(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1(a)は実施形態に係るプリンタの連続発行時の全体斜視図であり、
図1(b)は実施形態に係るプリンタの剥離発行時の全体斜視図である。
図2は開閉カバーの開放状態における
図1のプリンタおよびロール紙の外観を示す全体斜視図である。
図3は
図1のプリンタの開閉カバーの要部の斜視図である。
【0016】
本実施形態のプリンタ1は、
図1に示すように、例えば、扁平な直方体形状に形成された携帯型のラベルプリンタであり、本体ケース2と、開閉カバー3と、剥離ユニット(剥離機構)4と、フロントカバー5とを備え、1台で連続発行と剥離発行との切り換えが可能な兼用型の構成を備えている。なお、プリンタ1は、排出口(発行口)側を上に向けた状態(横置き)で使用することも可能であるが、プリンタ1の底面に設けられたベルトフック(図示せず)を作業者のベルトに引っかけたり、ショルダーベルト(図示せず)を装着して作業者の肩に掛けたりすることにより排出口側を横に向けた状態(縦保持)で使用することも可能である。
【0017】
以下の説明では、直方体形状のプリンタ1の長辺に沿った方向を前後方向と定義する。このとき、
図1に示すように、後述する表示部15が設けられている側を前方(FR)と定義し、その反対側を後方(RR)と定義する。
以下の説明において適宜参照される断面図は、プリンタ1を平面に置いたときに、当該平面に直交し、かつ前後方向に沿った平面でプリンタ1を切断したときの断面を示している。
【0018】
本体ケース2は、プリンタ1の外形の一部を構成し、その一面には、
図2に示すように、開口2aが形成されている。この開口2a内には、収容室6が設けられている。収容室6は、ロール紙Rを収容する空間であり、その内部には用紙ガイド6aが設置されている。用紙ガイド6aは、ロール紙Rの両側面に接触した状態でロール紙Rを回転自在の状態で支持してロール紙Rから繰り出される連続紙の搬送をガイドする部材であり、ロール紙Rの幅に応じて位置を変えられるようにロール紙Rの幅方向に沿って移動可能な状態で設置されている。
【0019】
図2に示すように、ロール紙Rは、帯状の連続紙Pがロール状に巻かれたものである。帯状の連続紙Pは、帯状の台紙PMと、台紙PM上に予め決められた間隔毎に仮着された複数枚のラベルPL(印字媒体)とを有している。
台紙PMのラベル貼付面には、ラベルPLを容易に剥離することが可能なようにシリコーン等のような剥離剤が被覆されている。また、台紙PMのラベル貼付面の裏面には、予め決められた間隔毎にラベルPLの位置を示す位置検出マークMが形成されている。
ラベルPLの表側は情報が印字される印字面であり、予め決められた温度領域に達すると特定の色に発色する感熱発色層が形成されている。印字面の裏側は接着剤によって被覆された接着面であり、当該接着面が台紙PMのラベル貼付面に貼り付けられることでラベルPLが台紙PMに仮着されている。
【0020】
本体ケース2の一方の側面には、
図1および
図2に示すように、バッテリカバー7が開閉可能な状態で取り付けられている。このバッテリカバー7は、後述のバッテリハウジング(
図1〜
図3には図示せず)を開放または閉鎖するためのカバーである。
【0021】
開閉カバー3は、収容室6を開放または閉鎖するためのカバーであり、開閉カバー3の前方端が本体ケース2に対して離間および接近する方向に揺動可能なように、開閉カバー3の後方端が本体ケース2の後方端部にヒンジにより軸支されている。また、開閉カバー3は、その後方端に配置されたトーションバネ(
図1〜
図3には図示せず)により開方向(開閉カバー3の前方端が本体ケース2から離間する方向)に付勢されている。
【0022】
この開閉カバー3の先端には、
図2および
図3に示すように、一対のユニット押さえ部3aが形成されている。この一対のユニット押さえ部3aは、剥離発行時において開閉カバー3を閉鎖した場合に剥離ユニット4を剥離発行位置に固定するように押さえる部分であり、開閉カバー3の幅方向の両端に形成されている。
【0023】
また、開閉カバー3の先端には、
図2および
図3に示すように、プラテンローラ(搬送ローラ)10が正逆方向に回動自在の状態で軸支されている。プラテンローラ10は、ロール紙Rから繰り出される連続紙Pを搬送する搬送手段であり、連続紙Pの幅方向に沿って延在した状態で形成されている。このプラテンローラ10のプラテン軸10aの一端には、ギア10bが接続されている。このギア10bは、開閉カバー3の閉鎖位置で開口2a内に設置された図示しないギア等に係合し、そのギア等を介してローラ駆動用のステッピングモータ(図示せず)等に機械的に接続されるようになっている。
【0024】
また、
図2および
図3に示すように、開閉カバー3には、プラテンローラ10の近傍において剥離ピン11がプラテンローラ10に沿って設置されている。この剥離ピン11は、台紙PMからラベルPLを剥離する剥離部材であり、その両端は開閉カバー3に軸支されている。
【0025】
また、
図2および
図3に示すように、プラテンローラ10の近傍の開閉カバー3の部分(より具体的には、開閉カバー3が閉鎖状態のときに通紙ルートに対向する面)には、センサ12a,12b(総称して「センサ12」という。)が設置されている。センサ12aは、ラベルPLの基準位置(すなわち、台紙PMの位置検出マークM)を検出するセンサであり、反射型の光センサにより構成されている。一方、センサ12bは、例えば、ラベルPLの有無(換言すると、台紙PMにおいてラベルPLが仮着されている部分と仮着されていない部分)を検出するセンサであり、透過型の光センサにより構成されている。
【0026】
剥離ユニット4は、剥離発行時に、印字が行われたラベルPLが仮着されている台紙PMの搬送方向を変更し、ラベルPLを台紙PMから剥離させる機能を備えている。換言すれば、剥離ユニット4は、印字が行われたラベルPLを台紙PMから剥がすことで、プラテンローラ10よりも下流側において台紙PMとラベルPLの搬送経路を分ける機能を備えている。剥離ユニット4によって台紙PMの搬送方向は、ラベルPLの搬送方向とは異なる方向に(つまり、後述する剥離ローラ4aに向けるように)変更させられ、それによって当該台紙PMからラベルPLが剥離させられる。
剥離ユニット4は、その前後方向の一端を、プリンタ1の内部の連続発行位置と、プリンタ1の外部の剥離発行位置とに移動させることが可能な状態で設置されている。剥離ユニット4の構成については後述する。
【0027】
一対のラベル案内部材8は、剥離ユニット4によって剥離させられたラベルPLの搬送方向を別の方向に案内するための部材であり、それによって剥離後のラベルPLの垂れ下がりを抑制する機能を備えている。
また、一対のラベル案内部材8は、剥離ユニット4によって剥離させられたラベルPLが剥離ローラ4aに近接することを規制するように、当該剥離させられたラベルPLの搬送方向を規制する規制部材の一例である。
【0028】
フロントカバー5は、
図1および
図2に示すように、プリンタ1の上面のうち開閉カバー3以外の領域を覆うように本体ケース2に固定されている。このフロントカバー5には、表示部15と、操作ボタン16a,16bと、電源ボタン17と、カバー開放用ボタン18と、一対の解除レバー19と、カッタ20とが備えられている。
【0029】
表示部15は、操作コマンドやメッセージ等を表示する画面であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されている。操作ボタン16a,16bは、プリンタ1の動作を操作するボタンであり、電源ボタン17は、プリンタ1の電源をオンまたはオフするボタンである。
【0030】
カバー開放用ボタン18は、開閉カバー3を開放するためのボタンである。解除レバー19は、剥離ユニット4を連続発行位置に設定する部材である。解除レバー19を互いに接近する方向に移動させることにより、剥離ユニット4が連続発行位置に設定されている状態を解除して剥離ユニット4を剥離発行位置に設定することが可能になっている。
【0031】
カッタ20は、連続発行後の連続紙Pの台紙PMを切断する部材であり、フロントカバー5において開閉カバー3の向かい側の先端に連続紙Pの幅方向に沿って延在した状態で設置されている。なお、開閉カバー3とフロントカバー5との間に排出口が形成されている。
【0032】
次に、剥離ユニット4およびラベル案内部材8について
図4〜
図6を参照して説明する。
図4は、
図2のプリンタの剥離ユニットとラベル案内部材、およびそれらの周囲の要部の拡大斜視図である。
図5は、
図4の剥離ユニットの要部の側面図である。
図6(a)は
図4の剥離ユニットおよびラベル案内部材を抜き出して示した全体斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)の剥離ユニットおよびラベル案内部材の分解斜視図である。
【0033】
剥離ユニット4は、剥離ローラ4aと、軸部4bと、一対の支持部4cと、一対の板バネ4daと、ネジ4eと、を備えている。本実施形態の例では、一対のラベル案内部材8が剥離ユニット4に取り付けられている。
【0034】
剥離ローラ4aは、剥離ユニット4が剥離発行位置に設定されるときに、プラテンローラ10に対してサーマルヘッド28とは離間した側においてプラテンローラ10に対向するように配置されている。したがって、この剥離ローラ4aとプラテンローラ10との間に挿入される台紙PMは、剥離ローラ4aとプラテンローラ10とで挟み込み搬送される。
剥離ローラ4aは、プラテンローラ10に従動回転する従動ローラの一例である。
【0035】
この剥離ローラ4aは、例えば、ゴムのような弾性部材により形成されており、一対の支持部4cの間に挟持された軸部4bに回動自在の状態で軸支されている。また、剥離ローラ4aは、その長さが軸部4bの全長よりも短く形成されており、概ね軸部4bの中央部に配置されている。剥離ローラ4aは、剥離発行時にプラテンローラ10に対して後述するサーマルヘッド28とは離間した側に配置される。剥離ローラ4aは、剥離発行時に台紙PMを介してプラテンローラ10側に押されることで、ラベルPLが剥離した台紙PMをプラテンローラ10との間に挟み込みながらプラテンローラ10に従動回転するようになっている。
【0036】
一対の支持部4cは、剥離ローラ4aおよび軸部4bを支持する部材である。各支持部4cの上部には、各支持部4cの側面から外側に向かって延びる庇部4cpが形成されている。また、各支持部4cの前方側には、
図6に示すように、ガイドレール孔(長孔)4chが形成されている。このガイドレール孔4chは、剥離ユニット4の移動をガイドするとともに、その移動を規制する孔であり、支持部4cの前後方向に沿って長孔状に形成されている。
【0037】
詳細については後述するが、ガイドレール孔4chに支持台41に取り付けられたシャフト(揺動軸)42が挿通されることにより、剥離ユニット4が支持台41に取り付けられている。なお、本実施形態では、シャフト42は一対の支持部4cに対応して一対設けられているが、一体となっていてもよい。また、揺動軸としてはシャフトである必要はなく、軸としての機能を有する突起などであってもよい。
【0038】
一対の板バネ4daは、剥離ユニット4が剥離発行位置に移動する際に開閉カバー3の閉鎖に応じて開閉カバー3のユニット押さえ部3aが当接されることにより剥離ローラ4aをプラテンローラ10側に付勢する弾性構造体である。各板バネ4daは、各支持部4cの外側側面において、支持部4cの後方側(剥離ローラ4aのある側)に固定され、そこから前方側(ガイドレール孔4chのある側)に向かって湾曲状に延在し、終端部で浮遊状態になっている。
【0039】
一対のラベル案内部材8は、剥離ユニット4によって剥離させられたラベルPLの搬送方向(「第1の方向」という。)が、第1の方向とは異なる第2の方向となるようにラベルPLを案内するために設けられている。本実施形態の例では、第2の方向は、プリンタ1を水平面に設置したとき、概ね水平面に直交する上方向である。
【0040】
本実施形態の例では、一対のラベル案内部材8は、剥離ローラ4aの両端に隣接し、あるいは剥離ローラ4aの両端の近傍に位置するようにして、剥離ユニット4の軸部4b(第1の軸の一例)に取り付けられている。
図6(b)に拡大して示すように、ラベル案内部材8は、剥離ユニット4の軸部4bにラベル案内部材8を取り付けるための取付部8aと、取付部8aから前方、つまり軸部4bから一対の支持部4cが延設する方向に向かって突出する一対の突出片8bと、を備える。一対の突出片8bを設けることで、ラベル案内部材8は、剥離させられたラベルPLに向けて剥離ユニット4の軸部4bから突出するようになっている。
取付部8aには取付面が形成されており、当該取付面が剥離ユニット4の軸部4bに取り付けられる。それによって、ラベル案内部材8が設けられていないプリンタに対して後付けすることもできる。取付部8aの取付面の軸部4bに対する取付方法は問わないが、例えば接着剤を用いて取り付ける方法でもよいし、取付面を軸部4bに嵌め込む方法でもよい。
【0041】
一対の突出片8bの前方端には、一対の案内面8bjが形成されている。剥離ユニット4が剥離発行位置に設定されているときには、ラベル案内部材8の一対の案内面8bjが、剥離させられたラベルPLに当接し、それによって当該ラベルPLは上記第2の方向に案内される。
【0042】
次に、プリンタ1の内部構造について
図7および
図8を参照して説明する。
図7は剥離発行状態における
図1のプリンタの内部を側面側から透かして見せた概略の断面図である。
図8(a)は、
図7のプリンタの要部を拡大して示した概略の断面図である。
図8(b)は、
図8(a)と同様の断面図であるが、開閉カバー3のユニット押さえ部3aによる作用を説明するための図である。
【0043】
図7に示すように、本体ケース2内には、印字ユニット26が収容室6に隣接した状態で設置されている。印字ユニット26は、連続紙PのラベルPLに印字を施すための機能部であり、ヘッドブラケット27と、サーマルヘッド(印字ヘッド)28(
図8(b)参照)と、コイルバネ29(
図8参照)と、剥離ユニット4と、バッテリハウジング33(
図7参照)とを備えている。
【0044】
ヘッドブラケット27は、閉鎖状態の開閉カバー3を保持する部材である。このヘッドブラケット27は、開閉カバー3の閉鎖位置におけるプラテンローラ10の向かい側に、回転軸27aを中心に揺動自在の状態となって前述した本体ケース2に設置されている。ヘッドブラケット27には、溝27bが形成されている。この溝27b内に、プラテンローラ10のプラテン軸10aが嵌め込まれることにより、開閉カバー3は、ヘッドブラケット27に保持されるようになっている。
【0045】
また、ヘッドブラケット27には、押圧部27cが形成されている。この押圧部27cは、
図1に示したカバー開放用ボタン18に対向する位置(具体的には、カバー開放用ボタン18の直下の位置)に配置されており、カバー開放用ボタン18が押されると押圧部27cも押され、ヘッドブラケット27による開閉カバー3の保持状態が解除されるようになっている。そして、この開閉カバー3の保持状態が解除されると、開閉カバー3は、その後方端に配置されたトーションバネ35(
図7参照)の付勢力により自動的に開くようになっている。
【0046】
サーマルヘッド28(
図8(b)参照)は、例えば、文字、記号、図形またはバーコード等のような情報を、ロール紙Rから搬送される台紙PMに仮着されているラベルPLに印字する印字手段である。サーマルヘッド28は、開閉カバー3が閉鎖状態のときにプラテンローラ10に対向するようにサーマルヘッド28の印字面を通紙ルートに向けた状態で設けられており、回路基板36を介してヘッドブラケット27に実装されている。サーマルヘッド28の印字面には、通電により発熱する複数の発熱抵抗体(発熱素子)が連続紙Pの幅方向に沿って並んで設置されている。なお、回路基板36は、サーマルヘッド28に印字信号を伝送する配線基板である。
【0047】
コイルバネ29(
図8参照)は、開閉カバー3の閉鎖位置に置いてヘッドブラケット27およびサーマルヘッド28をプラテンローラ10側に付勢する部材であり、ヘッドブラケット27の背面側(回路基板36の実装面の裏面)に設置されている。このコイルバネ29の付勢力によりヘッドブラケット27がプラテンローラ10側に押されるので、ヘッドブラケット27の溝27b内に嵌り込んだプラテン軸10aが確実に押さえられ、ヘッドブラケット27による開閉カバー3の保持状態が維持されている。
【0048】
ここで、
図8(b)に示すように、剥離発行時に開閉カバー3のユニット押さえ部3aが、剥離ユニット4の庇部4cpと板バネ4daとの隙間に配置され、板バネ4daに接触した状態で下方向に押圧することにより剥離ユニット4を押さえるようになっている。これにより、剥離ユニット4が剥離発行位置に固定されるとともに、剥離ユニット4の剥離ローラ4aがプラテンローラ10側に付勢されるようになっている。したがって、剥離発行時に剥離ユニット4の剥離ローラ4aをプラテンローラ10に対して安定した状態で付勢させることができる。
【0049】
次に、剥離ユニット4が取り付けられた支持台41について
図9〜11を参照して説明する。
図9は連続発行位置での剥離ユニットと支持台とを示す斜視図である。
図10は
図9の剥離ユニットと支持台との側面図である。
図11は
図9の支持台における第1の取付片の第2の取付片との対向面に形成された構成要素と剥離ユニットとの関係で示す説明図である。
なお、
図9は、剥離ユニット4を、一対のラベル案内部材8が取り付けられた状態で示してある。
【0050】
支持台41は本体ケース2内に設けられており、剥離発行時にラベルPLの有無を検出する光反射型のセンサである剥離センサ43が取り付けられた台座部41aを有している。台座部41aの幅方向の両端には、剥離ユニット4を取り付けるための一対のユニット取付部41bが形成されている。
【0051】
ユニット取付部41bは、台座部41aの幅方向(つまりプリンタ1の横方向)において外側に位置する第1の取付片41baと、内側に位置して第1の取付片41baに対向した第2の取付片41bbとで構成されており、第1の取付片41baと第2の取付片41bbの間の横方向の間隙に剥離ユニット4の支持部4cを挟み込んでいる。
【0052】
ユニット取付部41bには、第1の取付片41baと第2の取付片41bbとに跨がるようにしてシャフト42が取り付けられている。このシャフト42は、第1の取付片41baと第2の取付片41bbとに挟み込まれた支持部4cに形成されたガイドレール孔4chに挿通されている。つまり、ガイドレール孔4chがシャフト42に係合している。
【0053】
したがって、剥離ユニット4は、シャフト42に対してガイドレール孔4chに沿ってスライド移動可能になっている。剥離ユニット4はさらに、シャフト42を支点にして揺動可能になっている。
【0054】
さらに、
図9および
図10に示すように、剥離ユニット4と支持台41との間にはコイルバネ44が取り付けられている。コイルバネ44の一方の端は、ユニット取付部41bの第1の取付片41baの後方端に形成された取付突起41bcに固定されている。コイルバネ44は、取付突起41bcから第1の取付片41baの側面に略L字形に湾曲形成されたガイド庇41bdに沿って前方に湾曲して延びている。そしてコイルバネ44の他方の端は、支持部4cの前方端に形成された取付突起4ciに取り付けられている。
【0055】
コイルバネ44によって、剥離ユニット4には、ガイドレール孔4chの取付突起4ci側の端がシャフト42に当接する方向(連続発行位置とは反対方向)の付勢力が与えられるとともに、シャフト42に当接したガイドレール孔4chの取付突起4ci側の端を支点にしてサーマルヘッド28から離間する方向(第1の回転方向)に揺動する付勢力が与えられている。つまり、コイルバネ44によって、剥離ユニット4には、スライド移動する付勢力と第1の回転方向に揺動する付勢力との2つの付勢力が与えられている。
【0056】
これにより、剥離ユニット4は、連続発行位置に設定されている状態が解除レバー19によって解除されると、コイルバネ44の付勢力により連続発行位置と反対側にスライド移動してガイドレール孔4chの取付突起4ci側の端がシャフト42に当接し(スライド移動位置)、当該シャフト42を支点に第1の回転方向に所定の揺動端まで揺動する(揺動端位置)。
【0057】
ここで、
図11に示すように、剥離ユニット4の支持部4cには、ガイドレール孔4chの上方に第1の爪部4cjが形成され、ガイドレール孔4chの下方に第2の爪部4ckが形成されている。また、第1の取付片41baにおける第2の取付片41bbとの対向面には、第1の突出部41beおよび第2の突出部41bfが形成されている。
【0058】
そして、第1の突出部41beには、剥離ユニット4がシャフト42に沿って連続発行位置からその反対側にスライド移動するときに、第1の爪部4cjが摺動して剥離ユニット4の移動方向を案内するガイド面45が形成されている。また、第1の突出部41beには、前述したように剥離ユニット4がシャフト42を支点に第1の回転方向に揺動したときに第1の爪部4cjが当接して揺動端位置を規定する第1のストッパ46が形成されている。さらに、第1の突出部41beには、剥離ユニット4が揺動端位置から第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に揺動して剥離発行位置に移行するときに、第1の爪部4cjが摺動して剥離ユニット4が連続発行位置に戻ることを規制する規制面47が形成されている。
【0059】
なお、第1の爪部4cjが第1のストッパ46に当接することで剥離ユニット4が揺動端位置にあるときには、剥離ユニット4の開閉カバー3に対向する端(つまり、剥離ユニット4の後端)は、開閉カバー3の揺動軌跡内に存在する位置となっている。
【0060】
一方、第2の突出部41bfには、剥離ユニット4が剥離発行位置になったときに第2の爪部4ckが当接して、剥離ユニット4が連続発行位置に戻ることを規制するための第2のストッパ48が形成されている。
【0061】
次に、本実施形態のプリンタ1の剥離ユニット4における連続発行位置と剥離発行位置の設定について、
図12〜14を参照して説明する。
図12〜14はそれぞれ、剥離ユニットを剥離発行位置に設定する際の剥離ユニットと開閉カバーとの状態を示したプリンタの要部の概略の断面図である。
【0062】
図12(a)は、剥離ユニット4が連続発行位置に設定されているときの状態を示している。この状態では、コイルバネ44の付勢力に抗してガイドレール孔4chの一方の端がシャフト42に当接しており、剥離ローラ4aはプラテンローラ10とは対向しない位置になっている。
【0063】
この連続発行位置からカバー開放用ボタン18を押して開閉カバー3を開放位置にし、さらに解除レバー19を操作して剥離ユニット4の連続発行位置における保持状態を解除する。すると、
図12(b)に示すように、剥離ユニット4は、コイルバネ44の付勢力により連続発行位置と反対側にスライド移動してガイドレール孔4chの他方の端(
図10において、取付突起4ci側の端)がシャフト42に当接する(スライド移動位置)。なお、このとき、支持部4cに形成された第1の爪部4cjが台座部41aに形成されたガイド面45を摺動していくことにより、剥離ユニット4は滑らかにスライド移動位置へと移動する。
【0064】
続いて、スライド移動位置に移動した剥離ユニット4は、
図13(a)に示すように、コイルバネ44の付勢力により、シャフト42を支点にして剥離ローラ4aが上方へと移動する方向(換言すれば、シャフト42を支点にして剥離ローラ4aがサーマルヘッド28から離間する方向)である第1の回転方向に揺動する。そして、第1の爪部4cjが台座部41aに形成された第1のストッパ46に当接して、剥離ユニット4が揺動端位置に達する。なお、揺動端位置では、連続紙Pが排出される排出口が開放されているので、ロール紙Rの装填を容易に行うことができる。このとき、剥離ユニット4の開閉カバー3に対向する一端は、開閉カバー3の揺動軌跡内に存在している。
【0065】
そこで、
図13(b)に示すように、開閉カバー3を閉めていくと、開閉カバー3の先端に剥離ユニット4の先端が係合し、剥離ユニット4も開閉カバー3の動きに合わせるようにしてシャフト42を支点にコイルバネ44の付勢力に抗して第2の回転方向(すなわち、サーマルヘッド28に近接する方向)に揺動し、剥離発行位置への移動を開始する。さらに開閉カバー3を閉めていくと、
図14(a)に示すように、開閉カバー3の閉鎖位置への揺動に伴って剥離ユニット4はさらに第2の回転方向へ揺動する。なお、このとき、支持部4cに形成された第1の爪部4cjが台座部41aに形成された規制面47を摺動していくことにより、剥離ユニット4が連続発行位置に戻ることが規制されている。
【0066】
その後、開閉カバー3を完全に閉めきると、
図14(b)に示すように、開閉カバー3に軸支されたプラテンローラ10のプラテン軸10aがヘッドブラケット27の溝27bに嵌まり込むことにより開閉カバー3が保持される。また、これとともに開閉カバー3により剥離ユニット4の剥離ローラ4aがプラテンローラ10に付勢された状態で剥離ユニット4が剥離発行位置に設定される。そして、剥離ユニット4が剥離発行位置に設定されている場合、支持部4cに形成された第2の爪部4ckが台座部41aに形成された第2のストッパ48に当接して、剥離ユニット4が連続発行位置に戻ることが規制されている。
【0067】
次に、プリンタ1の連続発行および剥離発行について
図15および
図16を参照して説明する。
図15(a)は、
図1(a)に示した連続発行時のプリンタの概略の断面図である。
図15(b)は、
図1(b)に示した剥離発行時のプリンタの概略の断面図である。
図16(a)は、
図15(b)の剥離ローラ4aの近傍の拡大図である。
図16(b)は、本実施形態のプリンタ1に仮にラベル案内部材8が設けられていない場合の、
図16(a)に対応する図である。
【0068】
連続発行および剥離発行のいずれの場合も印字工程においては、収容室6から繰り出された連続紙Pをサーマルヘッド28とプラテンローラ10との間に挟み込んだ状態でプラテンローラ10を回転させることにより連続紙Pを搬送する。この搬送の際、センサ12により検出された情報に基づいて印字タイミングを図り、サーマルヘッド28に送信された印字信号によりサーマルヘッド28の発熱抵抗体を選択的に発熱させて連続紙PのラベルPLに所望の情報を印字する。
【0069】
ここで、連続発行においては、
図15(a)に示すように、剥離ユニット4をプリンタ1の内部の連続発行位置に配置する。印字後のラベルPLは、台紙PMから剥がされることなく排出される。連続発行の場合、必要枚数のラベルPLが貼られた台紙PMを作成しておき、現場でラベルPLを台紙PMから剥がして貼り付けることができるので、ラベルPLを貼り付ける対象物がプリンタ1から離れた場所にある場合に適している。
【0070】
なお、
図15(a)に示すように、連続発行位置においては、剥離ローラ4aは本体ケース2の内部に格納されている。これにより、剥離ローラ4aの本体ケース2からの出っ張りがなくなって作業者の手に触れにくくなり、剥離ローラ4aの劣化が防止されている。
【0071】
一方、剥離発行においては、
図15(b)に示すように、剥離ユニット4を剥離発行位置に配置するとともに、剥離ピン11を介して台紙PMを剥離ユニット4の剥離ローラ4aとプラテンローラ10との間に挟み込んだ状態にする。これにより、印字のためにプラテンローラ10を回転させ連続紙Pを搬送すると、台紙PMは剥離ローラ4aとプラテンローラ10とに挟まれた状態で搬送される一方、印字後のラベルPLは1枚毎に台紙PMから剥がされてプリンタ1の外部に排出される。剥離発行の場合、ラベルPLが1枚ずつ排出されるので、ラベルPLを貼り付ける対象物が作業者の近くにある場合に適している。
【0072】
以下、本実施形態のプリンタ1のラベル案内部材8の作用について、
図16を参照して説明する。
図16(b)に示すように、本実施形態のプリンタ1に仮にラベル案内部材8が設けられていない場合には、剥離ピン11によって台紙PMの搬送方向が変えられることによってラベルPLが剥離されると、剥離後のラベルPLは自重によって剥離ローラ4aの方に垂れ下がり(倒れ)、第1の方向D1へ搬送(排出)される。換言すると、剥離ユニット4により、プラテンローラ10よりも下流側において、台紙PMの搬送方向が剥離ローラ4aに向かう方向となり、ラベルPLの搬送方向が第1の方向D1となるように、台紙PMとラベルPLの搬送経路が分けられる。このとき、
図15に示したように連続紙Pがロール紙の下部から通紙ルートに繰り出されるように連続紙Pの巻き方向が設定されている場合、排出されたラベルPLには、後方へカールしているため、より一層、剥離ローラ4aの方に垂れ下がることになる。
【0073】
他方、
図16(a)に示すように、本実施形態のプリンタ1にはラベル案内部材8が設けられているため、剥離後のラベルPLは、剥離ピン11の上方に位置するラベル案内部材8の案内面8bj(
図6参照)によって、第1の方向D1とは異なる第2の方向D2へ案内される。
図15および
図16に示す例では、第2の方向D2は、プリンタ1を水平面に設置したときに、概ね水平面に直交する上方向である。第2の方向D2をこの向きとすることで、プリンタ1にショルダーベルト(図示せず)を装着して作業者の肩に掛けたりすることによりラベルPLの排出口を横(水平方向)に向けて使用する場合に、排出後のラベルPLの台紙PMが排出される方向への垂れ下がり(倒れ)が抑制され、排出されたラベルPLを作業者がプリンタ1から取り除くときの作業性が向上する。
なお、排出後のラベルPLの接着面がラベル案内部材8の案内面8bjに付着することによって、当該ラベルPLは、ラベルPLの接着面の接着力によってラベル案内部材8に保持される。この観点からも、排出されたラベルPLをプリンタ1から取り除くときの作業性が向上する。
【0074】
図16(a)に示した例では、剥離後のラベルPLが案内される方向(第2の方向D2)は、上述したように、プリンタ1を水平面に設置したときに、概ね水平面に直交する上方向であるが、この例に限られない。第2の方向D2は、第1の方向D1を基準として剥離ローラ4aから離間する方向であればよい。例えば、水平面に直交する上方向を基準として剥離ローラ4aから離間する方向(つまり、プリンタ1の前方へ傾斜する方向)であってもよいし、剥離ローラ4aと近接する方向(つまり、プリンタ1の前方へ傾斜する方向)であってもよい。いずれの場合であっても、剥離後のラベルPLが剥離ローラ4aから排出された台紙PMに向けて倒れる場合には、当該ラベルPLの接着面がラベル案内部材8の案内面8bjに当接することで、当該ラベルPLが剥離ローラ4aに近接することが規制されるようにして、当該ラベルPLの搬送方向を規制される。そのため、排出後のラベルPLの倒れが抑制される。また、排出後のラベルPLの倒れが抑制されることで、排出された台紙PMに当該ラベルPLが再度付着することが防止される。
【0075】
次に、上述した実施形態に係るプリンタの変形例について、
図17および
図18を参照して説明する。
図17(a)は、実施形態の第1の変形例に係るプリンタの剥離発行状態の全体斜視図であり、
図17(b)は、当該プリンタのプラテンローラの近傍を拡大して示す拡大断面図である。
図18(a)は、実施形態の第2の変形例に係るプリンタの剥離発行状態の全体斜視図であり、
図18(b)は、当該プリンタのプラテンローラの近傍を拡大して示す拡大断面図である。
図17(b)および
図18(b)はそれぞれ、
図16(a)と同様の形式の拡大断面を示している。
【0076】
(第1の変形例)
図17を参照すると、第1の変形例に係るプリンタには、上述した実施形態の一対のラベル案内部材8の代わりにラベル案内部材8Aが設けられる。ラベル案内部材8Aは、矩形の板状部材であり、その両端は剥離ユニット4の一対の支持部4cに取り付けられている。第1の変形例に係るプリンタでは、剥離ピン11の位置で剥離させられたラベルPLがラベル案内部材8Aの主面によって規定される方向(
図16(a)の第2の方向D2と同一の方向)に案内されるため、排出後のラベルPLの後方への垂れ下がり(倒れ)が抑制される。
【0077】
(第2の変形例)
図18を参照すると、第2の変形例に係るプリンタには、上述した実施形態の一対のラベル案内部材8の代わりにラベル案内部材8Bが設けられる。ラベル案内部材8Bは、断面が円形または楕円形の棒状部材であり、その両端は剥離ユニット4の一対の支持部4cに取り付けられている。第2の変形例に係るプリンタでは、剥離ピン11の位置で剥離させられたラベルPLがラベル案内部材8Bと接する方向(
図16(a)の第2の方向D2と同一の方向)に搬送されるようにラベルPLが案内されるため、排出後のラベルPLの後方への垂れ下がり(倒れ)が抑制される。
【0078】
ラベル案内部材の断面形状は、第1および第2の変形例に示したものに限られず、如何なる形状であってもよい。ラベル案内部材は、排出後のラベルPLが倒れて剥離ローラ4aに近接することを防止すべく当該ラベルPLを当接する部材であれば何でもよく、その断面形状は適宜決定することができる。
また、ラベル案内部材によるラベルPLの案内方向である第2の方向D2は、ラベル案内部材8の突出片8bの長さや、変形例に係るラベル案内部材8A,8Bの両端の取付位置を変更することで、適宜設定可能である。
【0079】
上述した実施形態においては、印字媒体としての複数枚のラベルを台紙に仮着した連続紙を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、一方面に接着面を有する連続状のラベル(台紙無しラベル)、接着面を有しない連続状のシート(連続シート)あるいは紙類に限らずサーマルヘッドにより印字可能なフィルム等を印字媒体として使用することもできる。台紙無しラベル、連続シートまたはフィルムは位置検出マークを設けることができる。また、接着剤が露出する台紙無しラベルなどを搬送する場合には、搬送路を非接着剤で被覆するとともにシリコーンなど含有した非接着ローラを設けることができる。