(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)充電装置
以下、本実施形態の充電装置について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る充電装置1の斜視図である。
図2は、本実施形態に係る充電装置1において、ケーブルの保持態様を示す正面図である。
図1に示す充電装置1は、電気自動車の車両間において用いられ、給電側の車両のバッテリ電圧により、受電側の車両のバッテリを充電する装置である。受電側(または充電側)の車両は、バッテリ残量が少ない電欠車両EV2である。給電側(または放電側)の車両は、比較的バッテリ残量が多く、電欠車両EV2を救援するための救援車両EV1である。
【0010】
図1に示すように、充電装置1は、救援側ケーブル11(給電側ケーブルの一例)と電欠側ケーブル12(受電側ケーブルの一例)とを備えている。救援側ケーブル11は、後述するDC/DCコンバータ100の一端側に接続され、筐体8の外部へ延出し、先端に救援車両EV1の充電ポートに接続するコネクタ11aが設けられている。電欠側ケーブル12は、後述するDC/DCコンバータ100の他端側に接続され、筐体8の外部へ延出し、先端に電欠車両EV2の充電ポートに接続するコネクタ12aが設けられている。
救援側ケーブル11のコネクタ11aは救援車両EV1の充電ポートを介して強電側バッテリに接続され、電欠側ケーブル12のコネクタ12aは電欠車両EV2の充電ポートを介して強電側バッテリに接続される。救援車両EV1は、例えば電欠車両EV2のユーザの要請により、充電装置1を積載して電欠車両EV2の停車場所まで走行し、その後、充電装置1と、救援車両EV1および電欠車両EV2がそれぞれ救援側ケーブル11および電欠側ケーブル12で接続されて充電が行われる。
なお、救援側ケーブル11や電欠側ケーブル12の重量はそれぞれが0.5kg/m程度である。また、コネクタ11a,12aは、充電中に誤って外れることがないように電磁ロック機構を備えており、ロックの解除が後述するメインコントローラによって行われる。
【0011】
図1に示すように、充電装置1は直方体状であり、全体としてスーツケースのような形態をなしている。充電装置1は後述するDC/DCコンバータ等を備えていることから比較的重いため、ユーザが持ち運びやすいように、上面に把持部5,6が設けられ、底面にキャスタ7(4輪)が設けられている。把持部5は、図示のとおり高さを調整できることが好ましい。
充電装置1は、それぞれ開放面(図示せず)を備えた本体部2(第1部材の一例)と蓋部3(第2部材の一例)の開放面同士を開放面の周縁において連結部4で連結した構造を備えた、全体として直方体形状の筐体8を備える。
【0012】
図1に示すように、筐体8の高さをL1とし、救援側ケーブル11が延出する筐体面と電欠側ケーブル12が延出する筐体面がそれぞれ横向きとなるように筐体8を配置したときの、筐体8の横方向の長さをL2とし、奥行き方向の長さをL3としたときに、L3は、L1及びL2より小さいことが好ましい。一般に電気自動車のトランクルームは奥行きの長さが短いため、充電装置1の奥行きL3をL1及びL2よりも小さい形状とすることで、充電装置1のトランクルームへの搭載性を高めることができる。
なお、
図1に示すように、筐体8の高さL1とは、充電装置1を平坦面に置いたときの当該平坦面から筐体8の上面までの高さであり、キャスタ7による高さ分が含まれる。
【0013】
本体部2の両側面の貫通孔2a,2bからそれぞれ救援側ケーブル11および電欠側ケーブル12が延出している。救援側ケーブル11および電欠側ケーブル12がそれぞれ貫通孔2a,2bから筐体8の外部へ延出している部分の長さはそれぞれ異なるが、この点については後述する。 コネクタ42は、DC12V(弱電)入力用のコネクタであり、救援車両EV1のシガーソケットから延びる電源ケーブル13が接続される。
【0014】
連結部4において、救援側ケーブル11および電欠側ケーブル12が本体部2から延出している位置の近傍には、それぞれケーブル保持部401,402を設けることが好ましい。
図2に示すように、ケーブル保持部401は救援側ケーブル11を巻回するために設けられ、ケーブル保持部402は電欠側ケーブル12を巻回するために設けられる。ケーブル保持部401およびケーブル保持部402を設けることで、充電装置1の持ち運びが容易となる。なお、ケーブル保持部401,402は、
図1に示すように、使用しない場合には連結部4に収納できるように構成されていることが好ましい。
【0015】
重量が嵩むケーブルを保持するケーブル保持部401,402を連結部4に設け、かつ把持部6を連結部4に設けるために、連結部4は、本体部2および蓋部3よりも剛性が高いことが好ましい。例えば、本体部2と蓋部3の材質は、例えばポリカーボネート等のプラスチック製とし、連結部4を例えばアルミニウム等の金属製とする。また、連結部4を本体部2および蓋部3と同様の素材で作製してもよいが、その場合には連結部4にリブ等を設けるか、あるいは本体部2および蓋部3より厚みを増やす等して、本体部2および蓋部3よりも剛性を高めることが好ましい。
【0016】
図1に示すように、充電装置の上面には、電源ボタン25、インジケータ26、開始ボタン34、停止ボタン35、救援側表示パネル37、および、電欠側表示パネル38が設置されている。
電源ボタン25は、充電装置1の電源をオンオフするためのボタンである。インジケータ26は、コネクタ42にDC12V(弱電)が入力されている場合に点灯するように構成されている。
開始ボタン34は充電を開始することを指示するためのボタンであり、停止ボタン35は充電を停止することを指示するためのボタンである。救援側表示パネル37は、救援側のシステムの状態(起動中または放電中)、救援車両EV1のバッテリの電圧およびSOCが表示される表示パネルである。電欠側表示パネル38は、充電側のシステムの状態(起動中または充電中)、電欠車両EV2のバッテリの電圧およびSOCが表示される表示パネルである。なお、各表示パネルには、充電電流を表示してもよい。
【0017】
(2)充電システムのシステム構成
次に、
図3を用いて、充電装置1を含む充電システムの構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る充電システムの構成を示すブロック図である。なお、
図3では、実線は強電側の電源線72を示し、二点鎖線は弱電側の電源線71を示している。
【0018】
救援車両EV1および電欠車両EV2はそれぞれ、弱電側バッテリと強電側バッテリを備えている。弱電側バッテリは、エアコンやカーナビゲーションシステム等の車内の電装品を駆動させるための二次電池である。一方、強電側バッテリは、主にモータを駆動する際の電力源として利用されるバッテリである。
【0019】
図3に示すように、充電装置1は、DC/DCコンバータ100と、放電側メインコントローラ51および充電側メインコントローラ52を含むメインコントローラ50と、コンバータ61、62とを備えている。
【0020】
充電装置1の充電回路は、DC/DCコンバータ100のトランス120により、放電側(1次側)と充電側(2次側)で分離される。トランス120のコイルを境界として、放電側の充電回路201は、トランス120の1次側のコイル、インバータ110、地絡検知回路63、強電側の電源線72、救援側ケーブル11、及び、救援車両EV1の充電ポート(救援側ケーブル11との接続口)を含む回路で形成される。充電側の充電回路202は、トランス120の2次側のコイル、整流回路130、平滑回路140、地絡検知回路64、強電側の電源線73、電欠側ケーブル12、及び、電欠車両EV2の充電ポート(電欠側ケーブル12の接続口)を含む回路で形成される。
【0021】
放電側メインコントローラ51は、放電側(救援側)の充電回路201を制御するためのコントローラである。充電側メインコントローラ52は、充電側(電欠側)の充電回路202を制御するためのコントローラである。放電側メインコントローラ51および充電側メインコントローラ52は、救援車両EV1の弱電側バッテリと電気的に接続されている。
本例では、制御シーケンスを簡素なものにするために、メインコントローラ50を放電側と充電側で分離して、それぞれの充電回路201,202を別々のコントローラで制御している。放電側メインコントローラ51と充電側メインコントローラ52は互いに信号の送受信を行っている。なお、放電側メインコントローラ51と充電側メインコントローラ52は一つのコントローラで構成してもよい。
【0022】
放電側メインコントローラ51は絶縁検知部53を有しており、充電側メインコントローラ52は絶縁検知部54を有している。絶縁検知部53は、地絡検知回路63の所定ノードの電圧変化から、放電側の充電回路201が絶縁されているか否かを判定している。絶縁検知部54は、地絡検知回路64の所定ノードの電圧変化から、充電側の充電回路202が絶縁されているか否かを判定している。
【0023】
放電側メインコントローラ51は、弱電側の電源線71に接続されている。充電側メインコントローラ52も同様に、弱電側の電源線71に接続されている。すなわち、放電側メインコントローラ51及び充電側メインコントローラ52を駆動するための電力は、弱電側の電源線71から取得している。
【0024】
電源ケーブル13は、弱電側の配線の一部である。電源ケーブル13の一端は、コネクタ42に接続されている。一方、電源ケーブル13の他端は、救援車両EV1のシガーソケットに接続されている。シガーソケットは、救援車両EV1に搭載されている弱電側バッテリ及び強電側バッテリのうち、弱電側のバッテリと電気的に接続されている。すなわち、電源ケーブル13をシガーソケットとコネクタ42との間に接続することで、救援車両EV1の弱電側バッテリの電力を出力可能な状態となる。なお、電源ケーブル13は、電欠車両EV2のシガーソケットに接続されてもよい。
【0025】
コンバータ61は、弱電側の電源線71からの入力電圧を昇圧して、放電側の充電回路201に出力するための変換回路である。コンバータ61は、弱電側の電源線71と、強電側の電源線72との間に接続されている。
【0026】
コンバータ62は、弱電側の電源線71からの入力電圧を昇圧して、充電側の充電回路202に出力するための変換回路である。コンバータ62は、弱電側の電源線71と、強電側の電源線73との間に接続されている。
【0027】
地絡検知回路63は、強電側の電源線72を含む、放電側の充電回路201の絶縁を検知するための回路であり、放電側の充電回路201内に形成されている。地絡検知回路64は、強電側の電源線73を含む、充電側の充電回路202の絶縁を検知するための回路であり、充電側の充電回路202内に形成されている。
【0028】
DC/DCコンバータ100は、救援側コネクタ31と充電側コネクタ32との間に接続され、強電側の電源線72、73に接続されている。なお、救援側コネクタ31と充電側コネクタ32は、本体部2の内部にあるため
図1には図示していない。
DC/DCコンバータ100は、救援車両EV1の強電側バッテリの電圧を変圧し、電欠車両EV2の強電側バッテリに出力するコンバータである。DC/DCコンバータ100の入力側に、地絡検知回路63が接続され、DC/DCコンバータ100の出力側に、地絡検知回路64が接続されている。
【0029】
DC/DCコンバータ100は、インバータ110と、トランス120と、整流回路130と、平滑回路140とを有している。
インバータ110は、複数のスイッチング素子をブリッジ状に接続した回路により構成される。そして、インバータ110は、メインコントローラ50からのスイッチング信号に基づいて、複数のスイッチング素子のオン、オフを切り替えることで、救援側コネクタから入力された直流電力を交流電力に変換して、トランス120に出力する。
トランス120は、放電側の充電回路201に含まれる1次側のコイルと、充電側の充電回路202に含まれる2次側のコイルとからなる。
整流回路130は、ブリッジ状に接続したダイオードにより構成されている。整流回路130は、トランス120の2次側コイルからの交流を整流して、平滑回路140に出力する。
平滑回路140は、LC回路で構成され、整流回路130の出力電圧を平滑する。
【0030】
(3)充電システムの充電動作
次に、本実施形態の充電装置1を含む充電システムの充電動作について説明する。
充電動作においては、放電側メインコントローラ51と救援車両EV1のバッテリコントローラ(図示せず)との間、および、充電側メインコントローラ52と電欠車両EV2のバッテリコントローラ(図示せず)の間でデータ通信が行われる。このデータ通信の通信プロトコルは限定するものではないが、例えばCAN(Controller Area Network)である。
【0031】
救援側ケーブル11、電欠側ケーブル12、及び電源ケーブル13が、充電装置1、救援車両EV1、及び電欠車両EV2に接続された状態で、ユーザが開始ボタン34を押すと、メインコントローラ50は、弱電側の電源線71を介して、救援車両EV1の弱電側バッテリの電圧が印加されて起動する。
【0032】
メインコントローラ50は先ず、放電側メインコントローラ51を起動させる。
放電側メインコントローラ51は、充電回路201内の強電側の電源に設けられたリレー(図示しない)をオフからオンにすることで、放電側の充電回路201を導通状態にする。この時点では、救援車両EV1の強電側バッテリから充電装置1への電力供給はない。
放電側メインコントローラ51は、絶縁検知部53によりコンバータ61を制御して、弱電側の電源線71から供給される電力(弱電圧)を昇圧し、強電側の電源線72に出力する。放電側の充電回路201には、コンバータ61から試験用の電圧(高圧)が印加される。
絶縁検知回路53は、試験用の電圧の印加中に、地絡検知回路63の所定のノードの電圧を検出することで、放電側の充電回路201の地絡、短絡の有無を検知する。放電側メインコントローラ51は、地絡、短絡を検知した場合には、絶縁が確保されていないと判断し、絶縁が確保されていない旨のメッセージを、救援側表示パネル37に表示する。
【0033】
次に、メインコントローラ50は、充電電流の最大値を設定するとともに、充電側メインコントローラ52を起動する。充電側メインコントローラ52は起動後に電欠側ケーブル12を介して電欠車両EV2との間で通信を行い、設定された充電電流の最大値を電欠車両EV2へ通知する。
充電側メインコントローラ52は、絶縁検知回路54によりコンバータ62を制御し、弱電側の電源線71の電圧を昇圧して、充電側の充電回路202に印加する。そして、絶縁検知部54は、地絡検知回路64の電圧を検出することで、充電側の充電回路202に地絡、短絡の有無を検知する。充電側メインコントローラ52は、地絡、短絡を検知した場合には、絶縁が確保されていないと判断し、絶縁が確保されていない旨のメッセージを、電欠側表示パネル38に表示する。
【0034】
充電回路201,202の絶縁が確認されると、放電側メインコントローラ51は、放電側のメインリレーをオンにして、救援車両EV1の強電側のバッテリの電力を、DC/DCコンバータ100に出力可能な状態にする。同様に、充電側メインコントローラ52は、充電側のメインリレーをオンにして、DC/DCコンバータ100からの電力を、電欠車両EV1の強電側バッテリに出力可能な状態にする。なお、メインリレーについて、
図2には図示していないが、放電側のメインリレーは、DC/DCコンバータ100の入力側と救援側コネクタ31との間に接続され、充電側のメインリレーは、DC/DCコンバータ100の出力側と電欠側コネクタ32との間に接続されている。
【0035】
救援車両EV1のバッテリコントローラは逐次、救援車両EV1のバッテリの電圧(救援車両BAT電圧)およびSOC(給電側SOC)をモニタし、救援車両BAT電圧および給電側SOCを放電側メインコントローラ51へ送信する。また、電欠車両EV2のバッテリコントローラは逐次、電欠車両EV2のバッテリの電圧(電欠車両BAT電圧)およびSOC(受電側SOC)をモニタし、電欠車両BAT電圧および受電側SOCを充電側メインコントローラ52へ送信する。
【0036】
メインコントローラ50は、それぞれのメインリレーをオンにした後、インバータ110のスイッチング素子を制御することでDC/DCコンバータ100の動作を開始させ、電欠車両EV2の強電側バッテリの充電を行う。
【0037】
充電中、電欠車両EV2のバッテリコントローラは、充電電流の指令値を充電側メインコントローラ52へ通知する。電欠車両EV2のバッテリコントローラは、充電電流の指令値を、S14で設定されて通知された充電電流の最大値以下となるように決定して通知する。
【0038】
充電を実行中、メインコントローラ50は、救援側表示パネル37に、救援車両EV1のバッテリコントローラから受信した救援車両BAT電圧および給電側SOCを表示するとともに、救援側のシステムの状態(放電中)を表示させる。また、メインコントローラ50は、電欠側表示パネル38に、電欠車両EV2のバッテリコントローラから受信した電欠車両BAT電圧および受電側SOCを表示するとともに、救援側のシステムの状態(充電中)を表示する。
【0039】
充電の実行によって、救援車両BAT電圧は充電開始前より低下していき、電欠車両BAT電圧は充電開始前よりも増加していく。受電側SOCが所定値(例えば90%)を超えるか、または、給電側SOCが所定値(例えば30%)より低下すると、メインコントローラ50は充電を終了する。
【0040】
(4)筐体内の好ましいレイアウト
次に、本実施形態の充電装置1の筐体内の好ましいレイアウトについて、
図4を参照して説明する。
図4は、
図2のA−A断面を概略的に示す図である。
図4に示すように、本実施形態の充電装置1の筐体8内は3層構造となっており、把持部5に近い順に、DC/DCコンバータ100およびコンバータ61,62が実装される基板101(第1層の一例)と、充電側基板152(第2層の一例)と、放電側基板151(第3層の一例)とが、積層されている。
放電側基板151(給電制御基板の一例)は、救援車両EV1(給電側の車両の一例)の強電側バッテリと接続されて放電側(給電側)の制御を行う放電側メインコントローラ51が実装されている基板である。充電側基板52(受電制御基板の一例)は、電欠車両EV2(受電車両の一例)側の強電側バッテリと接続されて充電側(受電側)の制御を行う充電側メインコントローラ152が実装されている基板である。
DC/DCコンバータ100およびコンバータ61,62が実装される基板101は、トランスを含むことから放電側基板151,充電側基板152よりも重量が嵩む。そこで、基板101を把持部5に近い第1層とすることで、ユーザが把持部5を保持して充電装置1を移動させるときの負担を軽減させることができる。
【0041】
(5)救援側ケーブル、電欠側ケーブルの長さについて
本実施形態の充電装置1では、筐体8から延出している救援側ケーブル11の部分の長さである第1ケーブル長と、筐体8から延出している電欠側ケーブル12の部分の長さである第2ケーブル長とが異なる。本実施形態の充電装置1において、第1ケーブル長と第2ケーブル長を異ならせたのは、以下の理由による。
電欠車両EV2に対して充電作業を行う場所は他の車両が往来する道路上であることが多く、救援車両EV1は電欠車両EV2の前または後ろに停車して作業することになる。また、降雨時や道路上を他の車両が往来する等のために充電装置1を車両横の道路上に配置できない場合、充電装置1を救援車両EV1または電欠車両EV2のトランクルームに置いて充電作業を行うことが考えられる。さらに、電気自動車の充電ポートは、車両の前部または後部のいずれかであるが多いため、救援車両EV1と電欠車両EV2とが前後に停車し、かついずれかの車両のトランクルームに充電装置1を配置させた状態で、両車両の充電ポートにケーブルを接続しようとした場合に、充電装置1から救援車両EV1の充電ポートまでの救援側ケーブルと、充電装置1から電欠車両EV2の充電ポートまでの電欠側ケーブルとを同じ長さとすると、いずれかのケーブルに余剰分が生じ、充電装置1の重量の増加を伴う。これでは、救援に向かう際、充電機の搭載が大変であり、利便性を損なうことになる。また、余剰分のケーブルによりトランクルーム内のスペースを無駄に使用することになって、救援車両EV1または電欠車両EV2のユーザの利便性を損なう。そこで、本実施形態では、充電装置1の第1ケーブル長と第2ケーブル長を異ならせ、それによって電欠車両の前又は後ろにしか救援車両を停車できず降雨時や道路上を他の車両が往来する等のために充電装置1を車両横の道路上に配置できない場合であっても、電欠車両EV2に対して充電作業を行うための充電機の重量を軽減することができ利便性を向上させることができるようにする。また、充電装置1を配置する車両(救援車両EV1または電欠車両EV2)のトランクルーム内に占める充電装置1のスペースを小さくすることができるため、ユーザの利便性を向上させることができる。
また、第1ケーブル長と第2ケーブル長を異ならせることで、充電性能に影響を与えることなく(つまり、筐体8を小型化することなく)、小型の救援車両EV1のトランクルームへの充電装置1の積載性を高めることができる。
【0042】
図5は、道路上で、救援車両EV1に設置された充電装置1を用いて電欠車両EV2を充電する場合のケーブルの接続態様を示す。
図5の(a)は、救援車両EV1と電欠車両EV2の充電ポートが共に車両の前方にある場合に、救援車両EV1のトランクルームに設置された充電装置1を用いて充電を行うときの救援側ケーブル11と電欠側ケーブル12の接続態様を示している。
図5の(b)は、救援車両EV1と電欠車両EV2の充電ポートが共に車両の後方側部にある場合に、救援車両EV1のトランクルームに設置された充電装置1を用いて充電を行うときの救援側ケーブル11と電欠側ケーブル12の接続態様を示している。なお、いずれの場合も、救援車両EV1が前方にあり、電欠車両EV2が後方にある。
【0043】
図5において、第1ケーブル長は、充電装置1の本体部2の貫通孔2aから救援車両EV1の充電ポートEV1cまでの救援側ケーブル11の長さである。第2ケーブル長は、充電装置1の本体部2の貫通孔2bから電欠車両EV2の充電ポートEV2cまでの電欠側ケーブル12の長さである。
図5(a)は、救援車両EV1および電欠車両EV2がともに普通自動車サイズの車両である場合を想定している。
図5(a)の場合において、救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を4〜5mとし、車幅を1.5〜2mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は5.5〜7mであり、第2ケーブル長は2〜3m(つまり、車間距離と同じ)である。なお、第1ケーブル長は、車両の全長に車幅を加えたものとして算出した。従って、
図5(a)の接続態様では、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)の1.8〜3.5倍の長さがよい。
【0044】
一方、
図5(b)は、救援車両EV1および電欠車両EV2がともに軽自動車サイズの車両である場合を想定している。
図5(b)の場合において、救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を3.2〜3.5mとし、車幅を1.3〜1.5mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は1.3〜1.5m(つまり、車幅と同じ)であり、第2ケーブル長は6.5〜8mである。なお、第2ケーブル長は、車両の全長と車両の車幅と車間距離の和として算出した。従って、
図5(b)の接続態様では、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)の4.3〜6.1倍の長さがよい。
【0045】
図5(a),(b)で示したケーブルの接続態様は一例に過ぎず、その他にも様々な態様が想定されうる。そして、車両のサイズ、充電ポートの位置、救援車両EV1と電欠車両EV2のいずれが前方にあるか、あるいは、充電装置1を救援車両EV1と電欠車両EV2のいずれのトランクルールに配置するか等の様々なファクタによって、余剰部分がないようにした場合において、第1ケーブル長および第2ケーブルのうち長い方のケーブル長の、短い方のケーブル長に対する比が異なる。
図5(a),(b)に示した態様以外の好ましい比は以下の通りである。なお、いずれの場合も充電装置1は救援車両EV1のトランクルームにあることが想定されている。
【0046】
(i) 救援車両EV1と電欠車両EV2がいずれも普通自動車であり、充電ポートが車両前部にあり、救援車両EV1が電欠車両EV2の後方に停車する場合
救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を4〜5mとし、車幅を1.5〜2mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は5.5〜7mであり、第2ケーブル長は11.5〜15mである。なお、第1ケーブル長は、救援車両EV1の全長と、電欠車両EV2の全長と、車間距離と、車幅とを合計した値とした。また、第2ケーブル長は、電欠車両EV2の全長と車幅を合計した値とした。
従って、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)の1.6〜2.7倍の長さがよい。
【0047】
(ii) 救援車両EV1と電欠車両EV2がいずれも普通自動車であり、充電ポートが車両後方側部にあり、救援車両EV1が電欠車両EV2の前方に停車する場合
救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を4〜5mとし、車幅を1.5〜2mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は1.5〜2mであり、第2ケーブル長は6〜8mである。なお、第1ケーブル長は、救援車両EV1の車幅と同一長さとした。また、第2ケーブル長は、電欠車両EV2の全長と車間距離を合計した値とした。
従って、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)の3〜5.3倍の長さがよい。
【0048】
(iii) 救援車両EV1と電欠車両EV2がいずれも普通自動車であり、充電ポートが車両後方側部にあり、救援車両EV1が電欠車両EV2の後方に停車する場合
救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を4〜5mとし、車幅を1.5〜2mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は1.5〜2mであり、第2ケーブル長は7.5〜10mである。なお、第1ケーブル長は、救援車両EV1の車幅と同一長さとした。また、第2ケーブル長は、救援車両EV1の全長と車間距離と車幅を合計した値とした。
従って、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)の3.7〜6.6倍の長さがよい。
【0049】
(iv) 救援車両EV1と電欠車両EV2がいずれも軽自動車であり、充電ポートが車両前部にあり、救援車両EV1が電欠車両EV2の前方に停車する場合
救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を3.2〜3.5mとし、車幅を1.3〜1.5mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は4.5〜5mであり、第2ケーブル長は2〜3mである。なお、第1ケーブル長は、救援車両EV1の全長と車幅の合計とし、第2ケーブル長は、車間距離と同一とした。
従って、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)の1.5〜2.5倍の長さがよい。
【0050】
(v) 救援車両EV1と電欠車両EV2がいずれも軽自動車であり、充電ポートが車両前部にあり、救援車両EV1が電欠車両EV2の後方に停車する場合
救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を3.2〜3.5mとし、車幅を1.3〜1.5mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は4.5〜5mであり、第2ケーブル長は9.7〜11.5mである。なお、第1ケーブル長は、救援車両EV1の全長と車幅の合計とした。第2ケーブル長は、救援車両EV1と電欠車両EV2の2台分の全長と、車間距離と、1台分の車幅との合計とした。
従って、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)の1.9〜2.5倍の長さがよい。
【0051】
(vi) 救援車両EV1と電欠車両EV2がいずれも軽自動車であり、充電ポートが車両後方側部にあり、救援車両EV1が電欠車両EV2の後方に停車する場合
救援車両EV1および電欠車両EV2の全長を3.2〜3.5mとし、車幅を1.3〜1.5mとし、充電作業時の車間距離(つまり、作業スペース)を2〜3mとしたとき、第1ケーブル長は1.3〜1.5mであり、第2ケーブル長は6.5〜8mである。なお、第1ケーブル長は、救援車両EV1の車幅と同一とした。第2ケーブル長は、救援車両EV1の車幅と、全長と、車間距離とを合計した値とした。
従って、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長(この場合、第2ケーブル長)は、短い方のケーブル長(この場合、第1ケーブル長)の4.3〜6.1倍の長さがよい。
【0052】
図5(a),(b)および(i)〜(vi)の各々の場合を考慮すると、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長は、短い方のケーブル長の1.5〜6.6倍であることが好ましいことがわかる。ケーブル長をこのような比で設定することで、多くの電気自動車に適用可能な、ケーブルの余剰部分が少ない充電装置1を実現することができる。
なお、上述したいずれの場合も、充電装置1が救援車両EV1のトランクルームにあることを想定したが、充電装置1が電欠車両EV2のトランクルームに配置させた場合も同様に、第1ケーブル長と第2ケーブル長のうち長い方のケーブル長が短い方のケーブル長の1.5〜6.6倍の範囲にあることが好ましい。
【0053】
(6)変形例
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態および変形例に記載された複数の技術的事項は、適宜組合せ可能である。
【0054】
例えば、上述した実施形態の充電システムでは、救援側ケーブル11のコネクタ11aを救援車両EV1の充電ポートに接続する場合について説明した。つまり、本発明の「給電側の車両が有するバッテリ」の一例として、救援車両EV1の強電側のバッテリを例として説明したが、この例に限られない。救援車両EV1が有するバッテリであればよく、救援車両EV1のバッテリとは電気的に接続されていない独立したポータブル電源装置を使用し、当該電源装置に救援側ケーブル11のコネクタ11aを接続して電力を得るようにしてもよい。
【0055】
上述した実施形態の充電システムでは、救援側ケーブル11および電欠側ケーブル12がそれぞれ1本である場合について説明したが、各ケーブルは1本に限られない。各ケーブルは、充電装置1の本体部2の内部、あるいは充電装置の外部において、2以上のケーブルを連結して用いられてもよい。
【0056】
上述した実施形態では、ケーブル保持部401およびケーブル保持部402の両方を設ける場合について説明したが、必ずしも両方を設けなくてもよい。第1ケーブル長および第2ケーブル長のうち少なくとも長い方のケーブル長に対応するケーブルを保持する1つのケーブル保持部を設けるようにしてもよい。
【0057】
図4では、充電側基板152を第2層とし、放電側基板151を第3層とした例を示したが、放電側基板151を第2層とし、充電側基板152を第3層としてもよい。最も重量が嵩む基板101を第1層(つまり、把持部5に最も近い層)にすればよく、放電側基板151と充電側基板152はいずれも基板101より軽いため、いずれを第2層、第3層としてもよい。
また、上記実施形態では、救援車両の例として走行駆動用のバッテリを有する電気自動車で説明したが、走行駆動用のバッテリを有していなくてもポータブル蓄電池をトランクに搭載した車両でもよい。つまり給電側の車両が有しているバッテリによって電欠車両のバッテリを充電できれば良い。