【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年1月30日新規性を喪失した発明に係る製品を公開した場所:特種東海製紙株式会社第一会議室(東京都中央区八重洲2−4−1常和八重洲ビル6階)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
意匠紙は、本の表紙、見返し、商業美術印刷、パッケージ、包装材料、建材など多方面にわたり使用されている。近年、ユーザーニーズの多様化などによって、意匠紙には手触りなどの触感を高めることが要求されている。これら感覚的な紙の品位を表す言葉として「風合い」という言葉が多用される。紙の風合いは、紙の軽さ、手触りなどの触感的な感覚を総合して評価される。触感に関わる指標として、人が物に触れた時に感じる冷温感(熱移動)が知られており、これは初期熱流束最大値として数値化される。この初期熱流束最大値はQmaxとも呼ばれ、数値が小さいほど暖かく感じ、大きいほど冷たく感じる特性である。
【0003】
Qmaxに着目した技術に関し、例えば特許文献1には、肌着に使用される繊維製品としての生地の片面のQmaxを120W/m
2・℃以上、好ましくは120W/m
2・℃以上190W/m
2・℃以下とすることによって、該生地に接触した瞬間にひんやり爽やかに感じ取ることが可能となり好ましい旨記載されている。また特許文献2には、ウエットティシュ用の保湿不織布において、そのQmaxを0.08〜0.30〔J/cm
2/sec〕とすることにより、滑らかさ、しなやかさ、しっとり感が十分に得られる旨記載されている。また、特許文献2の〔0024〕には、保湿不織布に要求される特性に応じてQmaxを適宜調節することも記載されており、保湿不織布に柔らかさ、サラッとした滑らかな肌触りの良さを求める場合にはQmaxを0.09〜0.115〔J/cm
2/sec〕とし、保湿不織布にしっとり感や肌への保湿効果を求める場合にはQmaxを0.115〜0.20〔J/cm
2/sec〕とすることが記載されている。
【0004】
Qmaxは、特許文献1及び2の記載の如き布のみならず、紙にも適用されている。例えば特許文献3には、エンボス加工されたクレープ紙製品において、そのQmaxを0.17〔J/cm
2/sec〕以下に設定することが記載されている。特許文献3によれば、特許文献3記載のクレープ紙製品は、Qmaxが斯かる範囲にあることにより、保湿成分を含有して水分が多いにもかかわらず、不快な冷たさを感じることが無いとされている。尚、特許文献3記載のクレープ紙製品は、トイレットペーパー、ティシュペーパー等の衛生紙として主に拭き取りに使用される紙であり、印刷適性は特に考慮されていない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の意匠紙は、初期熱流束最大値(Qmax)が0.300〜0.377W/cm
2である。意匠紙のQmaxが斯かる特定範囲にあることにより、柔らかさ、ふんわり感、温かみのある触感が得られる。本発明の意匠紙のQmaxは、好ましくは0.310〜0.377W/cm
2、さらに好ましくは0.320〜0.377W/cm
2である。
【0010】
初期熱流束最大値(Qmax)は公知の方法によって測定できる。Qmaxの測定は、温度センサーの付いた金属板等の熱板に熱を蓄えて該熱板の温度を測定対象より高温に設定しておき、該熱板を測定対象の表面に接触させ、その接触直後に該熱板に蓄えられた熱量が低温側の測定対象に移動する際の熱流束のピーク値を測定することによって実施される。Qmaxの数値が小さいほど測定対象が暖かく感じられ、Qmaxの数値が大きいほど測定対象が冷たく感じられる。Qmaxの測定は、市販の測定装置、具体的には例えばカトーテック株式会社製の「KES−F7 サーモラボII型 精密迅速熱物性測定装置」又は「FR−07 フィンガーロボットサーモラボ」を用いて、下記方法で行うことができる。
【0011】
<初期熱流束最大値(Qmax)の測定方法>
測定対象(意匠紙)を室温23℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、斯かる環境下で前記カトーテック社製KES−F7又はFR−07を用い、カトーテック社製の測定マニュアルに従って測定対象のQmaxを測定する。例えばKES−F7を用いる場合には、測定対象と接触させる前記熱板として、面積9cm
2、質量9.79gの純銅板を用い、該銅板の初期温度を33℃(測定対象の表面温度より10℃高い温度)、該銅板の測定対象への接触圧を0.981kPaとして、測定対象の表面(意匠紙の片面)に該銅版を接触させ、接触後0.2秒経過後の熱流束のピーク値を測定する。この測定を測定対象面につき3回行い、それら複数の測定値の平均値を、当該測定対象面のQmaxとする。尚、前記の「接触後0.2秒経過」は、手指が物に触れてからその冷温感を感じるのに要する時間を考慮したものである。FR−07を用いた測定方法も、KES−F7を用いた前記測定方法に準じて行うことができる。但し、FR−07を用いた測定方法は、測定者がFR−07を手で把持してその接触子を測定対象に押し付けて行うため、測定対象への接触圧は測定者による任意の押圧力となる。本明細書に記載したQmaxの数値は、特に断らない限り、FR−07を用いた測定方法に基づくものである。
【0012】
本発明の意匠紙の好ましい一実施形態として、原紙と、該原紙の片面に形成された塗工層とを有する特定塗工紙が挙げられる。この特定塗工紙は、その塗工層の表面でのQmaxが前記の通り0.300〜0.377W/cm
2の範囲にあり、塗工層の無い普通紙と比べて印刷適性が向上すると共に塗工層表面のしっとり感が付与され、塗工層表面のしっとり感が加わることによって、塗工層表面の触感が一層向上したものとなり得る。塗工層の形成により特定塗工紙(意匠紙)にしっとり感が付与される理由は、塗工層の形成に起因する紙全体の通気性の低下により、塗工層表面に触れている手指の皮膚の不感蒸泄による蒸発水分が、該皮膚と紙該塗工層表面との間に滞留しやすくなるためであると推察される。以下、この特定塗工紙について説明する。
【0013】
前記特定塗工紙を構成する原紙としては、基本的に、塗工層を塗設可能なシートであれば使用可能であり、上質紙、中質紙、板紙、和紙等のパルプを主体とする紙の他に、合成紙、不織布、樹脂製フィルム、合成繊維紙等を用いることもできるが、塗工層表面でのQmaxを前記特定範囲にする観点から、パルプを主体とする紙が好ましい。原紙に配合されるパルプの種類は特に限定されず、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ(GP)等の木材パルプ;麻、竹、藁、ケナフ、三椏、楮、木綿等の非木材パルプ;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
前記特定塗工紙を構成する原紙の密度は、塗工層表面でのQmaxに大きな影響を及ぼす要素である。一般に、紙の風合いは、紙の軽さ、手触りなどの触感的な感覚を総合して評価され、本発明で追求する「柔らかさ、ふんわり感、温かみのある触感」を実現するためには、紙の密度は低い方が良く、凹凸が適当に感じられるほうが良い。しかしながら、紙の密度が低すぎると、重量感の低下に起因して品位、高級感が損なわれるおそれがあり、さらには印刷等の加工適性が低下するおそれもある。これらを総合的に考慮し、塗工層表面でのQmaxを前記特定範囲に確実に設定する観点から、原紙の密度は、好ましくは0.55〜0.67g/cm
3、さらに好ましくは0.57〜0.67g/cm
3である。ここでいう原紙の密度は、JIS P8118に準じて測定される密度である。
【0015】
前記特定塗工紙を構成する原紙の密度を前記範囲内とする観点から、原紙に含まれるパルプのフリーネス(CSF)は、好ましくは280〜500ml、さらに好ましくは330〜450mlである。フリーネスとは、JIS P8121に規定されるパルプの濾水度試験方法のうち、カナダ標準形によって得られる値である。フリーネスの調整は、パルプの叩解の程度を適宜調整することで調整可能である。
【0016】
前記特定塗工紙を構成する原紙には、パルプ以外に必要に応じて、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、クレー、タルク、シリカ、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、プラスチックピグメント等の填料あるいはこれらの複合体;澱粉、ポリアクリルアミド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤又は定着剤又は耐水化剤;ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレンアクリル樹脂等のサイズ剤、濾水歩留り向上剤、硫酸バンド等の定着剤、染料、蛍光増白剤、消泡剤、スライムコントロール剤等の1種又は2種以上が含有されていても良い。
【0017】
前記特定塗工紙を構成する原紙の抄紙条件は特に限定されず、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の公知の抄紙機を、目的に応じて適宜選択して使用できる。また、低密度で風合いが優れた原紙を得るためにはキャレンダーを不使用であることが好ましい。また必要に応じて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、塗工層形成前の原紙にエンボス加工を施しても良く、その場合のエンボス加工の方式は特に制限されず、例えば一旦原紙を抄造してから、模様を彫刻したロール間で押圧賦型するドライエンボス法や、円網抄紙機のウェットパート又は長網抄紙機のダンディロールで賦型するウォーターマーク法、プレスパートで賦型するプレスマーク法、プレスパートの後で賦型するウェットエンボス法等のいずれの方式でも良い。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ抄紙等のいずれの方式でも使用できる。原紙の坪量は特に限定されないが、好ましくは50〜300g/m
2である。
【0018】
本発明において原紙として好ましく用いられるものの一例として、「パルプと、焼成カオリン及び/又はシリカとを含んで構成され、該パルプの70質量%以上、好ましくは80質量%以上がユーカリを原料とする漂白クラフトパルプである原紙」(以下、特定原紙ともいう)が挙げられる。斯かる特定原紙を用いることで、塗工層表面でのQmaxを前記特定範囲により確実に設定することが可能となる。
【0019】
前記特定原紙のパルプ原料となるユーカリとしては、例えば、E.camaldulensis、E.citriodora、E.deglupta、E.globulus、E.grandis、E.maculata、E.punctata、E.saligna、E.terelicornis、E.urophylla、あるいはこれらの交雑種等を用いることができる。前記特定原紙の主成分である、ユーカリを原料とする漂白クラフトパルプは、これらのユーカリを用いて公知のクラフト蒸解法、パルプ漂白法によって製造することができる。
【0020】
また、前記特定原紙中には、焼成カオリン及びシリカの両方が含有されていても良く、どちらか一方のみが含有されていても良い。前記特定原紙中における焼成カオリン及びシリカの合計含有量は、該特定原紙の全質量に対して、好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7〜13質量%である。焼成カオリンは、天然に産するカオリンを高熱処理(例えばキルンなどを用いて800℃程度で加熱処理)することにより、カオリンの結晶構造中に存在する結晶水を放出させたものであり、結晶構造が崩壊して非晶質な構造を有している。またシリカとしては、合成非晶質シリカが好ましく用いられる。合成非晶質シリカは、乾式法によって製造されるものと、湿式法によって製造されるものとに大別され、前者には乾式シリカがあり、後者には湿式シリカ、シリカゲル、コロイダルシリカがある。焼成カオリンの一次平均粒径及びシリカの二次平均粒径は、それぞれ1〜30μmであることが好ましい。焼成カオリンの一次平均粒径、シリカの二次平均粒径が小さすぎると、十分な低密度効果が得られず、焼成カオリンの一次平均粒径、シリカの二次平均粒径が大きすぎると、塗工層表面の平滑性が著しく悪化し印刷均一性が低下する。
【0021】
また、前記特定塗工紙を構成する塗工層としては、印刷適性の向上等を目的として紙の表面に塗工により形成可能なものを特に制限なく用いることができる。塗工層を形成する方法は特に制限されず、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の接触塗工方式;カーテンコーター、スプレーコーター、スロットダイコーター等の非接触塗工方式が挙げられる。これらの塗工方式の中でも特に好ましいのは、原紙に物理的に接触せずに塗工液を供給する非接触塗工方式であり、とりわけカーテンコーターを用いて塗工層を形成するのが好ましい。カーテンコーターは、塗工液をカーテン状に流下させてカーテン塗工膜を形成させ、そのカーテン塗工膜に原紙を通すことにより原紙上に塗工層を設ける塗工装置であり、原紙の被塗工面の凹凸に追従した輪郭塗工ができるという特徴を有する。密度が前記範囲にあるような低密度で適度な凹凸がある原紙上に、非接触塗工方式、特にカーテンコーターを用いて塗工層を形成することにより、原紙の凹凸同様に適度な凹凸をもった塗工層が得られ、その結果、紙と皮膚との接触面積が少なくなり、塗工層表面でのQmaxを前記特定範囲により確実に設定することが可能となる。非接触塗工方式の塗工装置によって原紙に塗工される塗工液の固形分濃度は、通常30〜70質量%である。
【0022】
即ち、本発明の意匠紙の一実施形態である前記特定塗工紙の好ましい具体例として、JIS P8118に準じて測定される原紙の密度が0.55〜0.67g/cm
3であり、且つ塗工層が非接触塗工方式、より好ましくはカーテンコーターにより形成されたものが挙げられる。
【0023】
前記特定塗工紙を構成する塗工層は、通常、填料及び接着剤を含有する。塗工層用填料としては
、カオリン
、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウ
ムの無機顔料;プラスチックピグメント等の有機顔料等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。軽質炭酸カルシウムはカルサイト、アラゴナイトのいずれでも良く、また形状についても針状、柱状、紡錘状、球状、立方形状、ロゼッタ型のいずれでも良い。これらの塗工層用填料の中でも、特に炭酸カルシウムは、安価で且つ白色度が高いため、本発明で好ましく用いられる。塗工層中における填料の含有量は特に限定されるものではないが、塗工層の全質量に対して固形分換算で、好ましくは10〜95質量%の範囲で適宜用いることができる。
【0024】
また、塗工層用接着剤としては、この種の塗工紙の塗工層に通常含有される水分散性又は水溶性接着剤を特に制限なく用いることができ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水分散性接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体ラテックス等のアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性した重合体又は共重合体ラテックス等が挙げられる。水溶性接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、陽性澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類が挙げられる。塗工層中における接着剤の含有量は特に限定されるものではないが、塗工層の全ての填料100質量部に対して固形分換算で、好ましくは5〜50質量部の範囲で適宜用いることができる。
【0025】
前記特定塗工紙における塗工層には、填料及び接着剤以外の他の成分、例えば、この種の塗工層に通常含有される塗工適性を向上させるための各種薬剤を含有させることができる。特に、カーテンコーター等の非接触塗工方式の塗工装置によって形成される塗工層は、界面活性剤を含有することが好ましい。非接触塗工方式の塗工装置により形成された塗工層に界面活性剤が含有されているということは、該塗工装置で塗工する塗工液に界面活性剤が含有されているということであるところ、それにより塗工液の動的表面張力が低下するため、例えばカーテンコーターを用いて塗工液を原紙に塗工した場合においてカーテン塗工膜がより一層安定する。特に、凹凸のある原紙への塗工においては、塗工液のレベリング性が一層高められ、原紙の凹凸に追従した輪郭塗工ができる。従って、塗工層が界面活性剤を含有していることにより、塗工層表面のしっとり感をより一層向上させることが可能となる。
【0026】
塗工層に含有可能な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れでも良いが、特に、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤は、塗工液との相溶性が良いため、本発明で好ましく用いられる。塗工層中における界面活性剤の含有量は、塗工層の全質量に対して固形分換算で、好ましくは0.03〜0.30質量%、さらに好ましくは0.05〜0.20質量%である。塗工層中における界面活性剤の含有量が少なすぎると、所定の効果が十分に奏されず、逆に多すぎると、塗工液の原紙への浸透性が高くなりすぎる結果、塗工紙の印刷均一性が低下するおそれがある。
【0027】
本発明の意匠紙は、初期熱流束最大値が前記特定範囲にあれば良く、塗工層を有していなくても良い。また、本発明の意匠紙が前記特定塗工紙の如き塗工層を有する場合、その塗工層は、原紙の片面のみに形成されていても良く、両面それぞれに形成されていても良く、また、単層構造でも良く、二層以上が積層された多層構造でも良い。原紙の片面側についての塗工層の坪量は、該塗工層が単層構造か多層構造かを問わずに該塗工層全体の坪量として固形分換算で、好ましくは5〜20g/m
2、さらに好ましくは7〜16g/m
2である。
【0028】
本発明の意匠紙は、その独特の風合いを活かして種々の用途に適用可能であり、例えば、印刷用紙、包装紙等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0030】
〔実施例1〕
パルプとして、ユーカリを原料とする漂白クラフトパルプ100質量%を使用し、ダブルディスクリファイナーでカナディアンスタンダードフリーネスによる叩解度が380mlの原料パルプスラリーを調製した。この原料パルプスラリーに、焼成カオリン(BASF社製、アンシレックス93)7質量%、湿式シリカ(グレース社製、サイロイド74X4500)5質量%、ロジンサイズ剤を固形分濃度で0.2質量%添加して原料スラリーを調製し(焼成カオリン、湿式シリカ、ロジンサイズ剤の前記添加量は何れも対パルプ質量当たりの添加量)、この原料スラリーを常法に従って湿式抄紙して、密度0.60g/cm
3、坪量100g/m
2の原紙を得た。
また別途、固形分濃度45質量%の塗工液を調製した。填料として軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP221GS、奥多摩工業社製)50質量部及び重質炭酸カルシウム(商品名:FMT−OP2A、ファイマテック社製)50質量部を含有し、接着剤としてリン酸エステル化デンプン(商品名:MS#4600、日本食品加工社製)5質量部及びスチレンーメチルメタクリレートーブタジエン共重合体ラテックス(商品名:PA3803、日本エイアンドエル社製)15質量部、界面活性剤(商品名:SURFYNOL PSA336、AIR PRODUCTS社製)0.10質量部を含有する塗工液を調製した。
そして、カーテンコーターを用いて前記原紙の両面それぞれに前記塗工液を塗工して塗工層を形成し、原紙の両面それぞれに単層構造の塗工層を有する塗工紙を得た。塗工量は、原紙の両面側で互いに同じであり、それぞれ固形分換算で10g/m
2であった。
【0031】
〔実施例2〕
実施例1において、非接触塗工方式の塗工装置であるカーテンコーターに変えて、接触塗工方式の塗工装置であるエアナイフコーターを用いて塗工層を形成した以外は実施例1と同様にして、原紙の両面それぞれに塗工量10g/m
2の単層構造の塗工層を有する塗工紙を得た。
【0032】
〔比較例1〕
実施例1において、原紙中における湿式シリカの含有量を15質量%とした以外は実施例1と同様にして、原紙の両面それぞれに塗工量10g/m
2の単層構造の塗工層を有する塗工紙を得た。
【0033】
〔比較例2〕
実施例1において、原紙中における湿式シリカの含有量を12質量%とし、且つ塗工前の原紙の全体をキャレンダーにより平滑化した以外は実施例1と同様にして、原紙の両面それぞれに塗工量10g/m
2の単層構造の塗工層を有する塗工紙を得た。
【0034】
〔比較例3〕
実施例1において、塗工前の原紙の全体をキャレンダーにより平滑化した以外は実施例1と同様にして、原紙の両面それぞれに塗工量10g/m
2の単層構造の塗工層を有する塗工紙を得た。
【0035】
〔評価試験〕
実施例及び比較例の塗工紙(意匠紙)について、前記方法により塗工層の表面でのQmaxを測定すると共に、下記方法により触感及び印刷適性(印刷強度)をそれぞれ評価した。
【0036】
〔触感の評価方法〕
評価対象の塗工紙の表面(塗工層表面)を10名のパネラーに手指で直接触ってもらい、下記評価基準により評価してもらった。その評価結果(10名のパネラーの平均点)を下記表1に示す。
(触感の評価基準:4点以上が合格)
5点:柔らかさ、ふんわり感、温かみが十分にあり、極めて良好。
4点:柔らかさ、ふんわり感、温かみがあり、良好。
3点:柔らかさ、ふんわり感、温かみがほとんどなく、不可。
2点:柔らかさ、ふんわり感、温かみがなく、不良。
1点:柔らかさ、ふんわり感、温かみが全くなく、極めて不良。
【0037】
〔印刷適性の評価方法〕
評価対象の塗工紙10,000枚それぞれの塗工層表面に対し、オフセット枚葉印刷機を用いて印刷速度8,000枚/時で4色印刷を行った後、ブランケットの汚れ状態を目視観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
(印刷適性の評価基準:◎及び○が合格)
◎:ブランケット汚れが全く見られず、極めて良好。
○:ブランケット汚れがほとんど見られず、良好。
△:ブランケット汚れが見られ、不良。
×:ブランケット汚れが非常に目立ち、不良。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示す通り、Qmaxが0.300〜0.377W/cm
2の特定範囲内にある各実施例の塗工紙は、Qmaxが斯かる特定範囲内にない各比較例に比して、触感及び印刷適性の両特性がより高いレベルで両立されている。このことから、1)塗工紙の塗工層表面でのQmaxに着目することによって塗工紙の触感及び印刷適性の両方を評価できること、並びに2)印刷適性が良好で且つ手指で触れたときに柔らかさ、ふんわり感、温かみが感じられる特有の触感を有する塗工紙(意匠紙)を得るためには、塗工層表面でのQmaxを各実施例と同程度(0.300〜0.377W/cm
2)に調整することが有効であることがわかる。
【0040】
比較例1及び3のQmaxが前記特定範囲内にない理由は、原紙の密度が0.55〜0.67g/cm
3の特定範囲から外れていることに起因するものと推察される。
比較例3における原紙の密度が前記特定範囲よりも高い理由は、キャレンダーによる平滑化処理のためである。
一方、比較例1における原紙の密度が前記特定範囲よりも低い理由は、原紙中の特定の填料の含有量の影響によるものと推察される。即ち、各実施例における原紙は、焼成カオリン及びシリカの合計含有量が12質量%(=焼成カオリン7質量%+湿式シリカ5質量%)であるのに対し、比較例1における原紙は、該合計含有量が22質量%(=焼成カオリン7質量%+湿式シリカ15質量%)であり、これに起因して各実施例における原紙よりも嵩高で低密度である。このことから、塗工層表面でのQmaxを前記特定範囲内に設定するためには、原紙中における焼成カオリン及びシリカの合計含有量は、前記の通り7〜13質量%程度が好ましいことがわかる。
【0041】
比較例2は、原紙の密度が前記特定範囲内にあるにもかかわらず、Qmaxが前記特定範囲内にない。その理由は、原紙のキャレンダーによる平滑化処理によって、Qmaxの測定対象面である塗工層表面の平滑性が高まったためと推察される。そうすると、比較例3の結果も加味して、塗工層表面でのQmaxを前記特定範囲内に設定するためには、原紙にキャレンダー等の平滑化処理を施さない方が良いことがわかる。
尚、比較例2は、原紙中の焼成カオリン及びシリカの合計含有量が19質量%(=焼成カオリン7質量%+湿式シリカ12質量%)と比較的多いために、そのままでは原紙の密度が低すぎることになることから、キャレンダー処理によって原紙の密度を高める方向に調整したものである。