特許第6571367号(P6571367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571367
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ホールプラグ
(51)【国際特許分類】
   F16J 13/14 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   F16J13/14
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-73101(P2015-73101)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191462(P2016-191462A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
(72)【発明者】
【氏名】正村 伸二
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−064120(JP,A)
【文献】 特開平06−263065(JP,A)
【文献】 特開2008−051314(JP,A)
【文献】 特開2014−114851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 12/00−13/24
B60R 16/00−17/02
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
H01B 17/56−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホールが設けられた板材に対し、該ホールを閉塞するように装着されるホールプラグにおいて、
前記ホールを通過可能な底壁部と、
前記底壁部の周縁に設けられて該周縁の全周に延在し、該底壁部よりも薄肉に形成された周壁部と、
前記周壁部における前記底壁部から離間する位置に設けられ、前記板材の第1面に弾性的に当接可能な第1シール部と、
前記周壁部における前記底壁部および第1シール部の間に設けられ、前記板材の第1面と反対の第2面に弾性的に当接可能な第2シール部と、
前記周壁部における前記第1シール部および第2シール部の間に位置するように形成され、該周壁部で囲まれた内側への該周壁部の変形を可能とする変形部とを備え
前記変形部は、前記第1シール部および第2シール部の間において、該第2シール部側の端に位置するよう前記周壁部に形成されると共に、
周壁部の壁厚は底壁部の壁厚よりも薄くて、かつ該周壁部が該底壁部に連なる部位は連続的に厚くなるよう形成されており、
前記変形部が形成された前記第2シール部側の端部分が、前記底壁部に連なる側および前記第1シール部に連なる側よりも、周壁部で囲まれた内側へ変形し得るよう該周壁部が構成されている
ことを特徴とするホールプラグ。
【請求項2】
前記第1シール部および第2シール部は、前記周壁部における該第1シール部が連なる部分および該第2シール部が連なる部分の間に位置する中間周壁と交差して該中間周壁の外側へ斜めに延出するように形成され、
前記第1シール部における前記板材の第1面に当接可能な面が、前記中間周壁の外周面に向くと共に、前記第2シール部における前記板材の第2面に当接可能な面は、前記中間周壁の外周面に向くよう構成され、
前記第1シール部の延出端部は、前記第2シール部の延出端部よりも前記周壁部から離れて位置している請求項記載のホールプラグ。
【請求項3】
前記第2シール部は、前記第1シール部と前記周壁部との間に画成された領域内に、該第2シール部の少なくとも延出端が延出した状態に形成されている請求項記載のホールプラグ。
【請求項4】
前記底壁部は、中央に位置する円形の第1底壁と、該第1底壁の周囲に位置する環状の第2底壁とを有し、これら第1底壁の周辺と第2底壁の周辺とは、環状の立壁により連接されている請求項1記載のホールプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホールが設けられた板材に対して該ホールを閉塞した状態で装着されるホールプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体におけるアンダーボディを構成する板材には、該板材の表裏面に開口する多数のホール(通孔)が設けられている。このホールは、車体の塗装作業時においては余剰塗料を排出する排出孔として利用される一方、塗装完了後においては各種付属部品を装着する装着孔やワイヤハーネスを挿通する挿通孔として一部が使用されるものである。ここで、装着孔や挿通孔として使用されないホールについては、自動車の使用期間中に水や塵埃等が該ホールを介して車体内へ進入するのを防止するため、該ホールを閉塞可能なホールプラグを板材に装着するようになっている。このようなホールプラグは、特許文献1および2に開示されている。
【0003】
前記ホールプラグは、弾性変形可能な合成樹脂を材質として対象とするホールの開口形状より一回り大きい外形形状に形成されて、弾性変形させながら当該ホールへ挿通させて板材に係止することで該板材に装着される。ここで、特許文献1のホールプラグは、円板状のプラグ中央部と、環状溝を有するプラグ外周部とを、略U形状をなす弾力付与部で連結した構造であり、該弾力付与部が変形することでホールへの挿入が許容されると共に、環状溝に隣接して形成された上リップおよび下リップが板材に夫々係止することで、該ホールを閉塞した状態で該板材に装着される。また、特許文献2のホールプラグは、円板状の頭部と、該頭部から立設されて屈曲部で弾性変形可能な脚部と、脚部の外周囲に設けられたフランジ部と、該脚部の外周面に設けられた係止部とを有し、脚部が屈曲部で変形することでホールへの挿入が許容されると共に、フランジ部および係止部が板材に夫々係止することで、該ホールを閉塞した状態で該板材に装着される。
【0004】
ここで、前記ホールプラグに要求される要件として、(1)板材に装着する際にホールに挿入し易いこと(挿入力が小さい)、(2)板材への装着状態において装着側と反対側から押されても装着側へ外れないこと(抜去力が大きい)、(3)ホールに挿入する際に装着側と反対側(板材の裏面側)へ外れて脱落しないこと(脱落力が大きい)、等がある。すなわち、挿入力が小さいことで、板材に対するホールプラグの装着作業が楽になり、作業者の負担軽減や装着作業効率の向上が可能である。また、抜去力が大きいことで、使用期間中にホールプラグが板材から脱落し難いので、使用期間中に亘ってホールの閉塞状態を維持し得る。そして、脱落力が大きいことで、装着作業に際してホールプラグが板材の装着側と反対側へ脱落し難くなり、ホールプラグを取り除く作業や再装着作業が発生しないので作業効率が低下するのを防止し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−116709号公報
【特許文献2】特開2012−72896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示のホールプラグは、弾力付与部が下リップを挟んで上リップの反対側に設けられているため、プラグ外周部は、該弾力付与部の変形に際して下リップよりも上リップ側が大きく変位するようになる。しかし、環状に形成された上リップは径方向内側へ変形し難いので、弾力付与部が設けられていても、プラグ外周部は径方向内側へ変位し難い。すなわち、下リップがホールを通過する際にプラグ外周部が径方向内側へ変位し難いので前述した挿入力が大きくなり、作業者の負担が増大する課題が解消されていない。また、前記特許文献2に開示のホールプラグも、屈曲部が係止部を挟んでフランジ部の反対側に設けられているため、脚部は、該屈曲部の変形に際して係止部よりもフランジ部側が大きく変位するようになる。しかし、環状に形成されたフランジ部は径方向内側へ変形し難いので、屈曲部が設けられていても、脚部は径方向内側へ変位し難い。すなわち、係止部がホールを通過する際に脚部が径方向内側へ変位し難いので前述した挿入力が大きくなり、作業者の負担が増大する課題が解消されていない。
【0007】
すなわち本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、板材への装着時にホールへ容易に挿入し得るよう構成したホールプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
ホールが設けられた板材に対し、該ホールを閉塞するように装着されるホールプラグにおいて、
前記ホールを通過可能な底壁部と、
前記底壁部の周縁に設けられて該周縁の全周に延在し、該底壁部よりも薄肉に形成された周壁部と、
前記周壁部における前記底壁部から離間する位置に設けられ、前記板材の第1面に弾性的に当接可能な第1シール部と、
前記周壁部における前記底壁部および第1シール部の間に設けられ、前記板材の第1面と反対の第2面に弾性的に当接可能な第2シール部と、
前記周壁部における前記第1シール部および第2シール部の間に位置するように形成され、該周壁部で囲まれた内側への該周壁部の変形を可能とする変形部とを備え
前記変形部は、前記第1シール部および第2シール部の間において、該第2シール部側の端に位置するよう前記周壁部に形成されると共に、
周壁部の壁厚は底壁部の壁厚よりも薄くて、かつ該周壁部が該底壁部に連なる部位は連続的に厚くなるよう形成されており、
前記変形部が形成された前記第2シール部側の端部分が、前記底壁部に連なる側および前記第1シール部に連なる側よりも、周壁部で囲まれた内側へ変形し得るよう該周壁部が構成されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、周壁部における底壁部に連なる側および第1シール部に連なる側が、該底壁部および第1シール部によって周壁部で囲まれた内側へ変形し難い構造であっても、周壁部において第1シール部と第2シール部との間に位置するように変形部が形成されていることで、該周壁部における該変形部の形成部分が周壁部で囲まれた内側へ容易に変形する。従って、第2シール部をホールに挿入してホールプラグを板材に装着する際に、該第2シール部がホールの開口縁によって外側から押されると、周壁部における変形部の形成部分が内側へ変形するので第2シール部がホールを通過し易くなる。これにより、ホールにホールプラグを挿入する際の挿入力が小さくて済み、板材への該ホールプラグの装着作業が楽になり、作業者の負担軽減や装着作業効率の向上が可能である。また、周壁部における変形部が形成された部分が内側へ変位し易くなっていることで、第2シール部が該変形部側へ移動し易くなるので、第2シール部がホールを通過することが容易となる。
【0010】
請求項に記載の発明では、前記第1シール部および第2シール部は、前記周壁部における該第1シール部が連なる部分および該第2シール部が連なる部分の間に位置する中間周壁と交差して該中間周壁の外側へ斜めに延出するように形成され、
前記第1シール部における前記板材の第1面に当接可能な面が、前記中間周壁の外周面に向くと共に、前記第2シール部における前記板材の第2面に当接可能な面は、前記中間周壁の外周面に向くよう構成され、
前記第1シール部の延出端部は、前記第2シール部の延出端部よりも前記周壁部から離れて位置していることを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、ホールプラグを板材に装着した際に、第1シール部が該板材の第1面に弾性的に当接すると共に、第2シール部が該板材の第2面に弾性的に当接するようになり、ホールを適切に塞ぐことができると共に、ホールプラグを安定的に保持させ得る。また、板材の第1面に対する第1シール部の係止範囲が広くなるので、第2シール部がホールを通過した状態で底壁部を更に押した際に第1シール部がホールを通過することが困難となり、板材における第2面側へ当該ホールプラグが脱落し難い。従って、第2面側へ脱落したホールプラグを取り除く作業や、ホールプラグの再装着作業が発生し難くなり、装着作業効率の低下を防止し得る。
【0011】
請求項に記載の発明では、前記第2シール部は、前記第1シール部と前記周壁部との間に画成された領域内に、該第2シール部の少なくとも延出端が延出した状態に形成されていることを要旨とする。
請求項に係る発明によれば、ホールプラグを厚みが異なる板材に装着した場合でも、第1シール部および第2シール部が板材の第1面および第2面に対し適切に当接するようになるので、該ホールプラグを厚みが異なる板材に対して安定的に装着し得ると共に、厚みが異なる板材であっても好適なシール状態が得られて、水や塵埃等がホールを通過することを防止し得る。
請求項4に記載の発明では、前記底壁部は、中央に位置する円形の第1底壁と、該第1底壁の周囲に位置する環状の第2底壁とを有し、これら第1底壁の周辺と第2底壁の周辺とは、環状の立壁により連接されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、底壁部は、前側から外力が付与されて押された際に、後側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形する一方、後側から外力が付与されて押された際に、前側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形する。また、板材に装着された状態において底壁部が後側から押された際に、該底壁部が前側へ凸状に弾性変形することで、該第2底壁における周壁部に連なる部位(周縁)が径方向外側へ変位するようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るホールプラグによれば、板材への装着時にホールへ容易に挿入し得るので、装着作業の負担軽減および作業効率向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ホールが開設された板材と、該ホールを閉塞した状態で該板材に装着される実施例に係るホールプラグとを、該ホールプラグを一部破断して示す斜視図である。
図2】実施例のホールプラグを、ホールが開設された板材から分離した状態で示す縦断面図である。
図3】実施例のホールプラグを、ホールを閉塞するように板材に装着した状態で示す縦断面図である。
図4】実施例のホールプラグを板材に装着する状態を示した部分説明断面図であって、(a)は、ホールプラグの底壁部を前側から押圧することで、該底壁部が変形すると共に外周壁部に設けた変形部が変形して第2シール部がホールを通過する状態を示し、(b)は、第2シール部がホールを通過して板材の裏面に当接すると共に第1シール部が板材の表面に当接して装着された状態を示している。
図5】板材に装着された実施例のホールプラグが後側から押圧された状態を示す部分説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るホールプラグにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。ここで、実施例では、図1図3に示すように、厚みHの板材10に開設された直径Dのホール12を閉塞した状態で該板材10に装着されるホールプラグ20を例示する。なお、以降の説明では、ホールプラグ20を板材10に装着した状態を基準として、該板材10の厚み方向(表裏方向)をホールプラグ20の前後方向とし、板材10の表側をホールプラグ20の「前側」、板材10の裏側をホールプラグ20の「後側」と指称する(図3参照)。また、ホールプラグ20の直径方向を「径方向」と指称することがある。
【実施例】
【0015】
(ホールプラグの概要)
実施例のホールプラグ20は、図1図3に示すように、板材10に開設されたホール12を通過可能な底壁部22と、この底壁部22の周縁に設けられて該周縁の全周に亘って延在した周壁部24とを備えている。また、ホールプラグ20は、周壁部24における底壁部22から離間する位置に設けられ、板材10の表面(第1面)10aに弾性的に当接可能な第1シール部26と、該周壁部24における底壁部22および第1シール部26の間に設けられ、板材10の裏面(第2面)10bに弾性的に当接可能な第2シール部28とを備えている。このようなホールプラグ20は、その後側を板材10の側に向けた状態で該板材10の表側からホール12へ押し込むことで底壁部22が該ホール12を通過し、第1シール部26が板材10の表面10aに当接すると共に、該ホール12を通過した第2シール部28が該板材10の裏面10bに当接することで、ホール12を閉塞するように該板材10に装着可能に構成されている(図3参照)。
【0016】
また、実施例のホールプラグ20は、図1図3に示すと共に後述するように、周壁部24における第1シール部26および第2シール部28の間に、該周壁部24の他の部分よりも変形し易く形成された変形部30が形成されている。これにより周壁部24は、底壁部22に連なる側(後縁側)および第1シール部26に連なる側(前縁側)よりも、変形部30の形成部分が、該変形部30の変形に伴って周壁部24で囲まれた内側(径方向内側)へ容易に変形するよう構成されている。
【0017】
前述のような構成された実施例のホールプラグ20は、底壁部22、周壁部24、第1シール部26、第2シール部28および変形部30が、インジェクション成形等により一体に形成された合成樹脂製の単一成形部材である。ここで、ホールプラグ20を形成する合成樹脂として、オレフィン系またはウレタン系などの熱可塑性エラストマ(Thermo plastic Elastomer;TPE)等が採用され、該ホールプラグ20は、適度の柔軟性および弾性を有すると共に、ショアA硬度がA60〜95となっている。
【0018】
(底壁部)
前記底壁部22は、図1図3に示すように、円形の板状をなしており、中央に位置する円形の第1底壁32と、該第1底壁32の周囲に位置する環状の第2底壁34とを有し、これら第1底壁32および第2底壁34は前後方向に段差をもって連設されている。すなわち、第1底壁32の周縁と第2底壁34の周縁とが、前後方向に延在する環状の立壁36により連設されており、第1底壁32が第2底壁34よりも前側に位置している。第1底壁32は、全体が略平坦な円板状をなしており、前面中央が後側へ僅かに凹んでいると共に裏面中央が僅かに後側へ突出している。一方、第2底壁34は、立壁36に連設した内縁側が平坦となっていると共に、周壁部24に連設した周縁側が、径方向外側にいくにつれて前側へ変向した湾曲状をなしている。
【0019】
前記底壁部22は、図2に示すように、第2底壁34の壁厚が最も大きく(厚く)、第1底壁32および立壁36は第2底壁34よりも薄く形成されている。また、底壁部22は、周壁部24よりも厚く形成されて、該周壁部24よりも剛性が高くなっている。そして、底壁部22は、図4(a)に示すように、前側から外力が付与されて押された際に、後側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形する一方、図5に示すように、後側から外力が付与されて押された際に、前側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形する。
【0020】
(周壁部)
前記周壁部24は、図1図3に示すように、底壁部22の第2底壁34の周縁から底壁部22の前面22aと交差する前側へ立設されると共に、該第2底壁34の周縁全周に亘って底壁部22を囲むように延在している。周壁部24は、底壁部22に連なる部位から第1シール部26が連なる部位に近づくにつれて、底壁部22の直径方向において外側へ徐々に変位するよう傾斜している。また、周壁部24は、底壁部22の前面22aよりも前側まで延出している。そして、周壁部24の壁厚W2は、底壁部22の壁厚W1よりも小さく(薄く)、かつ厚みが均一ではなく、底壁部22に連なる部位は、該底壁部22と段差なく連続的に連なるように厚く形成されている。また、周壁部24は、底壁部22に連なる部位と第2シール部28との間の部分が、該第2シール部28と第1シール部26との間の中間周壁25よりも厚く形成されており、底壁部22に連なる部位と第2シール部28との間の部分の剛性が、該中間周壁25の剛性よりも高くなっている。
【0021】
(底壁部および周壁部の変形について)
前記底壁部22は、図4(a)に示すように、前側から外力が付与されて前面22aが押された際に後側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形することで、立壁36はその後部が径方向外側へ変位するよう傾斜し、該立壁36に後縁に連なった該底壁部22の第2底壁34は、該立壁36側から周壁部24と連なる周縁に近づくにつれて前側へ変位した傾斜状に変形するようになっている。従って、ホールプラグ20は、底壁部22が後側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形すると、第2底壁34における周壁部24と連なる部位(周縁)が径方向内側へ変位し、これにより周壁部24における該第2底壁34に連なった側が、径方向内側へ引っ張られて変位するよう構成されている。
【0022】
また、前記底壁部22は、図5に示すように、後側から外力が付与されて押された際に前側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形することで、立壁36の後縁に連なった底壁部22の第2底壁34は、該立壁36側から周壁部24と連なる周縁に近づくにつれて後方へ変位した傾斜状に変形するようになっている。従って、ホールプラグ20は、底壁部22が前側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形すると、第2底壁34における周壁部24と連なる部位(周縁)が径方向外側へ変位し、これにより周壁部24における該第2底壁34に連なった側が、径方向外側へ押されて変位するよう構成されている。
【0023】
(第1シール部)
前記第1シール部26は、図1および図2に示すように、周壁部24の先端(前縁)から径方向外側かつ後方へ斜めに延出すると共に該周壁部24の全周に亘って延在している。第1シール部26は、周壁部24の先端から径方向外側にいくにつれて該周壁部24の先端よりも後側へ変位するよう傾斜した舌片状をなし、前後方向において該周壁部24とオーバーラップしている。すなわち、第1シール部26は、周壁部24に対して径方向外側に位置している。そして、第1シール部26は、延出端での外径寸法D1(図2参照)が、ホール12の直径Dよりも大径に設定されている。また、第1シール部26は、周壁部24に連なる基端部から延出端部26aまで厚みが略一定であり、延出端部26aが前後方向へ変位するように弾性変形が可能となっている。更に、第1シール部26の延出端部26aは、後面側が曲面状に形成されて延出端に向けて尖っている。これにより第1シール部26は、ホールプラグ20を板材10に装着した状態において、少なくとも延出端部26aが該板材10の表面10aに対してホール12を囲む環状に当接するようになっている(図3参照)。なお、第1シール部26は、板材10への装着前状態において、該第1シール部26の全体が底壁部22の前面22aよりも前側に位置している(図2参照)。
【0024】
(第2シール部)
前記第2シール部28は、図1および図2に示すように、周壁部24の外周面における第1シール部26から後側に離間した位置において、該外周面から第1シール部26の方向へ延出すると共に該外周面の全周に亘って延在している。第2シール部28は、周壁部24の外周面から径方向外側にいくにつれて前側へ傾斜状に延出しており、周壁部24の外側に位置している。そして、第2シール部28は、延出端での外径寸法D2(図2参照)が、ホール12の直径Dよりも大径に設定されている。また、第2シール部28は、周壁部24の外周面に連なる基端部が最も厚く、延出端にいくにつれて厚みが小さくなっており、延出端部28a側が前後方向へ変位するように弾性変形が可能となっている。これにより第2シール部28は、ホールプラグ20を板材10に装着した状態において、少なくとも延出端部28aが該板材10の裏面10bに対してホール12を囲む環状に当接するようになっている(図3参照)。なお、第2シール部28は、板材10への装着前状態において、該第2シール部28の全体が底壁部22の前面22aよりも前側に位置している(図2参照)。
【0025】
(第1シール部と第2シール部との関係)
実施例のホールプラグ20は、図2に示すように、前記第1シール部26および第2シール部28が、周壁部24における該第1シール部26が連なる部分および該第2シール部28が連なる部分の間に位置する中間周壁25と交差して、該中間周壁25の外側へ斜めに延出するように形成されている。すなわち、周壁部24と連なる部分から後方斜め外方へ延出する第1シール部26と、該周壁部24と連なる部分から前方斜め外方へ延出する第2シール部28とは、互いに交差する向きとなっている。そして、第1シール部26における板材10の表面10aに当接可能な当接面(面)26bが、中間周壁25の外周面に向くと共に、第2シール部28における板材10の裏面10bに当接可能な当接面(面)28bが、中間周壁25の外周面に向くよう構成されている。
【0026】
実施例のホールプラグ20は、図2に示すように、板材10への装着前状態(非装着状態)において、第1シール部26の延出端部26aと第2シール部28の延出端部28aとが、板材10の厚み方向である前後方向においてオーバーラップしている。すなわち、第2シール部28は、第1シール部26と周壁部24(中間周壁25)との間に画成された領域内に、該第2シール部28の少なくとも延出端が延出した状態に形成されている。従って、実施例のホールプラグ20は、図3に示す厚みHの板材10よりも薄い板材に装着した場合であっても、第1シール部26および第2シール部28の両方が弾性変形するようになり、該第1シール部26の面26bが該板材10の表面10aに当接すると共に該第2シール部28の面28bが該板材10の裏面10bに当接してシールが形成され得るよう構成されている。すなわち、実施例のホールプラグ20は、第1シール部26が板材10の表面10aに弾力的に当接すると共に第2シール部28が該板材10の裏面10bに弾力的に当接するので、板材10への装着後において安定して姿勢保持されると共に、板材10の表面10aおよび裏面10bの2面において夫々シールが形成されるので高いシール性が得られるようになっている。
【0027】
また、実施例のホールプラグ20は、図2に示すように、板材10への非装着状態において、第2シール部28の延出端部26aが、第1シール部26の延出端部26aよりも径方向内側に位置している。これにより、図3に示すように、ホールプラグ20がホール12を閉塞した状態で板材10に装着されると、第2シール部28がホール12の開口縁に隣接した位置で該板材10の裏面10bに当接するようになり、板材10に対してホールプラグ20の前後方向でのがたつきを抑止し得る。
【0028】
(変形部)
前記変形部30は、図1および図2に示すように、周壁部24において第1シール部26と第2シール部28との間の中間周壁25に位置して、該周壁部24の全周に亘って延在するように設けられている。この変形部30は、周壁部24において厚みが最小に形成された部分であり、該周壁部24は、該変形部30において最も剛性が低くなっている。また、変形部30は、周壁部24における第1シール部26と第2シール部28との間の中間周壁25において、該第2シール部28側の端に位置するように設けられて、これら変形部30と第2シール部28とは前後方向において重なっている(図2参照)。従って、図4(a)に示すように、ホールプラグ20を板材10に装着するために周壁部24をホール12に挿入する際に、ホール12より大径の第2シール部28が該ホール12の開口縁に接触して径方向内側へ押されると、変形部30が該第2シール部28に押されて周壁部24で囲まれた内側へ変位するようになる。これにより、周壁部24は、変形部30の形成部分が、該変形部30の変形に伴って径方向内側へ変位するよう弾性変形する。そして、周壁部24の外周面とホール12の開口縁との間に、第2シール部28が通過可能な隙間が画成され、該第2シール部28が該ホール12を通過することが許容される。
【0029】
前記周壁部24は、図2に示すように、第1シール部26に連なる側(前部分)24aと、第2シール部28の後側に位置して底壁部22に連なる側(後部分)24bとが、変形部30よりも厚く形成されており、前部分24aおよび後部分24bは、変形部30の形成部分よりも剛性が高くなっている。なお、周壁部24における第1シール部26と第2シール部28との間の中間周壁25は、変形部30から前側に向かうにつれて壁厚が徐々に大きくなっている。
【0030】
(ホールプラグの装着態様)
次に、前述のように構成された実施例のホールプラグ20を板材10に装着する態様について説明する。実施例のホールプラグ20は、図2に示すように、板材10の表側において、ホール12に対して当該ホールプラグ20の底壁部22の後側を対向させたもとで、該底壁部22をホール12に向けて押し込む。これにより、底壁部22の外縁および周壁部24の外周面がホール12の開口縁に先ず接触し、ホール12に対して該底壁部22が位置決めされる。そして、底壁部22がホール12内へ入ると、第2シール部28がホール12の開口縁に当接するようになる。
【0031】
第2シール部28がホール12の開口縁に当接した状態で底壁部22を更に後側へ押すと、図4(a)に示すように、該底壁部22が後側へ凸状に湾曲した形状に弾性変形し、第2底壁34における周壁部24が連なる部位が径方向内側へ変位する。これにより、周壁部24は、底壁部22に連なる側である後部分24bが径方向内側へ変位する。また、ホール12の開口縁に接触した第2シール部28が、径方向内側へ押されて当接面28bが中間周壁25に近づくよう変形すると共に、該第2シール部28により押された変形部30が変形することで、周壁部24が径方向内側へ変位する。従って、周壁部24は、変形部30の変形によって特に中間周壁25において第2シール部28が連なる部位が径方向内側へ移動するようになり、該第2シール部28がホール12を通過し易くなる。一方、第1シール部26の延出端部26aが板材10の表面10aに当接し、該第1シール部26が弾性変形するようになる。
【0032】
第1シール部26が弾性変形すると共に第2シール部28が完全にホール12を通過すると、図2および図4(b)に示すように、該第2シール部28は該ホール12の直径Dよりも大径に弾性変形して、延出端部26aが板材10の裏面10bに当接するようになる。また、第2シール部28が変形することで、変形部30も径方向外側へ変形する。そして、底壁部22に対する押圧を解除して該底壁部22が元の形状に戻ることで、周壁部24も径方向外側へ変形し、第1シール部26の当接面26bが板材10の表面10aに当接すると共に第2シール部28の当接面28bが該板材10の裏面10bに当接して、板材10に対してホールプラグ20が装着される。なお、実施例のホールプラグ20は、図3に示すように、ホール12を閉塞した状態で板材10に装着されると、底壁部22が、板材10の裏面10bよりも後側に位置するようになる。
【0033】
(挿入力について)
実施例のホールプラグ20は、前述すると共に図4(a)に示すように、該ホールプラグ20を板材10に装着してホール12を閉塞する際に、底壁部22の変形により、周壁部24における該底壁部22に連なる後部分24bが径方向内側へ変位すると共に、変形部30の変形によって周壁部24が径方向内側へ容易に変形するので、ホール12の直径Dよりも大径に形成された第2シール部28が該ホール12を通過し易くなる。これにより、ホール12にホールプラグ20を挿入する際の挿入力が小さくて済み、小さな挿入力でホールプラグ20を板材10へ装着することが可能である。そして、板材10へのホールプラグ20の装着作業が楽になるので、作業者の負担軽減や装着作業効率の向上が可能である。また、変形部30が周壁部24の中間周壁25を薄肉にした脆弱部であるので、ホールプラグ20を板材10に装着する際に、該変形部30が変形することで周壁部24が容易に変形可能となる。
【0034】
(脱落力について)
実施例のホールプラグ20は、前述すると共に図3および図4(b)に示すように、周壁部24からの第1シール部26の延出長さを、第2シール部28よりも大きく設定してあり、ホール12の開口縁から離れた位置において第1シール部26が板材10に係止するようになっている。従って、ホールプラグ20を板材10に装着するに際して、第2シール部28がホール12を通過した状態で更に底壁部22を強く押した場合に、該第1シール部26の略全体が板材10の表面10aに当接して係止される。また、周壁部24における第1シール部26が連なる前部分24aが、壁厚W2を厚くしてあることで径方向内側へ変形し難くなっており、これにより第1シール部26が径方向内側へ変位することが抑制されるから、該第1シール部26がホール12を通過することが困難となり、ホールプラグ20が板材10の裏面10b側(装着側と反対側)へ外れて脱落し難い。すなわち、実施例のホールプラグ20は、脱落力が大きくなっており、装着作業時にホールプラグ20が板材10の裏面10b側へ脱落しないので、裏面10b側へ脱落したホールプラグ20を取り除く作業や、ホールプラグ20の再装着作業を行う面倒な作業を行うことがなくなり、装着作業効率が低下するのを防止し得る。
【0035】
(抜去力について)
実施例のホールプラグ20は、前述すると共に図5に示すように、板材10に装着された状態において底壁部22が後側から押された際に、該底壁部22が前側へ凸状に弾性変形することで、該第2底壁34における周壁部24に連なる部位(周縁)が径方向外側へ変位するようになる。また、後側から押された底壁部22が前側へ変位することで、周壁部24における該底壁部22に連なる部位と、該周壁部24における第1シール部26が連なる部位との前後間隔が狭まるようになるから、周壁部24が径方向外側へ押されて変位するようになる。これにより、第2シール部28が底壁部22の第2底壁34により板材10の裏面10bに押し付けられ、該第2シール部28と板材10との係止力が高まることで、板材10に装着されたホールプラグ20が該板材10の表側へ外れ難い。しかも、第2シール部28は、周壁部24の外周面の周方向全周に亘って延在しているので、該第2シール部28と板材10との係止力が好適に高まる。従って、実施例のホールプラグ20は、抜去力が大きくなっており、板材10に装着した使用期間中に亘って該板材10から脱落しないように安定的に保持され、使用期間中に亘ってホール12の閉塞状態を適切に維持し得る。なお、実施例のホールプラグ20は、板材10へ装着した状態において、底壁部22が該板材10よりも後側に位置するように構成されていることから(図3)、該底壁部22が後側から押されて図5に示すように変形した際に、板材10の裏面10bに対する第2シール部28の係止力を高めることが可能となる。
【0036】
(シールについて)
また、実施例のホールプラグ20は、板材10への装着前状態において、第1シール部26と周壁部24との間に画成された領域内に、第2シール部28の少なくとも延出端が延出した状態に形成されているので、異なる厚みHの板材10に装着した際には、第1および第2シール部26,28が、該板材10の表面10aおよび裏面10bの夫々に対してホール12を囲む環状に当接するようになる。すなわち、実施例のホールプラグ20は、第1および第2シール部26,28により板材10の表面10aおよび裏面10bの2つの面において、ホール12を囲むようにシールするようになってシール効果が高められるので、水や塵埃等がホール12を通過して進入することを防止し得る。また、周壁部24の外周面がホール12の開口縁に当接することでシールする態様ではないため、該ホール12の直径Dにばらつきがあっても、好適にシール状態が形成される。
【0037】
(変更例)
本発明は、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
(1)周壁部において第1シール部と第2シール部との間に位置するよう設けられる変形部は、両シール部の間の中間周壁において、該第1シール部側の端に設けてもよいし、第1シール部と第2シール部との間の中間に設けてもよい。
(2)変形部は、周壁部における第1シール部と第2シール部との間の中間周壁において、両シール部の離間方向へ適宜間隔毎に複数設けてもよい。
(3)変形部は、周壁部における第1シール部と第2シール部との間において、周壁部の周方向へ断続的に設けてもよい。
(4)変形部は、周壁部における第1シール部と第2シール部との間の中間周壁において、該周壁部の外周面側または内周面側へ突出する屈曲部または湾曲部としたり、該周壁部の外周面側および内周面側へ交互に突出する蛇腹状に形成して、形状によって容易に変形し得るよう構成したものであってもよい。
(5)実施例では、真円形に開口したホールに対応する真円形状のホールプラグを例示したが、該ホールプラグの外形形状は、ホールの開口形状に合わせて楕円形や多角形に形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 板材,10a 表面(一方の面),10b 裏面(他方の面),12 ホール
22 底壁部,24 周壁部,25 中間周壁,26 第1シール部
26a 延出端部,26b 当接面(面),28 第2シール部,28a 延出端部
28b 当接面(面),30 変形部,32 第1底壁,34 第2底壁,36 立壁
図1
図2
図3
図4
図5