(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571382
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】電気的刺激装置およびこれに用いる移動電極
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
A61N1/04
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-97475(P2015-97475)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2016-209405(P2016-209405A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153041
【氏名又は名称】株式会社日本メディックス
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(72)【発明者】
【氏名】丸山 彰貞
(72)【発明者】
【氏名】丸山 由倫
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 徳利
(72)【発明者】
【氏名】上岡 章紀
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁
【審査官】
細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−164211(JP,A)
【文献】
特開平05−154206(JP,A)
【文献】
実開昭51−130385(JP,U)
【文献】
特開平07−194669(JP,A)
【文献】
実開昭54−148087(JP,U)
【文献】
特開平06−285175(JP,A)
【文献】
米国特許第04175551(US,A)
【文献】
特開昭60−150760(JP,A)
【文献】
実開昭58−166344(JP,U)
【文献】
実開昭63−158334(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/04
A61H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者体表面のうち経絡脈に対応した位置に固定電極を固定し、移動電極を該経絡脈に沿うように患者体表面上を移動させて、該固定電極と該移動電極との間で刺激用の電流が流れるようにした電気的刺激装置であって、
前記移動電極は、患者体表面に接触されるその電極本体部が、患者体表面に対して直線状に接触するように棒状に形成され、
前記移動電極は、前記電極本体部の長手方向中間位置において、該電極本体部の長手方向に対して直交する方向に伸びる取付軸部を一体的に有し、
前記電極本体部の一端部と前記取付軸部とが、該電極本体部の一端部外方に向けて凸となるように湾曲した連結部を介して連結されている、
ことを特徴とする電気的刺激装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記取付軸部が、手指によって把持される保持部材に対して着脱自在に取付けられ、
前記電極本体部に対する刺激用電気信号の印加が、前記取付軸部を介して行われる、
ことを特徴とする電気的刺激装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記保持部材が、全体的に細長く伸びるペンシル型とされ、
前記取付軸部が、前記保持部材の細長く伸びる方向に伸びるようにして、該保持部材の先端部に対して着脱自在に取付けられ、
前記電極本体部が、前記保持部材の細長く伸びる方向と直交する方向に伸びている、
ことを特徴とする電気的刺激装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記固定電極がシート状とされ、
前記固定電極を含む固定電極装置が、患者体表面の所定部位を取り巻くように巻回して使用されるベルトに対して該固定電極を取付けたベルト式とされて、複数本の経絡脈に対して同時に作用するようにされている、
ことを特徴とする電気的刺激装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記固定電極を含む固定電極装置が、吸引カップ内に該固定電極が配設された吸引式とされ、
前記固定電極は、患者体表面への接触部位となるその先端部が先細状とされていて、選択された1つの経絡脈に対してのみ作用するようにされている、
ことを特徴とする電気的刺激装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記固定電極装置が、前記吸引カップに一体化されると共に該吸引カップ内に連通された吸引用袋部材を有し、
前記吸引用袋部材は、弾性変形可能とされて、手指による握り操作によってその体積が縮小される一方、該握り操作による外力が解除されたときはその体積が大きくなる方向へ弾性復帰するようにされている、
ことを特徴とする電気的刺激装置。
【請求項7】
経絡脈に沿うように患者体表面上を移動させて使用される電気的刺激装置における移動電極であって、
前記移動電極は、患者体表面に接触されるその電極本体部が、患者体表面に対して直線状に接触するように棒状に形成され、
前記移動電極は、前記電極本体部の長手方向中間位置において、該電極本体部の長手方向に対して直交する方向に伸びる取付軸部を一体的に有し、
前記電極本体部の一端部と前記取付軸部とが、該電極本体部の一端部外方に向けて凸となるように湾曲した連結部を介して連結され、
前記電極本体部と前記取付軸部とは互いに導電関係を有している、
ことを特徴とする電気的刺激装置における移動電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的刺激装置およびこれに用いる移動電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気的刺激装置にあっては、例えば特許文献1に示す低周波治療器においてみられるように、互いに別個独立した一対の電極を患者体表面面に装着して、この一対の電極間で刺激用の電流を流すようにしている。
【0003】
ところで、鍼灸の分野では、鍼やお灸によって、経穴や経絡脈等に対して局所的に刺激を与えることが行われている。しかしながら、鍼にあっては、鍼を突き刺すことや突き刺した痕が残ることが嫌われること、またお灸にあっては熱さや施術痕が嫌われることから、鍼灸による施術が避けられる傾向にある。
【0004】
鍼灸の代替として、電気信号を利用して経絡脈に対して刺激を与えることが行われている。すなわち、患者体表面のうち経絡脈の一端部側に対応した位置において固定電極(固定電極部材)を取付けた状態において、移動電極(移動電極部材)を経絡脈に沿うようにして患者体表面上を移動させることにより、固定電極と移動電極との間に流れる刺激用の電流でもって経絡脈に対して刺激を付与することが行われている。
【0005】
上記移動電極は、手指によって把持される保持部材の先端部に対して着脱自在に取付けられて使用されるようになっている。そして、移動電極のうち患者体表面への接触部位となる電極本体部の形状として、先細状のものや球状のものが選択的に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−188926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、鍼灸の代替として電気信号を利用した刺激の付与を行う場合に、従来の移動電極(における電極本体部)の形状では、経絡脈に対して効果的に(効率的に)刺激を与えることが難しかった。すなわち、移動電極における電極本体部の形状が先細状の場合や球状の場合のいずれにあっても、患者体表面との接触面積が小さいものである。この一方、刺激用の電流は極めて微弱であり、このため、移動電極の患者体表面への接触面積が小さいと、刺激用の微弱電流を効率的に経脈に沿って流すことが難しいものとなり
、しかも患者に対して適度に刺激感を与えるという点で満足のいかないものとなる。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、経絡脈に沿ってより効率的に刺激用の電流を流すことができると共に、適度に刺激感を与えることのできるようにした電気的刺激
装置およびその移動電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明における電気的刺激装置にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
患者体表面のうち経絡脈に対応した位置に固定電極を固定し、移動電極を該経絡脈に沿うように患者体表面上を移動させて、該固定電極と該移動電極との間で刺激用の電流が流れるようにした電気的刺激装置であって、
前記移動電極は、患者体表面に接触されるその電極本体部が、患者体表面に対して直線状に接触するように棒状に
形成され、
前記移動電極は、前記電極本体部の長手方向中間位置において、該電極本体部の長手方向に対して直交する方向に伸びる取付軸部を一体的に有し、
前記電極本体部の一端部と前記取付軸部とが、該電極本体部の一端部外方に向けて凸となるように湾曲した連結部を介して連結されている、
ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、細長棒状とされた電極本体部を、患者の経脈や絡脈に沿うようにして患者体表面に接触させることにより、経脈あるいは絡脈に沿ってより効率的に刺激用の電流を流すことができ、また適度の刺激感を与えることができる。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記取付軸部が、手指によって把持される保持部材に対して着脱自在に取付けられ、
前記電極本体部に対する刺激用電気信号の印加が、前記取付軸部を介して行われる、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、従来からの保持部材を有効に利用して、本発明による移動電極による施術を行うことができる。
【0012】
前記保持部材が、全体的に細長く伸びるペンシル型とされ、
前記取付軸部が、前記保持部材の細長く伸びる方向に伸びるようにして、該保持部材の先端部に対して着脱自在に取付けられ、
前記電極本体部が、前記保持部材の細長く伸びる方向と直交する方向に伸びている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、保持部材を、鉛筆を握るような態様でもって容易に操作できるようにしつつ、この保持部材を介して移動電極(の電極本体部)を容易にかつしっかりと患者体表面に押しつける上で好ましいものとなる。
【0013】
【0014】
前記固定電極がシート状とされ、
前記固定電極を含む固定電極装置が、患者体表面の所定部位を取り巻くように巻回して使用されるベルトに対して該固定電極を取付けたベルト式とされて、複数本の経絡脈に対して同時に作用するようにされている、
ようにしてある(請求項
4対応)。この場合、1つの固定電極装置を複数の経絡脈に対して作用させて、施術対象となる特定の経絡脈を変更する際に、固定電極装置の位置変更を行う手間を極力少なくする上で好ましいものとなる。
【0015】
前記固定電極を含む固定電極装置が、吸引カップ内に該固定電極が配設された吸引式とされ、
前記固定電極は、患者体表面への接触部位となるその先端部が先細状とされていて、選択された1つの経絡脈に対してのみ作用するようにされている、
ようにしてある(請求項
5対応)。この場合、施術対象となる特定の経絡脈に対してのみ固定電極装置を作用させる上で好ましいものとなる。また、固定電極装置の患者体表面への取付、取外しを容易に行う上で好ましいものとなる。
【0016】
前記固定電極装置が、前記吸引カップに一体化されると共に該吸引カップ内に連通された吸引用袋部材を有し、
前記吸引用袋部材は、弾性変形可能とされて、手指による握り操作によってその体積が縮小される一方、該握り操作による外力が解除されたときはその体積が大きくなる方向へ弾性復帰するようにされている、
ようにしてある(請求項
6対応)。この場合、手動式でもって簡単に吸引式の固定電極装置を構成することができ、特に電気的刺激装置本体側に別途吸引装置を有しない場合において好適となる。
【0017】
前記目的を達成するため、本発明における移動電極にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項
7に記載のように、
経絡脈に沿うように患者体表面上を移動させて使用される電気的刺激装置における移動電極であって、
前記移動電極は、患者体表面に接触されるその電極本体部が、患者体表面に対して直線状に接触するように棒状に形成され、
前記移動電極は、前記電極本体部の長手方向中間位置において、該電極本体部の長手方向に対して直交する方向に伸びる取付軸部を一体的に有し、
前記電極本体部の一端部と前記取付軸部とが、該電極本体部の一端部外方に向けて凸となるように湾曲した連結部を介して連結され、
前記電極本体部と前記取付軸部とは互いに導電関係を有している、
ようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に記載の電気的刺激装置に用いて好適で
ある移動電極が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、経絡脈に沿ってより効率的に刺激用の電流を流すことができると共に、適度に刺激感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明による移動電極装置の一例を示す斜視図。
【
図4】
図1に示す移動電極装置を移動電極側から見た正面図。
【
図6】移動電極を保持部材に保持させた部分の詳細を示す要部断面図。
【
図7】移動電極と固定電極とにより施術を行っている状況を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜
図4は、移動電極装置D1を示すものである。この移動電極装置D1は、大別して、保持部材1と移動電極10とによって構成されている。
【0021】
保持部材1は、実施形態では、細長棒状のペンシル型とされている。具体的には、略円筒状とされた部材の一端部と他端部とが閉塞された形状とされて、長さは例えば12cm〜16cm程度、外径は13mm〜18mm程度とされて、片方の手指で把持できるようにされている。保持部材1を把持する際には、鉛筆を持つような形態でもって行うことができる。保持部材1は、例えば絶縁部材としての合成樹脂によって形成されている。このような保持部材1は、径方向に2分割された半割構造とされて、図示を略すねじによって半割部分同士が一体化されたものとなっている。
【0022】
保持部材1の先端部には、後述するように、移動電極10が着脱自在に保持されている。保持部材1の後端面からは、接続コード20が外部に向けて伸びている。接続コード20の先端部(外方側端部)は、電気的刺激装置(図示略)から伸びる延長コード(図示略)に着脱自在に接続するための接続端子20Aとされている。そして、接続コード20の内方側端部は、後述するようにして、移動電極10に接続されている。
【0023】
次に、移動電極10について、
図5を参照しつつ説明する。移動電極10は、患者体表面への接触部位となる電極本体部11と、電極本体部11に一体化された取付軸部12と、を有する。取付軸部12の途中には、フランジ状のストッパ部12aが形成されている。電極本体部11と取付軸部12とは、導電性を有するように、例えばステンレス等の金属により形成されている。
【0024】
電極本体部11は、断面が略四角形とされた細長の棒状とされて、その長さが例えば20mm〜30mm程度とされ、その幅は例えば2mm〜3mm程度とされている。また、取付軸部12は、丸棒で形成されて、その長さが例えば35mm〜45mm程度とされ、その直径は例えば2.5mm〜4mm程度とされている。
【0025】
電極本体部11の長手方向中間位置に対して、取付軸部12の一端部(先端部)が一体化されている。つまり、電極本体部11と取付軸部12とにより形成される形状が、略T字状となるようにされている。
【0026】
次に、
図6を参照しつつ、保持部材1による移動電極10の保持構造について説明する。まず、保持部材1は、その大部分を占める本体部材1Aと、本体部材1Aの先端部に螺合された先端部材1Bとを有する。この本体部材1Aと先端部材1Bとはそれぞれ、合成樹脂によって絶縁性を有するようにされている。そして、保持部材1の先端部には、移動電極10用の取付孔1aを有するものとなっている。
【0027】
保持部材1の先端部分には、その内部において、金属等の導電性部材からなる接続部材2が保持されている。接続部材2は、全体的に有底筒状とされて、先端側に向けて開口された取付孔2aを有するものとなっている。この取付孔2aは、保持部材1の取付孔1aに連通(整合)されている。接続部材2の後端部には、前述した接続コード20が接続されている。なお、
図6中、3はシール部材である。
【0028】
移動電極10の取付軸部12は、保持部材1の取付孔1aをスムーズに通過できるようにされている。この一方、接続部材2の取付孔2aに対しては、きつく嵌合されるようになっている。具体的には、取付孔2aの内周面には、例えば多数本の細かい螺旋溝等の凹凸模様が形成されて、取付軸部12が嵌合されたときに、不用意に取付孔2aから抜け出さないように設定されている(摺動抵抗が大)。そして、取付軸部12を取付孔2a内に深く挿入して、取付軸部12に形成されたストッパ部12aが先端部材1Bに当接した
図6の状態が、所定の取付完了状態とされる。この取付完了状態から、移動電極10を手指によってやや強く引き抜くことにより、移動電極10が取付孔2a(つまり保持部材1)
から取外される。
【0029】
以上のように構成された移動電極装置D1を用いて電気的刺激を与える点について、
図7を参照しつつ説明する。まず、D2は、固定電極装置である。
図7に示す固定電極装置D2は、ベルト式とされて、腕(
図7では上腕部)に巻回されるようになっている。固定電極装置D2は、可撓性を有するベルト本体と、その内面に装着されたシート状の固定電極とを有し、腕に巻回された状態では、固定電極が腕の表面略全周囲に接触される。なお、
図7中、22は、固定電極への通電用の接続コードであり、この接続コード22を介して、図示を略す電気的刺激装置本体へ接続される。
【0030】
図7において、経脈K1とK2とが例示的に示される。固定電極装置D2は、両方の経脈K1、K2に対応した位置の患者体表面に電気的に接続された状態とされる。
【0031】
施術者は、移動電極装置D1のうち保持部材1を片方の手指で把持した状態で、移動電極10の電極本体部11を、1つの経脈(
図7では経脈K1)に対応した位置の患者体表面に接触させる。この場合、電極本体部11は、その長手方向が経脈K1の伸び方向となるような状態でもって、患者体表面に接触される。なお、施術者は、保持部材1を、鉛筆を持つ様な形態でもって把持することになる。
【0032】
図示を略す電気的刺激装置の本体から、移動電極装置D1(の移動電極10)と固定電極装置D2とに、刺激用の電気信号が印加される。これにより、移動電極装置D1と固定電極装置D2との間に刺激用の電流が流れることになり、この電流は、経脈K1に沿って流れることになる。施術者は、電極本体部11を経脈K1に沿って適宜移動させて、経脈K1に対する施術を行うことになる。電極本体部11は、経脈K1の伸び方向に沿うように細長く伸びた状態で接触されるので、刺激用の電気信号が微弱電流であっても、この刺激用の微弱電流を経脈K1に沿って効率的に流すことができ、また適度の刺激感を与えることができる(体感も良好となる)。
【0033】
1つの経脈K1に対する施術が終了すると、必要に応じて、別の経脈K2に対して電気的刺激が与えられる。この場合、固定電極装置D2の位置変更を行う必要がないものとなる。このようにして、経脈K1やK2に対する刺激付与が行われる。電極本体部11の長手方向中間位置から取付軸部12が伸びていることにより、手指に把持された保持部材1を介して電極本体部11を患者体表面に押しつけている際に、電極本体部11がその長手方向全長に渡って安定して患者体表面に接触されることになる。
【0034】
絡脈に対しても、経脈の場合と同じようにして電気的刺激の付与を行うことができる。電気的刺激
装置本体側での極性切換え(移動電極装置D1と固定電極装置D2との間でのプラスとマイナスとの間での極性切換え)により、鍼灸でいうところの補瀉法と同様の効果を得ることができる。
【0035】
上述した電気信号による刺激は、極力鍼灸と同じような刺激となるように設定される。すなわち、刺激用の電気信号としては、例えば、矩形波とされて、そのデューティ比は例えば50%で、周波数は例えば0.3Hz〜900Hzで、電極10と20との間に流れる電流値は例えば10μA〜100μA程度とされる。なお、電気的刺激装置本体は、マニュアル操作によって、上記デューティ比、周波数、電流値(電圧)等を変更可能となっている。
【0036】
図8,
図9は、それぞれ移動電極の変形例を示すものである。
図8に示す移動電極10−B(移動電極10に対応)は、細長棒状の電極本体部11の一端部と取付軸部12との連結を、略U字状に湾曲した連結部12bでもって繋いだ形状としてある。取付軸部12は、ストッパ部12a付近から後端部分(
図8右方側)は、電極本体部11と直交し、かつ前方へ延長させた位置が電極本体部11の長手方向中間位置となるように設定されている。
【0037】
図9に示す移動電極10−C(移動電極10に対応)は、細長棒状の電極本体部11の一端部から取付軸部12が直交するように伸びて、全体として略
L字状となるように形成したものである。
【0038】
図10〜
図14は、固定電極装置を吸引式とした場合の例を示す。すなわち、吸引式とされた固定電極装置D2−B(固定電極装置D2対応)は、吸引カップ30と、吸引カップ30内に保持された固定電極31と、吸引カップ30に一体化された吸引用袋部材32とを有する。
【0039】
吸引カップ30は、下方へ向けて開口されたカップ本体部30aと、カップ本体部30aの上面から上方へ伸びる小径の保持筒部30bを有する。また、カップ本体部30aの上面内壁には、下方に向けて短く突出するやや大径の係止筒部30cが形成されている。カップ本体部30aの内径は、20mm〜25mm程度と小さくされている。
【0040】
固定電極31は、円板状の板部31aと、板部31aの中心から下方へ略円錐状(先細状)に伸びる先細先端部31bと、板部31aから上方へ伸びる筒部31cと、を有する。筒部31cは、吸引カップ30の保持筒部30bに嵌合保持されて、その内部空間は上方へ開口されると共に、筒部31cの側面には連通孔31dが形成されている。このような固定電極30は、全体的に導電性の良好な材質によって形成されている。
【0041】
固定電極31における板部31aは、吸引カップ30の係止筒部30cに嵌合される。板部31aが係止筒部30cに嵌合された
図14の状態では、筒部31cの内部空間とカップ本体部30a内の空間とが遮断された状態とされる。そして、
図14の状態から、吸引カップ30(カップ本体部30a)が上方からの押圧力を受けて撓み変形されたときに、係止筒部30cが拡径変形されると共に、板部31aが係止筒部30cから抜け出して、筒部31cの内部空間が、連通孔31dを介してカップ本体部30aの内部空間と連通される。
【0042】
吸引用袋部材32は、バルーン状とされて、大きく弾性変形可能とされている。そして、その下方の開口縁部が、吸引カップ30の保持筒部30aの周縁部に気密状態でもって固定されている(例えば溶着や接着等)。接続コード22が、吸引用袋部材32の側面を気密に貫通した状態で、固定電極31の筒部31cに接続されている。このような吸引用袋部材32の内部空間は、筒部31c内に常時連通されている。
【0043】
以上のような構成とされた吸引式の固定電極装置D2−Bの使用方法について説明する。まず、
図14の状態から、カップ本体部30aを患者体表面Kに着座された状態とする。この状態で、例えば吸引用袋部材32を片方の手指
でもって把持して、当該吸引用袋部材32を縮径させつつ、吸引カップ30を患者体表面Kに押しつける。
【0044】
吸引カップ30が患者体表面Kに押しつけられた状態では、固定電極30における先細先端部30bが、患者体表面Kに対し極めて狭い面積でもって食い込んだ状態とされる。この状態で、吸引用袋部材32を縮径していた外力を解放すると、吸引用袋部材32は、その体積が増大する方向へと弾性復帰しようとして吸引力を発生させて、固定電極31の筒部31cの内部空間を吸引する。この吸引用袋部材32による吸引力は、筒部31cの内部空間から,連通孔31dを介して、カップ本体部30a内に作用する。これにより、カップ本体部30a(つまり吸引カップ30)が、患者体表面Kに吸着された状態が維持されることになる。
【0045】
固定電極31の先細先端部31bは、極めて局所的に患者体表面Kに接触することから、施術者により選択された1本の経脈(例えば経脈K1)にのみ、作用するように設定することができる。つまり、選択されたある1本の経脈について、固定電極装置D2−Bと、移動電極装置D1を用いた施術(電気信号による刺激付与)を行う上で好ましいものとなる。
【0046】
患者体表面Kに吸着された吸引カップ30を取外すには、例えば吸引用袋部材32を把持して縮径させつつ持ち上げればよい。なお、保持部材1に取付けて使用する移動電極としては、施術部位等に応じて、先端部形状が例えば先細状のものや球状のものを、選択的に使用することができる。
【0047】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。保持部材1の形状は、患者体表面に押し当てるための先端面を有すると共に、片方の手指で把持できるものであれば、適宜の形状、例えばピストル型の形状にする等、適宜の形状を選択できる。移動電極10の電極本体部11は、細長棒状であれば、断面円形等、適宜の断面形状とすることができる。移動電極10はストッパ部12aを有しないものであってもよく、この場合は、例えば取付軸部12の先端を接続部材2の奥壁部に当接させることにより、保持部材1への挿入深さが所定深さとなるようにすればよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電気信号により経絡脈に対して刺激を与える上で好適である。
【符号の説明】
【0049】
D1:移動電極装置
D2:固定電極装置(ベルト式で、
図7)
D2−B:固定電極装置(吸引式で、
図10〜
図14)
1:保持部材
1a:取付孔
2:接続部材
2a:取付孔
10:移動電極
10−B:移動電極(
図8)
10−C:移動電極(
図9)
11:電極本体部
12:取付軸部
12a:ストッパ部
20:接続コード(移動電極装置用)
22:接続コード(固定電極装置用)
30:吸引カップ
31:固定電極
31b:先細先端部
32:吸引用袋部材