(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)水棲生物の養殖用の水の中に供給するための、ケイ酸カルシウムを含む養殖用資材について、蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加し混合した後、2時間以上静置した場合における水溶性SiO2の溶出量を測定する工程と、
(B)上記溶出量が、5mg以上であるか否かを確認して、上記溶出量が5mg以上である場合に、上記養殖用資材を、水棲生物の養殖用の水の中に供給する工程
を含むことを特徴とする養殖用資材の供給方法。
トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル及びウォラストナイトからなる群より選ばれる1種以上を含むものを原料として、粉砕によって上記養殖用資材を得る請求項1〜4のいずれか1項に記載の養殖用資材の供給方法。
トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル及びウォラストナイトからなる群より選ばれる1種以上を含むものを原料として、1,100〜1,400℃での焼成及び粉砕によって上記養殖用資材を得る請求項1〜4のいずれか1項に記載の養殖用資材の供給方法。
【背景技術】
【0002】
養殖池または閉鎖性水域(内湾、内海、湖沼等の水の出入りの悪い水域)において、水棲生物の養殖を行うに際し、餌の残渣や水棲生物の排泄物等に由来する、水溶性リン酸、アンモニア態窒素、及び硝酸態窒素等が水中に放出、蓄積されることで、養殖池等が富栄養状態となる場合がある。
養殖池等が富栄養状態となった場合、アオコ等が発生して、水中の溶存酸素量が低下し、水棲生物にとって酸素不足になったり、あるいは、嫌気性微生物が増殖して、水棲生物に有害な硫化水素が発生したりして、養殖対象である水棲生物の生存率や体重増加率が低下するという問題が生じる。
【0003】
上記問題を解決する方法としては、例えば、養殖池等の水を定期的に入れ替えて水質を維持する方法、ゼオライトを散布する方法等が挙げられる。
養殖池等の水を定期的に入れ替える方法は、頻繁に実施する必要があり、ポンプの稼働コストが高いという問題がある。また、ゼオライトを散布する方法は、散布されたゼオライトが硝酸を吸着することで、アオコ等の発生を抑制できるが、水中に存在する硫酸イオンや塩化物イオンによって、硝酸の吸着が阻害されやすいため、ゼオライトの散布量や散布頻度が多くなるという問題がある。
【0004】
一方、水中において、珪藻を増殖させることで、アオコ等の発生を抑制する方法が知られている。アオコ等と異なり珪藻の毒性は低く、また、各種の水棲生物は珪藻を餌として利用できることから、珪藻を増殖させることで、水棲生物の生存率および体重増加率を向上させる(高くする)ことができる。
水中の珪藻を増殖させる方法としては、例えば、水ガラスまたはシリカゲルを散布する方法、ケイ酸カルシウムを含む材料を散布する方法等が挙げられる。これらの方法によれば、珪藻の増殖に必要なケイ素(Si)が、水中にSiO
2として放出されることによって、珪藻の増殖を促進して、アオコ等の発生を抑制することができる。
このように水中の珪藻を増殖させる技術の一例として、特許文献1に、可溶化率50%以上の多孔質ケイ酸カルシウムを主成分とする養殖魚用飼料が記載されている。特許文献1には、該飼料に含まれる多孔質ケイ酸カルシウムから溶出したケイ酸イオンが珪藻の餌となり、珪藻の生育を促すこと、および、それゆえ、赤潮の原因である鞭毛藻類の発生が抑制されて、水質を良好に保つ効果が期待されることも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水ガラスまたはシリカゲルを散布して、水中の珪藻を増殖させる方法は、水に放出されるSiO
2の量が多いものの、水中に存在する塩化物イオンにより、SiO
2が再析出するため、珪藻が利用できるSiO
2の量が、水ガラスまたはシリカゲルに含まれるSiO
2の量と比べて少ないという問題がある。
一方、特許文献1に記載されたケイ酸カルシウムを含む材料を散布する方法は、ケイ酸カルシウムを含む材料からの水中へのSiO
2の放出が、水ガラスまたはシリカゲルと比べて、遅いため、上述したSiO
2の再析出が起こりにくく、好適である。また、溶解時にカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを水中へ放出することから、珪藻の成長をより促進させる効果や、甲殻類の生存率を向上させる効果が期待できる。
しかし、実際に養殖池等にケイ酸カルシウムを含む材料を散布した場合、該材料のSiO
2の含有量が多くても、珪藻の増殖を促進させる効果が小さい場合がある。
例えば、ケイ酸カルシウムを含む材料を屋外に放置した場合、該材料に含まれている水溶性ケイ酸成分(以下、「水溶性SiO
2」とする。)が降雨等によって水と接触することにより、溶出して、該材料の単位質量あたりの珪藻増殖効果が低下することがある。また、ケイ酸カルシウムを含む材料の製造方法によって、全ケイ酸成分中の水溶性SiO
2の割合が異なるため、全ケイ酸成分の量が多くても、そのうちの水溶性SiO
2の割合が小さい場合には、珪藻増殖効果が小さいことがある。
【0007】
ところで、珪藻の成長および光合成には、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)が必要であることから、水中の珪藻を増殖させる方法として、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、またはドロマイト等のカルシウムおよびマグネシウムの少なくとも1種を含む物質を散布する方法も考えられる。該方法によって水中にカルシウムやマグネシウムが供給されることにより、珪藻の成長をより一層促進することができる。また、該珪藻はカルシウムやマグネシウムを豊富に含むことから、該珪藻を捕食した甲殻類の外骨格の形成が促進され、甲殻類の生存率を向上させることができる。
しかし、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、またはドロマイト等のカルシウムおよびマグネシウムの少なくとも1種を含む物質を散布する方法は、水中に放出されるカルシウムまたはマグネシウムの量が多いものの、水中のケイ素の量が十分でなければ、珪藻の成長を促進させる効果が限定的であるという問題がある。
本発明の目的は、水中の珪藻の増殖をより促進させるとともに、水棲生物の生存率および体重増加率を向上させることができる養殖用資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、蒸留水1リットルに対して養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性SiO
2の溶出量が、3mg以上である養殖用資材によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1] 水棲生物の養殖用の水の中に供給するための、ケイ酸カルシウムを含む養殖用資材であって、蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性SiO
2の溶出量が、3mg以上であることを特徴とする養殖用資材。
[2] 蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性CaO及び水溶性MgOの溶出量の合計量と水溶性SiO
2の溶出量の質量比(水溶性CaO及び水溶性MgOの溶出量の合計量/水溶性SiO
2の溶出量)が、10以下である前記[1]に記載の養殖用資材。
[3] 蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性Al
2O
3の溶出量が、0.06mg以下である前記[1]又は[2]に記載の養殖用資材。
[4] 蒸留水1リットルに対して上記養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性TiO
2の溶出量が、0.02mg以下である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の養殖用資材。
[5] トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル及びウォラストナイトからなる群より選ばれる1種以上を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載の養殖用資材。
[6] 前記[1]〜[5]のいずれかに記載の養殖用資材を製造するための方法であって、ケイ酸カルシウム含有原料について、(a)そのまま使用する、(b)1,100〜1,400℃で焼成する、(c)炭酸ガス雰囲気下に置く、のいずれかによって、上記養殖用資材を得ることを特徴とする養殖用資材の製造方法。
[7] 上記ケイ酸カルシウム含有原料を、粉砕、分級または造粒する前記[6]に記載の養殖用資材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の養殖用資材によれば、水中の珪藻の増殖をより促進させることができる。
また、水中の珪藻の増殖がより促進された結果、養殖池または閉鎖性水域において、アオコ等の発生を抑えることができる。その結果、養殖池等の水質悪化を抑制し、養殖対象である水棲生物の生存率を向上させることができる。さらに、珪藻を餌とする甲殻類、貝類、魚類(特に、稚魚)、動物プランクトン等の生育が良好となり、養殖対象である水棲生物の体重増加率および生存率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の養殖用資材は、水棲生物の養殖用の水の中に供給するための、ケイ酸カルシウムを含む養殖用資材であって、蒸留水1リットルに対して養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性SiO
2の溶出量が、3mg以上のものである。
本発明の養殖用資材が供給される養殖用の水とは、特に限定されるものではなく、淡水、汽水および海水のいずれでも良い。
また、水棲生物としては、上記淡水等において養殖することができる魚類、貝類、及び甲殻類等が挙げられる。中でも、珪藻を餌とする水棲生物(例えば、エビ等の甲殻類)は、本発明の養殖用資材を供給することで増殖が促進される珪藻が、ケイ素、カルシウムおよびマグネシウムを豊富に含み、甲殻類の外骨格等の形成を促進することから、本発明の養殖用資材の対象となる水棲生物として、好適である。
【0011】
蒸留水1リットルに対して、本発明の養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性SiO
2の溶出量は、3mg以上、より好ましくは4mg以上、特に好ましくは5mg以上である。該溶出量が3mg以上であれば、水中の珪藻の増殖を十分に促進させることができる。また、該溶出量の上限は特に限定されるものではないが、水中の塩化物イオンによる、SiO
2の再析出を防ぐ観点から、好ましくは50mg以下、より好ましくは30mg以下である。
水溶性SiO
2の溶出量は、蒸留水1リットルに対して本発明の養殖用資材を1gの量で添加し混合した後、所定時間(例えば、7日間)静置した後のSiO
2の溶出量である。ここでの所定時間とは、本発明の養殖用資材からの水溶性SiO
2の溶出量が頭打ちになるのに要する時間であればよく、好ましくは2時間以上、より好ましくは4時間以上、さらに好ましくは6時間以上、特に好ましくは12時間以上である。
なお、水溶性SiO
2の溶出量は、養殖用資材の全ケイ酸成分(全SiO
2)の含有量や、養殖用資材から塩酸を用いて抽出された可溶性SiO
2の溶出量と比べて、養殖池等における珪藻の増殖量と高い相関関係を有している。
【0012】
蒸留水1リットルに対して、本発明の養殖用資材を1gの量で添加した場合における
水溶性CaO及び水溶性MgOの溶出量の合計量と水溶性SiO
2の溶出量の質量比(水溶性CaO及び水溶性MgOの溶出量の合計量/水溶性SiO
2の溶出量)は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。該質量比が10以下であれば、水中の珪藻の増殖をより促進させるとともに、該珪藻を捕食する甲殻類の外骨格の形成を促進させることができる。
【0013】
蒸留水1リットルに対して、本発明の養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性Al
2O
3の溶出量は、好ましくは0.06mg以下、より好ましくは0.05mg以下、特に好ましくは0.04mg以下である。Al(アルミニウム)は水棲生物に対する毒性を有するため、水溶性Al
2O
3の溶出量を0.06mg以下にすることで、珪藻の増殖をより促進し、水棲生物の生存率をより向上させることができる。
【0014】
蒸留水1リットルに対して、本発明の養殖用資材を1gの量で添加した場合における水溶性TiO
2の溶出量は、好ましくは0.02mg以下、より好ましくは0.01mg以下である。Ti(チタン)は水棲生物に対する毒性を有するため、水溶性TiO
2の溶出量を0.02mg以下にすることで、珪藻の増殖をより促進し、水棲生物の生存率をより向上させることができる。
【0015】
本発明の養殖用資材は、ケイ酸カルシウム含有原料について、(a)そのまま使用する、(b)1,100〜1,400℃で焼成する、(c)炭酸ガス雰囲気下に置く、のいずれかによって得ることができる。
本発明の養殖用資材を得るに際し、予め、ケイ酸カルシウム含有原料を、粉砕、分級または造粒することができる。
焼成する場合、加熱温度は、好ましくは1,100〜1,400℃、より好ましくは1,200〜1,300℃である。
炭酸ガス雰囲気下に置く場合、炭酸ガス濃度は、処理時間の短縮化、及び炭酸ガス雰囲気の形成の容易性の観点から、好ましくは2〜100体積%、より好ましくは4〜40体積%、特に好ましくは5〜30体積%である。
【0016】
ケイ酸カルシウム含有原料は、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル及びウォラストナイト等からなる群より選ばれる1種以上を含むものである。
トバモライトとは、Ca
5・(Si
6O
18H
2)・4H
2O(板状の形態)、Ca
5・(Si
6O
18H
2)(板状の形態)、Ca
5・(Si
6O
18H
2)・8H
2O(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ゾノトライトとは、Ca
6・(Si
6O
17)・(OH)
2(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ウォラストナイトとは、CaO・SiO
2(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有するものである。
CSHゲルとは、αCaO・βSiO
2・γH
2O(ただし、α/β=0.7〜2.3、γ/β=1.2〜2.7である。)の化学組成を有するものである。具体的には、3CaO・2SiO
2・3H
2Oの化学組成を有する珪酸カルシウム水和物等が挙げられる。
中でも、入手の容易性および経済性の観点から、トバモライトが好適である。トバモライトとしては、天然の鉱物を用いてもよいが、入手の容易性の観点から、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)を用いることが好ましい。また、廃材の利用促進の観点から、軽量気泡コンクリートの製造工程において生じる不良品や、建設現場で発生する軽量気泡コンクリートの端材を用いることが、より好ましい。
【0017】
軽量気泡コンクリートは、トバモライト、および、未反応の珪石からなるものであり、かつ、80体積%程度の空隙率を有するものである。ここで、空隙率とは、粒体の全体積中の、空隙の体積の合計の割合をいう。
軽量気泡コンクリート中のトバモライトの割合は、コンクリートの内部の空隙部分を除く固相の全体を100体積%として、65〜80体積%程度である。
軽量気泡コンクリートは、例えば、珪石粉末、セメント、生石灰粉末、発泡剤(例えば、アルミニウム粉末)、水等を含む原料(例えば、これらの混合物からなる硬化体)をオートクレーブ養生することによって得ることができる。
【0018】
また、ケイ酸カルシウム含有原料は多孔質であることが好ましい。ケイ酸カルシウム含有原料が多孔質である場合、本発明の養殖用資材を水中に添加した際に、ケイ酸カルシウム含有原料の多孔質部分に存在する空気が、水中に連行されることによって、水中の溶存酸素量の低下を防ぐことができる。
【0019】
本発明の養殖用資材の粒度は、水溶性SiO
2の溶出量を多くする観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、特に好ましくは3mm以下である。該粒度の下限値は、粉砕に要するエネルギーの削減の観点から、好ましくは0.001mm、より好ましくは0.005mm、特に好ましくは0.01mmである。
本発明の養殖用資材の粒度分布は、水溶性SiO
2の溶出量を多くする観点から、好ましくは、5mm以下の粒度を有する資材を70質量%以上の割合で含むものであり、より好ましくは、4mm以下の粒度を有する資材を70質量%以上の割合で含むものであり、特に好ましくは、3mm以下の粒度を有する資材を70質量%以上の割合で含むものである。
なお、本明細書中、粒度の値は、篩の目開き寸法に対応する値である。
【0020】
本発明の養殖用資材を養殖用の水の中に供給することで、水中の珪藻の増殖を促進させることができる。
また、本発明の養殖用資材は、水中へのSiO
2の放出の速度が遅いため、塩化物イオンによるSiO
2の再析出が起こりにくい。
さらに、本発明の養殖用資材は、ケイ酸カルシウム含有原料を含むため、水中にアルカリ性物質が放出されて、水の酸性化を防ぐことができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)養殖用資材の製造
トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)の端材Aを、木槌を用いて、粒径が3mm以下となるまで粉砕することで、養殖用資材を製造した。
得られた養殖用資材の化学成分を、走査型蛍光X線分析装置(商品名:ZSX100e;リガク社製)を用いて測定した。強熱減量(ig.loss)は、「JIS R 5202」に基づいて、950℃で恒量になるまで強熱したときの減量から算出した。結果を表1に示す。
また、蒸留水1リットルに対して、得られた養殖用資材1gを添加して振盪した後、7日間静置した。静置後の蒸留水1リットル中に溶出した、水溶性SiO
2、水溶性MgO、水溶性CaO、水溶性Al
2O
3、及び水溶性TiO
2の各量を、ICP発光分析装置(商品名:ULTIMA2;堀場製作所製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0022】
(2)珪藻の培養
人工海水の原料(商品名:シーライフ;マリンテック社製)34gを、蒸留水1リットルに添加して、人工海水を得た後、この人工海水に、藻類培養液(商品名:KW21;第一製網社製)0.5ミリリットルを加えて混合し、養殖用資材を含まない培養液を得た。
次いで、この培養液に、表3に示す量の養殖用資材を加えて、珪藻の増殖用の培養液を得た。その後、この培養液に、培養液中の珪藻の細胞数が0.8×10
6個/リットルとなる量の珪藻(キートセロス属に属する種類の珪藻)を添加し、エアポンプを用いて空気を供給することによって、珪藻を培養した。
なお、培養液に添加する養殖用資材の量は、添加して7日後における水溶性SiO
2の量が10mg/リットルとなる量である。
珪藻の添加後、0日(添加時)、7日、28日の各時点において、培養液中の珪藻の細胞数を測定した。結果を表3に示す。
【0023】
[実施例2]
実施例1の養殖用資材を、電気炉を用いて1200℃で30分間、焼成して得たウォラストナイトを主成分とする焼成物を、木槌を用いて、粒径が3mm以下となるまで粉砕することで、養殖用資材を製造した。
[実施例3]
ケイ酸カルシウム含有原料として、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)の端材Bを用いる以外は、実施例1と同様にして養殖用資材を製造した。
[実施例4]
ケイ酸カルシウム含有原料として、酸化カルシウムと珪石と水を混合したスラリーを、180℃、10,000hPaの条件下で10時間水熱反応を行った後、ろ過し、次いで乾燥させて得たトバモライトを用いる以外は、実施例1と同様にして養殖用資材を製造した。
【0024】
[比較例1]
ケイ酸カルシウム含有原料として、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)の端材Bを屋外で1年暴露したものを用いた。該ケイ酸カルシウム含有原料を、木槌を用いて、粒径が3mm以下となるまで粉砕することで、養殖用資材を製造した。
実施例2〜4および比較例1で得られた養殖用資材の化学成分、水溶性SiO
2等の量、及び、該養殖用資材を添加した培養液中の珪藻の細胞数を、実施例1と同様にして測定した。結果を表1〜表3に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
表3から、本発明の養殖用資材(水溶性SiO
2の量が3mg/L以上のもの)を水に添加した場合(実施例1〜4)の珪藻の数は、水溶性SiO
2の量が3mg/L未満である養殖用資材を水に添加した場合(比較例1)に比べて、非常に大きいことがわかる。
【0029】
[実施例5]
(3)エビの養殖試験
200リットルの海水を入れた水槽に生後6月のバナメイエビ20匹を入れ、エアレーションを行いながら1日2回の給餌を行うとともに、実施例1の養殖用資材を、3日に1回、200リットルの海水に対して20ppmとなる量(質量基準)で水槽に添加してバナメイエビの飼育を実施した。60日経過後、水槽のバナメイエビ(稚エビ)の生存数および体重を測定し、これらの数値からバナメイエビの生存率、体重増加率を算出した。
[比較例2]
養殖用資材を添加しない以外は実施例5と同様にして、バナメイエビの飼育を実施し、バナメイエビの生存率、体重増加率を算出した。結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
表4から、本発明の養殖資材(水溶性SiO
2の量が3mg/L以上のもの)を水に添加した場合(実施例5)、添加しない場合(比較例2)と比べて、バナメイエビの生存率、および体重増加率が向上することがわかる。