【文献】
Journal of Clinical Investigation,2011年,121(12),4880−4888, Supplemental data
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該ペプチドがIda−Thr−His−Dpa−bhPro−Arg−Cys−Arg−Trp−Ahx−Ida(NHPal)であり、Ahxが、ペプチド残基9とIda残基との間のアミノヘキサン酸スペーサーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド。
ヘモクロマトーシス、HFE変異ヘモクロマトーシス、フェロポルチン変異ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2変異ヘモクロマトーシス、ヘモジュベリン変異ヘモクロマトーシス、ヘプシジン変異ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、新生児ヘモクロマトーシス、ヘプシジン欠損症、輸血鉄過剰症、サラセミア、中間型サラセミア、α型サラセミア、鉄芽球性貧血、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、アフリカ鉄過剰症、高フェリチン血症、セルロプラスミン欠損症、無トランスフェリン血症、先天性赤血球異形成貧血、慢性疾患の貧血、炎症の貧血、感染の貧血、低色素性小球性貧血、鉄欠乏性貧血、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血、慢性腎臓疾患の貧血、エリスロポエチン不応性、肥満の鉄欠乏症、貧血、フリードライヒ運動失調症、薄束症候群、ハレルフォルデン−スパッツ病、ウィルソン病、肺ヘモジデリン沈着症、肝細胞癌、肝炎、肝硬変、又は慢性腎不全を治療するための医薬品の製造のための請求項1〜4のいずれか1項に記載の少なくとも1つのペプチドまたは請求項5または6に記載の組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
本発明は、鉄代謝の疾患の試験および治療に有用なペプチドを提供する。
【0022】
本明細書において使用される場合、「鉄代謝の疾患」は、異常な鉄代謝が直接疾患を引き起こし、もしくは血中鉄濃度が異常調節となり疾患を生じ、または鉄の異常調節が別の疾患の結果であり、あるいは疾患が鉄濃度を調節することにより処置することができるなどの疾患を含む。より詳細には、本開示における鉄代謝の疾患は、鉄過負荷疾患、鉄欠乏障害、鉄生体内分布の障害、鉄代謝の他の障害および鉄代謝に潜在的に関連する他の障害などを含む。鉄代謝の疾患は、ヘモクロマトーシス、HFE変異ヘモクロマトーシス、フェロポルチン変異ヘモクロマトーシス、トランスフェリン受容体2変異ヘモクロマトーシス、ヘモジュベリン変異ヘモクロマトーシス、ヘプシジン変異ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、新生児ヘモクロマトーシス、ヘプシジン欠損症、輸血鉄過剰症、サラセミア、中間型サラセミア、α型サラセミア、鉄芽球性貧血、ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、アフリカ鉄過剰症、高フェリチン血症、セルロプラスミン欠損症、無トランスフェリン血症、先天性赤血球異形成貧血、慢性疾患の貧血、炎症の貧血、感染の貧血、低色素性小球性貧血、鉄欠乏性貧血、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血、慢性腎臓疾患の貧血、エリスロポエチン不応性、肥満の鉄欠乏症、他の貧血、ヘプシジンを過剰産生し、またはその過剰産生を誘発する良性または悪性腫瘍、ヘプシジン過剰を伴う状態、フリードライヒ運動失調症、薄束症候群、ハレルフォルデン−スパッツ病、ウィルソン病、肺ヘモジデリン沈着症、肝細胞癌、がん、肝炎、肝硬変、異食症、慢性腎不全、インスリン抵抗性、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、神経変性障害、多発性硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病、およびアルツハイマー病を含む。本明細書において使用される場合、「鉄過負荷疾患」および「鉄過負荷の疾患」は、治療しない場合、罹患対象の鉄の濃度が異常に高くなる、または高くなる可能性のある疾患および障害を指す。
【0023】
いくつかの場合において、「鉄代謝の疾患」の定義に含まれる疾患および障害は、鉄が関連していると必ずしも分類されるものではない。例えば、ヘプシジンは、マウス膵臓においてかなり発現し、糖尿病(I型またはII型)、インスリン耐性、耐糖能障害および他の障害が基礎鉄代謝障害を治療することにより改善され得ることが示唆される。本明細書において参照により組み込まれる、Ilyin,G.et al.(2003)FEBS Lett.542 22−26を参照のこと。それゆえ、これらの疾患は、広義の定義のもとに包含される。当業者であれば、所与の疾患が、本明細書において参照により組み込まれる、国際公開第2004092405号のアッセイおよび、ヘプシジン、ヘモジュベリン、または鉄濃度および発現をモニタリングし、本明細書において参照により組み込まれる、米国特許第7,534,764号に記載のものなどの当技術分野において周知であるアッセイを含む当技術分野において周知の方法を使用して本発明における「鉄代謝の疾患」であるかどうかを容易に決定することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、鉄代謝の疾患は、遺伝性ヘモクロマトーシス、鉄負荷性貧血、アルコール性肝疾患およびC型慢性肝炎を含む、鉄過負荷疾患である。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、2個以上のアミノ酸がともに結合することを指す同じ意味で使用される。以下の表2に記載の一般的でない、または非天然のアミノ酸の略語を除き、当技術分野において使用される3文字および1文字の略語を、本明細書において使用し、アミノ酸残基を表す。「D−」が接頭につく場合を除き、アミノ酸はL−アミノ酸である。アミノ酸の略語の群または文字列を使用し、ペプチドを表す。詳細に示される場合を除き、ペプチドは、左にN末端を示し、配列はN末端からC末端に記載される。
【0026】
本発明のペプチドは、化学合成(固相、溶液相、またはそれらの組み合わせ)、生合成または組み換えDNA法を使用するインビトロ合成を含む当技術分野において周知の方法を使用して作製され得る。例えば、本明細書において参照により組み込まれる、Kelly&Winkler(1990)Genetic Engineering Principles and Methods,vol.12,J.K.Setlow ed.,Plenum Press,NY,pp.1−19;Merrifield(1964)J Amer Chem Soc 85:2149;Houghten(1985)PNAS USA 82:5131−5135;およびStewart&Young(1984)Solid Phase Peptide Synthesis,2ed.Pierce,Rockford,ILを参照のこと。本発明のペプチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換または免疫アフィニティークロマトグラフィー、沈降法、濾過、サイズ排除、または電気泳動などの当技術分野において周知のタンパク質精製技法を使用して精製され得る。本明細書において参照により組み込まれる、Olsnes,S.and A.Pihl(1973)Biochem.12(16):3121−3126;およびScopes(1982)Protein Purification,Springer−Verlag,NYを参照のこと。代替えとして、本発明のペプチドは、当技術分野において周知の組み換えDNA法により作製され得る。従って、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、本明細書において検討される。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドを単離する。本明細書において使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドが天然に生じるものと異なる環境にあるポリヌクレオチドを指す。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは実質的に精製される。本明細書において使用される場合、「実質的に精製された」化合物は、その天然の環境から取り出され、化合物が天然に関連する他の高分子構成物質を少なくとも約60%、好ましくは約75%および最も好ましくは約90%含まない化合物、または214nmでの検出のHPLCにより測定される他のペプチド構成物質を少なくとも約60%、好ましくは約75%および最も好ましくは約90%含まない化合物を指す。
【0028】
本明細書において使用される場合、「単離された」化合物は、天然の環境から単離された化合物を指す。例えば、単離されたペプチドは、その天然のアミノ酸をもたないものであり、完全長のポリペプチド、隣接するN末端、C末端、または両方に対応する。例えば、単離されたHep1−9は、Hep25のアミノ酸残基1〜9を含む単離されたペプチドを指し、これは、そのN末端、C末端、または両方にて非天然のアミノ酸を有し得るが、C末端にてその9番目のアミノ酸残基に続くシステインアミノ酸残基をもたない。本明細書において記載されるように、アミノ酸の位置の言及は、Hep25のアミノ酸残基に対応する。例えば、アミノ酸9位の言及は、Hep25の9番目のアミノ酸残基に対応する。
【0029】
本発明のペプチドは、フェロポルチン、好ましくはヒトフェロポルチンと結合する。本発明の好ましいペプチドは、ヒトフェロポルチンと特異的に結合する。本明細書において使用される場合、「特異的に結合する」は、サンプル内の他の物質よりも所与のリガンドと、特異的な結合剤の好ましい相互作用を指す。例えば、所与のリガンドと特異的に結合する特異的な結合剤は、サンプル内の他の構成物質との任意の非特異的な相互作用の結合よりも観察可能な量または程度で、適切な条件において所与のリガンドと結合する。適切な条件は、所与の特異的な結合剤と所与のリガンドとの相互作用を可能にするものである。これらの条件は、pH、温度、濃度、溶剤、インキュベーションの時間などを含み、所与の特異的な結合剤およびリガンドの組み合わせで異なり得るが、当業者により容易に決定され得る。
【0030】
Hep25のヘプシジン活性を模倣する本発明のペプチド、つまり、生物活性ヒト25アミノ酸形態は、本明細書において「ミニヘプシジン」と称される。本明細書において使用される場合、「ヘプシジン活性」を有する化合物は、対象(例えば、マウスまたはヒト)にその化合物が用量依存的および時間依存的に投与(例えば、非経口注射または経口投与)されるときに、その血漿鉄濃度を低下させる能力を有することを意味する。例えば、Rivera et al.(2005),Blood 106:2196−9に例証されているものを参照のこと。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、Nemeth et al.(2006)Blood 107:328−33に教示されるように、フェロポルチン発現細胞株のフェロポルチンの内在化および分解を引き起こす能力によりアッセイされるインビトロ活性を有する。インビトロ活性は、Nemeth et al.(2006)Blood 107:328−33にあるように緑色蛍光タンパク質に融合したフェロポルチンを表示するよう操作された細胞の蛍光の用量依存的消失により測定され得る。少量の細胞をHep25またはミニヘプシジンの参照調製物の段階的な濃度を用いて24時間インキュベーションする。本明細書において提供されるように、EC
50値は、参照Hep25調製物により生成された蛍光の最大消失の50%を誘起する所与の化合物(例えば、ペプチド)の濃度として提供される。本アッセイのHep25調製物のEC
50は、5〜15nMの範囲であり、好ましいミニヘプシジンは、インビトロ活性アッセイにおいて約1,000nM以下のEC
50値を有する。
【0032】
本発明によるヘプシジン活性およびペプチドのインビトロ活性を算出する当技術分野において周知の他の方法を使用することができる。例えば、化合物のインビトロ活性は、化合物が細胞フェロポルチンを内在化する能力により測定することができ、これはフェロポルチンの細胞外エピトープを認識する抗体を使用して、免疫組織化学またはフローサイトメトリーにより決定される。代替えとして、化合物のインビトロ活性は、Nemeth et al.(2006)Blood 107:328−33にあるように、鉄の放射性同位体または安定した同位体を予め負荷したフェロポルチン発現細胞から鉄の流出を阻害する化合物の用量依存的能力により測定することができる。
【0034】
これまでの研究は、Hep25のN末端セグメントが、そのヘプシジン活性に重要であり、フェロポルチンと接触面を形成する可能性があることを示している。しかし、ヘプシジン活性に対する各N末端アミノ酸の重要性は知られていなかった。それゆえ、アラニンスキャンニング突然変異法をHep25の残基1〜6に行い、ヘプシジン活性に対する各N末端アミノ酸の寄与を決定した。
図1に示されるように、T2A置換は、実質的にヘプシジン活性に影響を与えなかった。フェニルアラニン置換(F4AまたはF9A)は、ヘプシジン活性において最も大きな低下、つまり約70%超を生じた。残りのアラニン置換では、F4AまたはF9A置換ほど顕著でないヘプシジン活性の検出可能な低下があった。
【0035】
高度に保存され、明らかに構造的に重要なF4フェニルアラニンがヘプシジン活性に重要であるかどうかを決定するため、Hep25のF4アミノ酸を、他のアミノ酸と体系立てて置換した。
図2Aに示されるように、側鎖をより極性(F4Y)にすることは、D−フェニルアラニン(f)または荷電アミノ酸(D、KおよびY)と置換した際のように、ヘプシジン活性の実質的な消失を導いた。しかし、ヘプシジン活性は、F4残基が非芳香族シクロヘキシルアラニンと置換されたときに維持され、それにより嵩高い疎水性残基が活性には十分であることが示された。
【0036】
高度に保存され、明らかに構造的に重要なF9フェニルアラニンがヘプシジン活性に重要であるかどうかを決定するため、Hep25のF9アミノ酸を他のアミノ酸と置換した。
図2Bに示されるように、ヘプシジン活性は、F9がアラニンと置換されたときだけでなく、非芳香族シクロヘキシルアラニンと置換したときにも低下し、それにより芳香族残基が活性に重要であり得ることが示された。
【0037】
変異試験は、ヒトフェロポルチンの326位のシステイン残基であるC326が、ヘプシジンの結合に関与する重要な残基であることを示す。従って、チオールを含有するHep25の種々のN末端フラグメント、すなわち、Hep4−7、Hep3−7、Hep3−8、Hep3−9、Hep1−7、Hep1−8、Hep1−9およびHep1−10 C7Aが化学的に合成され、リフォールドされ、Hep25に対する活性が、フェロポルチン−GFP分解のフローサイトメトリーによる定量、細胞フェリチンの測定に基づく鉄流出推定、および放射性同位体鉄流出試験を使用してアッセイされた。これらのN末端フラグメントの配列およびEC
50を、表1に示す。
【0038】
図3に示されるように、注目すべきことに、かつ予想外に、Hep1−9およびHep1−10 C7Aがフェロポルチン−GFP内在化のフローサイトメトリーアッセイにおいてかなり活性であることが見つかった。Hep25に比べ、Hep1−9およびHep1−10 C7Aは、質量基準では約4倍のみおよび分子基準では約10倍作用が弱いものであった。従って、Hep1−9およびHep1−10 C7Aは、ヘプシジン活性を有する他のペプチドを構築する基剤として使用された。
【0039】
Hep1−9のヘプシジン活性におけるシステインチオールの重要性を決定するために、Hep1−9のC7残基が、Hep9−C7S(セリン置換)とHep9C7−tBut(t−ブチル−ブロック化システイン)を得るために同様の形状を有するがジスルフィド結合を形成することができないアミノ酸と、またはHep9C7−SStButを得るために脱離基としてHS−t−ブチルとのジスフィルド交換に関与し得るジスフィルド結合したターシャリーブチルにより修飾されたシステインと置換した。
図4に示されるように、ジスルフィド形成または交換における可能性を除去したアミノ酸置換は、ヘプシジン活性の完全な消失を生じ、それによりジスルフィド形成が活性に必要であることが示された。他のC7アミノ酸置換および得られたヘプシジン活性を表1に示す。
【0040】
Hep1−9およびHep1−10 C7Aに基づく他のペプチドは、ジスルフィド環状化され、非天然のアミノ酸置換を有し、レトロインバートされ、修飾されたF4およびF9残基を有し、または正の電荷を有するよう構築された。C末端のアミノ酸は、アミド化された形態であった。改変および得られたヘプシジン活性を表1に示す。
【0041】
表1に示されるように、PR40およびPR41を除いて、約1000nM以下のEC
50を示すミニヘプシジンは、Hep25の残基3〜8(Hep3−8を参照)に対応する少なくとも6個の連続するアミノ酸残基を含有する。従って、いくつかの実施形態において、好ましいミニヘプシジンは、Hep1−9の6個の連続するアミノ酸残基に対応する少なくとも6個の連続するアミノ酸残基、好ましくは残基3〜8を有する。アミノ酸残基は、非天然または一般的でないアミノ酸、L−もしくはD−アミノ酸残基、修飾された残基、またはそれらの組み合わせであってよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、本発明のミニヘプシジンは、少なくとも1つのアミノ酸置換、修飾、または付加を有する。アミノ酸置換の例として、L−アミノ酸残基とその対応するD−アミノ酸残基を置換すること、CysとホモCys、Pen、(D)Pen、Inpなどを置換すること、PheとbhPhe、Dpa、bhDpa、Bip、1Nalなどと置換することがある。置換する残基の名称および構造を表2に例示する。他の適切な置換を表1に例示する。修飾の例として、ペプチドが環状構造を形成する、つまりレトロインバートされるような1個以上のアミノ酸残基を修飾すること、およびジスルフィド結合を形成することができるよう残基を修飾することがある。付加の例として、表1に例示されるような、少なくとも1個のアミノ酸残基または少なくとも1個の化合物をN末端、C末端のいずれか、または両方に付加することを含む。
【0043】
表1に示されるように、約100nM以下のEC
50を示す大部分のミニヘプシジンは、少なくとも1個のDpaまたはbhDpaアミノ酸置換を含有する。従って、いくつかの実施形態において、本発明のミニヘプシジンは、少なくとも1個のDpaまたはbhDpaアミノ酸置換を有する。
【0044】
図1のアラニン置換データに照らして、いくつかの実施形態において、本発明のミニヘプシジンは、アミノ酸7位にジスルフィド結合を形成するために利用可能なチオールがある限り、アミノ酸4位および9位以外のアミノ酸位にAlaを有することができる。表1のHep9F4AおよびHep9C−SStButを参照のこと。
【0045】
図2および表1の4位のアミノ酸置換に照らして、本発明のミニヘプシジンは、Hep25、Hep1−9またはHep1−10 C7Aの電荷または極性と比較し、その電荷または極性の実質的な変化が得られない4位のアミノ酸置換を有することができる。Hep1−9またはHep1−10 C7Aの4位の好ましいアミノ酸置換は、Phe、D−Phe、bhPhe、Dpa、bhDpa、Bip、1Nalなどを含む。
【0046】
本明細書において参照される元のミニヘプシジンは、以下の構造式Iであって、
A1−A2−A3−A4−A5−A6−A7−A8−A9−A10 I
式中、
A1は、Asp、Glu、ピログルタミン酸、Gln、Asnまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A2は、Thr、Ser、Val、Alaまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A3は、His、Asn、Argまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A4は、Phe、Leu、Ile、Trp、Tyrまたはシクロヘキシルアラニンを含むその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A5は、Pro、Serまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A6は、Ile、Leu、Valまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A7は、Cys、Ser、AlaまたはS−ターシャリーブチル−システインを含むその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A8は、Ile、Leu、Thr、Val、Argまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A9は、Phe、Leu、Ile、Tyrまたはシクロヘキシルアラニンを含むその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
A10は、Cys、Ser、Alaまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であり、
カルボキシ末端アミノ酸は、アミドまたはカルボキシ形態であり、
Cysまたは別のスルフィドリルアミノ酸は、配列中のアミノ酸の1つとして存在し、
A1、A2、A3、A1〜A2、A1〜A3、A10、A9〜A10、A8〜A10、またはそれらの組み合わせは、場合により存在しない、
構造式Iを有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、A1はAspであり、A2はThrであり、A3はHisであり、A4はPheであり、A5はProであり、A6はIleであり、A7はAlaであり、A8はIleであり、A9はPheであり、A10はアミド形態のCysであり、A1またはA1〜A2は場合により存在しない。
【0048】
いくつかの実施形態において、A1はAspであり、A2はThrであり、A3はHisであり、A4はPheであり、A5はProであり、A6はIleであり、A7はCysまたは非天然チオールアミノ酸であり、A8はIleであり、A9はアミド形態のPheであり、A10は存在しない。
【0049】
いくつかの実施形態において、A1およびA2は存在せず、A3はHisであり、A4はPheであり、A5はProであり、A6はIleであり、A7はCysまたは非天然チオールアミノ酸であり、A8はアミド形態のIleであり、A9およびA10は存在しない。
【0050】
いくつかの実施形態において、A1およびA2は存在せず、A3はHisであり、A4はPheであり、A5はProであり、A6はIleであり、A7はCysまたはアミド形態の非天然チオールアミノ酸であり、A8〜A10は存在しない。
【0051】
いくつかの実施形態において、A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10の非天然アミノ酸またはそれらの組み合わせは、対応するDアミノ酸である。例えば、A1において、非天然アミノ酸は、D−Asp、D−Glu、D−Gln、D−Asnなどであってよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、以下の非天然アミノ酸:
A1は、D−Asp、D−Glu、D−ピログルタミン酸、D−Gln、D−Asn、bhAsp、Ida、またはN−MeAspであり、
A2は、D−Thr、D−Ser、D−Val、Tle、Inp、Chg、bhThr、またはN−MeThrであり、
A3は、D−His、D−Asn、D−Arg、Dpa、(D)Dpa、または2−アミノインダンであり、
A4は、D−Phe、D−Leu、D−Ile、D−Trp、Phg、bhPhe、Dpa、Bip、1Nal、bhDpa、Amc、PheF5、hPhe、Igl、またはシクロヘキシルアラニンであり、
A5は、D−Pro、D−Ser、Oic、bhPro、trans−4−PhPro、cis−4−PhPro、cis−5−PhPro、Idcであり、
A6は、D−Ile、D−Leu、Phg、Chg、Amc、bhIle、Ach、およびN−MeIleであり、
A7は、D−Cys、D−Ser、D−Ala、Cys(S−tBut)、ホモCys、Pen、(D)Pen、Dap(AcBr)、およびInpであり、
A8は、D−Ile、D−Leu、D−Thr、D−Val、D−Arg、Chg、Dpa、bhIle、Ach、またはN−MeIleであり、
A9は、D−Phe、D−Leu、D−Ile、PheF5、N−MePhe、ベンジルアミド、bhPhe、Dpa、Bip、1Nal、bhDpa、シクロヘキシルアラニンであり、
A10は、D−Cys、D−Ser、D−Alaである。
【0053】
いくつかの実施形態において、以下のアミノ酸置換(および必要であれば付加):
A1は、Ala、D−Ala、Cys、D−Cys、Phe、D−Phe、CysもしくはD−Cysに結合したAspもしくはD−Asp、またはケノデオキシコール酸、ウロソデオキシコール酸、もしくはパルミトイルに結合したPEG分子に結合したPheもしくはD−Phe、あるいはパルミトイルに結合したDpaもしくは(D)Dpaであり、
A2は、Ala、D−Ala、Cys、D−Cys、Pro、D−Pro、Gly、またはD−Glyであり、
A3は、Ala、D−Ala、Cys、D−Cys、Dpa、Dpaもしくは(D)Dpaに結合したAspまたはD−Aspであり、
A4は、Ala、D−Ala、Pro、またはD−Proであり、
A5は、Ala、D−Ala、Pro、D−Pro、Arg、D−Argであり、
A6は、Ala、D−Ala、Phe、D−Phe、Arg、D−Arg、Cys、D−Cysであり、
A7は、His、またはD−Hisであり、
A8は、Cys、またはD−Cysであり、
A9は、RAに結合したPheもしくはD−Phe、Asp、D−Asp、RBに結合したAspもしくはD−Asp、RCに結合したbhPhe、またはシステアミドであり、RAは−CONH
2−CH
2−CH
2−S、Pro−LysもしくはPro−Argに結合した−D−Pro、Pro−LysもしくはPro−Argに結合したProに結合した−bhPro、bhPro−LysもしくはbhPro−Argに結合した−D−Proであり、RBは−PEG11−GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL、−(PEG11)−(GPHyp)10であり、RCはPro−LysもしくはPro−Argに結合した−D−Pro、bhPro−LysもしくはbhPro−Argに結合した−D−Proである。
【0054】
いくつかの実施形態において、ミニヘプシジンは、A7がAlaであり、A10がCysである、10−mer配列である。
【0055】
いくつかの実施形態において、ミニヘプシジンは、ジスルフィド結合により環状構造を形成する。
【0056】
いくつかの実施形態において、ミニヘプシジンは、A1がC末端であり、A10がN末端であり、アミノ酸残基がD−アミノ酸であるようなレトロインバートされたペプチドである。いくつかの実施形態において、レトロインバートされたペプチドは、N末端、C末端、または両方で少なくとも1つの付加を有する。いくつかの実施形態において、レトロインバートされたペプチドは少なくとも1つのL−アミノ酸を含有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、ミニヘプシジンは、4位、9位または両方にアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換基はPhg、Phe、D−Phe、bhPhe、Dpa、Bip、1Nal、Dpa、bhDpa、Amc、またはシステアミドである。
【0058】
いくつかの実施形態において、ミニヘプシジンは、7位にアミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換基は、Cys(S−tBut)、Ala、D−Ala、Ser、D−Ser、ホモCys、Pen、(D)Pen、His、D−His、またはInpである。
【0059】
いくつかの元のミニヘプシジンの例を表1に記載する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0061】
Hep25は、固相9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(fmoc)化学を使用して、UCLAペプチド合成コア施設にて合成された。具体的に、ペプチドは、fmocアミノ酸であるWang樹脂(AnaSpec,San Jose,CA)および全ての残基においてダブルカップリングを使用してABI431Aペプチド合成装置(PE Biosystems,Applied Biosystems,Foster City,CA)で合成された。切断後、30mgの粗製ペプチドを0.5M Tris緩衝液(pH8.2)、6Mグアニジン塩酸および20mM EDTA中1000倍モルの過剰量のジチオスレイトール(DTT)を用いて、52℃、2時間還元した。新鮮なDTT(500モルの過剰量)を添加し、52℃にてさらに1時間インキュベーションした。還元させたペプチドを、0.1%TFAで平衡させた10gC18 SEP−PAKカートリッジ(Waters,Milford,MA)で精製し、50%アセトニトリルで溶出させた。溶出液を凍結乾燥させ、0.1%酢酸に再懸濁させた。還元させたペプチドをさらに、0.1%トリフルオロ酢酸で平衡させたVYDAC C18カラム(218TP510;Waters)の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により精製し、アセトニトリル勾配を用いて溶出させた。溶出液を凍結乾燥させ、0.1%酢酸、20%DMSOに溶解させ、およそ0.1mg/ml(pH8)の濃度にし、室温にて18時間撹拌することにより空気酸化させた。リフォールディングさせたペプチドも10gC18 SEP−PAKカートリッジおよびアセトニトリル勾配を使用してRP−HPLC VYDAC C18カラムで連続して精製した。溶出液を凍結乾燥させ、0.016%HClに再懸濁させた。リフォールディングさせた合成ヘプシジン誘導体の立体構造が、12.5%酸−尿素ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)の電気泳動により検証され、ペプチド質量がマトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF−MS;UCLA質量分析施設、Los Angeles,CA)により測定された。
【0062】
表1に記載の他のペプチドを、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)化学(Fields&Noble(1990)Int J Pept Protein Res 35:161−214)および市販のアミノ酸誘導体および試薬(EMD Biosciences,San Diego,CAおよびChem−Impex International,Inc.,Wood Dale,IL)を適用し、Symphony(登録商標)自動化ペプチド合成装置(Protein Technologies Inc.,Tucson,AZ)またはCEM Liberty自動化マイクロ波ペプチド合成装置(CEM Corporation Inc.,Matthews,NC)のいずれかを使用して固相法により合成した。ペプチドを、修飾試薬K(TFA94%(v/v);フェノール、2%(w/v);水、2%(v/v);TIS、2%(v/v);2時間)を使用して樹脂から切断し、氷冷ジエチルエーテルを添加することにより析出させた。続いて、ペプチドを、95%より大きい均質性に分取逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により精製し、それらの純度を、マトリックス支援レーザー脱離イオン化分析法(MALDI−MS、UCLA質量分析施設、Los Angeles,CA)ならびに220nmおよび280nmに波長設定したProStar325Dual Wavelength UV−Vis検出器を備えたVarian ProStar210HPLCシステム(Varian Inc.,Palo Alto,CA)を使用する分析RP−HPLCにより評価した。移動相は、溶剤A、0.1%TFA水溶液および溶剤B、アセトニトリル中の0.1%TFAから構成された。ペプチドの分析は、100分間にわたり0〜100%の溶剤Bの線形勾配(流速:1ml/分)を適用する逆相C18カラム(Vydac 218TP54,4.6×250mm,Grace,Deerfield,IL)を用いて行われた。
【0063】
当技術分野において周知の他の方法を、本発明によるペプチドを合成または得るために使用することができる。全てのペプチドを、負に荷電した−COOH末端よりペプチド結合にさらに類似した電荷中性の末端を作製するカルボキシアミド(−CONH
2)として合成された。それにも関わらず、負に荷電した−COOH末端を有するペプチドについて、本明細書で検討する。
【0065】
フローサイトメトリー。本発明のペプチドの活性は、前述の通りフローサイトメトリーにより測定された。本明細書において参照により組み込まれる、Nemeth et al.(2006)Blood 107:328−333を参照のこと。ECR293/Fpn−GFP、つまり緑色蛍光タンパク質を用いてC末端にタグ付けされたポナステロン誘発性フェロポルチン構築物を用いて安定して導入された細胞株を使用した。本明細書において参照により組み込まれる、Nemeth et al.(2004)Science 306:2090−2093を参照のこと。つまり、細胞を、10μM ポナステロンを用いて、または用いずに20μM FACの存在下においてポリ−D−リジン被覆されたプレートに載せた。24時間後、ポナステロンを洗い流し、細胞をペプチドで24時間処理した。次いで、細胞をトリプシン処理し、1×10
6個の細胞/mlに再懸濁し、緑色蛍光強度を、フローサイトメトリーにより分析した。フローサイトメトリーは、CELLQUESTバージョン3.3ソフトウェア(Becton Dickinson)を用いたFACSCAN(蛍光活性化された細胞のスキャナー)分析フローサイトメーター(Becton Dickinson,San Jose,CA)において行われた。Fpn−GFPを発現するポナステロンで誘発されなかった細胞を使用し、バックグランド蛍光を除外するためのゲートを確立した。ポナステロンで誘発されたが、いずれかのペプチドで処理されなかった細胞を、ポジティブコントロールとして使用した。各ペプチドを、各濃度(0、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3および10μM)の範囲にわたり試験した。各ペプチド処理は、個々に3〜6回繰り返された。ペプチドの各濃度において、結果を、Fがゲート化された緑色蛍光の平均値であり、xがペプチドである式1((F
x−F
Hep25)/(F
未処理−F
Hep25))に従い、Hep25の最大活性(F
Hep25)(用量範囲0.01〜10μM)の割合として表した。IEC
50濃度を表1に記載する。
【0066】
フェリチンアッセイ。ヘプシジン活性を有するペプチドで処理された細胞は鉄を保有し、高量のフェリチンを含有する。従って、以下のフェリチンアッセイを使用し、本発明によるミニヘプシジンを同定することができる。つまり、HEK293−Fpn細胞を、10μMポナステロンを用いて、または用いずに20μM FACとインキュベーションする。24時間後、ポナステロンを洗い流し、ヘプシジン誘導体を、20μM FACの存在下において24時間添加する。細胞タンパク質を、150mM NaCl、10mM EDTA、10mM Tris(pH7.4)、1%Triton X−100およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich,St Louis,MO)を用いて抽出する。フェリチン濃度を、製造者の説明書に従い、酵素結合免疫吸着法(ELISA)法(Ramco Laboratories,Stafford,TX,またはBiotech Diagnostic,Laguna Niguel,CA)により決定し、ビシンコニン酸(BCA)法(Pierce,Rockford,IL)により決定されるように、各サンプルの総タンパク質濃度に正規化する。
【0067】
インビボアッセイ。血清鉄アッセイ。ペプチド投与後の血清鉄の低下は、ヘプシジン活性の主な尺度になる。従って、本明細書において記載されるように、本発明の選択されたペプチドのヘプシジン活性を、試験対象の血清鉄を測定することによりインビボでアッセイした。つまり、C57/Bl6Jマウスを、NIH31げっ歯類飼料で飼育した(333パーツパーミリオン(ppm)鉄;Harlan Teklad,Indianapolis,IN)。実験2週間前に、マウスは、内因性ヘプシジンを抑制するために、約2〜4ppm鉄を含有する飼料(Harlan Teklad,Indianapolis,IN)に切り替えられた。ペプチドストックを、滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または次に記載される他の希釈剤において所望の濃度に希釈した。マウスに、以下の処理が行われた:(a)100μl PBS(対照)または100μl PBS中の50μgペプチドのいずれかを腹腔内に注射し、(b)500μgの空のリポソームCOATSOME ELシリーズ(NOF,Tokyo,Japan)を混合した100μlのペプチド(またはPBS)(製造者の推奨通りに調製)を注射し、(c)SL220可溶化剤(NOF,Tokyo,Japan)で可溶化させた100μlのペプチド(またはPBS)を注射し、(d)1倍の溶剤(Cremophor EL(Sigma)/エタノール/PBS;(12.5:12.5:75))中の250μlのペプチド(またはPBS)を強制投与した。マウスを、4時間後に屠殺し、血液を心臓穿刺により採取し、血清をMICROTAINERチューブ(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を使用して分離した。血清鉄を、10μlの血清が測定当たりに使用されるようにマイクロプレートフォーマット用に変更した比色分析法(Diagnostic Chemicals,Oxford,CT)を使用することにより決定した。結果を、PBS処置したマウスの血清鉄濃度の平均値と比較したときの血清鉄の低下の百分率として表した。
【0068】
図5に示されるように、PBS中、マウス当たり50μgのPR12のの腹腔内(i.p.)投与により、PBSのi.p.投与と比較しときに、4時間後の血清鉄の顕著な低下を生じた。血清鉄の低下は、50μgのHep25のi.p.注射により生じたものと同様であった。Hep9の注射(i.p.)は、血清鉄の低下を生じなかった。PR12は、Hep9のレトロインバートされた形態であり、レトロインバートされた構造のためタンパク質分解に耐性がある。実験は、タンパク質分解の耐性の増加がミニヘプシジンの活性を改良することを示す。
【0069】
図6に示されるように、PBS中200nモルのriHep7ΔDTのi.p.投与は、PBSの注射後に得られたものより顕著に低い血清鉄濃度を生じ、また、20nモルのHep25のi.p.注射よりも低いものであった。20nモルのriHep7ΔDTの投与は、顕著ではないがわずかに血清鉄濃度を減少させた。実験は、i.p.注射後に、アミノ酸7個ほどの小さいペプチドがHep25に相当する活性を示すことができることを示す。
【0070】
図7に示されるように、PBS中20nモルのPR27のi.p.投与は、20nモルのHep25のi.p.投与により生じたものに相当する血清鉄の低下を生じた。これは、ミニヘプシジンがインビボでHep25に対する同様な有効性を得ることができることを示した。高濃度のPR27(200nモル)は、血清鉄濃度のさらに大きな低下を生じた。
【0071】
図8に示されるように、リポソーム溶液中20nモルのPR27のi.p.投与も、20nモルのHep25のi.p.投与により生じたものに類似する血清鉄低下を生じた。リポソーム溶液の投与自体は、血清鉄の濃度に影響しなかった。リポソーム溶液は、100μlのPBSと500μgの空のリポソームCOATSOME ELシリーズ(NOF,Tokyo,Japan)を混合することにより調製された(製造者の推奨通りに調製)。しかし、リポソーム溶液に溶解させたミニヘプシジンPR28は、PR27より血清鉄を低下させる能力が低いことを示した。実験は、リポソームのペプチド懸濁液がそれらの活性に影響を与えないことを示す。従って、リポソームは、本発明によるペプチドの経口投与に有用であり得る。
【0072】
図9に示されるように、クレモホール(cremophore)EL溶液中200nモルのPR27のの強制による経口投与は、PBSの同じ配合物の経口投与と比較してマウスの血清鉄の低下を生じた。Cremophor ELは、化学物質の溶解性を増大させ、かつ頻繁に薬物に使用される賦形剤または添加剤である。Cremophor EL溶液を、Cremophor EL(Sigma)、エタノールおよびPBSを12.5:12.5:75の比で混合することにより調製した。250μlのその溶液をマウスに強制投与した。
【0073】
従って、本発明を使用し、対象の血清鉄を低下させることができる。本発明による好ましいミニヘプシジンは、そのN末端アミノ酸に結合した、PEG11などのPEG分子を含むレトロインバートされたペプチドである。いくつかの実施形態において、PEG分子は、パルミトイル基に結合し、または1つ以上のパルミトイル基に結合したジアミノプロピオン酸である。
【0074】
血清鉄含量の影響をアッセイすることに加え、当技術分野において周知の他のインビボアッセイを行い、本発明によるミニヘプシジンを同定し、かつ/または本発明による所与のペプチドまたはミニヘプシジンの治療有効量を決定することができる。このようなアッセイの例として、以下がある:
【0075】
組織鉄アッセイ。上記の血清鉄アッセイに加え、またはその代わりに、組織鉄分布を、処置されたマウスから得られた肝臓および脾臓切片の増感ペルルス染色により決定することができる。つまり、組織切片を、4%パラホルムアルデヒド/PBSに固定し、ペルルス溶液(1:1、2%HClおよび2%フェロシアン化カリウム)および0.015%過酸化水素のジアミノベンジジン中でインキュベーションさせる。組織の非ヘム鉄を、Rebouche et al.(2004)J Biochem Biophys Methods.58(3):239−51;Pak et al.(2006)Blood 108(12):3730−5の微量法を使用して定量化することができる。肝臓および脾臓の100mg片をホモジナイズし、酸を添加し、フェロジンを使用する比色法により検出される非ヘム結合鉄を放出させ、対照と比較する。ミニヘプシジンの処置は、他の組織化から脾臓への鉄の再分布を生じることが予想されるであろう。数週間から数カ月間にわたるミニヘプシジンの投与は、食事からの鉄の吸収が消失するため全ての組織の組織鉄含量を低下させることが予想されるであろう。
【0076】
血液学的アッセイ。血液学的アッセイを使用し、本発明によるミニヘプシジンを同定し、かつ/または本発明による所与のペプチドまたはミニヘプシジンの治療有効量を決定することができる。つまり、処置された対象からの血液をヘパリン含有チューブに採取する。ヘモグロビン、RBC、MCV、EPO、白血球パラメータ、網状赤血球数、および網赤血球Hgb含量を、当技術分野において周知の方法を使用して決定し、対照と比較する。ミニヘプシジンの処置は、MCVの低下を生じ、網状赤血球のHgb含量を消失させることが予想されるであろう。過剰量のミニヘプシジンの投与は、Hgbを低下させることが予想されるであろう。
【0077】
鉄輸送アッセイ。初代培養肝細胞およびマクロファージを使用する当技術分野において周知の鉄(
55Fe)輸送アッセイを使用し、本発明によるミニヘプシジンを同定し、かつ/または本発明による所与のペプチドまたはミニヘプシジンの治療有効量を決定することができる。ヘプシジン活性を有するペプチドは、細胞からの
55Feの放出を消失させ、または低下させるとであろう。つまり、細胞を、
55Fe−NTAまたは
55Fe−Tfと36時間インキュベーションする。組み込まれなかった
55Feを洗い流した後、細胞を、所与のペプチドまたは対照で処理する。フェロポルチン変異体の場合において、形質導入を、
55Feを添加する前に行い、発現を36時間の鉄負荷期間の間に進ませることができた。少量の媒体を1、4、8、24、36、48および72時間後に採取し、放射性活性をシンチレーション計数器により決定する。細胞に関連した放射性活性は、シリコーンオイルを介した細胞を遠心分離し、当技術分野において周知の方法を使用して放射標識された鉄と細胞の非特異的結合を低下させることにより測定することができる。
【0078】
所与のペプチドが内因性フェロポルチンの内在化および分解を改変するかどうかを決定するために、ペプチドで処理された肝細胞およびマクロファージのタンパク質濃度およびフェロポルチンの細胞分布を、ウェスタンブロット法、免疫組織化学および当技術分野において周知のフェロポルチン抗体を使用してアッセイすることができる。
【0080】
本発明による追加のミニヘプシジンを以下のように表3および表4に示す:
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0081】
表3および4において、PR47、PR48、PR49、PR50、PR51、PR52、PR76、PR77、PR78、およびPR79はレトロインバートされたミニヘプシジンであり、アミノ酸残基間のアラインメントとHep25の残基1〜10のものを例示するために、左から右、C末端からN末端に示される。従って、N末端からC末端へのこれらのレトロインバートされたミニヘプシジンの従来の列挙は以下の通りである(Dアミノ酸は下線が引かれている)。
PR47:R4−
F−
I−
C−
I−
P−
Dpa−
H−
T−
D
PR48:R4−
Dpa−
I−
C−
I−
P−
Dpa−
H−
T−
D
PR49:R4−
F−
I−
C−
I−
P−
Dpa−
H
PR50:R4−
Dpa−
I−
C−
I−
P−
Dpa−
H
PR51:R4−
F−
V−
C−
V−
P−
Dpa−
H−
T−
D
PR52:R4−
F−
L−
C−
L−
P−
Dpa−
H−
T−
D
PR76:R17−
W−
R−
Cys(S−S−tBut)−
R−
P−
F−
H−
T−
D
PR77:R18−
W−
R−
Cys(S−S−tBut)−
R−
P−
F−
H−
T−
D
PR78:R19−
W−
R−
Cys(S−S−tBut)−
R−
P−
F−
H−
T−
D
PR79:R20−
W−
R−
Cys(S−S−tBut)−
R−
P−
F−
H−
T−
D
【0082】
表4に示されるように、投与経路は、所与のミニヘプシジンの活性に関与し得る(例えば、PR65およびPR66を比較)。従って、表3および4のミニヘプシジンの一部の活性がないことの表示は、所与のミニヘプシジンが任意の投与経路および/または投与量にて任意の活性を欠失していることを示すとして解釈されるべきではない。実際に、表3に示されるように、相当数のかかるミニヘプシジンがよりかなり低い投与量にて、元のミニヘプシジンのように顕著なインビトロ活性を示す。
【0083】
これらのさらなるミニヘプシジンは、国際出願PCT/US2009/066711号(以下、「元のミニヘプシジン」と称し、構造式Iを有する)に記載のミニヘプシジンの改変物である。本明細書において使用される場合、元のミニヘプシジンの改変物であるミニヘプシジンは、本明細書において、「改変ミニヘプシジン」と称する。本明細書において使用される場合、「ミニヘプシジン」は、元のミニヘプシジンおよび改変ミニヘプシジンの両方を指す。本発明による改変ミニヘプシジンは以下の構造式IAまたはIBを有する:
A1−A2−A3−A4−A5−A6−A7−A8−A9−A10 IA
A10−A9−A8−A7−A6−A5−A4−A3−A2−A1 IB
A1は、Asp、D−Asp、Glu、D−Glu、ピログルタミン酸、D−ピログルタミン酸、Gln、D−Gln、Asn、D−Asn、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、bhAsp、Ida、Ida(NHPal)、およびN−MeAsp、好ましくはIdaおよびN−MeAspであり、
A2は、Thr、D−Thr、Ser、D−Ser、Val、D−Val、Ile、D−Ile、Ala、D−Alaまたはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、Tle、Inp、Chg、bhThr、およびN−MeThrであり、
A3は、His、D−His、Asn、D−Asn、Arg、D−Arg、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、L−His(π−Me)、D−His(π−Me)、L−His(τ−Me)、またはD−His(τ−Me)であり、
A4は、Phe、D−Phe、Leu、D−Leu、Ile、D−Ile、Trp、D−Trp、Tyr、D−Tyr、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、Phg、bhPhe、Dpa、Bip、1Nal、2Nal、bhDpa、Amc、PheF5、hPhe、Igl、またはシクロヘキシルアラニン、好ましくはDpaであり、
A5は、Pro、D−Pro、Ser、D−Ser、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、Oic、bhPro、trans−4−PhPro、cis−4−PhPro、cis−5−PhPro、およびIdc、好ましくはbhProであり、
A6は、Arg、D−Arg、Ile、D−Ile、Leu、D−Leu、Thr、D−Thr、Lys、D−Lys、Val、D−Val、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、D−Nω、ω−ジメチル−アルギニン、L−Nω、ω−ジメチル−アルギニン、D−ホモアルギニン、L−ホモアルギニン、D−ノルアルギニン、L−ノルアルギニン、シトルリン、グアニジウム基が修飾または置換された修飾Arg、ノルロイシン、ノルバリン、bhIle、Ach、N−MeArg、およびN−MeIle、好ましくはArgであり、
A7は、Cys、D−Cys、Ser、D−Ser、Ala、D−Ala、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、Cys(S−tBut)、ホモCys、Pen、(D)Pen、好ましくはS−ターシャリーブチル−システイン、Cys(S−S−Pal)、Cys(S−S−システアミン−Pal)、Cys(S−S−Cys−NHPal)、およびCys(S−S−Cys)、または交換可能なシステインを有する任意のアミノ酸誘導体であり、
A8は、Arg、D−Arg、Ile、D−Ile、Leu、D−Leu、Thr、D−Thr、Lys、D−Lys、Val、D−Val、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸、例えば、D−Nω、ω−ジメチル−アルギニン、L−Nω、ω−ジメチル−アルギニン、D−ホモアルギニン、L−ホモアルギニン、D−ノルアルギニン、L−ノルアルギニン、シトルリン、グアニジウム基が修飾または置換された修飾Arg、ノルロイシン、ノルバリン、bhIle、Ach、N−MeArg、およびN−MeIle、好ましくはArgであり、
A9は、Phe、D−Phe、Leu、D−Leu、Ile、D−Ile、Tyr、D−Tyr、Trp、D−Trp、Phe−R
a、D−Phe−R
a、Dpa−R
a、D−Dpa−R
a、Trp−R
a、bhPhe−R
a、またはその代用物として通常使用される非天然アミノ酸であって、結合するR
aがあってもよく、またはなくてもよい、非天然アミノ酸、例えば、PheF5、N−MePhe、ベンジルアミド、2−アミノインダン、bhPhe、Dpa、Bip、1Nal、2Nal、bhDpa、およびシクロヘキシルアラニン、好ましくはbhPheおよびbhPhe−R
aであり、R
aがパルミトイル−PEG−であり、PEGがPEG11またはミニPEG3、パルミトイル−PEG−PEGであり、PEGがPEG11またはミニPEG3、ブタノイル(C4)−PEG11−、オクタノイル(C8、カプリル酸)−PEG11−、パルミトイル(C16)−PEG11−、またはテトラコサノイル(C24、リグノセリン酸)−PEG11−であり、
A10は、Cys、D−Cys、Ser、D−Ser、Ala、D−Ala、または非天然アミノ酸、例えば、Ida、Ida(NHPal)Ahx、およびIda(NBzl2)Ahxであり、
カルボキシ末端アミノ酸がアミドもしくはカルボキシ形態であり、
少なくとも1個のスルフィドリルアミノ酸が配列内のアミノ酸の1つとして存在し(および好ましくは、スルフィドリル基が交換可能であり)、
A1、A1〜A2、A10、またはそれらの組み合わせが場合により存在せず、但し、そのペプチドが表1に記載のペプチドの1つではない。いくつかの実施形態において、改変ミニヘプシジンは、ジスルフィド結合により環状構造を形成する。いくつかの実施形態において、N末端アミノ酸は遊離アミンである。いくつかの実施形態において、N末端アミノ酸は、例えば、アセチル基でブロックされたアミンである。いくつかの実施形態において、A6および/またはA8はリジン誘導体、例えば、N−ε−ジニトロフェニル−リジン、N−ε−メチル−リジン、N,N−ε−ジメチル−リジン、およびN,N,N−ε−トリメチル−リジンである。
【0084】
表4の改変ミニヘプシジンの5つは、濃度の測定を容易にするためにトリプトファンを含有する。従って、いくつかの実施形態において、本発明の改変ミニヘプシジンは、トリプトファンを含有する。いくつかの実施形態において、トリプトファン残基(複数可)は削除され、または別のアミノ酸と置換される。他の改変ミニヘプシジンは、システインに隣接する2個のイソロイシンをアルギニンまたはアルギニン誘導体と置換することにより元のミニヘプシジンを改変することにより作製された。予期せぬことに、これらのイソロイシンをアルギニンと置換することにより、ミニヘプシジンの活性の増加が生じたことがわかった。予期せぬ優れた活性は、6番目のアミノ酸位および/または8番目のアミノ酸位のアルギニンの存在の結果であると思われる。従って、いくつかの実施形態において、構造式IのA6位および/またはA8位のアミノ酸残基は、アルギニンである。かかるミニヘプシジンのさらなる改変も予期せぬ高い活性を生じた。本発明による改変ミニヘプシジンは、米国特許出願第13/131,792号に例示された改変ミニヘプシジンと比較し優れた活性を予期せず示している。さらに、改変ミニヘプシジンの多くが、皮下投与されたときにそれらの活性を保有することがわかった。
【0085】
いくつかの実施形態において、N末端アミノ酸は遊離アミンを有する。いくつかの実施形態において、N末端アミンは、その電荷を除去する基、好ましくはアセチルまたはホルマル基で遮断される。いくつかの実施形態において、N末端アミンを、アシル鎖がN末端上にあるように、アシル鎖であって、好ましい実施形態では、脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸を含む、アシル鎖と結合させるよう改変する。アシル鎖はまた、当技術分野において周知のリンカー、例えば、ポリエチレングリコールリンカー、好ましくはPEG3を介して結合され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、アミノ酸A1の側鎖を、N末端アミンにおいて示されたように修飾することができる。例えば、アミノ酸A1の遊離カルボニル基を、修飾、例えば、パルミトイルなどのアシル基により遮断することができる(PR71を参照のこと)。
【0087】
いくつかの実施形態において、A4は、嵩高い疎水性アミノ酸、例えば、Phe、Tyr、Trp、Leu、またはIle、またはその側鎖に4個以上の炭素を含有するその代用物として通常使用される非天然のアミノ酸、好ましくは環状構造、例えば、Phg、Bip、1Nal、2Nal、Amc、PheF5、Igl(L−2−インダニルグリシン)もしくはCha(L−シクロヘキシルアラニン)、好ましくはDpaである。いくつかの実施形態において、A4は、上記の嵩高い疎水性アミノ酸のベータホモ形態、例えば、bhPhe、またはbhDpaを含有する。側鎖への他の修飾は、Wang et al.(2002)Tetrahedron 58:3101−3110およびWang et al.(2002)Tetrahedron 58:7365−7374に開示されるものなどの芳香族置換基を含む。いくつかの実施形態において、A4残基はD−アミノ酸である。
【0088】
いくつかの実施形態において、A9位のアミノ酸は、嵩高い疎水性アミノ酸、例えば、Phe、Tyr、Trp、Leu、もしくはIleまたはその側鎖に4個以上の炭素を含有するその代用物として通常使用される任意の非天然アミノ酸、好ましくは環状構造、例えば、Phg、Dpa、Bip、1Nal、2Nal、Amc、PheF5、IglもしくはCha、例えば、1個以上の環もしくは芳香族置換基を含有する環状もしくは芳香族基である。いくつかの実施形態において、A9残基はDpaまたはTrpである。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明のミニヘプシジンは、そのインビボバイオアベイラビリティを維持し、かつ/または増大させるために改変または配合される。例えば、いくつかの実施形態において、ペプチド鎖はアシル鎖と結合する。いくつかの実施形態において、アシル鎖は、N末端もしくはC末端アミノ酸またはシステイン残基に結合し得る。いくつかの実施形態において、アシル鎖はA7残基と結合する。アシル鎖は、脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、またはステアリン酸を含み得る。アシル鎖はまた、スペーサー、例えば、ポリエチレングリコールスペーサーを含有し得る。いくつかの実施形態において、スペーサーは、ポリエチレングリコールスペーサー(1〜11PEG)、好ましくはPEG3またはPEG11である。いくつかの実施形態において、スペーサーは、アミノ基とカルボン酸基との間の炭素数が、約2〜8個の炭素により分離されるアミノ酸のもの、例えば、6−アミノヘキサン酸を含む(例えば、PR73を参照のこと)。他の適切なスペーサーは、環および/または芳香族の特徴を有する疎水性構造を含む(例えば、PR74を参照のこと)。
【0090】
改変ミニヘプシジンは、改変ミニヘプシジンの、例えば、PR65の毎日の投与が鉄過負荷を抑制する、マウスヘモクロマトーシスモデルにおいて例証された。それゆえ、本発明による改変ミニヘプシジンは、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせて、治療、例えば、ヒトなどの対象の鉄過負荷を阻害し、かつ/または減少させるために、対象に投与され得る。それゆえ、本発明による改変および元のミニヘプシジンは、対象の鉄過負荷を阻害し、かつ/または減少させることにより鉄過負荷障害、例えば、ベータサラセミアおよび遺伝性ヘモクロマトーシスを治療するために、医薬品および治療に使用され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの改変ミニヘプシジンおよび/または少なくとも1つの元のミニヘプシジンを、鉄過負荷の症状が認められ、かつ/または鉄過負荷障害を有するとして診断される前、その間、その後またはそれらを組み合わせて、対象に投与する。
【0091】
従って、いくつかの実施形態において、1つ以上の改変ミニヘプシジンは、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせて、その企図される目的に適した担体を含む組成物の形態で提供される。組成物はまた、その企図される目的に適した1つ以上の追加の成分を含み得る。例えば、アッセイにおいて、組成物は、リポソーム、ニクロサミド、SL220可溶化剤(NOF,Japan)、クレモホール(cremophor)EL(Sigma)、エタノール、およびDMSOを含み得る。鉄過負荷疾患の治療において、組成物は、異なる吸収増強剤およびプロテアーゼ阻害剤、ペプチド封入化のための固体マイクロ粒子またはナノ粒子(例えば、キトサンおよびハイドロゲル)、高分子結合、脂質付加および他の化学修飾を含み得る。
【0092】
本発明はまた、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせた、1つ以上の改変ミニヘプシジン、および/または試薬とともに梱包された本発明の組成物、デバイス、説明資料、またはそれらの組み合わせを含むキットを提供する。例えば、キットは、アッセイを行うために使用される試薬、鉄代謝の障害を診断、治療またはモニタリングするための薬物および組成物、アッセイされるサンプルを得るためのデバイス、試薬を混合し、アッセイを行うためのデバイスなどを含み得る。
【0093】
本発明のペプチドがヘプシジン活性を示し、すなわち、フェロポルチン分解のアゴニストとして作用する場合、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンを組み合わせた、1つ以上の改変ミニヘプシジンを使用し、鉄過負荷疾患を治療することができる。例えば、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせた1つ以上の改変ミニヘプシジンを対象に投与し、瀉血が禁忌であり、鉄キレート化剤が治療の中心になるが多くの場合、忍容性が不良である鉄負荷性貧血(特にβサラセミア)の鉄過負荷に関連する症状および/または病因を改善することができる。単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせた1つ以上の改変ミニヘプシジンを使用し、特に、維持瀉血に忍容性がない対象の遺伝性ヘモクロマトーシスを治療することができる。単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせた1つ以上の改変ミニヘプシジンを使用し、急性鉄毒性を治療することができる。いくつかの実施形態において、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせた1つ以上の改変ミニヘプシジンの治療は、瀉血またはキレート化と組み合わせることができる。
【0094】
従って、単独または1つ以上の元のミニヘプシジンと組み合わせた1つ以上の改変ミニヘプシジンを、対象、好ましくはヒトなどの哺乳類動物に投与することができる。いくつかの実施形態において、対象への投与は、対象が鉄濃度の増加および/または異常に高い鉄濃度を示す前、示す時、および/または示した後である。いくつかの実施形態において、治療される対象は、高い鉄濃度を有する危険があり、かつ/または鉄過負荷疾患を有する遺伝的傾向を有する者である。いくつかの実施形態において、ペプチドを医薬組成物の形態で投与する。いくつかの実施形態において、ペプチドを治療有効量で投与する。本明細書において使用される場合、「治療有効量」は、プラセボなどの対照と比較して、鉄代謝の所与の疾患の症状および/または病因を改善する量である。
【0095】
治療有効量は、当技術分野において周知の標準的な方法により容易に決定され得る。投与される投与量は、疾患の臨床的重症度、対象の年齢および体重、または対象の鉄への曝露に応じて当業者により決定されることができる。ミニヘプシジンの好ましい有効量は、非経口配合物に当たり、約0.01〜約10mg/kg体重、約0.01〜約3mg/kg体重、約0.01〜約2mg/kg、約0.01〜約1mg/kg、または約0.01〜約0.5mg/kg体重の範囲となる。経口投与のための有効量は、最大約10倍高値であり得る。さらに、本発明のペプチドまたは組成物を用いた対象の治療は、単回治療を含むことができ、または好ましくは一連の治療を含むことができる。実際の投与量は、具体的なペプチドまたは組成物、具体的な配合物、投与様式、および治療される具体的な部位、宿主および疾患に従い異なるだろうということが考えられる。また、治療に使用される有効投与量が具体的な治療経過にわたり増加または低下し得ることが考えられる。所与の条件の組に対して最適な投与量を、所与のペプチドまたは組成物における実験的データに照らして、従来の投与用量決定試験を使用して当業者により確定することができる。投与量の変更は、当技術分野において周知の標準的な診断アッセイにより得られ、かつ明らかとなり得る。いくつかの状態において、慢性投与が必要とされ得る。
【0096】
本発明の医薬組成物を、所望の投与形態に適切な単位剤形で調製することができる。本発明の組成物を、経口、経腸、経鼻、局所(頬内および舌下を含む)、経膣および非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内)を含む任意の適切な経路により治療のために投与することができる。経口、局所、経真皮、経鼻、経肺、経皮(皮膚が機械的またはエネルギー手段のいずれかにより破損する)、経腸、頬内、経膣、移植されたリザーバーを介して、または非経口を含む種々の投与経路を、本発明に従い使用することができる。非経口は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内および頭蓋内注射または注入法ならびに局所治療のための注射可能な材料(ポリマーを含む)を含む。いくつかの実施形態において、投与経路は皮下である。いくつかの実施形態において、組成物は密封され滅菌されたガラスバイアル内にある。いくつかの実施形態において、組成物は防腐剤を含有する。医薬組成物は、原末、錠剤、液体、ゲル、凍結乾燥物などとして配合されてよく、投与のためにさらに加工され得る。例えば、本明細書において参照により組み込まれる、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY.20
th ed.(2000)Lippincott Williams&Wilkins.Baltimore,MDを参照のこと。
【0097】
好ましい経路は、レシピエントの状態および年齢、治療される状態の性質および選択されたペプチドおよび組成物とともに異なり得ることが考えられる。
【0098】
本発明の医薬組成物は、治療有効量の少なくとも1つの本明細書において開示されたペプチド、および不活性であり得る、薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む。本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容可能な担体」は、製剤投与に適合し、当技術分野において周知の任意および全ての溶剤、分散媒体、増量剤、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、防腐剤、等張性および吸収遅延剤などを含むことが企図される。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と相溶性がない場合を除いて、組成物におけるその使用が検討される。
【0099】
補充化合物も組成物に組み込まれることができる。補充化合物は、ニクロサミド、リポソーム、SL220可溶化剤(NOF,Japan)、Cremophor EL(Sigma)、エタノール、およびDMSOを含む。
【0100】
本発明のペプチドおよび組成物の毒性および治療有効性を、例えば、LD
50(集団の50%が致死となる用量)およびED
50(集団の50%に治療的効果がある用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手法により決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD
50/ED
50の比として表すことができる。大きな治療指数を示すペプチドが好ましい。毒性副作用を示すペプチドが使用され得る場合、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限にし、副作用を減少させるために、罹患組織の部位に、かかるペプチドを標的とする送達系を設計することに注意するべきである。
【0101】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータを、ヒトに使用するための投与量の範囲を配合するときに使用することができる。本発明のペプチドの投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がないED
50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、使用される投与量形態および利用される投与経路に応じてこの範囲内で異なり得る。本発明の方法に使用される任意のペプチドにおいて、治療有効用量を、はじめに細胞培養アッセイから推定することができる。用量を、細胞培養において決定されるように、IC
50(すなわち、症状の最大半量の阻害を得る試験化合物の濃度)を含む血中血漿濃度範囲を得るよう動物モデルにおいて配合することができる。かかる情報を使用し、より正確にヒトに有用な用量を決定することができる。血漿中の濃度を、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより、または質量分析により測定することができる。
【0103】
ペプチド合成。本発明の改変ミニヘプシジンは、標準的な固相fmoc化学を使用して合成され、逆相HPLCにより精製された。構造式IAのA1〜A9(すなわち、N〜C末端)の、PR65において、主要な配列は、以下のように全てL−アミノ酸であった:イミノ二酢酸、トレオニン、ヒスチジン、ジフェニルアラニン、ベータ−ホモプロリン、アルギニン、システイン、アルギニンおよびベータ−ホモフェニルアラニン。C末端カルボキシアミドは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーおよびパルミチン酸基(
図10A)を用いて誘導体化された。ヒトヘプシジンを、Peptides International(Louisville,KY)から購入した。
【0104】
動物試験。全ての試験は、UCLAの動物研究監視事務局により承認された。6週齢の雄野生型C57BL/6マウスを使用し、天然のヘプシジンおよびPR65の活性と比較し、かつ腹腔内対皮下経路の投与後のPR65の効果を試験した。ヘプシジンおよびPR65を、PEG−リン脂質系可溶化剤である、100μlのSL220(NOF Corporation,Japan)(Preza GC,et al.(2011)J Clin.Invest.121(12):4880−4888)において投与し、鉄パラメータを4時間後に測定した。この溶剤は、マウスの血清鉄濃度を顕著に変化させない(5μMより小さい変化、図示せず)。
【0105】
PR65の治療効果は、ヘプシジン−1ノックアウトマウス(Hamp1
−/−)において試験され(Lesbordes−Brion JC,et al.(2006)Blood 108(4):1402−1405)、マーカー利用した加速性戻し交配を使用してC57BL/6バックグランド(N4.99%遺伝子マーカー同一性)に戻し交配させた(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)。PR65を、100μlのSL220可溶化剤において皮下投与した。短期間の試験は、単回注射の有効性を確立するために最大48時間行われた。長期間の試験(「抑制」および「治療」)は、毎日の注射を使用して2週間行われ、鉄および血液学的パラメータは、最後の注射の24時間後に測定された。
【0106】
鉄負荷を抑制し、阻害し、または減少させるPR65の能力を試験するため(「抑制」試験)、雄Hamp1
−/−マウスを5〜6週齢で開始し2カ月間、低鉄飼料(4ppm鉄)で飼育することにより鉄枯渇させた。方法は、野生型C57B6マウスの肝臓鉄含量、約2〜3μモル/g肝臓湿重量に一致するよう開発された(Ramos E,et al.(2011)Hepatology 53(4):1333−1341)。マウスの1群を、鉄枯渇直後に分析し(ベースライン群)、残りの動物は、鉄負荷飼料(標準的な飼料、約300ppmのFe)に切り替えられ、2週間、溶剤またはPR65(20、50または100nモル)を毎日皮下注射された。全てのマウス飼料は、Harlan−Teklad(Madison,WI)から得られた。
【0107】
鉄負荷されたHamp1
−/−マウスのPR65の効果を試験するため(「治療」試験)、雄マウスは、生存期間全体において標準的な飼料で飼育された。12〜14週齢に開始すると、50nモルのPR65または溶剤を、2週間皮下経路により毎日注射した。
【0108】
鉄および血液学的パラメータの測定。血清鉄および非ヘム鉄濃度を、これまでに記載されているように(Ramos E,et al.(2011)Hepatology 53(4):1333−1341)、酸処理の後に鉄定量化のための比色分析法(Genzyme,Cambridge,MA)を使用して決定した。脱パラフィン化された切片を、非ヘム鉄用にペルルスプルシアンブルー染色で染色し、SGペルオキシダーゼ基質キット(Vector Labs,Burlingame,CA)を用いて増感させ、ヌクレアファストレッドを用いて対比染色した。完全な血球数がHemaVet血液分析器(Drew Scientific,Oxford,CT)を用いて得られた。
【0109】
統計学的分析。群の平均値との間の統計学的有意差を、スチューデントT検定およびSigmaplot11.0パッケージ(Systat Software,San Jose,CA)を使用して評価した。
【0111】
PR65(
図10A)を、野生型C57BL/6マウスのパイロット試験に基づき、ヘプシジンヌルマウスにおける抑制および治療試験に選択した。PR65は、腹腔内注射後の最も強力なミニヘプシジンおよびその分子生物活性のうちの1つが陰性ヘプシジンに相当したことがわかった(
図10B)。さらに、PR65は、腹腔内投与(
図10C)と比較した場合、皮下注射を用いて完全な活性を保有し、その合成費用は、他のミニヘプシジンと比較して好ましいものであった。80個超のミニヘプシジンの定量的評価に基づき、ヒトヘプシジンの9N末端アミノ酸を含有する原型的なペプチド(配列番号9)と比較してPR65の高い生物活性は、芳香族性、可溶性、タンパク質分解耐性の増加、ならびにパルミトイル基により介在された血漿タンパク質結合の増大による腎クリアランスの低下による可能性がある。
【0112】
長期間のミニヘプシジン治療法のための最適な投与パラメータを確立するため、鉄負荷されたヘプシジンノックアウトマウスである、Hamp1−/−マウスにおける用量応答(
図11A)および経時(
図11B)実験が行われた。24時間後、20および50nモルのPR65の皮下注射は、15%および10%(p=0.005、p=0.004)の血清鉄の低下を生じたが、100および200nモルの用量では、85%および95%の減少(ともにp<0.001)を生じた。100nモルのPR65が最大に近い低鉄血症を生じるため、この用量を、経時実験用に選択し、そのピークの効果のタイミングおよび期間を決定した。血清Feの最大低下(88%)は、皮下注射12時間後で生じ(p<.001)、血清Feは、24時間でかなり抑制されたままであった(82%)が、注射48時間後で溶剤対照濃度に戻った。
【0113】
PR65(100nモル)の活性も組織鉄滞留においてその効果を介して48時間にわたり評価された。興味深いことに、脾臓の鉄蓄積は、PR65注射48時間後の間に認められなかった(
図12)。これは、ヘプシジンノックアウトマウスの脾臓が完全に鉄を枯渇し、増感ペルルス染色により最終的に検出可能になるのに十分な鉄を蓄積するために2日超の日数がかかるためである。肝臓鉄含量は、これらのマウスでは既に高値であったが、実験の過程において視覚的に変化しなかった。注射1〜4時間後で、十二指腸切片が絨毛毛細管ネットワークの周囲を染色する個別の鉄を示し、連続する高いフェロポルチン活性および制御されていない血漿への鉄移動を示した。PR65注射12〜24時間後に、腸細胞内に蓄積された鉄が、予測されたフェロポルチンのミニヘプシジン誘発性消失および血漿への鉄移動の消失と一致する。ミニヘプシジンの効果は注射48時間後に消失し、鉄は腸細胞にもはや滞留されていなかった。
【0114】
従って、いくつかの実施形態において、対象を、所与の用量、例えば、毎日約100μg/kgのミニヘプシジンで治療し、約1週間後、用量を対象の血清鉄濃度が約10μMより下になる場合半量にし、または血清鉄が約30μMより上になる場合倍量にする。おおよそ三週目の治療開始時に、用量を、約10〜30μMの血清鉄濃度を維持するために、約25〜50%を増加または低下することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のミニヘプシジンの約1週間の投与後、対象の鉄濃度、および/またはフェロポルチン、および/またはミニヘプシジン濃度を、当技術分野において周知の方法を使用して、または本明細書において開示されるように、モニタリングすることができ、次いで、その濃度に基づき、対象をそれに応じて治療することができ、例えば、初回用量より多いまたは少なくなり得る1つ以上のミニヘプシジンの1つ以上の続く用量を投与することができる。ミニヘプシジンの続く用量は、第1の用量のミニヘプシジンと同じまたは異なっていてよい。
【0115】
ミニヘプシジンの慢性投与がヘプシジン欠損対象における鉄負荷を抑制する
【0116】
対象のヘプシジンにおいて鉄負荷を抑制するPR65の能力を、マウスをモデルとして使用して試験した。ヘプシジンKOマウスは、鉄貯蔵を野生型マウスのものに相当する濃度に低下されるよう8週間の鉄欠乏飼料で飼育された。鉄枯渇後、マウスの1群を、ベースラインの鉄および血液学的パラメータを確立するため分析し、残りのマウスを、2週間の鉄負荷飼料(300ppmのFe)で飼育すると同時に、溶解した溶剤のみ(対照)またはPR65(20、50または100nモル)の毎日の皮下注射を投与した。溶剤治療と比較し、PR65が脾臓において鉄滞留が生じ、血清鉄を低下させ、肝臓鉄負荷を抑制することが仮定された。心臓鉄過負荷は、鉄負荷された患者の不良な予後のマーカーであるため、心臓鉄も測定された。ヘモグロビン濃度が、赤血球生成における過剰なヘプシジンの潜在的鉄抑制効果を検出するためにモニタリングされた。
【0117】
ミニヘプシジンのヘプシジンアゴニスト活性を、全ての処置群において、マクロファージの鉄滞留の増大が、脾臓鉄含量が増加するにつれて現れたことを確認した。溶剤注射された対照脾臓のほとんど検出不能な非ヘム鉄含量と比較して、3つ全てのミニヘプシジン用量は、脾臓鉄含量の15〜30倍の増加を生じた(全てp=0.01)(
図13A)。血清鉄は、毎日20nモルのPR65を投与されたマウスにおいて変化しなかった(p=0.26)が、1日当たり50および100nモルを投与されたマウスにおいて69%および83%低下した(ともにp=0.01)(
図13B)。血中鉄濃度の低下も、50および100nモル群それぞれのヘモグロビン濃度の用量依存した3および5g/dLの減少として反映された(ともにp<.001)が、ヘモグロビン濃度は20nモルにおいて有意に変化しなかった(p=0.13)(
図13C)。心臓鉄濃度は、20、50および100nモルそれぞれのPR65で処置されたマウスにおいて33%、60%および47%低下した(p=0.08、0.007、0.05)(
図13D)。さらに、3つのPR65用量で処置されたマウスは、溶剤処置された対照より肝臓鉄が76%、53%および68%少なく(p=0.001、0.06、0.01)、鉄枯渇されたベースライン群由来のマウスと比較して肝臓鉄の統計学的有意な増加はなかった。血清鉄およびヘモグロビンを除き、一貫した用量応答関係の欠如が、相対的に低用量で最大効果に到達し、その結果、その差が統計学的変動(肝臓および心臓鉄)を反映し、またはPR65の2つ以上の効果が複雑な様式において相互作用する(脾臓鉄は、全てがPR65の予測された効果である、脾臓からの鉄輸送の低下、十二指腸の鉄吸収の低下および腸細胞数の低下を組み合わせた効果を反映し得る)ことを示し得る。
【0118】
鉄枯渇されたベースラインのマウスと比較してミニヘプシジン処置されたマウス由来の組織切片のペルルス染色は、肝臓の鉄貯蔵が20および50nモル群においてベースラインから増加せず、100nモル用量ではベースラインよりさらに低値であったことを示した(
図14)。対照的に、溶剤注射されたマウスの肝臓切片は、非常に高い鉄濃度を示した。溶剤とPR65群との間の差の同様なパターンが心臓において認められ、ペプチド100nモルを投与されたマウスの心臓において完全な鉄染色の欠乏がある。脾臓の赤髄の鉄の顕著な蓄積が、全てのミニヘプシジン群において認められたが、溶剤を投与されたマウスまたはベースラインの鉄枯渇されたマウスにおいては認められなかった。ベースラインの十二指腸切片は、鉄染色を示さなかったが、PR65処置されたマウスは、十二指腸細胞において鉄滞留を示し、再度、PR65が腸細胞からの鉄流出を遮断したことを確認した。
【0119】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、本発明による1つ以上のミニヘプシジンの慢性的投与を含む、異常に低い濃度または全くないヘプシジンを有する対象において鉄負荷を抑制する方法を提供する。
【0120】
鉄過負荷されたヘプシジンノックアウトマウスにおけるミニヘプシジン効果
【0121】
対象の鉄過負荷のための独立した治療としてのミニヘプシジンの可能性を評価するため、12週齢の鉄過負荷されたヘプシジンノックアウトマウスに、14日間、毎日、50nモルのPR65を注射した。この用量は、これまでの実験の100nモルを投与されたマウスがやや貧血性であったため、最大忍容用量として選択された。ペプチド活性は、脾臓鉄含量において15倍の増加が確認された(p<0.001)(
図15A)。PR65投与前の鉄枯渇されたマウスと対照的に、確立された鉄過負荷された血清鉄濃度のマウスにおいて、溶剤処置されたマウスと比較して最後の投与24時間後に低下しなかった(p=0.682)(
図15B)。しかし、ヘモグロビンの2g/dLの低下(p=0.012)(
図15C)は、血清鉄が処置の間一過性に低下していたことを示唆した。24時間未満の期間の各50nモル用量の低鉄血の影響は、この週齢のヘプシジンノックアウトマウスの重度の鉄過負荷によるものであったかもしれない。蓄積した肝細胞鉄は、フェロポルチンmRNAの5’鉄調節要素(5’IRE)と相互作用する鉄調節タンパク質(IRP)によりフェロポルチン翻訳の阻害を緩和することにより、および恐らく他のメカニズムにより、フェロポルチン合成および肝細胞から血漿への鉄流出を刺激することができる。対照群と比較して、PR65で処置された鉄負荷されたマウスは、心臓鉄濃度の低下傾向(24%低下、p=0.085)を示し(
図15D)、肝臓鉄濃度は、野生型マウスの総肝細胞鉄含量に等しい量である、約20%(p=0.009)または約200μg/g(
図15E)低下した。
【0122】
増感ペルルス染色は、PR65で処置したマウスの脾臓および十二指腸の鉄滞留および肝臓の鉄分布パターンの変化を例証した(
図16)。溶剤およびPR65処置したマウスにおける心臓および膵臓の統計学的有意差は顕著ではなかった。凝集体において、染色および定量的分析は、2週間のミニヘプシジンのみの処置が食事からの鉄吸収を阻害するだけでなく、少量の鉄を肝臓から脾臓に再分布させることができたことを示す。
【0123】
従って、いくつかの実施形態において、鉄過負荷疾患のため治療されるヒト対象を、治療が肝臓の鉄蓄積を抑制したことを利用可能な画像技法(例えば、FerriScan)に検出するのに必要な少なくとも最短の期間、例えば、約3カ月間、1つ以上のミニヘプシジンで治療する。対象の中には、治療を何年も、または対象の生存期間継続する可能性がある。
【0124】
図13において示されるように、PR65は、おもに鉄吸収を減少させることにより作用したが、予防的に投与されるときに、鉄を脾臓マクロファージに再分布させた。従って、いくつかの実施形態において、1つ以上のミニヘプシジンを、対象の鉄過負荷に対する予防的治療として対象に投与することができる。例えば、正常範囲内であるが、鉄過負荷疾患の素因を有し(例えば、遺伝的に過剰鉄吸収を生じやすい)、または異常に高値の鉄濃度を発症する危険がある場合、対象は、対象が鉄過負荷疾患および/または異常に高値の鉄濃度を発症する可能性を抑制し、かつ/または減少させるために1つ以上のミニヘプシジンを投与することができる。
【0125】
図13に従い、鉄分布を以下の推定および式に基づき算出した:平均体重25g、血液量(5.5%)=1.4ml、肝臓質量(5%)=1.3g、脾臓質量(0.3%)=0.08g、Hbの分子質量=64,000ダルトンおよび総原子質量=224ダルトンの4個の鉄原子に基づいたHb中の%Fe=0.34%、Hbの鉄総量=(Hb濃度)×(血液量)×(Hbの%Fe)、および器官内の鉄総量=鉄モル濃度×器官質量×56g/モルに基づいて器官質量を推定した。溶剤群およびPR65群の各量を以下に示す:
【表5】
【0126】
血漿鉄の得られた低下も、非トランスフェリン結合鉄(NTBI)の濃度を減少させ、鉄過剰量を忍容しない心臓および内分泌器官からの鉄の動員を促進することができる。従って、いくつかの実施形態において、1つ以上のミニヘプシジンを、NTBIの濃度を減少させ、かつ/または心臓および内分泌器官から他の器官および組織への鉄の動員を促進させるために、対象に投与することができる。
【0127】
瀉血またはキレート化と異なり、ミニヘプシジンは、体内からの鉄消失を目に見えて増加させることは予期していなかった。HFEヌルマウスの鉄過負荷の相対的に軽度のモデルにおいて(Viatte L,et al.(2006)Blood 107(7):2952−2958)、トランスジェニックのヘプシジン発現が、鉄の蓄積が相対的に非毒性である位置の肝臓マクロファージへの鉄の顕著な再分布が生じることが報告された。より過負荷されるHamp1
−/−マウスにおいて、ミニヘプシジン処置されたマウスの赤髄マクロファージは、鉄を保有したが、肝臓および心臓鉄貯蔵のわずかに得られた低下は、ミニヘプシジンのみが肝臓鉄負荷が高くなると、少しの治療的利点を与えることを示唆する。この重度の鉄過負荷モデルにおける、ミニヘプシジン用量のトランスフェリン飽和の24時間以内の効果は、NTBIが、実質器官に連続して鉄を送達し、マクロファージの鉄再分布および鉄吸収の低下を弱めることを暗示し得る。
【0128】
それゆえ、ヒト対象で確立された鉄過負荷において、1つ以上のミニヘプシジンを用いた効率的な治療には、1日当たり1回以上の投与、肝臓鉄の有益な効果が検出され得る前の長期の治療期間を含むことができ、または瀉血もしくはキレート化による鉄の除去と組み合わせることができる。
【0130】
PR65のL−アミノ酸の独占的な使用により、ペプチド生成費用を顕著に減少させることがわかった。さらに、PR65の非天然および高芳香族残基が、マウスの最小有効量を20nモル/dまたは1.3mg/kg/dに実質的減少させることが予期せず見つかった。
【0131】
米国食品医薬品局の投与量調節ガイドラインに従い、マウスとヒトとの代謝速度の差により体表面積に対する投与量を正規化するKm因子に基づいた変換を必要とする(Reagan−Shaw S,et al.(2008)FASEB J 22(3):659−661)。ヒト相当量(HED)を、HED=動物用量(mg/kg)×(動物Km/ヒトKm)により推定することができ、この場合、マウスおよび成人ヒトのKmはそれぞれ3および37である。従って、本発明において、ヒトのミニヘプシジンの皮下用量は、最大約50〜100μg/kg/日、約75〜125μg/kg/日、または約90〜110μg/kg/日、好ましくは約100μg/kg/日であり得る(この用量は、最も広く使用されるペプチド薬である、皮下注射インスリンの基本用量の中央値、つまり2型糖尿病において0.75U/kg/日または33μg/kg/日で通常使用される約3倍のペプチド量が容易に投与可能である(Rosenstock J,et al.(2001)Diabetes Care 24(4):631−636))。当然ながら、低投与量ならびに高投与量を、具体的なミニヘプシジン、投与形態、配合、対象および鉄過負荷の程度に応じて、対象に投与することができる。
【0132】
ヒトのミニヘプシジン、例えばPR65の効果を変更することができるマウスとヒトとの鉄代謝の重要な違いには、ヒト赤血球のやや長い寿命(120日対40日)および鉄欠乏食における鉄貯蔵のゆっくりした枯渇から推定した場合(男性において、300〜600日対15〜20日)のヒトにおけるかなり低い割合の鉄消失率(全体重の鉄と比較した1日の鉄消失)を含む。これらの違いの正味の影響は、ヒトにおける1日の鉄流出に対する腸の鉄吸収の寄与がかなり低いことがある(マウスでの50%超と比較して4〜8%)(Ramos E,et al.(2011)Hepatology 53(4):1333−1341)。ヘプシジンおよびその類似体が、赤血球上よりマクロファージ上でより強い効果を発揮する場合(Reagan−Shaw S,et al.(2008)FASEB J22(3):659−661)、これはさらに、ヒトにおける同様の低鉄血作用に必要なミニヘプシジンの相対的用量を低下させ得る。従って、いくつかの実施形態において、1つ以上のミニヘプシジンの治療有効量を、約10〜500μg/kg/日の範囲となる。繰り返すが、低用量ならびに高用量は、具体的なミニヘプシジン、投与形態、配合、対象および鉄過負荷の程度に応じて、対象に投与することができる。
【0133】
本明細書において提供される場合、本発明によるミニヘプシジンを使用し、遺伝的欠陥により危険のある対象、または既に鉄枯渇しているがキレート化療法または静脈切開療法ではもはや忍容しない対象の鉄過負荷を阻害し、減少させ、または治療することができる。本発明によるミニヘプシジンを使用し、βサラセミア重症型の対象および/またはヘプシジン濃度が正常より高いが、鉄過負荷の程度において適切な濃度より低い対象および具体的な対象を治療することができる。例えば、本発明による1つ以上のミニヘプシジンを使用し、食事からの鉄の過吸収に苦しむが、鉄濃度が正常である対象を、対象の鉄量を低下させ、過吸収を相殺させるために治療することができる。本発明の1つ以上のミニヘプシジンを使用して不十分な赤血球生成を治療し、対象の貧血を改良することができる。
【0134】
本発明のミニヘプシジンが相対的に小さい大きさであるため、ミニヘプシジンを、適切に配合し、経口投与およびインスリン投与(Roach P.(2008)Clinical Pharmacokinetics 47(9):595−610)、例えば、吸収もしくは経皮送達、または鼻粘膜もしくは頬粘膜送達に使用されるものなどの他の非侵襲的手段による投与に最適化させることができる。
【0135】
本発明の開示を理解または完成するために必要な範囲において、本明細書に挙げた全ての刊行物、特許および特許出願は、それぞれが個々に組み込まれるのと同じ程度に、本明細書において明示的に参照により組み込まれる。
【0136】
このように本発明の例示的実施形態を記載したことにより、当業者により、開示内のものは例示に過ぎず、種々の他の変更、適応、および改変が本発明の範囲内でなされ得ることを留意するものとする。それに従い、本発明は、本明細書に図示された特定の実施形態に限定されないが、以下の特許請求の範囲においてのみ限定される。