(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の分類モデルの各々について、前記複数の患者に関する医療情報から複数の集合への前記医療情報の属性値の類似性に基づく分類様式を記憶する分類様式記憶部をさらに備え、
前記候補決定部は、前記記憶された分類様式の一に診断対象の患者を入力することにより、前記記憶された複数の患者に関する医療情報の中から、前記診断対象の患者の類似患者に関する医療情報を取得し、
前記提示候補決定部は、前記取得された医療情報に基づいて、前記診断対象の患者に対する診断および治療計画決定のための提示候補を決定する、請求項1記載の医用情報処理装置。
前記記憶された複数の患者に関する医療情報を前記複数の分類モデルの各々に従い、前記複数の患者に関する医療情報を属性値の類似性に基づいて複数の集合を含む分類様式に分類するデータ解析部をさらに備える、請求項4記載の医用情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用情報処理装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1は、本実施形態に係る医用情報処理装置の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る医用情報処理装置10は、患者情報記憶部20と、医師履歴情報記憶部30と、医療ナレッジ記憶部40と、を備えている。
【0011】
患者情報記憶部20は、複数の患者に関する医療情報を記憶する(以下、患者に関する医療情報を患者情報と呼ぶ)。患者に関する医療情報には、画像データセットと非画像データセットとがある。画像データセットとは、一般に医用画像診断装置等から出力される画像データである。医療画像診断装置から出力されたデータは通常、医療画像保存システムPACS上で保管され、DICOM規格等で出し管理および通信可能である。非画像データセットは例えば、年齢、性別、人種、病歴等を含む。非画像データセットとは、医療情報システム上で管理される画像データ以外のデータである。医療情報システムとは、院内で利用される情報システムのことであり、例えば電子カルテシステム、レセプト電算処理システム、オーダリングシステム、受付システム、診療支援システム、部門システム等が代表的なものである。
【0012】
以下、説明を簡単にするため、医療情報として非画像データセットを用いて本実施形態における一連の処理を説明する。もちろん患者情報として画像データセットを用いて一連の処理を行っても良い。
【0013】
医師履歴情報記憶部30は、複数の医師に関する診断および治療計画決定に関する履歴情報を記憶する。医師履歴情報記憶部30は具体的には例えば、病院内における複数の医師の診断および治療計画決定に関する履歴情報を記憶する。医師履歴情報記憶部30は、例えば次の
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示すようなテーブルを記憶する。
図2Aは、
図1の医師履歴情報記憶部30が記憶する、患者ID、医師ID、症状および医師による診断結果を関連付けたテーブルを示す図である。
図2Aは具体的には例えば一行目を参照すると、患者ID100は診断医である医師ID10が、症状として胸痛および診断結果として狭心症という診断を行ったことを意味する。
図2Bは、
図1の医師履歴情報記憶部30が記憶する、患者ID、医師ID、病名および医師が決定した治療計画を関連付けたテーブルを示す図である。
図2Bは具体的には例えば一行目を参照すると、患者ID100は診断医である医師ID10が、病名として大腸癌および治療計画として三門照射(50Gy/25回/4週)と決定したことを意味する。
図2Cは、
図1の医師履歴情報記憶部30が記憶する、医師ID、医師名および医師の所属診療科を関連付けたテーブルを示す図である。
図2Cは具体的には例えば一行目を参照すると、医師ID10は医師名が太郎および所属診療科が内科であることを意味する。なお後述するように医師履歴情報記憶部30は、
図2A、
図2Bおよび
図2Cのテーブルに情報を追加または更新しても良い。なお医師履歴情報記憶部30は、
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示された以外の形式を有する医師情報に関するテーブルを記憶しても良い。
【0014】
医療ナレッジ記憶部40は、複数の算出モデルの各々について、複数の患者情報から複数の集合への前記医療情報の属性値の類似性に基づく医療ナレッジを記憶する。さらに言うと医療ナレッジ記憶部40は、患者情報記憶部20に記憶された複数の患者情報の類似性に基づいて後述するデータ解析部110により発生された医療ナレッジを記憶する。類似性とは具体的には、患者の医療情報に関する類似性、症例に関する類似性、医療提供形態に関する類似性等である。
図3は、
図1の医療ナレッジ記憶部40が記憶する、医療ナレッジ、算出モデルおよび分類数を関連付けたテーブルを示す図である。医療ナレッジAは、データ解析部110で発生された類似患者に関する医療ナレッジである。算出モデルとは医療ナレッジを算出するためのモデルであり、医療ナレッジAでは算出モデルは「モデルX f(x,y)={1,2,3}」で示されている。これはすなわち、モデルXは関数fで表され、医療情報項目xとyとの2つの引数により出力1、2または3を得ることを意味している。出力1、2または3はそれぞれ、集合1、2または3に分類されることを示す。例えば
図3の医療ナレッジは、主に患者情報項目が類似する類似患者に関する医療ナレッジである。
【0015】
また医用情報処理装置10は、制御部100を備えている。制御部100は、データ解析部110と、患者情報取得部120と、医師履歴情報取得部130と、医師件数算出部140と、支援情報決定部150と、を備えている。
【0016】
制御部100は、制御部100に含まれる各種構成要素を統括的に制御する。制御部100は、中央演算処理装置(Central_Processing_Unit:以下、CPUと呼ぶ)等により実現される。制御部100は、医用情報処理装置10の中枢として、各構成要素を統括的に制御する。
【0017】
データ解析部110は、患者情報記憶部20に記憶された複数の患者情報を複数の分類モデルの各々に従い医療ナレッジを分類する。具体的にはデータ解析部110は、患者情報記憶部20に記憶された複数の患者情報を複数の分類モデルの各々に従い、複数の患者情報を属性値の類似性に基づいて複数の集合を含む医療ナレッジを発生する。複数の患者情報とは、例えば人種、年齢、性別、病歴等である。医療情報項目の値(以下、医療情報項目値と呼ぶ)として、年齢に関しては例えば、1歳、90歳等の年齢の値をそのまま表現する。医療情報項目値とは、例えば病歴に関しては骨粗しょう症の病歴がある場合は1、無い場合は0という値を用いて表現する。データ解析部110は、データ解析により集合の分類を行う。具体的には例えば、医療ナレッジの分類にはデータマイニングが用いられる。データマイニングとは例えば、本実施形態であれば多くの患者それぞれが有する複数の医療情報に基づいて、その中に潜む情報項目間の相関関係やパターン等を探し出す技術である。本実施形態では例えば、「年齢が高い人は病歴に骨粗しょう症を有しやすい傾向がある」等の項目間のパターンが得られる。なお、データ解析にはデータマイニングではなく他のクラスタリング手法等が用いられても良い。
【0018】
患者情報取得部120は、患者情報記憶部20に記憶された複数の患者に関する医療情報の中から、診断対象の患者の類似患者情報を取得する。患者情報取得部120は具体的には、医療ナレッジ記憶部40に記憶された医療ナレッジの一に診断対象の患者を入力することにより、記憶された複数の患者情報の中から、診断対象の患者の類似患者に関する患者情報を取得する。説明を具体的にするため、患者情報取得部120は医療ナレッジA(類似患者)を取得したものとして以下の説明を行う。
【0019】
医師履歴情報取得部130は、医師履歴情報記憶部30に記憶された複数の医師に関する履歴情報の中から、診断医に関する履歴情報を取得する。医師履歴情報取得部130は例えば、
図2Aおよび
図2Bのテーブルから診断医に関する履歴情報を取得する。医師履歴情報取得部130は例えば、入力部300を介して操作者に入力された医師IDと病名に基づいて、診断医に関する履歴情報を取得する。なお医師履歴情報取得部130は、入力部300を介して操作者に入力された医師IDと治療計画とに基づいて、診断医に関する治療計画に関する履歴情報を取得しても良い。医師履歴情報取得部130は、入力部300を介して操作者に入力された医師IDと診断結果とに基づいて、診断医に関する診断結果に関する履歴情報を取得しても良い。
【0020】
医師件数算出部140は、診断医の履歴情報から治療計画決定に関する履歴を取得し、各々の治療計画決定の件数を算出する。
【0021】
支援情報決定部150は、診断対象の患者に対する前記診断医による診断および治療計画決定のための支援情報を決定する。具体的には支援情報決定部150は、患者情報取得部120から取得された医療ナレッジと医師履歴情報取得部130から取得された履歴情報とに基づいて、診断対象の患者に対する診断医による診断および治療計画決定のための支援情報を決定する。具体的には支援情報決定部150は、候補決定部152と、対応状況検出部154と、提示候補決定部156と、出力部158とを有する。候補決定部152は、複数の患者に関する医療情報に基づいて、病名または治療計画の候補を決定する。対応状況検出部154は、履歴情報に基づいて、複数の医師が対応した回数の多い病名または治療計画を求める。提示候補決定部156は、候補決定部152で決定した候補から、対応状況検出部154で求められた病名または治療計画を除いた候補を提示候補として決定する。出力部158は、提示候補を表示部200に出力する。 また
図1に示すように、医用情報処理装置10は制御部100の他に、表示部200と、入力部300と、主記憶部400と、インターフェース部500と、を備えている。
【0022】
表示部200は、種々の情報をモニタに表示する。表示部200としては例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0023】
入力部300は、入力機器による操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。
【0024】
主記憶部400は、表示対象のベース画像と前記ベース画像と撮像部位が略一致するサブ画像とを記憶する。主記憶部400は、種々の情報を記憶する記憶装置である。HDD(Hard_Disk_Drive)等により実現される大容量の記憶装置である。なお近年容量の増加によりSSD(Solid_State_Drive)が使用されることもある。
【0025】
インターフェース部500は、ネットワークを介して図示していない(Picture_Archiving_and_Communication_System:PACS)や他のコンピュータに接続される。インターフェース部500は、接続された外部装置とDICOM(Digital_Imaging_and_Communication_in_Medicine)規格に準拠したデータ通信を行う。
【0026】
以上、本実施形態に係る医用情報処理装置10の各構成要素について説明してきた。次に、患者情報記憶部20に記憶された複数の患者情報から医療ナレッジを作成し、医療ナレッジ記憶部40に記憶する典型的な流れについて説明する。
【0027】
図4は、
図1のデータ解析部110によって複数の患者情報を解析し、複数の集合を含む医療ナレッジに分類する例を説明するための図である。患者情報は先述したとおり患者情報のひとつであり、患者情報記憶部20に記憶されている。例えばデータ解析部110は、5つの患者情報すなわち患者A、患者B、患者C、患者D、患者Eに関する患者情報を解析し、3つの集合に分類する。実際には患者情報記憶部20はより多くの患者情報を記憶し、データ解析部110はそれらを複数の集合に分類する。より多くの患者情報とは例えば、ある病院においてこれまでに診断された患者に関する患者情報である。データ解析部110は、5つの患者情報に含まれる医療情報項目I(人種)及び医療情報項目II(年齢)により、5つの非画像データセットを複数の集合(
図3の例の場合は3つの集合)に分類する。なおデータマイニングおよびその他のクラスタリング手法において、集合のことをセグメントと呼ぶこともある。
【0028】
図5は、
図1のデータ解析部110が、新たな患者aを既存のいずれかの集合に分類する一例を説明するための図である。
図5は、新たな患者aの医療情報項目I(人種)と医療情報項目II(年齢)とを医療ナレッジAのモデル関数fに入力すると、新たな患者aは集合3に分類されるという結果が得られることを意味する。新たな患者aが医療ナレッジAにおいて集合3に分類されると、医療ナレッジ記憶部40は医療ナレッジAを更新する。なお分類数は算出モデルによって得られる分類数であり、医療ナレッジAは出力1、2または3すなわち分類数3である。なお
図2及び
図3では人種と年齢の2つの医療情報項目でデータ解析を行ったが、実際には医療情報項目はより多数になる。
【0029】
なお従来例に係る診断および治療計画を支援する装置は、医師がよく知る診断候補および治療計画候補を提示する。医師にとって、自身がよく知る診断候補および治療計画候補を何度も提示されることは診断および治療計画の決定においてあまり意味が無く、逆に煩わしい情報となり得る。したがって本実施形態に係る医用情報装置は、そのような煩わしい情報よりも医師が思い付きにくい診断候補および治療計画候補を提示する。
図6は、本実施形態に係る、医師Xへの診断候補の提示例を説明するための図である。患者1の場合、複数の診断のうち大動脈乖離の診断歴が医師Xにはないので、本実施形態における医用情報処理装置は大動脈乖離を診断候補として提示する。一方患者2の場合、複数の診断のうちすべてに対して医師Xは診断歴があるので、本実施形態における医用情報処理装置は候補提示をしない。
【0030】
以下に、本実施形態に係る診断候補および治療計画候補抽出の典型的な流れについて説明する。
図7は、本実施形態に係る、診断候補および治療計画候補抽出の典型的な流れを示す図である。なお本実施形態は従来例のように対象患者に対して可能性のある診断または治療計画の候補を提示するものではない。
【0031】
はじめに制御部100は入力部300に、対象患者の患者情報を取得させる(ステップS11)。ステップS11において操作者は、入力部300を介して対象患者の患者情報を入力する。なお操作者は、既存の他のデータベースから対象患者の患者情報を読み出して入力部300を介して入力しても良い。
【0032】
ステップS11が行われると制御部100は患者情報取得部120に、任意の医療ナレッジの中から対象患者が属する集合の患者情報を取得させる(ステップS12)。ステップS12において任意の医療ナレッジは、医療ナレッジ記憶部40に記憶された医療ナレッジの中から例えば入力部300を介した医師の指示により選択する。患者情報取得部120は、選択された医療ナレッジに対象患者の患者情報を入力することにより、対象患者を選択された医療ナレッジに含まれるいずれかの集合に分類する。対象患者のいずれかの集合への分類について、詳細は先述したとおりである。以下の説明を簡単にするため、対象患者は医療ナレッジAの集合3に分類されたとする。ここで、
図8Aは、
図1のデータ解析部110が解析した、対象患者が属する集合の類似患者に対して過去に決定された治療計画の件数を表す図である。
図8Aの図は、医療ナレッジAの集合3の患者は大腸癌に対する三門照射(50Gy/25回/4週)という治療計画をこれまでに130件経験していることを示している。また、大腸癌に対する四門照射(45Gy/28回/4週)という治療計画は7回しか決定されていない。なおデータ解析部110は、当該治療計画を採用して結果がよくなった場合のみを件数として算出する。また
図8Bは、
図1のデータ解析部110が解析した、対象患者が属する集合の類似患者に対して過去に決定された診断結果の件数を表す図である。
図8Bの図は、医療ナレッジAの集合3の患者は胸痛の狭心症という診断結果をこれまでに150件行われていることを示している。また、胸痛の大動脈乖離という診断結果は4回しか経験していない。なお患者情報取得部120は、所定の期間の医療ナレッジを対象として取得することもできる。現在から遡って3ヶ月間の医療ナレッジを対象とする場合、具体的には例えば、
図8Aの図における件数の項目において、遡って3ヶ月間より以前のものは考慮されない。遡って3ヶ月間の医療ナレッジを対象とする場合、具体的には例えば、
図8Bの図における件数の項目において、遡って3ヶ月間より以前のものは考慮されない。
【0033】
ステップS12が行われると制御部100は医師履歴情報取得部130に、医師履歴情報記憶部30から医師情報を取得させる(ステップS13)。ステップS13において操作者は、入力部300を介して診断医の医師情報を入力する。なお操作者は、既存の他のデータベースから診断医の医師情報を読み出して入力部300を介して入力しても良い。ここで医師件数算出部140は、診断医が過去に決定した治療計画およびその件数を算出する。医師件数算出部140は、診断医が過去に診断した結果およびその件数を算出する。
図9Aは、
図1の医師件数算出部140が算出した、ある医師が決定した治療計画およびその件数を表す図である。
図9Aの図は、診断医は大腸癌に対する三門照射(50Gy/25回/4週)という治療計画をこれまでに80件経験していることを示している。また、大腸癌に対する四門照射(45Gy/28回/4週)という治療計画は1度しか経験していない、すなわち当該治療計画は当該医師にとって非常にレアケースなものであることを示している。換言すると、診断医にとって大腸癌に対する三門照射(50Gy/25回/4週)という治療計画は、安易に思い付く治療計画である。一方診断医にとって大腸癌に対する四門照射(45Gy/28回/4週)という治療計画は、非常に思い付きにくい治療計画である。また
図9Bは、
図1の医師件数算出部140が算出した、ある医師が診断した結果およびその件数を表す図である。
図9Bの図は、診断医は胸痛の狭心症という診断をこれまでに150回行ったことを示している。また、胸痛の胸部塞栓症という診断をこれまでに20回行ったことを示している。
【0034】
ステップS13が行われると制御部100は候補決定部152に、ステップS12で取得された複数の患者に関する医療情報に基づいて、病名または治療計画の候補を決定させる(ステップS14)。ステップS14においては、対象患者が属する集合の類似患者に関する医療情報に基づいて、病名または治療計画の候補を決定する。
【0035】
ステップS14が行われると制御部100は対応状況検出部154に、ステップS13で取得された医師に関する履歴情報に基づいて、複数の医師が対応した回数の多い病名または治療計画を求めさせる(ステップS15)。
【0036】
ステップS14が行われると制御部100は提示候補決定部156に、候補決定部152で決定した候補から、対応状況検出部154で求められた病名または治療計画を除いた候補を提示候補として決定させる(ステップS16)。ステップS16において提示候補決定部156は、対象患者が属する集合の患者情報と医師情報とを比較することにより、提示候補として決定する。提示候補決定部156は、患者情報と医師情報とを比較することにより、診断医が見落としそうな診断または治療計画を提示候補として出力する。
【0037】
上記ステップS14乃至ステップS16の動作を、治療計画を例について説明する。提示候補決定部156は、
図8A(患者情報)と
図9A(医師情報)とを比較する。まず提示候補決定部156は、患者情報にあって医師情報にない治療計画を、提示候補として抽出する。また提示候補決定部156は、医師情報の件数が所定の閾値より少ない治療計画を、提示候補として抽出する。ここで
図10は、
図1の支援情報決定部150が抽出した治療計画の提示候補の一例を示す図である。
図8A(患者情報)と
図9A(医師情報)の場合支援情報決定部150は、
図10に示す大腸癌に対する四門照射(45Gy/28回/4週)および大腸癌に対する四門照射(40Gy/28回/5週)とを提示候補として抽出する。診断結果の抽出も、
図8B(患者情報)と
図9B(医師情報)とに基づいて同様に行われる。
【0038】
なおステップS14は無くても良い。その場合提示候補決定部156は、
図8A(患者情報)と
図9A(医師情報)全ての治療計画を提示候補として抽出する。診断結果の抽出も、
図8B(患者情報)と
図9B(医師情報)とに基づいて同様に行われる。
【0039】
ステップS14が行われると制御部100は出力部158に、診断医による診断および治療計画決定のための提示候補を出力させる(ステップS15)。ステップS15において出力部158は、ステップS14で抽出された治療計画の提示候補を提示する。なお提示候補が複数あった場合、優先度を付けても良い。優先度は、患者情報および医師情報における治療計画各々の件数の多少によって計算される。例えば支援情報決定部150は、件数の多い治療計画の優先度を高くする。支援情報決定部150は、診断結果についても治療計画と同様に患者情報と医師情報とを比較し、提示候補を抽出する。出力部158は診断結果についても治療計画と同様に、ステップS14で抽出された治療計画の提示候補を提示する。出力部158は例えば、表示部200に提示候補を表示しても良い。
図11Aは、
図1の表示部200が、治療計画の提示候補を表示する一例を示す図である。
図11Aは、提示候補が1つの場合である。表示部200は、治療計画候補表示エリアA1に治療計画候補を画像と文字で表示する。表示部200は、治療計画表示エリアA2に治療計画を画像で段階的に表示する。表示部200は、その他情報表示エリアA3に患者名、医師名、カレンダーおよび操作ボタン等を表示する。
図11Bは、
図1の表示部200が、治療計画の提示候補を表示する他の一例を示す図である。
図11Bは、提示候補が2つ以上の場合である。
図11Bが
図11Aと比べ異なるのは、表示部200に表示された治療計画候補表示エリアA1に、次の候補を選択するボタンがあることである。操作者が入力部300を介してマウスのクリック等により次の候補を選択するボタンを入力すると、現在表示されている治療計画候補の次の治療計画候補が表示される。また治療計画候補の表示変更に伴い表示部200は、次の治療計画候補に関する治療計画が表示する。
【0040】
なお本実施形態に係る医用情報処理装置は、決定された診断および治療計画決定のための支援情報に基づいて、診断対象の患者に対する診断医による治療計画を決定する治療計画決定部(図示せず)を備えても良い。治療計画決定部は、ステップS15において提示された診断案または治療計画案の候補からさらに一つの診断または治療計画に限定して、診断または治療計画を表示部200に表示させる。一つの診断および治療計画とは、対象患者および診断医にとって最もレアケースな診断および治療計画である。安易に思い付く診断および治療計画はできる限り不要であるという医師にとって、最もレアケースな診断および治療計画のみ提示することは、診断および治療計画の決定に有益である。
【0041】
なおこれまで本実施形態に係る医用情報処理装置は、治療計画および診断結果の候補提示を対象として説明してきたが、本実施形態に係る医用情報処理装置はそれにとらわれない。候補提示される情報は、治療計画および診断結果ではなく検査結果や画像の読影結果でも良い。
【0042】
また、本実施形態に係る医用情報処理装置は、患者情報記憶部20は基本的に当該医用情報処理装置において取得された患者情報を記憶するものとして説明してきたが、本実施形態に係る医用情報処理装置はそれにとらわれない。患者情報記憶部20は、インターフェース部500を介して取得された患者情報を記憶しても良い。患者情報記憶部20は、具体的には例えば、系列病院、地域、コンソーシアム、学会、または国家レベルで蓄積された患者情報を記憶しても良い。
図12は、本実施形態に係る外部から取得した患者情報の一例を示す図である。
図12における図は、患者属性IDと、機関IDと、病名と、治療計画とが関連付けられている。外部から取得した患者情報の場合、患者名または患者IDは機関ごとにIDが重複することがあるため、利用できない。従って情報記憶部20は、性別、年齢、身長、体重、習慣、病名、治療ステータス、腫瘍の大きさ、副作用等の属性毎に患者情報を記憶する。機関IDは、当該情報を提供した機関のIDを表す。
【0043】
また、本実施形態に係る医用情報処理装置は、医師履歴情報記憶部30に記憶される情報は医師個人毎の情報を対象として説明してきたが、本実施形態に係る医用情報処理装置はそれにとらわれない。医師履歴情報記憶部30に記憶される情報は、診療科、病院、地域、国等の単位で記憶されても良い。
【0044】
なお、
図13は本実施形態に係る医用情報処理装置のうち、必ずしも装置内に無くても良いユニットを示す図である。
図13において必ずしも装置内に無くても良いユニットは、一点鎖線で示されている。すなわち、患者情報記憶部20、医師履歴情報記憶部30、医療ナレッジ記憶部40は必ずしも医用情報処理装置10内に無くても良い。具体的には、上記構成要素はクラウドにあっても良い。例えば患者情報記憶部20、医師履歴情報記憶部30、医療ナレッジ記憶部40等の記憶部がクラウド上にあることにより、単一の病院のみでなく複数の病院間あるいは国際医療機関等で医療情報、医療ナレッジ等を共有できる。その結果、医療情報が多く蓄積されるため、データマイニングの精度およびそれにより発生された医療ナレッジの精度は向上する。
【0045】
上記のとおり、本実施形態に係る医用情報処理装置によれば、記憶された患者情報にデータ解析を施すことにより、医療ナレッジを検索可能に記憶することができる。記憶された複数の医療ナレッジの中から、任意の医療ナレッジにおける対象患者の属する集合を取得することができる。また、診断医の過去の診断結果および治療計画決定の履歴情報を取得することができる。対象患者の属する集合に関する診断結果および治療計画の情報と、診断医の過去の診断結果および治療計画決定の履歴情報とから、診断医が思い付きにくい診断および治療計画を提示することができる。診断医が思い付きにくい診断および治療計画を提示することにより、診断および治療計画の決定に有益な支援情報を与えることができる。
【0046】
(応用例)
上記実施形態における医用情報処理装置は、医師情報を記憶する医師履歴情報記憶部30を有する。応用例に係る医用情報処理装置は、提示した支援情報およびその付帯情報をフィードバックする。
【0047】
図14は、応用例1に係る医用情報処理装置10’の構成を示す図である。応用例1に係る医用情報処理装置10’は、実績フィードバック部610と、実績閾値記憶部620とを有する。
【0048】
実績フィードバック部610は、支援情報決定部150により決定された支援情報を、患者IDおよび当該患者に関する医療情報を関連付けて患者情報記憶部20に記憶する。フィードバックする情報は、
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示されるテーブルのうちいずれでも良い。またフィードバックする情報は、
図2A、
図2Bおよび
図2Cに示されるテーブルにとらわれない。
【0049】
実績閾値記憶部620は、支援情報決定部150により支援情報決定する際に用いられた所定の閾値を、症状および病名に関連付けて記憶する。
図15は、応用例1の実績閾値記憶部620が記憶する、症状または病名、閾値および実績数を関連付けるテーブルを示す図である。
図15のテーブルは、大腸癌の提示候補を決定するために閾値5を使った実績数が10、同様に閾値2を使った実績数が3、閾値1を使った実績数が0、胸痛の提示候補を決定するために閾値2を使った実績数が30ということを示している。
【0050】
上記のとおり、決定された診断および治療結果に関する提示候補をフィードバックすることにより、医師情報記憶部の履歴情報が増加する。医師情報記憶部の履歴情報が増加することにより、支援情報提示の精度が向上する。また、提示候補を決定するために使った閾値の実績数を病状毎に記憶することにより、診断する医師にとって閾値決定の参考情報となる。閾値決定の参考情報があることにより、支援情報提示の精度が向上する。支援情報提示の精度が向上することにより、診断および治療計画の決定に有益な支援情報を与えることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。