(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571386
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20190826BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20190826BHJP
A01F 12/40 20060101ALI20190826BHJP
B60K 15/04 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
A01D41/12 E
A01D67/00 C
A01D67/00 A
A01F12/40 302Z
B60K15/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-99753(P2015-99753)
(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公開番号】特開2016-214098(P2016-214098A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 大
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−233214(JP,A)
【文献】
特開2002−089391(JP,A)
【文献】
特開2012−095540(JP,A)
【文献】
特開2000−211380(JP,A)
【文献】
特開2012−001045(JP,A)
【文献】
実開昭59−102109(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0157745(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 − 41/16
A01D 67/00 − 69/12
A01F 12/40
B60K 15/00 − 15/10
F02M 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに供給される燃料から水分を分離するセジメンタと、前記セジメンタの後方に配置された後部カバーと、を有する走行機体を備えるコンバインにおいて、
前記セジメンタは、回動することで前記セジメンタに流入する燃料の流量を調整する燃料コックと、分離した水を貯める貯水部と、該貯水部に貯められた水を排出する排出ドレンコックと、を有すると共に前記走行機体の後部に配置され、
前記後部カバーは、前記セジメンタの後方を開放し得る脱着カバーを有し、
前記脱着カバーは、前記燃料コックの回動範囲の後方を露出させる第1開口領域と、前記貯水部を目視し得るように上下方向に延びる第2開口領域と、が連続的に形成された開口部を有し、
前記排出ドレンコックの直下方の前記走行機体に、上下方向に貫通した貫通部が設けられている、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記開口部の前記上下方向の高さは、前記貯水部の前記上下方向の高さよりも大きく、
前記第2開口領域の左右方向の幅は、前記セジメンタの前記左右方向の幅よりも小さい、
請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記走行機体は、前記エンジンが搭載される横フレームと、前記横フレームの後端から上方に延びる第1の縦フレーム及び第2の縦フレームと、を有し、
前記後部カバーは、前記第1の縦フレーム及び前記第2の縦フレームに取り付けられている、
請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記走行機体の後方に、排藁を刻むカッターが配置され、
前記第1の縦フレームは、前記カッターを支えるカッターステーである、
請求項3に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体にエンジンを配置したコンバインに係り、詳しくは該エンジンに供給される燃料が含有する水分及び異物を除去するセジメンタの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインにおいては、燃料タンクに貯蔵した燃料から、セジメンタによって水分や異物を除去し、その燃料をエンジンに供給している。
【0003】
従来、セジメンタを、ガード部材で覆い、燃料タンク前方におけるホッパーの奥(機体内部)に配置したコンバインが案出されている(特許文献1参照)。また、セジメンタを、排藁切断装置の前側下部のスペースに配置したコンバインが案出されている(特許文献2参照)。さらに、上述したコンバインに対して、セジメンタの調整や点検を行う作業性を向上させるため、セジメンタを燃料タンクとグレンタンクの間の空間に配置したコンバインが提案されている(特願2014−4916号;本出願時未公開)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295340号公報
【特許文献2】特開2012−95540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載のもの並びに上記提案されたものは、セジメンタに貯められた水の排水の際、機外に水を排出するために、セジメンタの下部のフレーム及びカバーを取り外す、又はセジメンタにホースを取り付ける必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、セジメンタに貯められた水を機外に排出する経路が常時確保される構成にし、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジンと、前記エンジンに供給される燃料から水分を分離するセジメンタ(43)と、
前記セジメンタ(43)の後方に配置された後部カバー(51)と、を有する走行機体(3)を備えるコンバイン(1)において、
前記セジメンタ(43)は、
回動することで前記セジメンタに流入する燃料の流量を調整する燃料コック(46)と、分離した水を貯める貯水部(49)と、該貯水部(49)に貯められた水を排出する排出ドレンコック(50)と、を有
すると共に前記走行機体(3)の後部に配置され、
前記後部カバー(51)は、前記セジメンタ(43)の後方を開放し得る脱着カバー(55)を有し、
前記脱着カバー(55)は、前記燃料コック(46)の回動範囲の後方を露出させる第1開口領域と、前記貯水部(49)を目視し得るように上下方向に延びる第2開口領域と、が連続的に形成された開口部(60)を有し、
前記排出ドレンコック(50)の直下方の前記走行機体(3)に、上下方向に貫通した貫通部(40)が設けられている、
ことを特徴とする。
例えば図4乃至図6を参照して、前記開口部(60)の前記上下方向の高さは、前記貯水部(49)の前記上下方向の高さよりも大きく、
前記第2開口領域の左右方向の幅は、前記セジメンタ(43)の前記左右方向の幅よりも小さい。
【0008】
例えば
図3及び
図4を参照して、前記走行機体(3)は、前記エンジンが搭載される横フレーム(33)と、前記横フレーム(33)の後端から上方に延びる第1の縦フレーム(35)及び第2の縦フレーム(36)と
、を有し、
前記後部カバー(51)は、前記第1の縦フレーム(35)及び前記第2の縦フレーム(36)に取り付けられている。
【0009】
例えば
図3を参照して、前記走行機体(3)の後方に、排藁を刻むカッターが配置され、
前記第1の縦フレーム(35)は、前記カッターを支えるカッターステーである。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、排出ドレンコックの直下方に、上下方向に貫通した貫通部が設けられた走行機体を有するので、セジメンタの貯水部に貯められた水を排出ドレンコックから排水する際に、機内を濡らすことなく容易に水を機外に排出させることができる。
また、貯水部の後方に開口部が設けられた脱着カバーを有するので、脱着カバーを外すことなく、燃料コックを操作できると共に機内に配置されたセジメンタに貯水された水の水位を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用し得るコンバインを示す右側面図。
【
図3】本発明の実施の形態に係るセジメンタの配置を示す斜め右後方から視た斜視図。
【
図4】本発明の実施の形態に係る脱着カバーを示す斜め右後方から視た斜視図。
【
図5】本発明の実施の形態に係る脱着カバーを示す背面図。
【
図6】一部変更した他の実施の形態に係る開口部を示す図で、(a)は斜視図、(b)は背面図。
【
図7】他の実施の形態の変形に係る開口部を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。自脱型コンバイン1(コンバイン)は、
図1及び
図2に示すように、クローラ走行装置2により支持される走行機体3と、該走行機体3の前方に昇降自在に取り付けられた前処理部5と、を備える。上記走行機体3には、その左側に前方から、刈取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部6と、脱穀後の排藁を刻むカッターが設けられた排藁処理部7と、が配置される。上記走行機体3の右側には、前方から、運転操作部9と、エンジンEと、脱穀された穀粒を一時貯留するグレンタンク10と、が配置される。上記走行機体3の上方には、上記グレンタンク10内の穀粒を機外へ排出する排出オーガ11が配置される。
【0018】
上記前処理部5は、前部に設けられる穀稈を分草するデバイダ12と、該デバイダ12の後方で分草された穀稈を引起こす引起装置13と、穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃15と、を有する。さらに、上記前処理部5は、引起こされた穀稈の株元側を掻き込む株元掻込装置16と、上記刈刃15によって刈取られた穀稈を後方に搬送して上記脱穀部6のフィードチェーン17に受け渡す搬送装置19と、を有する。上記前処理部5の両側面には、着脱自在なサイドカバー20が配設される。
【0019】
上記引起装置13は、爪付きチェーン13A及び引起ケース13Bを有し、該爪付きチェーン13Aの爪が引起ケース13B内を上方に回動して穀稈を引き起こす。上記引起装置13によって引き起こされた穀稈は、上記刈刃15によって切断され、上記株元掻込装置16によって後方に掻き込まれて搬送される。
【0020】
上記株元掻込装置16は、上記引起装置13によって引き起こされた穀稈の株元を掻き込む掻込ベルト21と、該掻込ベルト21によって掻き込まれた穀稈を集束するスターホイール22と、を有する。上記掻込ベルト21及び上記スターホイール22は、それぞれ刈取り条数に応じた数だけ設けられている。
【0021】
上記搬送装置19は、上記スターホイール22から後送された穀稈の株元側を搬送する主株元搬送体23と、その穂先側を搬送する穂先搬送体25と、これらによって後方に搬送されて合流した穀稈の株元側を搬送する後方株元搬送体26と、穀稈の扱ぎ深さを調節する扱深搬送体27と、を有する。上記主株元搬送体23及び上記穂先搬送体25によって後方に搬送された穀稈は、上記扱深搬送体27によって穀稈の挟持位置が変更されつつ、上記後方株元搬送体26に受け渡され、更に上記フィードチェーン17へと受け渡される。
【0022】
上記脱穀部6は、上部に扱胴を内蔵した扱室29を有し、該扱室29の下方には、扱室29から漏下した穀粒を含む夾雑物を、揺動選別及び風選別する選別室(不図示)を有する。上記扱室29の機体外側には、上記フィードチェーン17が配設され、上記フィードチェーン17の上方側には、スプリング30によって下方に付勢される挟持レール31が配置される。上記フィードチェーン17は、上記挟持レール31との間に穀稈を挟持して、穀稈の穂先側を上記扱室29内に通過させながら搬送し、穀稈の脱穀を行う。上記扱室29の上方は、脱穀カバー32で覆われている。
【0023】
上記走行機体3は、
図3に示すように、前記エンジンEが搭載される横フレーム33を有し、上記横フレーム33は、上記走行機体3の右後方において、後端部が後方に突出する第1の横フレーム部材37及び第2の横フレーム部材39を有する。上記第1の横フレーム部材37及び上記第2の横フレーム部材39の後端部によって、上下方向に貫通し、前方に窪んだ切欠き形状の貫通部40が形成される。上記第1の横フレーム部材37の後端には、上方に延び、上記カッターを支えるカッターステー35(第1の縦フレーム)が固設され、上記第2の横フレーム部材39の後端には、上方に延び、外装の一部を構成する外装フレーム36(第2の縦フレーム)が固設される。
【0024】
上記走行機体3の後方には、上記エンジンEに供給される燃料を貯蔵する燃料タンク41が設けられ、上記走行機体3の右後端には、該燃料タンク41に上記燃料を注入するための給油口42が配置される。また、上記走行機体3の幅方向において、上記給油口42と前記燃料タンク41との間に、上記燃料に含有される水分及び異物を分離するセジメンタ43が配置される。該セジメンタ43は、分離した水分を貯める貯水部49と、貯水部49に貯められた水を排出する排出ドレンコック50と、を有し、上記貯水部49の内部には、貯められた水に浮かび、貯められた水の水位を確認する浮き(不図示)が設けられる。上記貯水部49の上部には、上記燃料タンク41から上記燃料が供給される流入口45と、上記流入口45に流れ込む上記燃料の流量を調節する燃料コック46と、水分及び異物を除去した上記燃料を上記エンジンEに送る流出口47と、が設けられる。上記セジメンタ43は、上記排出ドレンコック50の直下方が上記貫通部40となる位置において、上記カッターステー35に取り付けられる。
【0025】
上記走行機体3は、
図4に示すように、後方に、上記カッターステー35及び上記外装フレーム36に取り付けられたカッターステー後部カバー51(後部カバー)を有する。該カッターステー後部カバー51は、上記セジメンタ43の後方に開放部52を有する固定カバー53と、上記開放部52を閉じ、かつ上記開放部52を開放し得る脱着カバー55を有する。上記カッターステー35及び上記外装フレーム36には、ネジ穴56を有する取付プレート57が設けられており、上記脱着カバー55は、上記ネジ穴56及び固定カバー53に、取り外し自在に取付ネジ59によって固定される。また上記脱着カバー55は、上記燃料コック46の回動範囲の後方を開放し、かつ上記貯水部49を目視し得る開口部60を有する。
【0026】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、セジメンタ43のメンテナンスを行う際、作業者は、取付ネジ59を緩め、脱着カバー55を取り外し、燃料コック46を閉じ、燃料タンク41からの燃料の流入を止め、セジメンタ43のメンテナンスを行う。セジメンタ43が走行機体3の後端に配置され、さらにセジメンタ43の後方に開放し得る脱着カバー55が取り付けられているので、セジメンタ43のメンテナンスの際、脱着カバー55を取り外すだけでセジメンタ43を露出させることができ、容易にメンテナンスを行うことができる。
【0027】
また、セジメンタ43の貯水部49に貯められた水を排水する際、作業者は、走行機体3の下側又は脱着カバー55を外した開放部52から手を入れ、排出ドレンコック50を開ける。排出ドレンコック50の直下方が貫通部40となっているので、作業者は、排水経路を確保するためのカバー又はフレームの取り外し作業を行うことなく、又ホースを取り付けることなく排水できる。さらに、機内が濡れることなく排水を行うことができ、機内の汚れや錆を抑制することができる。貫通部40は既存の構造であるので、改めて排水孔を設ける必要がなく、コスト削減となる。
【0028】
既存のカッターステー35に脱着カバー55を取り付けるので、僅かな改良のみで脱着カバー55の取付構造を設けることができる。
【0029】
脱着カバー55に貯水部49を目視し得る開口部60が設けられたので、脱着カバー55を外さずに貯水部49に貯められた水の水位を確認できる。セジメンタ43が給油口42と燃料タンク41との間に配置されているので、給油時、作業者は容易に貯水部49に貯められた水の水位を確認でき、給油中に貯水部49の水位が貯水限界水位を超えることを防ぐことができる。
【0030】
なお、上記実施の形態では、脱着カバー55を取付ネジ59によって取り付けたが、これに限定するものではない。ノブボルトも適用可能であり、工具を使用せずに脱着カバー55の取り外しを行うことができる。また
図5に示すように、蝶番61を介して、カッターステー後部カバー51と開閉自在に連結され、スプリングキャッチ62を介して、外装フレーム36と取り外し自在に固定される脱着カバー55でもよい。
【0031】
また、脱着カバー55をカッターステー35又は外装フレーム36に取り付けたが、これに限定するもではない。走行機体3の他のフレームを適用可能である。
【0032】
続いて、一部変更した他の実施の形態について説明する。なお、上述した実施の形態と同一構成の部分については説明を省略するとともに、同一機能の部材については、同一の参照符号及び名称を使用するものとする。上記脱着カバー55は、
図6に示すように、長方形の右上及び左下に切欠き部が設けられた形状であり、上記カッターステー35に1カ所、上記外装フレーム36に2カ所及び固定カバー53に1カ所が上記取付ネジ59によって取り外し自在にネジ止め固定される。上記脱着カバー55は、上記燃料コック46の回動範囲の後方を開放し、上記貯水部49を目視し得る開口部60を有し、上記開口部60は、上記貯水部49の貯水限界水位の高さに突起63を有する。
【0033】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、作業者は、開口部60を
覗くことによって、貯水限界水位に対する貯水部49の水位の高さを容易に比較できる。
【0034】
なお、本実施の形態では、開口部60に貯水部49の貯水限界水位の高さに突起63が設けられたが、これに限定するものではない。周囲に貯水部49の水位の目盛を設けた開口部60も適用可能である。また
図7に示すように、燃料コック46の回動範囲の後方のみを開放する上開口部60Aと、最上端が貯水部49の貯水限界水位の高さと一致し、貯水部49を目視し得る下開口部60Bと、を有する開口部60も適用可能である。
【0035】
また、上記他の実施の形態の開口部60は上述した実施の形態にも適用可能である。
【0036】
なお、上述した実施の形態は、自脱型コンバインについて説明したが、汎用型コンバインにも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 コンバイン(自脱型コンバイン)
3 走行機体
33 横フレーム
35 第1の縦フレーム(カッターステー)
36 第2の縦フレーム(外装フレーム)
40 貫通部
41 燃料タンク
42 給油口
43 セジメンタ
49 貯水部
50 排出ドレンコック
51 後部カバー(カッターステー後部カバー)
55 脱着カバー
60 開口部