(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571324
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】清浄空間維持装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20190826BHJP
F24F 7/00 20060101ALI20190826BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20190826BHJP
F24F 13/068 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/00 A
F24F13/28
F24F13/068 A
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-212380(P2014-212380)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2015-111031(P2015-111031A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2017年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-232652(P2013-232652)
(32)【優先日】2013年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391038475
【氏名又は名称】株式会社TRINC
(74)【代理人】
【識別番号】100079832
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 誠
(72)【発明者】
【氏名】高柳 真
【審査官】
安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−251741(JP,A)
【文献】
特開平11−193948(JP,A)
【文献】
特開2005−144454(JP,A)
【文献】
特開2007−085721(JP,A)
【文献】
特開2008−157476(JP,A)
【文献】
特開2013−226472(JP,A)
【文献】
実開昭59−020888(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0022486(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/00
F24F 13/068
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
机上に配置されて清浄空気を吹き出す吹出しユニットと、机上に配置されて、吹出しユニットから吹き出した空気を回収する吸入ユニットと、を有し、両ユニット間に机上面にほぼ平行な風を吹かせて両ユニット間に清浄空気を維持する清浄空間維持装置であって、
前記吹出しユニットと前記吸入ユニットとはある角度をなすように配置されており、
前記両ユニット間を結ぶ背後の壁面が設けられ、前記壁面が清浄空間内部に向かって凸に設けられていることを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項2】
請求項1記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットと吸入ユニットが別体になっていることを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、空気を送出/回収する空気源ユニットが吹出しユニットおよび吸入ユニットと別体になっていることを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットと吸入ユニットはフィルタを有することを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットの吹出し面と吸入ユニットの吸入面の大きさが異なることを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットの吹出し空気量分布と吸入ユニットの空気吸入量分布において、外周側が内周側より大きいことを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項7】
請求項4記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットと吸入ユニットのフィルタは前面(作業者側)から着脱、交換ができることを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項8】
請求項1記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットと吸入ユニットの間にエアブロワを有し、該エアブロワによってワークに付着した異物を除去する除塵機能を清浄維持と併せて有することを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項9】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、吸入ユニットの前面側に張り出したフェンスを持つことを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項10】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、頂部は庇として前面に(作業者側に)張り出していることを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項11】
机上に配置されて清浄空気を吹き出す吹出しユニットと、机上に配置されて、吹出しユニットから吹き出した空気を回収する吸入ユニットと、を有し、両ユニット間に机上面にほぼ平行な風を吹かせて両ユニット間に清浄空気を維持する清浄空間維持装置であって、
前記吹出しユニットと前記吸入ユニットとはある角度をなすように配置されており、
頂部が庇として前面に(作業者側に)張り出し、前記頂部の庇の張り出し率が吹出しユニット側より吸入ユニット側が大きいことを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項12】
机上に配置されて清浄空気を吹き出す吹出しユニットと、机上に配置されて、吹出しユニットから吹き出した空気を回収する吸入ユニットと、を有し、両ユニット間に机上面にほぼ平行な風を吹かせて両ユニット間に清浄空気を維持する清浄空間維持装置であって、
前記吹出しユニットと前記吸入ユニットは別体になっており、かつ、前記吹出しユニットと前記吸入ユニットとはある角度をなすように配置されており、
頂部が庇として前面に(作業者側に)張り出し、前記頂部の庇の張り出し率が吹出しユニット側より吸入ユニット側が大きいことを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項13】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、頂部はシートまたは板で透明または半透明であり外部の照明光を内部に導入することを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項14】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、机上には粘着シートを配置することを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項15】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、背後の壁面には粘着シートを配置することを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項16】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、頂部の面に粘着シートを配置することを特徴とする清浄空間維持装置。
【請求項17】
請求項1または2記載の清浄空間維持装置において、吹出しユニットの吹出し面と吸入ユニットの吸入面の間の角度θが可変であることを特徴とする清浄空間維持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄空間を作り維持する清浄空間維持装置、さらに清浄空間内での作業中ワークに付着した異物を除去した際の異物の飛散を防止する空間を作る清浄空間維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来はクリーンベンチやクリーンブースと呼ばれる清浄環境維持装置で清浄環境を維持していた。また従来は、除塵BOXなどと呼ばれる除塵専用装置内でワークに付着した異物をエアブローして除去していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、従来例ではクリーンベンチなどの清浄環境維持装置と除塵BOXなどの異物エアブロー装置の兼用はできなく両方の設備が必要であった。
【0004】
また、これらの装置は箱型の独立した装置であり、作業机などと一体になっていないため、該装置を置く別の机を用意したり、別の置きスペースを用意しなければならなかった。
【0005】
また、従来例の清浄空間維持装置は空間の側壁が作業者に対し直角に配置され、かつ奥行が深いため、ワークの出し入れ時に側壁に当たり、ワークを痛めるなど不便であった。作業しやすいように、側壁を一部切欠いて形成した箱型の清浄空間維持装置の従来例を
図13を参照して説明する。
図13において、箱型の清浄空間維持装置(以下、単に装置という場合もある)10は上部、下部、背後に互いに連通するスペース12、14、16を有するように構成されており、背後スペース16に配置されたファン(送風機)18によって、上部スペース12から上部フィルタ24を通して箱内の作業空間に矢印で示すようにエアを吹出して、作業空間から下部フィルタ26を通して下部スペース14にエアを吸引し、背後スペース16を通して、再び上部スペース12にエアを循環させている。このため、上部、下部、背後スペースのエアは清浄に保たれ、作業空間の一部でもエアは清浄に保たれる。
【0006】
この従来例の装置10では、
図13に示すように、側壁20、22は作業者側に当たる前方が切欠かれている。このため、上部スペースから吹出されたエアは前方および側壁の切欠き部分を通して、外方に吹出すことになる。この結果、箱型の装置内の作業者側の空間では陽圧が維持できず、特に、下方では、エアの吸引があるので、塵(異物)50が作業者側の箱内に入り込み、作業しているワーク(図示せず)に塵が付着する恐れがある。
【0007】
このように、この従来例の清浄空間維持装置は濾過した清浄空気が一部空間外に溢れ出し、また外部の不浄な空気を一部空間内に引き込む現象が発生して、完全な清浄空間を維持するのか難しかった。
【0008】
さらに、他の従来例の装置10を
図14を参照して説明する。この
図14の従来例の箱型の装置10は、
図13の従来例とは、側壁20、22に切欠きが設けられていない点で異なる。しかし、この従来例の装置10においても、エア(空気)が作業者に当たる前方側に吹出し、この結果、箱型の装置内の作業者側の空間では陽圧が維持できず、特に、下方では、エアの吸引があるので、塵50が作業者側の箱内に入り込み、作業しているワーク(図示せず)に塵が付着する恐れがある。
【0009】
また、従来例の除塵BOXでは作業者(図示せず)が発するホコリを清浄空間内に吸入し清浄空間を汚していた。この従来例の除塵BOXを
図15を参照して説明する。
図15において、除塵BOX30は、箱型の装置として形成されており、上部壁に塵をワーク40から取り除くために、作業者が手に持ったワーク40にエアを噴出させるようにエアブロワ32が配置されており、箱の下部には除去した塵をファン34によってフィルタ36を通して背後に排出していた。しかし、作業者(図示せず)の衣服等に付着している塵50がファン34によって吸引され、そのため、塵が室内に吸引され、室内の清浄空間を汚していた。また、作業者がいる前面から汚れた空気を装置内部に吸引するため、折角きれいに除塵したワーク40に新たに異物を付着させてしまっていた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、机上に清浄空気を吹き出す吹出しユニットとこれから吹き出した空気を回収する空気吸入ユニットとを配置して、両ユニット間に机上面に平行な風を吹かせ清浄空間を維持する清浄空間維持装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、前述の清浄空間維持装置の構成において、前記両ユニット間に作った清浄空間内に配置したエアブローでワークに付着した塵(異物)を除去し、除去した異物を吸入ユニットで回収し、ワークに付着した異物を除去する除塵機能を同時に兼ね備えた清浄空間維持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の清浄空間維持装置は、机上に清浄空気を吹き出す吹出しユニットとこれから吹き出した空気を回収する空気吸入ユニットとを配置して、両ユニット間に机上面に平行な風を吹かせ清浄空間を維持することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の清浄空間維持装置は、前述の清浄空間維持装置の構成において、前記両ユニット間に作った清浄空間内に配置したエアブローでワークに付着した塵(異物)を除去し、除去した異物を吸入ユニットで回収し、ワークに付着した異物を除去する除塵機能を同時に兼ね備えたことを特徴とする。
【0014】
前述の清浄空間維持装置は、以下の構成であることが好ましい。
(1)吹出しユニットと吸入ユニットが別体になっている。
(2)空気を送出/回収する空気源ユニットが吹出しユニットおよび吸入ユニットと別体になっている。
(3)吹出しユニットと吸入ユニットは空気濾過装置(フィルタ)を有する。
(4)吹出しユニットと吸入ユニットのフィルタは前面(作業者側)から着脱、交換ができる。
(5)前記両ユニット間に作った清浄空間内でワークをエアブローして付着した異物を除去し、除去した異物を吸入ユニットで回収することで、清浄空間を作ると同時に、ワークに付着した異物を除去する。
(6)両ユニット間を結ぶ背後の壁面が清浄空間内部に向かって凸に配置されている。
(7)天井のシートは庇として前面に(作業者側に)張り出している。
(8)天井はシートまたは板で透明または半透明であり外部の照明光を内部に導入できる。
(9)机上には粘着シートを配置し、背後の壁面には粘着シートを配置し、天井の面に粘着シートを配置する。
(10)吹出しユニットの吹出し面と吸入ユニットの吸入面の間の角度θが可変である。
(11)複数の独立した清浄空間維持装置を並置した場合、隣接する清浄空間を接続するための接続用清浄空間を設ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、机上を容易に清浄空間にでき、この清浄空間中でワークについた異物をエアブローでき、飛ばした異物は回収して外部環境を汚さないようにすることに寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
作業机に本発明の清浄空間維持装置を配置して机上の作業域を制限することなく清浄空間を作る。またワークに異物を発見した場合には、その清浄空間でエアブローして異物を除去し、除去した異物は即本装置が回収して、環境を汚さないようにする。また除塵専用装置として用いる場合は、作業に邪魔にならない作業域の隅(作業机のコーナー)に本装置を置き、除塵する時だけ手を伸ばし本装置内でエアブローし除去した異物は即座に装置で回収して、環境を汚さないようにする。
【実施例1】
【0017】
実施例1を
図1を参照して説明する。
図1は本発明の清浄空間維持装置(以下、単に、装置という場合がある)を清浄環境維持装置(クリーンベンチなど)として使用している図である。
図1において、作業机112上に装置100の吹出しユニット102と吸入ユニット104を(この実施例ではある角度をなすように)置き、作業者114は装置が作り出す清浄環境内で、ワーク110に対して清浄度を要求される作業をする。作業領域外に空気源ユニット(ファン、送風機)106を配置し、吹出しユニット102および吸入ユニット104と空気源ユニット106の間をダクト108で連結して、装置の吹出しユニット102に空気を送り、また吸入ユニット104から使用済み空気を回収する。吹出しユニット102と吸入ユニット104には空気中の異物をろ過するフィルタ(図示せず)が入っているのが好ましい。なお、吹出しユニット102と吸入ユニット104の頂部上には庇118が配置されている。
【実施例2】
【0018】
実施例2を
図2を参照して説明する。
図2は装置に除塵機能を付加してワークからの異物を除去する異物除去装置として使用している図である。実施例2では、作業机112の隅に吹出しユニット102および吸入ユニット104を(この実施例ではある角度をなすように)置き、吹出しユニット102および吸入ユニット104の作業領域内にエアブロワ116を配置し、作業者114は装置が作り出す清浄環境内で、ワーク110に付着した異物をエアブロワ116でエアブローして除去する。作業領域外に空気源ユニット106を配置し、装置の吹出しユニット102に空気を送り、また吸入ユニット104から使用済み空気を回収する。吹出しユニット102と吸入ユニット104には空気中の異物をろ過するフィルタが入っているのが好ましい。なお、吹出しユニット102と吸入ユニット104の頂部上には庇118が配置されている。
【実施例3】
【0019】
実施例3を
図3を参照して説明する。実施例3は吹出しユニット102の吹出し面の大きさが吸入ユニット104の吸入面の大きさより小さい点で、実施例1および実施例2(吹出しユニット102の吹出し面の大きさが吸入ユニット104の吸入面の大きさと同一)とは異なる。この場合、一部の風は床面と平行には吹かない。なお、
図3においては、吹出しユニット102と吸入ユニット104の配置が
図1、
図2とは反対に表示されている。ここで、符号120は吹出しユニット102と吸入ユニット104の後部側同士を連結する部材を示している。
【実施例4】
【0020】
実施例4を
図4を参照して説明する。
図4に示す装置では、吹出しユニット102の吹き出し空気量分布と吸入ユニット104の空気吸入量分布において、外周側が内周側より大きい。ここで吹き出しユニットの風量をVoとし、内側の風量をVoi、外側の風量をVooとし、吸入ユニットの風量をViとし、内側の風量をVii、外側の風量をVioとすると、
Voo>VoiおよびVio>Viiの方程式が成り立つことが好ましい。これにより清浄空間内の風を広範囲にわたり均一かつ安定に保つことができる。
【実施例5】
【0021】
実施例5を
図5を参照して説明する。実施例5では、吹出しユニット102と吸入ユニット104は平行に配置されている。吹出しユニット102と吸入ユニット104の頂部において、これらの間には、吹出しユニット102と吸入ユニット104の前部を結ぶ境界面より張り出した(好ましくは円弧状に張り出した)庇118が設けられている。吹出しユニット102と吸入ユニット104の底部には底板122が設けられてもよく、またはなにも設けないで、底板122の代わりに、作業机(図示せず)の机上面を利用してもよい。作業領域外に空気源ユニット(図示せず)を配置し、装置の吹出しユニット102に空気を送り、また吸入ユニット104から使用済み空気を回収する。吹出しユニット102と吸入ユニット104には空気中の異物をろ過するフィルタ(図示せず)が入っているのが好ましい。
【0022】
吹出しユニット102から出た陽圧の清浄空気は拡散しつつ前進して吸入ユニット104が作る負圧に吸引され遂に吸引ユニット104内に吸い込まれる。この時、前端部に近い一部の空気は陽圧により外部に押し出される。しかし、頂部に庇118があるため、上から押えられて上部には拡散できず、前側に押し出されてくる。一方、吸入ユニット104は負圧を作り吸引するが、やはり頂部の庇118により阻まれて、上部からは空気を吸引できないため、前端部から吸引する。陽圧により前方に出てきた清浄風は負圧により吸引されて回収される。こうして清浄空間は清浄度を維持できる。
【0023】
仮に、この庇118が無ければ陽圧は上側と前側に拡散してしまい、負圧で回収しきれない。負圧側は回収できなかった分量と同量の汚れた空気を外部から清浄空間内に吸引する。こうして内部の清浄度が維持できなくなる。このように前に突き出た庇の意味(役割)は非常に大きい。本発明のもう一つの特徴は作業机の机上面を底板代わりに用いて、無限大に近い底面を得ていることである。
【実施例6】
【0024】
実施例6を
図6を参照して説明する。実施例6では、吹出しユニット102と吸入ユニット104はある角度θを持って配置されている。背後の壁面には粘着シート(図示せず)を有するのが好ましい。吹出しユニット102と吸入ユニット104の頂部には、吹出しユニット102と吸入ユニット104の前部を結ぶ境界面より張り出した(好ましくは円弧状に張り出した)庇118が設けられている。頂部の下面には粘着シート(図示せず)を有するのが好ましい。また、底板を設けてもよく、底板の代わりに、机上面を利用してもよい。底部机上面には粘着シートを有するのが好ましい。作業領域外に空気源ユニットを配置し、装置の吹出しユニット102に空気を送り、また吸入ユニット104から使用済み空気を回収する。吹出しユニット102と吸入ユニット104には空気中の異物をろ過するフィルタが入っているのが好ましい。
【0025】
実施例6では、吹出しユニット102と吸入ユニット104はある角度θを持って配置されて間口が開いており、また清浄領域が作業者側に大きく突き出ているため、作業者はワーク(図示せず)の出し入れが容易である上に、広い清浄領域で大型ワークにも対応できる。
【0026】
吹出しユニット102から出た陽圧の清浄空気は拡散しつつ前進して吸入ユニット104が作る負圧に吸引され遂に吸引ユニット内に吸い込まれる。この時、前端部に近い一部の空気は陽圧により外部に押し出される。しかし、頂部に庇118があるため、上から押えられて上部には拡散できず、前側に押し出されてくる。一方、吸入ユニット104は負圧を作り吸引するが、やはり頂部の庇118により阻まれて、上部からは空気を吸引できないため、前端部から吸引する。陽圧により前方に出てきた清浄風は負圧により吸引されて回収される。こうして清浄空間は清浄度を維持できる。
【0027】
仮に、この庇が無ければ陽圧は上側と前側に拡散してしまい、負圧で回収しきれない。負圧側は回収できなかった分量と同量の汚れた空気を外部から清浄空間内に吸引する。こうして内部の清浄度が維持できなくなる。このように前に突き出た庇の意味(役割)は非常に大きい。本発明のもう一つの特徴は作業机の机上面を底板代わりに用いて、無限大に近い底面を得ていることである。
【実施例7】
【0028】
実施例7を
図7を用いて説明する。実施例7では、清浄空間維持装置を除塵機能を有する装置として用いる形態を示す。好ましくは装置を作業机112の隅に置く。吹出しユニット102と吸入ユニット104はある角度θを持って配置する(好ましくは90度)。頂部には庇118を設ける。底部は作業机の机上面を利用する。作業領域外に空気源ユニットを配置し装置の吹出しユニット102に空気を送り、また吸入ユニット104から使用済み空気を回収する。吹出しユニット102と吸入ユニット104には空気中の異物をろ過するフィルタが入っているのが好ましい。エアブロワ116を有し、ワークの異物をエアブローする。
【0029】
装置では、吹出しユニット102と吸入ユニット104はある角度θ(好ましくは90度)を持って配置されて間口が開いており、また清浄領域が作業者側に大きく突き出ているため、作業者はワークの出し入れが容易である上に、広い清浄領域で大型ワークにも対応できる。
【0030】
吹出しユニット102から出た陽圧の清浄空気は拡散しつつ前進して吸入ユニット104が作る負圧に吸引され遂に吸引ユニット内に吸い込まれる。この時、前端部に近い一部の空気は陽圧により外部に押し出される。しかし、頂部に庇118があるため、上から押えられて上部には拡散できず、前側に押し出されてくる。一方、吸入ユニット104は負圧を作り吸引するが、やはり頂部の庇により阻まれて、上部からは空気を吸引できないため、前端部から吸引する。陽圧により前方に出てきた清浄風は負圧により吸引されて回収される。こうして清浄空間は清浄度を維持できる。
【0031】
仮に、この庇が無ければ陽圧は上側と前側に拡散してしまい、負圧で回収しきれない。負圧側は回収できなかった分量と同量の汚れた空気を外部から清浄空間内に吸引する。こうして内部の清浄度が維持できなくなる。このように前に突き出た庇の意味(役割)は非常に大きい。本発明のもう一つの特徴は作業机の机上面を底板代わりに用いて、無限大に近い底面を得ていることである。エアアブローにより導入された分量と同量の清浄空気が装置外に溢れるが、清浄空気であるため、外部環境を汚すこともなく問題にならない。
【0032】
以上に述べた実施例7の装置の三面図を
図8に示す。
図8aは平面図(断面図)で、
図8bは右側側面図で、
図8cは正面図で、
図8dは右斜め側面図である。除塵機能を持たせるときには、作業領域内にエアブロワ116が配置されている。そして、好ましくは頂部、背後の壁面、底部には粘着シート130が設けられている。吹出しユニット102と吸入ユニット104はダクト108で空気源ユニット(ファン)106と連結されている。
【実施例8】
【0033】
実施例8を
図9を用いて説明する。
図9は装置の庇の形状を示す。庇の形状は前に張り出しているが、さらに吸入ユニット104側の張り出し率が吹出しユニット102側のそれより大きい方が好ましい。数式で表すと以下のようになる。
ここで、張り出し率は以下の式で定義する。
吹出しユニットの奥行をWo、庇の奥行をWo+a
吸入ユニットの奥行をWi、庇の奥行をWi+b
とすると
吹出しユニット側の庇の張り出し率Ao=(Wo+a)/Wo
吸入ユニット側の庇の張り出し率Ai=(Wi+b)/Wi
となる。
この時、
Ao≦Ai
であるのが好ましい。
【実施例9】
【0034】
実施例9を
図10、
図11を参照して説明する。
図10は実施例9の装置を示す斜視図であり、
図11aはフェンスを用いないときを説明する平面図であり、
図11bはフェンスを用いたときの平面図である。フェンス104aは作業者側に張り出すように吸入ユニットの前面側に取り付けられる。フェンス104aがない場合には、外気が吸入ユニット104に吸い込まれるが、フェンス104aがある場合には外気はフェンスに邪魔されて吸入ユニットに吸い込まれない。このため、外部からの塵が入り込まず、清浄度を高く保てる。
【実施例10】
【0035】
実施例10を
図12を用いて説明する。
図12は清浄空間維持装置と除塵装置を示し、
図12aは斜視図で、
図12bは側面図(断面図)で、
図12cは正面図である。この清浄空間維持装置は上部に吹出しユニット102を有し、かつ下部に吸入ユニット104を有し、上部と下部の中間部に清浄空間を有する箱型の装置(例えばクリーンベンチなど)である。左右の側壁132の前端部が前方に迫り出していて、吹出しユニット102から吹出した空気は全て吸入ユニット104に回収される。外部から汚れた空気を吸い込むことがないため、清浄空間を維持できる。左右の側壁の形状は、吸入ユニット104側でより前に張り出しているのが好ましい。
【0036】
この清浄空間維持装置はエアブロワを装備すれば清浄空間を作る装置であると共にワークに付着した異物を除去する除塵装置として機能する。
【実施例11】
【0037】
実施例11を
図17を参照して説明するが、比較例として
図16を参照して最初に説明する。実際の作業現場では、複数の(この説明では、2台の例に挙げる)清浄空間維持装置100,100を並置して作業者が流れ作業をする場合がある。その場合、工程内を清浄空間にして、さらに工程間でワークの受け渡しを行うときには受け渡し空間も清浄空間にする必要がある。
図16は単に清浄空間維持装置を2台、前工程と後工程に並べた状態を示す。空気源ユニット(風力エンジン)106、吹出し102、吸引ユニット104を流れる風量はすべてVoで同量である。前工程の作業が終わりワークを後工程に渡すとき、前後工程間の不浄空間を通過する。このとき、異物がワークに付着する。なお、符号は左図のみに付し、右図では省略している。符号110、114は、それぞれ、ワーク、作業者を示す。
【0038】
図17に示す実施例11は、
図16の比較例の前述の欠点を解消する構成を示す。例えば、2台の清浄空気維持装置100、100の間に連結壁144を設け、物体センサ(好ましくは、受け渡し領域直前でワークを感知する)(図示せず)を設け、吸入ユニット104に、または空気源ユニット106の吸入ユニット104側のダクト108にまたは、空気源ユニット106の吸入側に外気取込用蓋140を設ける(この実施例では吸入ユニット104に外気取込用蓋を設けている)。物体センサがワークを感知したとき、外気取込用蓋140が開かれ、吸引ユニット104内に外気を取り込む。このときの取り込む外気の量をVeとすると、空気源ユニット(風力エンジン)を流れる風量は(Vo+Ve)であり、清浄空間を流れる風量も(Vo+Ve)である。吸引ユニット104はVoのみを吸引するから、結局、Veが溢れ、前後の清浄空間維持装置間に流れる。こうして、清浄空間維持装置間の清浄空間(拡張清浄域)142が創生される。この清浄空間142を通ってワークが後工程に渡されるので、異物のワークへの付着が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例1の装置を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施例2の装置を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施例3の装置を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例4の装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施例5の装置を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施例6の装置を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施例7の装置を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施例7の装置を3面図で示す図である。
【
図9】本発明の実施例8の装置を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施例9の装置を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施例9を説明するための平面図である。
【
図12】本発明の実施例10の装置を示す斜視図、側面図、正面図である。
【
図13】従来例の1つを示す斜視図、側面図、正面図である。
【
図14】従来例の他の1つを示す斜視図、側面図、正面図である。
【
図15】従来例のさらに他の1つを示す斜視図、側面図、正面図である。
【
図16】本発明の実施例11の装置を説明するための比較の構成を示す平面図である。
【
図17】本発明の実施例11の装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
100 清浄空間維持装置
102 吹出しユニット
104 吸引ユニット
106 ファン(送風機)
108 ダクト
110 ワーク
116 エアブロワ
140 外気取込用蓋
142 拡張清浄域
144 連結壁