特許第6571380号(P6571380)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571380
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/30 20170101AFI20190826BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20190826BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20190826BHJP
【FI】
   B29C64/30
   B29C64/165
   B33Y30/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-94588(P2015-94588)
(22)【出願日】2015年5月7日
(65)【公開番号】特開2016-210061(P2016-210061A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 文良
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−503342(JP,A)
【文献】 特表2008−513252(JP,A)
【文献】 特開2001−334582(JP,A)
【文献】 特開2015−196379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形槽に形成された粉末材料よりなる粉末層に吐出ヘッドからバインダーを吐出することにより前記粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
前記造形槽の領域以外の位置にテストパターンを形成するためのテストパターン形成部を設け、
前記吐出ヘッドから前記テストパターン形成部へバインダーを吐出してテストパターンを形成し、
前記造形槽は所定の方向に移動自在に配置されており、
前記テストパターン形成部は前記造形槽と一体的に移動する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
造形槽に形成された粉末材料よりなる粉末層に吐出ヘッドからバインダーを吐出することにより前記粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
前記造形槽の領域以外の位置にテストパターンを形成するためのテストパターン形成部を設け、
前記吐出ヘッドから前記テストパターン形成部へバインダーを吐出してテストパターンを形成し、
前記造形槽と前記テストパターン形成部とは固定系部材に配設された
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
前記テストパターン形成部は、
上面が平坦状に形成された台部と、
前記台部と所定の間隙を開けて前記台部上に配置される板状体よりなるメディアガイドと
を有して構成され、
前記メディアガイドは前記台部の前記上面の縁部に対応する領域を除く領域を切り欠いて形成した窓部を有し、
前記間隙にテストパターンを形成するメディアを配置した
ことを特徴とする三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関し、さらに詳細には、粉体を原料として三次元造形物を作製する三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元造形物を作製する手法として、石膏パウダー(石膏粉末)や樹脂パウダー(樹脂粉末)などの粉体を原料として三次元造形物を作製する粉末固着積層方式(バインダージェッティング方式)が知られている。
【0003】
この粉末固着積層方式による三次元造形装置とは、インクジェットヘッドから液体結合剤であるバインダーを各種の粉末に噴射し、当該粉末を一層ずつ固めて三次元造形物を作製するというものである。
【0004】
より詳細には、粉末固着積層方式による三次元造形装置では、まず、三次元造形物を造形する造形槽に粉末材料を敷き詰めて所定の厚さの粉末層を形成する。
【0005】
次に、この粉末層に対して、三次元造形物の断面形状の画像データに基づいて、吐出ヘッド(インクジェットヘッド)から粉末材料を硬化するバインダーを吐出して、粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成する。
【0006】
その後、断面形状が形成された粉末層上に所定の厚さの新たな粉末層を形成し、この粉末層に、形成した断面形状の次の断面形状を表す画像データに基づいて、吐出ヘッドからバインダーを吐出し、当該新たな粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成する。
【0007】
そして、こうした処理を繰り返し行い、全ての断面形状を表す画像データに基づく断面形状を順次形成することで、三次元造形物を作製することとなる。
【0008】
ここで、上記した粉末固着積層方式による三次元造形装置としては、従来より以下に示すような二つのタイプの三次元造形装置が知られている。
【0009】
即ち、第1のタイプの三次元造形装置100は、例えば、図1に示すように、固定系部材である基台部101にXYZ直交座標系におけるY軸方向に沿って延長して配設された固定系のYレール102上をY軸方向に往復移動可能な吐出ヘッド104と、基台部101にXYZ直交座標系におけるX軸方向に沿って延長して配設されたXレール106上をX軸方向に往復移動可能であるとともに底面がZ軸方向に昇降可能な造形槽108と、Xレール106上をX軸方向に往復移動可能に造形槽108に隣接して配置されるとともに底面がZ軸方向に昇降可能であって造形槽108へ供給する粉末材料を貯留した貯留槽110と、基台部101上に立ち上がり形成された一対のローラー支持部111により支持されて貯留槽110から造形槽108へ粉末材料を供給するとともに造形槽108へ供給された粉末材料を造形槽108内で敷き詰めて所定の厚さの粉末層を形成するためのローラー112とを有して構成されている。
【0010】
なお、造形槽108と貯留槽110との位置関係は、貯留槽110に対してX軸方向後方側に造形槽108が配置されている。
【0011】
以上の構成において、この三次元造形装置100においては、図1に示す初期状態から、貯留槽110の内部に粉末材料を貯留した状態で底面を上昇させることにより、貯留槽110の内部に貯留された粉末材料を所定量だけ上昇させる。
【0012】
次に、Xレール106上に配置された貯留槽110と造形槽108とを一体的にX軸方向の後方側から前方側に移動することにより、ローラー112が貯留槽110上を相対的にX軸方向の前方側から後方側に移動することになり、これにより貯留槽110より上昇された所定量の粉末材料は、造形槽108に供給される。
【0013】
さらに、Xレール106上に配置された貯留槽110と造形槽108とを一体的にX軸方向の後方側から前方側に移動することにより、ローラー112が造形槽108上を相対的にX軸方向の前方側から後方側に移動することになり、造形槽108へ供給された粉末材料は造形槽108内に敷き詰められて所定の厚さの粉末層が形成される。なお、この際に、造形槽108の底面は、予め設定された位置まで上昇するように制御される。
【0014】
上記のようにして造形槽108内に粉末層を形成した後に、Xレール106上に配置された造形槽108をX軸方向の前方側から後方側に移動して、吐出ヘッド104の下方の所定の位置に配置する。
【0015】
それから、三次元造形物の断面形状の画像データに基づいて、Xレール106上に配置された造形槽108をX軸方向の前方側から後方側に移動するとともに吐出ヘッド104をY軸方向に移動しながら、造形槽108に形成された粉末層に対して吐出ヘッド104から粉末材料を硬化するバインダーを吐出する。このバインダーの吐出が終了すると、Xレール106上に配置された貯留槽110と造形槽108とをX軸方向の後方側から前方側へ移動して、図1に示す初期状態に復帰させる。
【0016】
これにより、粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成し、この処理を繰り返し行って、全ての断面形状を表す画像データに基づく断面形状を順次形成することで、三次元造形物を作製する。
【0017】
なお、上記した第1のタイプの三次元造形装置のように、造形槽がX軸方向へ移動し、かつ、吐出ヘッドがY軸方向に移動する三次元造形装置は、一般に、造形ステージ前後移動式と称される。
【0018】
次に、図2を参照しながら第2のタイプの三次元造形装置について説明するが、本明細書および図面においては、それぞれ同一または相当する構成についてはそれぞれ同一の符号で示すことにより、その構成ならびに作用の詳細な説明は適宜に省略する。
【0019】
第2のタイプの三次元造形装置200は、XYZ直交座標系におけるY軸方向に沿って延長して配設されるとともに基台部101にX軸方向に沿って延長して配設されたXレール202上をX軸方向に往復移動可能とされたYレール204を備え、このYレール204上にY軸方向に往復移動可能に吐出ヘッド104が設けられ、かつ、Yレール204におけるZ軸方向で吐出ヘッド104と重ならない位置にローラー112が配設されている点において、第1のタイプの三次元造形装置100と異なる。
【0020】
また、造形槽108と貯留槽110とは隣接して固定系部材である基台部101に固定されていて、造形槽108と貯留槽110とが基台部101上をX軸方向には移動できないように配設されているとともに、両者の位置関係が貯留槽110に対してX軸方向前方側に造形槽108を配置した点においても、第1のタイプの三次元造形装置100と異なる。
【0021】
以上の構成において、この三次元造形装置200においては、図2に示す初期状態から、貯留槽110の内部に粉末材料を貯留した状態で底面を上昇させることにより、貯留槽110の内部に貯留された粉末材料を所定量だけ上昇させる。
【0022】
次に、Xレール202上に配置されたYレール204をX軸方向の後方側から前方側に移動することにより、ローラー112が貯留槽110上をX軸方向の後方側から前方側に移動することになり、これにより貯留槽110より上昇された所定量の粉末材料は、造形槽108に供給される。
【0023】
さらに、Xレール202上に配置されたYレール204をX軸方向の後方側から前方側に移動することにより、ローラー112が造形槽108上をX軸方向の後方側から前方側に移動することになり、造形槽108へ供給された粉末材料は造形槽108内に敷き詰められて所定の厚さの粉末層が形成される。なお、この際に、造形槽108の底面は、予め設定された位置まで上昇するように制御される。
【0024】
上記のようにして造形槽108内に粉末層を形成した後に、Xレール202上に配置されたYレール204をX軸方向に移動して、吐出ヘッド104の下方の所定の位置に造形槽108が配置されるようにする。
【0025】
それから、三次元造形物の断面形状の画像データに基づいて、Yレール204をX軸方向に移動するとともに吐出ヘッド104をY軸方向に移動しながら、造形槽108に形成された粉末層に対して吐出ヘッド104から粉末材料を硬化するバインダーを吐出する。このバインダーの吐出が終了すると、Yレール204をX軸方向の後方側へ移動して、図2に示す初期状態に復帰させる。
【0026】
これにより、粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成し、この処理を繰り返し行って、全ての断面形状を表す画像データに基づく断面形状を順次形成することで、三次元造形物を作製する。
【0027】
なお、上記した第2のタイプの三次元造形装置のように、造形槽を移動させることなく、造形槽に対して吐出ヘッドがXY軸方向へ相対的に移動する三次元造形装置は、一般に、ガントリー式と称される。
【0028】
ところで、従来の上記したいずれのタイプの三次元造形装置においても、吐出ヘッドのノズルの目詰まりの有無の確認や吐出ヘッドの位置合わせを行うためには、造形槽内に形成された粉末層に対して吐出ヘッドから粉末材料を硬化するバインダーを吐出してテストパターンを形成していた。このため、以下に説明するような種々の問題点が指摘されていた。
【0029】
問題点1:テストパターンを形成するために造形槽内に粉末層を形成する必要があるため、当該粉末層を形成するための余分な作業時間を要する。
【0030】
問題点2:テストパターンを形成した粉末層は除去する必要があるため、テストパターン形成のための粉末材料が無駄になる。
【0031】
問題点3:複数のテストパターンを形成したい場合には、上記した問題点1と問題点2とが繰り返されるため、作業時間と粉末材料の無駄が著しいものとなる。
【0032】
上記した種々の問題点に鑑みて、造形槽に粉末層を形成するのではなく、造形槽に別途にテストパターン形成用の用紙(本明細書においては、「テストパターン形成用の用紙」を「テストパターン形成用紙」と適宜に称する。)を配置してテストパターンを形成する手法も提案されているが、造形槽から粉末材料を除去してテストパターン形成用紙を固定するのに作業時間を要するという新たな問題点を招来するものであった。
【0033】
なお、平らな粉末層の上にテストパターン形成用紙をそのまま配置すると、当該テストパターン形成用紙が浮いてしまって当該テストパターン形成用紙がジャムするリスクが高くなるとともに、粉末層の上から当該テストパターン形成用紙を取り除く際に粉末層の平坦性が損なわれるリスクが高くなるという問題点があった。
【0034】
また、従来の上記したいずれのタイプの三次元造形装置においても、三次元造形物の作製中においては、吐出ヘッドのノズルの目詰まりを解消するためにノズルのクリーニングを行ったときにノズルの目詰まりが解消されたか否かを確認する手立てがなく、ノズルの目詰まりが解消されたか否かを確認を行うことなしに実際の造形を続けざるを得ないという問題点があった。
【0035】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業時間や粉末材料を無駄にすることなく、かつ、三次元造形物の作製中においても容易にテストパターンを形成することのできる三次元造形装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成するために、本発明による三次元造形装置は、造形槽とは別に、造形槽の領域以外の位置にテストパターンを形成するための専用のテストパターン形成部を設けるようにしたものである。
【0038】
即ち、本発明による三次元造形装置は、造形槽に形成された粉末材料よりなる粉末層に吐出ヘッドからバインダーを吐出することにより上記粉末材料を硬化して三次元造形物を作製する三次元造形装置において、上記造形槽の領域以外の位置にテストパターンを形成するためのテストパターン形成部を設け、上記吐出ヘッドから上記テストパターン形成部へバインダーを吐出してテストパターンを形成するようにしたものである。
【0039】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、上記造形槽は所定の方向に移動自在に配置されており、上記テストパターン形成部は上記造形槽と一体的に移動するようにしたものである。
【0040】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、上記造形槽と上記テストパターン形成部とは固定系部材に配設されたものである。
【0041】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、上記テストパターン形成部は、上面が平坦状に形成された台部と、上記台部と所定の間隙を開けて上記台部上に配置される板状体よりなるメディアガイドとを有して構成され、上記メディアガイドは上記台部の上記上面の縁部に対応する領域を除く領域を切り欠いて形成した窓部を有し、上記間隙にテストパターンを形成するメディアを配置したものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、以上説明したように構成されているので、作業時間や粉末材料を無駄にすることなく、かつ、三次元造形物の作製中においても容易にテストパターンを形成することができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、従来の三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図2図2は、従来の三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態による三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図4図4(a)は、テストパターン用ステージにおけるテストパターン形成部の詳細な構成を示す斜視説明図であり、図4(b)は、テストパターン形成用紙の一例を示す説明図であり、図4(c)は、テストパターン形成用紙の他の例を示す説明図である。
図5図5は、本発明の第2の実施の形態による三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図6図6は、本発明の第3の実施の形態による三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図7図7は、テストパターン形成部へテストパターン形成用紙を供給する方法の変形例の構成を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形装置の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0045】
図3には、本発明の第1の実施の形態による三次元造形装置の概略構成説明図が示されている。
【0046】
この図3に示す三次元造形装置10は、造形槽108の右方側面108aにテストパターン用ステージ12が固定されている点において、三次元造形装置100と異なる。
【0047】
このテストパターン用ステージ12は、断面L字形状の板状体よりなる取り付け部14と、吐出ヘッド104によりバインダーを吐出してテストパターンを形成するテストパターン形成部16とを備えている。
【0048】
取り付け部14は、そのL字形状を構成する板状体の一方の壁面14aがXY平面と平行となるように、そのL字形状を構成する板状体の他方の壁面14bが造形槽108の右方側面108aにボルトや接着剤などの結合手段により固定されている。
【0049】
そして、テストパターン形成部16は、取り付け部14の壁面14a上に固定されており、テストパターン形成部16の上端部は、造形槽108の上端部108bと一致または概ね一致するように設計されて寸法設定されており、吐出ヘッド104をY軸方向に移動してバインダーを吐出する際に、その移動の妨げとならないように設計されている。
【0050】
取り付け部14は、テストパターン形成部16の上端部が造形槽108の上端部108bと一致または概ね一致するように、造形槽108にテストパターン形成部16を支持できる構造であればよく、図3に示すようなL字形状を構成する板状体を用いる構造に限定されるものではない。
【0051】
上記したように、三次元造形装置10においては、造形槽108とは別に、造形槽108の領域以外の位置にテストパターンを形成するための専用のテストパターン形成部16が設けられている。
【0052】
ここで、図4(a)には、テストパターン用ステージ12におけるテストパターン形成部16の詳細な構成をあらわす斜視説明図が示されている。
【0053】
テストパターン形成部16は、上面16aaが平坦状に形成された台部16aと、台部16aと所定の間隙gを開けて台部16a上に配置される断面コ字形状の板状体よりなるメディアガイド16bとより構成されている。
【0054】
また、メディアガイド16bは、断面コ字形状に折り曲げられた両方の端部16bbと端部16bcと繋ぐ上部16baに、台部16aの上面16aaの縁部に対応する領域を除く領域を切り欠いて形成した窓部16bdを備えている。
【0055】
なお、メディアガイド16bは、台部16aの上面16aaと上部16baとが所定の間隙gを開けて配置されるように、断面コ字形状に折り曲げられた両方の端部16bbと端部16bcとが、台部16aの両方の側壁部16abと側壁部16acとにそれぞれ固定されている。
【0056】
そして、テストパターン形成部16においては、上記した間隙gから上面16aaと上部16baとの間にテストパターン形成用紙として各種のメディア(媒体)を挿入して配置するものである。
【0057】
ここで、上記したテストパターン形成用紙の大きさは、台部16aの上面16aaと一致あるいは概ね一致するものでもよいし(図4(b)を参照する。)、長尺状のものでもよい(図4(c)を参照する。)。
【0058】
図4(b)に示す台部16aの上面16aaと一致あるいは概ね一致する大きさのテストパターン形成用紙を用いた場合には、後述するテストパターン形成用紙へのテストパターンの形成毎にテストパターン形成用紙を取り替える処理が必要となるが、図4(c)に示す長尺状のテストパターン形成用紙を用いた場合には、テストパターン形成用紙へのテストパターンの形成毎にテストパターン形成用紙を取り替える必要はなく、テストパターンの形成毎にテストパターンが重ならないようにテストパターン形成用紙をずらしながら使用すればよい。
【0059】
なお、本明細書において「メディア」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料やアルミ、鉄、木材のような材料などの各種の材料が含まれるものとする。
【0060】
また、Y軸方向に往復移動可能な吐出ヘッド104は、テストパターン形成部16と対向する上方位置に移動可能な構成とされている。
【0061】
以上の構成において、三次元造形装置10においてテストパターンを形成する際には、テストパターン形成部16における間隙gから上面16aaと上部16baとの間にテストパターン形成用紙を挿入して配置した後に、吐出ヘッド104をテストパターン形成部16の窓部16b上に移動する。
【0062】
そして、テストパターンの画像データに基づいて、造形槽108をX軸方向に移動するとともに吐出ヘッド104をY軸方向に移動しながら、テストパターン形成部16の窓部16bを介してテストパターン形成用紙に対して吐出ヘッド104からバインダーを吐出すると、吐出されたバインダーは窓部16bを通過してテストパターン形成用紙に付着することになり、これによりテストパターンが形成される。
【0063】
次に、図5には、本発明の第2の実施の形態による三次元造形装置の概略構成説明図が示されている。
【0064】
この図5に示す三次元造形装置20は、貯留槽110の右方側における固定系の基台部101上にテストパターン用ステージ12が固定されている点において、三次元造形装置200と異なる。
【0065】
また、三次元造形装置20は、三次元造形装置10では造形槽108の右方側面108aにテストパターン用ステージ12が固定されているのに対して、貯留槽110の右方側における固定系の基台部101上にテストパターン用ステージ12が固定されている点において、三次元造形装置10と異なる。
【0066】
なお、三次元造形装置20のテストパターン用ステージ12においては、テストパターン形成部16を支持する取り付け部24の構成が上記した取り付け部14の構成と異なっている。
【0067】
取り付け部24は、テストパターン形成部16の上端部が貯留槽110の上端部110aと一致または概ね一致するように、基台部上にテストパターン形成部16を支持できる構造であればよく、図5に示すような支持棒24aを用いてテストパターン形成部16を支持する構造に限定されるものではない。
【0068】
この三次元造形装置20においても、造形槽108とは別に、造形槽108の領域以外の位置にテストパターンを形成するための専用のテストパターン形成部16が設けられている。
【0069】
この三次元造形装置20においてテストパターンを形成する際にも、三次元造形装置10の場合と同様に、テストパターン形成部16における間隙gから上面16aaと上部16baとの間にテストパターン形成用紙を挿入して配置した後に、吐出ヘッド104を窓部16b上に移動する。
【0070】
そして、テストパターンの画像データに基づいて、Yレール204をX軸方向に移動するとともに吐出ヘッド104をY軸方向に移動しながら、テストパターン形成部16の窓部16bを介してテストパターン形成用紙に対して吐出ヘッド104からバインダーを吐出すると、吐出されたバインダーは窓部16bを通過してテストパターン形成用紙に付着することになり、これによりテストパターンが形成される。
【0071】
次に、図6には、本発明の第3の実施の形態による三次元造形装置の概略構成説明図が示されている。
【0072】
この図6に示す三次元造形装置30は、造形ステージ前後移動式の三次元造形装置であって、基台部101にX軸方向に延長する溝部32が形成されており、この溝部32内に造形槽108および造形槽108と一体的に連接された収容槽34がX軸方向に移動自在に配置されている。
【0073】
造形槽108と収容槽34との位置関係は、造形槽108に対してX軸方向前方側に収容槽34が配置されている。
【0074】
また、三次元造形装置30は、基台部101上に立ち上がり形成された一対の支持部36により支持されて、XYZ直交座標系におけるY軸方向に沿って延長して配設された貯留槽支持レール38を備えている。
【0075】
この貯留槽支持レールのY軸方向の中央部位には、下方に開閉自在の開口部39aを備えた貯留槽39が配設されている。
【0076】
そして、この三次元造形装置30においても、三次元造形装置10と同様に、造形槽108の右方側面108aにテストパターン用ステージ12が固定されている。
【0077】
造形槽108の右方側面108aへのテストパターン用ステージ12の取り付け方法は、三次元造形装置10と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0078】
以上の構成において、この三次元造形装置30においては、内部に粉末材料を貯留した貯留槽39の開口部39aと造形槽108とが対向した図6に示す初期状態から、貯留槽39の開口部39aを開いて、造形槽108へ粉末材料を供給する。
【0079】
次に、溝部32内において造形槽108および収容槽34をX軸方向の前方側から後方側に移動することにより、ローラー112が造形槽108上を相対的にX軸方向の後方側から前方側に移動することになり、造形槽108へ供給された粉末材料は造形槽108内に敷き詰められて所定の厚さの粉末層が形成される。
【0080】
なお、この際に、造形槽108の底面は、予め設定された位置まで上昇するように制御される。
【0081】
また、造形槽108内において粉末層の形成に用いられなかった余分な粉末材料は、ローラー112が造形槽108から収容槽34へと相対的にX軸方向の後方側から前方側に移動することにより、溝部32内において造形槽108とともにX軸方向の前方側から後方側に移動する収容槽34に収容される。
【0082】
上記のようにして造形槽108内に粉末層を形成した後に、溝部32内において造形槽108をX軸方向に移動して、造形槽108を吐出ヘッド104の下方の所定の位置に配置する。
【0083】
それから、三次元造形物の断面形状の画像データに基づいて、溝部32内において造形槽108をX軸方向の前方側から後方側に移動するとともに吐出ヘッド104をY軸方向に移動しながら、造形槽108に形成された粉末層に対して吐出ヘッド104から粉末材料を硬化するバインダーを吐出する。このバインダーの吐出が終了すると、溝部32内に配置された造形槽108をX軸方向の後方側から前方側へ移動して、図6に示す初期状態に復帰させる。
【0084】
これにより、粉末層に当該画像データに基づく断面形状を形成し、この処理を繰り返し行って、全ての断面形状を表す画像データに基づく断面形状を順次形成することで、三次元造形物を作製する。
【0085】
そして、三次元造形装置30においてテストパターンを形成する際には、テストパターン形成部16における間隙gから上面16aaと上部16baとの間にテストパターン形成用紙を挿入して配置した後に、吐出ヘッド104をテストパターン形成部16の窓部16b上に移動する。
【0086】
そして、テストパターンの画像データに基づいて、溝部32内において造形槽108をX軸方向に移動するとともに吐出ヘッド104をY軸方向に移動しながら、テストパターン形成部16の窓部16bを介してテストパターン形成用紙に対して吐出ヘッド104からバインダーを吐出すると、吐出されたバインダーは窓部16bを通過してテストパターン形成用紙に付着することになり、これによりテストパターンが形成される。
【0087】
次に、図7には、テストパターン形成部へテストパターン形成用紙を供給する方法の変形例の構成を示す断面説明図が示されている。
【0088】
この図7に示すように、ロール状のテストパターン形成用紙を用いて、テストパターン形成部16へテストパターン形成用紙を供給するようにしてもよく、このようにするとテストパターン形成用紙の交換の頻度を著しく低減できるようになる。
【0089】
以上において説明したように、本発明による三次元造形装置10、20、30は、造形槽108以外の領域にテストパターンを形成するための専用のテストパターン形成部16を設けるようにした。
【0090】
これにより、本発明による三次元造形装置10、20、30においては、粉末層上にテストパターンなどを形成する必要がなくなり、テストパターンの形成のために粉末層を形成したり、その粉末層を除去する手間や粉末材料の無駄を省くことができる。
【0091】
また、本発明による三次元造形装置10、20、30においては、三次元造形中であっても、造形を一旦休止してテストパターンを形成することができ、吐出ヘッドのノズルの確認や各種の調整が可能になり、非常に使い安く便利である。
【0092】
即ち、本発明による三次元造形装置10、20、30におけるテストパターン形成部は、上記したようなテストパターンを形成する場合に用いることができるのは勿論であるが、吐出ヘッドの傾きや前後調整、ホリゾンタル調整やバイディレクション調整などのサービス時や製造時のメンテナンスパターンなどを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、粉末固着積層方式の三次元造形装置として用いて好適である。
【符号の説明】
【0094】
10,20,30,100,200 三次元造形装置、12 テストパターン用ステージ、14,24 取り付け部、16 テストパターン形成部、16a 台部、16b メディアガイド、204 Yレール、104 吐出ヘッド、106,202 Xレール、108 造形槽、110 貯留槽、112 ローラー、g 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7