特許第6571329号(P6571329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571329
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】建物の構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   E04H1/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-251288(P2014-251288)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-113763(P2016-113763A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】的野 恒成
(72)【発明者】
【氏名】駒井 智弘
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167981(JP,A)
【文献】 特開2009−293367(JP,A)
【文献】 特開2007−182676(JP,A)
【文献】 特開2008−214878(JP,A)
【文献】 特開2009−155873(JP,A)
【文献】 特開2002−004597(JP,A)
【文献】 特開2014−190028(JP,A)
【文献】 特開2011−236711(JP,A)
【文献】 特開2010−065412(JP,A)
【文献】 米国特許第04462191(US,A)
【文献】 特開平08−184203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置された胴差における一部胴差の外側または内側に建物外被が上記一部胴差から離間して設けられており、上記離間配置される建物外被の内側である室内側には、上階床の端面を上記建物外被から離間させて、上下階に通じる開口部が形成されており、
平面視で多角形をなす建物とされており、上記一部胴差が建物の角部または非角部で他の胴差部分に対して建物の内方向に入り込んで配置されていることを特徴とする建物の構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の構造において、上記一部胴差が建物の内方向に入り込んでいる箇所で、上記建物外被が上記他の胴差部分の延長線の方向に沿って配置されているか、または上記建物外被が上記延長線よりも建物の外方向に張り出して配置されていることを特徴とする建物の構造。
【請求項3】
環状に配置された胴差における一部胴差の外側または内側に建物外被が上記一部胴差から離間して設けられており、上記離間配置される建物外被の内側である室内側には、上階床の端面を上記建物外被から離間させて、上下階に通じる開口部が形成されており、
上記一部胴差が上記他の胴差部分と面一で屋外に位置しており、上記離間配置される建物外被が建物の内方向に入り込んで配置されて上記一部胴差から離間していることを特徴とする建物の構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の建物の構造において、上記開口部は吹き抜け空間またはスキップフロア配置空間として利用されていることを特徴とする建物の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下階を有する建物の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、1階のサッシの外側にインナーテラスを設け、インナーテラスと屋外との間にスラット可変式シャッタを設ける建物が開示されている。この建物では、サッシを開けることで1階の部屋とインナーテラスとを連通状態とすることができ、インナーテラスを室内側から有効活用することができる。また、スラット可変式シャッタを閉めることで、インナーテラスと屋外とが区画され、防犯性を確保することが出来る。
【0003】
また、特許文献2には、建物本体側に取付けられる床フレームから水平方向へ突出する持ち出し梁の配設構造が開示されている。持ち出し梁は、床フレームを構成する胴差に形成された貫通孔を貫通して床フレームより外側へ突出しており、持ち出し梁の床フレーム内に配設される側の端部は、床フレームを構成する部材に固定されるとともに、持ち出し梁の貫通孔の位置に整合する位置には、持ち出し梁を胴差に固定するための金物が配置されており、持ち出し梁は金物を介して貫通孔を貫通した状態で胴差に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−17613号公報
【特許文献2】特開2010−196448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の建物は、1階側のサッシと2階側のサッシの間に2階床の端部が存在する構造であるため、開放感が減損されてしまう。すなわち、1階と2階を跨ぐ大きな窓を通して、1階室内から外の景色を見たり、外光を室内に取り入れるようにはなっていない。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、例えば、上階と下階を跨ぐ大きな窓を通して室内から外の景色を見たり、外光を室内に取り入れること等を可能にする建物の構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の建物の構造は、上記の課題を解決するために、環状に配置された胴差における一部胴差の外側または内側に建物外被が上記一部胴差から離間して設けられており、上記離間配置される建物外被の内側である室内側には、上階床の端面を上記建物外被から離間させて、上下階に通じる開口部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記離間配置される建物外被は、上下階を仕切る胴差に分断されずに存在することができ、当該建物外被として上下階を跨ぐ大きな窓を配置すること等が可能になる。そして、例えば、上記上下階に通じる開口部から上階と下階を跨ぐ大きな窓を通して外の景色を見たり、外光を室内に取り入れることが可能になる。
【0009】
平面視で多角形をなす建物とされており、上記一部胴差が建物の角部または非角部で他の胴差部分に対して建物の内方向に入り込んで配置されていてもよい。この構成において、上記一部胴差が建物の内方向に入り込んでいる箇所で、上記建物外被が上記他の胴差部分の延長線の方向に沿って配置されているか、または上記建物外被が上記延長線よりも建物の外方向に張り出して配置されていてもよい。
【0010】
或いは、上記一部胴差が上記他の胴差部分と面一に位置しており、上記離間配置される建物外被が建物の内方向に入り込んで配置されて上記一部胴差から離間していてもよい。
【0011】
或いは、上記一部胴差が上記他の胴差部分と面一に位置しており、上記離間配置される建物外被が建物の外方向に張り出して配置されて上記一部胴差から離間していてもよい。
【0012】
上記開口部は吹き抜け空間またはスキップフロア配置空間として利用されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明であれば、例えば、上階と下階を跨ぐ大きな窓を通して室内から外の景色を見たり、外光を室内に取り入れることが可能になる等の諸効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の建物の概略の構成を示した斜視図である。
図2図1の建物の胴差と建物外被と上階床の位置関係を示した説明図である。
図3】同図(A)は図1の建物を利用した建物内部空間を示した説明図であり、同図(B)は比較のための比較例を示した説明図である。
図4】同図(A)は図1の建物を利用した階段配置空間を示した説明図であり、同図(B)は比較のための比較例を示した説明図である。
図5】他の実施形態の建物の概略の構成を示した斜視図である。
図6】同図(A)は図5の建物を利用した建物内部空間を示した説明図であり、同図(B)は比較のための比較例を示した説明図である。
図7】他の実施形態の建物の概略の構成を示した斜視図である。
図8図7の建物の胴差と建物外被と上階床の位置関係を示した説明図である。
図9】他の実施形態の建物の概略の構成を示した斜視図である。
図10図1の建物の胴差と建物外被と上階床の位置関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の建物1Aは、環状に配置された胴差2における一部胴差21の外側に、建物外被3を上記一部胴差21から離間させて設けている。上記離間配置される建物外被3は、図1では、内部に縦線ハッチングを描いた太線枠により示されている。上記離間配置される建物外被3は、上記一部胴差21によって支持されず、上記一部胴差21とは異なる他の胴差部分や図示しない小屋梁等によって支持される。そして、上記離間配置される建物外被3の内側である室内側には、図2にも示すように、階上床4の端部41が上記建物外被3から離間し、上下階に通じる開口部5が形成されている。この建物1Aでは、上記階上床4の端部41は上記一部胴差21によって形成されている。
【0016】
上記離間配置される建物外被3は、上記一部胴差21が建物1Aの内方向に入り込んでいる箇所において、上記他の胴差部分の延長線の方向に沿って配置されており、上記建物1Aの平面シルエット(屋外と屋内とを区切る境界線)は四角形となっている。一方、上記一部胴差21が他の胴差部分に対して建物1Aの内方向に入り込んで配置されているので、胴差2全体の平面視形状は略コ字形状になっている。上記建物1Aにおいて、上記開口部5は、例えば、吹き抜け空間として利用することができる。なお、上記建物外被3は上記他の胴差部分の延長線よりも建物1Aの外方向に張り出して配置されていてもよい。
【0017】
また、例えば、上記建物1Aの内方向に入り込んで配置されている上記一部胴差21の水平幅は、例えば4500mm以上5100mm以内であり、奥行き寸法も水平幅と同程度となっている。もちろん、上記一部胴差21の大きさは、上記のような寸法に限らない。
【0018】
図3(A)は、上記建物1Aにおいて、上記開口部5を階段6の配置空間として利用し、2階から上記離間配置される建物外被3の方向を見た室内空間を示している。上記離間配置される建物外被3は、上下階を仕切る上記一部胴差21(胴差2をクロスハッチングで示している。)に分断されずに存在することができ、当該建物外被3として上下階を跨ぐ大きな窓3Aを配置することが可能になる。そして、上記上下階に通じる開口部5から上階と下階を跨ぐ大きな窓3Aを通して外の景色を見たり、外光を室内に取り入れることが可能になる。
【0019】
なお、比較のために,図3(B)に比較建物を描いている。この図から分かるように、比較建物の建物外被となる窓は、上下階を仕切る胴差(クロスハッチングで示している。)によって上下に分断される。これに対し、本実施例に係る建物1Aにおいては、上記窓3Aは上記一部胴差21によって上下に分断されることがなく、図3(B)の比較建物に比べ、より大きな開放感が得られることになる。
【0020】
図4(A)は、上記建物1Aにおいて、上記開口部5を階段6の配置空間として利用する他の構造例を示している。この構造例では、上記離間配置される建物外被3側に階段6のスキップフロア(階高の中間に床を設置する空間)61が設けられている。そして、上記離間配置される建物外被3として、上記スキップフロア61から上階に延びる大きな窓3Bを有するものが用いられている。
【0021】
なお、比較のために,図4(B)に比較建物を描いている。この図から分かるように、比較建物の階段踊り場の窓は、上下階を仕切る胴差(H型鋼で示している。)の存在によって当該胴差よりの下側に形成される。これに対し、本実施例に係る建物1Aにおいては、上記窓3Bは上記一部胴差21によって上下に分断されることがなく、図3(B)の比較建物に比べ、階段6のスキップフロア61において、より大きな開放感が得られることになる。なお、スキップフロアは階段の踊り場を含む上位概念である。
【0022】
図5および図6(A)に示すように、他の実施形態に係る建物1Bは、環状に配置された胴差2における一部胴差21の外側に、建物外被3を上記一部胴差21から離間させて設けている。そして、この建物1Bは、平面視で多角形をなす建物とされており、上記一部胴差21は、建物角部において、他の胴差部分に対して建物1Bの内方向に入り込んでいる。そして、上記離間配置される建物外被3の内側である室内側には、図6(A)に示すように、階上床4の端部41が上記建物外被3(窓3C)から離間し、上下階に通じる開口部5を形成している。この建物1Bでは、上記階上床4の端部41は上記一部胴差21によって形成されている。
【0023】
上記離間配置される建物外被3は、上記一部胴差21が建物の内方向に入り込んでいる箇所で、上記他の胴差部分の延長線方向に沿って配置されている、上記建物1Aの平面シルエット(屋外と屋内とを区切る境界線)は四角形となっている。一方、上記一部胴差21が他の胴差部分に対して建物1Bの角部の内方向に入り込んで配置されているので、胴差2全体の平面視形状は略L字形状になっている。
【0024】
上記図6(A)は、上記建物1Bにおいて、上記開口部5を吹き抜け空間として利用した場合の1階から上記離間配置される建物外被3の方向を見た室内空間を示している。上記離間配置される建物外被3は、上下階を仕切る上記一部胴差21(胴差2全体をクロスハッチングで示している。)に分断されずに存在することができるので、当該建物外被3として上下階を跨ぐ大きな窓3Cを配置することが可能になる。そして、1階室内から上記上下階に通じる開口部5を通し、さらに上階と下階を跨ぐ大きな窓3Cを通して外の景色を見たり、外光を室内に取り入れることが可能になる。
【0025】
なお、比較のために,図6(B)に比較建物を描いている。この図から分かるように、比較建物の建物外被となる窓は、上下階を仕切る胴差(クロスハッチングで示している。)によって上下に分断される。これに対し、本実施例に係る建物1Bにおいては、上記窓3Cは上記一部胴差21によって上下に分断されることがなく、図6(B)の比較建物に比べ、より大きな開放感が得られることになる。
【0026】
図7および図8に示すように、他の実施形態の建物1Cは、環状に配置された胴差2における一部胴差21の内側に、建物外被3を上記一部胴差21から離間させて設けている。上記一部胴差21は上記他の胴差部分と面一に位置しており、胴差2自体は既存の配置形態(例えば、平面視で四角形)を採用できる。そして、上記離間配置される建物外被3の内側である室内側には、階上床4の端部41を上記建物外被3から離間させて、上下階に通じる開口部5を形成している。この建物1Cでは、上記階上床4の端部41は、上記一部胴差21とは別の横架材200によって形成されている。
【0027】
上記離間配置される建物外被3は、上記一部胴差21を基準に建物1Cの内方向に例えば1800mm以上2020mm以下程度入り込んで配置される。そして、上記階上床4の端部41は、上記一部胴差21を基準に建物1Cの内方向に例えば4500mm以上5100mm以下程度入り込んで配置される。
【0028】
このような建物1Cにおいても、上記建物外被3は、上下階を仕切る上記一部胴差21に分断されずに存在することができ、当該建物外被3として上下階を跨ぐ大きな窓等を配置することが可能になる。そして、上記大きな窓を通して1階室内から外の景色を見たり、外光を室内に取り入れることが可能になる。
【0029】
図9及び図10に示すように、他の実施形態の建物1Dは、環状に配置された胴差2における一部胴差21の外側に、建物外被3を上記一部胴差21から離間させて設けている。上記一部胴差21は上記他の胴差部分と面一に位置しており、胴差2自体は既存の配置形態(例えば、平面視で四角形)を採用できる。そして、上記離間配置される建物外被3の内側である室内側には、階上床4の端部41を上記建物外被3から離間させて、上下階に通じる開口部5を形成している。この建物1Dでは、上記階上床4の端部41は上記一部胴差21によって形成されている。
【0030】
上記離間配置される建物外被3は、上記一部胴差21を基準に建物1Dの外方向に例えば1800mm以上2020mm以下程度張り出して配置される。このような構造は、従来項で挙げた特許文献2(特開2010−196448号公報)に開示されているように、建物に取付けられる床フレームから水平方向へ突出する持ち出し梁の配設構造を利用して構築することができる。
【0031】
この発明の建物の構造は、2階建て以上の多層階建物における2階以上の階層全部に適用することもでき、多層階建物における一部の階層のみに適用することもできる。
【0032】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1A 1B 1C 1D 建物
2 胴差
21 一部胴差
3 建物外被
4 階上床
41 端部
5 開口部
6 階段
61 スキップフロア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10