特許第6571371号(P6571371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6571371-蓄冷剤 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571371
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】蓄冷剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   C09K5/14 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-80781(P2015-80781)
(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公開番号】特開2016-199676(P2016-199676A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】大河 誠司
(72)【発明者】
【氏名】寳積 勉
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恵介
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 拓嗣
(72)【発明者】
【氏名】青山 佳嗣
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218054(JP,A)
【文献】 特開2003−129040(JP,A)
【文献】 特開2009−298955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とカルボキシメチルセルロースとを含む蓄冷剤において、
前記カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜2500、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜1.4重量%であることを特徴とする蓄冷剤。
【請求項2】
前記カルボキシメチルセルロースのエーテル化度が0.65〜1.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の蓄冷剤。
【請求項3】
前記カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜1500、エーテル化度が0.85〜1.5未満であることを特徴とする請求項2に記載の蓄冷剤。
【請求項4】
水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜0.6重量%であることを特徴とする請求項3に記載の蓄冷剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結速度の速い(大きい)蓄冷剤に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄冷剤が収容された蓄冷体は、食品の保冷等に多用されている。前記蓄冷体は、予め冷凍庫などに収容して蓄冷剤を冷凍させて使用される。
従来、蓄冷剤として主剤の水とゲル化剤とを含むものが使用されている。ゲル化剤は、主として常温時の粘性を高める(流動性を低くする)ものである。ゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)やアルコール等が使用されている。また、蓄冷剤に無機塩が添加されることがある。
【0003】
しかし、従来の蓄冷剤は、凍結速度が遅く、冷凍庫内での凍結に時間が長くかかる問題がある。なお、一般的にゲル化剤の濃度を小にすると凍結速度を大きく(速くする)ことはできるが、蓄冷剤の用途によっては、蓄冷剤の流動性が低い、あるいは流動性が殆ど無いものが求められることがあり、ゲル化剤を無添加にできないことがある。
【0004】
また、凍結に要する冷却時間を短くするため、水溶性カルボキシメチルセルロースペーストに放射線を照射することにより橋かけ反応を生じさせてゲル化させ、その後に乾燥、粉砕して食塩水に添加した蓄冷剤が提案されている。
しかし、放射線を照射させる方法は、蓄冷剤の製造が面倒な問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−268875号公報
【特許文献2】特開2007−238735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、流動性を低くすることができ、かつ凍結速度が大きく、冷凍庫内で凍結させるのに必要な時間を短縮でき、製造も容易な蓄冷剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、水とカルボキシメチルセルロースとを含む蓄冷剤において、前記カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜2500、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜1.4重量%であることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記カルボキシメチルセルロースのエーテル化度が0.65〜1.5未満であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2において、前記カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜1500、エーテル化度が0.85〜1.5未満であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3において、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜0.6重量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、カルボキシメチルセルロースを、重合度900〜2500とし、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度を0.3〜1.4重量%としたことにより、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を60〜10000mPa・s、凝固速度を1.7mm/s以上にできる。なお、純水について、25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)と過冷度−3.2℃の凝固速度を測定した結果は、25℃の動粘度が1mPa・s、凝固速度が3.1mm/sであった。
【0012】
請求項2の発明によれば、カルボキシメチルセルロースの重合度を900〜2500、エーテル化度を0.65〜1.5未満、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜1.4重量%としたことにより、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を100〜10000mPa・s、凝固速度を2.0mm/s以上にできる。
【0013】
請求項3の発明によれば、カルボキシメチルセルロースの重合度を900〜1500、エーテル化度を0.85〜1.5未満、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度を0.3〜1.4重量%としたことにより、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を100〜2000mPa・s、凝固速度を2.4mm/s以上にできる。
【0014】
請求項4の発明によれば、カルボキシメチルセルロースの重合度を900〜1500、エーテル化度を0.85〜1.5未満、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中の前記カルボキシメチルセルロースの濃度を0.3〜0.6重量%としたことにより、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を100〜300mPa・s、凝固速度を3.1mm/s以上にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】氷結晶の成長測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の蓄冷剤は、水とカルボキシメチルセルロースとを含み、さらに適宜無機塩が添加されたものである。
水は、主剤として使用されるものである。
カルボキシメチルセルロース(CMC)は、ゲル化剤として添加されるものである。カルボキシメチルセルロースに関して検討した結果、同濃度のカルボキシメチルセルロース水溶液は、カルボキシメチルセルロースの重合度が低いほど凍結速度が大であることが判明した。また、カルボキシメチルセルロースは、重合度が低くなると、カルボキシメチルセルロース水溶液の粘性が低下して蓄冷剤の流動性が増大するようになる。そこで、本発明では、蓄冷剤の凍結速度を大にし、かつ流動性を低く維持するため、カルボキシメチルセルロースの重合度を900〜2500とし、かつ水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度を0.3〜1.4重量%とした。
【0017】
カルボキシメチルセルロースを、重合度900〜2500とし、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度を0.3〜1.4重量%としたことにより、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を60〜10000mPa・s、凝固速度を1.7mm/s以上にできる。
【0018】
カルボキシメチルセルロースの重合度[P]は、マーク・ホウィング・桜田の粘度式に基づいて測定した。すなわち、乾燥させたカルボキシメチルセルロースを0.1N−NaClを溶媒として、複数の濃度の希薄溶液を作成する。
ηsp/C :還元粘度(dl/g)
C :溶液濃度(g/dl)
還元粘度(ηsp/C)を溶液濃度(C)に対してプロットして近似直線を描き、得られた直線の切片(C→0)より極限粘度[η]を得る。
得られた極限粘度「η」から次式によりカルボキシメチルセルロースの(粘度)平均分子量Mvを算出する。
〔η〕=K・Mvα
K、αは高分子に特有の定数であって、カルボキシメチルセルロースの場合、次の値を用いる。
K=3.85×10−2
α=0.76
算出した平均分子量Mvから次式によって重合度[P]を算出することができる。
P=Mv/162
【0019】
なお、重合度の異なるカルボキシメチルセルロースの製造は、(1)パルプを苛性ソーダ溶液に浸漬しアルカリセルロースを得て破砕し、その後モノクロール酢酸ソーダを添加するアルセル法、(2)モノクロール酢酸ソーダ溶液(又はモノハロ酢酸溶液等)に浸漬させたパルプを破砕撹拌させながら苛性ソーダを添加するモノクロ法(モノクロール法、モノハロ法)、(3)溶媒を用いる溶媒法によって行うことができる。
【0020】
カルボキシメチルセルロースのエーテル化度は0.65〜1.5未満が好ましい。エーテル化度は、セルロースが持つ水酸基をカルボキシメチル基で置換した平均値を表す値であり、次の方法で算出することができる。
【0021】
試料の0.5〜0.7gを精密に計り、それを濾紙に包んで磁性ルツボ中で灰化し、冷却後に500mLビーカーに移し、これに約250mLの水と、0.05モル/Lの硫酸35mLを加えて30分間煮沸する。
冷却後にフェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液で逆滴定し、次の式によってエーテル化度を算出する。
A=[(af−bf)/試料無水物(g)]−アルカリ度(または、+酸度)
エーテル化度=162×A/(10000−80A)
【0022】
A:試料1g中の結合アルカリに消費された0.05モル/L硫酸の量(mL)
a:0.05モル/L硫酸の使用量(mL)
f:0.05モル/L硫酸の力価
b:0.1モル/Lの水酸化カリウムの滴定量(mL)
:0.1モル/L水酸化カリウムの力価
162:グリコース(C12)−HOの分子量
80:CHCOONa−Hの分子量
【0023】
前記アルカリ度の測定及び算出は次のようにして行うことができる。約1gの試料(無水物)を300mLの三角フラスコにはかりとり、約200mLの水を加えて溶かす。これに0.05モル/Lの硫酸5mLを加え、10分間煮沸した後に冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.1モル/Lの水酸化カリウム水溶液で滴定する(滴定量SmL)。それと同時に空試験行い(適定量BmL)、次の式によってアルカリ度を算出する。
アルカリ度=(B−S)f/試料無水物(g)
f:0.1モル/L水酸化カリウムの力価
なお、(B−S)f値が負の値となるときには、アルカリ度を酸度と読み替える。
【0024】
カルボキシメチルセルロースの重合度を900〜1500、エーテル化度を0.85〜1.5未満、かつ水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度を0.3〜1.4重量%の組合せにすると、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を100〜2000mPa・s、凝固速度を2.4mm/s以上にできる。
【0025】
最も好ましい組合せは、カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜1500、エーテル化度が0.85〜1.5未満、かつ水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜0.6重量%である。この組合せにより、蓄冷剤の25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)を100〜300mPa・s、凝固速度を3.1mm/s以上にできるようになり、蓄冷剤の流動性増大を抑え、かつ蓄冷剤の凝固速度を純水の場合よりも大にできる。
【0026】
適宜添加される無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を挙げることができる。無機塩は、一種類に限られず、複数種類を添加してもよい。
【0027】
本発明の蓄冷剤は、プラスチック袋やケース等に収納されて蓄冷体を形成し、使用に際しては、予め蓄冷体を冷凍庫に収容して蓄冷剤を凍結させて保冷に使用される。
【実施例】
【0028】
カルボキシメチルセルロース(CMC)として、次のCMC1〜6を用いて、表1の配合で実施例及び比較例の蓄冷剤を作成した。
・CMC1:重合度710、日本製紙グループ製「サンローズF−30MC」、エーテル化度0.65−0.75
・CMC2:重合度1000、日本製紙グループ製「サンローズF−300HG」、エーテル化度0.85−0.95
・CMC3:重合度1000−1200、第一工業製薬社製「4H」、エーテル化度0.55−0.65
・CMC4:重合度1300−1400、第一工業製薬社製「HE−1500F」、エーテル化度1.15−1.45
・CMC5:重合度1400、日本製紙グループ製「サンローズF−300MC」、エーテル化度0.65−0.75
・CMC6:重合度2100、日本製紙グループ製「サンローズF−1400MC」、エーテル化度0.65−0.75
【0029】
実施例及び比較例の蓄冷剤に対して、25℃の動粘度(JIS K2283に準拠)及び凝固速度(凍結速度)(m/s)を測定した。
蓄冷剤の凝固速度(凍結速度)は、蓄冷剤を試験液として図1に示す装置を用いて測定した。図1において、偏光板で囲まれた冷凍装置10内に、試験液11が収容された試験管13を配置する。冷凍装置10は、ブラインを冷却するタイプのヤマト株式会社「ネオクールBB301」であり、−30〜−80℃まで冷却することが可能である。試験管13は外径が18mmである。試験管13の試験液11には、純水15を収容した注射器17を挿入する。その状態で試験管13内の試験液11を−3.2℃の過冷却状態になるまで冷却する。次に注射器17に氷核19を投入し、試験液11の過冷却を解消する。氷核19には、ホシザキ電機製フレークアイスメーカー「FM−120F」により作成したクラッシュアイスを用いた。氷核の投入により凝固が伝播し、注射針18の先端で単結晶が試験液11に接触して試験液11内で氷結晶21が成長する。その氷結晶21の成長を、ビデオカメラ25で撮影する。使用したビデオカメラ25は、SONY製「HDR−CX535」である。ビデオカメラ25による氷結晶の撮影は、冷凍装置10の外側に配置した照明装置23によって注射針18の先端を照らしながら行う。撮影速度は、60fpsである。その後、ビデオの再生画像に映っている氷結晶21の大きさを試験管13の外径(18mm)と比較して0.1秒毎に計測し、0.1秒毎の氷結晶21の大きさの変化から結晶の成長速度を決定し、試験液11の凝固速度(凍結速度)とした。測定結果は表1に示す。
【0030】
表1においてエーテル化度が0.55〜0.65は「△」、0.65〜0.75は「〇」、0.85〜0.95は「◎」、1.15〜1.45は「◎」で示した。また25℃動粘度(mPa・s)が70未満は「×」70〜100未満は「△」、100〜1000未満は「〇」、1000以上は「◎」で示した。凝固速度(mm/s)が1.7未満は「×」、1.7〜2.0未満は「△」、2.0〜3.1未満は「〇」、3.1以上は「◎」で示した。
【0031】
【表1】
【0032】
実施例1〜3は、重合度2100、エーテル化度0.65〜0.75のCMC6を0.5〜0.3重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が607〜5020の範囲、凝固速度(mm/s)が2.30〜2.66の範囲であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0033】
実施例4〜6は、重合度1400、エーテル化度0.65〜0.75のCMC5を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が113〜3090、凝固速度(mm/s)が2.04〜2.99であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0034】
実施例7〜10は、重合度1300〜1400、エーテル化度1.15〜1.45のCMC4を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が162〜1424の範囲、凝固速度(mm/s)が2.63〜3.52の範囲であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0035】
実施例11〜14は、重合度1000、エーテル化度0.85〜0.95のCMC2を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が109〜898の範囲、凝固速度(mm/s)が2.44〜3.51の範囲であり、流動性が低く、凝固速度が大であった。
【0036】
実施例15〜16は、重合度1000〜1200、エーテル化度0.55〜0.65のCMC3を1.0〜0.4重量%含む蓄冷剤である。CMCの濃度が1重量%の実施例15は、25℃動粘度(mPa・s)が1221「◎」、凝固速度(mm/s)が1.92「△」であり、凝固速度が他の実施例よりも小であった。また、CMCの濃度が1重量%の実施例15は、25℃動粘度(mPa・s)が82「△」、凝固速度(mm/s)が2.79「〇」であり、動粘度が他の実施例よりも小であった。
【0037】
実施例1〜16のうち、カルボキシメチルセルロースの重合度が900〜1500、エーテル化度が0.85〜1.5未満、水とカルボキシメチルセルロースの合計100重量%中のカルボキシメチルセルロースの濃度が0.3〜0.6重量%の範囲にある実施例9、実施例10、実施例13、実施例14は、25℃動粘度(mPa・s)が109〜279「〇」、凝固速度(mm/s)が3.22〜3.52「◎」であり、凝固速度が純水よりも大であり、特に好ましい蓄冷剤である。
【0038】
比較例1は、純水からなる蓄冷剤であり、25℃動粘度(mPa・s)が1「×」、凝固速度(mm/s)が3.1「◎」であり、動粘度が小さく、流動性が高い。
【0039】
比較例2〜4は、重合度710、エーテル化度0.65〜0.75のCMC1を2〜0.5重量%含む蓄冷剤である。CMCの濃度が2重量%の比較例2は、25℃動粘度(mPa・s)が4108「◎」、凝固速度(mm/s)が1.48「×」であり、凝固速度が実施例の何れよりも小であった。CMCの濃度が1.5重量%の比較例3は、25℃動粘度(mPa・s)が537「〇」、凝固速度(mm/s)が1.65「×」であり、凝固速度が実施例の何れよりも小であった。CMCの濃度が0.5重量%の比較例4は、25℃動粘度(mPa・s)が32「×」、凝固速度(mm/s)が3.28「◎」であり、動粘度が実施例の何れよりも小であり、流動性が高い。
【0040】
比較例5は、重合度1400、エーテル化度0.65〜0.75のCMC5を0.2重量%含む蓄冷剤であり、測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が27「×」、凝固速度(mm/s)が3.19「◎」であり、動粘度が実施例の何れよりも小であり、流動性が高い。
比較例6は、重合度2100、エーテル化度0.65〜0.75のCMC6を0.2重量%含む蓄冷剤であり、測定結果は、25℃動粘度(mPa・s)が41「×」、凝固速度(mm/s)が3.15「◎」であり、動粘度が実施例の何れよりも小であり、流動性が高い。
【0041】
このように、本発明の蓄冷剤は、流動性が低く、かつ凍結速度が大きく、冷凍庫内で凍結させるのに必要な時間を短縮できる。しかも、放射線照射のような処理が不要で製造が容易である。
【符号の説明】
【0042】
11 試験液
13 試験管
15 純水
17 注射器
19 氷核
23 証明装置
25 ビデオカメラ
図1