(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固体ボイラーは、前記複数のゼオライトまたは前記シリカゲルの中心に配置した加熱用中空管と、前記加熱用中空管の周囲に取付け、且つ高温油を循環させる油循環用管と、
前記加熱用中空管の内部に配置した電熱発熱体と、を備え、
前記加熱用中空管の断面形状は、多角形または円形であることを特徴とする請求項1に記載した空水熱発電システム。
前記多段ターボガス圧縮機は、軸流で圧縮した気流を流す取付円筒と、前記取付円筒の内部に、前記ターボ回転翼と縦列多重に配列して組み合わせて配置し、且つ前記気流に対して密閉した軸受け部と、前記軸受け部の内部へ前記取付円筒の外部から潤滑油を供給する潤滑油供給装置と、を備え、
前記潤滑油供給装置は、前記気流の圧力と、前記軸受け部の内部で発生する圧力と、の不整合によるガス漏れ及び潤滑油漏れを抑制する漏出抑制機構を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した空水熱発電システム。
前記ウォーターパネルは、前記二重密閉容器に取り付けた複数の給排水連絡口金を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した空水熱発電システム。
前記ウォーターパネルには、前記二重密閉容器に複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した空水熱発電システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第一実施形態)
空水熱発電方式は、伝統的な技術の延長で生み出されたものではあるが、従来には無い高度な技術的研究の結果生み出されたもので、所謂ハイテクではないが、高度技術の成果が込められているのが、本特許が主張する内容である。
空水熱エネルギー利用の原理を、
図1中に示す。
初期稼働エネルギーは、外部補助電力によるが、装置が安定出力電力を発生するに至れば、環境空気・環境水温エネルギーの供給のみで持続的発電が始まる。装置内を、図に示す太線のループに沿ってエネルギーが蓄積され、その一部分が外部へ供給される。装置の構成技術は、図からも分かるように、数点に分かれる。その主要な部分は、固体ボイラーS、アンブレラ型蒸気タービンT、ターボ圧縮機C、ウォータージャケットW、噴霧装置Vである。
【0019】
(固体ボイラー)
まず、固体ボイラーについて説明する。
図1中で、過熱蒸気を生成するゼオライト式SSB(固体ボイラー)は、低温エネルギーを高温エネルギーへ変換する役を演じている。
一般には、低温度の水を、化石燃料が発生する熱エネルギーにて高温度状態へ導くのであるが、本方式では化石燃料の化学変化エネルギーを用いず、状態の物理的変化で高温状態を生み出す方式になっている。その原理は、一般に云われる湿潤熱である。色々な湿潤物質が従来から知られていて、吸収冷凍機などの工業的活用などが報告されている、しかし、熱源として湿潤熱の活用例は少ない現状である。(例えば、「特開2007−300906公報」を参照)。
【0020】
以下、該発明の理論的記述で、固体ボイラー(SSB)内部で生じている水蒸気のゼオライト分子への吸着・脱着現象にかかわって、飽和水蒸気が過熱水蒸気へ変換される過程を、水分子に注目して熱力学的に概説している。
湿潤物質には、以前から数多なものが知られている。
例えば、鉄粉、生石灰、五酸化燐、シリカゲル、そして、ゼオライトなどが好例であり、いずれも、水分を吸収すると発熱することが知られている。
発熱の原理には、物質の酸化などによる化学変化、物理的な状態変化などがあり、様々である。しかし、その発熱量は、化石燃料である石油など分子構造の変化に伴うものに比べて小さい。その僅かな発熱量が、いろいろな生活手段に使われていることも周知の事実であり、例えば、携帯懐炉、インスタント燗酒、駅弁の瞬間加熱などがよく知られている。
【0021】
定量的な研究も盛んで(例えば、「関信弘:蓄熱工学(2)応用編、森北出版、1995.12」を参照)、ゼオライト1kgが水を吸収した際に放出するエネルギー密度は約0.3kwHであるのに比し、石油は同量で約12kwHであるので、その比率は1:40である。
湿潤物質の放出するエネルギー密度は大体同程度なので、化石燃料のおよそ2.5%である。かくの如く、小規模な発熱量ではあるが、用途に依っては充分に活用できる。
【0022】
反応の前後で物質が変化するものは、例えば、五酸化燐などは強力な吸湿剤ではあるが、繰り返し利用には難しさがある。それに反して、物理変化によるシリカゲルやゼオライトは、反応前後に物質は不変で、繰り返し利用が容易である利点がある。吸着熱に関する研究も一般化していて(例えば、「小川・松本・坂井・岩渕・南朴木・萩原:静的熱量測定の最前線、Netsu Sokutei,33,(4),2006」を参照)、物理的吸着の場合、系(水分子)の熱力学的変数であるエンタルピー変化、内部エネルギー変化が負になり、外部へ放出されたそれらエネルギーが吸着熱として観察される。その湿潤物質が、例えば、水を吸着した場合の吸着熱と水を供給した蒸発系の気化熱による温度降下は、吸着冷凍機の原理として、従来から活用されている(例えば、「特開1995−27439公報」を参照)のだが、吸着に伴う湿潤物質の温度上昇因子については寡聞である。
【0023】
シリカゲルは、その名の通り、無定型のガラス状分子構造をもつ固体で、吸着部分の構造も一定したものではないが、ゼオライトは結晶性の分子構造を持ち、結晶格子の内側に様々なサイズの吸着胞があって、対象とする吸着する分子種に合わせて選択ができる特質がある。また、珪酸と酸化アルミニウムが水熱合成によって結晶化するので、天然のゼオライト(沸石)並びに人工結晶ゼオライトも実用化している(例えば、「小野・八嶋:ゼオライトの科学と工学、(株)講談社、2007.7.10」を参照)。
【0024】
図2に、ゼオライト式固体ボイラーの概要を示す。
水蒸気吸着時に炉体の温度を100℃に保ち、かつ過熱水蒸気脱着時に炉体の温度を200℃以上に保つ構造を創案した。炉体の水蒸気発生量とゼオライト量は比例するので、効率の良い炉体は二段式になる。
低温時の炉体保温と加熱方法に特徴を持たせ、高温時の加熱は主に赤外線・遠赤外線を用いる方法を採用した。さらに、導入水蒸気ならびに脱着加熱水蒸気を効率良く出し入れする輸送配管の構造を採用した。
【0025】
試験研究に使用したゼオライトは4A型であり、例えば、
図3A及び
図3B中に示すように、等軸単純立方晶系で、格子常数は1.232nm、単位胞容積1.870nm
3、単位胞の各角にβ−cageとよばれる十四面体の籠形の原子の集団があり、その構成原子が、4Aゼオライトの基本組成であるNa
2O・Al
2O
3・2SiO
2・4.5H
2Oを成している。水分子が4.5個というのは、化学量論的に決められたものであり、平均的な扱いで、4個のものや5個の場合もあるということである。結晶系はX線回折法で決めることが基本であるが、X線では水素の原子散乱因子が微少で計量が出来ず、結晶系は酸素の位置で決められる。水素はいずれかの酸素に統計的に付随すると見なされる。ゼオライト中の水分子は水和物として扱われ、容易に外部へ放散することがある。その場合は、籠形構造の交点の位置は空胞として扱われる。しかし、この結晶性が、後述する如くエネルギー上昇に寄与する。
【0026】
ゼオライト4Aの単位胞としては、β−cageが、一辺1.232nmの立方体の八隅に取り付いて単位格子を構成する。結晶模型を作ると判り易いが、単位胞の内部には、β−cageで囲まれた8箇所の球形の空間が出来ている。その内径は、約1.0nmであり、通常は、この空間をα−cageと呼んでいる。このα−cageは、単純立方格子の各面に直径0.42nmの穴を持って居る。その穴は、β−cageの頂点に位置する酸素原子で縁取られていることが特徴である。この穴を通じて、ゼオライト結晶は、外部空間から吸着分子・原子を吸い込むのである(例えば、「小野・八嶋:ゼオライトの科学と工学、(株)講談社、2007.7.10」を参照)。
【0027】
α−cageの容積は、内径を1.0nmとすると、球体積は0.523nm
3となるので、単位格子体積(1.8699nm
3)の約28%に相当する。また、α−cageの内表面積は3.14nm
2となるが、単位胞6面体の一表面積は1.2322=1.59nm
2なので、内表面のほうが約2倍の広さであり、吸着は表面より内側が寄与することがわかる。バルクのゼオライト結晶は、単位胞が立体的に積み上がって構成されるので、隣単位胞同士の表面は、バルク内部にまとめられて外表面として数えられず、一単位胞表面積のバルク表面への寄与は僅かであるが、結晶内部表面は単位胞の数に比例して増加するので、吸着は内部表面が圧倒的に寄与するのである。
【0028】
ゼオライト結晶が外部から原子・分子を吸着する様子を考察する。ことに、水分子のごとき極性分子がゼオライト単結晶に近接している場合が問題である。水分子は、酸素原子に2個の水素原子が配位しているもので、水分子の大きさは、1ファン・デル・ワールス半径、約0.14nmの2倍に近いと見られている。要するに、直径が0.3nmなので、ゼオライト結晶側面にあるα−cageの穴をくぐって、内部空間へ侵入することが出来る。α−cageのサイズを模型的につくり、其処へ直径0.3nm相当の球形を詰め込むと、約30個が入る。その内部空間は、直径1.2nmの球形がゼオライト単結晶と同じ格子常数で連結した巨大な疑似結晶空間を形成している。これは、空洞のジャングルジムの状況を考えることに等しい。
【0029】
ゼオライト4Aの分子量は、組成原子数では、Naが2個、Alが2個、Siが2個、Hが10個、Oが13個で、都合29個の原子になるので、総合して190grである。即ち、1モルのゼオライト4Aが190grで、マクロな比重は1.99であるので、簡単な計算で、一辺4.57cmの立方体ゼオライトが、1モルに相当することが分かる。β−cageの大きさは、およそ0.6nm程度で、一辺が1mm程度のバルク結晶には、β−cageが1.66×10
6個ほど、一列に並ぶ勘定になる。この事から、1モルのゼオライト結晶は、一辺4.57cmに3.79×10
7個の単位胞が並ぶ勘定であり、一辺1mmの単純立方格子の結晶体には、0.83×10
6個のβ−cageが有ることになる。
【0030】
現実に使用するゼオライトの形態は、3〜4mm程度の球状の顆粒であり、内部のゼオライト結晶サイズは、数μm程度と考えておく。そこでは、100万個程度の単位胞が一列に並んでいると仮定することが出来る(例えば、
図3Aを参照)。ゼオライト単結晶は、立方昌系なので、その辺に沿って直交xyz軸を置いてみる。図に見えるx軸に直角な面(x面)には、4隅にβ−cageを置いた一個の結晶面があるが、その窪んだ中央に直径0.4nmの穴があり、その穴を通じて、x軸と平行に1mmの区間には、100万個の直径1nmのα−cageが、数珠つなぎに並んでいる。同じx面の1平方mmの結晶面には、100万x100万本のα−cageの数珠の束が並んでいると言える。1mm立方のゼオライト単結晶には、単純立方格子が10
18個入る勘定だが、同じく同数のα−cageが其処には存在し、その容積は0.523mm
3なので、約1mm立方の結晶の約28%は、空洞であると考えられる。この空洞が、外部から原子・分子を吸着することになる。
【0031】
水分子をゼオライトが吸着する過程を、力学的に考察する。
α−cageの軸に沿ってx座標をとり、原点を単結晶の表面に置く。β−cageには、イオン種原子があり、それが静電引力に寄与すると考えられる。ゼオライトは中性分子なので、遠距離では静電力は中和されると考えられるが、単結晶に近接した場所では、結晶中のイオン種原子の位置の差があるので静電力が表面に現れる。ことに表面のβ−cage中のイオンは、主要に働くと考えられる。
【0032】
x軸上にある水双極子に働くクーロン力を、以下の式(1)に示す。
F(r−r‘)
=Q+/(r
0−r’)+Σ(AQ+/(r
A−r‘)+BQ−/(r
B−r’))…(1)
式(1)中において、r,r
A,r
Bは、イオンの原点からの距離であり、Qは、rにあるイオン電荷である。正負は+と−で区別し、r’は、水双極子の座標であり、A,Bは係数である。第二項の総和は、軸上のイオン全てについて総合する集成引力を表している。
【0033】
双極子がクーロン力で吸引されるときには、軸方向にダイポールが偏極し、結晶面のイオン種と反対符号の電荷が双極子の前面に現れる。そして、軸上に加速された双極子が結晶内空間α−cageに突入した時点で、双極子の電荷は、結晶面の電荷と反発する電荷が結晶空間の入り口に対面するので、今度は、ダイポールが内部へ反発力で取り込まれることになる。
【0034】
内部へ吸引された水分子の電荷は、結晶内空間の電荷を減殺する方向に働くので、結晶内の集成引力の強さは、吸引された水分子が増大するに反比例して減少する。即ち、α−cageに水分子が少ない時には引力が強く、それは、結晶内化学ポテンシャルが深いことに対応し、吸引水分子が増大して結晶内空間が満員に近づくと引力は減少し、化学ポテンシャルが浅くなることに対応すると見られる。結晶内空間のポテンシャルが浅くなれば、内部水分子を外部へ放出するためのエネルギーも少なくなることは、経験的事実とも整合する。即ち、ゼオライトが吸着した水分子を脱着するには、ゼオライト表面のポテンシャルの高さを超えるに必要なエネルギーを、外部から内部水分子に与える必要があるが、それは、吸着水量の状況で変化することを示している。
【0035】
結晶外部から吸引されてα−cageへ取り込まれた水分子は、単体の水分子として内部空間に入るが、内部壁面にファンデル・ワール力、または、水素結合で固着した分子は、球殻状の固体として結晶内空間に疑似結晶を形成し、固着して静止する際には、其れまで有していた並進運動エネルギーを、ゼオライト結晶格子の振動エネルギーとして放出し、それが、ゼオライト結晶の温度上昇を生む。それまで水分子のエネルギーであったものが、水より比熱の低いゼオライト結晶へエネルギーを移動させるので、比熱の差だけの温度上昇が期待される。温度100℃の飽和蒸気をゼオライトへ吸収させ
て炉体の温度を計測すると、150〜200℃の昇温がみられるが、安定した昇温はなかなか得られない。
【0036】
この結果は、飽和蒸気が持つ水分、つまり、ミスト状の蒸気が原因しているように思われた。ミスト状の水蒸気分子は大きいので、ゼオライト結晶内部空間には入りがたく、結晶表面に堆積するものと考えられる。飽和蒸気を充分に過熱乾燥した実験では、比較的高い温度上昇が得られたことも、その事実を示すものと思える。この温度上昇は、吸着分子が存在する場合だけなので、結晶内空間が吸着水分子で満員になれば、結晶温度上昇は止まる。その場合には、吸着未了の気体と液体が混合する結晶内空間は、疑似固体水結晶空間を生み出すことになると見られる。
【0037】
炉体へ温度100℃の飽和水蒸気を注入すると、約温度200℃の炉温、すなわち、結晶内部の水分子温度を得ることができる。そこで、更に外部から20〜30℃の加熱を行うと、過熱した水蒸気が炉体から放出される。この現象を、脱着と呼んでいる。従い、炉体の温度は、水蒸気吸着時点では100℃を維持し、脱着時点では、内部は少なくとも200〜250℃を保つ必要がある。
【0038】
本発明では
、炉体の赤外線・遠赤外線発生構造、並びに水分子を吸着したゼオライトから単分子状の水を放出(脱着とも云う)させるエネルギーの注入方法が、機能を左右した。現状では、
銅製であり筒型の
加熱体である上部加熱用中空管1e−9
の周囲へ、
加熱油導入支柱管1e−10
と、加熱油排出支柱管1e−11
と、導入加熱油接続管1e−12と、加熱油排接続管1e−13とから形成される油循環用管を廻らせ、その一画に加熱不均衡を補う電熱発熱体1e−15を搭載している。
脱着エネルギーは、環流油の温度エネルギー、並びに、補助的に添加される電気エネルギーで構成されている。高温度過熱水蒸気を得るための主要エネルギーは、発電機器が発生する廃熱であるので、廃熱を逃がさないように装置を構成することが基本的姿勢である。
【0039】
また、SSB炉へ注入するエネルギーを発生させる熱交換機などから高温油を輸送する過程で散逸する熱エネルギーを最小化させるために、装置構造は、可能な限り小型化させることが望まれる。それは、配管を太く短くすることであるが、それでも、エネルギーの散逸は完全には防げない。できる限り散逸を減らすために、装置全体を断熱材で保温することも不可欠である。
【0040】
ゼオライトの炉内への充填は、
図4中に示すように、炉中央に設置されている
上部加熱用中空管1e−9の周囲へ、顆粒状ゼオライトを単に流し込むだけの簡単な作業であるが、発熱体は安定的に保持される。勿論、炉体の底面と上面には、ゼオライトが散逸することを防ぐ金網1e−5が設置されている。また、顆粒状ゼオライトが相互に接する空隙は、水蒸気の流れを充分に容易にするとは言えないので、水蒸気環流用に、複数本の多孔ガス輸送管1e−14を、ゼオライト中へ挿入する。
なお、
図4(a)は、炉体全体を示す図であり、
図4(b)は、多孔ガス輸送管1e−14及びその周辺を示す図である。
【0041】
図5に、本発明にかかわる水熱発電システム(例えば、特許文献1参照)の概要が示してある。図中に示す1e−A,1e−B(略記して「1e−A/B」)が、本発明の蒸気発生器であるが、装置稼働状態を順に解説する。
蒸気発生器1e−A/Bは、同型の固体ボイラーSSBで、水蒸気発生用の化石燃料を使わない。蒸気発生器1e−A/Bへ入力される主要なガス状エネルギーは、水供給装置2eから送出される水蒸気と、搬送用の(温度約100℃)高温空気である。搬送用の高温空気は、圧縮送風機7eで断熱圧縮により発生する。
蒸気発生器1e−A/Bの外周には、エネルギータンク3eから送出される温水が、炉体の周囲を流れて基礎温度を維持している、さらに、蒸気発生器1e−A/Bの蓄積ガス内部温度が高まり、炉体から過熱蒸気を送出する時には、注入エネルギー(Heat energy inJection)を、図示の如くに注入力する。
【0042】
簡単化のために略記するが、注入エネルギーも、エネルギータンク3eから流れ出るエネルギーには、熱交換器10eにおいて若干の電力エネルギーを付加したものが使われる。蒸気発生器1e−A/Bの固体ボイラーから送出される高温度(約250℃)の過熱蒸気と搬送空気は、ターボガス圧縮機(コンプレッサー)4eへ送られる。圧縮された過熱蒸気は、アンブレラ蒸気タービン(蒸気タービン)5eへ導入され、タービンの回転力は、発電機6eへ伝えられて電力出力になる。
【0043】
発電出力の一部分は、装置内の作業電力となって消費されるが、初期に装置内へ蓄積されたエネルギーの消耗を補うもので、循環エネルギーである。また、余分な発電出力は、発電系外部出力となって外部へ供給される。その外部供給エネルギーに見合った入力が、図に示してあるごとく、ウォータージャケット9eへの常温水熱エネルギーと、空気圧縮機7eへの環境大気の空気エネルギーである。その空気エネルギーは、タービンで仕事をした後に外部へ放出されるので、外部供給エネルギーの大部分は、水熱エネルギーであると言える。
【0044】
発電装置内の機器であるターボガス圧縮機4eやアンブレラ蒸気タービン5eなどの電力効率は、精々50%程度なので、通常の機器と同様に廃熱が生じるが、それをリバースケットル8eで取り囲み、さらに、周囲にウォータージャケットを配して廃熱エネルギーを吸収させ、そこで生じる温水を、エネルギータンク3eへ蓄積する。蒸発装置への入力エネルギーは、発電系が作動に入れば、廃熱の一部が再びエネルギー入力となって蒸発装置へ戻って来る仕組みとなっている。
【0045】
SSB炉中央に設置する
上部加熱用中空管1e−9へ環流する高温油のエネルギーは、熱交換機10eにおいて、エネルギータンク3eから供給される蓄熱した廃熱を吸収した温水を基礎にし、
図6に示す温水タンク10e−1内に環流する高温空気を、コンプレッサー10e−5により断熱圧縮によって昇温し、熱交換タンク10e−3で変換して得る。
続いて、高温油は、ポンプ12eにて炉体へ注入する。この方法で廃熱エネルギーに僅かな追加エネルギーを加えることで、所用の過熱蒸気発生用の追加エネルギーが得られる。装置の初期稼働においては、機器全体が低温度であるため、
補助電熱体
S/10e−7による追加電力を利用するが、廃熱が使われる段階では供給電力は軽減する。
【0046】
炉体の初期加熱には、炉体容器外部へ、電熱抵抗加熱体と温水加熱のためのウォータージャケット(以降の説明では、「WJ」と記載する場合がある)を配した。このWJに関連する技術は、後述する。
全くの初期動作では、SSBは冷え切っているので、電熱抵抗体へ電力を供給して必要な温度を確保するが、
図5に示す全発電系が作動に入れば、発電系の廃熱エネルギーがWJへ環流することと、過熱蒸気発生時にSSB内部の高温加熱炉が発生するエネルギーが炉体全体を加熱するので、炉体外部の電気抵抗加熱体は、ほとんど休止状態に入る。
炉体が初期温度を得た時点で、外部のWS(水供給装置2e)から、乾燥した飽和蒸気が供給されると、炉内温度はゼオライトの発熱で200℃近い高温になる。この高温状態を炉内で均等に維持するために、炉の中央には高温加熱体が設置され、其処へは外部から高温度のオイルを環流させる。
【0047】
炉中心の高温発熱体は環流オイルの配管で固定されているが、同時に、炉内では浮動的に顆粒状ゼオライトのなかに設置されている。その位置を中心に保つ構造は、熱的に絶縁された碍子に設置脚をはめこむだけである。こうする事で、炉体に不要な歪みを与えることを避けている。中心発熱体は銅製電気導体で、200℃近い高温で加熱されるので、導体内部に自由電子気体が熱運動で活発に運動している。この熱電子気体は、導体金属格子と衝突・散乱を繰り返し、そこで生じる電子気体散乱にともなう電磁波の制動輻射を生む。制動輻射で生まれる電磁波の波長は赤外・遠赤外領域であり、その波は、炉体周囲の結晶性ゼオライト分子並びにゼオライト中に吸収されている水分子に直接吸収される。電磁波のエネルギー範囲は、水分子の赤外・遠赤外共鳴吸収帯を包含するので、炉内水分子の共鳴状態を生じ、炉内の高温化に寄与する(例えば、「小川・松本・坂井・岩渕・南朴木・萩原:静的熱量測定の最前線、NetSuSokutei,33,(4),2006」を参照)。
【0048】
(アンブレラ型蒸気タービン)
以下、アンブレラ型蒸気タービンについて説明する。
蒸気タービン技術の歴史は19世紀に始まるもので、以来様々な方式が提案され、代表的な軸流タービン型式もほぼ完成している(例えば、「内丸最一郎著:蒸気タービン、東京丸善、明治41年4月発行」を参照)。しかし、21世紀の現在も、依然として様々なタービン関連研究と工夫が成されている。水とその水蒸気を作動物質にする事の利点は、他の物質に比べて高いエンタルピーが得られる事と、比較的安全性が高いことなどがその理由であろう。
【0049】
蒸気タービンの代表的形には、大別して衝動式と反動式があり、気筒内壁に固定された固定羽根と回転軸に固定された動羽根が複数重ねられ、その羽根の翼断面型が衝動式と反動式では異なっている。
また、その羽根列を蒸気流が通過する間に膨張する蒸気の熱エネルギーが、回転力となる原理である。
本発明のアンブレラ型蒸気タービンは、衝動式で軸流型ではあるが、上述の伝統的な多層回転羽根の構造を持たず、単純な水車形式の回転翼を持っている。
【0050】
汎用軸流型のタービンの基本構成は、回転軸の周囲円周に、円盤状に構成された動翼を複数層状に取付け、その層状の間隙に、円環状の固定翼を交互に配し、タービン外周を囲う気筒の内面にその固定翼を取付ける構造を造る。そして、回転翼を衝動的に駆動する方向へ、ノズルを通じて高圧水蒸気を吹き付ける(例えば、「内丸最一郎著:蒸気タービン、東京丸善、明治41年4月発行」を参照)。
【0051】
衝動式のいわれは、高気流抵抗のノズルから吹き出された高圧蒸気流(以下、「ガス」と略記)が、回転翼に衝突して蒸気流の運動量を回転翼の回転運動へ伝達するものである。高圧ガスがノズルを通過する期間にガスの圧力は大きく低下し、その圧力は、ガスが膨張する噴流速度となって、回転翼円盤に流入する。ガスが、その回転翼の空間で急速に膨張する結果、ガスの内部エネルギーは、気流の運動エネルギーに転化して、流速を更に高めて回転翼へ衝突し、ガスの運動量変化が回転翼へ伝えられ、タービンの駆動力となるのである。
【0052】
反動式の場合、入力高圧蒸気流は、狭隘なノズルを経ずに、回転円盤全周囲に複数放射状に設置された回転翼にガスを流入させ、気流と回転翼断面による揚力を得て、回転力を創出する。更に、回転翼を経た気流は、その複数層状翼の隙間から次段の固定翼円盤へ膨張を伴い入射する。従属する固定翼円盤では、回転翼と同様な翼型をもつ気流反射目的の複数翼型が設置されていて、固定翼を通過する気流を整流し、更に、次段の回転翼へ送り出す働きをする。
【0053】
円盤全周囲にガス吹き出しノズルを分散した反動式では、ガス圧力の低下が衝動式に比べて緩やかである特徴があり、翼断面の形が航空機の様な揚力を増加して、気体抵抗を減殺するごとき形状を採用する場合がある(「内丸最一郎著:蒸気タービン、東京丸善、明治41年4月発行」を参照)。
衝動式も反動式も、ガス入射時に吹き出す気流の圧力と速度が、タービン回転力やトルクになり、回転翼空間を通過する気流の速度変化に基づく運動量変化が、同じくトルク形成に寄与することが分かる。
【0054】
タービンに生じる回転軸トルクtを解析すると、以下の式(2)で示される。
t=F・R=m・R・dv…(2)
式(2)中で、Fは、タービン回転軸に直交する円周方向に働く力で、mは、可動翼に衝突するガスの質量、Rは、タービンの平均回転半径、dvは、回転翼を通過する時間内のガス速度変化量である。
また、式(2)中の回転軸トルクtは、タービン軸に沿って積分された値である。
出力軸半径Rrで毎分回転数Nのタービン原動機の出力パワーPは、以下の式(3)で示される。
P=0.1×Rr×t×N…(3)
式(3)中では、一般にR>Rrである。
【0055】
原動機と負荷の運動エネルギーを、それぞれ、KS,KLとし、慣性質量をIS,ILとし、回転角速度をω(=2pN/60)と記せば、合計の運動エネルギーKは、以下の式(4)で示される。
K=(KS+KL)=0.5・I・ω
2=0.5・(IS+IL)・ω
2…(4)
負荷が電磁的な場合、その動的慣性質量は、IL=0.5・mL・ω
2の形式となり、変動する電磁的負荷は、等価的に回転子の局所的質量mLに反映される。
【0056】
タービンと発電機が直結の場合は、ωが同じなので、出力最大の条件は原動機タービンの慣性モーメントISと、その負荷装置の慣性モーメントILがほぼ整合していることが求められる。負荷が大きい時には、原動機タービンのIも大きくしなければならない。(例えば、「JIS機械工学便覧(新訂版):(株)機械協会、昭和38年3月発行」を参照)
軸流蒸気(ガス)タービンでは、回転翼と固定翼の間隙を縫って作動ガスが漏洩する問題が常に存在する(例えば、「特開2010−255542公報」、「特開2012−105626公報」、「特開2013−19381公報」を参照)。
【0057】
そこで、通常は、非接触型のガスケットであるラビリンスガスケットが導入されている。
非接触型ガスケットの原理は、気体が流通する道筋を狭隘にして流体抵抗を高めて漏洩ガスの量を抑えることにある。回転軸に装着されたラビリンスガスケットには、通常潤滑油が潤滑し、軸の回転による遠心力が働いてラビリンス円盤素子の先端部の細隙を液が封止する役割をする。また、蒸気が通る道筋では、液化した水が封止剤の役割をはたす場合がある。
【0058】
本発明では、小型の衝動式軸流蒸気タービンにおいて、伝統的に使われる円盤形タービン翼を使わず、ノズルT/2−1から吹き出す蒸気流T/2−2を、先窄まりでテーパー状円筒を有する
タービン気筒T/3の内面に沿って、タービン回転に伴い渦巻き状T/2−4に気流を流す。そのトルネード状の流れが持つ運動量を、テーパー回転軸T/1に沿って星形放射状に植え込んだ
、傘(アンブレラ)の骨のごとき回転翼
である断面星形タービン翼T/2の面で受圧する形態をとっている。
【0059】
タービン気筒T/3の円錐面内を回転する回転子の放射状翼面と円錐面の隙間から漏洩する蒸気流T/3−1を防ぐために、
断面星形タービン翼T/2の面の外周数箇所に段階状に円環スリットT/8を設けて、タービン回転によるガスの遠心力による逆流T/3−2を生むように構成して、漏洩する蒸気を減殺する構造を設けた。
本発明では、安定な高速回転を実現するために、軽量化した
断面星形タービン翼T/2の強度を高めるための工夫として、
断面星形タービン翼T/2の振動を防ぐ
円盤状リングT/6を複数溶接して配置し、
断面星形タービン翼T/2を、
タービン気筒T/3に挿入設置した。
【0060】
また、ガス流体の膨張で
断面星形タービン翼T/2を駆動する際、回転軸の外周部に沿って外部へガス流体が散逸漏洩する現象を防ぐ目的で、円環状の板
である円環部T/7と
タービン気筒T/3の内面との間に狭隘な隙間T/8を配したことを特徴にする構造を持つ(
図7を参照)。
タービン気筒
T/3内へノズルから吹き出されたガスの流で
断面星形タービン翼T/2が回転するので、ガス流軌跡は、
図8中にT/2−4に示す如く、渦巻き(トルネード)状になる。吹き出されたガス流は、
断面星形タービン翼T/2で構成される梯形形(
図8のA,B,C,−−−)の溝を通って、
タービン気筒T/3と
断面星形タービン翼T/2の型で決まる末窄まりのガス通路を流れて、出口へ集中する。溝の軸直角断面は、ノズル吹き出し口から溝出口へ長手方向に沿って徐々に小さくなる。
【0061】
したがって、流体抵抗は、タービン軸長手方向に沿って増大する。そこで、ノズルから吹き出たガス(例えば、「T/2−3」)が一定の溝容積の中で膨張するにつれて、流体の流出速度は増加し、かつ、それは、膨張による作動ガス圧力の減少を抑える効果があり、流れの方向に沿って、シリンダー内のガス圧は大略一定になる。
その結果、ガス流が星形翼に与える圧力と結果であるトルクtの値は、翼の垂直圧力成分の積分値として与えられる。積分区間は軸長手方向の長さで決まり、それは平均ガス流速度でシリンダーを通過するので、数msecの短時間であるが、ガス流の回転軌跡がシリンダー出口に至るまでの区間で決定される。ガス流の運動量を充分に吸収する長さが求められる。
したがって、傘型のシリンダーの形は、末窄まりの円錐形、すなわち、アンブレラ型となる。
【0062】
本発明では、
図7に見られるように、高速回転するタービンの軸受けに、ボールベアリングを用いている。高速回転では、摩耗による軸受けの破損が問題であり、不断の保守と交換作業が必要である。
一般には、高速回転軸受けとして、気体・液体を利用した浮動ベアリングが使われているのであるが、低速運転時における潤滑油の漏洩は避けがたい。また、潤滑剤としての気体や液体の循環装置の保守管理などが不可欠であるので、煩雑性が避けがたい。したがって、高速回転軸を保守管理する技術的方法のさらなる発展が求められる。
【0063】
図10に、本発明にかかわる水熱発電システム(例えば、特許文献1参照)の概要を示す。
固体ボイラー1eは、水蒸気発生用の化石燃料を使わないボイラーである。
水蒸気発生装置2eは、単純に水を加熱するのではなく、簡易気化器で噴霧状に水の微粒子化した状態を実現させて蒸発を効率化する工夫が成されている。
水蒸気搬送用のターボ式空気圧縮機7e並びにターボガス圧縮機4eは、装置稼働の当初は外部電力で駆動されるが、発電システムが稼働に入れば、装置内の発電機6eの出力電力に切り替わる。この発電システムは、初動時には外部電力でエネルギーの蓄積が始まり、発熱機器であるターボガス圧縮機4eや本論の蒸気タービン5eなどが放出する廃熱を熱源とする逆釜8eの表面が高温化するので、その熱エネルギーを、ウォータージャケット9eが捕捉し、その温水をエネルギータンク3eへ蓄積する。
【0064】
蒸気タービン5eは、本発明で説明される衝動式のものであり、水蒸気と搬送高温空気の混合ガスのエネルギーを、発電機6eと結合するタービン軸の機械的回転力に変換するものである。以下に詳述するように、本発明のアンブレラ型蒸気タービン5eには、従来の蒸気タービンに比べて、高効率化の新案が施されている。その高速回転出力は、発電機6eに直結している。
【0065】
発電機6eの出力は、発電システムの内部使用電力(innerpower)と外部出力(Outputelect.power)に分かれる。エネルギータンク3eへは、初期エネルギーである外部電力ならびに環境空気エネルギー(Input ambient airenerugy)及び環境水温入力エネルギーが入力される。加えて、ターボガス圧縮機4eなどから、ウォータージャケットを経由して加温された温水と蒸気タービン5eに附属する復水器からの温水が加わる。環境水温入力エネルギー(Input water temp.energy)は、外部へ出力される外部供給電力(Output elect.power)と、装置内で回収不可能な発散エネルギーを補うものである。系全体が外部電力を切り離し自立的モードで動作を継続するには、各所の機器が高いエネルギー効率で作動することが必須条件である。
【0066】
上述の説明を要約すれば、装置からの外部への供給電力量は、装置の環境空気並びに水温入力エネルギー入力に整合したものである。そして、内部使用電力(Innerpower)は、初期外部入力で装置内に蓄積されるエネルギーに相当するものと言える。この作動を確保するには、ことにターボガス圧縮機4eと本発明で説明した蒸気タービン5eの性能向上が不可欠な条件である。
【0067】
機器が稼働に入れば、ターボガス圧縮機4eから排出される廃熱エネルギーと、それに依り加温された温水3e、発電機6eを駆動した蒸気タービン5eから流出し復水器からの温水3e、そして、発電機6eから供給される内部使用電力の一部が、エネルギータンク3eへ総合集約して入力される。
蒸気発生器1eの動作は、別件で詳述するので説明は省略するが、エネルギータンク3eからの低温度飽和蒸気を、空気圧縮機7eからの搬送空気で固体ボイラー1eへ入力し、固体ボイラー1e内の物理的反応で、高温度高圧気体(Hightemp.vapor & air)としてターボガス圧縮機4eへ供給する。すると、それらが総合して安定的に自立発電が持続する。
【0068】
(多段ターボガス圧縮機)
以下、多段ターボガス圧縮機について説明する。
特許文献1で提案された技術の中で、蒸気発生炉、高温高圧蒸気の発生・輸送経路、蒸気タービンなど、一連の装置を効率良く機能させる要の位置にあるガス圧縮機の技術が、重要な役割を担っている。
従来のガス圧縮方式コンプレッサーの原理・方式には、シリンダー(気筒)とその内面を摺動するピストン(活栓)の往復運動によるレシプロ方式が一般的であった(例えば、「特開2012−154317公報」を参照)。
【0069】
レシプロ方式には、単気筒型と複数の気筒を結合した星形気筒方式などがある。原動機の回転運動を気筒と活栓の相対的往復運動に変換し、気筒内へガスを吸入・圧縮し気筒から送出される圧縮気体を蓄積タンクへ送出し高圧ガスを発生するものである。循環的、周期的に入力配管を経てガスを吸入する一連の動作が繰り返される。高圧ガスが気筒内の圧縮最終段階で外部へ送り出されるのは、一連の往復運動の最後の一瞬である。一連の周期的回転時間内では、気筒内の活栓の往復運動が行われ、その間、外部とは隔離断絶した気筒内の吸入、圧縮の行程が続く。周期的に見ると、圧縮された高圧ガスの外部への取り出しは断続的で、圧縮出力が断続的パルス的な作動結果となる。この間歇的動作が、効率低下の主因である。
【0070】
レシプロ方式では、出力ガス流は間歇脈動的で、出力配管側には、圧力平準化と安定化のために、蓄積タンクのようなガス圧平滑装置が結合される。
したがって、ガス出力を、連続的・平均的な流れに近づけるための多気筒方式は、構造と動作が複雑になり、その構造から生じる摺動摩擦などが原因で、エネルギー効率が低下する。その欠点を克服する方策として、連続的なガス圧縮方式が提案されている(例えば、「特開2004−204846公報」を参照)。この連続的ガス圧縮の例は、自動車の排気ガスタービンや航空機のジェットエンジンの入力ターボ吸気圧縮機などに見られる。
【0071】
ターボ圧縮機の構造概要は、日常に使う扇風機の羽根を多重多段に結合したものと言える。
一段あたりの羽根車の作動は、原理的に風力発電に使われるプロペラと同じ扱いができる(例えば、「特開平7−190364公報」を参照)。
多段に亘って結合される場合は、軸流蒸気タービンや軸流ジェットエンジンと同様な作動をする。一般に、扱うガスの流量が大きいので、羽根車の周辺部で生じる少量気体の逆流などはあまり考慮されていない。
【0072】
多重の回転翼を結合し、ガス圧縮をもたらす回転動力軸は、一般には、回転原動機周辺の定常気圧、すなわち、1気圧相当の低気圧下に置かれている。一方、ガス圧縮に寄与する終段の羽根車周辺気圧は、数気圧以上に達するので、羽根車の中心軸周辺とは数気圧の圧力差が生じる。この圧力差は、軸受けの回転部分と、軸保持の固定部分にある摺動区間の前後に集中する。
そのため、ガス漏れを防ぎかつ摺動摩擦を軽減するために、従来から、回転と固定部分を区切る様々なガスケットが工夫されてきた(例えば、「特開2004−353629公報」を参照)。この目的を解決する手段として、ラビリンスパッキングなどが以前から使用されている。
【0073】
本発明では、
図1に示したように、回転翼への動力は、圧縮機外部からギアなどを経由して導入する方式を用いたが、結合ギアなどの伝達系のエネルギー損失が無視出来ず、エネルギー効率低下の原因を成している。さらなる高効率化には、高速電動機を回転軸へ直結する方法が構想される。
現在でも高速電動機は市場に存在するが、その導入には、同時に高効率な冷却装置が不可欠であり、それは、新たなる技術的課題を提起するものである。従い最良の形態としての高速電動機と効率の高い冷却系の実用化が今後の課題となるだろう。
【0074】
本発明では、高速回転を実現するために、軽量化した回転翼の強度を高めるための工夫、具体的には、回転翼外周にシリンダー型案内管を設置し、羽根と一体化させる構造を採用した。また、多段化した回転体が流体を圧縮するときに、回転軸の外周部に沿って外部へ流体が逆流散逸する現象を防ぐ補助羽根を回転円筒の周囲に配した。
また、多段の高速回転翼を支持する回転軸受けには、潤滑油を供給することが不可欠である。多段に回転翼を結合して気体圧縮を行うと、圧縮の後段になるに従い、気体圧力と温度が高まるので、軸受けと回転翼を接合する部分の気密性、耐熱性を維持することは難しい。
【0075】
通常の気密性ガスケットは、摺動摩擦が無視できず、効率の低下を招くだけでなく、軸受け部の摩擦による発熱が結果して、故障の原因と成る。
このため、本発明では、高速回転軸におけるガスケットの僅かな摺動摩擦を避けるために、通常用いられる非接触式細隙のラビリンス方式とは異なり気密ではないが流体が環流しがたい非接触な隔壁を設け、高圧気体部分と軸受け部内の潤滑油圧力を等しくして気体並びに潤滑油が相互に流通することを妨げる構造を考案した。
【0076】
ターボ方式圧縮機は、
図11に示すC/5の組み合わせを基本にして、取付円筒C/17の内側に、直列多段に
ターボ回転翼
C/2を構成する送風機を原理としている。
図11に示す次段回転翼C/18は、次段以降との結合を例示する。
ターボ回転翼
C/2の基本構造は
図12に概略を示すが、回転中心には曲面円錐体の翼支持体C/1がある。
ターボ回転翼C/2は、翼支持体C/1の周囲に取り付けられている。
図12では、三葉のヘリカル
状に形成したターボ回転翼C/2が描かれているが、送気の風量・圧力に応じて、複数の翼面が使われる。なお、
図12(a)には、
ターボ回転翼
C/2の前面図を示し、
図12(b)には、
図12(a)の矢視図断面を示す。
【0077】
ターボ回転翼
C/2のヘリカルアングルα2−1は、気体の風量・圧力により10°から45°の範囲に値を選択する。また、補助回転翼C/3のヘリカルアングルα’3−1は、30°程度である。
ターボ回転翼
C/2の外周囲には、補強円筒C/4が装着される。その形は、
図11に示すごとく、
ターボ回転翼C/2の補強と補助回転翼C/3の支持を目的とした円筒である。
ターボ回転翼
C/2が高速に回ると、吸入気体C/14は、回転軸に沿って流入する。気体流を円滑にするために、整流ヘッドC/1−1を装着するが、
ターボ回転翼
C/2の周辺に渦流C/14−1と逆流C/14−2が現れる。圧縮機の効率を向上させるには、この渦流と逆流を減少させることが必要である。
渦流に対する対策は、翼断面の工夫が不可欠であるが、逆流C/14−2の減少を意図するには、補助
回転翼C/3に依る対抗流C/14−3の創出が有効である。
【0078】
比較的小型の多段回転翼ターボガス圧縮機が実用化するには、回転翼の回転数を高める必要がある。したがって、高速回転軸潤滑方法の高度化が不可欠である。
図11では、
ターボ回転翼C/2への回転導入に、シャフトC/7、ベアリングC/8、ギアC/9、回転導入軸C/10を経て、外部から回転動力を導入させている。さらなる高速回転では、ギアC/9を廃して、高速回転電動機の回転子をシャフトC/7へ直結する方法も考えられるが、回転軸受けには、ボールベアリング乃至は油膜を使う浮遊軸受けなどが使われる。その場合には、潤滑油C/15を、潤滑油導入軸C/6を経て、軸受け部C/5内部へ、取付円筒C/17の外部から注入することが不可欠である。
【0079】
多段回転翼ターボガス圧縮機では、圧縮の後段になるに従い、周囲に流通する気体の圧力が高まる。その圧力雰囲気に接する軸受け部には、同様に圧力が高まるが、軸受け部C/5を介しての気体、潤滑油C/15の循環に伴う気体の外部への漏れは、圧縮機の作動効率低下をもたらす。
一方、潤滑油の作動圧力が圧縮気体の圧力を超えると、潤滑油の気体中への拡散が問題になる。一般には、回転軸へガスケットを装着して、流体の相互流通を阻止するのだが、高速回転軸では、作動効率の減少だけでなく、摩擦に依る温度上昇が致命的である。
【0080】
従来、このような状況では、非接触的なガスケットであるラビリンスパッキングが使われていた。回転軸とその周囲の固定円筒の内部へ、狭隘な通路を設け、気体に対する流体抵抗を増加して、そこへ、気体や潤滑油を回転軸の遠心力で封止して、気体の回転軸に沿った漏洩を減殺することに意を用いた。
本発明においても、
図11に示す狭隘間隙C/12,C/13は、ラビリンスパッキングの構造が用いられている。しかし、間隙C/11の場合には、翼支持体C/1と軸受け部C/5の間隙にある非接触部分には、ラビリンス構造は使えない。
そこで、本発明では、間隙C/11の前後に於ける気体の圧力を、積極的に同じ値に保持する方法を導入した。
【0081】
図13に、
軸受け部C/5の内部へ取付円筒C/17の外部から潤滑油C/15を供給する潤滑油供給装置を形成する潤滑油系の概要を示す。
軸受け部C/5には、翼支持体C/1,シャフトC/7,ベアリングC/8などの要素が取り付けられており、潤滑油C/15は、狭隘間隙C/13と油通路C/15−11を経て、潤滑油タンクC/15−2へ環流する。潤滑油タンクC/15−2内部には、潤滑油C/15と、環境空気が混在する定温に維持された混合状態C/15−3が存在する。その混合潤滑油は、任意のポンプC/15−5で、油送管C/15−4を経て、油圧ポンプC/15−7へ導入される。
【0082】
油圧ポンプC/15−7は、アルキメデスポンプなどの高圧ポンプが使われる。ポンプの駆動には、サーボモーターC/15−6などが使われている。
油圧ポンプC/15−7で加圧された混合潤滑油は、潤滑油導入軸C/6の先端に装着されたノズルC/15−8を経て、軸受け部C/5の内部の圧力空間へ噴霧状態C/15−1で給油される。軸受け部C/5の内部圧力は、圧縮気体圧力と同じに維持されるように制御される。噴霧状の潤滑油は、軸受け部内部にある軸受けや回転軸などの局部に付着して凝縮液化する。液化した潤滑油は、再び、狭隘間隙C/13などを経て、潤滑油タンクC/15−2へ環流する。
【0083】
軸受け部内部空間の圧力を圧縮気体圧力と同じ値に制御するために、圧力検出器C/16を導入する。
圧力検出器C/16は、
図11に例示したように、ターボガス圧縮機の取付円筒内に於ける、対応する圧力段の軸受付近の、流体圧縮空間C/15−12と、軸受け部C/5の内部空間へ、それぞれ、設置される。
圧力検出器C/16の概要は、
図14に示すが、その電気的出力は、検出増幅器C/15−9を経て、差動信号C/15−10となって、サーボモーターC/15−6へ伝達され、軸受け空間の噴霧圧力出力として、フィードバックされる。フィードバックの効果は、軸受け部内・外の圧力差が零になる方向へ作動するので、ターボ圧縮機が作動に入り、潤滑油循環系が作動に入れば、間隙C/11を通過する気体、潤滑油などの漏洩は抑制され、圧力漏れ潤滑油漏れはなくなる。
したがって、潤滑油供給装置は、気流の圧力と、軸受け部C/5の内部で発生する圧力と、の不整合によるガス漏れ及び潤滑油漏れを抑制する漏出抑制機構を備える。
【0084】
図14に、圧力検出器の概要を示す。
検出器容器C/16−1は、非腐食性金属である。絶縁循環油用の口金C/16−2が、入出力位置に付けられている。口金C/16−2には、帯電防止
用フィルターC/16−3が装着されている。電気信号接続用フランジC/16−4には、信号端子C/16−16がある。圧力変換用の伸縮ベロウズC/16−5は、フランジC/16−6へ装着され、検出容器C/16−1へ取り付ける。圧
力検出素子C/16−7には、ロッシェル塩やチタン酸バリュームなどの単結晶が使われる。
圧力検出素子C/16−7の検出両面には、検出素子端子C/16−8が取り付けられている。圧力検出側には、セラミック体C/16−9が接し、軟金属座C/16−11を介して、伸縮ベロウズC/16−5に接している。
【0085】
圧力検出素子C/16−7の他端には、圧力設定用セラミック座C/16−10と、圧力設定用の螺子C/16−12がある。この設定用の螺子は、検出容器C/16−1に嵌合し、その圧力調整を行った後は、気密ガスケットC/16−14を持つ密閉螺子蓋C/16−13で固定する。
圧力検出信号は、検出素子端子C/16−8から延びるリード線C/16−15を介して、信号端子C/16−16へ接続される。不可欠なことは、容器内が絶縁循環油C/16−17で充満されることと、その絶縁循環油が帯電しないように、帯電
防止用フィルターC/16−3で容器に接地されていることである。
【0086】
図15に、本発明にかかわる水熱発電システムの概要を示す。
図中(4e)が、本発明のターボガス圧縮機であるが、順に解説する。
固体ボイラー1eは、水蒸気発生用の化石燃料を使わないボイラーである。空気圧縮機2eは、水蒸気搬送用の圧縮機であり、ターボ方式が用いられる。また、空気圧縮機2eは、装置稼働の当初は外部電力7eで駆動されるが、発電システムが稼働に入れば、発電機6eの出力に切り替わり、発電機6eで単独に、自励的に駆動される。空気入力は、周囲の環境空気14eと復水器からの回収大気11eである。また、環境空気14eの持つエネルギーも、応分の入力エネルギーとなっている。
【0087】
ターボガス圧縮機4eは、本文にて解説してあるので此処での説明は省略するが、断熱圧縮に伴う廃熱出力は温水を造るために回収され、その温水エネルギーが、温水タンク3eへ蓄積される。蒸気タービン5eの動力源は、蒸気と搬送空気の混合ガスであり、そのエネルギーを機械的回転運動に変換するものであり、従来の蒸気タービンに比べて、高効率化の新案が施されている。その高速回転出力は、発電機6eに直結している。発電機出力は、内部使用電力12eと外部出力13eに分かれる。
【0088】
温水タンク3eへ、初期エネルギーである外部電力7e及び環境水温入力エネルギー8eが準備される。加えて、ターボガス圧縮機4eから加温された温水9eと、蒸気タービン5eに附属する復水器からの温水10eが加わる。環境水温入力エネルギー8eは、外部へ出力される外部供給電力13eと、装置内で回収不可能な発散エネルギーを補うものである。系全体が外部電力を切り離し、自立的モードで動作を継続するには、各所の機器が、高いエネルギー効率で作動することが必須条件である。
上述の説明を要約すれば、装置からの外部供給電力13eは、装置の環境水温入力エネルギー入力8eに整合したものである。そして、内部使用電力12eは、初期入力で装置内に蓄積されるエネルギーに相当するものと言える。この作動を確保するには、ことに、ターボガス圧縮機4eの性能向上が不可欠な条件である。
【0089】
機器が稼働に入れば、ターボガス圧縮機4eから排出される廃熱エネルギーと、それに依り加温された温水9eと、発電機6eを駆動した蒸気タービン5eから流出した復水器からの温水10eと、発電機6eから供給される内部使用電力12eが、温水タンク3eへ総合して入力される。
蒸気発生器の動作は、別件で詳述するので説明は省略するが、温水タンク3eからの低温度飽和蒸気3Eを、空気圧縮機2eからの搬送空気2Eで固体ボイラー1eへ入力し、固体ボイラー1e内の反応で、高温度高圧気体1Eとしてターボガス圧縮機4eへ供給する、そして安定的に自立発電が持続する。
【0090】
(ウォータージャケット)
以下、ウォータージャケットについて説明する。
太陽熱集光方式の洋上発電船(特許文献1を参照)に関連して創造した本発明は、化石燃料を殆ど使用せずに、低温エネルギーを高温エネルギーに転化して供給する方法に関する。
また、ウォータージャケットWJは、発電用に使われるばかりでなく、一般家屋の暖房や冷房用に使われるアクティブ壁面として、建築産業などへの応用が見込まれる。
【0091】
太陽光集光方式の考案(例えば、特許文献1を参照)では、高温のエネルギータンクから漏洩するエネルギーを回収するシステムを導入して、エネルギー利用の効率化を図っているが、蒸気発生炉、高温蒸気の輸送経路、蒸気タービン、発電機など、一般的機器が作動中に発熱することに対する配慮が少ない。
本発明は、それら一般の機器が発熱することに注目したものである。さらに、一般機械類が、作動中に不可避的に発生する廃熱エネルギーに注目すると、直ちに再利用できないまでも、その経済的価値は無視することができないものであることが理解できる。本発明は、そこに着想した。
【0092】
一般に用いられる蓄熱方法は、蓄熱媒体内部に発熱源を配し、蓄熱媒体を熱伝導が低い外周機材で囲う(例えば、「特開2012−72928公報」を参照)。保温による熱エネルギーは、内部に配した熱媒体環流の配管を介して外部へ取り出される。または、保温した熱エネルギーそのものを利用する携帯用懐炉の如きは、外周を熱的に安定で熱伝導が高い材料で囲み商品化がなされている。これらの場合は、発熱源が蓄熱体内部に設けられる。
【0093】
蓄熱媒体の外部に発熱源を配する蓄熱装置では(例えば、「特開2012−78010公報」を参照)、液体蓄熱材を擁する蓄熱槽を設け、蓄熱槽内面を熱伝導の良い材質で構成して、蓄熱槽外部に発熱源を配する構造を形成する。この場合、熱エネルギー伝導は、熱伝導の原理である対流・伝導・輻射の三形態の内、主に、発熱源と蓄熱槽を構成物質のフォノン振動の伝導により達成されている。
【0094】
ウォーターパネル(以下、「WP」と記載する場合がある)と、その集合体であるWJの形態については、図の説明で詳細に示すが、その物理的形態を創造的に実施し活用するための必要条件として、市場経済的な側面が相応に整備される事が望ましく、それを此処で指摘したい。創造的な新技術であるWJを開発するに際し、素材や工具を調達することが難しい現実に直面したのである。
【0095】
以前、日本の家電産業興隆期には、東京秋葉原に無数といえるような部品機材を扱う小商人が雲集していた。そこでは、訳の分からないような機材までが取引されていて、若いエンジニアの卵達の好奇心を刺激していた。あらゆる種類の部品や工具を見いだすチャンスがあった。今日は家電産業が斜陽で秋葉原の電気街は衰退し、時代の主役が代わって、人形フィギュアや観光土産が屋台を広げる遊興の街へと変質し、創造的街としての姿は消滅している。今日では創造的部品や工具を手に入れるには、インターネットなどを使うしか手がない。そのオタク的ネット社会は、便利である反面、昔の秋葉原的な人間的交流による創造的刺激の場を失っていると言えるのである。それは、現代の大量生産的経済社会的動向におおいに左右され、其処では、便利さが有る反面、創造的かつ専門的な材料や工具を調えることができないという現実がある。
【0096】
そこで、改めて、一般に新しいエネルギー活用技術とその応用範囲を広げる一工夫として、WP及び配管部品の規格サイズ化が望まれる。また、このWPには、温水だけでなく冷水も環流させるので、環流させる機器が一般向けに使いやすい形態で開発され、昔の秋葉原電気街の如くに、猥雑で混沌とした世界ではあったが創造性が発芽する場があって、諸々の機材部品が低価格で市場に供給される必要が出てくるであろう。
【0097】
WP、そして、WJの有用性が、一般市民に啓蒙普及徹底すれば、爆発的な需要が生まれる可能性がある。今回は、水熱発電を可能にする為の廃熱回収を目的に開発研究が行われたが、配管部品がなかなか手に入らない市場の状況を実感した。現在の配管部品は、水道用、瓦斯用、高圧空気用、油潤滑剤の輸送用に分類され、そのサイズにも、それぞれ、独自の規格があって、相互に利用をすることが困難である。例えば、配管の太さについては、16ミリ、15.88ミリ、15ミリなどと近い寸法であっても、それに見合う配管部品は相互に組み合わせができない。しかも、日常的に売れ筋商品以外は店頭に無い。注文して取り寄せという術もあるのだが、注文して入手するまでの時間が待てず、創造の瞬間が失われるのである。
【0098】
仕方がないので、鑢で削るなどの自作の手間がかかった等の不便があり、それが、業界会社の専門性を確立し、業社同士の差別化を図る手段になっていることは理解できるが、WP、WJが広く世間に普及する妨げに成るであろう。これも、WJなどの有用性が一般市民社会に普及すれば、自ずと改善されると信ぜられる。そして、新たなる自給自足文化が生まれる契機となるに違いない。現時点では大量資材販売店には、水道部品のコーナーがあるが、水道用の機材だけでは、温水や冷水、又高温流体を自由に扱うことは難しい。
【0099】
大量生産的な形式化した今日の学校教育においても、流体力学を世間的に易しく解説するカリキュラムなどは存在しない現状がある。それは、教育担当の先生方が自宅の家庭用水道の蛇口以外に配管機器を扱う経験が少ないことに依っているので、WP、WJが一般世間に使われるようになれば、教育改革が急速に進むに違いない。しかし、これは、学校教育の問題と云うよりも、市民的な趣味の工作とも云うべき世界である。
【0100】
WP、そして、WJの製作は、個人が手軽に着手できる手頃な制作物と言えるのである。しかも、家構造を自ら改善する可能性を持って居る。一般社会が、WPやWJの有用性を認めて、規格化の普及を推進するごとき運動が興れば、国民的な社会経済を元気にする方針になり得る。しかし、規格というものは、商品が大量に普及し、品質を整える目的で統一したものに成るのだが、逆に、統一した理念で規格化が進めば、さらなる利用も普及する性質がある。
【0101】
だが、経済的な独占企業が規格を固定化することは、文化発展に好ましくない。多種多様な個性的な品物が普及することも大切である。卵が先か鶏が先かという話と類似している。誰かが事の推移を見守る必要はあるだろう。
今回の水熱発電に組み込まれたWP,WJの例を、図解で紹介する。
図16は、枠組み中に発電機器の取付状態を示すもので、水蒸気などの気体の圧力発生用圧縮機(コンプレッサー)W/1−1、動力発生用蒸気タービンW/1−3などの回転機械などが、その構成機器である。
【0102】
圧縮機と蒸気タービンは、下側の機器取付底面鋼板(逆釜底板W/1−5)へ取り付けられ、圧縮機の軸(回転導入用モーターシャフトW/1−2)は、上側の機器取付上面鋼板(逆釜上面版W/1−6)から外部へ引き出され、蒸気タービンの軸(回転出力軸W/1−4)は、側面から外部へ取り出されている。枠組み構造から発生する熱は、後述するWJで回収するが、構造体(機器取付鋼製下部支柱W/1−7、機器取付鋼製脚W/1−8、機器取付鋼製上部支柱W/1−9)を伝って放散する熱エネルギーも、構造体に仕掛けるエネルギー回収用WJW/1−10を介し、そこへ、給水管W/1−11を経て給水した結果で得られる温水エネルギーは、温水回収管W/1−12を経て保温された温水エネルギータンクW/1−13で回収する。これにより、発生した熱エネルギーを、ことごとく回収する。
【0103】
図17は、逆釜の構造を示すもので、圧縮機、蒸気タービンなどの機器を納めた部分の周囲や前後左右上下を、金属板(機器取付底面鋼板(逆釜底板W/1−5)、機器取付上面鋼板(逆釜上面板W/1−6)、逆釜鋼製前面板W/2−1、逆釜鋼製左側面板W/2−2、逆釜鋼製背面板W/2−3、逆釜鋼製右側面板W/2−4)で取り囲む過程を示している。機器が取付くのは上下鋼板のみで、前後左右の鋼板は、点検修理を容易にするため機器を取り付けないように区別してある。この六面の金属板が、逆釜の構造を成している。固定締ネジW/2−5としては、金属板を固定する複数本のネジを代表的に示す。
【0104】
図18は、逆釜外部連絡を示している。廃熱を生み出す機器は、逆釜の外にも不可避的に存在するので、其処で生み出される熱エネルギーも回収対象となる。逆釜外部に設置される回転力導入電動機W/3−5及び発電機W/3−4などからの熱出力も、発電用の圧縮機、蒸気タービンなどの逆釜内部機器と同様に、WJで取り囲む状況を示している。圧縮機や蒸気タービンなどの作業機械は、作動中にかなりのエネルギー損失を伴い発熱する。ことに、ガス圧縮機では、ガスを断熱圧縮するので著しい発熱がある。
【0105】
蒸気タービンでは、水蒸気の内部エネルギーが、機械的エネルギーに転化する過程で、気体分子の運動として放散されるので、高温状態になる。発電機や電動機には、温度上昇に弱い絶縁体や高速運転の回転軸受けなどが組み込まれているので、不用意にこれらの発熱体を密閉空間に閉じ込めると、機器の作動が損なわれる。そこで、枢要な部分だけは、水冷する必要が生まれるので、水冷用の配管(水冷導入管W/3−1、温水送出管W/3−2)を経由して、導入水W/3−3を供給する。外部取付の発電機W/3−4、回転力導入電動機W/3−5にも、エネルギー回収用WJW/1−10が仕掛けてあり、冷却水の温度上昇の結果、回収した熱エネルギーは、温水タンクW/1−13へ回収し、エネルギー再生に活用する。
【0106】
図19は、ウォーターパネル取付の状態を示す。発電用作業機械を閉じ込めた金属筐体を取り囲むように、前後左右上下の6面に、底部WPW/4−1、上部WPW/4−2、前部WPW/4−3、左側面WPW/4−4、背面WPW/4−5、右側面WPW/4−6を取り付ける状況を示している。各WPは、逆釜へ、取付ネジW/4−7,W/4−8,W/4−9,W/4−10,W/4−11で固定される。回転軸W/1−2,W/1−4や、水冷配管W/3−1,W/3−2を、WPへ開けた穴W/4−12,W/4−13,W/4−14から、外部へ取り出す状況を示している。
【0107】
このように、金属板で取り囲んだ発熱体の周囲に水の壁を配すると、あたかも湯沸かし釜を裏返しにした如き状態が出現する。それは、昔使われた銅壷を思い起こすが、逆さ的な釜を現出しているのである。一般の暮らしで使われる薬缶が、金属容器の中に水を入れ、ガスコンロなどの発熱体の上で加熱して湯を沸かすのと反対の状況になっているので、逆釜(リバースケットル(RK))と呼称する。
【0108】
図20はリバースケットルを構成する水の壁であるウォーターパネルWPを示している。
防水した布地で、二重板状の平面的空間(WP上部構造体W/5−1とWP底部構造体W/5−2)
を有する布製の二重密閉容器を作り、その中へ水を注入する。それは、水枕や湯たんぽなどに近い構造であるが、湯の温度が高いことや比較的大型であること、外部から熱エネルギーを収集する目的などがあるので、構造が特異的である。図に見られるように、逆釜内部からの回転軸などを引き出す窓を複数付ける場合があり、かつ内部水量が多いので、平板構造を維持するための支柱を内部に複数設置すること、並びに、複数のWPとの連結をするために給
排水
連絡口
金を複数取り付ける。その接続口は、WPの上面(温水連結接続口W/5−3)や側面(側面連絡口W/5−4)、時には、背面(背面連絡口W/5−5)にも配置する。図中に示す各部構造を、詳細に示す断面図(断面構造1W/5−6,
図21参照)、(断面構造2W/5−7,
図22参照)、(断面構造3W/5−8,
図23参照)を用いて、以下に説明する。
【0109】
図21は、WPの断面構造詳細を示している。
WP上部構造体W/5−1は、丈夫な木綿や麻などの自然繊維を用いた布へ耐水耐熱ゴム系統の接着剤を塗り込み固定した素材を使い、その内側へ、厚み20μm程度のアルミニウムなどの赤外線反射用金属板
で形成した金属薄板W/6−1を張り付ける。これは、入射赤外線W/6−8のエネルギーを、WP内部の水に吸収させるためである。
【0110】
WP底部構造体W/5−2は、金属板の裏打ちのない布を用い、入射赤外線W/6−8の入射窓を成す。素材の処理は、上部構造体と同じく、耐水耐熱ゴム系統の接着剤が塗り込められている。断面には、容器内外面を閉じる部分の断面を示しているが、縫製する前に、接着用耐熱耐水樹脂W/6−2を合わせ目に塗布して固定してから、縫製糸目W/6−3部分に、ミシン掛け、若しくは手縫いで固定する。更に、端面の縫製部分を保護し、かつ針目の目地を埋める処理として、補強用U字型金属板W/6−4を周囲に巡らせ、金属との接合が出来る金属接着用耐熱耐水樹脂W/6−5で固定する。その保護された端面の数カ所へ、固定締ネジW/2−5を通す穴を穿ち、そこへ貫通穴用鳩目W/6−6を入れて、逆釜鋼製面板W/2−1の取付ネジ穴W/6−7へ固定する。
WP内部の水または熱湯を外部のWPへ輸送するための口金は、図に示すようなフランジ付きの竹の子型、温水連絡接続口W/5−3の如きものを用い、容器内部から金属用耐熱耐水接樹脂W/6−5で固定する。
【0111】
図22(a),(b)は、WPを貫通する穴
である貫通孔を付ける場合の連絡口の構造を示す。
まず、耐熱耐水布製連絡円筒W/7−1を製作し、その両端面に、花びら型切れ目W/7−2を施し、花びら型フランジW/7−3を作り、円筒の重ね合わせ接合部W/7−4にて固定する。なお、符号W/7−5は、円筒に沿った直線縫合糸目である。
次いで、WPの穴へ挿入して円形縫合糸目W/7−6にて固定する。縫製後、WP内外壁面と円筒を接着用耐熱耐水樹脂W/6−2で内部から固定する。さらに、WPの外面に突き出た花びら型フランジW/7−3の縫製を保護するために、耐熱耐水外部保護円環布W/7−7を、接着用耐熱耐水樹脂W/6−2で貼り付けて固定する。
【0112】
図23は、WP内外壁面の内側へ耐熱耐水圧布製補強リブW/8−1を取り付ける構造である。予め用意した、耐熱耐水処理をした布地で、補強リブを製作し、それを、壁面内側へ接着用耐熱耐水樹脂W/6−2で固定し、所定の位置を縫合糸目W/8−2で固定する。さらに、縫製の目地を無くすために、縫製部分へ接着剤用樹脂W/6−2を塗布する。WPに通水する場合の水圧は、3Kpa以下に抑える。3Kpaは、断面1平方センチの水柱高さにして30cmである。この水圧は、家庭用風呂桶の水圧相当である。市中の水道水は、水圧が2ないし3気圧(1気圧は100Kpaである)であり、2気圧では200Kpaに相当し、WPには、過大な引っ張り加重応力が壁面材料の内部に発生するので、水道水を直接通水することは避ける。但し、適当な減圧弁を用いればその限りではない。
【0113】
図24は、ウォータージャケットWJの構成を、ウォーターパネルWPで組み上げる様子を示している。
逆釜の上下前後左右をWPで取り囲み、それらをWJ連結管W/9−1で連結し、WJを構成した場面を示している。このWJへの水の供給は、下面に取り付けられた給水口へ、WJへの給水管W/9−2を通じて行う。通水圧力は、約3Kpa程度である。逆釜から放散されるエネルギーで内部から加熱されて温度が高まった温水は、上面のWP排水口へ接続されるWJからの温水輸送管W/9−3にて、外部へ排出される。採取された温水エネルギーは、温水エネルギータンクW/1−13へ蓄積して再利用される。
【0114】
(噴霧装置)
以下、噴霧装置について説明する。
図1に示す(固体ボイラー)へ効率良く飽和水蒸気を供給する蒸発装置として、本発明を創出した。液体の水を気体にする方法は、遍く知られているごとく、水を入れた容器を外部から加熱することであり、そのエネルギー源として、一般には、化石燃料もしくは化石燃料を使って発生させた電力が使われている。
本発明では、化石燃料を極力使わないで効率良く蒸気発生を行う方法に努力した。一般には、液体から気体への変換が技術的内容で、気液分離装置や動力用気体発生装置などが、主要な産業的応用分野であった(例えば、「特開1998−286304公報」を参照)。
【0115】
蒸発現象を蒸発する水分子に注目して蒸発装置における水分子の挙動を熱力学的に概説する。
液体から気体へ至る相変化の過程に注目すると、液体中の原子もしくは分子が、周囲の分子との結合状態から解き放たれて、空間へ単独で飛び出す現象である。その為には、該当する分子または原子が、その外周液体部に存在する物質分子との分子間結合から相応のエネルギーを獲得し、高エネルギー状態になる必要がある。液体中に束縛されている状態で内部エネルギーが増大するにつれ高エネルギー状態になると、分子は、その重心周りに激しい熱運動状態に入るが、内部エネルギーが気化状態への閾値に至らない間は、分子温度は相変化を起こす沸点を越えない。その分子一個の運動は、液体中にある間、すなわち、分子間結合ボンドが切れない間は、重心周りの分子サイズの一定容積の空間に限定されている。
【0116】
その分子運動エネルギーが、周囲気圧以下の飽和蒸気温度の蒸発点に達し、その状態での束縛エネルギーの閾値を越えると、沸点以下でも、振動により生じる圧力を外部空間へ発生しつつ、液体を離れて蒸発する。その結果、気化した熱運動分子の重心周りの並進運動は、周囲の物質と激しい衝突現象を発生する。分子内では、重心に結合している分子内原子の振動・回転運動は、重心の並進運動とは力学的に独立的とされてはいるが、この分子内活性化エネルギーは、周囲の衝突物質へも水分子内で発生する赤外線などで伝わるので、結果として、分子の重心周りの並進運動による衝突運動も、その分子内エネルギーの影響を受けることになる(例えば、「ポーリング:化学結合論(改訂版),共立出版(株),1971年6月発行」を参照)。
【0117】
液体の水としての状況については、諸文献に見られるが、およその数値を当たってみると、液体中での隣接する分子間距離は、固体の場合と略同じで、おおよそ1nmである。隣りあった水分子間には、分子間力や水素結合力が働き相互の動きを束縛している。それは、あたかも、各分子がゴム紐で繋がれているようである。液体内でのマクロな水分子の運動は、粘性流体の原理で近似的に扱うことが出来る。液体各部の近接する分子がゆるく粘性力で結合して、液塊の運動を成すように運動が生じるが、連続弾性体の波動運動として表現できると言えよう(例えば、「比良・滝沢:流体力学の基礎と演習、廣川書店、1971年11月発行」を参照)。
【0118】
容器に入れた水を外部から加熱すると、容器壁面から熱エネルギーを受容した水分子の重心周りの温度は、環境気圧下の定圧比熱で決まる温度となるが、容器の壁から遠ざかるにつれて、弾性的伝搬と放散で熱勾配が発生し、その距離に相応する液塊の温度差と、液塊サイズの分布が発生する。温度差は水分子の運動エネルギーの差であり、それが液塊の対流運動を生む。低温で液の粘度が高ければ、液塊サイズは大で、高温で粘度が下がれば、液塊サイズは小さくなり、さらさらと流動すると見られる。
【0119】
容器外部からの継続した加熱で液塊がさらに高温化し、沸点に近づくと、その液塊中における該当する分子一個周りの空間体積は、液体の場合の約1000倍に膨張し、直交三軸で表現すれば、隣接する分子間軸直線距離は、液体中のほぼ10倍の10nm近くになる。この値は、標準状態(摂氏零度、1気圧)で気体1mol体積22.4literの場合、アボガドロ数を考慮すれば、立方体の隣接分子が均等に整列している瞬間距離が5.57nmになる。日常の温度ではこの値が増加する事から、10nmは妥当な分布距離と言える。通常の分子のサイズは、およそ0.3〜0.5nmであるから、気体中ではガス体としての運動自由度が高まり、熱運動で空間を激しく動き回るのだが、それでも、気体中の隣接分子の距離は、精々10nm=0.01・mであることは、人間生活の日常での尺度(〜1m)の感覚から見れば、気体分子が空間にぎっしり詰まっているごとき状況と考えても不思議ではない。したがって、気体の運動状況は、連続物質の運動として、古典力学で近似的に表現できる(例えば、「理科年表:平成2年版」を参照)。
【0120】
水が蒸発する現象は、沸騰点以下の温度でも生じていることは周知である。分子の重心周りの振動が温度とともに激しくなり、分子と周囲の液体空間との距離が徐々に拡大する。気体の熱運動は激しいので分子間距離も相当に分布するが、日常の自然感覚で見れば、局所的気体分子の距離は、極めて密に近接している。それは、外気のガス分子間距離も同レベルなので、その沸騰する高エネルギー状態の水分子の内部エネルギーが気化の閾値を越えれば、隣接距離10nm以下の外気空間へ飛び出して行く。この事実から、外気ガスと液体内分子空間距離が同等になる事が、蒸発のエネルギー閾値を決めていると考えられる。外気圧力が1気圧下で沸騰点が100℃である訳は、水蒸気の蒸気圧が1気圧になり、その圧力下で空間的な分子距離が水蒸気と周囲気体とで同等になることで、水中のガスが周囲気中への飛翔が発生するのである。その時の閾値温度を100℃と定義した歴史が有ったことを想起する。
【0121】
通常は、温度計を、沸騰する液体の中、すなわち、液表面よりは下へ設置する。容器外から供給されるエネルギーは、熱振動となって、対流により液体中を温度計の壁面へも伝わる。沸点に近づくまでは、容器外部からの供給加熱エネルギーは、液体分子の熱振動とその振動分子を囲んだ液塊が対流となり、高温度の液塊は液体表面の界面へ上昇する。また、液塊表面温度が沸点に近づくと、激しく蒸発が始まり、分子が飛び出た液塊の温度は、分子放出で失ったエネルギー分低下して、液塊は対流で降下し、温度計表面へ達する。界面で分子の蒸発に依って上昇高温液塊と下降低温液塊が入り交じり、その平衡点が温度計に反映されると見られる。したがって、温度計の指示値は、蒸発界面の蒸発サイト温度より幾分か低温である。沸騰する液界面の温度は、直接には計測しがたい。しかし、熱電対などを数箇所に配置して平均を求めれば、応分に正確さを期せると思われる。界面での沸点に達した蒸発サイトでは、高温状態の液塊が集中し、周辺液塊から水素結合ボンドなどを介して供給される増加エネルギーは、蒸発分子の内部エネルギーとして伝わり、分子内部エネルギーが蒸発の閾値を越えると、分子は結合ボンドを離れて蒸発サイトを離脱し、蒸発分子としてエネルギーを持ち去る。そのあとの液塊付近は、エネルギーが一時低下するので温度平衡が崩れ、温度低下した液塊は水面下に降下する。液塊内でも、表面が高温で内部は温度が下がる。液塊が分布する液空間では、液塊の温度上昇と下降が生じ高温液塊が次々に現れて平衡状態が現れるので、沸騰表面に近い温度計表示は一定になる。それを越えた蒸発サイトからは、エネルギー的に結合エネルギーを越えた分子は外界へ飛び出し、新たなる沸騰温度に達した高温の液塊が界面へ現れる。液塊の大きさに反比例して、伝達されるエネルギーに対する液塊温度変化が生じるので、蒸発の割合は液塊が小さいほうが高いと言える。それは、液塊の重量当たりの表面積が大きいほうが、蒸発しやすいこととも関係がある。その比表面積が蒸発の指標で、バルクよりも薄いフィルム状、フィルムより粒子状の液体が、蒸発効率が高いことは現実である(例えば、「特開2007−101150公報」,「特開2003−246605公報」を参照)。
【0122】
肉眼では見えないが、水分子は、酸素原子の周りに2個の水素原子が規則的に結合していることは公知である。水分子の運動は、その重心の並進運動と重心周りの水素原子の回転振動運動に分離されている。そして、水分子の並進熱運動で周囲の物質と衝突することが水蒸気圧力発生の原理で、その衝突圧力の大きさが温度表示定量の原理となり、その温度は、分子重心の並進運動エネルギーの表示とされている。水分子の重心に位置する酸素原子周りの水素原子の振動エネルギーは、並進運動とは直接関連しないと考えられ、水の温度表示には寄与しない潜熱の原理とされる。だが、その重心周りの水素原子の回転振動エネルギーは、水分子の周囲物質との結合、空間的電磁的相互作用から得るエネルギーで励起されている。比熱として表現される水分子の相互作用構造に依存するが、温度の増加が内部エネルギーを増加させ、その対数的表現が水分子のエントロピーを増加させ、並進運動も支配している。このエントロピーこそが、自然が与える変化をもたらすエネルギーである。この相互作用こそ、結合構造過程、比熱の内容なのである。この周辺水分子との相互作用エネルギーが、該水分子の内部エネルギー蓄積として加算されるもので、水分子の総合したエネルギーは、重心の並進運動、すなわち、温度表示に寄与する顕熱と水素分子の回転振動による潜熱の総和と言える(例えば、「C.kittel:Introduction to Solid State PHySics,5th Edi.1976John Wily&sons.Inc.」を参照)。
【0123】
蒸発界面では、液体内結合ボンドを介して、エネルギーが気体分子へ吸収される。温度が一定状態で吸収したエネルギーは潜熱と云われるが、それは、古典的には気体分子内部エネルギーであり、そのエネルギー量が、通常云われる気化エネルギーである。従来、気化エネルギーは、温度一定の沸点で水分子が瞬時に吸収すると考えられているが、内部エネルギーは、沸点に至るまでに分子内空間の定積比熱を係数として各温度で積分し総合したエネルギー、すなわち、内部エネルギーとして保持されると考えるのが自然である、なぜならば、蒸発は、沸点以下の蒸発温度でも生じている。通常のマクロな巨大集合物質に於ける比熱値を分子の如きミクロな対象に適用することは困難と思えるが、近似的には、分子レベルの比例常数もあり得るだろう。蒸発分子は、その気化エネルギーを得て空間へ旅立つ。従って、これは、上述したように、気化した水分子は沸騰点までの液塊での温度比例の運動エネルギー(顕熱)と、温度一定で獲得した気化エネルギー(潜熱)の総和を体現し、力学的にはエンタルピー変数で表す慣行になっている。且つ、殆どの蒸発現象は、気体と液体の境界面で発生している。
【0124】
液体の蒸発を工業的に行うには、収容する相応の容器と熱源が必要である。水や液体分子のサイズは、容器などの日常的サイズより遙かに小さいので、容器サイズには、広範な大きさの選択が可能である。大は薬缶の如き、小は注射針のような細い管であっても、その内径中には、莫大な数の水分子が漲っている。溶液へのエネルギー伝達は、通常、化石燃料の化学反応による炎が容器を加熱する。あるいは、電力を使用する場合には、電気抵抗導体に電流を流した場合に生じる電流と導体原子との衝突が熱源で、その熱は、導体結晶格子の熱振動で伝搬する。その電流による加熱が導体の温度を高め、その熱振動が水容器壁から内部の液体へ熱振動の形で伝搬する。さらに、加熱が強まり、抵抗加熱導体分子の融点に近づくと、抵抗体は赤熱状態となり、周囲の空間へ電磁波、赤外線、あるいは、可視光線を送り出すことになる。容器内の被加熱液体分子は、容器壁から、伝導・対流・輻射の形でエネルギーを受容するが、伝導と対流は、液体分子が接する容器壁表面分子の機械的な振動運動が原因であり、電磁輻射によるエネルギー伝搬は、電気導体内を運動する電子の加速・衝突現象により発生する電磁波の電界振動が、液体の電磁的モーメントを励振することによる加熱と言える。蒸発装置の大きさと加熱方法は、必要とする蒸気量に依存するが、蒸発サイトの加熱状況によって、様々な形態が可能である。
【0125】
液体、水からの分子の蒸発は、通常、液体の表面と、気体と液体が接する界面で生じる。沸点以下でも蒸発は生じ、液体内部で気化があれば気泡が生じ、その内表面で蒸発が始まる。その場合には、内部エネルギーの上昇も低いので、蒸気圧も相応に低い。容器内液面が広い場合には、蒸発分子数とその近接周囲液塊が占有する面積も増加するので、蒸気発生量は高まるが、液面を平面のフィルム状に薄くすると、蒸発界面の面積が増加するので、蒸気の収量も増加する(例えば、「特開2007−101150公報」を参考)。さらに、空間に漂うミスト状の微粒子的な液塊の場合(例えば、「特開2003−246605公報」を参考)は、一様液表面及びフィルム平面状態の場合に比べて、界面の比表面積が著しく増加するので、相対的に、多量の蒸気発生には、液体をミスト状にすることが効果的である。
【0126】
図25に、装置の概要を示す。
蒸気発生槽の上部に温水導入管と温風導入管を配し、その結合点に気化ノズルを設ける。ノズルの先端部には加熱装置がある。さらに、上部空間には、遠赤外線照射装置を設けている。また、装置の初動時には、補助電力、並びに低温給水装置が設けられる。
図26(a),(b)に示すように、本発明で使用する
噴霧ノズルの先端部には、加熱装置が取り付けられている。通常、気化器から吹き出される噴霧
(ミスト)状の液体は、
噴霧ノズル先端から放出される時の断熱膨張により、温度が低下する。更に、気体が蒸発する際の気化熱の放出に伴う温度低下が加わり、霧状水塊の温度低下があり、蒸発の効率が低下することは避けがたい。従って、液温・水温を上昇させることが、蒸発効率を向上させる為には必要で、その解決の方法は、ノズル部分の温度を高めることが有効であることが分かった。蒸発能力比較の予備実験(使用電力約1kw)では、通常の湯沸かしガスコンロ式(4kw)と蒸発量比較を行った結果、約4倍の蒸気発生成績が見られた、略4倍の効率と言える。
噴霧ノズルから放出された噴霧(ミスト)状の液塊の温度を更に高めるためには、蒸発空間に赤外線・遠赤外線で充満した空間を設けることが、蒸発効率を高めるために有効であることが分かった。
【0127】
図27に示すように、
赤外・遠赤外線加熱装置V/3を石英管の中に取付け、それを数本組み合わせて蒸発空間に配置する。ノズルから放出される蒸気、並びに液塊のミスト粒子が直線的に
後段の蒸発装置出口へ飛行しないように、石英管は、衝突の壁を構成するように
格子状に組み立てて形成した遮蔽体V/2として配置する。
本発明では、噴霧ノズルの形態が性能を左右した。現状では、比較的最良と思われたサイズと形態を使用しているが、さらなる組織的な研究が求められるであろう。ミスト加熱も重要な課題である。伝統的に、分子サイズの過熱蒸気を生成するには、高温度の加熱壁を設けて、ガス分子の壁面への衝突によるエネルギー伝達が主体であったが、その直接伝達法に比較して、赤外線・遠赤外線による電磁的な伝達の採用は、従来では少なかった。しかし、蒸発媒体が水分子の場合には、分子の回転振動エネルギーの共鳴スペクトルが、遠赤外線エネルギー領域で発生していることが知られてきた。水分子の赤外・遠赤外領域における挙動が充分に解明されているとは言えない現状なので、今後の研究に待つところが多いのだが、最適な輻射エネルギーを発生する赤外発光体の研究、その発光体を保持するために、目下は石英ガラス管を用いているが、その形態とサイズの研究が今後の課題となるであろう。さらなる発展が求められる。
【0128】
図28に、本発明にかかわる空水熱発電システムの概要を示す。
装置稼働状態を順に解説する。固体ボイラー1eは、水蒸気発生用の化石燃料を使わないボイラーである。固体ボイラー1eへ入力される主要なガス状エネルギーは、水蒸気発生装置2eから送出される水蒸気と搬送用の(温度約100℃)高温空気である。搬送用の高温空気は、圧縮送風機7eで、断熱圧縮により発生する。
【0129】
固体ボイラー1eの外周には、温水タンク3eから送出される温水が炉体の周囲を流れて基礎温度を維持している。さらに、固体ボイラー1eの蓄積ガス内部温度が高まり、炉体から過熱蒸気を送出する時に、トリガーエネルギーを、図示の如くに注入する。簡単化のために略記するが、トリガーエネルギーも、温水タンク3eから流れ出るエネルギーに、熱交換器10eにおいて若干の電力エネルギーを付加したものが使われる。固体ボイラー1eから送出される高温度(約200℃)の過熱蒸気と搬送空気は、ターボガス圧縮機(コンプレッサー)4eへ送られる。圧縮された過熱蒸気は、アンブレラ蒸気タービン5eへ導入され、アンブレラ蒸気タービン5eの回転力は、発電機6eへ伝えられて電力出力になる。発電出力の一部分は、装置内の作業電力となって消費されるが、初期に装置内へ蓄積されたエネルギーの消耗を補うもので、循環エネルギーである。また、余分は、発電系外部出力となって外部へ供給される。その外部供給エネルギーに見合った入力が、図に示してあるごとく、ウォータージャケット9eへの常温水熱エネルギーと、空気圧縮機7eへの環境大気の空気エネルギーである。その空気エネルギーは、アンブレラ蒸気タービン5eで仕事をした後に外部へ放出されるので、外部供給エネルギーの実質内容は、水熱エネルギーであると言える。
【0130】
発電装置内の機器であるターボガス圧縮機4eと、アンブレラ蒸気タービン5eなどの電力効率は精々50%程度なので、通常の機器と同様に廃熱が生じるが、それをリバースケットル8eで取り囲み、さらに、周囲にウォータージャケット9eを配して廃熱エネルギーを吸収させ、そこで生じる温水をエネルギータンク3eへ蓄積する。蒸発装置への入力エネルギーは、発電系が作動に入れば、廃熱の一部が再びエネルギー入力となって、蒸発装置へ戻って来る仕組みとなっている。
【0131】
(第一実施形態の効果)
(1)ゼオライトは、元来絶縁性の高い酸化物であるので、フォノン熱振動による伝熱加熱よりも電磁波による共鳴加熱の割合が高いので、中央発熱体からの加熱エネルギーは主に電磁波による輻射加熱と考えられる。また、発熱体には、電熱加熱用のヒーターが組み込まれており、200℃を越える過熱蒸気脱着時には、外部から電気エネルギーの添加も可能である。
【0132】
(2)製作が容易で、作動が単純であることを目的として、アンブレラ型蒸気タービンを創造した。
作動原理は、式(2)、式(3)で示されるが、効率を高める為の装置の大きさ,即ち、慣性質量Iは、実験的に決めねばならない。タービンの回転部分を支える軸受けの温度上昇、機械的振動による騒音と軸の共振による破損問題などが典型的な問題である。軸受け部分でのガスの漏洩などは常に問題となる。
アンブレラ型タービンの高い効率はシステム実現の要素であるため、上記の問題に対し、本発明を、上述した空水熱発電システムに応用すると、比較的小型の蒸気タービンを使用することで、化石エネルギーを極力使用しない水熱発電の実現可能性が確かめられた。
【0133】
(3)比較的小容量のガス体をターボ方式の回転翼で圧縮する場合には、固定翼と回転翼の間隙部分からのガス漏洩量が無視できない場合がある。ことに圧縮率が高くなっている場合には、僅少な間隙を縫うように漏洩が生じる。また、このターボ方式は、圧縮が連続的なので、レシプロ方式に比較して高い効率が期待できるが、同じ程度のサイズで、圧縮機としての性能の指標である圧縮比と出力ガス流量を高めるためには、羽根車を多段結合とし、かつ回転数をレシプロ方式に比べて高める必要があるため、その面で新たな技術的問題が生じる。
【0134】
したがって、回転軸を支える軸受けの温度上昇、機械的振動による騒音問題などが典型的な問題である。また、軸受け部分でのガスの漏洩などは常に問題となる。
これらの問題に対し、ターボガス圧縮機の高い効率は、システム実現の要素であり、圧縮の過程で発生した圧縮機から発生する熱エネルギーは、水蒸気発生用のエネルギーとして無駄なく回収された。この特性が、水熱発電を成功させた原動力となっている。
【0135】
(4)従来の熱エネルギーを機械動力や電力発生に変換する方法では、変換する過程で生じる大半の不可逆的に発生する熱エネルギーを、装置外部へ放散させている。その放散熱は、作動物質である空気やガス体の粒子運動エネルギーや、作動物質から輻射放散される熱線である電磁波、赤外線が主成分である。その他、エネルギー発生装置内の軸回転や、機器の摺動による摩擦伝熱なども、放散エネルギーの一部分である。
【0136】
これらの放散エネルギーは、従来、動力発生にともなう副次的損失として評価され、不可避的に放出され廃棄されている。その発生割合は、動力発生効率が、大概は、入力エネルギーの50%前後であるので、残余の50%は、廃熱として処理されてきた。この50%程度の不可避的損失はしかたがないとは云え、扱う動力が大きい場合には、膨大な損失になるばかりか、周囲の環境へ排出された熱エネルギーは、環境破壊の原因をなしている。
【0137】
本発明は、この排出エネルギーを捕捉して発電に供する熱エネルギーに再生する方法を提供するだけでなく、エネルギー利用文化の近代化も意図している。
従来も、廃熱を再利用する考案は実用化されてきた。例えば、発電所や製鉄工場の廃熱エネルギーを用いて温水として利用し、家屋の暖房や農場の温度管理に再利用する例がある。しかし、此等従来の廃熱利用は、廃棄熱が利用できる周囲環境に恵まれた場合にかぎられていた。すなわち、廃棄熱を再利用するにも、相当な設備資本が不可欠なのであるため、廃熱利用が局在化しており、廃熱利用が一般社会に広く受け入れられる状況にはなっていない。この廃熱利用の局在化を、WJの普及を通じて、普遍的な一般市民の日常生活文化にすることも、今日的な課題と言える。
【0138】
従来の熱エネルギー利用の形態は、高温熱源から低温熱源へ流れる熱流の利用が一般的で、低温熱エネルギーを高温エネルギーへ転化再生する過程は、化石燃料などの添加エネルギー利用が可能な場合に限られていた。低温熱エネルギー利用の典型的形態は、冷房装置などに見られる場合である。低温の媒体を作るために圧縮ポンプなどを利用し、高圧状態にした作動物質を急激に断熱膨張させる過程で生じる作動物質の温度降下を利用するが、圧縮ポンプへ高温度起源のエネルギーを注入することに依ってのみ可能である。その場合、それは、圧縮ポンプなどに消費されるエネルギーが相当な量になり、その過程で発散する廃熱も大量で、エネルギー利用効率が低下する。その非効率さは、低温状態を得るための必要コストとして慣例的に容認されているのだが、非合理的状況に術なく安住する心理的要因も、WJの利用を実践するなかで見直すべき課題である。
【0139】
低温度エネルギーを高温度エネルギーに再生するには、付加的エネルギーが必要なことは、熱力学的見地から必然的な帰結である。従来、その方法は限られていて、高温度エネルギーを得る方法は、化石燃料や原子力などを利用する化学的燃焼熱や核反応などの物理的反応熱を使う以外にはなかった。日常的には、家庭で使う石油暖房など、化学反応が一般的形態である。人為的な高エネルギー状態は、そのような自然発熱現象が生じるように熱機関を構成することで実現するのである。いいかえれば、従来の高温度創出プロセスは、自然物質の分解過程の利用のみに限定されてきたと云える。物資の分解過程を伴わない高温度創出過程が、従来では考究されていなかった。然し、ここに人間文化の新たなる技術的フロンティアが存在する。
【0140】
特許文献1では、高温度創出過程としてゼオライト物質の物理的性質を利用する考案をしている。本発明であるWJとの関連性を問えば、特許文献1の補完をする意義があり、そこで起きている自然現象である、赤外線並びに遠赤外線の役割を考察し、新エネルギー技術として更に追求さるべき課題として捉えたのである。殊に、ゼオライト炉内で起きている遠赤外線現象には、注目するべき課題がある。
【0141】
以下、特許文献1の概念を記載する。
初期加熱で活性化したゼオライト結晶の内部化学ポテンシャルが、周囲の環境より低い時には、外部から気体状物質分子を吸引する。特に、水分子を吸引する力が大きい。結果として、周囲環境から水を吸引すると、結晶の周囲環境を成す水蒸気圧が減少し、連結する水の供給源である蒸発装置から、急速に水蒸気が自然に発生して補給される。すなわち、蒸気発生装置に内在する水分子を加熱しなくても、常温の外部蒸気圧が下がれば、装置内の水から蒸気が自ずと供給されるのである。
【0142】
そこで、噴霧装置を加熱すれば、更にその状況は加速される。噴霧装置では、水分子がエネルギーを持って外部へ逃げ出すことになるので、その水分子の周囲水温が低下する。この現象は、冷熱の発生として利用されているが、そこで生じた水の温度差、すなわち、温度差が示すエネルギーを水が放出したのであり、蒸気となった水分子が、かなりのエネルギーを持って、噴霧装置に隣接する炉内のゼオライト結晶へ吸引されたのである。そのゼオライトの結晶構造中へ吸引吸着した水分子は、再びゼオライト結晶内外の表面へ定着し(ゼオライト結晶内には空洞があり、そこに結晶内表面が存在する)、水分子の運動停止に伴う運動エネルギーの放出と伝導で、周囲のゼオライトなどの温度を高めることに寄与する。この物理的過程で、ゼオライト結晶に突入してきた飽和水蒸気水分子の温度以上の高温度の発生が見られる。この温度上昇の因子は、単純に水分子の運動エネルギーの寄与だけであるとは言えないが、ともかく、高温度エネルギーが発生する。水の化学的分解ではない蒸発と吸着に伴う過程で、物理的運動エネルギーと結晶内での分子的共鳴状態が高温度エネルギーを生じさせたと見なせるのである。
【0143】
この結晶内吸着状態にある水分子へ、更に外部から赤外線電磁波エネルギーを注入すると、分子の励起現象が生じ、遂には、結晶内水分子の運動エネルギーが、ゼオライトの吸着ポテンシャル力を越えると、水分子は外部へ放出される。その時の水分子は、一個の高温度粒子として外部へ出てくる。この分子一個の状態は、従来、過熱蒸気と呼ばれる形態に他ならない。
【0144】
この過熱蒸気発生には、従来の発電装置では化石燃料を燃焼分解させ、その炎のエネルギーで加熱したのであるが、ゼオライト式蒸気発生法では、化石燃料を使わず、廃熱水から取り出したエネルギーで加熱し、さらに、炉内を環流する高温な油の熱エネルギーを使う。そのエネルギーが、ゼオライト炉中に配した金属加熱管表面の伝導帯電子からなる電子ガスや加熱管金属格子を励振するフォノンエネルギーを励起する。其処で発生したフォノンは、炉体を構成するゼオライト粒子へ物質の格子振動として伝熱するが、ゼオライト及びゼオライト中に含有する水は概して熱伝導度が低いので、フォノン伝導熱の寄与度は少ないと見られる。
【0145】
一方、金属加熱管表面で電子ガスの金属格子との衝突運動により発生する赤外線及び遠赤外線光子は、ゼオライト及び結晶内の水などの誘電体の中へ容易に伝搬する。その光子エネルギーがゼオライト結晶や水分子に吸収蓄積され、更に、水やゼオライトなどの誘電体中に励起されたフォノンや分子のイオン化で発生した励起電子の力学的相互作用で発生する水分子の回転運動や、二次的共鳴赤外線が、水分子のエネルギーを一層高める。結果として、水分子の蓄積エネルギーが脱着ポテンシャルエネルギー値を越えると、吸着ゼオライト結晶内から結晶外部へ水分子が放出され、過熱水蒸気として外部空間へ放散され、最後は発電に使われるのである。かくして、化石エネルギーを用いずに、過熱蒸気が発生する。
【0146】
しかし、上述の熱現象には、未知なる問題や解決すべき課題が少なくない。ことに、ゼオライトと云う物質がエネルギー利用に画期的な意義を持つことに関心を寄せる人々は、少数派である。WJの普及と利用が、ゼオライトを主役にしたエネルギー新時代を生む先駆けともなることが期待される。
従来、低温の水が化石燃料などを使わずに自分自身で高温化するのは、熱力学第二法則に反するのではないか、という疑念が持たれている。作動の初期だけ補助燃料を使い、その後は自立的に発電を持続することが出来れば、この疑問は払拭されると考えられる。
【0147】
ゼオライト炉内の過熱蒸気発生過程で、循環油の加熱には、発電装置が生み出す一部電力が使われる。発電過程の廃熱からWJを介して回収される熱エネルギーが、ゼオライト炉の加熱並びにゼオライト炉に供給する飽和水蒸気の発生にも使われる。初期の全装置が低温度の時に過熱水蒸気を発生させるには、外部補助電力が全面的に使われるが、装置が稼働状態に入り、諸処の温度が上昇すれば、WJを経由する廃熱を回収した熱エネルギーが蒸気発生に寄与するので、補助電力は軽減するのであり、その軽減した電力を、発電出力の一部で代替するのである。すなわち、廃熱の再生利用で供給されるエネルギー分だけ、内部電力使用量が軽減されるのである。自ら生み出したエネルギーが装置内を環流し、あたかもエネルギー・フライホイールの如き状況を実現すれば、この疑問は解消するのである。
【0148】
フライホイール的なエネルギーの環流が始まっても、完璧な廃熱の捕捉はできない。これは、補足しきれない損失もあるので、僅少とは言え、エネルギー回収が不能な不可避的に生じる損失と、外部へ供給する発電出力を総合したエネルギー量は、装置入力として外部から環境水熱や環境空気のエネルギー供給を受けることになるためである。
保温を完璧に行い、外部へ離散するエネルギー漏洩が皆無になれば、発電効率は限りなく1に近づくが、その場合でも、装置内を環流するフライホイールのエネルギーは、相当に大きな値を取ると思われる。したがって、装置の保温、エネルギー蓄積が不可欠である。
【0149】
この面で、従来の技術的な遅れは、廃熱ないし廃棄物に対する人間の思考が後ろ向きになっていた事が考慮されるべきであり、環境保全を志向する現代文化が解決するべき課題の一つである。WJの投げかける問題意識は、現代文明の盲点を表出するものでもある。
WJは、従来にないエネルギー創造手段として、諸問題解決への足がかりとして導入されるのであるが、結果としての応用は、かなり広範に亘る事が予測できるのである。
【0150】
一つ目のエネルギー創造手段は、廃熱吸収のWJの創造とその応用である。
ここでは、まず、WJを装着する発電設備に限定して考えてみる。それは、蒸気発生装置の保温と余熱である。ゼオライトを内部へ搭載する金属製の高温高圧容器で、内部に銅管を巻いたコイル状の発熱体へ高温の油を環流する。この発熱体から、銅管金属の熱的格子振動に基づく熱伝導や、銅管表面の伝導帯に存在する自由電子ガスの励起による赤外線が放出される。ゼオライトを搭載する金属容器は、内部が100℃ないし200℃に加熱されるので、容器表面を、ウォーターパネルWPによって100℃近くに保温する事で、発生用の熱エネルギーの消耗が防がれる。すなわち、廃熱が、エネルギー発生に再生利用される。
【0151】
蒸気発生装置は、エネルギー回収を意式的目的とする独立した建物に収容するか、小規模の場合は、孤立した容器に閉じ込める。それらの建て屋や容器の外周に、温度制御用の配管系を準備し、そこへ、装置稼働のためには温水を、若しくは、装置休止目的には冷水を循環させる。温水としては、WJから得る高温水を循環させる。この手段により、蒸気発生装置を余熱する電気エネルギーを、経済的に使うことが可能になる。
【0152】
二つ目のエネルギー創造手段は、発熱する発電装置そのものを冷却ではなく保温するものである。
発電装置の構成は、加圧用のコンプレッサー、蓄圧用のタンク、発電用の蒸気タービンなどである。これらの機材を、独立建て屋もしくは容器に収容し、周囲を金属壁で囲む。発電装置は、300℃程度の高温で作動させる。作業温度の上限は、高圧高温度の過熱蒸気の凝集液化温度と、潤滑油の安全使用温度で決まる。
発電機及び電動機の必要部分は、水冷して安全稼働を維持する。金属壁の外周温度を100℃程度に抑える目的で、その装置の外側に、水冷保温壁WPを設けるが、装置からの廃熱処理ではなく、エネルギー再生利用が目的の保温である。その総合する環流水容器が、WPの連結で組み立てられるWJである。
【0153】
発電装置などの発熱体を金属製容器で取り囲み、周囲に水を環流させる状況は、湯沸かし釜を反転した、逆釜(リバースケットル)の状況である。それは、江戸時代の昔、長火鉢に使われた銅壷を思い起こさせる。この逆釜を取り巻く水の壁が、WPとWJといえる。この中で得られた90℃前後の温水は、発電用のエネルギーとして再利用される。WJは、発電装置全体を包み込むように閉じていなければならない。これは、廃熱エネルギーを吸収して回収するためである。
【0154】
上述の諸課題を解決する具体的な手段であるウォータージャケットWJを、手作りで試作した。その部品としてのウォーターパネルWPは、二重布製の容器で
ある二重密閉容器であり、テント布などの自然繊維でできた布へ、耐熱耐水のゴム系接着剤を塗り込み素材とし、二重の袋構造を縫製で形成する。それは、水枕などと似ている構造であるが、連絡通水用の配管が、この容器周囲に複数取り付けられることなどが、一般的な水枕や湯たんぽとは異なる。パネルの面積は、発電装置の規模により大きさが異なるが、内部の水圧などを考慮して大きさを決める。布製である必要は、逆釜から放散される赤外線熱エネルギーを吸収させる事から生じる。赤外線が透過しやすくする為に、二重
密閉容器内側(逆釜に接する面)は、布製壁で構成し、二重
密閉容器外側の壁は、内側にアルミ箔のような
金属薄板を裏打ちして、赤外線の外部への漏洩を防ぐ構造が不可欠である。このWPを、逆釜の外側へ接するように吊り下げ固定する。各WPは、配管で相互に
複合結合され、全体が、WJとして逆釜から放散される熱エネルギーを温水として吸収採取し、エネルギーの再生を行う。
【0155】
経済的かつ文化的効果について記せば、従来は捨てて顧みなかった廃熱というものに経済的価値が生まれ、新しい文化の展望が拓ける。温泉の廃湯などについて、従来は、農業用にその一部が利用されてきたに過ぎないが、WPが経済的規格商品として広く扱われるようになれば、いろいろな家具や家屋の一部に使われるようになる。昔も今も、湯たんぽなどは日常的に家庭で使われていたが、冷暖房が湯たんぽ的に自在に自作できる新たな文化が創出され、巨大な経済市場が形成されることもあり得る。これが、本発明の最大の効果と言えないだろうか。
【0156】
だが、一般庶民大衆としてみれば、手間がかかる面倒なことは避けて通る習性があり、廃熱利用などの構想は、政官業界主導で省エネルギー商品の宣伝販売に利用されることが無ければ、実現はおぼつかないかも知れない。然し、そこで市民の自作による経済活動が社会的慣行として公的に奨励され、報償の対象に成る風習などが定着すれば、一般社会人も、そういう手間暇を厭わずに、WJの製作を行うことになり、個人による自給自足的で創造的文化を推進する契機ともなるであろう。そして、其れは、新しい技術革新としてあらたな産業文化を生むのである。
【0157】
この手作り文化が新文明の鍵なのである。中小規模のWP,WJ産業などが勃興することもあろうが、一般市民が手製でつくることが大いに望まれるのである。衣料、服飾文化への応用も考えられる。正に水を着てしまおうという発想である。肌着には、木綿が最良の素材であるが、その上にWJを着用しようとする傾向も現れるであろう。従来でも、局所的に発熱体を体の表面近くに保持して暖房をとる「懐炉」などの考案が多数あるが、WJの利用は、更に、積極的に日常の衣装文化としての発展が期待できる。
【0158】
水1キログラムを厚み1ミリメートルの厚みに展開すると、面積が1万平方センチメートルになり、それは、1メートル平方の平面の素材と成る。つまり、通常の衣服に水の平面を活用すれば、冷暖房出来る衣服が誕生するのである。携帯用の温水・冷水を循環させる装置が開発されると、新たなる服飾革命が到来する。新しいクールビズやウォームビズが誕生する。そして、新しいWJのファッションが生まれる。昔も今も、綿入れやキルティングが普通の暖房用であったが、未来の冷暖房衣服は、水着になる可能性がある。水泳用の衣装だけが水着ではなく、上手に水エネルギーを着こなすことが新ファッションを生むであろう。
【0159】
技術並びに教育的効果について記せば、使用者が自分の好みに合わせて自由にエネルギー環境を構築できるようになるので、ドイト的な手工芸が盛んになり、手加工の良さが復活し、個人の手による職人的企業が復活する契機となる。手の働きは、知能を向上させ、人間が文明を築いてきた原動力であった事を想起すべきである。電脳の普及による現代的大量生産社会がもたらす手作業の衰退が、人間能力を閑却不在化することの結果として、精神文化が衰退し、人間性や民度の低下傾向が普遍化しつつある現代は、無精人間の大量発生が結果しているが、WPやWJを応用した文化社会は、その悪影響を押しとどめ、文明と文化程度の低落傾向に歯止めが掛けられる。
【0160】
家屋の冷暖房への利用効果について考えると、従来の家屋暖房では、壁の中に断熱材を挟む工法が一般的で、伝統的には土壁であるが、水壁という発想は無かった。しかし、WPが一般に普及すれば、暖房用としては其処へ温水を通じればよろしいし、冷房用としては冷水を流せば良いのである。流した水は再利用することが出来るので、無駄にはならない。現在普及している室内空気の温度を加減する方式よりは、自然な冷暖房が可能になるだろう。現在普及している太陽熱温水器などもWPの類似的形態であると言える。太陽熱温水器には特別な設備が必要であるが、一般にWPが普及すれば、太陽温水器もさらに広範に使われるようになるであろう。
【0161】
(5)上述したように、大量の水蒸気蒸発を効率良く行うには、大量の微粒状の液塊を造る必要がある。一般に、微粒状の水滴や液塊の送出には、霧吹きの原理、または、自動車エンジンのガソリン気化器の如きノズル装置が想定されるが、吹き出す液体の量が大きい場合には、ノズルの口径も吹き出す導入搬送空気の量も、それに応じて大型大量になる。また、気化器で吹き出した霧状の液塊のサイズによって蒸発の効率が決まるので、霧滴の大きさを最適化することが不可欠である。また、蒸発は、液塊の温度に依存するが、液塊を効率良く加熱する方法に工夫が必要である。ことに、噴霧装置から送出される蒸気の含む残留液状水分が、後続する固体ボイラーの性能劣化を誘発するので、水滴が極力残らない乾燥した水蒸気をつくる為の加熱装置の工夫が求められる。
【0162】
化石燃料の使用を極力減らしてエネルギー的に効率良く水蒸気を発生させることも、課題である。発電装置が稼働状態に入った時点では、蒸気タービン、発電機などから生じる廃熱を熱源とする、リバースケットルの周囲にあるウォータージャケットから出力される温水と、温風送風機からの導入搬送空気が、蒸発装置へ入力される。
全体装置の初動時には、系全体の温度が低いので、蒸発槽には低液温の水を導入し、補助ヒーターで加温する必要がある。
本発明を
図1に示す空水熱発電システムに応用すると、装置初動時には、通常の電気ヒーター加熱で蒸気を発生するが、発電系統が作動に入った時点では、逆釜とウォータージャケットから送出される約70℃の温水を入力として稼働に入る
ウォータージャケットシステムが形成される。したがって、蒸気発生の加熱電力は、初動時に比較して低減させることが出来た。