信号束ね処理を実行することで、S/Nが高くなるため、低線量のX線でスキャンを実行した画像でも十分に観察することができる。
【0033】
そして、画像内の関心領域が指定されると、X線CT装置は、指定された領域に対して高解像度モードでのスキャンを実行する。ここで、信号束ね処理を行わない高解像度モードの場合、S/Nが低下するため、S/Nを上げるために高線量のX線でスキャンが実行される。なお、信号束ね処理において、1単位として合成される検出素子数は、上記した例に限られない。
【0034】
また、例えば、スライス厚の調整により解像度を調整する場合、例えば、以下のようにスキャンが実行される。例えば、従来のX線CT装置において、高解像度の画像を収集する場合は、まず広い領域に対して、多列の高ヘリカルピッチ低線量のX線でヘリカルスキャンが実行され、その画像を用いて設定された高解像度が必要な狭い領域に対して、少ない列数の低ヘリカルピッチで比較的高線量条件でのヘリカルスキャンが実行される。高解像度の画像を得るために高いS/Nが必要になるために線量(被ばく)を増やしている。こうして得られた投影データに対して高分解能再構成アルゴリズムを適用して、通常よりも解像度が若干改善されたCT画像を得ている。
【0035】
すなわち、X線CT装置においては、まず、信号束ね処理、或いは、高ヘリカルピッチの標準解像度モードで低線量のX線により撮影部位全体の投影データを収集して、収集した投影データから再構成されたCT画像が観察される。例えば、図2の(A)に示すように、標準的な解像度のCT画像が観察される。
【0036】
その後、観察者が所望する場合に、信号束ね処理を行わない、或いは、低ヘリカルピッチの高解像度モードで高線量のX線により収集された投影データからより高解像度なCT画像が再構成されて観察されることとなる。すなわち、図2の(B)に示すように、高解像度のCT画像が観察される。なお、図2は、第1の実施形態に係る解像度の異なるCT画像の一例を示す図である。
【0037】
ここで、投影データを逆投影法によって再構成する場合、関心部位を含むある程度大きな領域の投影データを用いないと、アーチファクトが生じてしまい、観察しやすい高解像度のCT画像が得られない。従って、従来、高解像度モードで投影データを収集する場合には、高い線量のX線が広範囲に照射されることとなり、被ばく量が増加する。そこで、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、以下、詳細に説明する制御部37の制御により、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を得ることを可能にする。
【0038】
図3は、第1の実施形態に係る制御部37の構成の一例を示す図である。例えば、制御部37は、図3に示すように、スキャン制御部371と、再構成制御部372と、表示制御部373とを有する。スキャン制御部371は、第1のX線照射領域における第1の投影データを収集し、第1のX線照射領域に含まれる第2のX線照射領域における第2の投影データを前記第1の投影データよりも高い解像度で収集する。
【0039】
具体的には、スキャン制御部371は、標準解像度モードで被写体全体(断面としての全体であり、スライス方向は一部である)の低線量スキャンを実行させる。ここで、スキャン制御部371は、コリメータがチャンネル方向で全開となるように制御する。図4は、第1の実施形態に係るスキャン制御部371による標準解像度モードでのスキャン制御の一例を示す図である。
【0040】
例えば、スキャン制御部371は、図4に示すように、被写体に対してX線管が1回転する際に、断面全体がX線の照射領域となるように、コリメータを開けるように制御する。すなわち、スキャン制御部371は、コリメータをチャンネル方向に絞らずに標準解像度モードによる投影データの収集を実行させる。なお、図示されていないが、スキャン制御部371は、スライス方向に関するコリメータの絞りの制御を適宜実行する。
【0041】
ここで、上述した標準解像度で低線量のX線によるスキャンでは、得られた画像に含まれる関心領域を指定することができる程度の画像であれば、どのようにスキャンされる場合であってもよい。すなわち、スキャン制御部371が、上述した信号束ね処理を行うことで、S/Nを高くし、それによって線量を下げたX線でスキャンを実行する標準解像度モードでのスキャンを実行してもよいが、信号束ね処理を実行せずに、線量を下げるスキャンを実行してもよい。かかる場合には、信号束ね処理を実行せずに線量を下げることによりS/Nが低下してしまい、ノイズの多い画像となってしまう。そこで、スキャン制御部371は、信号束ね処理を実行せずに線量を下げ、得られたノイズの多い画像に対してスムージングフィルタ処理を実行することで、ノイズを低減させて観察しやすい画像を生成するように制御する。なお、スムージングフィルタ処理は、再構成前のデータに対して実行される場合であってもよく、再構成後のデータに実行される場合であってもよい。或いは、再構成前後のデータにそれぞれ実行される場合であってもよい。
【0042】
ここで、CT画像においては、アナログ信号を処理する回路による電気的なノイズが発生する場合がある。かかるノイズは、画像全体に発生するランダムノイズと比較して、強いノイズとなる場合がある。標準解像度のCT画像を得る場合に、信号束ね処理を実行すると、複数の信号を1つの回路で処理することとなり、このような電気的なノイズの発生を抑えることができる。従って、信号束ね処理を実行すると、このようなノイズの発生を抑えてS/Nを上げることができることから、その分を線量の低減に充てることができる。すなわち、被ばく低減を考慮した場合には、信号束ね処理により標準解像度のCT画像を得ることが望ましい。
【0043】
そして、スキャン制御部371は、標準解像度のCT画像に対して指定された関心領域について、高解像度のCT画像を収集するように制御する。ここで、スキャン制御部371は、高解像度モードの際に、さらにコリメータの制御を実行する。なお、スキャン制御部371による高解像度モードの際の制御については、後に詳述する。
【0044】
図3に戻って、再構成制御部372は、コンボリューション逆投影法により、スキャン制御部371によって収集された標準解像度モードの投影データからCT画像を再構成するように画像再構成部35を制御する。そして、再構成制御部372は、再構成された標準解像度のCT画像を初期画像として、高解像度の投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行するように画像再構成部35を制御する。なお、再構成制御部372によって実行される逐次近似法による再構成については後に詳述する。
【0045】
表示制御部373は、再構成制御部372の制御によって生成されたCT画像を表示装置32にて表示するように制御する。例えば、表示制御部373は、標準解像度のCT画像を表示装置32に表示させる。ここで、観察者は、表示装置32にて表示されたCT画像を参照して、高解像度で観察したい関心領域を、入力装置31を介して選択する。すなわち、入力装置31は、画像中のノイズを低減するように取得された第1の医用画像内の領域において、第1の医用画像と比較して高解像度(高精細)な第2の医用画像を取得する領域を指定する指定操作を受け付ける。例えば、入力装置31は、第2のX線照射領域を指定する指定操作を受け付ける。図5は、第1の実施形態に係る入力装置31による処理の一例を説明するための図である。ここで、図5の(A)においては、表示装置32にて表示された標準解像度のCT画像を示す。また、図5の(B)においては、操作者によって関心領域が指定されたCT画像を示す。また、図5の(C)は、関心領域の指定領域の一例を示す。
【0046】
例えば、表示制御部373は、図5の(A)に示すように、標準解像度のCT画像を表示装置32に表示させると、入力装置31は、図5の(B)に示すように、観察者から関心領域R1の指定操作を受け付ける。スキャン制御部371は、入力装置31を介して受け付けた関心領域R1の投影データにおける位置を特定する。すなわち、スキャン制御部371は、図5の(C)に示すように、スキャンされた投影データにおけるスライス方向の中心の軸であるZ軸に平行なZ’軸を中心とする関心領域R1の3次元的な領域を特定する。
【0047】
例えば、スキャン制御部371は、投影データにおける座標情報などに基づいて、領域R1の3次元的な領域を特定する。なお、図5においては、2次元で示したCT画像上に関心領域R1が指定される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、3次元で示したCT画像上に関心領域R1が指定される場合であってもよい。かかる場合には、例えば、図5の(C)に示すように表示された3次元的なCT画像上で関心領域R1が指定されてもよい。
【0048】
また、関心領域R1の大きさは観察者が任意に設定することができる。また、図5においては、関心領域R1が円(円柱)で指定される場合について示しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、関心領域R1が四角(四角柱)で指定される場合であってもよい。
【0049】
ここで、スキャン制御部371は、Z’軸がZ軸と平行になる領域の指定操作に加えて、Z’軸がZ軸に対して所定の傾きを有するように設定された関心領域R1の位置を特定することも可能である。すなわち、入力装置31は、所定の領域として、3次元の画像データにおけるスライス方向と平行な方向を軸とする領域、又は、3次元の画像データにおけるスライス方向に対して所定の傾きを有する方向を軸とする領域の指定操作を受付ける。図6は、第1の実施形態に係るスキャン制御部371による関心領域の特定の一例を示す図である。
【0050】
例えば、スキャン制御部371は、図6に示すように、投影データのZ軸に対して所定の傾きを有する関心領域R1の投影データにおける位置を特定する。かかる場合には、例えば、表示制御部373は、図6に示すような3次元的なCT画像を表示装置32に表示させる。そして、入力装置31は、図6に示すように、Z軸に対して所定の傾きを備えたZ’軸を基準とする関心領域R1の指定操作を受付ける。
【0051】
或いは、表示制御部373が、直交3断面のMPR画像を表示装置32にて表示させ、入力装置31がオブリーク断面の設定を受付ける。これにより、関心領域R1が選択され、スキャン制御部371が、図6に示すように、投影データのZ軸に対して所定の傾きを有する関心領域R1の投影データにおける位置を特定する。
【0052】
上述したように、スキャン制御部371は、投影データのZ軸に対して所定の傾きを有する関心領域R1の投影データにおける位置を特定するが、上記と同様に投影データにおける座標情報などに基づいて、関心領域R1の3次元的な領域を特定する。ここで、スキャン制御部371は、関心領域R1について、Z’軸に直交する断面のサイズ、マトリクスサイズ、Z’軸方向の長さ、Z’軸とZ軸との位置関係(向きや距離など)などの情報を投影データの座標情報から算出して、算出した情報を、各領域を特定するための情報として保持する。
【0053】
上述したように、標準解像度のCT画像において関心領域R1が指定されると、スキャン制御部371は、指定された関心領域R1に対してX線が照射されるように、スライス方向及びチャンネル方向でX線の照射領域を調整する。図7は、第1の実施形態に係るスキャン制御部371による高解像度モードでのスキャン制御の一例を示す図である。例えば、スキャン制御部371は、図7に示すように、スキャナの回転角度ごとにコリメータの開口位置条件を設定する。
【0054】
ここで、スキャン制御部371は、被写体の体動によって移動する場合を想定したマージンを含む領域がスキャンされるように、スキャナの回転角度ごとにコリメータの開口位置条件を設定する。そして、スキャン制御部371は、設定した条件に従って、スキャナの回転角度ごとにコリメータの開口位置を変化させながら、高解像度モードでスキャンさせ、関心領域R1の投影データを収集する。例えば、スキャン制御部371は、信号束ね処理を行わない高解像度モードで高線量のX線により関心領域R1の投影データを収集する。
【0055】
このように、被ばく低減のためには、スキャナの回転角度毎にコリメータの開口位置をダイナミックに制御することが理想的である。しかしながら、実際には、スキャン速度、制御の速度等によっては、スキャン中に動作させることが難しい場合もある。かかる場合には、コリメータの各ブレードについて、X線管を1回転させた場合の最大開口位置で固定させる場合であってもよい。このような場合でも、標準解像度のスキャンのように全開にするよりはトータルの被ばく量を抑止することができる。また、図7においては、2次元的な領域を想定して説明したが、3次元的に領域を設定した場合、スキャン制御部371は、ビーム厚(スライス厚)を制御するコリメータ(スリット)を同じように動作させる。
【0056】
図7に示したように、関心領域における高解像度モードによるスキャンが実行されると、再構成制御部372は、コンボリューション逆投影法によって再構成させた標準解像度のCT画像を初期画像として、高解像度モードの投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行させる。すなわち、再構成制御部372は、標準解像度のCT画像における関心領域の画素に対して、関心領域の投影データを用いて画像を更新する。
【0057】
図8は、第1の実施形態に係る再構成制御部372による処理を模式的に示した図である。例えば、再構成制御部372は、図8の(A)に示すように、標準解像度のCT画像に関心領域R1が指定されると、図8の(B)に示すように、関心領域R1を高解像度のCT画像に更新させるように制御する。例えば、表示制御部373は、図8の(B)に示すCT画像を表示装置32にて表示させるように制御してもよい。
【0058】
次に、図9を用いて、第1の実施形態に係るX線CT装置の処理について説明する。図9は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0059】
例えば、図9に示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1においては、標準解像度でスキャンを実行して(ステップS101)、投影データを用いて標準解像度の画像再構成を実行する(ステップS102)。そして、表示制御部373は、再構成された標準解像度の画像データを表示装置32にて表示させる(ステップS103)。
【0060】
そして、入力装置31が高解像度の画像を表示する表示領域(例えば、関心領域R1)が指定されたか否かを判定する(ステップS104)。ここで、表示領域が指定されたと判定された場合には(ステップS104肯定)、スキャン制御部371が、選択された領域に対して高解像度でスキャンを実行させる(ステップS105)。
【0061】
そして、再構成制御部372は、標準解像度の画像を初期画像として、高解像度の投影データを用いて逐次近似再構成を実行する(ステップS106)。表示制御部373は、全体が標準解像度、指定された領域が高解像度の画像データを表示装置32にて表示させる(ステップS107)。
【0062】
上述したように、第1の実施形態によれば、スキャン制御部371は、断面全体における標準解像度の投影データを収集し、断面全体に含まれる関心領域における高解像度の投影データを収集する。そして、再構成制御部372は、スキャン制御部371によって収集された標準解像度の投影データから再構成されたCT画像を初期画像として、関心領域における高解像度の投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、高解像度の画像データを得る場合に、関心領域ぎりぎりまで領域を調整することができ、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を得ることを可能とする。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、入力装置31は、第2のX線照射領域を指定する指定操作を受け付ける。スキャン制御部371は、入力装置31によって指定操作を受け付けた関心領域に対してX線が照射されるように、スライス方向及びチャンネル方向でX線の照射領域を調整する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、X線の照射を容易に制御することができ、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を容易に得ることを可能とする。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、スキャン制御部371は、X線が照射されている間、当該X線が関心領域に照射されるように照射領域の調整を継続して実行する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、被ばくを最大限抑止することを可能にする。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、再構成制御部372は、コンボリューション逆投影法によって標準解像度の投影データからCT画像を再構成させ、標準解像度のCT画像を初期画像として、高解像度の投影データを用いた逐次近似法による再構成を実行する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、容易に実現することを可能にする。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、表示制御部373は、再構成制御部372によって再構成された全体のCT画像において、関心領域に対応する位置の解像度が全体のCT画像よりも高く示された医用画像を表示部にて表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、観察者は簡単に観察することを可能にする。
【0067】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上記した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0068】
上述した実施形態では、医用画像診断装置の例としてX線CT装置を用いて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、X線診断装置などが用いられる場合であってもよい。
【0069】
また、上記の第1の実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0070】
また、第1の実施形態で説明した制御方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0071】
以上、説明したとおり、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、被ばくの増加を抑止しつつ、観察したい領域の高解像度の画像を得ることが可能となる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1 X線CT装置
31 入力装置
32 表示装置
37 制御部
371 スキャン制御部
372 再構成制御部
373 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9