特許第6571406号(P6571406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571406
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20190826BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20190826BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20190826BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H01M10/058
   H01M10/0566
   H01M10/052
   H01M4/36 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-125678(P2015-125678)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-10805(P2017-10805A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(74)【代理人】
【識別番号】100098028
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊之
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】川北 健一
(72)【発明者】
【氏名】都藤 靖泰
(72)【発明者】
【氏名】進藤 康裕
(72)【発明者】
【氏名】大澤 康彦
(72)【発明者】
【氏名】草地 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一
(72)【発明者】
【氏名】赤間 弘
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−207326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/058
H01M 4/36
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質粒子と電解液とを含んでなる電極組成物を収容するための収容部を有し、リチウムイオン電池を構成する部材である容器の収容部に、活物質粒子と液体を含むスラリー状物質を注入する注入工程と、
前記収容部内に設けられ、前記活物質粒子と前記液体とを分離可能な分離膜を通して、前記収容部に注入されたスラリー状物質が含む液体の少なくとも一部を前記収容部から排出する排出工程と、
を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記液体は電解液または非水溶媒であることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記注入工程では、前記収容部に設けられた第一の開口部から前記スラリー状物質を注入し、
前記排出工程では、前記収容部に注入された液体の少なくとも一部を前記収容部の前記第一の開口部と異なる位置に設けられた第二の開口部から排出することを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記収容部は、セパレータで区分された正極室および負極室を有しており、
前記注入工程では、前記正極室および前記負極室の少なくとも一方の電極室に前記スラリー状物質を注入し、
前記排出工程では、前記一方の電極室から前記液体を排出することを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記セパレータの一方の面が前記正極室の内壁を構成する領域を有し、他方の面が前記負極室の内壁を構成する領域を有し、
前記排出工程では、前記セパレータの有する領域の少なくとも一部を前記分離膜として用いることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記セパレータの、前記正極室の内壁を構成する領域、および前記負極室の内壁を構成する領域のいずれか一方が、他方の領域と重なり合わない領域を有し、
前記排出工程では、前記重なり合わない領域の少なくとも一部を前記分離膜として用いることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記注入工程では、前記正極室および前記負極室の双方にスラリー状物質を同時期に注入することを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の製造方法において、
前記活物質粒子の少なくとも一部が、導電助剤と高分子とを含んでなる層で被覆されていることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項9】
正極活物質と電解液とを含む正極電極組成物が充填された正極室と、
負極活物質と電解液とを含む負極電極組成物が充填された負極室と、
前記正極室と前記負極室とを区分するセパレータと、
を有し、
さらに、前記正極室および前記負極室のうち少なくとも一方の電極室の内面に配置された、活物質粒子と液体とを分離可能な分離膜を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(二次)電池は、高容量で小型軽量な二次電池として、近年様々な用途に多用されている。このようなリチウムイオン電池の製造方法の一例として、シート状の正極および負極集電体にペースト状の正極活物質および負極活物質を塗布して作製した電極を用いる電池の製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−252385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペースト状の正極活物質および負極活物質を塗布して得られる従来の電極を用いる特許文献1に記載の方法で電池を製造する場合、電池性能を確保するには効率良く電極を電池の外装容器に収容する必要があり、そのため電池の形状や製法等に制約を受けるという課題がある。
【0005】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、電池の形状等に制約を受けることが無く、優れた電池性能を達成できるリチウムイオン電池の製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るリチウムイオン電池の製造方法は、活物質粒子と電解液とを含んでなる電極組成物を収容するための収容部を有する容器の収容部に、活物質粒子と液体を含むスラリー状物質を注入する注入工程と、前記収容部内に設けられ、前記活物質粒子と前記液体とを分離可能な分離膜を通して、前記収容部に注入されたスラリー状物質が含む液体の少なくとも一部を前記収容部から排出する排出工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記液体は電解液または非水溶媒であることが好ましい。また、前記注入工程では、前記収容部に設けられた第一の開口部から前記スラリー状物質を注入し、前記排出工程では、前記収容部に注入された液体の少なくとも一部を前記収容部の前記第一の開口部と異なる位置に設けられた第二の開口部から排出することが好ましい。
【0008】
また、前記収容部は、セパレータで区分された正極室および負極室を有しており、前記注入工程では、前記正極室および前記負極室の少なくとも一方の電極室に前記スラリー状物質を注入し、前記排出工程では、前記一方の電極室から前記液体を排出することが好ましい。
【0009】
また、前記セパレータの一方の面が前記正極室の内壁を構成する領域を有し、他方の面が前記負極室の内壁を構成する領域を有し、前記排出工程では、前記セパレータの有する領域の少なくとも一部を前記分離膜として用いることとしてもよい。
【0010】
さらに、前記セパレータの、前記正極室の内壁を構成する領域、および前記負極室の内壁を構成する領域のいずれか一方が、他方の領域と重なり合わない領域を有し、前記排出工程では、前記重なり合わない領域の少なくとも一部を前記分離膜として用いることとしてもよい。
【0011】
また、前記注入工程では、前記正極室および前記負極室の双方にスラリー状物質を同時期に注入することが好ましい。また、前記活物質粒子の少なくとも一部が、導電助剤と高分子とを含んでなる層で被覆されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るリチウムイオン電池は、正極活物質と電解液とを含む正極電極組成物が充填された正極室と、負極活物質と電解液とを含む負極電極組成物が充填された負極室と、前記正極室と前記負極室とを区分するセパレータと、を有し、さらに、前記正極室および前記負極室のうち少なくとも一方の電極室の内面に配置された、活物質粒子と液体とを分離可能な分離膜を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池の形状等に制約を受けること無く効率良く電極を収容することで電池性能に優れたリチウムイオン電池を簡便に製造することが出来る。また、粘度の低い状態で活物質を容器内に注入しつつ、活物質内における活物質粒子と電解液の比率を好ましい値に制御することでより優れた電池性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るリチウムイオン電池の製造方法を説明するための一部破断斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るリチウムイオン電池の製造方法を説明するための断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係るリチウムイオン電池の製造方法を説明するための斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るリチウムイオン電池の製造方法を説明するための断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るリチウムイオン電池を製造する際における排出工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態に係るリチウムイオン電池、およびその製造方法について、図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、本実施形態に係るリチウムイオン電池の製造途中の様子を模式的に示しており、図1が一部破断斜視図、図2が断面図である。
【0016】
本実施形態のリチウムイオン電池の製造方法について説明するに先立って、本実施形態の製造方法により製造されるリチウムイオン電池の構造について、説明する。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池は、活物質粒子と電解液とを含んでなる電極組成物を収容する容器1と、この容器1が有する収容部に配置され、当該収容部を正極室2と負極室3とに区分するセパレータ4と、正極室2に充填された正極電極組成物5と、負極室3に充填された負極電極組成物6と、正極室2の内面に配置された正極集電体7と、負極室3の内面に配置された負極集電体8と、を備える。なお、容器1はリチウムイオン電池の外装缶としても機能する。
【0018】
容器1は、図1に示すように、一例として略直方体の形状に形成され、この容器1内部の中空部が収容部とされる。容器1の収容部内には、この収容部内を正極室2と負極室3とに区分する、一例として平板状のセパレータ4が配置されている。すなわち、セパレータ4の一方の面は正極室2の内壁の一部となっており、これと逆側の面は負極室3の内壁の一部となっている。正極室2のセパレータ4と対向する内面には正極集電体7が配置され、同様に負極室3のセパレータ4と対向する内面には負極集電体8が配置されている。
【0019】
さらに、正極室2には正極電極組成物5が、負極室3には負極電極組成物6が、それぞれ充填されている。正極電極組成物5は少なくとも正極活物質粒子と電解液とから構成され、負極電極組成物6は少なくとも負極活物質粒子と電解液とから構成される。
【0020】
ここで、本明細書において、「充填された」とは、正極活物質粒子と電解液とを含んだ正極電極組成物5が正極室2に収容され、また負極活物質粒子と電解液とを含んだ負極電極組成物6が負極室3に収納されている状態を意味し、好ましくは、正極室2または負極室3の中で正極活物質粒子または負極活物質粒子のそれぞれが電解質と混合された状態を意味する。
【0021】
正極電極組成物5を構成する正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2およびLiMn24)、遷移金属酸化物(例えばMnO2およびV25)、遷移金属硫化物(例えばMoS2およびTiS2)および導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンおよびポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0022】
また、負極電極組成物6を構成する負極活物質粒子としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂およびフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレンおよびポリキノリン等)、スズ、シリコン、および金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金およびリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)およびリチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi4Ti512等)等が挙げられる。
【0023】
本発明の電池においては、正極活物質粒子および/または負極活物質粒子が、その表面の少なくとも一部を被覆用樹脂および導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子であることが好ましい。
【0024】
被覆剤は被覆用樹脂を含んでおり、正極活物質粒子および負極活物質粒子の表面が前記被覆剤で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができる。被覆用樹脂としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂およびポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂が好ましい。
【0025】
導電助剤としては、導電性を有する材料から選択される。
【0026】
導電剤としては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅およびチタン等]、カーボン[グラファイトおよびカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブ等)等]、およびこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金または金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタンおよびこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレスおよびカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤とは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0028】
導電助剤として導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0029】
被覆活物質粒子は、例えば、正極活物質粒子または負極活物質粒子を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂を含む樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0030】
本実施形態では、後述するように、活物質粒子と液体とを含むスラリー状物質を正極室2および負極室3に注入して、最終的に正極電極組成物5および負極電極組成物6がそれぞれ正極室2、負極室3に充填された状態とする。スラリー状物質に含まれる液体は、電解液または非水溶媒であることが好ましい。本発明において、前記液体が電解液である場合、活物質を含むスラリー状物質は電解液スラリーといい、前記液体が非水溶媒である場合、活物質を含むスラリー状物質は溶媒スラリーという。
【0031】
前記の電解液スラリーに含まれる電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる電解液を使用することができる。
【0032】
前記の電解液に含まれる電解質としては、通常のリチウムイオン電池の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6およびLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22およびLiC(CF3SO23等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力および充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF6である。
【0033】
前記の電解液に含まれる非水溶媒および溶媒スラリーに含まれる非水溶媒としては、通常のリチウムイオン電池の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状または鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状または鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等およびこれらの混合物を用いることができる。
【0034】
前記の非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
非水溶媒のなかでも、電池出力および充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステルおよびリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステルおよび鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、またはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0036】
セパレータ4としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等、ポリオレフィン製の微多孔膜フィルム、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、およびそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0037】
集電体7、8としては、金属集電体や樹脂集電体を用いることができる。金属集電体としては、公知の金属集電体を用いることができる。たとえば、金属集電体は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、およびこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上からなると好ましい。金属集電体は薄板または金属箔から形成されてもよいし、基材の表面にスパッタリング、電着および塗布等の手法により金属層を形成してもよい。
【0038】
樹脂集電体を構成する高分子材料は、導電性高分子であってもよいし、導電性を有さない高分子であってもよい。
【0039】
高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)およびポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリメチルペンテン(PMP)である。
【0041】
また、樹脂集電体は、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的、あるいは、導電性を有さない高分子材料を含む樹脂集電体に導電性を付与する目的から、導電性フィラーを含んでいると好ましい。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択され、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材が用いられてもよい。耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、ニッケル、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0042】
樹脂集電体の具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したものが挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0043】
次に、図1および図2を参照して、本実施形態のリチウムイオン電池の製造方法について説明する。
【0044】
具体的には、まず容器1が有する電極組成物の収容部内に集電体7、8を配置し、さらにセパレータ4を配置して収容部内を正極室2と負極室3とに区分する。その後、正極室2に正極電極組成物5を充填するとともに、負極室3に負極電極組成物6を充填する。特に本実施形態では、正極室2および負極室3のそれぞれに電極組成物を充填する充填工程が、少なくとも、正極室2および/または負極室3のそれぞれに活物質粒子と液体を含むスラリー状物質を注入する注入工程と、注入工程で注入されたスラリー状物質に含まれる液体の少なくとも一部を分離膜9を通して正極室2および/または負極室3から排出する排出工程と、を含んでいる。
【0045】
この注入工程と排出工程とを実現可能にするために、正極室2の上方には第一の開口部(注入口2a)が設けられており、正極室2の注入口2aと異なる位置[例えば相対する部位、すなわち第一の開口部(注入口2a)と逆側(下方)]に第二の開口部(排出口2b)が設けられている。同様に、負極室3にも注入口3aおよび排出口3bが設けられている。これらの注入口2a、3aおよび排出口2b、3bは、いずれも容器1の外壁を貫通して容器1の内外を接続する孔である。
【0046】
以下、本実施形態で正極室2に正極電極組成物5を充填する工程について、詳しく説明する。なお、負極室3に負極電極組成物6を充填する工程についても、以下に説明するのと同様の工程によって実現されてよい。
【0047】
まず、正極室2の上方に設けられた注入口2aから正極活物質粒子と電解液を含んだスラリー状物質を注入する。スラリー状物質を正極室2に注入する手法に限定はなく、スラリー状物質が格納されたタンクからノズル20を介して正極室2にスラリー状物質を注入する手法など、公知の手法を適用することができる。ここで、正極室2に注入されるスラリー状物質は、その中に含まれる正極活物質粒子の割合が、注入後に電解液の一部を排出して正極室2内に充填された正極電極組成物5に含まれる正極活物質粒子の割合よりも低くなるように調製されている。このため、注入時のスラリー状物質の粘度は、リチウムイオン電池完成時の正極電極組成物5の最終的な粘度と比較して低くなり、スラリー状物質を調製したり正極室2に注入したりする作業時の取り扱いが容易になる。
【0048】
その後、加圧または減圧によって、正極室2に注入されたスラリー状物質に含まれる電解液の一部を排出口2bから排出する。図1および図2では、排出口2bに排出管21が挿入されており、この排出管21経由で電解液が排出される。このとき、活物質粒子が電解液とともに正極室2から排出されてしまうことは好ましくない。そのため、排出口2bには活物質粒子と液体とを分離可能な分離膜9が配置される。具体的に、図1および図2では、排出管21の管内に分離膜9が配置されており、正極室2の内部から排出口2bを通って外部に出る際には必ず分離膜9を通過するようになっている。
【0049】
分離膜9は、例えばセパレータ4と同種の素材で形成されたフィルターである。この分離膜9を通過させることによって、スラリー状物質に含まれる活物質粒子を正極室2内に残したまま、スラリー状物質に含まれる電解液だけを正極室2から排出することができる。電解液の一部が正極室2から排出されることによって、正極室2内のスラリー状物質に占める活物質粒子の割合が上昇する。これにより、電池性能の観点から好ましい割合で活物質粒子を含んだ正極活物質5を正極室2内に充填することができる。
【0050】
具体例として、最初に正極室2に注入するスラリー状物質は、活物質粒子並びに導電助剤を電解液の重量に基づいて1〜50重量%(好ましくは5〜30重量%)の濃度で分散してスラリー化することにより調製することが好ましい。その後、排出工程を経て調整された後に正極室2に充填されている正極電極組成物5は、導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子を電解液の重量に基づいて30〜80重量%(好ましくは30〜60重量%)の濃度で含んだ状態とすることが好ましい。
【0051】
なお、上述した排出工程において電解液の一部を正極室2から排出した後、必要に応じて活物質粒子と電解液を含んだスラリー状物質をさらに注入口2aから注入してもよい。この場合、新たに注入するスラリー状物質に含まれる活物質粒子の割合は、最初に注入するスラリー状物質に含まれる活物質粒子の割合とは異なってもよい。
【0052】
注入工程および排出工程によって正極電極組成物5を正極室2に充填した後は、例えば容器1に振動及び衝撃等を与えるなどして、正極室2内の活物質粒子と電解液とが均一に混合された状態とすることが好ましい。その後、排出管21を取り外し、正極室2内を減圧脱気して、シール部材等を用いて注入口2aおよび排出口2bを封止する。
【0053】
シール部材を構成する材料としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料、特に熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0054】
前述したように、負極室3内への負極電極組成物6の充填も、以上説明した正極電極組成物5を正極室2に充填する工程と同様の工程によって実現される。すなわち、まず負極活物質粒子と電解液とを含むスラリー状物質を注入口3aから負極室3内に注入し、次いで、注入されたスラリー状物質に含まれる電解液を、分離膜9を通して排出口3bから排出する。その後、負極室3内を減圧脱気し、注入口3aおよび排出口3bを封止する。
【0055】
なお、正極室2内に正極電極組成物5を充填する工程と、負極室3内に負極電極組成物6を充填する工程とは、並行して実行してもよい。特に、正極室2内へのスラリー状物質の注入と、負極室3内へのスラリー状物質の注入とを同時期に実行することによって、セパレータ4に対して一方の側から他方の側に強い圧力がかからないようにすることができ好ましい。
【0056】
以上の工程を経て、本発明の製造方法によるリチウムイオン電池が製造される。リチウムイオン電池の正極室2に充填された正極電極組成物5、および負極室3に充填された負極電極組成物6は、それぞれ、正極室2または負極室3に注入されるスラリー状物質と比較して、粘度が高く、活物質粒子の濃度が高い状態になっている。本実施形態によれば、粘度の低い(液体の占める割合が大きい)状態でスラリー状物質を注入するので、製造時にスラリー状物質を扱いやすくすることができ、正極室2および負極室3の形状にかかわらず容易にスラリー状物質を注入することができる。その後、スラリー状物質に含まれる液体を正極室2および負極室3から排出することで、スラリー状物質に含まれる活物質粒子の割合を好ましい値に調整し、電池性能を向上させることができる。
【0057】
なお、本発明の実施の形態は以上説明したものに限られない。例えば、以上の説明では電解液を含む電解液スラリーを最初に正極室2および負極室3に注入することとしたが、最初に正極室2に注入するスラリー状物質は、正極活物質粒子と非水溶媒を含み、電解質を含まない溶媒スラリーであってもよい。この場合、正極活物質粒子と非水溶媒を含むスラリー状物質を正極室2に注入した後、注入された非水溶媒の大部分を排出口2bから排出する。その後さらに、非水溶媒と電解質とを含んだ電解液を、注入口2aから注入する。このような手順によっても、比較的粘度の低い状態でスラリー状物質を正極室2に注入し、かつ、正極室2内に充填される正極電極組成物5に含まれる電解液と正極活物質粒子の比率を好ましい値に調整することができる。負極室3に負極電極組成物6を充填する際にも、同様に最初の注入工程では溶媒スラリーを注入し、排出工程で非水溶媒を排出した後、あらためて電解液を注入口3aから注入して負極電極組成物6を充填してもよい。
【0058】
また、以上の説明では分離膜9は排出管21に固定され、排出工程の終了後に排出管21とともに取り外されることとした。しかしながら分離膜9は、容器1の排出口2bおよび3bに対して直接固定され、リチウムイオン電池の完成後も容器1に固定されたまま電池内に残ることとしてもよい。
【0059】
また、以上の説明では容器1は略直方体の形状であることとしたが、これに限らず容器1およびその内部の収容部は各種の形状であってよい。セパレータ4についても、図1および図2に示したような平板状に限らず、種々の形状をとることができる。
【0060】
[第2の実施形態]
次に、図3図5を参照して、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池およびその製造方法について説明する。図3および図4は、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池の製造途中の様子を模式的に示す図であって、図3は斜視図、図4は断面図である。また、図5は排出工程を説明するための説明図である。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0061】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、セパレータ4の一部の領域を分離膜9として利用する点に特徴がある。これに応じて、正極室2および負極室3に注入されたスラリー状物質に含まれる液体を排出する際の液体の流路が第1の実施形態とは相違している。以下、本実施形態におけるリチウムイオン電池の構造について説明する。
【0062】
本実施形態では、容器1はラミネートパックによって形成されており、製造時にはクランパー22によって支持される。容器1が有する収容部にはセパレータ4が配置され、これにより収容部が正極室2と負極室3とに区分されている。ここで、正極室2と負極室3はセパレータ4を挟んで一部非対称に形成されている。具体的には、図3に示すように、正極室2の下方に突出部分2cが形成されており、この位置で正極室2の深さは対向する負極室3の深さよりも深くなっている。図4は、この位置におけるリチウムイオン電池の断面形状を示している。なお、別の位置では逆に負極室3に突出部分が設けられ、この位置で負極室3の深さが正極室2よりも深くなっている。
【0063】
セパレータ4は、その一方の面が正極室2の内壁を構成する領域を有し、他方の面が負極室3の内壁を構成する領域を有している。セパレータ4の正極室2の内壁を構成する領域と負極室3の内壁を構成する領域とは、その大部分が互いに重なり合っている。しかしながら、正極室2と負極室3とが互いに非対称な形状を有するので、正極室2の内壁を構成する領域のうち、その一部(前述した正極室2の突出部分2cに相対する部分)が負極室3の内壁を構成する領域と重なり合わないことになる。同様に、負極室3の内壁を構成する領域も、その一部の領域(負極室3の突出部分に相対する領域)が正極室2の内壁を構成する領域と重なり合わない。セパレータ4の各電極室の内壁を構成する領域のうち、他方の電極室を構成する領域と重なり合わない領域の少なくとも一部は、活物質粒子と液体とを分離可能な分離膜9として機能する。
【0064】
上述の通り、セパレータ4を挟んで正極室2の突出部分2cの反対側には、負極室3が存在せず、その代わりに図4に示すように負極集電体8から突出した端子部8aが対向して配置されている。この端子部8aは、容器1の外部まで延伸して電極端子を構成している。さらに、容器1と端子部8aの間には排出管21が挿入されている。正極集電体7についても、セパレータ4を挟んで負極室3の突出部分と対向する位置に端子部7aが突出して形成されている。
【0065】
図5は、正極室2の突出部分2c近傍の各部材を模式的に示す部分拡大分解図である。同図に示すように、負極集電体8の突出部分2cと相対する位置には複数の孔が設けられており、これらの孔が正極室2から液体を排出する際の排出口2bとして機能する。そして、セパレータ4の排出口2bと重なる領域が分離膜9として機能する。
【0066】
以下、本実施形態におけるリチウムイオン電池の製造方法について説明する。まず、容器1を形成するラミネート外装材に対して集電体7、8およびセパレータ4を接着し、クランパー22で支持する。このとき、容器1を形成するラミネート外装材とともにノズル20、および排出管21を併せてクランパー22で支持する。これにより、容器1が有する収容部内に正極室2および負極室3が形成される。
【0067】
その後、正極電極組成物5を正極室2に充填するとともに、負極電極組成物6を負極室3に充填する。以下では、正極電極組成物5を正極室2に充填する工程について、具体的に説明する。
【0068】
まず、正極活物質粒子と液体(電解液、または非水溶媒等)を含むスラリー状物質を、ノズル20を用いて注入口2aから正極室2に注入する。この注入工程は、第1の実施形態におけるスラリー状物質の注入工程と同様の手法で実現されてよい。
【0069】
次いで、加圧または減圧によって、正極室2に注入されたスラリー状物質に含まれる液体を、負極集電体8に設けられた排出口2bから排出する。この排出工程では、図5においてブロック矢印で示される経路に沿って、スラリー状物質に含まれる液体が排出される。具体的に、正極室2内に注入された液体が、セパレータ4の一部である分離膜9を透過し、負極集電体8に設けられた排出口2b、および排出管21を通過して容器1の外部に排出される。なお、スラリー状物質に含まれる正極活物質粒子は分離膜9を透過しないので、排出工程では排出されない。
【0070】
その後、必要に応じて注入口2aからさらにスラリー状物質や電解液を注入してもよい。次いで、ノズル20、および排出管21を取り外し、正極室2内を減圧脱気して、シール部材等を用いて注入口2aおよび排出口2bを封止する。
【0071】
なお、負極電極組成物6を負極室3に充填する工程についても、以上説明した正極電極組成物5を正極室2に充填する工程と同様の手順で実現されてよい。また、正極電極組成物5を正極室2に充填する工程と、負極電極組成物6を負極室3に充填する工程とは、並行して実行してもよい。
【0072】
以上説明したように、第2の実施形態では、セパレータ4の一部領域を正極室2および負極室3から液体を排出する際の分離膜として利用する。これにより、セパレータ4とは別に分離膜を用意する必要がなくなる。
【0073】
本実施形態においても、図4に示す容器1の形状は例示に過ぎず、容器1は各種の形状であってよい。また、容器1はラミネート外装材に限らず各種の材料によって形成されたものであってよい。セパレータ4や集電体7、8の形状についても、図示したもの以外の各種の形状であってよい。
【符号の説明】
【0074】
1 容器
2 正極室
3 負極室
2a,3a 注入口
2b,3b 排出口
4 セパレータ
5 正極電極組成物
6 負極電極組成物
7 正極集電体
8 負極集電体
9 分離膜
20 ノズル
21 排出管
22 クランパー
図1
図2
図3
図4
図5