【0018】
カルボキシメチルセルロースの重合度[P]は、マーク・ホウィング・桜田の粘度式に基づいて測定した。すなわち、乾燥させたカルボキシメチルセルロースを0.1N−NaClを溶媒として、複数の濃度の希薄溶液を作成する。
η
sp/C :還元粘度(dl/g)
C :溶液濃度(g/dl)
還元粘度(η
sp/C)を溶液濃度(C)に対してプロットして近似直線を描き、得られた直線の切片(C→0)より極限粘度[η]を得る。
得られた極限粘度「η」から次式によりカルボキシメチルセルロースの
(粘度)平均分子量
Mvを算出する。
〔η〕=K・
Mvα
K、αは高分子に特有の定数であって、カルボキシメチルセルロースの場合、次の値を用いる。
K=3.85×10
−2
α=0.76
算出した平均分子量
Mvから次式によって重合度[P]を算出することができる。
P=
Mv/162
【実施例】
【0028】
カルボキシメチルセルロース(CMC)として、次のCMC1〜6を用いて、表1の配合で実施例及び比較例の蓄冷剤を作成した。
・CMC1:重合度710、日本製紙グループ製「サンローズF−30MC」、エーテル化度0.65−0.75
・CMC2:重合度1000、日本製紙グループ製「サンローズF−300HG」、エーテル化度0.85−0.95
・CMC3:重合度1000−1200、第一工業製薬社製「4H」、エーテル化度0.55−0.65
・CMC4:重合度1300−1400、第一工業製薬社製「HE−1500F」、エーテル化度1.15−1.45
・CMC5:重合度1400、日本製紙グループ製「サンローズF−300MC」、エーテル化度0.65−0.75
・CMC6:重合度2100、日本製紙グループ製「サンローズF−1400MC」、エーテル化度0.65−0.75
【0029】
実施例及び比較例の蓄冷剤に対して、25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)及び凝固速度(凍結速度)(m/s)を測定した。
蓄冷剤の凝固速度(凍結速度)は、蓄冷剤を試験液として
図1に示す装置を用いて測定した。
図1において、偏光板で囲まれた冷凍装置10内に、試験液11が収容された試験管13を配置する。冷凍装置10は、ブラインを冷却するタイプのヤマト株式会社「ネオクールBB301」であり、−30〜−80℃まで冷却することが可能である。試験管13は外径が18mmである。試験管13の試験液11には、純水15を収容した注射器17を挿入する。その状態で試験管13内の試験液11を−3.2℃の過冷却状態になるまで冷却する。次に注射器17に氷核19を投入し、試験液11の過冷却を解消する。氷核19には、ホシザキ電機製フレークアイスメーカー「FM−120F」により作成したクラッシュアイスを用いた。氷核の投入により凝固が伝播し、注射針18の先端で単結晶が試験液11に接触して試験液11内で氷結晶21が成長する。その氷結晶21の成長を、ビデオカメラ25で撮影する。使用したビデオカメラ25は、SONY製「HDR−CX535」である。ビデオカメラ25による氷結晶の撮影は、冷凍装置10の外側に配置した照明装置23によって注射針18の先端を照らしながら行う。撮影速度は、60fpsである。その後、ビデオの再生画像に映っている氷結晶21の大きさを試験管13の外径(18mm)と比較して0.1秒毎に計測し、0.1秒毎の氷結晶21の大きさの変化から結晶の成長速度を決定し、試験液11の凝固速度(凍結速度)とした。測定結果は表1に示す。
【0030】
表1においてエーテル化度が0.55〜0.65は「△」、0.65〜0.75は「〇」、0.85〜0.95は「◎」、1.15〜1.45は「◎」で示した。また25℃動粘度(mPa・s)が70未満は「×」70〜100未満は「△」、100〜1000未満は「〇」、1000以上は「◎」で示した。凝固速度(mm/s)が1.7未満は「×」、1.7〜2.0未満は「△」、2.0〜3.1未満は「〇」、3.1以上は「◎」で示した。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1〜3は、重合度2100、エーテル化度0.65〜0.75のCMC6を0.5〜0.3重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が607〜5020の範囲、凝固速度(mm/s)が2.30〜2.66の範囲であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0033】
実施例4〜6は、重合度1400、エーテル化度0.65〜0.75のCMC5を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が113〜3090、凝固速度(mm/s)が2.04〜2.99であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0034】
実施例7〜10は、重合度1300〜1400、エーテル化度1.15〜1.45のCMC4を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が162〜1424の範囲、凝固速度(mm/s)が2.63〜3.52の範囲であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0035】
実施例11〜14は、重合度1000、エーテル化度0.85〜0.95のCMC2を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が109〜898の範囲、凝固速度(mm/s)が2.44〜3.51の範囲であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0036】
実施例15〜16は、重合度1000〜1200、エーテル化度0.55〜0.65のCMC3を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。CMCの濃度が1重量%の実施例15は、25℃動粘度(mPa・s)が1221「◎」、凝固速度(mm/s)が1.92「△」であり、凝固速度が他の実施例よりも小であった。また、CMCの濃度が1重量%の実施例15は、25℃動粘度(mPa・s)が82「△」、凝固速度(mm/s)が2.79「〇」であり、動粘度が他の実施例よりも小であった。
【0037】
実施例1〜16のうち、カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜1500、エーテル化度が0.85〜1.5未満、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜0.6重量%の範囲にある実施例9、実施例10、実施例13、実施例14は、25℃動粘度(mPa・s)が109〜279「〇」、凝固速度(mm/s)が3.22〜3.52「◎」であり、凝固速度が純水よりも大であり、特に好ましい蓄冷剤である。
【0038】
比較例1は、純水からなる蓄冷剤であり、25℃動粘度(mPa・s)が1「×」、凝固速度(mm/s)が3.1「◎」であり、動粘度が小さく、流動性が高い。
【0039】
比較例2〜4は、重合度710、エーテル化度0.65〜0.75のCMC1を2〜0.5重量%含む蓄冷剤である。CMCの濃度が2重量%の比較例2は、25℃動粘度(mPa・s)が4108「◎」、凝固速度(mm/s)が1.48「×」であり、凝固速度が実施例の何れよりも小であった。CMCの濃度が1.5重量%の比較例3は、25℃動粘度(mPa・s)が537「〇」、凝固速度(mm/s)が1.65「×」であり、凝固速度が実施例の何れよりも小であった。CMCの濃度が0.5重量%の比較例4は、25℃動粘度(mPa・s)が32「×」、凝固速度(mm/s)が3.28「◎」であり、動粘度が実施例の何れよりも小であり、流動性が高い。
【0040】
比較例5は、重合度1400、エーテル化度0.65〜0.75のCMC5を0.2重量%含む蓄冷剤であり、測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が27「×」、凝固速度(mm/s)が3.19「◎」であり、動粘度が実施例の何れよりも小であり、流動性が高い。
比較例6は、重合度2100、エーテル化度0.65〜0.75のCMC6を0.2重量%含む蓄冷剤であり、測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が41「×」、凝固速度(mm/s)が3.15「◎」であり、動粘度が実施例の何れよりも小であり、流動性が高い。
【0041】
このように、本発明の蓄冷剤は、流動性が低く、かつ凍結速度が大きく、冷凍庫内で凍結させるのに必要な時間を短縮できる。しかも、放射線照射のような処理が不要で製造が容易である。